説明

分注装置

【課題】本発明は、任意の分注量が精度良く吐出されるとともに、簡便かつ安価な分注装置を提供することを目的とする。
【解決手段】直径が少なくとも2種類以上異するノズル40を複数個備えたノズルユニット4と前記ノズル40内に溶液を送り込むシリンジポンプ1と、前記ノズル40とシリンジポンプ1間にバルブ3を配置され、各々がチューブ2で連結されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学的分析などに用いられる試薬分注装置であって、特に、液体容器内の液体が所定量吸引または分注される際に、微少量の液量が正確に吸引され、精度良く分注されるようにした液滴分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分注装置は、図4に示すようにピペット102とシリンダ105と駆動装置104とから構成されている(例えば、特許文献1参照)。ピペット102は複数個のシリンダ105と、このシリンダ105内に挿入された複数個のピストン106を一体に固定する支持板108とから構成されている。駆動装置104は支持板108に連結され、ピストン106はシリンダ105内を往復運動している。シリンダ105は内径が2種類の異なる径で形成されており、各々のシリンダ105は、異なる液量範囲に設定されている。ピストン106は、シリンダ105の内径に応じて太径と細径に形成されている。このように、直径の違う2種類のシリンダ105を用いることで、分注量の範囲が広げられている。
【0003】
また、ノズルチップを用いる従来の分注装置は、図5に示すようにシリンダユニット110が先端にノズルチップ112を装着し、複数のシリンダ121を有するシリンダブロック111と、各シリンダ121内に密封嵌装されて、駆動装置104により一体的にピストン駆動される複数のプランジャーブロック113とから構成されている(例えば、特許文献2参照)。プランジャー123の外径が太径と小径に形成されている。
太径で形成されたプランジャー123では、シリンダ121とプランジャー123外径間の空域が狭くなることにより、空域には大きな圧縮力が与えられる。この時、溶液が細筒領域124を通過する速度は速くなることにより、溶液の分注量と分注速度は大きくなる。
小径で形成されたプランジャー123では、シリンダ121とプランジャー123外径間の空域が大きくなることにより、空域に与えられる圧縮率は小さくなる。この時、溶液が細筒領域124を通過する速度は遅くなることにより、溶液の分注量と分注速度は大きくなる。
プランジャー123の外径の差異を利用して、プランジャー123の挿入容積が違うことにより、シリンダ121内の吸引圧と押圧力が調整され、分注量と分注速度が変えられる。
【特許文献1】特開平8−117618公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】特開2004−61397公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の分注装置ではピストンが太径と細径を用いられ、プランジャーがシリンダ内を往復動することで分注量の範囲が広げられるが、高精度な分注量が得られるためには、ノズル直径は高精度に加工しておく必要があるために、コスト高になるという問題が生じていた。
また、複数本のプランジャーを一体化した支持台で往復動しているので、分注量の細分化ができない問題が生じていた。すなわち、プランジャーの1ステップあたりの送り量が、太径では10μlに、細径では1μlに相当するとすると、分注量は11μl、22μl、33μl・・・・・99μlとなる。すなわち、11μlより大きく、22μl未満では、液量の調整ができない問題が生じており、中間値を補間する手段がないために任意の液量設定ができないという問題が生じていた。
【0005】
また、ノズルチップを用いる従来の分注装置でも、一体化した支持台で太径と細径のプランジャーが移動されていたので、分注量を可変させることができないという問題が生じていた。
また、分注量は、プランジャーとシリンジ間の挿入容積で決定されるため、プランジャーの直動性が悪くなると、プランジャーの挿入容積に誤差が生じ、正確な分注ができなくなることにより、所定容量が得られないという問題が生じていた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、任意の分注量が精度良く吐出されるとともに、簡便かつ安価な分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
請求項1に記載の発明は、複数個のチューブの吐出口先端に取り付けられたノズルユニットと、前記チューブを通じて送液するシリンジポンプを備えた分注装置において、前記ノズルユニットが、直径が2種類以上の異なるノズルを備え、バルブが前記ノズルと前記シリンジポンプ間に配置され、チューブで連結されたものである。
請求項2に記載の発明は、前記ノズルユニットが、前記ノズルが素数の吐出容量を有し、吐出容量が相違する複数個の前記ノズルの組み合わせからなるものである。
請求項3に記載の発明は、前記ノズルの吐出容量が、前記ノズルの各々の長さは等しく、内径が異なることにより設定されるものである。
請求項4に記載の発明は、前記チューブの内径が、前記チューブの内径から求められる断面積と、前記ノズルの内径から求められる断面積との和が、各々の前記チューブと前記ノズル間で、互いに同じ値になるように設定されるものである。
請求項5に記載の発明は、前記バルブは2方弁が用いられ、前記バルブの開閉時間により、任意の分注量が設定されるものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によると、シリンジポンプとノズル間にバルブが配置されたことで、バルブの開閉により溶液が吐出されるノズルは選択され、所定量の溶液が吐出される。
また、請求項2に記載の発明によると、素数の吐出容量からなる複数個のノズルが配置されたことで、任意の分注量が吐出される。たとえば、 1μl、2μl、3μl、5μlの4本のノズルが用いられて、ノズルユニットが構成された場合、各ノズルに対応したバルブが適宜に開閉されることにより、1μl、2μl、3μl・・・・・11μlまでを1μl間隔で分注される。
また、請求項3および4記載の発明によると、複数個のチューブとノズルの断面積の和が一定となるようにしたことで、吐出流量が一定になることにより、分注条件は一定にでき、高精度な分注量が得られる。
また、請求項5記載の発明によると、開閉のみの動作をするバルブが用いられることにより、従来の分注装置のような高精度なシリンジ加工や運動精度が要しないので安価にでき、簡便なシステムが提供できる。
以上のように請求項1から5に記載した発明によると、吐出容量が任意に設定できる。また、分注条件が一定にできることにより高精度な分注ができる、さらに、装置構成が簡便にできることにより、安価な分注装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の分注装置の構成を示す模式図である。図において、1はシリンジポンプ、2はチューブ、3は2方弁、4はノズルユニット、40はノズルである。
分注装置は、チューブ2は、給水口がシリンジポンプ1に接続され、もう一端は、図示しないソケットにより分岐され、2方弁3に接続されている。さらにチューブ2は2方弁3からノズルユニット4内の各ノズル40に接続されている。
シリンジポンプ1に押圧が加えられると、溶液はチューブ2を通じ、2方弁3へ送液される。各ノズル40に対応した2方弁3の開閉操作により、チューブ2を通じてノズルユニット4内の各ノズル40へ送液され、各ノズル40吐出口より分注される。
ノズルユニット4は図2に示すように、1μlノズル41、2μlノズル42、3μlノズル43、5μlノズル44から構成されており、各々のノズル長は同じであり、容量に合わせて内径が異なっている。また、バルブ3とノズルユニット4間を接続する各々のチューブ2は、 1μlノズル用チューブ21の直径を5mmとした時、2μlノズルチューブ22の直径は、1.25mm、3μlノズルチューブ23の直径は、0.6mm、5μlノズルチューブ24の直径は0.25mmとして、断面積と流速の積である流量が一定となるようにした。
本発明が特許文献1および特許文献2と異なる部分は、1台のシリンジポンプ1と吐出容量が素数となるノズル40を複数個備え、シリンジポンプ1とノズルユニット4間に2方弁3を備えた部分である。また、ノズル40からの分注流量が一定にするように、2方弁3とノズル40間のチューブ径とノズル径が断面積と流速の積である流量が一定になるように最適化した部分である。
次に、設定液量を分注する際のバルブ操作について図3を用いて説明する。図中において,■はバルブ開を,□はバルブ閉の状態を示している。
1μlが分注される場合は、1μl用2方弁31だけが開にされ、その他の2方弁3は閉とする。この手順で、2μl、3μlは分注される。
4μlが分注される場合は、1μl用2方弁31と、3μl用2方弁33を開にし、その他の2方弁3は閉とする。2方弁3の開閉操作が適宜行われ、全ての2方弁3が開にされた場合に、11μlが分注される。
次に、シリンジポンプ1の最小送液量で送液する場合の吐出液量について述べる。ノズル40からの1回の吐出量がシリンジポンプ1の1往復に相当し、シリンジポンプ1の送液量は1000分割できるとすると、 1μl用2方弁31だけが開にされ、シリンジポンプ1が 1ステップ送液すると、1μlノズル41からは、1μlの1/1000である1nlが分注される。2方弁3の開閉操作により、分注範囲は最小分注量が1nlで最大分注量が11μlを得られ、広い分注範囲で吐出液量が得られる。
【0010】
ここでは、バルブに各々を制御する2方弁3を用いて説明したが、5方弁や、3方弁の組み合わせでも良く、1〜n個のノズル40への切換えができるものであれば良い。また、ここでは吐出に関してのみ説明したが、シリンジポンプ1を減圧すれば、バルブが開状態のノズル40先端より溶液が吸引され、吸引および吐出が可能である。
このような構成にすることで、吐出容量が任意に設定でき、分注条件が一定になることにより高精度な分注ができる、さらに、装置構成が簡便にできることにより、安価な分注装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
微量な液量が精度良く制御されるので、DNA解析等の生化学的分析、免疫学的分析のみならず、接着剤の塗布やレジストの塗布という用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示す分注装置の模式図
【図2】本発明の実施例を示すノズルユニットの構成を示す側面図
【図3】本発明の実施例を示す2方弁操作シーケンス
【図4】従来の分注装置を示す側断面図
【図5】従来のノズルチップを用いる分注装置を示す側断面図
【符号の説明】
【0013】
1 シリンジポンプ
2 チューブ
21 1μlノズル用チューブ
22 2μlノズル用チューブ
23 3μlノズル用チューブ
24 5μlノズル用チューブ
3 2方弁
31 1μl用2方弁
32 2μl用2方弁
33 3μl用2方弁
34 5μl用2方弁
4 ノズルユニット
40 ノズル
41 1μlノズル
42 2μlノズル
43 3μlノズル
44 5μlノズル
102 ピペット
104 駆動装置
105 シリンダ
106 ピストン
108 支持板
110 シリンダユニット
111 シリンダブロック
112 ノズルチップ
113 プランジャーブロック
121 シリンダ
123 プランジャー
124 細筒領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のチューブの吐出口が各々のノズルに取り付けられたノズルユニットと、前記チューブの給水口に接続されたシリンジポンプを備えた分注装置において、
前記ノズルユニットは、直径が2種類以上の異なるノズルを備え、バルブが前記ノズルと前記シリンジポンプ間に配置され、前記チューブで連結されたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記ノズルの吐出容量が素数の値をとり、前記ノズルユニットは、吐出容量が異なる複数個の前記ノズルの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記ノズルの吐出容量は、前記ノズルの各々の長さは等しく、内径が異なることにより設定されることを特徴とする請求項2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記チューブの内径は、前記チューブの内径から求められる断面積と、前記ノズルの内径から求められる断面積との和が、各々の前記チューブと前記ノズル間で、互いに同じ値になるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項5】
前記バルブは2方弁が用いられ、前記バルブの開閉時間により、任意の分注量が設定されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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