説明

分注装置

【課題】プレートやチップラックのストッカへの収納に係るトラブルを、未然に防ぐことができる。
【解決手段】ストッカ10からプレート8やチップラック9が飛び出た位置にあることを、発光部15からの光線の遮断の有無として、透過型光センサ16によって検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレートやチップラックのストッカへの収納に係るトラブルを、未然に防ぐことができる分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状試料自動分析装置において、各検体、試薬は共通の分注装置で分注されるが、各検体、試薬毎に分注手段のノズル下端のチップを交換することで各検体、試薬等の混入を防止するようにされている。連続して分析を行うためには、試料保持プレート、チップを自動的に逐次補給する必要があり、特許文献1などの技術がある。該特許文献1では、多数の試料保持プレート、チップを格納して自動的に補給することができるコンパクトで低コストな液状試料自動分析装置を提供するようにしている。
【0003】
図1に、従来の分注装置の1構成例を示す。
【0004】
符号1は分注ヘッドであり、X軸駆動機構2及びY軸駆動機構3により、装置テーブル4上を移動可能になっている。符号5はピペットであり、複数のピペットが分注ヘッド内でZ軸方向に移動可能に保持されている。符号6は検体プレートであり、各ウェルに分注元となる液体が予め分注されている。符号7は溶液槽であり、符号8は分注先となるプレートである。符号9はチップラックであり、ディスポーサルチップが挿入されている。ストッカ10には、プレート8及びチップラック9が格納されている。符号11は、プレート8やチップラック9を把持搬送するハンド機構であり、X−Z軸移動機構12により移動可能になっている。
【0005】
次に分注装置における工程の流れを説明する。
【0006】
作業者は、まず初期の状態では、ストッカ10に、プレート8、及びディスポーサルチップが挿入されたチップラック9を必要数収納する。図1中の装置テーブル4面上に置かれたプレート8及びチップラック9は、この初期の状態ではストッカ10内に収納されている。
【0007】
次に、装置テーブル4上に、検体プレート6を必要数設置する。ストッカ10は、プレート8及びチップラック9の収納や回収の際の、作業者の利便性のために、装置手前側(X業者側)に移動可能に設置されている。
【0008】
ストッカ10が装置手前側に移動している状態で、分注が行われた場合は、ハンド機構11などと衝突する可能性がある。このため、ストッカ10が装置奥側の正規の位置にあることを検知するセンサ17が設置されている。
【0009】
次に、図示されない制御部により、分注の一連の動作を開始する命令を与える。すると、ハンド機構11が、プレート8及びチップラック9をストッカ10から装置テーブル4上の定められた位置に運ぶ。
【0010】
続いて、分注ヘッド1が、X軸駆動機構2及びY軸駆動機構3により、装置テーブル4上のチップラック9の上方に移動する。複数のピペット5は、分注ヘッド1内に搭載されたZ軸駆動機構により下降し、その先端部にディスポーサルチップを装着する。次に、分注ヘッド1は、検体プレート6上に移動し、ピペット5先端のディスポーサルチップに、分注元の液体を吸引する。続いて、分注ヘッド1は、装置テーブル4上のプレート8上に移動し、ウェル内に上記吸引の液体を吐出する。次には、分注ヘッド1は、装置テーブル4上に設けられる、図示されないディスポーサルチップ廃棄エリアに移動し、図示されないチップ廃棄機構により、ピペット5先端のディスポーサルチップを廃棄する。
【0011】
次には、再び、分注ヘッド1は、装置テーブル4上のチップラック9上方に移動し、新しいディスポーサルチップを、ピペット5先端に装着する。次に、分注ヘッド1は、溶液槽7の上方に移動し、ディスポーサルチップ内に溶液を吸引、更に装置テーブル4上のプレート8に移動し、該吸引の溶液を吐出する。
【0012】
以上のような工程を必要回数繰り返し、はじめに設置した装置テーブル4上の検体プレート6に、予定数の分注元の液体や溶液が分注されると、再びハンド機構11が、装置テーブル4よりストッカ10内にプレート8及びチップラック9を戻し、制御部に設定された回数分、上記工程を繰り返す。設定された回数分の分注が終了した後、作業者は、ストッカ10からプレート8及びチップラック9を回収する。
【0013】
【特許文献1】特開2004−239778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来技術に係り、図2〜図4は、ストッカ10を右方向、即ち図1中の矢印A方向から見た模式図である。
【0015】
符号13はプレート8又はチップラック9の収納位置を規制するガイド部材13、符号14はプレート8又はチップラック9が正規の位置に収納されたことを検知するセンサ14である。
【0016】
作業者により入力された情報に基づき、制御部は、必要な数量のプレート8やチップラック9がストッカ10の指定された位置に収納されているかを、ストッカ10内の各収納位置に設けられたセンサ14により検知する。もし、指定された位置に、プレート8やチップラック9が収納されていない場合には、該制御部は、作業者に対してエラーを通知する。あるいは、本来空きになっている位置に、誤ってプレート8やチップラック9が収納されている場合で、このプレート8やチップラック9が該センサ14によって検知されれば、該制御部は、作業者に対してエラーを通知する。
【0017】
しかしながら、センサ14が設けられていない収納位置では、このような誤りを検知することができない。又、センサ14は、プレート8やチップラック9が奥まで収納されないと、このプレート8やチップラック9を検知することができない。
【0018】
例えば、制御部にて設置を指示された位置のプレート8やチップラック9が、奥まで収納されず、ストッカ10からハンド機構11の移動経路へと突出している場合は、指示された位置のセンサ14が検知しないため、制御部はエラーを検知できる。
【0019】
しかしながら、制御部にて設置を指示されていない位置において該突出があった場合、例えば作業者が制御部より指示された場所にはプレート8やチップラック9を正しく設置し、且つ、指示されていない位置に余分にプレート8やチップラック9を設置し、その設置状態が該突出に相当する場合は、指示されていない位置のセンサ14は検知しないが、その位置には本来プレート8やチップラック9があるべきではないので正常と判断してしまうので、このような検知ができず、又ストッカ10におけるこのような突出の異常を検知することができず、エラー通知など、作業者に対して何ら通知がなされない。該突出では、そのプレート8やチップラック9が、移動中のハンド機構11に衝突してしまう可能性があるという問題がある。
【0020】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、プレートやチップラックのストッカへの収納に係るトラブルを、未然に防ぐことができる分注装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、複数のプレートやチップラックを収納可能な分注装置において、これらプレートやチップラックが収納可能なスタッカ、又、該スタッカからプレートやチップラックを選択的に取り出すハンド機構を備え、且つ、該スタッカからプレートやチップラックが飛び出た位置にあることを、光線の遮断の有無や反射の有無によって検知するセンサを備えるようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0022】
以下、本発明の作用について、簡単に説明する。
【0023】
本願発明では、複数のプレートやチップラックを収納可能な分注装置において、これらプレートやチップラックが収納可能なスタッカ、又、該スタッカからプレートやチップラックを選択的に取り出すハンド機構を備える。更に、該スタッカからプレートやチップラックが飛び出た位置にあることを、光線の遮断の有無や反射の有無によって検知するセンサを備える。
【0024】
従って、例えば前述した従来例において、プレート8やチップラック9が奥まで収納されず、ストッカ10からハンド機構11の移動経路へと突出している場合(以下異常突出と呼ぶ)、本願発明を適用することで、このような異常を、光線の遮断の有無や反射の有無として検知することができる。
【0025】
又、該検知に基づいて、作業者に対して異常発生を通知してこれに対応できるようにすることができる。あるいは、上記の突出に、ハンド機構11などの移動する機構部が衝突する可能性がある場合、該移動を停止させることも可能である。
【発明の効果】
【0026】
従って、プレートやチップラックのストッカへの収納に係るトラブルを、未然に防ぐことができる分注装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
図5〜図7は、本発明実施における主要部を示す側面図である。図8〜図10は、正面からの概念図である。
【0029】
本実施形態は、前述した図1〜図4の従来例に対して、透過型光センサ16や発光部15や光反射器17や反射型センサ18を設けたものである。透過型光センサ16や発光部15や光反射器17は、プレート8やチップラック9の異常突出を、該異常突出による光の遮断の有無を検知することで、検出するためのものである。
【0030】
図5〜図7では、プレート8やチップラック9の格納状態が互いに異なる。
【0031】
図5では、プレート8やチップラック9が正常に収納されている(以下完全収納状態と呼ぶ)。この場合は、センサ14によって、プレート8やチップラック9の収納が検知される。更に、発光部15から投光された光は、図中破線で示すごとく、遮蔽されることなく透過型光センサ16において受光され、検知されることになる。この完全収納状態であって、本来プレート8やチップラック9が格納される収納位置であれば、特にエラー通知は行わない。あるいは、該完全収納状態であっても、本来プレート8やチップラック9が格納されない空きの収納位置であれば、誤ったプレート8やチップラック9が収納されている旨、エラー通知を行う。
【0032】
次に、図6では、プレート8やチップラック9が異常突出している。該異常突出の場合、センサ14は、プレート8やチップラック9の収納を検知しない。又、発光部15から投光された、図中破線で示される光は、異常突出のプレート8やチップラック9によって遮断され、透過型光センサ16において検知されることはないので、この場合は異常突出が検知されることになる。この異常突出が検知されると、該異常突出の旨、エラー通知を行う。同時に、該以上突出の検知があった場合、ハンド機構11の動作を停止させるので、異常突出しているプレート8やチップラック9と、該ハンド機構11とが衝突することを未然に防ぐことができる。
【0033】
続いて、図7では、プレート8やチップラック9が正しく奥まで収納されてはいないものの、異常突出はしていない状態である(以下不完全収納状態と呼ぶ)。該不完全収納状態の場合、センサ14は、プレート8やチップラック9の収納を検知しない。又、発光部15から投光された、図中破線で示される光は、異常突出のプレート8やチップラック9によって遮断されることなく、透過型光センサ16において受光され、検知されることになる。この不完全収納状態であって、本来プレート8やチップラック9が格納されるべき収納位置であれば、プレート8やチップラック9の未収納の旨、エラー通知を行う。
【0034】
本発明実施によれば、以上のように、センサ14や、透過型光センサ16や反射型センサ18による検出結果に基づいて、エラー通知や、ハンド機構11の動作停止を行うことができる。従って、プレートやチップラックのストッカへの収納に係るトラブルを、未然に防ぐことができ、本願発明を効果的に適用することができる。
【0035】
次に、図9、図10は、それぞれ、前述した実施形態の第1、第2変形例である。
【0036】
前述した実施形態では、図8に示すように、ストッカ10の各列に対して、発光部15及び透過型光センサ16をそれぞれ1つずつ設けている。
【0037】
これに対して、本実施形態の第1変形例では、複数の列に対して、光反射器17によって光を適宜反射させつつ、発光部15及び透過型光センサ16をそれぞれ1つずつ設けている。発光部15から発せられた、図中破線矢印で示される光は、4つの光反射器17を順に反射しつつ、最後には透過型光センサ16に導かれることになる。該光の遮断の有無を、透過型光センサ16が内蔵する受光センサによって検知することによって、前述の異常突出を検知するようにしている。
【0038】
又、第2変形例では、複数の列に対して、光反射器17によって光を適宜反射させつつ、反射型センサ18を1つ設けている。反射型センサ18から発せられた光は、4つの光反射器17を順に反射し、5つ目の光反射器17で入射側に反射し、再び上記4つの光反射器17を順に反射してから、最後には再び反射型センサ18に導かれることになる。該光の遮断の有無を、反射型センサ18が内蔵する受光センサによって検知することによって、前述の異常突出を検知するようにしている。
【0039】
以上のような変形例においても、本願発明を効果的に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したとおり、本発明によれば、プレートやチップラックのストッカへの収納に係るトラブルを、未然に防ぐことができる分注装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来の分注装置の1構成例を示す斜視図。
【図2】上記従来例のストッカ(空き)の側面図。
【図3】前記従来例のストッカ(完全収納状態)の側面図。
【図4】前記従来例のストッカ(異常突出)の側面図。
【図5】本願発明が適用された実施形態のストッカ(完全収納状態)の側面図。
【図6】前記実施形態のストッカ(異常突出)の側面図。
【図7】前記実施形態のストッカ(不完全収納状態)の側面図。
【図8】前記実施形態において正面側からのストッカの側面図。
【図9】前記実施形態の第1変形例において正面側からのストッカの側面図。
【図10】前記実施形態の第2変形例において正面側からのストッカの側面図。
【符号の説明】
【0042】
1…分注ヘッド
2…X軸駆動機構
3…Y軸駆動機構
4…装置テーブル
5…ピペット
6…検体プレート
7…溶液槽
8…プレート
9…チップラック
10…ストッカ
11…ハンド機構
12…X−Z軸移動機構
13…ガイド部材
14…センサ
15…発光部
16…透過型光センサ
17…光反射器
18…反射型センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレートやチップラックを収納可能な分注装置において、
これらプレートやチップラックが収納可能なスタッカ、又、該スタッカからプレートやチップラックを選択的に取り出すハンド機構を備え、
且つ、該スタッカからプレートやチップラックが飛び出た位置にあることを、光線の遮断の有無や反射の有無によって検知するセンサを備えることを特徴とする分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−147558(P2007−147558A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345802(P2005−345802)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】