説明

分離装置

【課題】フィルター部のメンテナンスフリー化と、雨水や工場排水の再利用を可能とすることを達成した排水分離装置を提供する。
【解決手段】分離装置1は、流水に含まれる固形状の不純物を分離する装置において、分離槽2と、分離槽2の内部を流入室5と流出室6に仕切るフィルター部7と、流入室5に設けた流水の供給部9と、流出室6に設けた流水の排出部10と、流入室5の下方に設けた不純物の捕捉部11とを備え、供給部9と排出部10は分離槽2の側部上方に対向配置され、フィルター部7は供給部9から供給される流水が流入室5内で分流して夫々水平方向の旋回流を形成するように2つの辺を有するV型に形成され、フィルター部7の下端辺は分離槽2の底部より上方に位置し、該下端辺と流出室5の側部が仕切板6aで閉鎖されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水道等の流水に含まれる固形状の不純物を分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部に敷設される下水道の雨水排水処理施設に流入する雨水などの排水は、一部は雨水貯留浸透施設などにより地中に貯留若しくは排出され、残りは河川等に放流される。そして下水道を流通する雨水の中には土砂、種々のゴミ類、紙類、落ち葉、等の固形状の不純物が混入しており、それら不純物が河川に流入することで水質汚濁、環境汚染の原因となり、また未処理のままで雨水貯留浸透施設に流入すると、施設のメンテナンスを頻繁に行う必要があり、コスト的にも不利である。特に浸透用施設では浸透機能の低下を生じる原因となり、長期間での利用が困難となる場合がある。そこで、下水道の一部に固形状の不純物を分離する排水の分離装置が設けられる。
【0003】
排水の分離装置として、排水に旋回流(スワール)を発生させ、その旋回流により固形状の不純物を分離する分離装置が知られている(例えばドイツのUFT社の商品名フルードセップ)。また、油に含まれる固形状の不純物を分離するために、フィルター方式で不純物を分離するようにした装置が特許文献1に記載されている。
【0004】
この特許文献1に開示された分離装置は、分離槽内に直径の小さい中空管を多数環状に配列して環状体からなるフィルター部を形成し、不純物を含む油を環状体の外側から接線方向に供給して旋回流を生成させる。その旋回流により環状体の外側に付着した固形状の不純物を分離しており、それによってフィルターメンテナンスの手間を少なくするようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−275957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の旋回流を利用した分離槽はフィルター部を有しないためメンテナンスが容易であるが、浮遊性の不純物や細かい固形状の不純物を確実に分離させるのが困難である。
【0007】
特許文献1に開示されている分離装置は、フィルター部を有するので細かい固形状の不純物も分離可能である。しかし開示された構造では、分離した不純物がフィルターの外周面に沿って旋回を続ける間に、旋回流の中心領域に収束してフィルターに再付着する恐れがあるので、フィルター部のメンテナンスフリーの問題が完全に解決されているとは言い難い。
【0008】
以上から、本発明の目的は、フィルター部のメンテナンスフリー化と、雨水や工場排水の再利用を可能とすることを達成した排水分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の分離装置は、流水に含まれる固形状の不純物を分離する装置において、分離槽と、分離槽の内部を流入室と流出室に仕切るフィルター部と、流入室に設けた流水の供給部と、流出室に設けた流水の排出部と、流入室の下方に設けた不純物の捕捉部とを備え、供給部と排出部は分離槽の側部上方に対向配置され、フィルター部は供給部から供給される流水が流入室内で分流して夫々水平方向の旋回流を形成するように2つの辺を有するV型に形成され、フィルター部の下端辺は分離槽の底部より上方に位置し、該下端辺と流出室の側部が仕切板で閉鎖されていることを特徴とするものである。
【0010】
また第2の分離装置は、上記第1の分離装置において、フィルター部の下端と流入室の側部との間が床板で閉鎖され、その床板の少なくとも一箇所に貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また第3の分離装置は、上記第1または第2の分離装置において、分離槽における側部の内側が円形、方形、多角形または楕円形に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また第4の分離装置は、上記第1ないし第3の分離装置のいずれかにおいて、フィルター部は断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成され、各ウェッジワイヤの頭部で流入室側の面が形成されると共に、各ウェッジワイヤの頭部から先端部に向かう軸線が前記のように形成される旋回流の下流側に傾斜していることを特徴とするものである。
【0013】
また第5の分離装置は、上記第1ないし第4の分離装置のいずれかにおいて、フィルター部の上部に流入室から流出室へ排水を溢出させるオーバーフロー部が設けられ、流出室の下部から排出部まで延長する案内路が設けられ、流出室の下部の排水が案内路を通って排出部から排出できると共に、流出室の上部に固形状の浮遊性不純物または油分が滞留できるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の分離装置は、流水に含まれる固形状の不純物を分離する装置において、分離槽と、分離槽の内部を流入室と流出室に仕切るフィルター部と、流入室に設けた流水の供給部と、流出室に設けた流水の排出部と、流入室の下方に設けた不純物の捕捉部とを備え、供給部と排出部は分離槽の側部上方に対向配置され、フィルター部は供給部から供給される流水が流入室内で分流して夫々水平方向の旋回流を形成するように2つの辺を有するV型に形成され、フィルター部の下端辺は分離槽の底部より上方に位置し、該下端辺と流出室の側部が仕切板で閉鎖されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成した分離装置によれば、供給部から供給される流水がV型に形成したフィルター部で分流し、フィルター部の2辺と分離槽の側部との間に、互いに水平に逆旋回する2つの旋回流が形成される。旋回流に含まれるフィルターの目やスリットの幅より小さい固形状の不純物はフィルター部で阻止され、流水のみがフィルター部を通過して流出室側に流入する。フィルター部で阻止された固形状の不純物は、旋回流の作用によりフィルター部の表面から剥離され、比重の軽い浮遊性の不純物は旋回流により分離槽の上部を浮遊回転し、滞留する。次いで比重が1より大きい不純物は次第に下降して流入室の下方に設けた不純物の捕捉部に堆積する。その際、フィルター部の下端が分離槽の底部より上方に位置しているため、流入室の上方に形成される互いに逆方向に旋回する2つの水平な旋回流は、フィルター部の下端より下方部分までその旋回力は延長するが、その延長部分ではフィルター部が存在しないため逆方向の旋回力が互いに干渉して夫々の旋回流は相殺されてほとんど消滅する。そのため下方に沈降する不純物は旋回流に依存する浮力を失い、急速に下降して下方に設けた不純物の捕捉部に堆積することができる。また、堆積領域には旋回流がほとんど存在しないので、堆積した不純物が再浮上することもない。従ってこのように構成された分離装置は、フィルター部に不純物が付着することを阻止するに充分な旋回流を発生させることと、不純物の沈降を促進させるために水平方向に逆旋回する2つの旋回流がお互いに干渉することにより旋回力を減少〜消滅させるという、相反する2つの要求を共に達成することができる。
【0016】
また第2の分離装置では、上記第1の分離装置において、フィルター部の下端と流入室の側部との間を床板で閉鎖し、その床板の少なくとも一箇所に貫通孔を形成することができる。このように構成すると、比重の大きい不純物は床板の貫通孔を通って流入室の下方に設けた不純物の捕捉部に堆積する。その際、流入室の上方に形成される互いに逆方向の2つの水平な旋回流が流入室の下方へ延長しようとする力は、床板の存在しない場合よりさらに制限される。
【0017】
また第4の分離装置では、上記第1ないし第3のいずれかの分離装置において、断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンでフィルター部を構成し、各ウェッジワイヤの頭部で流入室側の面を形成すると共に、各ウェッジワイヤの頭部から先端部に向かう軸線を前記形成される旋回流の下流側に傾斜することができる。
【0018】
このようにフィルター部をウェジワイヤスクリーンで構成するとミクロンオーダの微細な固形状の不純物も効率よく分離できる。また、ウェッジワイヤスクリーンを構成する各ウェッジワイヤの頭部で流入室側の面を形成し、その頭部の配列形状を供給部から供給される流水に水平方向の旋回流を形成させるように構成したので、ウェッジワイヤスクリーンに付着する微細な固形状の不純物もその旋回流で剥離することができる。そのため微細なスリットを有するウェッジワイヤスクリーンの目詰まりを抑制できる。特に、スリットの目詰まりの原因になり易く比重が重い土砂等の微細形状の固形物は、ウェッジワイヤスクリーンのウェッジワイヤの頭部に接触、衝突すると跳ね上げられ、それら固形物はスワール(渦流)のティーカップ現象によりスクリーンの表面部とは離れた旋回流の中心部に集まり易くなるので、スリットの目詰まり発生の抑制効果がある。
【0019】
さらに、各ウェッジワイヤの頭部から先端部に向かう軸線が前記形成される旋回流の下流側に傾斜されているので、旋回流の上流側における頭部の端部が下流側における頭部の端部より流入室内側に突出する。そのため旋回流が突出した端部に衝突してコアンダ効果(Coanda effect)によりスリットに効率よく引き込まれることになり、結果としてフィルター部の通水率を実質的に増大させることができる。従って、数ミクロン〜1mm程度の固形状の不純物を分離可能なようにスリットの間隔を小さくしても、通水効率が高いためフィルター部の面積を抑制でき、装置のコンパクト化を達成できる。
【0020】
そして最近では、水資源の有効利用のために雨水の再利用が求められており、例えば地表に降った雨水に含まれる固形物の分離に、ウェッジワイヤスクリーンのスリット幅が100μm〜300μmのものを利用すれば、そこを通過した雨水はポンプ機器故障等の機器への影響も少なく散水等の雑排水としての再利用が可能となり、またこれにより高度利用のため再処理工程が容易となる。
【0021】
また第5の分離装置では、さらに上記第1ないし第4のいずれかの分離装置において、フィルター部の上部に流入室から流出室へ排水を溢出させるオーバーフロー部を設け、流出室の下部から排出部まで延長する案内路を設け、流出室の下部の排水が案内路を通って排出部から排出できると共に、流出室の上部に固形状の浮遊性不純物または油分が滞留できるように構成することができる。
【0022】
このように構成すると、供給部から計画値以上の排水の流入があった場合や、フィルター部に問題が生じ通水能力が低下した場合には、流入室の上部に滞留する浮遊性の不純物はオーバーフロー部から流出室側に溢出されるが、流出室の下部から排出部まで延長する案内路が設置されているので、浮遊性の不純物や油分が流出することはない。そして流出部の上部に滞留する浮遊性の不純物や油分は、ある程度の量に達した時点で外部に回収すればよい。
【0023】
このように本装置は、雨水等の排水に含まれる固形状の不純物を除去するために沈降剤や凝集剤等の薬剤を利用しなくても、流水が有する流速エネルギーの利用で発生する旋回流と、微細な不純物を分離可能なフィルターにより、目詰まりすることなく効率良く固形物を分離することが可能で、その処理のためには電気エネルギーを使用しない、非常にエコロジーで環境に優しい流水分離装置である。特に下水道では自然勾配を利用して排水することを基本としているので本装置の利用は最適であり。また地下の雨水貯留槽からから地上や河川に排水する必要がある場合や、遠距離の箇所に送水する必要ある場合には、ポンプ等で圧送する必要があるが、その際の圧送に必要なポンプ稼動用電気エネルギーだけの最小限のエネルギーでの分離処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明に係る排水分離装置の最良の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0025】
図1(a),(b)は、第1実施例による分離装置1を示し、図2は図1の分離装置1における旋回流発生状態を示す図である。なお以下の実施形態は流水として道路や下水道などの雨水排水を例に記載するが、本発明はこれに限らず、河川等から取水する工業用水のような流水や工場内で発生する廃水処理やその再利用にも適用できる。
【0026】
分離装置1の主要部である分離槽2は、上部が開放された平断面円形で円筒状の側壁4を有する有底筒形の槽本体3を有し、この槽本体3の内部はV字形に形成されたフィルター部7によって流入室5と流出室6に仕切られ、排水の供給部として、流入室5の側壁上方に排水を導入するための供給管9を挿通させて設け、その底部に不純物の捕捉部11を設けている。また、排水の排出部として、流出室6の側壁の上方に排水を排出するための排水管10を挿通させて設け、下部から排水管10まで立ち上がった案内路13を設けている。案内路13はフィルター部7の上部より高くなるように設置されており、且つ、案内路13上部は開放されているか、空気排出口が取り付けてあり、排水される際には案内路13の内部が負圧にならないようにされている。
【0027】
供給管9と排水管10は互いに対向配置され、側壁4の位相角度で表わすと実質的に180°の位置で互いに対向している。また、フィルター部7の下端は分離槽2の底部より上方に位置しており、その下端と流出室6の側部の間は仕切板6aで閉鎖されている。
【0028】
槽本体3の材質は、たとえばコンクリート製、鋼製、FRP(繊維強化プラスチック)製、あるいはポリエチレンなどの樹脂製であり、下水道系統に設置する場合は下水道の管路に合わせて地中に埋設されるが、その上部は地表に露出されて着脱自在な鉄板などの蓋体(図示せず)で閉塞される。
【0029】
また、図1および図2に示すように、上記フィルター部7の2つの辺の側板にはそれぞれ板状のフィルター材が取り付けられる。板状のフィルター材としては一般にはパンチングメタルスクリーンなどが用いられる。
【0030】
一方、雨水排水中の分離すべき固形状の不純物には細かい落ち葉等の粉砕片が大量に混在することも多く、近年、雨水の地下貯留浸透等による水資源の循環利用のニーズが高まり、粒子径の小さい不純物、例えば数ミクロン〜1mm程度の不純物も効率よく分離可能な分離装置が強く要望されている。数ミクロン〜1mm程度の固形状の不純物を効率よく分離できるフィルター部として、ウェッジワイヤスクリーンが知られている。そこで、微細な固形状の不純物を分離する場合は、フィルター部7にウェッジワイヤスクリーンを設けることが望ましい。
【0031】
図3にウェッジワイヤスクリーン8の1例を示す。図3(a)は前方から見たウェッジワイヤスクリーンの斜視図、図3(b)はそれを斜め上方から見た斜視図である。ウェッジワイヤスクリーン8は断面楔状の複数のウェッジワイヤ8aを平行に配列して構成され、各ウェッジワイヤ8a間に10ミクロン〜1mm程度の微小なスリット8bが形成されている。そして各ウェッジワイヤ8aは複数の支持棒8cに点溶接等により固定される。なお各ウェッジワイヤ8aおよび支持棒8cは例えばステンレス等の耐食性の金属材料で作られる。ウェッジワイヤスクリーン8に形成される各スリット8bは数ミクロン〜数十ミクロン程度の固形状の不純物の通過を阻止し、流水だけを通過させる。
【0032】
図4はフィルター部7に使用するウェッジワイヤスクリーン8を構成するウェッジワイヤ8aとスリット8bの部分拡大断面図である。断面が楔状のウェッジワイヤ8aは所定間隔で互いに平行に配列しており、その頭部8dの面が流入室側の面の一部を形成する。その頭部8dの面から垂直方向に延長する楔の軸線Sは、矢印Lで示すフィルター部7の内側面に沿った旋回流方向の下流側に傾斜している。そして旋回流方向Lと頭部8dの面との角度αは3度〜8度、通常5度程度に設定される。
【0033】
このように各ウェッジワイヤ8aの軸線Sを傾斜させると、図示のように、旋回流の上流側における頭部8dの端部8eが下流側における頭部8dの端部8fより流入室5の内側方向に突出する。そのため旋回流が各ウェッジワイヤ8aの突出した端部8eに衝突し、コアンダ効果によりスリット8bに効率よく引き込まれる。そのため通水性が向上してフィルター部の通水率を実質的に増大させる効果をもたらす。
【0034】
前記フィルター部7は、上部が分離槽2の底部から離反した中間高さから上方まで延長した縦長さ(高さ)を有し、その上部が開放された空間部に流入室5から流出室6へと排水を溢出させるオーバーフロー部12となっている。加えて、フィルター部7としては、側壁4の内側に設けた凹溝に上方から落とし込むようにして嵌める構造とすることで、槽本体3に対して着脱自在にすることができる。
【0035】
フィルター部7の側板の材質として例えばステンレスやFRPを用いることができ、そうした材料による板材を加工して、図示のように、先端を鋭角としたV型のフィルター部7を形成している。但し、フィルター部7は図示のようなV型形状に限定されるものではなく、後述するように、流入室5に流入した排水が2つに分流されて夫々水平方向の旋回流がスムーズに形成できる形状であれば、たとえば先端が円形または楕円形に形成されたV型であってもよい。
【0036】
また、V型の挟角θも水平方向の旋回流がスムーズに形成できる範囲であれば任意に選択できるが、実験によればV型の挟角θは好ましくは30°〜90°の範囲である。このように、フィルター部7の断面形状については様々な応用例が可能であり、図5(a)〜(d)に4つの例を模式的に示す。
【0037】
図5(a)は基本形であるが、この場合、フィルター部7のV字型の要(かなめ)部7aが鋭角になっているので、流入室5に供給される水流を効率よく2分割できるが、そのかなめ部7aに浮遊物が若干引っ掛かりやすい。それに対して、図5(b)の例はかなめ部7aに丸みをもたせているので、到達した浮遊物を滑らせて引っ掛かり難くしている。また、図5(c)に示すように、V字型のかなめ部7aと両側の開脚先端部に丸みをもたせると、旋回流発生がよりスムーズになる効果がある。また、図5(d)に示すように、かなめ部をパイプ7bで形成した場合も、上記図5(b),(c)のような効果が得られる。
【0038】
前記板状のウェッジワイヤスクリーン8は、側板の一部に設けることもでき、あるいは側板なしでユニット化されたウェッジワイヤスクリーン8のみでフィルター部7を構成することもできる。ウェッジワイヤスクリーン8は、分離すべき固形状の不純物が比較的大きい場合、例えば1.0mm〜0.5mm程度の場合は、そのスリット間隙を0.5〜0.25mmに設定したものを使用し、分離すべき固形状の不純物が微細粒径である場合、例えば50ミクロン〜10ミクロン程度の場合は、そのスリット間隙を100ミクロン〜20ミクロン程度に設定したものを使用することが望ましい。
【0039】
つぎに、かかる第1実施例による分離装置1を下水道系統に設置した場合を例にして、その排水分離作用を説明する。
【0040】
供給管9に正常な量の排水が流れている場合、供給管9から分離槽2の流入室5に流入した排水は、図1(b)に示すように、流出室6との仕切りとなるフィルター部7の頂部よりも低い水位を保持する。このときの水位は一義的に決まるものではなく、供給管9を流れる排水の量と速度エネルギーの大きさに応じて変化する。
【0041】
図2に示すように、下水道の管路から排水が分離槽2の供給管9を経て流入室5に流入したとき、該流入室5に流入した排水はV字型のフィルター部7によって2つに分流し、円筒形状の側壁4の内周面に沿って流れ、それによって流入室5の排水に矢印で示すような2つの水平方向の旋回流が形成される。
【0042】
流入室5の排水は前記のように水平方向に旋回するが、その排水の一部はウェッジワイヤスクリーン8の多数のスリット8bを通って流出室6に流出する。その際、排水に含まれている細かい固形状の不純物はウェッジワイヤスクリーン8のスリットに阻止されて分離される。ウェッジワイヤスクリーン8のスリットに阻止された固形状の不純物は水平方向の旋回流で剥離されて排水中に再浮遊し、流入室5の下方に設けた捕捉部11の下方中心部に向かい、そこに堆積していく。
【0043】
その際、前記のようにフィルター部7の下端が分離槽2の底部より上方に位置しているため、流入室5の上方に形成される互いに逆方向に旋回する2つの水平な旋回流は、フィルター部7の下端より下方部分までその旋回力は延長するが、その延長部分ではフィルター部7が存在しないため逆方向の旋回力が互いに干渉して夫々の旋回流は相殺されてほとんど消滅する。
【0044】
そのため下方に沈降する不純物は旋回流に依存する浮力を失い、急速に下降して下方に設けた不純物の捕捉部11に堆積することができる。また、旋回領域には旋回流がほとんど存在しないので、堆積した不純物が再浮上することもない。
【0045】
流出室6の水位は、ウェッジワイヤスクリーン8を通過する際に生じる損失分、流入室5の水位よりも低くなる。また案内路13の上部はフィルター部7よりも高い位置で大気に解放されるか、通気管を設けて大気に解放されているため、該案内路13によって囲まれた室の水位は流出室6の水位と等しくなり、このときの位置エネルギーによって排水管10から排水される。
【0046】
一方、水より比重の小さい浮遊性の固形状の不純物または油分の大部分は旋回流の作用により水面領域に浮上してそこに滞留する。捕捉部11に堆積した不純物や水面領域に滞留する不純物がある程度の量に達した時点で、分離槽2の上部を覆う蓋体を外して、堆積した不純物はバキューム車などによって吸引除去し、水面に浮遊する不純物は網柄杓などで掬い取って外部に除去することができる。
【0047】
例えば大雨が降ったような異常状態となったときには、下水道には設計値以上の大量の雨水とともに多くの固形状の不純物が流入する場合があるが、その対策として本実施形態では、図1(b)に示すように、フィルター部7の上部の開放された空間部に流入室5から流出室6へ排水を溢出させるオーバーフロー部12が形成されている。そのため、水面付近に滞留する浮遊性で固形状の不純物や油分は、排水に同伴してそのオーバーフロー部12から溢出(二点鎖線矢印参照)して流出室6に流入する。そして流出室6には下部から排水管10まで立ち上がった案内路13を設けてあるので、流出室6に流入した固形状の浮遊物や油分が案内路13を介して流出することを回避できる。
【実施例2】
【0048】
次に、図6は第2実施例による排水分離装置を示す。この場合、上記第1実施例の図1で示された分離槽2が円筒形であるのに対して、第2実施例では分離槽2の側壁4を断面方形に成形した構造例である。すなわち、流入室5を形成する方形断面の側壁4の4つの隅部にそれぞれ補助板14が斜めに配置されている。この補助板14は矢印のような2つの水平方向の旋回流の形成を助長するために設けられ、例えば側壁4に形成した凹溝にステンレス製の補助板14を上方から挿入することにより、流入室5に着脱自在に装着される。
【0049】
補助板14の高さ方向の長さはフィルター部7と同じとすることもできるが、それに限らず、水平方向の旋回流の形成を助長できれば、その下部を流入室5の中間領域までとすることもできる。また、水平方向の旋回流の形成を助長できれば補助板14は図6中の左方の2枚だけにすることもできる。さらに、補助板14は図示のような平板でなく、円弧形状でもよく、円弧形状の場合は、より一層旋回流を形成することができる。
【0050】
すなわち、この第2実施例によれば、分離槽2における側壁4の内側を方形に形成し、その方形の隅部に補助板14を配置することで流入室の側壁の内側を多角形に形成し、その多角形の内側とフィルター部7の各辺側板で囲まれた2つの領域にそれぞれ水平方向の旋回流が形成されるように構成できる。このように構成すると、製造が容易な方形の分離槽を用いても水平方向の旋回流を容易に形成することができる。
【実施例3】
【0051】
つぎに、図7は第3実施例による排水分離装置を示す。この第3実施例では、分離槽2の側壁4を断面楕円形に成形した場合の構造例である。すなわち、分離槽2は平断面が楕円形の側壁を形成してなっており、その側壁の内側の楕円形でいう長径部に対向する同一レベル上に供給管9と排水管10がそれぞれ流入室5と流出室6に挿通して設けられている。この場合、長径部を有するので、円形断面の場合よりも円形状に近い旋回流を形成することが可能となる。
【実施例4】
【0052】
つぎに、図8は第4実施例による排水分離装置を示す。この場合、平断面V字型のフィルター部7を有し、その内側に排水中に含まれる比重が小さく軽い油などの不純物を確実に捕捉して一次保管できる同じく平断面V字またはU字型の低比重不純物用仕切板15を設けた構造となっている。この低比重不純物用仕切板15を設けたことにより、流入室5で分離できた油などの不純物を確実に捕捉できる構成となっている。この場合、底部が仕切板6aで塞がれているフィルター部7を分離槽2の本体内側の中間部に設置し、フィルター部7の下部のスペースを不純物の捕捉部11として設けるものである。なお排水時に低比重不純物用仕切板15の内部が負圧にならないように、低比重不純物用仕切板15の上部は開口、若しくは空気を排出吸入できる構造にしてある。
【実施例5】
【0053】
また、図9は、上記第4実施例の応用例ともいうべき第5実施例による排水分離装置を示す。この場合、フィルター部7の取付部と不純物の捕捉部11とを上下を分離する床板16を設けた構造である。その床板16の流入室側には上下を貫通した少なくとも中央部の1つの貫通孔16aが設けてあり、フィルター部7で分離された不純物はその貫通孔16aから下部の捕捉部11に流れ落ち、確実に捕捉できるようになる。捕捉した不純物はバキューム車のホースを床板16の貫通孔16aに挿入し、捕捉部11に堆積した不純物を排除することができる。いずれの場合もこれらにより、フィルター部7の流入室5側の周辺には沈降性を有する不純物が存在しなくなるので、それらの不純物によるフィルター部7の目詰まり発生を防止することができる。
【0054】
なお、上記第1実施例から第5実施例までのすべての実施例において、流入室5で捕獲できた比重の大きな不純物は底部に設けた不純物の捕捉部11に堆積し、堆積した不純物はバキューム車などで定期的に排除することになるが、不純物の捕捉部11の底部をすり鉢状に形成することで、分離槽2の内部にある不純物の除去と清掃を確実に行うことができる。
【0055】
以上、本発明の排水分離装置について第1〜第5の実施例を説明したが、それらの実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で他の実施形態、応用例、変形例およびそれらの組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
例えば、本発明を適用できる流水には、家屋、道路路面、田畑から下水道に流入する雨水や一般排水、工場排水、料理店の厨房排水、食肉加工工場の排水、あるいは工業用水なども含むことができる。またそれらの排水を再利用する時にも適用が可能であり、従って多くの産業に適用した場合でも、夫々好ましく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施例による分離装置を示す図である。
【図2】図1の第1実施例の分離装置における旋回流発生状態を示す図である。
【図3】ウェッジワイヤスクリーンの1例を示す図である。
【図4】ウェッジワイヤスクリーンを構成するウェッジワイヤとスリットの部分拡大断面図である。
【図5】フィルター部の断面形状の応用例を模式的に示す図である。
【図6】第2実施例による排水分離装置を示す図である。
【図7】第3実施例による排水分離装置を示す図である。
【図8】第4実施例による排水分離装置を示す図である。
【図9】第5実施例による排水分離装置を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 分離装置
2 分離槽
4 側壁
3 槽本体
5 流入室
6 流出室
6a 仕切板
7 フィルター部
7a かなめ部
7b パイプ
8 ウェッジワイヤスクリーン
8a ウェッジワイヤ
8b スリット
8c 支持棒
8d 頭部
8e、8f 端部
9 供給管
10 排水管
11 捕捉部
12 オーバーフロー部
13 案内路
14 補助板
15 低比重不純物用仕切板
16 床板
16a 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水に含まれる固形状の不純物を分離する装置において、分離槽と、分離槽の内部を流入室と流出室に仕切るフィルター部と、流入室に設けた流水の供給部と、流出室に設けた流水の排出部と、流入室の下方に設けた不純物の捕捉部とを備え、供給部と排出部は分離槽の側部上方に対向配置され、フィルター部は供給部から供給される流水が流入室内で分流して夫々水平方向の旋回流を形成するように2つの辺を有するV型に形成され、フィルター部の下端辺は分離槽の底部より上方に位置し、該下端辺と流出室の側部が仕切板で閉鎖されていることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
請求項1において、フィルター部の下端と流入室の側部との間が床板で閉鎖され、その床板の少なくとも一箇所に貫通孔が形成されていることを特徴とする分離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、分離槽における側部の内側が円形、方形、多角形または楕円形に形成されていることを特徴とする分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、フィルター部は断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成され、各ウェッジワイヤの頭部で流入室側の面が形成されると共に、各ウェッジワイヤの頭部から先端部に向かう軸線が前記のように形成される旋回流の下流側に傾斜していることを特徴とする分離装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、フィルター部の上部に流入室から流出室へ排水を溢出させるオーバーフロー部が設けられ、流出室の下部から排出部まで延長する案内路が設けられ、流出室の下部の排水が案内路を通って排出部から排出できると共に、流出室の上部に固形状の浮遊性不純物または油分が滞留できるように構成されていることを特徴とする分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−185455(P2009−185455A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23625(P2008−23625)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】