説明

分離部材、定着装置及び画像形成装置

【課題】結露により生じた水滴が記録媒体に付着するのをより効果的に防止できると共に、強度と搬送性を維持することが可能な分離部材を提供する。
【解決手段】本発明は、定着部材とそれと対向する対向部材との間に形成される定着ニップから送り出される記録媒体を、定着部材から分離する分離部材27である。分離した記録媒体が通過する側の通過面27eを窪ませて水蒸気を滞留させる凹部27fを形成し、凹部27fの上部に通過面27eとは反対の面側27gに貫通する孔部27hを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材から記録媒体を分離させる分離部材、当該分離部材を備えた定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置において、用紙上に担持されたトナー画像を定着させる定着装置として、加熱加圧方式のものが多く採用されている。この種の定着装置は、一般的に、ハロゲンヒータ等の加熱源を内部に有する定着部材としての定着ローラと、これに対向して定着ニップを形成する対向部材としての加圧ローラとを備える。画像の定着処理を行う場合は、定着ニップに用紙を通過させて加熱及び加圧し、用紙に担持されたトナー画像を加熱溶融させて定着させる。
【0003】
また、加熱加圧方式の定着装置においては、定着ニップから用紙を排出する際、溶融したトナーの粘着力によって用紙が定着ローラの表面に貼り付くのを防止するため、分離部材によって用紙を定着ローラから強制的に分離させることが行われている。
【0004】
ところが、定着ニップにおいて用紙が加熱された際、用紙に含まれる水分が水蒸気となって拡散するため、この水蒸気が温められていない分離部材に接触して結露すると、用紙を定着ローラから分離する際に、分離部材上の水滴が用紙の画像形成面に付着して、画像不良となる問題がある。また、両面印刷時に用紙に水滴が付着すると、その水滴付着部にはトナーが付着しないため、裏面に形成される画像が欠損するといった問題も生じる。
【0005】
このような問題を解決するため、従来、分離部材の用紙が通過する側の通紙面にシート状の吸湿材を貼り付けたものや(特許文献1参照)、分離部材の通紙面に水滴の成長を抑える微小溝を設けたものが提案されている(特許文献2参照)。さらに、別の対策として、分離部材に通気のための複数の開口部を設け、その開口部から水蒸気を上方へ逃がして結露しないようする方法が開示されている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように分離部材に吸湿材を貼り付けたものは、用紙が吸湿材に接触した際の摩擦によって搬送性が低下するため、その摩擦を低減させる表面処理が必要となる。
また、分離部材に微小溝を設けたものは、水滴の成長は抑えられるが、微小溝を設けた箇所よりも上方で成長した水滴が垂れてくる問題が残る。
また、分離部材に通気用の開口部を設けた場合、開口部の大きさを結露が生じない程度に確保すると、分離部材の強度が低下するといった問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、結露により生じた水滴が記録媒体に付着するのをより効果的に防止できると共に、強度と搬送性を維持することが可能な分離部材、その分離部材を備えた定着装置及び画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、定着部材とそれと対向する対向部材との間に形成される定着ニップから送り出される記録媒体を、前記定着部材から分離する分離部材であって、分離した記録媒体が通過する側の通過面を窪ませて水蒸気を滞留させる凹部を形成し、当該凹部の上部に前記通過面とは反対の面側に貫通する孔部を形成したものである。
【0009】
上記のように、凹部の上部に孔部を形成することにより、凹部内に入り込んだ水蒸気を孔部から通過面とは反対の面側に逃がすことができるので、通過面側での結露を抑制することができる。また、水蒸気の一部は凹部内で結露させることにより、水滴を垂れないように保持することができる。また、凹部は通過面から窪んだ位置に形成されているので、凹部内で結露して水滴が生じても、凹部内の水滴が記録媒体に接触することがない。また、凹部を形成することにより、水蒸気が通過面と接触する面積が減少するため、通過面上に結露によって生じる水滴の量を低減することができる。このように、請求項1に記載の発明によれば、分離部材の通過面側での結露を効果的に抑制することが可能である。
【0010】
請求項2の発明は、定着部材とそれと対向する対向部材との間に形成される定着ニップから送り出される記録媒体を、前記定着部材から分離する分離部材であって、分離した記録媒体が通過する側の通過面を窪ませて水蒸気を滞留させる凹部を形成し、当該凹部内に吸湿材を設け、当該吸湿材の表面を前記通過面よりも窪んだ位置に配設したものである。
【0011】
この場合も、分離部材の通過面を窪ませて凹部を形成することにより、水蒸気を凹部内で結露させることができ、水滴を垂れないように保持することができる。また、上記請求項1の発明と同様に、凹部内で結露して水滴が生じても、凹部内の水滴が記録媒体に接触することがない。また、凹部を形成することにより、水蒸気が分離部材の通過面と接触する面積が減少するため、通過面上に結露によって生じる水滴の量を低減することが可能である。さらに、この場合、凹部内に吸湿材を設けているので、凹部での水分の保持可能量が増加し、通過面において水滴の発生量をより効果的に低減することができるようになる。なお、吸湿材が吸収した水分は、分離部材が温まったときに水蒸気として放出されるため、その水蒸気が分離部材上で結露することはない。また、吸湿材の表面は通過面よりも窪んだ位置に配設されているので、記録媒体が吸湿材に接触することがなく、吸湿材が記録媒体の搬送抵抗となることがない。このため、吸湿材に摩擦を低減させる表面処理を行う必要がなく、安価な構成とすることができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2に記載の分離部材において、前記吸湿材と前記凹部によって囲まれた空気層を設けたものである。
【0013】
吸湿材と凹部によって囲まれた空気層を設けることにより、凹部と吸湿材との間から空気が逃げにくくなるので、分離部材が温まりやすくなる。これにより、分離部材上での結露を抑制できると共に、吸湿材からの水分の放出を促進することができるようになる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の分離部材において、前記凹部の上部に、前記通過面とは反対の面側に貫通する孔部を形成し、当該孔部を通して前記吸湿材の上端部を前記通過面とは反対の面側に配設したものである。
【0015】
このように、孔部を通して吸湿材の上端部を通過面とは反対の面側に配設することにより、吸湿材で吸収した水分を前記反対の面側で放出させて乾燥させることができる。これにより、通過面上に水滴が付着するのをさらに低減することができるようになる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載の分離部材において、前記吸湿材に熱伝導性の高い部材を接触させたものである。
【0017】
吸湿材に熱伝導性の高い部材を接触させることにより、吸湿材が温まりやすくなり、吸湿材が吸収した水分の放出が促進されるので、分離部材上での水滴の発生量を一層効果的に低減できるようになる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項2から5のいずれか1項に記載の分離部材において、前記吸湿材をコルクで構成したものである。
【0019】
吸湿材をコルクで構成することが可能である。
【0020】
請求項7の発明は、請求項2から5のいずれか1項に記載の分離部材において、前記吸湿材を吸湿機能を有する繊維の布で構成したものである。
【0021】
吸湿材を吸湿機能を有する繊維の布で構成することが可能である。
【0022】
請求項8の発明は、請求項2から5のいずれか1項に記載の分離部材において、前記吸湿材を吸湿機能を有する繊維を植毛したシートで構成したものである。
【0023】
吸湿材を吸湿機能を有する繊維を植毛したシートで構成することが可能である。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の分離部材において、前記凹部の記録媒体通過方向下流側の面を、前記通過面側に接近するにつれて記録媒体通過方向下流側へ傾斜させたものである。
【0025】
これにより、記録媒体の先端が凹部内に入り込んだとしても、上記のように傾斜した下流側の面によって記録媒体の先端が引っ掛かることなく通過面側に案内されるので、安定した搬送性を確保できるようになる。
【0026】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載の分離部材において、記録媒体幅方向端部が通過する箇所を除いて、前記凹部を配設したものである。
【0027】
上記のように凹部を配設することで、記録媒体の幅方向端部が凹部内に入り込むのを防止でき、安定した搬送性を確保できる。
【0028】
請求項11の発明は、請求項1から10のいずれか1項に記載の分離部材において、幅サイズの異なる記録媒体の各幅方向端部が通過する箇所を除いて、前記凹部を記録媒体幅方向に複数個並べて配設したものである。
【0029】
上記のように複数個の凹部を配設することで、各幅サイズの記録媒体において、それぞれの幅方向端部が凹部内に入り込むのを防止でき、安定した搬送性を確保できる。
【0030】
請求項12の発明は、請求項1から11のいずれか1項に記載の分離部材において、前記凹部を、記録媒体通過方向に複数個並べて配設したものである。
【0031】
この場合、凹部が記録媒体通過方向に複数個並んでいる分、凹部の個数が増えるため、通過面における水滴の発生量をより効果的に低減することができる。また、1つの大きな面積の凹部を形成するよりも、複数の凹部に分割して形成した方が、1つ当たりの凹部の面積が小さくなるため、凹部内に記録媒体が入り込みにくくなり、搬送性が向上する。
【0032】
請求項13の発明は、請求項1から12のいずれか1項に記載の分離部材において、前記凹部を、記録媒体通過方向と記録媒体幅方向とに列を成すように複数個並べて配設したものである。
【0033】
この場合、凹部の個数が記録媒体通過方向と幅方向に増えるため、通過面における水滴の発生量をより一層効果的に低減することができる。また、上記と同様に、1つの大きな面積の凹部を形成するよりも、複数の凹部に分割して形成した方が、1つ当たりの凹部の面積が小さくなるため、凹部内に記録媒体が入り込みにくくなり、搬送性が向上する。
【0034】
請求項14の発明は、請求項13に記載の分離部材において、前記複数個の凹部を記録媒体幅方向に並べて構成した列を、記録媒体通過方向に複数列配設し、ある列の前記凹部同士の間に対応する位置に他の列の前記凹部を配設したものである。
【0035】
このように、複数個の凹部を記録媒体幅方向に並べて構成した列のうち、ある列の凹部同士の間に対応する位置に他の列の凹部を配設することにより、分離部材の記録媒体幅方向に渡る水滴の発生をより効果的に低減できる。
【0036】
請求項15の発明は、請求項1から14のいずれか1項に記載の分離部材において、前記凹部の上面を、記録媒体幅方向の一端側から他端側に向かって下方へ傾斜させたものである。
【0037】
この場合、結露によって凹部の上面に発生した水滴を当該上面の低い方の端部へ誘導して溜めることができ、水滴の挙動を安定させることができる。
【0038】
請求項16の発明は、請求項1から15のいずれか1項に記載の分離部材において、前記凹部の下面を、前記通過面側から離れるにつれて下方へ傾斜させたものである。
【0039】
この場合、結露によって凹部の下面に水滴が付着しても、その水滴を通過面から離れた低い方へ誘導することができるため、水滴が通過面側に流れて記録媒体に付着するのを防止でき、画像不良や画像欠損の発生をより確実に防止できるようになる。
【0040】
請求項17の発明は、請求項1から16のいずれか1項に記載の分離部材において、前記凹部の記録媒体通過方向下流側の面を、記録媒体幅方向の中間部側から両端部側に向かうにつれて記録媒体通過方向下流側へ傾斜させたものである。
【0041】
これにより、記録媒体の先端が凹部内に入り込んだとしても、上記のように傾斜させた下流側の面に沿って記録媒体がその幅方向の中間部側から両端部へ順に広げられるため、記録媒体の先端が凹部に引っ掛かって折れるなどの不具合を防止でき、安定した搬送性が得られる。
【0042】
請求項18の発明は、請求項1から17のいずれか1項に記載の分離部材において、前記凹部の下面を、記録媒体幅方向の中間部側から両端部側に向かうにつれて下方へ傾斜させたものである。
【0043】
この場合、凹部の下面に生じた水滴を当該下面の両端部へ誘導して溜めることができ、水滴の挙動を安定させることができる。
【0044】
請求項19の発明は、請求項1から18のいずれか1項に記載の分離部材において、前記凹部を、記録媒体通過方向下流側に向かって記録媒体幅方向の近い方の端部側へ接近するように傾斜させたものである。
【0045】
これにより、記録媒体の先端が凹部内に入り込んだとしても、上記のように傾斜した凹部に沿って記録媒体がその幅方向の中間部側から両端部へ順に広げられるため、記録媒体の先端が凹部に引っ掛かって折れるなどの不具合を防止でき、安定した搬送性が得られる。
【0046】
請求項20の発明は、請求項19に記載の分離部材において、前記凹部の記録媒体通過方向に対する傾斜角度を、当該凹部の記録媒体幅方向の位置に応じて異ならせたものである。
【0047】
凹部の記録媒体通過方向に対する傾斜角度を、当該凹部の記録媒体幅方向の位置に応じて異ならせることにより、記録媒体のカール度合いに応じて、凹部の傾斜角度の適正化を図れる。
【0048】
請求項21の発明は、請求項1から20のいずれか1項に記載の分離部材において、板状の部材を曲げるように形成して前記凹部を構成したものである。
【0049】
板状の部材を曲げるように形成して凹部を構成することにより、分離部材の強度を向上させることができる。これにより、分離部材の厚さを薄くすることができる。また、分離部材を薄く形成することができることにより、分離部材をより適正な位置に配設しやすくなる。さらには、分離部材が薄くなることで、その熱容量が小さくなって温まりやすくなるので、分離部材上の水滴の発生量を低減することができる。
【0050】
請求項22の発明は、定着部材と、それに対向する対向部材と、前記定着部材と前記対向部材との間に形成される定着ニップから送り出される記録媒体を、前記定着部材から分離する分離部材とを備える定着装置において、前記分離部材として、請求項1から21のいずれか1項に記載の分離部材を用いたものである。
【0051】
定着装置が、請求項1から21のいずれか1項に記載の分離部材を用いているので、これら分離部材による上記効果が得られる。
【0052】
請求項23の発明は、請求項22に記載の定着装置を備えた画像形成装置である。
【0053】
画像形成装置が、請求項22に記載の定着装置を備えているので、この定着装置に用いられる分離部材の上記効果が得られる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、結露により生じた水滴が記録媒体に付着するのをより効果的に防止できるので、水滴が記録媒体に付着することにより生じる画像不良や画像欠損を高度に防止できるようになる。また、本発明は、分離部材の通過面に吸湿材を設けないので、吸湿材に記録媒体が接触することによる搬送性低下の問題が生じることがなく、良好な搬送性が得られる。さらに、吸湿材に摩擦を低減させる表面処理を行う必要もないので、安価な構成とすることが可能である。また、本発明によれば、分離部材に水蒸気を通過させるための大きな開口部を設けなくてもよいので、開口部を形成することによる強度の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】前記画像形成装置に搭載される定着装置の概略構成図である。
【図3】定着ニップの出口部近傍の拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る分離板の正面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る分離板の断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る分離板の断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る分離板の断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る分離板の断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る分離板の正面図である。
【図11】本発明の第7実施形態に係る分離板の正面図である。
【図12】本発明の第8実施形態に係る分離板の正面図である。
【図13】本発明の第9実施形態に係る分離板の正面図である。
【図14】本発明の第10実施形態に係る分離板の断面図である。
【図15】本発明の第11実施形態に係る分離板の断面図である。
【図16】本発明の第12実施形態に係る分離板の正面図である。
【図17】本発明の第13実施形態に係る分離板の正面図である。
【図18】本発明の第14実施形態に係る分離板の正面図である。
【図19】本発明の第15実施形態に係る分離板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0057】
図1は、本発明に係るカラー画像形成装置の概略構成図である。
図1に示す画像形成装置には、作像部としての4つのプロセスユニット1Bk,1Y,1M,1Cが画像形成装置本体100に対して着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1Bk,1Y,1M,1Cは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0058】
具体的には、各プロセスユニット1Bk,1Y,1M,1Cは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラ3等を備えた帯電装置と、感光体2の表面にトナー(現像剤)を供給する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするための感光体クリーニングブレード5等を備えたクリーニング装置などで構成されている。なお、図1では、ブラックのプロセスユニット1Bkが備える感光体2、帯電ローラ3、現像装置4、クリーニングブレード5のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1Y,1M,1Cにおいては符号を省略している。
【0059】
図1において、各プロセスユニット1Bk,1Y,1M,1Cの上方には、感光体2の表面を露光する露光手段としての露光装置6が配設されている。露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザ光を照射するようになっている。
【0060】
また、各プロセスユニット1Bk,1Y,1M,1Cの下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、支持部材としての駆動ローラ9と従動ローラ10に張架されており、駆動ローラ9が図の反時計回りに回転することによって、中間転写ベルト8は図の矢印に示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
【0061】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0062】
また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0063】
また、中間転写ベルト8の図の右端側の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配設された廃トナー収容器14の入り口部に接続されている。
【0064】
画像形成装置本体100の下部には、紙やOHP等のシート状の記録媒体Pを収容した給紙カセット15が配設されている。給紙カセット15には、収容されている記録媒体Pを送り出す給紙ローラ16が設けてある。一方、画像形成装置本体の上部には、記録媒体を外部へ排出するための一対の排紙ローラ17と、排出された記録媒体をストックするための排紙トレイ18とが配設されている。
【0065】
画像形成装置本体100内には、記録媒体Pを給紙カセット15から二次転写ニップを通って排紙トレイ18へ搬送するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ12の位置よりも記録媒体搬送方向上流側には一対のレジストローラ19が配設されている。また、二次転写ローラ12の位置よりも記録媒体搬送方向下流側には、定着装置20が配設されている。
【0066】
以下、図1を参照して上記画像形成装置の基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Bk,1Y,1M,1Cの感光体2が図の時計回りに回転駆動され、帯電ローラ3によって各感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。図示しない読取装置によって読み取られた原稿の画像情報に基づいて、露光装置6から各感光体2の帯電面にレーザ光が照射されて、各感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0067】
中間転写ベルト8を張架する駆動ローラ9が回転駆動し、中間転写ベルト8を図の矢印の方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体2上の各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。また、中間転写ベルト8に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、クリーニングブレード5によって除去される。
【0068】
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ16が回転して、給紙カセット15から記録媒体Pが搬出される。搬出された記録媒体Pは、レジストローラ19によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー画像が記録媒体P上に一括して転写される。その後、記録媒体Pは定着装置20に送り込まれトナー画像が記録媒体P上に定着される。そして、記録媒体Pは一対の排出ローラ17によって排紙トレイ18に排出される。
【0069】
以上の説明は、記録媒体にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Bk,1Y,1M,1Cのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0070】
次に、上記定着装置の構成について詳しく説明する。
図2は定着装置の概略構成図である。
図2において、符号21は定着ローラであり、定着ローラ21は、鉄等の金属製の芯金21a上に、シリコンゴムやスポンジ等の弾性層21bが形成されて構成されている。また、符号22は加熱ローラであり、加熱ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源28を有する。それらの定着ローラ21と加熱ローラ22には、定着部材としての無端状の定着ベルト23が巻き掛けられている。定着ベルト23は、ポリイミド等の樹脂製の基材と、その基材の上に設けられたシリコンゴム等の弾性層と、弾性層の上に設けられたPFA等の離型層で構成されている。
【0071】
また、定着ベルト23は、外周からテンションローラ24によって押圧され、所定の張力が付与されている。テンションローラ24には、定着ベルト23の表面をクリーニングするためのクリーニングローラ25が当接している。
【0072】
図2において、符号26は定着ベルト23に対向し定着ベルト23との間で定着ニップNを形成する対向部材としての加圧ローラである。加圧ローラ26は、定着ローラ21と同様に、鉄等の金属製の芯金26aと、その上に形成されたシリコンゴムやスポンジ等の弾性層26bを有し、さらに、弾性層26bの上にはPFA等の表面の離型層26cが設けられている。また、定着ニップNの出口側(図の上側)の近傍には、定着ベルト23から記録媒体Pを分離させる分離部材としての分離板27が配設してある。
【0073】
上記のように構成された定着装置は、次のように動作する。
画像形成装置本体の電源スイッチが投入されると、加熱ローラ22内の加熱源28に交流電源から交流電圧が印加(給電)されると共に、不図示の駆動モータによって定着ローラ21が図の矢印の方向に回転駆動され、それと同時に定着ベルト23や加圧ローラ26等が従動回転する。その後、加熱源28からの熱で定着ベルト23が所定の目標温度に加熱された状態になると、未定着のトナーT(トナー画像)が担持された記録媒体Pを定着ニップNに進入させ、定着ニップNにおいて熱と圧力によって記録媒体P上のトナーTが定着される。そして、記録部材Pは、定着ニップNから送り出され、分離板27によって定着ベルト23から分離される。
【0074】
また、定着ベルト23が回転している間、クリーニングローラ25がテンションローラ24に従動回転する。これにより、定着ベルト23の表面の汚れがテンションローラ24を介してクリーニングローラ25に回収され、安定した画像が得られる。
【0075】
なお、本発明の定着装置は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、定着ローラ21に代えて非回転のパッドを用いて定着ベルト23を加圧ローラ26と当接させるようにしてもよい。また、定着ベルト23を用いず、定着ローラ21と加圧ローラ26を直接当接させて定着ニップNを形成してもよい。また、無端状の加圧ベルトを設け、それを加圧ローラ又は加圧パッド等によって定着部材に当接させる構成としてもよい。また、上記実施形態では、加圧ローラ26を定着ベルト23に圧接させる構成としているが、定着部材と対向部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わす単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
【0076】
図3は、定着ニップの出口部近傍の拡大図である。
図3に示すように、分離板27は、その基端部27b側に軸挿入部27cを有し、その軸挿入部27a内に定着装置本体に設けられた図示しない支持軸が挿入されている。また、分離板27の先端部27a側には、定着ベルト23の表面に当接する当接部27dが設けてある。分離板27は、前記支持軸によって回動可能に支持されているが、図示しないバネ等の付勢部材によって定着ベルト23側へ付勢されているため、その付勢力により当接部27dが定着ベルト23に当接した状態で保持されている。
【0077】
当接部27dが定着ベルト23に当接した状態では、分離板27の先端部27aは定着ベルト23に対して微小なギャップGを介して配設されている。また、定着ニップNを通過した記録媒体Pの先端は定着ベルト23の表面から僅かに浮き上がった状態で排出される。この記録媒体Pの浮き上がった先端と定着ベルト23の表面との間に、分離板27の先端部27aが侵入することによって、記録媒体Pが定着ベルト23から分離されるようになっている。
【0078】
分離板27の記録媒体Pが通過する側の通過面27eと上記当接部27dには、フッ素樹脂から成る離型層が設けられている。これらの箇所に離型層を設けることにより、記録媒体Pの搬送抵抗を抑制して搬送性を向上させることができると共に、定着ベルト23の損耗を抑制して寿命を向上させるようにしている。
【0079】
以下、本発明の特徴部分である分離板の構成について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る分離板を記録媒体が通過する側から見た正面図、図5は、図4のA−A断面図である。
図4と図5に示すように、分離板27の通過面27eには、その一部を窪ませた凹部27fが形成されている。さらに、図5に示すように、凹部27fの上部には、通過面27e側とは反対の裏面27g側に貫通する孔部27hが形成されている。本実施形態では、凹部27fは、長方形の底部270と、その底部270の四辺に沿って配設された4つの側面271〜274によって構成されており、底面270は通過面27eと平行に配設され、各側面271〜274は通過面27eと直交して配設されている。また、図4に示すように、凹部27fは、記録部材Pの幅方向に対応する分離板27の長手方向に渡って形成されており、その凹部27fの幅W1と、分離版27の用紙分離部長さW2と、記録媒体Pの幅Wpは、W2>Wp≧W1となっている。また、記録媒体Pが凹部27fに入り込まない構成の場合は、W2>W1≧Wpとしても構わない。
【0080】
記録媒体Pを定着ニップNに通過させて画像を定着する際、記録媒体Pが加熱されることによって記録媒体Pに含まれる水分が水蒸気となって放出されるが、このとき、画像形成装置の立ち上がり直後で、分離板27が十分に温められていないと、水蒸気が分離板27に接触した際に冷やされ結露が生じる。本実施形態では、発生した水蒸気は、分離板27の通過面27e側で上昇しながら凹部27fに入り、凹部27fの上部に形成された孔部27hから水蒸気を裏面27g側に逃がすことができる。また、水蒸気の一部は凹部27f内で結露して水滴となる。
【0081】
このように、本発明では、凹部27f内に入り込んだ水蒸気を孔部27hから裏面27g側に逃がすことができるので、通過面27e側での結露を抑制することができる。また、水蒸気の一部は凹部27f内で結露させることにより、水滴を垂れないように保持することができる。また、凹部27fは通過面27eから窪んだ位置に形成されているので、凹部27f内で結露して水滴が生じても、凹部27f内の水滴が記録媒体Pに接触することがない。また、凹部27fを形成することにより、水蒸気が分離板27の通過面27eと接触する面積が減少するため、通過面27e上に結露によって生じる水滴の量を低減することができる。以上のように、本実施形態によれば、従来技術に比べて、通過面27e側での結露をより効果的に抑制することができるので、水滴が記録媒体Pの画像形成面に付着することによる画像不良や、両面印刷時に水滴が記録媒体Pに付着することによる裏面の画像欠損を防止することが可能となる。
【0082】
また、図5に示すように、板状の分離板27を曲げるように形成して凹部27fを構成しているので、凹部27fの無い平板状の分離板に比べて強度が向上する。これにより、分離板27の厚さをも薄くすることができる。また、分離板27を薄く形成することができることにより、分離板27をより適正な位置に配設しやすくなる。さらには、分離板27が薄くなることで、その熱容量が小さくなって温まりやすくなるので、分離板27上の水滴の発生量を低減できるようになる。
【0083】
図6は、本発明の第2実施形態に係る分離板の断面図である。
第2実施形態では、凹部27f内に吸湿材29を設けている。吸湿材29としては、コルクや、吸湿性の繊維、例えば、吸汗速乾繊維や高吸水繊維となる吸湿機能を有する繊維の織布や不織布、吸湿機能を有する繊維を植毛したシートなどを用いることができる。なお、第2実施形態では、上記第1実施形態のように凹部27fに孔部27hは形成していない。それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0084】
上記のように、第2実施形態では、凹部27f内に吸湿材29を設けることにより、凹部27fでの水分の保持可能量が増加するので、分離板27の通過面27eにおいて水滴の発生量をより効果的に低減することができるようになる。例えば、印刷速度が速い画像形成装置では、分離板27が十分に温まる前に定着ニップを通過する記録媒体の数が多いため、水蒸気の発生量が多くなる傾向にあるが、このような水蒸気の発生量が多い場合においても、凹部27f内に吸湿材29を設けることにより、凹部27f内で十分に水分を保持できるようになり、通過面27eにおける水滴の量を低減することが可能となる。なお、吸湿材29が吸収した水分は、分離板27が温まったときに水蒸気として放出されるため、その水蒸気が分離板27上で結露することはない。
【0085】
また、吸湿材29を設ける箇所を、従来のように通過面27eに設けるのではなく、凹部27f内に設けているので、吸湿材29の表面は通過面27eよりも窪んだ位置に配設される。このため、記録媒体が分離板27を通過する際に、記録媒体が吸湿材29に接触することがなく、吸湿材29が記録媒体の搬送抵抗となることがない。従って、本実施形態の場合、吸湿材29に摩擦を低減させる表面処理を行う必要がなく、安価な構成とすることができる。
【0086】
図7は、本発明の第3実施形態に係る分離板の断面図である。
第3実施形態では、吸湿材29がコ字型の断面形状に形成されており、この吸湿材29と凹部27fとの間に空気層30が設けられている。それ以外は、図6に示す第2実施形態と同様の構成である。この空気層30は凹部27fと吸湿材29とによって囲まれているので、凹部27fと吸湿材29との間から空気が逃げにくくなっている。これにより、分離板27が温まりやすくなり、分離板27上での結露を抑制できると共に、吸湿材29からの水分の放出を促進することができるようになる。また、本実施形態では、図6に示す第2実施形態に比べて、吸湿材29の表面が通過面27eに近いため、より効果的に吸湿でき、通過面27eにおける水滴の発生量を低減できる。
【0087】
図8は、本発明の第4実施形態に係る分離板の断面図である。
第4実施形態では、図5に示す第1実施形態と図6に示す第2実施形態の構成を組み合わせたものである。すなわち、凹部27fの上部に孔部27hが形成され、かつ、凹部27f内に吸湿材29が配設されている。さらに、吸湿材29の上端部29aは、孔部27fを通って裏面27g側に配設されている。このように、吸湿材29の上端部29aを裏面27g側に配設することにより、吸湿材29で吸収した水分を裏面27g側で放出させて乾燥させることができ、通過面27e上に水滴が付着するのをさらに低減することができる。
【0088】
図9は、本発明の第5実施形態に係る分離板の断面図である。
第5実施形態では、図8に示す第4実施形態の構成に加え、吸湿材29の上端部29aの通過面27e側とは反対側の面に、熱伝導性の高い部材31(以下、「熱伝導部材」という)を接触させている。この熱伝導部材31は、図示しない定着ベルト上の記録媒体が通過しない領域に接触しており、熱伝導部材31を介して定着ベルトの熱が吸湿材29に伝達されるようになっている。これにより、吸湿材29が温まりやすくなり、吸湿材29が吸収した水分の放出が促進されるので、分離板27上での水滴の発生量を一層効果的に低減できる。また、熱伝導部材31として、金属の繊維を織り込んだ布や、バネ性を有する(SUSやリン青銅)の金属部材を用いることにより、吸湿材29に対する安定した接触を確保することができるので、吸湿材29への熱伝導をより効果的に行うことが可能となる。
【0089】
なお、図7〜図9に示す各実施形態においても、図6に示す第2実施形態と同様に、吸湿材29の表面は通過面27eよりも窪んだ位置に配設されているため、吸湿材29が記録媒体の搬送抵抗となることがない。従って、これらの実施形態の場合も、吸湿材29に摩擦を低減させる表面処理を行う必要がなく、安価な構成とすることが可能である。
【0090】
以下、図10〜図19に基づき、上記第1〜第5実施形態の変形例である各実施形態について第1〜第5実施形態とは異なる点のみ説明する。なお、図10〜図19において、凹部27fに形成された孔部27hや、凹部27f内に配設された吸湿材29等は図示省略している。
【0091】
図10は、本発明の第6実施形態に係る分離板の正面図である。
第6実施形態では、凹部27fを、分離板27の長手方向(記録媒体の幅方向)に複数個並べて配設している。ここでは、幅サイズの異なる3種類の記録媒体P1,P2,P3が用いられており、各凹部27fは、各種類の記録媒体P1,P2,P3の幅方向端部が通過する箇所(図の一点鎖線上)を除いて配設されている。このように各凹部27fを配設することで、記録媒体P1,P2,P3の幅方向端部が凹部27f内に入り込むことを防止して安定した搬送性を確保できると共に、分離板27の通過面27eにおける水滴の発生量を低減することが可能となる。
【0092】
図11は、本発明の第7実施形態に係る分離板の正面図である。
第7実施形態では、凹部27fを、分離板27の長手方向(記録媒体幅方向)とそれに直交する方向(記録媒体通過方向)にそれぞれ列を成すように複数個並べて配設している。図11に示す例では、凹部27fは分離板27の長手方向に3列、それと直行する方向に2列配設されているが、凹部27fの個数はこれに限定されるものではない。この場合、上記図10に示す第6実施形態の構成と比べて、凹部27fが分離板27の長手方向の直交方向(記録媒体通過方向)に複数個並んでいる分、凹部27fの個数が増えているため、分離板27の通過面27eにおける水滴の発生量をより効果的に低減することができる。また、1つの大きな面積の凹部27fを形成するよりも、図11に示すように、複数の凹部27fに分割して形成した方が、1つ当たりの凹部27fの面積を小さくすることができるため、凹部27f内に記録媒体が入り込みにくくなり、搬送性が向上する。
【0093】
図12は、本発明の第8実施形態に係る分離板の正面図である。
第8実施形態では、分離板27の長手方向(記録媒体幅方向)に一列に並べて配設した複数個の凹部27fの列を、分離板27の長手方向の直交方向(記録媒体通過方向)に2列配設している。なお、凹部27fの列を分離板27の長手方向の直交方向に3列以上配設してもよい。図12において、上側の列と下側の列とでは、凹部27fが分離板27の長手方向にずれて配設されており、下側の列の凹部27f同士の間に対応する位置に上側の列の凹部27fを配設している。このように、分離板27の長手方向の直交方向に複数並ぶ列において、ある列の凹部27f同士の間に対応する位置に他の列の凹部27fを配設することにより、分離板27の長手方向に渡る水滴の発生をより効果的に低減できるようになる。
【0094】
図13は、本発明の第9実施形態に係る分離板の正面図である。
第9実施形態では、凹部27fの上側の側面271(上面)を、分離板27の長手方向(記録媒体幅方向)の一端側から他端側に向かって下方へ傾斜させている。図13に示す例では、上側の側面271を右側に向かって下方へ傾斜させている。これにより、結露によって上側の側面271に水滴が発生した場合に、水滴を当該側面271の低い方の端部(図の右側)へ誘導して溜めることができるので、水滴の挙動を安定させることができる。また、図示省略するが、水滴が集まる端部側に排出部や排出孔を設けることにより、凹部27fで保持できる水分量が低減するのを防止できる。なお、傾斜させる上側の側面271の形状、排出部や排出孔の形状は、装置に合わせて適切な形状を選択すればよい。
【0095】
図14は、本発明の第10実施形態に係る分離板の断面図である。
第10実施形態では、凹部27fの下側の側面272(下面)を、通過面27e側から離れるにつれて下方へ傾斜させている。これにより、結露によって下側の側面272に水滴が付着しても、その水滴を通過面27eから離れた低い方へ誘導することができるため、水滴が通過面27e側に流れて記録媒体に付着するのを防止でき、画像不良や画像欠損の発生をより確実に防止できるようになる。
【0096】
図15は、本発明の第11実施形態に係る分離板の断面図である。
第11実施形態では、分離板27の凹部27fの図の上側の側面271(記録媒体通過方向の下流側の面)を、通過面27e側に接近させるにつれて図の上側(記録媒体通過方向下流側)へ傾斜させている。これにより、記録媒体の先端が凹部27f内に入り込んだとしても、上記のように傾斜した側面271によって記録媒体の先端が引っ掛かることなく通過面27e側に案内されるので、安定した搬送性を確保できる。
【0097】
図16は、本発明の第12実施形態に係る分離板の正面図である。
第12実施形態では、凹部27fの図の上側の側面271(記録媒体通過方向下流側の面)を、分離板27の長手方向(記録媒体幅方向)の中間部側から両端部側に向かうにつれて図の上側(記録媒体通過方向下流側)へ傾斜させている。これにより、記録媒体の先端がカールしている場合などにおいて、記録媒体の先端が凹部27f内に入り込んだとしても、図の上側の側面271に沿って記録媒体がその幅方向の中間部側から両端部へ順に広げられるため、記録媒体の先端が凹部27fに引っ掛かって折れるなどの不具合を防止でき、安定した搬送性が得られる。
【0098】
図17は、本発明の第13実施形態に係る分離板の正面図である。
第13実施形態では、上記図16に示す第12実施形態の構成において、さらに、凹部27fの図の下側の側面272(下面)を、分離板27の長手方向(記録媒体幅方向)の中間部側から両端部側に向かうにつれて下方へ傾斜させている。これにより、図16に示す実施形態と同様の作用・効果に加えて、下側の側面272に生じた水滴を当該側面272の両端部へ誘導して溜めることができ、水滴の挙動を安定させることができる。また、水滴が集まる両端部側に排出部や排出孔を設けてもよい。なお、傾斜させる下側の側面272の形状、排出部や排出孔の形状は、装置に合わせて適切な形状を選択すればよい。
【0099】
図18は、本発明の第14実施形態に係る分離部材の正面図である。
第14実施形態では、分離板27の通過面27eに複数個の凹部27fが形成されている。これらの複数個の凹部27fのうち、分離板27の長手方向(記録媒体幅方向)の中間部に配設されている凹部27fは、分離板27の長手方向の直交方向(記録媒体通過方向)に平行に配設されている。一方、前記中間部から両端部寄りに配設されている複数の凹部27fは、分離板27の長手方向の直交方向に対して所定の角度θだけ傾斜している。また、複数の凹部27fのうち、中間部から図の右側に配設されている凹部27fと左側に配設されている凹部27fとでは傾斜する向きが異なっている。すなわち、両端部寄りに配設されている各凹部27fは、それぞれ、図の上側(記録媒体通過方向下流側)に向かって近い方の端部側へ接近するように傾斜している。
【0100】
上記のように、凹部27fを複数個形成することにより、凹部27f全体での水分保持量を十分に確保することができると共に、1つの大きな面積の凹部27fを形成するよりも、記録媒体が凹部27f内に入り込みにくくすることができる。また、両端部寄りに配設された凹部27fが上記の如く傾斜しているので、記録媒体の先端が凹部27f内に入り込んだとしても、各凹部27fに沿って記録媒体がその幅方向の中間部側から両端部へ順に広げられる。これにより、記録媒体の先端が凹部27fに引っ掛かって折れるなどの不具合を防止でき、安定した搬送性が得られる。なお、図18に示す例では、中央部側に配設した凹部27f以外は、上下2列となっているが、1列又は3列以上にしたり、部分的に1列又は複数列にしたりすることも可能である。
【0101】
図19は、本発明の第15実施形態に係る分離部材の正面図である。
第15実施形態では、上記図18に示す第14実施形態の構成と基本的に同様であるが、中間部以外に配設した凹部27fに関して、その配設位置に応じて傾斜角度を異ならせている。具体的には、傾斜した複数の凹部27fのうち、分離板27の長手方向(記録媒体幅方向)の中間部側に配設した凹部27fの傾斜角度θ1は小さく、端部側に配設した凹部27fの傾斜角度θ2は大きく設定している。記録媒体のカールは、幅方向中間部側よりも両端部側において大きくなるので、カールが大きくなる記録媒体の端部側では凹部27fの傾斜角度θ2を大きくすることにより、記録媒体の引っ掛かりや折れを防止して安定した搬送性が得られる。一方、カールが小さい記録媒体の中間部側では凹部27fの傾斜角度θ1を小さくすることにより、凹部27f内に水蒸気が入り込みやすくなり、通過面27e上に生じる水滴量の低減に効果的に寄与できる。このように、本実施形態では、記録媒体のカール度合いに応じて、凹部27fの傾斜角度の適正化を図っている。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各実施形態における特徴部分のうちの2つ又は3つ以上を、適宜組み合わせて構成することも可能である。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、分離板における記録媒体の通過方向が上方向となっているが、分離板に対して横方向やその他の方向に記録媒体が通過する構成においても本発明の構成を適用可能である。また、本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等とすることも可能である。
【0103】
以上のように、本発明によれば、結露により生じた水滴が記録媒体に付着するのをより効果的に防止できるので、水滴が記録媒体に付着することにより生じる画像不良や画像欠損を高度に防止できるようになる。また、本発明は、分離部材の通過面に吸湿材を設けないので、吸湿材に記録媒体が接触することによる搬送性低下の問題が生じることがなく、良好な搬送性が得られる。さらに、吸湿材に摩擦を低減させる表面処理を行う必要もないので、安価な構成とすることが可能である。また、本発明によれば、分離部材に水蒸気を通過させるための大きな開口部を設けなくてもよいので、開口部を形成することによる強度の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0104】
20 定着装置
23 定着ベルト(定着部材)
26 加圧ローラ(対向部材)
27 分離板(分離部材)
27e 通過面
27f 凹部
27h 孔部
29 吸湿材
30 空気層
31 伝熱部材
N 定着ニップ
P 記録媒体
θ 傾斜角度
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特開2007−47378号公報
【特許文献2】特開2007−47379号公報
【特許文献3】特開2003−107947号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材とそれと対向する対向部材との間に形成される定着ニップから送り出される記録媒体を、前記定着部材から分離する分離部材であって、
分離した記録媒体が通過する側の通過面を窪ませて水蒸気を滞留させる凹部を形成し、当該凹部の上部に前記通過面とは反対の面側に貫通する孔部を形成したことを特徴とする分離部材。
【請求項2】
定着部材とそれと対向する対向部材との間に形成される定着ニップから送り出される記録媒体を、前記定着部材から分離する分離部材であって、
分離した記録媒体が通過する側の通過面を窪ませて水蒸気を滞留させる凹部を形成し、当該凹部内に吸湿材を設け、当該吸湿材の表面を前記通過面よりも窪んだ位置に配設したことを特徴とする分離部材。
【請求項3】
前記吸湿材と前記凹部によって囲まれた空気層を設けた請求項2に記載の分離部材。
【請求項4】
前記凹部の上部に、前記通過面とは反対の面側に貫通する孔部を形成し、当該孔部を通して前記吸湿材の上端部を前記通過面とは反対の面側に配設した請求項2又は3に記載の分離部材。
【請求項5】
前記吸湿材に熱伝導性の高い部材を接触させた請求項2から4のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項6】
前記吸湿材をコルクで構成した請求項2から5のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項7】
前記吸湿材を吸湿機能を有する繊維の布で構成した請求項2から5のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項8】
前記吸湿材を吸湿機能を有する繊維を植毛したシートで構成した請求項2から5のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項9】
前記凹部の記録媒体通過方向下流側の面を、前記通過面側に接近するにつれて記録媒体通過方向下流側へ傾斜させた請求項1から8のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項10】
記録媒体幅方向端部が通過する箇所を除いて、前記凹部を配設した請求項1から9のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項11】
幅サイズの異なる記録媒体の各幅方向端部が通過する箇所を除いて、前記凹部を記録媒体幅方向に複数個並べて配設した請求項1から10のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項12】
前記凹部を、記録媒体通過方向に複数個並べて配設した請求項1から11のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項13】
前記凹部を、記録媒体通過方向と記録媒体幅方向とに列を成すように複数個並べて配設した請求項1から12のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項14】
前記複数個の凹部を記録媒体幅方向に並べて構成した列を、記録媒体通過方向に複数列配設し、ある列の前記凹部同士の間に対応する位置に他の列の前記凹部を配設した請求項13に記載の分離部材。
【請求項15】
前記凹部の上面を、記録媒体幅方向の一端側から他端側に向かって下方へ傾斜させた請求項1から14のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項16】
前記凹部の下面を、前記通過面側から離れるにつれて下方へ傾斜させた請求項1から15のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項17】
前記凹部の記録媒体通過方向下流側の面を、記録媒体幅方向の中間部側から両端部側に向かうにつれて記録媒体通過方向下流側へ傾斜させた請求項1から16のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項18】
前記凹部の下面を、記録媒体幅方向の中間部側から両端部側に向かうにつれて下方へ傾斜させた請求項1から17のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項19】
前記凹部を、記録媒体通過方向下流側に向かって記録媒体幅方向の近い方の端部側へ接近するように傾斜させた請求項1から18のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項20】
前記凹部の記録媒体通過方向に対する傾斜角度を、当該凹部の記録媒体幅方向の位置に応じて異ならせた請求項19に記載の分離部材。
【請求項21】
板状の部材を曲げるように形成して前記凹部を構成した請求項1から20のいずれか1項に記載の分離部材。
【請求項22】
定着部材と、それに対向する対向部材と、前記定着部材と前記対向部材との間に形成される定着ニップから送り出される記録媒体を、前記定着部材から分離する分離部材とを備える定着装置において、
前記分離部材として、請求項1から21のいずれか1項に記載の分離部材を用いたことを特徴とする定着装置。
【請求項23】
請求項22に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−98604(P2012−98604A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247489(P2010−247489)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】