説明

分離膜の運転方法および装置

【課題】分離膜の劣化を防ぎつつ、性能を安定させて運転を継続することができる分離膜の運転方法および装置を提供する。
【解決手段】分離膜に原水を通水し、透過水と濃縮水とに分離する運転中に、分離膜への原水供給系に、連続的または断続的に、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加することを特徴とする分離膜の運転方法および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜、特に逆浸透膜(RO膜)またはナノろ過膜(NF膜)の運転に際し、性能を安定させて運転することができる分離膜の運転方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海水の淡水化や超純水、各種製造プロセス用水を得る方法として、例えばRO膜やNF膜を分離膜とするモジュールを用い、原水中からイオン成分や低分子成分を分離する方法が知られている。以前と比較すると、RO膜やNF膜の性能は格段に向上し、高阻止性能・低圧力運転が可能な膜も使われている。
【特許文献1】特開2003−117360号公報
【特許文献2】特開昭58−109182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ポリアミド素材などをスキン層に持つRO膜やNF膜は、酸化劣化しやすく、特に、原水中に次亜塩素酸ナトリウムをはじめとする酸化性の物質が含まれる場合や、原水のORP(酸化還元電位)が高い場合、膜の劣化速度は早まり、寿命を短くする原因となっている。酸化劣化に比較的強いピペラジンアミド系の膜もあるが、性能が十分ではない。
【0004】
本発明の課題は、このような実情に鑑み、分離膜の劣化を防ぎつつ、性能を安定させて運転を継続することができる分離膜の運転方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述のような実情に対し、本発明者らは鋭意検討を行った結果、ある種の有機物質を、連続的または断続的に分離膜へ供給することで、特にRO膜やNF膜の阻止性能を安定させて運転することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明に係る分離膜の運転方法は、分離膜に原水を通水し、透過水と濃縮水とに分離する運転中に、分離膜への原水供給系に、連続的または断続的に、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加することを特徴とする方法からなる。本方法により、従来分離膜の阻止性能が経時的に低下してしまうシステムに対し、安定した運転を継続することが可能となる。ここで言う原水供給系とは、分離膜に至る前段全てを指しており、配管やタンク等を含む概念である。
【0007】
この分離膜の運転方法においては、上記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を断続的に添加する場合、添加の間隔を一定時間毎とすることができる。このようにすれば、単に一定間隔で添加すればよいので、簡易な方法で安定した運転が実現できる。自動制御により添加することもできるし、自動制御が困難な場合には、一定時間毎に手動で添加してもよい。なお間隔としては、1日〜1ヶ月に1回の添加とするのが良い。1日未満だと、添加頻度が高すぎ、薬品コストもかさむし、頻度を上げることにより運転をさらに安定化させる効果は期待できない。1ヶ月を超えてしまうと、逆に頻度が低すぎ、安定した運転ができなくなってしまう。
【0008】
あるいは、断続的に添加する場合、分離膜の透過水水質が設定された基準値以下になった時に添加することもできる。本方法によると、適切なタイミングで添加することができるため、薬品の無駄な消費もなく、より安定した運転が可能となる。設定される基準値としては、特に限定されないが、そのシステムで必要とされる透過水水質に応じて設定されるのが良い。一例として、阻止率によって基準値を設定する場合、初期の阻止率に対して、5%〜30%の割合で悪化した値とするのが良い。5%未満では添加の効果が低く、30%を超える設定では、安定した運転とは言えない。なお、ここで言う「5%〜30%程度の割合で悪化した値」と言うのは、例えば「初期に90%の阻止率を持つ膜が10%の割合で悪化する状態」とは、90%×0.90=81%のことを指し、90%−10%=80%のことではない。
【0009】
また、断続的に添加する場合、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する時間を、定められた一定時間とすることもできる。添加時間としては、5分間〜7日間、好ましくは5分間〜1日間、さらに好ましくは5分間〜3時間に設定するのが良い。5分間未満では効果が低く、7日間を超えると、もはや断続添加とは言えない。
【0010】
また、断続的に添加する場合、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する時間を、分離膜の透過水水質がある基準以上になるまでの間とすることもできる。設定される基準値としては、特に限定されないが、そのシステムで必要とされる透過水水質に応じて設定されるのが良い。一例として、阻止率によって基準値を設定する場合、添加前の阻止率に対して、5%〜50%の割合で、かつ初期の阻止率を上回らない範囲で上昇した値とするのが良い。5%未満では添加の効果があるとは言えず、また50%を超える上昇率を達成することは困難である。なお、ここで言う割合の計算は、上述したのと同じ考え方に基づくものである。
【0011】
また、連続的に添加する場合、分離膜の透過水水質に応じて、ポリフェノールを含む有機物質を含む水の添加量を制御することができる。本方法を用いることで、有機物質の使用量を最小限に抑え、効率的に分離膜の安定運転を行うことが可能となる。
【0012】
分離膜へ供給される原水として、pH=7における酸化還元電位(ORP)が+200mV以上であることが好ましい。ORPは水が酸化性雰囲気であるかどうかの指標となるものであり、この値が大きい水は、酸化傾向を持つ水である。原水に次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤が含まれている場合は、当然酸化傾向を持つ水となるが、明らかな酸化剤を含んでいない場合でも、高いORP値を示す場合がある。本方法は、このようなケースにも適用できるものであり、効果的な対策となりうるものである。具体的には、ORPが+200mV以上、より好ましくは+300mV以上、さらに好ましくは+400mV以上の原水であることが望ましい。ORPは、相対評価に用いられることが多いが、本発明者らの経験上+200mV以上で酸化的になっているものと考えられる。
【0013】
上記分離膜としては、逆浸透膜またはナノろ過膜を使用することが好ましい。この方法を用いることによって、膜の塩類阻止性能、シリカやホウ素等の非解離成分阻止性能、有機成分阻止性能を安定させて運転することが可能となる。
【0014】
また、上記分離膜として、スパイラル型膜エレメントを使用することが好ましい。スパイラル型膜エレメントは、コストも安く、汎用性も高いため、この構造の膜を用いるメリットは大きい。
【0015】
また、上記分離膜として、少なくとも芳香族ポリアミド系素材を含む膜を使用することが好ましい。より好ましい素材は、全芳香族ポリアミド、さらに好ましくは架橋全芳香族ポリアミドである。膜にポリアミド系素材を含むことで、安定運転の効果は高いものとなる。
【0016】
また、上記分離膜として、500mg/L塩化ナトリウム水溶液の阻止率が、99%以下の性能を持つ分離膜を使用することが好ましい。より好ましい阻止率の範囲は、10%以上99%以下、さらに好ましくは20%以上98.5%以下、さらに好ましくは98%以下、さらに好ましくは30%以上98%以下である。この方法を用いることで、分離膜の安定的な運転がより効率よく実現する。阻止率99%を超える膜には、安定運転の効果が低い。阻止率は、測定時の温度や透過流束によって異なるので、メーカーがその膜の性能を測定する標準的な条件を適用するか、スパイラル型膜エレメントの場合には、25℃、1.0m/dayの透過流束を目安に測定を行うのが良い。本願中で言う阻止率とは、特に断りのない限り、この方法で測定されたものを指している。
【0017】
また、上記有機物質の平均分子量としては、200〜5000であることが好ましい。より好ましい平均分子量は、200〜3000、さらに好ましくは200〜2000である。平均分子量が200未満だと、有機物質が膜を透過してしまう場合があるため効果が薄い。平均分子量が5000を超えると、膜のファウリングを引き起こして、透過流束の低下を招くのみで、安定運転には寄与しない。
【0018】
また、上記有機物質としては、タンニン酸を用いることが好ましい。ポリフェノール類の中でもとりわけタンニン酸の効果が高く、この物質を用いるのが良い。
【0019】
上記タンニン酸としては、加水分解型タンニンを用いることができる。タンニン酸には加水分解型と縮合型があり、とりわけ前者の方が効果が高い。
【0020】
また、上記タンニン酸として、五倍子を原料として作られたものを用いることが好ましい。五倍子から抽出されたタンニン酸は、一般に平均分子量が約1700程度のものが多く、安定運転に好適であるものと推定される。
【0021】
本発明に係る分離膜の運転装置は、分離膜に原水を通水し、透過水と濃縮水とに分離する運転中に、分離膜への原水供給系に、連続的または断続的に、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段を有することを特徴とするものからなる。
【0022】
上記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、断続的に添加する場合、添加の間隔を一定時間毎とすることができる。
【0023】
また、上記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、断続的に添加する場合、分離膜の透過水水質が設定された基準値以下になった時に添加することもできる。
【0024】
また、上記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、断続的に添加する場合、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する時間を、定められた一定時間とすることができる。
【0025】
また、上記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、断続的に添加する場合、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する時間を、分離膜の透過水水質がある基準以上になるまでの間とすることもできる。
【0026】
上記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、連続的に添加する場合、分離膜の透過水水質に応じて、ポリフェノールを含む有機物質を含む水の添加量を制御することができる。
【0027】
分離膜へ供給される原水としては、pH=7における酸化還元電位(ORP)が+200mV以上であることが好ましい。
【0028】
また、上記分離膜は、逆浸透膜またはナノろ過膜からなることが好ましい。
【0029】
さらに、上記分離膜として、スパイラル型膜エレメントが使用されていることが好ましい。
【0030】
また、上記分離膜として、少なくとも芳香族ポリアミド系素材を含む膜が使用されていることが好ましい。
【0031】
また、上記分離膜として、500mg/L塩化ナトリウム水溶液の阻止率が、99%以下の性能を持つ分離膜が使用されていることが好ましい。
【0032】
上記有機物質の平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。
【0033】
また、上記有機物質として、タンニン酸が用いられることが好ましい。
【0034】
タンニン酸としては、加水分解型タンニンが用いられることが好ましい。
【0035】
また、タンニン酸としては、五倍子を原料として作られたものが用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を、連続的または断続的に分離膜へと供給することによって、分離膜の酸化劣化が起こりやすい原水においても、安定した性能で運転を継続することができ、産業上の利用価値は、非常に高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明の内容を制限するものではない。
【0038】
本発明の一実施態様に係る分離膜の運転方法および装置を、図1を参照して説明する。図1は本実施態様に係る分離膜の運転方法を実施するための、分離膜の運転装置の概略機器系統図である(圧力計、流量計、弁などは適宜省略してある)。1は分離膜へと供給される原水のタンク(供給水タンク)、2は加圧ポンプ、3は分離膜モジュール、4は圧力調節弁で、4〜9はボール弁からなる弁、10は薬液タンク(有機物質水溶液貯留タンク)、11は薬注ポンプ、12は水質計を、それぞれ示している。なお、分離膜モジュール3は、分離膜そのものである膜エレメント31と、膜エレメントを格納するための耐圧容器であるベッセル32から成る。
【0039】
通常の運転時は、前段からの水、例えば除濁処理された原水を、供給水タンク1に受ける。弁5、7を開、弁4を所定の圧力になるように開、弁6、8、9を閉として、加圧ポンプ2にて加圧された原水を、分離膜モジュール3で濃縮水と透過水に分離し、濃縮水はブロー、透過水は後段の装置へ送水される。なお、ボール弁6および7を適宜調整し、濃縮水を一部循環する場合もある。
【0040】
薬液タンク10には、あらかじめ所定の濃度とした有機物質水溶液を貯留しておく。水質計12がある基準値以下となったら、薬注ポンプ11へ電気信号が送られ、ポンプ11が起動する。薬注ポンプ11は、あらかじめ所定の注入量となるように設定しておく。
【0041】
注入開始後、水質計12がある基準値以上となったら、薬注ポンプ11へ電気信号が送られ、ポンプ11が停止する。
【0042】
なお、断続的に添加を行う場合で、一定時間毎に添加を行う場合には、水質計12からの電気信号は必要なく、一定時間毎に、自動または手動で、薬注ポンプ11を起動すればよい。また、連続的に添加を行う場合には、薬注ポンプ11は常に起動しておく。
【0043】
有機物質の添加中、後段への支障がなければ、通常の運転を停止する必要はない。有機物質の透過水への漏洩が見られる場合で、後段への支障が生じ得る場合には、添加中に弁5を閉、弁9を開として、透過水をブローすることもできるし、もしくは弁5を閉、弁8を開として、透過水を循環することもできる。循環とする場合には、弁7を閉、弁6を開として、濃縮水も循環してもよい。この場合には、薬液濃度が一定濃度に達した時点で、薬注ポンプ11を停止する。
【0044】
上記実施の形態では、1モジュールの形態を例示したが、クリスマスツリー状の配置、2段ROなど、複数エレメントを含む複数モジュールで構成される分離膜装置にも本発明は適用できる。
【0045】
添加する薬品である有機物質の濃度は、特に限定されないが、分離膜モジュール入口において0.1〜200mg/L、好ましくは0.5〜100mg/Lであることが、効率良い処理をするために好ましい。0.1mg/L未満では効果が薄く、200mg/Lを超えるとファウリングを起こす場合があり、好ましくない。
【0046】
本発明で言うポリフェノールとは、複数の水酸基が結合した芳香族化合物を総称した、一般的なポリフェノール類のことを指す。ポリフェノールとしては例えば、アントシアニン、カテキン、タンニン、ルチン、ケルセチン、イソフラボン、フラボノイド、フミン類、フルボ酸、などが挙げられるが、特に限定はされない。
【0047】
タンニンはタンニン酸、タンニン類とも呼ばれ、混同して用いられるが、本願中では全て同義で用いている。また、五倍子タンニンのことをガロタンニンと呼ぶこともある。なお五倍子とは、ヌルデ属植物の虫コブのことである。
【0048】
タンニン酸には、加水分解型と縮合型がある。前者の原料の例としては、五倍子、没食子、チェストナット(Chestnut)、オーク(Oak Wood)、ユーカリプタス(Eucalyptus)、ディビディビ(Divi-Divi)、タラ(Tara)、スマック(Sumac)、ミラボラム(Myrabolam)、アルガロビア(Algarobilla)、バロニア(Valonea)、胡桃、栗、木苺、グミ、ザクロ、アカメガシワ、ウルシ科、サンシュユ、ゲンノショウコ、などが挙げられる。後者の原料の例としては、ケプラチョ(Quebracho)、ビルマカッチ(Burma Cutch)、ワットル(Wattle)、ミモザ(Mimosa)、スプルース(Spruse)、ヘムロック(Hemlock)、マングローブ(Mangrove)、カシワ樹皮(Oak bark)、アバラム、ガンビア(Gambier)、茶、柿渋、ユキノシタ、ブドウ、リンゴ、蓮根、コーヒー、しそ、ボケ、椿、ローズマリー、パセリ、サルビアの花、ヒマワリ、などが挙げられる。なお、加水分解型はピロガロール型(Hydrolyzable Tannin)、縮合型はカテコール型(Condensel Tannin)とも呼ばれる。
【実施例】
【0049】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0050】
実施例1
有機物質として五倍子タンニンを用いて、図1に示す装置にて、前記方法により連続運転を行った。タンク1に受けた原水は、前段の膜除濁装置にて除濁処理された地下水であり、運転期間中の導電率は、平均20mS/m前後で安定していた。また、ORPは平均+600mVであり、酸化傾向を持つ水であった。膜は日東電工社製ES-15-D8を用いた。薬液濃度は、分離膜モジュールの入口で20mg/Lとなるように調整した。水質計にて、透過水の導電率を監視し、次の条件で有機物質が断続的に添加されるように設定した。
・1mS/m以上:添加開始
・0.7mS/m以下:添加停止
【0051】
実施例2
有機物質として五倍子タンニンを用いて、図1に示す装置にて、前記方法により連続運転を行った。タンク1に受けた原水は、前段の膜除濁装置にて除濁処理された地下水であり、運転期間中の導電率は、平均20mS/m前後で安定していた。また、ORPは平均+600mVであり、酸化傾向を持つ水であった。膜は日東電工社製ES-15-D8を用いた。水質計にて、透過水の導電率を監視し、次の条件で有機物質が断続的に添加されるように設定(比例制御)した。(y:有機物質の分離膜モジュール入口における濃度[mg/L]、x:透過水導電率[mS/m])
・x<0.7 のとき: y=0 (添加停止)
・0.7≦x<1.4のとき: y=(200/7)x−20
・1.4≦xのとき: y=20
【0052】
実施例3
有機物質として五倍子タンニンを用いて、図1に示す装置にて、前記方法により連続運転を行った。タンク1に受けた原水は、前段の膜除濁装置にて除濁処理された地下水であり、運転期間中の導電率は、平均20mS/m前後で安定していた。また、ORPは平均+600mVであり、酸化傾向を持つ水であった。膜は日東電工社製ES-15-D8を用いた。水質計にて、透過水の導電率を監視し、次の条件で有機物質が連続的に添加されるように設定(比例制御)した。(y:有機物質の分離膜モジュール入口における濃度[mg/L]、x:透過水導電率[mS/m])
・x<0.7 のとき: y=5
・0.7≦x<1.4のとき: y=(100/7)x−5
・1.4≦xのとき: y=15
【0053】
比較例1
実施例1において、有機物質添加を実施しない以外は、実施例1と同じ方法にて処理を行った。
【0054】
上記条件にて連続運転を実施し、運転初期、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後それぞれの性能評価を行った。なお、透過水量は、運転初期を100とした相対値で示した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
有機物質の添加を行わない比較例1では、経時的に透過水質の悪化、透過水量の上昇が見られ、酸化劣化の傾向を示した。一方、有機物質の断続的添加を実施した実施例1、2および連続的添加を実施した実施例3では、連続運転において、安定した性能を維持できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る分離膜の運転方法および装置は、分離膜の安定運転の継続が要求されるあらゆる用途に適用でき、とくに逆浸透膜やナノろ過膜を用いたシステムに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施態様に係る分離膜の運転装置の機器系統図である。
【符号の説明】
【0059】
1 原水タンク(供給水タンク)
2 加圧ポンプ
3 分離膜モジュール
4、5、6、7、8、9 弁
10 薬液タンク(有機物質水溶液貯留タンク)
11 薬注ポンプ
12 水質計
31 膜エレメント
32 耐圧容器としてのベッセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜に原水を通水し、透過水と濃縮水とに分離する運転中に、分離膜への原水供給系に、連続的または断続的に、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加することを特徴とする、分離膜の運転方法。
【請求項2】
断続的に添加する場合、添加の間隔を一定時間毎とすることを特徴とする、請求項1に記載の分離膜の運転方法。
【請求項3】
断続的に添加する場合、分離膜の透過水水質が設定された基準値以下になった時に添加することを特徴とする、請求項1に記載の分離膜の運転方法。
【請求項4】
断続的に添加する場合、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する時間を、定められた一定時間とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項5】
断続的に添加する場合、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する時間を、分離膜の透過水水質がある基準以上になるまでの間とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項6】
連続的に添加する場合、分離膜の透過水水質に応じて、ポリフェノールを含む有機物質を含む水の添加量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の分離膜の運転方法。
【請求項7】
分離膜へ供給される原水として、pH=7における酸化還元電位(ORP)が+200mV以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項8】
前記分離膜として、逆浸透膜またはナノろ過膜を使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項9】
前記分離膜として、スパイラル型膜エレメントを使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項10】
前記分離膜として、少なくとも芳香族ポリアミド系素材を含む膜を使用することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項11】
前記分離膜として、500mg/L塩化ナトリウム水溶液の阻止率が、99%以下の性能を持つ分離膜を使用することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項12】
前記有機物質の平均分子量が、200〜5000であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項13】
前記有機物質として、タンニン酸を用いることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の分離膜の運転方法。
【請求項14】
前記タンニン酸として、加水分解型タンニンを用いることを特徴とする、請求項13に記載の分離膜の運転方法。
【請求項15】
前記タンニン酸として、五倍子を原料として作られたものを用いることを特徴とする、請求項13または14に記載の記載の分離膜の運転方法。
【請求項16】
分離膜に原水を通水し、透過水と濃縮水とに分離する運転中に、分離膜への原水供給系に、連続的または断続的に、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段を有することを特徴とする、分離膜の運転装置。
【請求項17】
前記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、断続的に添加する場合、添加の間隔を一定時間毎とすることを特徴とする、請求項16に記載の分離膜の運転装置。
【請求項18】
前記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、断続的に添加する場合、分離膜の透過水水質が設定された基準値以下になった時に添加することを特徴とする、請求項16に記載の分離膜の運転装置。
【請求項19】
前記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、断続的に添加する場合、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する時間を、定められた一定時間とすることを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項20】
前記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、断続的に添加する場合、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する時間を、分離膜の透過水水質がある基準以上になるまでの間とすることを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項21】
前記ポリフェノールを含む有機物質を含む水を添加する手段において、連続的に添加する場合、分離膜の透過水水質に応じて、ポリフェノールを含む有機物質を含む水の添加量を制御することを特徴とする、請求項16に記載の分離膜の運転装置。
【請求項22】
分離膜へ供給される原水として、pH=7における酸化還元電位(ORP)が+200mV以上であることを特徴とする、請求項16〜21のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項23】
前記分離膜が、逆浸透膜またはナノろ過膜からなることを特徴とする、請求項16〜22のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項24】
前記分離膜として、スパイラル型膜エレメントが使用されていることを特徴とする、請求項16〜23のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項25】
前記分離膜として、少なくとも芳香族ポリアミド系素材を含む膜が使用されていることを特徴とする、請求項16〜24のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項26】
前記分離膜として、500mg/L塩化ナトリウム水溶液の阻止率が、99%以下の性能を持つ分離膜が使用されていることを特徴とする、請求項16〜25のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項27】
前記有機物質の平均分子量が、200〜5000であることを特徴とする、請求項16〜26のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項28】
前記有機物質として、タンニン酸が用いられることを特徴とする、請求項16〜27のいずれかに記載の分離膜の運転装置。
【請求項29】
前記タンニン酸として、加水分解型タンニンが用いられることを特徴とする、請求項28に記載の分離膜の運転装置。
【請求項30】
前記タンニン酸として、五倍子を原料として作られたものが用いられることを特徴とする、請求項28または29に記載の記載の分離膜の運転装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−167713(P2007−167713A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365250(P2005−365250)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】