説明

分注部品

【課題】微量液体を加圧気体によって吐出する際、吐出部周辺への液体の付着を抑制することが可能な分注部品を提供すること。
【解決手段】一定量の液体を計量する計量部と計量部に保持された液体全体を加圧気体によって吐出する吐出流路とを備えた分注部品1の吐出流路1bの吐出端に液体の吐出方向に突出する突出部1cを設けた。突出部1cは、端部の外直径Dpを吐出流路1bの内直径dfと計量部1aの内直径Dmに対してdf<Dp<Dmとなるように設定する。分注部品1は、微量液体を加圧気体によって吐出する際、吐出部周辺への液体の付着を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノリットル(nL)からマイクロリットル(μL)オーダーの液体の分注に使用する分注部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、nL〜μLオーダーの微量液体を加圧気体によって吐出して分注する分注装置は、吐出終了直前に吐出流路から吐出される液体が、この液体に引き続いて吐出される高速の加圧気体によるスプレー効果よって吐出流路の軸線に沿った本来の吐出方向以外へ飛散する傾向があることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】P. Koltay 他, "Simulation of micro dispensing devices", 20th CAD-FEM Users' Meeting,. International Congress on FEM-Technology, Friedrichshafen, Germany, 2002,図4,図7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吐出される液体が本来の吐出方向以外へ飛散した場合、飛散した液体がマイクロタイタープレートや分光セル等、分注対象の容器に付着するときには何ら問題は生じない。しかし、飛散した液体が容器ではなく、分注部品の吐出部周辺に付着した場合、分注装置は、予め設定した量の液体を分注対象の容器へ分注することができず分注精度が低下する原因となる。また、液体が分注部品の吐出部周辺に付着すると、分注装置は、異なる液体を用いて繰り返し分注する場合に、分注部品に付着した液体が混入して分注対象の液体が汚染される可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、微量液体を加圧気体によって吐出する際、吐出部周辺への液体の付着を抑制することが可能な分注部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る分注部品は、一定量の液体を計量する計量部と該計量部に保持された液体全体を加圧気体によって吐出する吐出流路とを備えた分注部品であって、前記吐出流路の吐出端外周に前記液体の吐出方向に突出する突出部を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る分注部品は、上記の発明において、前記突出部は、端部の外直径Dpを前記吐出流路の内直径dfと前記計量部の内直径Dmに対してdf<Dp<Dmとなるように設定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る分注部品は、上記の発明において、前記突出部の端面は、前記計量部に比べて撥水性が高く設定されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る分注部品は、上記の発明において、前記突出部の端面は、当該突出部の中心軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る分注部品は、上記の発明において、前記計量部は、前記吐出流路側の内径が前記吐出流路に向かって漸減することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る分注部品は、上記の発明において、前記計量部は、前記吐出流路側の内径が前記吐出流路に向かって漸減し、前記突出部は、外面が前記計量部の前記吐出流路側の内面と略並行に成形されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る分注部品は、上記の発明において、前記計量部は、前記吐出流路側の内面が円錐状或いは角錐状のテーパ面又は曲面に成形されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る分注部品は、上記の発明において、前記突出部は、端面近傍の外面が円錐状或いは角錐状のテーパ面に成形されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に係る分注部品は、上記の発明において、前記突出部の端面は、当該突出部の中心軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に係る分注部品は、上記の発明において、前記突出部は、当該分注部品からの突出長さLpが前記吐出流路の長さLfよりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる分注部品は、吐出流路の吐出端外周に前記液体の吐出方向に突出する突出部を設けたので、計量部に保持した微量液体を加圧気体によって吐出する際、突出部によって吐出部周辺への液体の付着を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の分注部品にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。図2は、分注部品の断面正面図である。
【0018】
分注部品1は、図1に示すように、計量部1aと吐出流路1bと突出部1cとを液体吐出の1構成単位として備えており、目的に応じて1構成単位を使用するか、1構成単位を複数直線状或いはマトリクス状に配列して使用する。分注部品1は、計量部1aに保持したnL〜μLオーダーの微量液体全体を計量部1aの上方から作用させる加圧気体によって吐出流路1bから一括して吐出することによって液体を分注する。計量部1aは、nL〜μLオーダーの微量液体を計量する円筒形の部分であり、上方から液体を滴下、或いはマイクロピペッターの先端を接触させる等の方法で分注対象の液体が充填される。このとき、計量部1aは、上面まで液体を満たすことにより、予め設定された量の液体が保持される。吐出流路1bは、一端が計量部1aに接続され、計量部1aに保持された液体を他端から吐出させる。突出部1cは、吐出流路1bの吐出端に液体の吐出方向に長さLp(図2参照)突出させて形成された筒状の部分である。突出部1cは、吐出流路1bから吐出された液体が、この液体に引き続いて吐出される高速の加圧気体によって本来の吐出方向以外へ飛散した場合に、液体が突出部1c周辺に付着することを抑制する。
【0019】
ここで、吐出流路1bは、計量部1aに液体を充填すると、毛細管力によって計量部1a内の液体が浸入する。但し、吐出流路1bは、計量部1aに保持した液体を吐出するための流路であり、液体を保持する部分ではない。このため、分注部品1は、吐出流路1b内に液体が浸入しても、予め設計した所定量の液体が常に安定して吐出されるように、吐出流路1bに浸入する液体の体積vが計量部1aに保持される液体の体積Vに比べて微量(V≫v)となるように設定することが望ましい。従って、分注部品1は、図2に示すように、突出部1c端部の外直径Dpを吐出流路1bの内直径dfと計量部1aの内直径Dmに対してdf<Dp<Dmとなるように設定する。同様の理由から、計量部1aは、図2に示すように、長手方向に沿った長さLmを吐出流路1bの長さLfよりも長く設定する。この場合、加工が可能であるならば、分注部品1は、突出部1c端部の外直径Dpが吐出流路1bの内直径dfに近いことが好ましい。このように、nL〜μLオーダーの微量液体を吐出する分注部品1は、例えば、シリコン基板をエッチング加工するか、射出成形等によってポリカーボネート,ポリプロピレン,アクリル,シクロオレフィンコポリマー(COC),シクロオレフィンポリマー(COP)等の合成樹脂を成形することによって製造することができる。
【0020】
また、突出部1cは、吐出する液体の切れが良いように端面1dに撥水加工を施して計量部1aよりも撥水性を高くしておくことが好ましい。一方、分注部品1は、図3に示すように、突出部1cの端面1dを突出部の中心軸Acに対して角度θ傾斜させることによって吐出する液体の液切れをよくすることも可能である。このとき、分注部品1は、図3に示すように、突出部1cの長さLpおよび吐出流路1bの長さLfを中心軸Ac上で測定する。
【0021】
ここで、図2,図3に示す分注部品1は、計量部1aが吐出流路1bと接続される部分で断面積が大きく変化し(急縮)、吐出される液体に大きなエネルギー損失が生ずる。また、計量部1aから吐出される液体は、図3に示すように、隅Pcの部分に残り易く、この隅Pcの部分に残った液体が吐出流路1bから吐出されるときに飛沫が発生して、周辺に付着することがある。このため、分注部品1は、図4に示すように、吐出流路1bと接続される計量部1a下部の内径が吐出流路1bに向かって漸減するように、計量部1a下部を曲面1eに成形することが好ましい。このとき、分注部品1は、図5に示すように、吐出流路1bと接続される計量部1a下部の内径が吐出流路1bに向かって漸減するように、計量部1a下部を円錐状或いは角錐状のテーパ面1fに成形してもよい。
【0022】
上述のように、分注部品1は、吐出流路1bの吐出端外周に液体の吐出方向に突出する突出部1cを設けたので、微量液体を加圧気体によって吐出する際、突出部1cの周辺に液体が付着することを抑制することができ、分注精度を維持しつつ分注する液体の汚染を防止することができる。
【0023】
(実施の形態2)
次に、本発明の分注部品にかかる実施の形態2について説明する。実施の形態1の分注部品は、突出部1cの長さLpが吐出流路1bの長さLfよりも短かったが(Lp<Lf)、実施の形態2の分注部品は、突出部3cの長さLpを吐出流路3bの長さLfよりも長くしている(Lp>Lf)。図6は、分注部品の断面正面図である。図7は、分注部品の第1の変形例を示す断面正面図である。図8は、分注部品の第2の変形例を示す断面正面図である。
【0024】
分注部品3は、図6に示すように、吐出流路3bと接続される計量部3aの下部内径が吐出流路3bに向かって漸減するように、計量部3a下部が曲面3eに成形されている。また、分注部品3は突出部3cの外面が円錐状或いは角錐状のテーパ面3gに成形されている。分注部品3は、このように構成することによって突出部3cの長さを吐出流路3bの長さLfよりも長くしている(Lp>Lf)。
【0025】
即ち、実施の形態1の分注部品1は、突出部1cの長さが吐出流路1bの長さLfよりも短かった(Lp<Lf)。分注部品1は、突出部1cの周辺に液体が付着することを抑制する目的からは突出部1cの長さLpが吐出流路1bの長さLfよりも長い方が良い。但し、例えば図5から明らかなように、分注部品1は、突出部1cを長くするとこれに伴って吐出流路1bの長さLfも長くなる。この結果、分注部品1は、計量部1aに保持される液体の体積(V)に対する吐出流路1bに浸入する液体の体積(v)の割合が増加し、吐出される液体の量が変動し易くなる。
【0026】
このため、実施の形態2の分注部品3は、上述の構成とすることによって吐出流路3bの長さLfが長くなることを抑えつつ突出部3cの長さLpを吐出流路3bの長さLfよりも長くしている(Lp>Lf)。この場合、分注部品3は、計量部3aの内直径Dp、吐出流路3bの内直径df、計量部3aの内直径Dmに関してdf<Dp<Dmとなるように設定し、計量部1aの長さLmを吐出流路1bの長さLfよりも小さく設定することは、実施の形態1の分注部品1と同様である。また、分注部品3は、突出部3cの端面3dに撥水加工を施して計量部3aよりも撥水性を高くすることで、吐出する液体の切れを良くしてもよい。
【0027】
ここで、分注部品3は、突出部3cの外面をテーパ面3gに成形すると共に、図7に示すように、吐出流路3bと接続される計量部3a下部の内径が吐出流路3bに向かって漸減するように、計量部3a下部を円錐状或いは角錐状のテーパ面3fに成形してもよい。更に、分注部品3は、計量部3a下部をテーパ面3fに成形するのに加えて、図8に示すように、突出部3cの端面3dを突出部の中心軸Acに対して角度θ傾斜させてもよい。このようにすると、分注部品3は、吐出する液体の液切れを形状面から向上させることができる。
【0028】
上述のように、分注部品3は、吐出流路3bの吐出端外周に液体の吐出方向に突出する突出部3cを設けたので、微量液体を加圧気体によって吐出する際、突出部3cの周辺に液体が付着することを抑制することができ、分注精度を維持しつつ分注する液体の汚染を防止することができる。しかも、分注部品3は、計量部3aの下部内径を吐出流路3bに向かって漸減するように成形し、突出部3cの外面を計量部3aの吐出流路3b側の内面と略並行に成形している。これにより、分注部品3は、吐出流路3bの長さLfが長くなることを抑えつつ突出部3cの長さLpを吐出流路3bの長さLfよりも長くしている(Lp>Lf)。このため、分注部品3は、吐出する液体の量を安定させつつ、突出部3cの周辺に液体が付着することを抑制することができる。
【0029】
本発明に係わる分注部品の製造方法として、合成樹脂を材料とする射出成形法を挙げたが、分注部品の成形用金型の製作や成形加工において、微細な内径を持つ吐出流路部分の形成が困難であることが予測される。例えば、成形加工では、計量部のみを基板上に形成するように製作された金型によって成形を行った後、吐出流路部分を、レーザ加工や精密切削加工等によって形成して分注部品を製造することが考えられる。
【0030】
このような場合、吐出流路3bと接続される計量部3a下部が円錐状或いは角錐状のテーパ面3fに成形された分注部品3は、図9に示すように、計量部3aと吐出流路3bとの接続部分に平坦部3hを設け、吐出流路3bの内径が平坦部3hの内径よりも小さくなる断面構造を採ることも可能である。また、図10に示す分注部品5のように、平坦部5hを有すると共に、計量部5aの中心軸Acmと吐出流路5bの中心軸Acfがオフセットされた構造としてもよい。分注部品は、これらの構造としても、分注量から導かれる計量部3a,5aと吐出流路3b,5bの幾何寸法の範囲内においては分注精度に対して大きな影響を及ぼすことはない。
【0031】
尚、実施の形態1,2の分注部品は、計量部および吐出流路が断面円形のものについて説明したが、断面形状は円形以外の多角形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1の分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。
【図2】分注部品の断面正面図である。
【図3】分注部品の第1の変形例を示す断面正面図である。
【図4】分注部品の第2の変形例を示す断面正面図である。
【図5】分注部品の第3の変形例を示す断面正面図である。
【図6】実施の形態2の分注部品の断面正面図である。
【図7】分注部品の第1の変形例を示す断面正面図である。
【図8】分注部品の第2の変形例を示す断面正面図である。
【図9】分注部品の第3の変形例を示す断面正面図である。
【図10】分注部品の第4の変形例を示す断面正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1,3,5 分注部品
1a,3a,5a 計量部
1b,3b,5b 吐出流路
1c,3c 突出部
1d,3d 端面
1e,3e 曲面
1f,3f,5f テーパ面
3g テーパ面
3h,5h 平坦部
Ac 突出部の中心軸
df 吐出流路の内直径
Dm 計量部の内直径
Dp 突出部の外直径
Lf 吐出流路の長さ
Lm 計量部の長さ
Lp 突出部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定量の液体を計量する計量部と該計量部に保持された液体全体を加圧気体によって吐出する吐出流路とを備えた分注部品であって、
前記吐出流路の吐出端に前記液体の吐出方向に突出する突出部を設けたことを特徴とする分注部品。
【請求項2】
前記突出部は、端部の外直径Dpを前記吐出流路の内直径dfと前記計量部の内直径Dmに対してdf<Dp<Dmとなるように設定することを特徴とする請求項1に記載の分注部品。
【請求項3】
前記突出部の端面は、前記計量部に比べて撥水性が高く設定されていることを特徴とする請求項2に記載の分注部品。
【請求項4】
前記突出部の端面は、当該突出部の中心軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の分注部品。
【請求項5】
前記計量部は、前記吐出流路側の内径が前記吐出流路に向かって漸減することを特徴とする請求項2に記載の分注部品。
【請求項6】
前記計量部は、前記吐出流路側の内径が前記吐出流路に向かって漸減し、
前記突出部は、外面が前記計量部の前記吐出流路側の内面と略並行に成形されていることを特徴とする請求項2に記載の分注部品。
【請求項7】
前記計量部は、前記吐出流路側の内面が円錐状或いは角錐状又は曲面に成形されていることを特徴とする請求項6に記載の分注部品。
【請求項8】
前記突出部は、端面近傍の外面が円錐状或いは角錐状に成形されていることを特徴とする請求項6に記載の分注部品。
【請求項9】
前記突出部の端面は、当該突出部の中心軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項6に記載の分注部品。
【請求項10】
前記突出部は、当該分注部品からの突出長さLpが前記吐出流路の長さLfよりも長いことを特徴とする請求項6に記載の分注部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate