説明

分配器

【課題】繊維質成分を含む果汁飲料や薬剤等の流動体を確実に分配することができる分配器を提供する。
【解決手段】分配器6は分配器本体40と、この分配器本体40に設けられ流動体の流れ方向に形成された導出路42とを備えている。分配器本体40は、下方の液溜り部40aと、上方の導出部40bとからなり、導出部40b内は仕切板45によって導出路42に対応する空間45a毎に区画されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として繊維成分を含む果汁原料、飲料、薬剤等の液状の流動体中に混在する異物を検出し、これを除去する異物検出除去装置に用いる分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような繊維成分を含む果汁原料等の流動体中に混在する異物を除去するためにフィルタを通して異物の除去を図る場合、フィルタに繊維質成分が詰まって目詰まりを起こし、使用することができない。
【0003】
かかることから流動体中の異物を除去する装置として、検査対象である流動体を重力により複数の細路に導き、この細路を流れる間に検出部により流動体中の異物を検出し、この異物検出時にその検出信号により該当する細路の弁を開けて異物を排出させるようになったものが提案されている(特許文献1参照)。この際、流動体の分配器として、流動体を流量調整器を経て平板部の複数の流路に分割するものが用いられている。
【0004】
一方、繊維質成分が含まれる流動体中の異物を検出・除去する装置として、流動体が流れる管路中に透光性の検査用窓を設け、光源、映像装置によって検出された異物を同管路中に設けられたバルブ装置によって流動体とともに排除するようになされた異物検査システムが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、流動体を分配器に導入して、多数の流路内に流動体を分配し、流路毎に分配された流動体を排出する異物除去装置も提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−43695号公報
【特許文献2】特開2000−235004号公報
【特許文献3】特開2004−156960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献1に記載の装置では、扇型の扁平ノズル形状によって細路へ導くので、中央部の細路と両側部分の細路で流速に差が生じやすく、確実な異物除去ができないという問題点がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載の技術では、管路中で細流に分けることなく検出された異物を含む流動体を一括排除する構成であるから、単位除去量が大きくなり、異物混入密度の高い流動体においては損失が大きく適用することができない。
【0008】
また、特許文献3および4記載のものは、流動体を管路部から複数の流路に導いて流動体を分配するものであるが、分流路内において流動体の圧力の不均衡、あるいは流動体の流れの不均一が生じ、分流路内の分圧がゼロとなって全く流れなくなる流路が発生することがあったりして、流動体を均一に分配することができない場合がある。
【0009】
異物を確実に排除し、異物とともに排除される流動体量を少なくするためには、流路を細分化するとともに各流路を流れる流動体の流量および速度を一定に保つ必要がある。
【0010】
また、流動体の総流量、密度、粘度が変化しても分流性能に影響を及ぼさないことが重要な課題となる。
【0011】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、流動体の総流量、密度、粘度に関わらず、均一の流量および速度で分配することができ、このことにより各流路内の流動体中の異物を確実に除去し、異物とともに排除される流動体の損失を極力減らすことを可能とする分配器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、流動体の流路に一端が連通されるとともに他端が閉鎖された分配器本体と、分配器本体に設けられ流動体の流れ方向に形成された導出路とを備えたことを特徴とする分配器である。
【0013】
本発明は、分配器本体は下方の液溜り部と、上方の導出部とからなり、この上方の導出部は導出路に対応する空間毎に分割されていることを特徴とする分配器である。
【0014】
本発明は、分配器本体の上方の導出部は、格子状仕切板によって、導出路に対応する空間ごとに分割されていることを特徴とする分配器である。
【0015】
本発明は、分配器本体の上方の導出部は、液溜り部から上方に延び、互いに独立して形成された複数の隔室からなることを特徴とする分配器である。
【0016】
本発明は、分配器本体に設けられた導出路は、上方に向かって先細となるテーパー状導出路を含むことを特徴とする分配器である。
【0017】
本発明は、分配器本体の下方の液溜り部は、その底板が流体の流れ方向に沿って徐々に上昇することを特徴とする分配器である。
【0018】
本発明によれば、分配器本体に設けられた導出路から均等分割された流動体は、下流側の異物除去装置の分割流路に導かれる。この場合、流動体を分配器本体内で整流させて、均一な流量および流速をもって分割流路に導くことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、分配器本体に設けられた導出路から均等分割された流動体は下流側の異物除去装置の分割流路に導かれる。また流動体を分配器本体内で整流させて、均一な流量および流速をもって分割流路に導くことができる。
【0020】
また、本発明によれば処理流量、流動体の密度、粘度に関わらず、均一な流量および流速をもって分割流路に導くことができる。
【0021】
また、本発明によれば、異物とともに排出される流動体の排出量を可能な限り少なくすることができる。
【0022】
また、本発明は異物検出、除去方法に関わらず分割流路を有する装置に適用することができ、異物除去装置の除去性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して説明する。
【0024】
図1(a)(b)(c)により分配器について説明する。ここで図1(a)は分配器の側面図、図1(b)は分配器の正面図、図1(c)は分配器の平面図である。
【0025】
図1(a)(b)(c)に示すように、分配器は分配器本体40と、分配器本体40に接続された流動体の導入路6aとを有している。
【0026】
また分配器本体40は下方の液溜り部40aと、上方の導出部40bとからなり、上方の導出部40bは、図示しない異物除去装置本体の分割流路に対応する空間ごとに分割されている。すなわち、分配器本体40の導出部40bは互いに独立して形成された2列の隔室41,41からなっている。各隔室41,41は流動体の流れ方向に延びるとともに、各隔室41,41内には流動体の流れ方向に直交して配置された複数の仕切板45が設けられている。そしてこの仕切板45は異物除去装置本体の分割流路に対応する空間45a毎に上方の導出部40bを分割することができる。
【0027】
さらに導出部40bは異物除去装置本体の分割流路に、接続継手43を介してチューブ7により接続されている。
【0028】
また分配器本体40の底板40dは、導入路6a側が平坦状をなし、中央部から導入路6aの反対側に向かって徐々に上昇して上昇部46を形成している。
【0029】
図1において、分配器本体40の上方の導出部40bは、2本の隔室41,41からなるとともに、各隔室41,41内が仕切板45により仕切られて、導出部40b内が異物除去装置本体の分割流路に対応する空間45a毎に分割されているので、導入路6aから液溜り部40a内に流入する流動体を導出部40b内で分割流路毎に整流することができる。
【0030】
そして仕切板45により仕切られた各空間45a内に整流状態で流入する流動体をテーパー状導出路42、接続継手43およびチューブ7を介して確実に異物除去装置本体の分割流路へ導くことができる。
【0031】
このように導入路6aから液溜り部40a内に流入する流動体を導出部40bの各空間45a内で整流させ、異物除去装置本体の分割流路に、導出路42、接続継手43およびチューブ7を介して同一条件で導くことができる。
【0032】
ところで各隔室41内に設けられた仕切板45は、流動体の流れ方向に直交して設けられ、その下端は各隔室41の下端よりわずかに上方に位置している。この場合、仕切板45を隔室41の下端より更に液溜り部40a内まで下方へ延ばしてもよい。
【0033】
また、導出部40bを2列の隔室41により形成した例を示したが、隔室41は2列に限らず、隔室41を流動体の流れ方向に沿って4列以上設けてもよい。
【0034】
さらに、導出部40bを隔室41により形成することなく、導出部40bを単一の室から形成し、この単一の室からなる導出部40b内に格子状の仕切板45を設けて導出部40b内を異物除去装置本体の分割流路に対応する数だけ分割してもよい。この場合、仕切板45は流動体の流れ方向、および流動体の流れ方向に直交する方向に延びることになる。
【0035】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0036】
図示しないタンクに入れられている流動体はポンプにより導入路6aから分配器6に供給される。
【0037】
分配器6に流入した流動体は、分配器6の液溜り部40aから導出部40bに流入し、その後、導出部40bから導出路42、接続継手43、およびチューブ7を介して異物除去装置本体の分割流路に均等配分されて流入する。
【0038】
この間、分配器6内に流入路6aから導入された流動体を、分配器6により異物除去装置本体の分割流路へ均一かつ確実に分配することができる。すなわち、図1において、分配器本体40の上方の導出部40bは、2本の隔室41,41からなるとともに、各隔室41,41内が仕切板45により仕切られて、導出部40b内が異物除去装置本体の分割流路に対応する空間45a毎に分割されているので、導入路6aから液溜り部40a内に流入する流動体を導出部40b内で分割流路毎に整流することができる。そして仕切板45により仕切られた各空間45a内に整流状態で流入する流動体をテーパー状導出路42を介して確実に異物除去装置本体の分割流路へ導くことができる。
【0039】
このように導入路6aから液溜り部40a内に流入する流動体を導出部40bの各空間45a内で整流させ、接続継手43からチューブ7を介して異物除去装置本体の分割流路に同一条件で導くことができる。このため液溜り部40a内の流動体を均一な流量および流速をもって異物除去装置本体の分割流路まで導くことができる。
【0040】
このように本発明による分配器は、異物除去装置に適用することによって異物の除去精度を向上させ、異物とともに排除される流動体の損失を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による分配器であって、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は平面図である。
【符号の説明】
【0042】
6 分配器
7 チューブ
40 分配器本体
40a 液溜り部
40b 導出部
40d 底板
41 隔室
42 テーパ状導出路
45 仕切板
45a 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動体の流路に一端が連通されるとともに他端が閉鎖された分配器本体と、
分配器本体に設けられ流動体の流れ方向に形成された導出路とを備えたことを特徴とする分配器。
【請求項2】
分配器本体は下方の液溜り部と、上方の導出部とからなり、この上方の導出部は導出路に対応する空間毎に分割されていることを特徴とする請求項1記載の分配器。
【請求項3】
分配器本体の上方の導出部は、格子状仕切板によって、導出路に対応する空間ごとに分割されていることを特徴とする請求項2記載の分配器。
【請求項4】
分配器本体の上方の導出部は、液溜り部から上方に延び、互いに独立して形成された複数の隔室からなることを特徴とする請求項2記載の分配器。
【請求項5】
分配器本体に設けられた導出路は、上方に向かって先細となるテーパー状導出路を含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか記載の分配器。
【請求項6】
分配器本体の下方の液溜り部は、その底板が流体の流れ方向に沿って徐々に上昇することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の分配器。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−12499(P2008−12499A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189205(P2006−189205)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【特許番号】特許第3987093号(P3987093)
【特許公報発行日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【出願人】(000111247)ニューリー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】