説明

切削加工方法及び切削加工装置

【課題】 被加工物の表面に対して高精度で切削加工を施すことができる切削加工方法及び切削加工装置を提供すること。
【解決手段】 切削工具6を所定の送り方向に送ることにより、回転される被加工物16の表面に対して切削加工を施す切削加工方法。切削開始位置より所定の送り方向に送り速度fで切削工具6を送り、所定の切込み量dでもって被加工物16に対して一次切削加工を行い、その後に、切削開始位置から所定の送り方向に送りの位相を距離φ1=f/2だけずらして所定の送り方向に送り速度fで切削工具6を送り、所定の切込み量dでもって被加工物16に対して二次切削加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面に対して切削加工を施す切削加工方法及び切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被加工物の表面に対して切削加工を施す際には、例えばNC旋盤などの切削加工装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この切削加工装置は、切削工具を送り方向(すなわち、Z軸方向)に移動自在に支持するための第1支持手段と、切削工具を送り方向と実質上垂直な切込み方向(すなわち、X軸方向)に移動自在に支持するための第2支持手段と、切削工具を送り方向に往復移動させるための第1駆動モータと、切削工具を切込み方向に往復移動させるための第2駆動モータと、第1及び第2駆動モータをそれぞれ作動制御するためのコントローラと、を備えている。この切削加工装置による切削加工方法では、コントローラによって第1及び第2駆動モータがそれぞれ所要の通りに作動制御されることによって切削工具が送り方向に移動され、これにより所定方向に回転される被加工物の表面に対して例えば鏡面仕上げ加工などの切削加工が施される。
【0003】
【特許文献1】特開2002−166301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の切削加工装置による切削加工方法では、次のような問題が生じる。すなわち、被加工物の表面に対して切削加工を行うと、切削工具の切削刃部の形状が被加工物の表面に残ることによって被加工物の表面に小さな凹凸が存在するようになり、被加工物の表面を鏡面仕上げに加工することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、被加工物の表面に対して鏡面仕上げ加工を施すことができる切削加工方法及び切削加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の切削加工方法では、切削工具を所定の送り方向に送ることにより、回転される被加工物の表面に対して切削加工を施す切削加工方法であって、
切削開始位置より前記所定の送り方向に所定の送り速度で前記切削工具を送り、所定の切込み量でもって前記被加工物に対して一次切削加工を行い、その後に、前記切削開始位置から前記所定の送り方向に送りの位相をずらして前記所定の送り方向に前記所定の送り速度で前記切削工具を送り、前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して二次切削加工を行うことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の切削加工方法では、前記一次切削加工では、前記切削開始位置より前記所定の送り方向に送り速度fで前記切削工具を送って前記被加工物に対して切削加工を行い、また前記二次切削加工では、前記切削開始位置から前記所定の送り方向に送りの位相を距離f/2だけずらして、前記所定の送り方向に前記送り速度fで前記切削工具を送って前記被加工物に対して切削加工を行うことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に記載の切削加工方法では、前記二次切削加工の後に三次切削加工が更に行われ、前記三次切削加工では、前記切削開始位置から前記所定の送り方向に送りの位相を距離f/4又は3f/4だけずらして、前記所定の送り方向に前記送り速度fで前記切削工具を送って前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工を行い、更に前記切削開始位置から前記所定の送り方向に送りの位相を距離3f/4又はf/4だけずらして、前記所定の送り方向に前記送り速度fで前記切削工具を送って前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の切削加工装置では、切削工具を所定の送り方向に支持する第1支持手段と、前記切削工具を前記送り方向に対して実質上垂直な切込み方向に支持する第2支持手段と、前記切削工具を前記送り方向に往復移動させるための第1駆動手段と、前記切削工具を前記切込み方向に往復移動させるための第2駆動手段と、前記第1及び第2駆動手段をそれぞれ作動制御するための作動制御手段と、切削加工条件を演算するための加工条件演算手段と、を備え、前記切削工具を前記送り方向に送ることにより、回転される被加工物の表面に対して切削加工を施す切削加工装置であって、
一次切削加工が設定されると、前記加工条件演算手段は一次切削加工条件を演算し、この演算された前記一次切削加工条件に基づき前記作動制御手段が前記第1及び第2駆動手段を作動制御することにより一次切削加工が行われ、この一次切削加工では、切削開始位置より前記送り方向に送り速度fで前記切削工具が送られて所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工が行われ、
また二次切削加工が設定されると、前記加工条件演算手段は前記一次切削加工条件及び二次切削加工条件を演算し、この演算された前記一次切削加工条件に基づき前記作動制御手段が前記第1及び第2駆動手段を作動制御することにより前記一次切削加工が行われ、その後に、演算された前記二次切削加工条件に基づき前記作動制御手段が前記第1及び第2駆動手段を作動制御することにより二次切削加工が行われ、この二次切削加工では、前記切削開始位置から前記送り方向に送りの位相を距離f/2だけずらして前記送り方向に前記送り速度fで前記切削工具が送られて、前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工が行われることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の請求項5に記載の切削加工装置では、三次切削加工の設定が可能であり、三次切削加工が設定されると、前記加工条件演算手段は前記一次切削加工条件、前記二次切削加工条件及び三次切削加工条件を演算し、この演算された前記一次切削加工条件に基づき前記一次切削加工が行われ、その後に、演算された前記二次切削加工条件に基づき前記二次切削加工が行われ、更にその後に、演算された前記三次切削加工条件に基づき前記作動制御手段が前記第1及び第2駆動手段を作動制御することにより三次切削加工が行われ、この三次切削加工では、前記切削開始位置から前記送り方向に送りの位相を距離f/4又は3f/4だけずらして前記送り方向に前記送り速度fで前記切削工具が送られて、前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工が行われ、更に、前記切削開始位置から前記送り方向に送りの位相を距離3f/4又はf/4だけずらして前記送り方向に前記送り速度fで前記切削工具が送られて、前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の切削加工方法によれば、切削開始位置より所定の送り速度で切削工具を送って所定の切込み量でもって一次切削加工が行われた後に、切削開始位置から所定の送り方向に送りの位相をずらして、所定の送り速度で切削工具を送って所定の切込み量でもって二次切削加工を行うので、一次切削加工において生成される切削工具の切削刃部による小さな突部が二次切削加工によって切削され、これにより被加工物の表面粗さを非常に小さくすることができ、被加工物の表面に鏡面仕上げ加工を施すことが可能となる。特に、二次切削加工における被加工物に対する切削工具の切込み量は、一次切削加工における被加工物に対する切削工具の切込み量と等しいので、二次切削加工においては切削工具が被加工物の表面の突部を切削し、これによって被加工物の表面粗さを非常に小さくすることができる。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の切削加工方法によれば、一次切削加工では、切削開始位置より送り速度fで切削工具を送って被加工物に対して切削加工を行い、また二次切削加工では、切削開始位置から送りの位相を距離f/2だけずらして送り速度fで切削工具を送って被加工物に対して切削加工を行うので、一次切削加工において生成される被加工物の表面の小さな突部の最も大きい部位が二次切削加工によって切削され、これにより被加工物の表面粗さを非常に小さくすることができる。
【0013】
さらに、本発明の請求項3に記載の切削加工方法によれば、二次切削加工の後に行われる三次切削加工では、切削開始位置から送りの位相を距離f/4又は3f/4だけずらして切削工具を送り速度fで送って切削加工を行うことにより、二次切削加工において生成される被加工物の表面の一対の小さな突部のうち一方の最も大きい部位が切削され、また、切削開始位置から送りの位相を距離3f/4又はf/4だけずらして切削工具を送り速度fで送って切削加工を行うことにより、被加工物の表面の一対の小さな突部のうち他方の最も大きい部位が切削される。したがって、二次切削加工における一対の小さな突部が三次切削加工によってそれぞれ切削されることにより、被加工物の表面粗さをより小さくすることができる。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の切削加工装置によれば、二次切削加工が設定されると、切削開始位置より送り速度fで切削工具が送られて一次切削加工が行われ、その後に、切削開始位置から送りの位相を距離f/2だけずらして送り速度fで切削工具が送られて二次切削加工が行われるので、一次切削加工において生成される切削工具の切削刃部による小さな突部が二次切削加工によって切削され、これにより被加工物の表面粗さを非常に小さくすることができ、被加工物の表面に鏡面仕上げ加工を施すことが可能となる。また、二次切削加工が設定されると、一次切削加工及び二次切削加工がこの順に自動的に行われるので、比較的短時間で且つ効率的に被加工物に対する鏡面仕上げ加工を行うことが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の請求項5に記載の切削加工装置によれば、三次切削加工が設定されると、一次切削加工及び二次切削加工の後に三次切削加工が施され、この三次切削加工では、切削開始位置から送りの位相を距離f/4又は3f/4だけずらして送り速度fで切削工具を送って切削加工を行うことにより、二次切削加工において生成される切削工具の切削刃部による一対の小さな突部のうち一方が切削され、更に、切削開始位置から送りの位相を距離3f/4又はf/4だけずらして送り速度fで切削工具を送って切削加工を行うことにより、上記一対の小さな突部のうち他方が切削される。したがって、二次切削加工により被加工物の表面に残存する一対の小さな突部が三次切削加工によりそれぞれ切削されることによって、被加工物の表面粗さをより小さくして非常にきれいな鏡面仕上げ加工を施すことが可能となる。また、三次切削加工が設定されると、一次切削加工、二次切削加工及び三次切削加工がこの順に自動的に行われるので、比較的短時間で且つ効率的に被加工物に対する鏡面仕上げ加工を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う切削加工方法及び切削加工装置の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による切削加工装置の概略図であり、図2は、図1の切削加工装置を用いて、被加工物に対して一次切削加工を施した状態を示す概略断面図であり、図3は、図1の切削加工装置を用いて、被加工物に対して二次切削加工を施した状態を示す概略断面図であり、図4は、図1の切削加工装置を用いて、被加工物に対して三次切削加工を施した状態を示す概略断面図であり、図5は、図1の切削加工装置の制御系を簡略的に示すブロック図であり、図6は、図1の切削加工装置による切削加工方法の流れを示すフローチャートであり、図7は、図6のフローチャートにおける切削加工の流れを示すフローチャートである。
【0017】
図1〜図5を参照して、図示の切削加工装置2は例えばNC旋盤などから構成され、加工装置本体4と、切削工具6を送り方向に支持する第1支持手段8と、切削工具6を送り方向に対して実質上垂直な切込み方向に支持する第2支持手段10と、切削工具6を送り方向に往復移動させるための第1駆動手段12と、切削工具6を切込み方向に往復移動させるための第2駆動手段14と、切削工具6による被加工物16に対する切削加工を制御するための制御手段18と、を有している。以下、切削加工装置2の各構成要素について詳細に説明する。
【0018】
加工装置本体4の一端部には主軸部20が設けられ、この主軸部20の内部には軸受(図示せず)を介して主軸(図示せず)が回転自在に支持されている。主軸の一端部には、複数のチャック爪(図示せず)を有するチャック手段22が設けられており、この複数のチャック爪には、加工すべき例えば丸棒状(又は、円筒状)の被加工物16が着脱自在にチャッキング保持される。また、主軸の他端部には、例えば電動モータなどから構成される主駆動手段24(図5参照)が駆動連結されており、主駆動手段24が回転すると、主駆動手段24からの回転駆動力が主軸及びチャック手段22を介して被加工物16に伝達されて被加工物16が回転される。
【0019】
第1支持手段8は、加工装置本体4の上端部に設けられた案内支持レール26から構成されている。この案内支持レール26は、送り方向(所謂Z軸方向であって、図1〜図4において左右方向)に延びており、この案内支持レール26には移動用テーブル28が移動自在に支持されている。
【0020】
第2支持手段10は、移動用テーブル28の上端部に設けられた支持機構30から構成されている。この支持機構30は、切込み方向(所謂X軸方向であって、図1において紙面に対して垂直方向、図2〜図4において上下方向)に延びており、この支持機構30には刃物テーブル32が移動自在に支持されている。刃物テーブル32の上端部には、被加工物16を切削加工するための切削工具6が取り付けられており、本実施形態では、切削工具6の切削刃部6a(すなわち、被加工物16の表面に作用して切削加工を施す部分)は三角形状に構成されている(図2〜図4参照)。
【0021】
第1駆動手段12は、例えば電動モータなどから構成され、駆動伝達手段(図示せず)を介して移動用テーブル28と駆動連結されている。第1駆動手段12が所定方向(又は、所定方向と反対方向)に回転することにより、移動用テーブル28が図1中の矢印Pで示す方向(又は、矢印Qで示す方向)に移動され、これによって切削工具6が送り方向(又は、戻し方向)に往復移動される。
【0022】
第2駆動手段14は、例えば電動モータなどから構成され、駆動伝達手段(図示せず)を介して刃物テーブル32と駆動連結されている。第2駆動手段14が所定方向(又は、所定方向と反対方向)に回転することにより、刃物テーブル32が図1において紙面裏側(又は、紙面表側)、図2〜図4において上方向(又は、下方向)に移動され、これによって切削工具6が切込み方向(又は、戻し方向)に往復移動される。
【0023】
制御手段18は、例えばNC制御装置などから構成されており、作動制御手段34、加工次数設定手段36、加工条件演算手段38、記憶手段40、カウンタ42及び加工完了判定手段44を含んでいる。また、この制御手段18に関連して入力手段46が設けられており、この入力手段46は、例えば液晶パネルスイッチや操作キーボードなどから構成され、この入力手段46を入力操作することにより、例えば被加工物16の外形寸法データ、送り速度及び切込み量(後述する)などの加工情報や設定すべき切削加工次数Nが入力される。
【0024】
作動制御手段34は、主駆動手段24、第1駆動手段12及び第2駆動手段14をそれぞれ後述するようにして作動制御する。作動制御手段34により主駆動手段24の回転速度を制御することによって、被加工物16の回転速度n(rev/min)が制御され、作動制御手段34により第1駆動手段12の回転速度を制御することによって、切削工具6が送り方向に移動される際の送り速度f(mm/rev)(すなわち、送りのリード)が制御され、また作動制御手段34により第2駆動手段14を制御することによって、切削工具6の切込み量d(mm)が制御される。ここで、送り速度は、被加工物16の1rev(回転)当たりの送り方向への切削工具6の移動距離であり、また切込み量は、加工前の被加工物16の表面より切込み方向に切削工具6を切り込む距離である。
【0025】
加工次数設定手段36は、入力手段46により入力された切削加工次数Nに基づき、切削加工次数N=1,N=2又はN=3を設定する。後述するように、加工次数設定手段36により切削加工次数N=1が設定されると、一次切削加工が設定され、被加工物16に対して一次切削加工が行われ、加工次数設定手段36により切削加工次数N=2が設定されると、二次切削加工が設定され、被加工物16に対して一次切削加工及び二次切削加工がこの順に行われ、また加工次数設定手段36により切削加工次数N=3が設定されると、三次切削加工が設定され、被加工物16に対して一次切削加工、二次切削加工及び三次切削加工がこの順に行われる。
【0026】
加工条件演算手段38は、入力手段46により入力された加工情報(すなわち、被加工物16の外形寸法データなど)に基づき、被加工物16の回転速度n(rev/min)、切削工具6の送り速度f(mm/rev)、切削工具6の切込み量d(mm)、第1切削開始位置(すなわち、一次切削加工の始点)、切削終了位置(すなわち、切削加工の終点)などを演算設定し、また、二次切削加工又は三次切削加工において切削工具6が送り方向に移動される際の送りの位相(すなわち、二次切削加工又は三次切削加工の始点の第1切削開始位置に対するずれ量)などの切削加工条件を演算設定する。また、加工条件演算手段38は、設定された切削加工次数Nに基づき、一次切削加工からN次切削加工までの間に行われる切削回数M=2N−1(すなわち、切削工具6の送り方向の往復回数)を演算設定する。ここで、被加工物16の回転速度n(rev/min)及び切削工具6の送り速度f(mm/rev)については、これらが所定の関係を保つように(すなわち、回転速度n及び送り速度fが同期するように)して演算設定される。
【0027】
記憶手段40には、加工条件演算手段38により演算設定された切削加工条件が記憶される。カウンタ42は、切削回数(すなわち、切削工具6の送り方向の往復回数)をカウントし、また加工完了判定手段44は、加工条件演算手段38により演算設定された切削回数Mとカウンタ42のカウント値とを対比して、切削加工が設定された切削加工次数Nだけ行われたか否かを判定する。
【0028】
次に、図6及び図7をも参照して、本実施形態の切削加工装置2による切削加工方法の流れについて説明する。まず、加工次数設定手段36により切削加工次数N=1(一次切削加工)が設定された場合の切削加工方法の流れについて図2、図6及び図7に基づき説明する。被加工物16に対して切削加工が行われる前の状態においては、切削工具6は、被加工物16よりも離隔した所定の待機位置に位置付けられている。加工装置本体4のチャック手段22に加工すべき例えば丸棒状(又は、円筒状)の被加工物16を取り付け、入力手段46を入力操作することにより所定の加工情報(被加工物16の外形寸法データなど)及び切削加工次数N=1をそれぞれ入力する(ステップS1,S2)。このように入力手段46により切削加工次数N=1が入力されると、加工次数設定手段36は切削加工次数N=1を設定し(ステップS3)、これにより一次切削加工が設定され、加工条件演算手段38は、入力手段46により入力された加工情報に基づき、被加工物16の回転速度n(rev/min)、切削工具6の送り速度f(mm/rev)、切削工具6の切込み量d(mm)、切削回数M=1(=2)、第1切削開始位置及び切削終了位置などの一次切削加工条件などを自動的に演算設定し、このように演算設定された一次切削加工条件は、記憶手段40に切削加工データとして記憶される(ステップS4)。そして、このように演算設定された一次切削加工条件に基づき、被加工物16に対する一次切削加工が次のようにして行われる(ステップS5)。
【0029】
作動制御手段34は、演算設定された一次切削加工条件に基づき、主駆動手段24、第1駆動手段12及び第2駆動手段14をそれぞれ所要の通りに制御し、これにより被加工物16が所定方向に回転速度n(rev/min)で回転され(ステップS5−1)、また移動用テーブル28及び刃物テーブル32がそれぞれ所要の通りに移動されることにより切削工具6が待機位置から第1切削開始位置(すなわち、被加工物16の一端部)(図2参照)へ移動される(ステップS5−2)。
【0030】
このように切削工具6が第1切削開始位置に位置付けられると一次切削加工が開始され(ステップS5−3)、切削工具6の切削刃部6aが切込み方向(図2において上方向)に切込み量d(mm)でもって被加工物16の表面に作用し、さらに作動制御手段34によって第1駆動手段12が所定方向に回転されることにより、切削工具6が送り方向(図2中の矢印Pで示す方向)に送り速度f(mm/rev)で第1切削開始位置から切削終了位置(すなわち、被加工物16の他端部)まで移動される。このように切削工具6が移動されることによって、切削工具6の切削刃部6aが被加工物16の外面に作用し、被加工物16の表面に対して切込み量d(mm)でもって一次切削加工が施される。なお、この一次切削加工において、切削工具6の切削刃部6aの形状が被加工物16の周表面に残り、この残存した部分は螺旋状の山状突部48となり、切削工具6は送り速度f(mm/rev)で送られるので、隣接する山状突部48の送り方向における離間距離は距離f(mm)となる。
【0031】
切削工具6が切削終了位置まで移動すると、ステップS5−4からステップS5−5へと進み、カウンタ42のカウント値がカウントアップされて「1」となり、加工完了判定手段44は、このカウント値「1」と加工条件演算手段38により演算設定された切削回数M=1とを対比し(ステップS5−5)、切削加工次数N=1が設定されている場合、加工完了判定手段44は切削加工が設定された切削回数M=1行われたと判定してステップS5−6からステップS6に進んで判定信号を生成する。このようにして加工が終了すると、作動制御手段34は、加工完了判定手段44からの判定信号に基づき、第1駆動手段12及び第2駆動手段14をそれぞれ所要の通りに制御することにより、切削工具6を切削終了位置から元の位置(すなわち、待機位置)へと移動させ(ステップS7)、また主駆動手段24の回転を停止させることにより被加工物16の回転を停止させる(ステップS8)。また、カウンタ42のカウンタ値がリセットされて(ステップS9)、一次切削加工が完了され、このようにして被加工物16に対する切削加工が終了する。
【0032】
なお、このように被加工物16に対して一次切削加工を施した後に、この被加工物16と同じ外形寸法を有する未加工の被加工物(図示せず)に対して切削加工を施す場合には、加工済みの被加工物16をチャック手段22から取り外した後に、未加工の被加工物をチャック手段22に取り付けて一次切削加工を行う。この場合には、入力手段46により加工情報を再度入力することなく、記憶手段40に記憶された切削加工データに基づき上述したのと同様にして一次切削加工が行われる。
【0033】
次に、加工次数設定手段36により切削加工次数N=2(二次切削加工)が設定された場合の切削加工方法の流れについて図3、図6及び図7に基づき説明する。切削加工次数N=2が設定されると、一次切削加工が行われた後に二次切削加工が行われ、この二次切削加工によって一次切削加工において残存する被加工物16の表面の山状突部48に対して切削加工が施される。
【0034】
入力手段46を入力操作することによって所定の加工情報(被加工物16の外形寸法データなど)及び切削加工次数N=2を入力すると(ステップS1,S2)、ステップS3からステップS9に進み、加工次数設定手段36は切削加工次数N=2(二次切削加工)を設定し、これにより二次切削加工が設定され、加工条件演算手段38は、入力手段46により入力された加工情報に基づき、被加工物16の回転速度n(rev/min)、切削工具6の送り速度f(mm/rev)、切削工具6の切込み量d(mm)、切削回数M=2(=2)、第1切削開始位置及び切削終了位置などを演算設定するとともに、演算設定された送り速度f(mm/rev)に基づき切削工具6の送りの位相φ1=f/2(mm)を自動的に演算設定し、このように自動的に演算設定された一次切削加工条件及び二次切削加工条件は、それぞれ記憶手段40に切削加工データとして記憶される(ステップS10)。そして、このように演算設定された一次切削加工条件及び二次切削加工条件を用い、まず一次切削加工条件に基づいて上述したのと同様にして被加工物16に対して一次切削加工(ステップS5−1〜ステップS5−4)が行われ、その後に、二次切削加工条件に基づき二次切削加工が次のようにして行われる。
【0035】
切削工具6が第1切削開始位置から切削終了位置まで移動して一次切削加工が終了すると、加工完了判定手段44は、カウンタ42のカウント値「1」と加工条件演算手段38により演算設定された切削回数M=2とを対比し(ステップS5−5)、切削加工が設定された切削回数M=2行われていないと判定してステップS5−6からステップS5−7に進む。作動制御手段34は、演算設定された二次切削加工条件に基づき第1駆動手段12及び第2駆動手段14をそれぞれ所要の通りに制御し、これにより切削工具6が切削終了位置から第2切削開始位置(図3参照)へ移動される(ステップS5−7)。この第2切削開始位置は、第1切削開始位置より図3中の矢印Pで示す方向に距離φ1=f/2(mm)だけずれた位置である。このように切削工具6が第2切削開始位置に位置付けられると、二次切削加工が開始され(ステップS5−8)、切削工具6の切削刃部6aが、切込み方向(図3において上方向)に切込み量d(mm)でもって一次切削加工において被加工物16の表面に残存する山状突部48の最大部位に作用して切削し、さらに作動制御手段34によって第1駆動手段12が所定方向に回転されることにより、切削工具6が送り方向(図3中の矢印Pで示す方向)に一次切削加工時と等しい送り速度f(mm/rev)で第2切削開始位置から切削終了位置まで移動される。このように切削工具6が移動されることによって、図3に示すように、切削工具6の切削刃部6aが山状突部48の最大部位に作用し、被加工物16の表面に対して一次切削加工時と等しい切込み量d(mm)でもって二次切削加工が施される。
【0036】
切削工具6が切削終了位置まで移動すると、ステップS5−9からステップS5−10へ進み、カウンタ42のカウント値が更にカウントアップされて「2」となり、加工完了判定手段44は、このカウント値「2」と加工条件演算手段38により演算設定された切削回数M=2とを対比し(ステップS5−10)、被加工物16に対する切削加工が設定された切削回数M=2行われたと判定してステップS5−11からステップS6に進んで判定信号を生成する。さらにステップS7〜ステップS9が遂行されて、一次切削加工及び二次切削加工が完了され、被加工物16に対する切削加工が終了する。
【0037】
図3に示すように、この二次切削加工後において被加工物16の表面には山状突部50が残るようになり、上述のように切削加工次数N=2でもって切削加工を行うと、二次切削加工において一次切削加工後に被加工物16の表面に存在する山状突部48の最大部位を切削するので、二次切削加工後の被加工物16の表面の山状突部50の高さd1(mm)(すなわち、被加工物16の表面粗さ)は、一次切削加工における山状突部48の高さd(mm)よりも小さくなり、被加工物16の表面に鏡面仕上げ加工を施すことができる。なお、切削工具6は送り速度f(mm/rev)で送られるので、隣接する山状突部50の送り方向における離間距離はそれぞれ距離f/2(mm)となる。
【0038】
次に、加工次数設定手段36により切削加工次数N=3(三次切削加工)が設定された場合の切削加工方法の流れについて図4、図6及び図7に基づき説明する。切削加工次数N=3が設定されると、一次切削加工及び二次切削加工が行われた後に三次切削加工が行われ、この三次切削加工によって二次切削加工後の被加工物16の表面の上記山状突部50に切削加工が施される。入力手段46を入力操作することによって所定の加工情報(被加工物16の外形寸法データなど)及び切削加工次数N=3を入力すると(ステップS1,S2)、ステップS3からステップS9を経てステップS11に進み、加工次数設定手段36は切削加工次数N=3を設定し、これにより三次切削加工が設定される。加工条件演算手段38は、入力手段46により入力された加工情報に基づき、被加工物16の回転速度n(rev/min)、切削工具6の送り速度f(mm/rev)、切削工具6の切込み量d(mm)、切削回数M=4(=2)、第1切削開始位置及び切削終了位置などを自動的に演算設定するとともに、演算設定された送り速度f(mm/rev)に基づき、二次切削加工における切削工具6の送りの位相φ1=f/2(mm)及び三次切削加工における切削工具6の送りの位相φ2=f/4(mm),φ3=3f/4(mm)をそれぞれ自動的に演算設定し、このように演算設定された一次切削加工条件、二次切削加工条件及び三次切削加工条件は、それぞれ記憶手段40に切削加工データとして記憶される(ステップS12)。そして、このように演算された一次切削加工条件、二次切削加工条件及び三次切削加工条件を用い、一次切削加工条件に基づき一次切削加工(ステップS5−1〜ステップS5−4)が行われ、その後に、二次切削加工に基づき二次切削加工(ステップS5−7〜ステップS5−9)が行われ、更にその後に、三次切削加工条件に基づき三次切削加工が次のようにして行われる。
【0039】
切削工具6が第2切削開始位置から切削終了位置まで移動すると、加工完了判定手段44は、カウンタ42のカウント値「2」と加工条件演算手段38により演算設定された切削回数M=4とを対比し(ステップS5−10)、切削加工が設定された切削回数M=4行われていないと判定してステップS5−11からステップS5−12に進む。作動制御手段34は、演算設定された三次切削加工条件に基づき第1駆動手段12及び第2駆動手段14をそれぞれ所要の通りに制御し、これにより切削工具6が切削終了位置から第3切削開始位置(図4において実線で示す)へ移動される(ステップS5−12)。この第3切削開始位置は、第1切削開始位置より図4中の矢印Pで示す方向に距離φ2=f/4(mm)だけずれた位置である。このように切削工具6が第3切削開始位置に位置付けられると、三次切削加工が開始され(ステップS5−13)、切削工具6の切削刃部6aが、切込み量d(mm)でもって二次切削加工後の特定の山状突部50(一次切削加工後の山状突部48を切削することによって生じる一対の山状突部50のうち一方)に作用し、さらに作動制御手段34によって第1駆動手段12が所定方向に回転されることにより、切削工具6が送り方向(図4中の矢印Pで示す方向)に一次及び二次切削加工時と等しい送り速度f(mm/rev)で第3切削開始位置から切削終了位置まで移動される。このように切削工具6が移動されることによって、切削工具6の切削刃部6aが特定の山状突部50に対してその一端部から他端部まで切削し、被加工物16の表面に対して一次及び二次切削加工と等しい切込み量d(mm)でもって切削加工が施される。
【0040】
切削工具6が第3切削開始位置から切削終了位置まで移動すると(ステップS5−14)、カウンタ42のカウンタ値が更にカウントアップされて「3」となり、加工完了判定手段44は、カウンタ42のカウント値「3」と加工条件演算手段38により演算設定された切削回数M=4とを対比し(ステップS5−15)、切削加工が設定された切削回数M=4行われていないと判定してステップS5−16からステップS5−17に進み、作動制御手段34は、演算設定された三次切削加工条件に基づき第1駆動手段12及び第2駆動手段14をそれぞれ所要の通りに制御し、これにより切削工具6が切削終了位置から第4切削開始位置(図4において一点鎖線で示す)へ移動される。この第4切削開始位置は、第1切削開始位置より図4中の矢印Pで示す方向に距離φ3=3f/4(mm)だけずれた位置である。このように切削工具6が第4切削開始位置に位置付けられると、切削工具6の切削刃部6aが、切込み量d(mm)でもって残りの山状突部50(一次切削加工後の山状突部48を切削することによって生じる一対の山状突部50のうち他方)に作用し、さらに作動制御手段34によって第1駆動手段12が所定方向に回転されることにより、切削工具6が送り方向(図4中の矢印Pで示す方向)に上記送り速度f(mm/rev)で第4切削開始位置から切削終了位置まで移動される。このように切削工具6が移動されることによって、切削工具6の切削刃部6aが残りの山状突部50に対してその一端部から他端部まで切削し、被加工物16の表面に対して切込み量d(mm)でもって切削加工が施される。このように三次切削加工によって、二次切削加工後の被加工物16の山状突部50の最大部位を切削するので、三次切削加工後に被加工物16の表面に残る山状突部54の高さd2(mm)(すなわち、被加工物16の表面粗さ)は、二次切削加工における山状突部50の高さd1(mm)よりも更に小さくなり、被加工物16に対してよりきれいな鏡面仕上げ加工を施すことができる。
【0041】
切削工具6が切削終了位置まで移動すると、ステップS5−17からステップS5−18に進み、カウンタ42のカウント値が更にカウントアップされて「4」となり、加工完了判定手段44は、このカウント値「4」と加工条件演算手段38により演算設定された切削回数M=4とを対比し(ステップS5−18)、更にステップS5−19からステップS6に進み、切削加工が設定された切削回数M=4行われたと判定して判定信号を生成し、被加工物16に対する三次切削加工が終了する。その後、ステップS7からステップS9までが遂行されて、一次切削加工、二次切削加工及び三次切削加工が完了され、被加工物16に対する切削加工が終了する。
【0042】
本実施形態の切削加工装置2による切削加工方法では、次のような作用効果が達成される。第1に、一次切削加工が行われた後に、二次切削加工(二次切削加工及び三次切削加工)が行われるので、一次切削加工にて生じる被加工物16の表面の山状突部48(二次切削加工にて生じる被加工物16の表面の山状突部50)を二次切削加工(三次切削加工)により切削することができ、これにより被加工物16の表面に対して鏡面仕上げ加工を施すことが可能となる。第2に、切削加工次数N=2(切削加工次数N=3)が設定されると、一次切削加工及び二次切削加工(一次切削加工、二次切削加工及び三次切削加工)の切削加工条件が自動的に演算されてこれらの加工がこの順に自動的に行われるので、比較的短時間で且つ効率的に被加工物16に対して鏡面仕上げ加工を施すことが可能となる。
【0043】
以上、本発明に従う切削加工方法及び切削加工装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、加工次数設定手段36により、切削加工次数N=1,N=2及びN=3が選択的に設定されるように構成したが、これに限られず、これに加えて切削加工次数N=4が設定されるように構成しても良く、あるいは更に切削加工次数N=5が設定されるように構成しても良い。
【0045】
上述した切削加工を一般式で表すと、切削加工次数Nが設定された場合には、N次切削加工が設定され、一次切削加工からN次切削加工までの間に2N−1回の切削加工が行われ、このとき、切削工具6が送り方向に2N−1回往復される。また、N次切削加工においては、送りの位相は距離f/2N−1,3f/2N−1,・・・,(2N−1−1)f/2N−1だけそれぞれずらして、送り方向に送り速度f(mm/rev)で切削工具6を送ることにより行われる。例えば、切削加工次数N=1が設定されると、一次切削加工において切削回数M=1でもって切削加工が行われ、切削加工次数N=2が設定されると、一次切削加工及び二次切削加工において切削回数M=2でもって切削加工が行われ、また切削加工次数N=3が設定されると、一次切削加工から三次切削加工までの間に切削回数M=4でもって切削加工が行われる。
【0046】
また、例えば切削加工次数N=4が設定された場合には、四次切削加工が設定され、一次切削加工から四次切削加工までの間に切削回数M=8(=24−1)でもって切削加工が行われる。四次切削加工においては、第1切削開始位置から送り方向に送りの位相を距離f/8(mm),3f/8(mm),5f/8(mm),7f/8(mm)だけそれぞれずらして、送り方向に送り速度f(mm/rev)で切削工具6を送り、切込み量d(mm)でもって被加工物16に対して切削加工が行われる。これにより、三次切削加工により被加工物16の表面に生じた山状突部54を切削することができ、より一層きれいな鏡面仕上げ加工を施すことができる。例えば、切削工具6のノーズ半径(すなわち、切削工具6の切削刃部6aの半径)を0.8(mm)、切削工具6の送り速度を0.2(mm/rev)として一次切削加工から四次切削加工まで行うと、四次切削加工後に残存する山状突部の高さ(すなわち、被加工物16の表面粗さ)は0.1(μm)以下となる。
【0047】
また例えば、上記実施形態では、加工次数設定手段36により切削加工次数を設定することによって、被加工物16に対する切削加工を設定している(例えば、切削加工次数を「2」に設定すると、二次切削加工が設定される)が、切削加工次数に代えて切削加工モードを設定するようにしても良く、この場合、一次(又は二次、三次、・・・)切削加工モードを設定すると、一次(又は二次、三次、・・・)切削加工が設定されるようになる。
【0048】
また例えば、上記実施形態では、丸棒状又は円筒状の被加工物16の外面に対して切削加工を施すように構成したが、これに限られず、円筒状の被加工物の内面に対しても上述したのと同様の切削加工方法により切削加工を施すことができる。あるいは、外面が曲面状に形成された被加工物に対しても切削加工を施すことができ、この場合には、被加工物の外形寸法データを入力手段46により入力することにより、作動制御手段34により第1及び第2駆動手段12,14をそれぞれ所要の通りに回転させ、被加工物16の外形状に応じて切削工具6を送り方向及び切込み方向にそれぞれ適宜移動させるようにすればよい。
【0049】
また例えば、上記実施形態では、第1駆動手段12及び第2駆動手段14をそれぞれ電動モータから構成したが、これらを例えばリニアモータから構成するようにしてもよい。また、上記実施形態では、切削工具6の切削刃部6aを三角状に構成したが、適宜の形状のものを用いるようにしてもよい。
【0050】
また例えば、上記実施形態では、切削加工後の被加工物16の山状突部48(50,54)の最大部位を切削するようにしているが、必ずしも最大部位を切削する必要はなく、送りの位相をずらして切削加工を施すことによって上述したのと同様の作用効果を達成することができる。
【0051】
また例えば、上記実施形態では、移動テーブル28及び刃物テーブル32がそれぞれ送り方向及び切込み方向に往復移動するように構成したが、これに限られず、適宜の軸機構から構成するようにしてもよく、例えば次のように構成してもよい。第1支持手段には主軸部20が送り方向に移動自在に支持され、また第2支持手段には刃物テーブル32が切込み方向に支持されるように構成し、第1駆動手段が所定方向(又は、所定方向と反対方向)に回転することにより、主軸部20、すなわち被加工物16が送り方向(又は、戻し方向)に往復移動され、また第2駆動手段が所定方向(又は、所定方向と反対方向)に回転することにより、刃物テーブル32、すなわち切削工具6が切込み方向(又は、戻し方向)に往復移動される。したがって、切削工具6が被加工物16に対して相対的に送り方向に移動されるようになり、上述したのと同様に、切削工具6により被加工物16の表面に対して切削加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態による切削加工装置の概略図である。
【図2】図1の切削加工装置を用いて、被加工物に対して一次切削加工を施した状態を示す概略断面図である。
【図3】図1の切削加工装置を用いて、被加工物に対して二次切削加工を施した状態を示す概略断面図である。
【図4】図1の切削加工装置を用いて、被加工物に対して三次切削加工を施した状態を示す概略断面図である。
【図5】図1の切削加工装置の制御系を簡略的に示すブロック図である。
【図6】図1の切削加工装置による切削加工方法の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートにおける切削加工の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
2 切削加工装置
6 切削工具
8 第1支持手段
10 第2支持手段
12 第1駆動手段
14 第2駆動手段
16 被加工物
34 作動制御手段
38 加工条件演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具を所定の送り方向に送ることにより、回転される被加工物の表面に対して切削加工を施す切削加工方法であって、
切削開始位置より前記所定の送り方向に所定の送り速度で前記切削工具を送り、所定の切込み量でもって前記被加工物に対して一次切削加工を行い、その後に、前記切削開始位置から前記所定の送り方向に送りの位相をずらして前記所定の送り方向に前記所定の送り速度で前記切削工具を送り、前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して二次切削加工を行うことを特徴とする切削加工方法。
【請求項2】
前記一次切削加工では、前記切削開始位置より前記所定の送り方向に送り速度fで前記切削工具を送って前記被加工物に対して切削加工を行い、また前記二次切削加工では、前記切削開始位置から前記所定の送り方向に送りの位相を距離f/2だけずらして、前記所定の送り方向に前記送り速度fで前記切削工具を送って前記被加工物に対して切削加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の切削加工方法。
【請求項3】
前記二次切削加工の後に三次切削加工が更に行われ、前記三次切削加工では、前記切削開始位置から前記所定の送り方向に送りの位相を距離f/4又は3f/4だけずらして、前記所定の送り方向に前記送り速度fで前記切削工具を送って前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工を行い、更に前記切削開始位置から前記所定の送り方向に送りの位相を距離3f/4又はf/4だけずらして、前記所定の送り方向に前記送り速度fで前記切削工具を送って前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工を行うことを特徴とする請求項2に記載の切削加工方法。
【請求項4】
切削工具を所定の送り方向に支持する第1支持手段と、前記切削工具を前記送り方向に対して実質上垂直な切込み方向に支持する第2支持手段と、前記切削工具を前記送り方向に往復移動させるための第1駆動手段と、前記切削工具を前記切込み方向に往復移動させるための第2駆動手段と、前記第1及び第2駆動手段をそれぞれ作動制御するための作動制御手段と、切削加工条件を演算するための加工条件演算手段と、を備え、前記切削工具を前記送り方向に送ることにより、回転される被加工物の表面に対して切削加工を施す切削加工装置であって、
一次切削加工が設定されると、前記加工条件演算手段は一次切削加工条件を演算し、この演算された前記一次切削加工条件に基づき前記作動制御手段が前記第1及び第2駆動手段を作動制御することにより一次切削加工が行われ、この一次切削加工では、切削開始位置より前記送り方向に送り速度fで前記切削工具が送られて所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工が行われ、
また二次切削加工が設定されると、前記加工条件演算手段は前記一次切削加工条件及び二次切削加工条件を演算し、この演算された前記一次切削加工条件に基づき前記作動制御手段が前記第1及び第2駆動手段を作動制御することにより前記一次切削加工が行われ、その後に、演算された前記二次切削加工条件に基づき前記作動制御手段が前記第1及び第2駆動手段を作動制御することにより二次切削加工が行われ、この二次切削加工では、前記切削開始位置から前記送り方向に送りの位相を距離f/2だけずらして前記送り方向に前記送り速度fで前記切削工具が送られて、前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工が行われることを特徴とする切削加工装置。
【請求項5】
三次切削加工の設定が可能であり、三次切削加工が設定されると、前記加工条件演算手段は前記一次切削加工条件、前記二次切削加工条件及び三次切削加工条件を演算し、この演算された前記一次切削加工条件に基づき前記一次切削加工が行われ、その後に、演算された前記二次切削加工条件に基づき前記二次切削加工が行われ、更にその後に、演算された前記三次切削加工条件に基づき前記作動制御手段が前記第1及び第2駆動手段を作動制御することにより三次切削加工が行われ、この三次切削加工では、前記切削開始位置から前記送り方向に送りの位相を距離f/4又は3f/4だけずらして前記送り方向に前記送り速度fで前記切削工具が送られて、前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工が行われ、更に、前記切削開始位置から前記送り方向に送りの位相を距離3f/4又はf/4だけずらして前記送り方向に前記送り速度fで前記切削工具が送られて、前記所定の切込み量でもって前記被加工物に対して切削加工が行われることを特徴とする請求項4に記載の切削加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−175796(P2007−175796A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374751(P2005−374751)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(591014835)高松機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】