説明

切削装置

【課題】 チャックテーブルから被加工物を搬出する際にエアガンでフレームに貼着されたダイシングテープの裏面に付着した切削水を吹き飛ばす作業を不要にできる切削装置を提供することである。
【解決手段】 被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、該切削ブレードと被加工物とに切削水を供給する切削水供給手段と、該チャックテーブルに対して被加工物を搬入及び搬出する搬出入領域と該切削手段が配設された切削領域とにチャックテーブルを位置付ける位置付け手段と、を備えた切削装置であって、該搬出入領域の前面側近傍に被加工物に付着した切削水を拭い去る弾性部材からなるワイパーが配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関し、特にマニュアルタイプの切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが格子状に形成された分割予定ラインによって区画されて表面に形成された半導体ウエーハ(以下単にウエーハと略称する)は、ダイシングテープを介してウエーハを収容する開口部を有するリング状のフレームに配設され、切削装置によって個々のデバイスに分割されて、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、切削ブレードと被加工物とに切削水を供給する切削水供給手段と、チャックテーブルに対して被加工物を搬入及び搬出する搬出入領域と切削手段が配設された切削領域とにチャックテーブルを位置付ける位置付け手段と、から少なくとも構成され、被加工物を高精度に個々のデバイスに分割することができる(例えば、特開2007−103833号公報参照)。
【0004】
切削ブレードによるウエーハの切削は切削水を供給しながら実施される。切削加工の終了したウエーハはウエーハの表裏両面に切削水が付着する。従来のマニュアルタイプの切削装置では、切削装置の搬出入領域の前面側の外装カバーにエアガンを係止し、このエアガンでウエーハの表面に付着した切削水を吹き飛ばしてチャックテーブルからウエーハを搬出するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−103833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアガンでウエーハの表面に付着した切削水を吹き飛ばしてチャックテーブルからウエーハを搬出すると、ウエーハの裏面即ちリングフレームに配設されたダイシングテープの裏面に付着した切削水が滴下して床を濡らすという問題がある。
【0007】
そこで、従来はチャックテーブルからウエーハを搬出した後にエアガンでフレームに貼着されたダイシングテープの裏面に付着した切削水を吹き飛ばす作業を作業者(オペレータ)が行わなければならず、煩に耐えないという問題があった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チャックテーブルから被加工物を搬出する際にエアガンでフレームに貼着されたダイシングテープの裏面に付着した切削水を吹き飛ばす作業を不要にできる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、該切削ブレードと被加工物とに切削水を供給する切削水供給手段と、該チャックテーブルに対して被加工物を搬入及び搬出する搬出入領域と該切削手段が配設された切削領域とにチャックテーブルを位置付ける位置付け手段と、を備えた切削装置であって、該搬出入領域の前面側近傍に被加工物に付着した切削水を拭い去る弾性部材からなるワイパーが配設されていることを特徴とする切削装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の切削装置は、搬出入領域の前面側近傍に被加工物の裏面に付着した切削水を拭い去る弾性部材からなるワイパーが配設されているので、エアガンでリング状のフレームに貼着されたダイシングテープの裏面に付着した切削水を吹き飛ばす作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施形態に係る切削装置の斜視図である。
【図2】切削済みのウエーハをチャックテーブルから搬出する様子を示す斜視図である。
【図3】切削済みのウエーハをチャックテーブルから搬出しながらワイパーでダイシングテープの裏面に付着した切削水を拭い去る様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係る切削装置2の斜視図が示されている。切削装置2はマニュアルタイプの切削装置であり、作業者が被加工物を手で持ってチャックテーブル18上に搬入したり、切削済みの被加工物をチャックテーブル18から搬出したりするタイプである。
【0013】
4は切削装置2の外装カバーであり、この外装カバー4にヒンジ8で開閉自在に透明カバー6が装着されているとともに、ヒンジ12で開閉可能に透明カバー10が装着されている。透明カバー6,12はポリカーボネート等の透明樹脂から形成されている。透明カバー6は取っ手14を手で把持して開閉され、透明カバー10は取っ手16を手で把持して開閉される。
【0014】
18は被加工物を吸引保持するチャックテーブルであり、回転可能且つ加工送り機構によりX軸方向に往復動可能に構成されている。図3に最も良く示されるように、チャックテーブル18はポーラスセラミックス等から形成された吸引保持部18aを有しており、チャックテーブル18上に搬入された被加工物は吸引保持部18aにより吸引保持される。チャックテーブル18の周囲には4個のクランプ32が配設されている。
【0015】
被加工物である半導体ウエーハWはその裏面がダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周部はリングフレームFに貼着されている。これにより、半導体ウエーハWはダイシングテープTを介してフレームFで支持され、この状態で切削装置2に投入される。クランプ32はリングフレームFをクランプする。
【0016】
20は切削ユニットであり、切削ユニット20は図示しないスピンドルの先端部に装着された切削ブレード26を含んでいる。被加工物の切削時には、切削ブレード26が装着されたスピンドルは図示しないモータにより高速(例えば30000rpm)で回転される。
【0017】
切削ブレード26の上半分はブレードカバー28で覆われており、ブレードカバー28には被加工物の切削時に切削水を切削ブレード26と被加工物に供給する切削水ノズル30が配設されている。
【0018】
チャックテーブル18は被加工物を搬入及び搬出する搬出入領域22と、切削ユニット20が配設された切削領域24との間で加工送り機構により移動される。この加工送り機構は、チャックテーブル18を搬出入領域22と切削領域24とに位置付ける位置付け手段として作用する。
【0019】
31は顕微鏡及びCCDカメラを備えた撮像ユニットであり、ウエーハWを撮像して切削すべき領域である分割予定ラインを検出する。搬出入領域22の前側近傍には、ダイシングテープTに付着した切削水を拭い去るワイパー34が配設されている。ワイパー34はゴム又はスポンジ等から形成される。
【0020】
36はウエーハWの表面に付着した切削水を吹き飛ばすエアガンであり、フック40に係止されている。38はエアガン36に圧搾空気を送るフレキシブルホースである。
【0021】
以下、このように構成された切削装置2の作用について説明する。ウエーハWの切削加工を実施するにあたり、切削装置2のオペレータは取っ手14を掴んで透明カバー6を開け、フレームFに支持されたウエーハWを搬出入位置22に位置付けられているチャックテーブル18上に載置し、吸引保持部18aに負圧を作用させることによりウエーハWをダイシングテープTを介して吸引保持し、クランプ32でフレームFをクランプすることにより固定する。
【0022】
次いで、加工送り機構を駆動してウエーハWを撮像ユニット31の直下に移動し、撮像ユニット31でウエーハWを撮像して、切削加工すべきウエーハWの分割予定ラインを検出するアライメントを実施する。このアライメントは、直交する2方向の分割予定ラインについて実施する。
【0023】
アライメント実施後、加工送り機構を駆動してチャックテーブル18を切削領域24に位置付け、この切削領域24で切削ブレード26を高速回転させながらウエーハWの分割予定ラインに切り込ませ、加工送り機構を駆動してウエーハWを分割予定ラインに沿って切削する。この切削時には、切削水ノズル30から切削水を切削ブレード26及びウエーハWに供給しながら切削を実施する。
【0024】
切削ユニット20をY軸方向に割り出し送りしながら、第1の方向に伸長する全ての分割予定ラインを切削する。次いで、チャックテーブル18を90度回転してから、第2の方向に伸長する分割予定ラインに沿ってウエーハWを切削する。切削加工が終了すると、ウエーハWは個々のデバイスに分割されるが、ダイシングテープTに貼着されているのでウエーハWの形状を維持している。
【0025】
ウエーハWの切削加工が終了すると、位置付け手段として作用する加工送り機構により、チャックテーブル18を搬出入領域22に位置付ける。この状態で、オペレータがエアガン36を掴んでウエーハWの表面に付着した切削水を吹き飛ばす。
【0026】
次いで、チャックテーブル18の吸引保持を解除し、クランプ32をアンクランプして、図2及び図3に示すように、フレームFに支持されたウエーハWを矢印Y1で示す方向に引き出す。
【0027】
この時、ワイパー34が搬出入領域22の近傍の前側に設けられているので、ダイシングテープTの裏面に付着した切削水はワイパー34により拭い去られ、切削水が滴下して床を濡らすという問題を解決できる。
【0028】
本実施形態では、ワイパー34によりダイシングテープTの裏面に付着した切削水を拭い去ることを意図しているため、オペレータは切削加工の終了したウエーハWを斜め上方向には引き出さずに、矢印Y1で示される水平方向に引き出してワイパー34でダイシングテープTの裏面に付着した切削水を拭い去るようにする。
【符号の説明】
【0029】
2 切削装置
18 チャックテーブル
20 切削ユニット
22 搬入搬出領域
24 切削領域
26 切削ブレード
34 ワイパー
36 エアガン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、該切削ブレードと被加工物とに切削水を供給する切削水供給手段と、該チャックテーブルに対して被加工物を搬入及び搬出する搬出入領域と該切削手段が配設された切削領域とにチャックテーブルを位置付ける位置付け手段と、を備えた切削装置であって、
該搬出入領域の前面側近傍に被加工物に付着した切削水を拭い去る弾性部材からなるワイパーが配設されていることを特徴とする切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−110235(P2013−110235A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253512(P2011−253512)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】