説明

切断ひねり絞り具

【課題】構成が簡単で破損のおそれが少なく、また、切断動作及び絞り動作を1つの道具で持ち替えることなく一連の動作として簡単に行えるようにした切断ひねり絞り具を提供する。
【解決手段】絞り部20は、把持部10側からカット部30側に向かって延びる一対の棒状部21と、これらの間に形成される、レトルトパウチの挿入及び移動を許容する絞り間隙22とを有し、カット部30は、絞り間隙22の先端部近傍に、刃部31aが把持部10側に向けられてかつ刃部31aが絞り間隙22を横断するような姿勢で取り付けられたカッターを有する。絞り間隙22にレトルトパウチの切断部を挿入してカッター31を引くことで、レトルトパウチの切断部を切断し、切断後のレトルトパウチを、切断部から遠い側から切断部に向けて絞り間隙22に挿通させることで、内容物を絞り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物が詰められたレトルトパウチの切断部を切断して、切断部から内容物を絞り出す切断ひねり絞り具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レトルト食品は、密封性、保存性、及び利便性に優れた食品として広く普及している。
【0003】
レトルト食品は、一般に、内容物が専用のレトルトパウチに充填されて密封されていて、液状の内容物であっても漏れることがなく、また、長期の保存が可能であり、さらに、温めるだけで簡単に食することができる。このため、内容物としては、カレー、シチュー、各種丼の具(例えば、牛丼、マーボ丼)、ハンバーグ等の種々の食材が用いられる。
【0004】
レトルト食品を食する際には、普通、沸騰した湯の中にレトルト食品を数分間浸して温めた後、熱湯から取り出して、切断部を切断し、カレー等の内容物を皿にあける。
【0005】
ここで、レトルト食品を開封したり、内容物を絞り出したりする道具が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1のものは、開封用のカッターであり、カバーから取り出した状態では、通常のカッターとして使用することができ、また、カバーに収納した状態では、カッターの刃が、「V字形」の溝に配置されるので、レトルトパウチの切断部をこの溝に挿入して、カッターを手前に引くことで、切断部を簡単に切断することができる。
【0006】
また、特許文献2のものは、長板状の2枚の板状部材を、長手方向の一方の端部にヒンジを設けて、一方の長辺を基準に構成されている。ヒンジがある側の一方の板状部材の内側には切断刃が設けられ、他方の板状部材の内側にはこの切断刃に対応する窪みが設けてあり、両者で挟み込んで、レトルトパウチを切断することができる。また、2枚の板状部材の、ヒンジがない側の端部で、レトルトパウチを挟み込んで、熱湯から取り出すことができるようになっている。
【0007】
また、特許文献3は、切断用のはさみと絞り用のはさみを、柄を共通としてそれぞれ反対側に設けて構成されていて、通常のはさみと同様に使用して、レトルトパウチの切断部を切断し、また、逆に持ち替えて、絞り用のはさみで、レトルトパウチを挟んで内容物を絞り出すことができる。
【特許文献1】特開平11−301402号公報
【特許文献2】特開平9−253348号公報
【特許文献3】特開2007−68938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のものは、カッターによってレトルトパウチの切断部は、良好に切断することができるものの、切断部から内容物を絞り出すためには、カッターを置いて、手で絞ったり、あるいは他の絞り具を用いて行ったりする必要があるために、切断及び絞り出しの一連の動作が煩雑になるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2のものは、切断時に、2枚の板状部材を開いてこれらの間にレトルトパウチの切断部を挟み込み、その後、切断部を切断するというように、切断動作が複雑になるという問題があった。また、ヒンジを有する複雑な構造であるため、破損しやすいという問題もあった。さらに、特許文献1のものと同様、切断後には、内容物を手で絞ったり、あるいは他の絞り具を用いて絞ったりする必要があるために、切断及び絞り出しの一連の動作が煩雑になるという問題があった。
【0010】
また、特許文献3のものは、切断用のはさみと絞り用のはさみとが、柄に対して反対側に配置されているので、レトルトパウチを切断した後、内容物を絞り出す際に、持ち替える動作が必要となり、動作が煩雑になるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、構成が簡単で破損のおそれが少なく、また、切断動作及び絞り動作を1つの道具で持ち替えることなく一連の動作として簡単に行えるようにした切断ひねり絞り具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、内容物が詰められたレトルトパウチの切断部を切断するとともに、前記切断部から前記内容物を絞り出す切断ひねり絞り具に関する。この発明に係る切断ひねり絞り具は、基端部に設けられて使用者の手で握られる把持部と、前記把持部から先端側に向かって延びる絞り部と、前記絞り部の先端側に設けられたカット部とを備え、前記絞り部は、前記把持部側から前記カット部側に向かって延びる一対の棒状部と、前記一対の棒状部の間に形成されて、前記レトルトパウチの挿入及び移動を許容する絞り間隙と、を有し、前記カット部は、前記絞り間隙の先端部近傍に、刃部が前記把持部側に向けられてかつ前記刃部が前記絞り間隙を横断するような姿勢で取り付けられたカッターを有し、前記絞り間隙に前記レトルトパウチの切断部を挿入して前記切断部と前記カッターとを相対移動させることで前記レトルトパウチの切断部を切断し、切断後の前記レトルトパウチを、前記切断部から遠い側から前記切断部に向けて前記絞り間隙に挿通させることで前記内容物を前記レトルトパウチから絞り出す、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る切断ひねり絞り具において、前記カッターは、前記刃部が前記絞り間隙の幅方向に対して、一端側が前記基端側に位置し他端側が前記先端側に位置するように傾斜して取り付けられている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る切断ひねり絞り具において、前記カット部は、前記カッターを位置決めする位置決め部と、前記位置決め部に位置決めされた前記カッターを着脱可能に固定する固定具と、を有する、ことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に係る切断ひねり絞り具において、前記絞り間隙は、前記把持部側から前記カッターまで、幅が一定となる、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の切断ひねり絞り具において、前記内容物が絞り出された前記レトルトパウチを折り畳んだ状態で挿通させる絞りスリットを有する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に係る切断ひねり絞り具において、前記カット部に、前記レトルトパウチの周端縁に引っかけて前記レトルトパウチを移動させるフックを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、切断ひねり絞り具の把持部を手で握り、反対の手でレトルトパウチの切断部を絞り間隙に挿入し、切断部とカッターとを相対移動させる、例えば、切断ひねり絞り具を手前に引いて、カッターを手前に移動させることにより、レトルトパウチの切断部を切断することができる。つづいて、レトルトパウチを上下逆さにして、切断部を下方に配置し底部(切断部から遠い側)を上方に配置することで、内容物を皿等にあける。さらに、底部を下方から絞り間隙に挿入した状態で、絞り間隙を下方に移動させることにより、レトルトパウチの内面に付着して残った内容物を絞り出すことができる。この際、絞り間隙を、その長手方向を軸として適宜に回転させることにより、絞り間隙の実質的な幅(上方から見たときの見かけ上の幅)を変更することができるので、内容物の種類や、内容物の付着状況に応じて適宜に調整することができる。請求項1の発明によれば、上述のレトルトパウチの切断部の切断操作と、内容物の絞り動作とを、1つの切断ひねり絞り具で、しかも持ち替えることなく一連の動作として行うことができる。また、可動部を設ける必要がないので、構造が簡素となり、破損しにくくなる。
【0018】
請求項2の発明によれば、切断時の切断部の移動方向に対して、カッターの刃部が傾斜して配置されているので、切断部を容易に切断することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、カッターの交換が容易である。
【0020】
請求項4の発明によれば、絞り間隙がカッターに近いほど幅が狭くなるように先細りに形成されているので、絞り間隙にレトルトパウチの切断部を挿入した状態で、切断ひねり絞り具を例えば手前に引いていくと、これに伴い、レトルトパウチの切断部がカッターに向かって相対移動する際に、先細りに絞り間隙に倣ってカッターに向かって導かれていく。これにより、切断部をより円滑に切断することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、例えば、2つ折り状態のレトルトパウチの底部近傍を絞りスリットに挿入した後、絞りスリットをレトルトパウチの切断部に向けて移動させることで、レトルトパウチの内面に付着している内容物をさらによく絞り出すことができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、例えば、熱湯で温めた後のレトルトパウチの周端縁にフックを引っ掛けて、レトルトパウチを熱湯から取り出すことができる。すなわち、熱くなったレトルトパウチを直接手で触れることなく、熱湯から引き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
<実施形態1>
【0024】
図1〜図13を参照して、本発明に係る切断ひねり絞り具の実施形態1について説明する。ここで、図1(a)は、切断ひねり絞り具1の正面図であり、(b)は上面図であり、(c)は下面図である。図2は、絞りスリット11の使用状態を説明する図である。図3は、絞りスリット11の他の使用状態を説明する図である。図4は、絞りスリット11のさらに別の使用状態を説明する図である。図5は、ラップ刃外し12の使用状態を説明する図である。図6は、第1フック13の使用状態を説明する図である。図7は、第1フック13の他の使用状態を説明する図である。図8(a),(b)は、缶詰オープナー14の使用状態を説明する図である。図9は、カッター31の使用状態を説明する図である。図10(a),(b)は、絞り間隙22の使用状態を説明する図である。図11は、第2フック(フック)34の使用状態を説明する図である。図12は、キャップオープナー35の使用状態を説明する図である。図13は、把持部10に砂時計15を取り付けた状態を説明する図である。
【0025】
図1(a),(b),(c)に示すように、切断ひねり絞り具1全体は、長く形成されていて、基端部(図1中の右側)には把持部10が設けられ、中間部には絞り部20が設けられ、先端部(図1中の左側)にはカット部30が設けられている。本実施形態の切断ひねり絞り具1は、(a)に示す正面図に現れる形状と、この反対の面である背面図に現れる形状とがほぼ同形に形成されている。
【0026】
把持部10は、レトルトパウチ41(レトルト食品40の袋)を絞ったり(図10参照)、その切断部42を切断したり(図9参照)する際に使用者が手で握る部分であり、ほぼ長方形の板状に形成されていて、その長手方向を、切断ひねり絞り具1の長手方向に向けている。把持部10の長手方向のほぼ中央には、絞りスリット11が形成されている。絞りスリット11は、把持部10における下端側10aから、上端側10bでかつ先端側に向けて斜めに形成された、表裏(正面側と背面側)とを貫通するスリットである。この絞りスリット11は、図2に示すように、レトルトパウチ41の切断部42近傍を挿入して、例えば、レトルトパウチ41を横に引くことにより、切断部42の切断に先立ち、切断部42近傍の内側に付着している内容物を下方に絞り落とすことができる。すなわち、現状は、熱さを我慢して指で絞り落としているが、このスリット11を使用することで、火傷することもなく、内容物を下方に絞り落とすことができる。また、この絞りスリット11は、図3に示すように、後述する絞り間隙22で、内容物を絞った後に、レトルトパウチ41を例えば2つ折りにして、この絞りスリット11に底部44側から通し、さらに、絞りスリット11を底部44側から切断部42側に向けて移動させることにより、絞り間隙22では絞りきれなかった内容物を絞り出すことができる。さらに、この絞りスリット11は、図4に示すように、チャック付き袋50のチャック51を閉じるのに使用することもできる。チャック付き袋50のチャック51は、指では、位置合わせをしづらいことと、力が入りにくいこととにより、うまく閉じることが難しいため、何度でもやり直すことが多い。これに対し、本実施形態の絞りスリット11を利用した場合には、チャック51の端を絞りスリット11に挿入した後、スリット11を軽くひねることにより、その部分のチャック51を密着させることができる。その後、この軽くひねった状態を維持しつつ、チャックを移動させることにより、位置合わせを確実にして、強い力を付与することができるので、簡単にチャック51を閉じることができる。
【0027】
図1(a)に示すように、把持部10における基端側の下端側10a近傍には、ラップ刃外し12が形成されている。このラップ刃外し12は、把持部10の基端側から先端側に向けて形成されたスリットである。図5に示すように、ラップを収納した箱60には、その長手方向に沿って帯び状の金属の刃61が取り付けてあり、ラップがなくなった際には、分別収集のため、ボール紙で形成された箱60からこの金属製の刃61を取り外す必要がある。この際、図5に示すように、ラップ刃外し12に、金属製の刃61の端部を挿入した後、切断ひねり絞り具1をその長手方向に沿った軸心C(図1参照)を基準として矢印方向に回転させることにより、刃61を簡単に、しかも安全に巻き取って取り外すことができる。
【0028】
図1(a)に示すように、把持部10における基端側には上端側10bから下端側10aに向けて、第1フック13が形成されている。この第1フック13は、図6に示すように、例えば、吊り金具70に引っ掛けることにより、紐等を使用することなく、切断ひねり絞り具1を壁等に吊り下げることができる。第1フック13の内側には、係止用の凹部13aが形成されていて、この凹部13aを吊り金具70に引っ掛けることにより、吊り金具70から不要に外れることを防止している。また、この第1フック13は、図7に示すように、プルタブ80に引っ掛けて、引っ張ることで、プルタブ80を簡単に取り外すことができる。例えば、醤油やソースのプレスチック容器に使用されているプルタブ80は、リングが小さくて小指がやっとはいるくらいのものが多い割に、強い力で引かないとあけることができないものが多い。第1フック13は、このようなプルタブ80を外す際に有効である。
【0029】
図1(a)に示すように、把持部10における先端側の下端側10a近傍には、缶詰オープナー14が形成されている。この缶詰オープナー14は、先端側から、上端側10bでかつ後端側に向けて斜めに延びるスリットであり、図8(a)に示すように、缶詰のプルタブ90に引っ掛けて矢印方向に手前側に起こし、さらに図8(b)に示すように、絞りスリット11側を支点として、この缶詰オープナー14側を矢印方向に引き上げることにより、缶詰の蓋を容易にあけることができる。一般に、缶詰のプルタブの隙間は狭くて、指が入りにくいため、このような缶詰オープナー14が付いていると便利である。さらに、本実施形態の缶詰オープナー14は、まず、缶詰の蓋にほぼ密着して隙間がほとんどないプルタブ90に対し、蓋とプルタブ90の僅かな隙間に缶詰オープナー14の先端を挿入して、プルタブ90に引っ掛け、つづいて、図8(a)に示すように、プルタブ90を引き起こして蓋の一部を缶詰から切り離し、その後、図8(b)に示すように、絞り絞りスリット11側を缶詰の周縁部に当ててここを支点として、プルタブ90を矢印方向に引っ張って蓋を開けることができる。以上の動作を、切断ひねり絞り具1のカット部30側を手で握った状態で、一連の動作として行うことができる。既存の缶詰オープナーは、図8(a)に示す、プルタブ90を起こす動作と、図8(b)に示す、プルタブ90を引き上げて、蓋を開放する動作とを、一連の動作として行うことができないで、缶詰オープナーを持ち替える必要があるものが多い。
【0030】
図1(a)に示すように、絞り部20は、上述の基端部に設けられた把持部10から先端部のカット部30に向かって延びるように形成されている。絞り部20は、把持部10からカット部30に向かって延びる一対の平行な棒状部21,21とその間に形成された絞り間隙22とによって構成されている。本実施形態においては、絞り間隙22は、その幅(一対の棒状部21,21間の距離)が、基端側から先端側まで等しくなるように形成されている。このため、絞り間隙22にレトルトパウチ41を挿入する際に、挿入しやすい。この絞り間隙22は、切断ひねり絞り具1をその軸心Cを基準に回転させることにより、実質的な間隙を狭めることができる。すなわち、例えば、図1(a)中の軸心Cを同図中の右側から見た状態から、軸心Cを基準として切断ひねり絞り具1を左回り又は右回りに回転させて傾斜させると、正面側又は背面側から見た絞り間隙22の幅が狭められることになる。これにより、後述するように、レトルトパウチ41を間隙22に通過させてレトルトパウチ41から内容物を絞り出す際に、切断ひねり絞り具1を適宜にひねって(回転させて)間隙22の実質的な間隙(幅)を調整することにより、内容物を速やかに、かつ確実に絞り出すことができる。
【0031】
棒状部21には、図1(a)〜(c)に示すように、凸部21aが設けられている。凸部21aは、2本の棒状部21のうちの、上側に位置する棒状部21における長手方向の略中央(図1(a)中の左右方向の略中央)において、この棒状部21の正面側(図1(b)中の下側)及び背面側(図1(b)の上側)にそれぞれ1つずつ、計2個が設けられている。各凸部21aは、略ピラミッド状(四角錐状)に形成されていて、頂部21bは、尖っている。これら凸部21aは、レトルトパウチ41に折り目となる筋を付けるためのものである。すなわち、後述するように、レトルトパウチ41を絞り間隙22に挿入して、絞り間隙22によってレトルトパウチ41から内容物を絞り出す際に、上述のように切断ひねり絞り具1を、軸心Cを基準に左回り又は右回りにひねって絞り間隙22を調整して(狭めて)絞り出すようにしている。このとき、凸部21aの頂部21bがレトルトパウチ41の一部(例えば、中心近傍)に当接するようにすれば、レトルトパウチ41の中心近傍に切断ひねり絞り具1の移動方向に沿って筋が付けられることになる。これが、折り目となって、レトルトパウチ41に残った内容物を、さらに上述の絞りスリット11によって絞り出すに先立って、レトルトパウチ41を容易に2つ折りすることが可能となる。なお、凸部21aが2個設けられているのは、切断ひねり絞り具1をひねる際に、右利きと左利きとでは、そのひねる方向が異なることが想定されるので、両者に対応するためである。また、凸部21aの形状については、角錐状に限らず、例えば、円錐状であってもよい。また、位置についても、棒状部21の長手方向の中央に限定されるものではなく、長手方向の中央からずれた位置であってもよい。また、2個の凸部21aは、上側の棒状部21に設けるのに代えて、下側の棒状部21に設けるようにしてもよい。なお、図1以外の図においては、これら凸部21aの図示は省略している。
【0032】
図1(a)に示すように、カット部30は、絞り部20の先端に設けられている。カット部30は、カッター31を有している。カッター31は、その刃部31aが把持部10側を向き、かつ絞り間隙22を横断するような姿勢で取り付けられている。さらにカッター31は、その刃部31aが絞り間隙22の幅方向(軸心Cに直交する方向)に対して傾斜した状態で取り付けられている。カッター31は、図1(b)に示すスリット(位置決め部)32に挿入されて位置決めされ、さらに、ボルト(固定具)33によって固定されている。すなわち、カッター31は、ボルト33を緩めることにより簡単に取り外すことができ、また、ボルト33を緩めた状態で、スリット32に挿入した後、ボルト33で締め付けることにより、簡単に位置決め固定することができる。つまり、カッター31は、着脱が容易となっていて、刃部31aが切れなくなってきたら、簡単に交換することができる。
【0033】
なお、絞り間隙22及びカッター31の作用、すなわち、レトルトパウチ41の切断部42の切断、及び絞り間隙22によるレトルトパウチ41からの内容物の絞り出しについては、図9,図10を参照して後述する。
【0034】
図1(a)に示すように、カット部30における先端側の下端側には、第2フック34が形成されている。この第2フック34は、図11に示すように、熱湯で十分に温められたレトルト食品40を熱湯から取り出す際に、レトルトパウチ41の周端縁43に引っ掛けることで、レトルト食品40を、直接手で触れることなく、容易に熱湯から取り出すことができる。さらに、この第2フック34は、カップラーメン,カップそば,カップ焼きそば等の表面を覆っている薄い透明フィルムを剥がす際に使用することができる。すなわち、第2フック34の尖った先端を、例えば、透明フィルムのうちの、カップのフランジ部の裏面側に位置する部分に突き刺して少し移動させることにより、簡単に、透明フィルムを剥がすことができる。
【0035】
図1(b),(c)に示すように、カット部30における先端は、他の部分よりも先が薄くなるように形成されていてキャップオープナー35となっている。キャップオープナー35は、図12に示すように、缶詰本体92の上側の周端縁92aと、キャップ93の周端縁93aとの間に、挿入してキャップ93を容易にあけることができる。また、このように、カッター31よりも先端側に位置する部分が薄くなるように形成することにより、後述するように、カッター31によってレトルトパウチ41の切断部42を切断する際に、切断後にこの薄部分を通過するレトルトパウチ本体とこの本体から切断された部分との移動が円滑になる。すなわち、この部分が厚い場合には、切断部42を切断する際、レトルトパウチ本体とこの本体から切断された部分とが、カット部30に当たって逃げ場がなくなり、カッター31を引こうとしてもカッター31が進まなくなるという不具合が発生する。カット部30の先端を上述のように薄く形成することにより、このような不具合をなくすことができる。缶詰本体92の上側の周端縁92aと、キャップ93の周端縁93aとの間は狭いにもかかわらず、キャップ93は強い力を加えないとあけることができない。このため、一般に、コインやドライバーの先端を挿入してあけるようにしている。ところで、コインやドライバーは、普通、台所にあるものではないので、従来、これらを使用するために、わざわざ台所を離れる必要があった。これに対し、請求項1に係る切断ひねり絞り具1は、台所に常備されるものなので、必要なときに直ぐに手に届くので、そのキャップオープナー35を利用して簡単にキャップ93を開放することができる。
【0036】
次に、図9を参照して、切断ひねり絞り具1の作用を、絞り間隙22及びカッター31の作用を中心に説明する。なお、図9においては、既に切断された切断部42を実線で示し、これから切断される切断部42を二点鎖線で示している。切断作業に先立ち、スリット11を利用して、切断部42近傍の内容物を下方に絞り落とす。図9に示すように、レトルト食品40のレトルトパウチ41の切断部42を切断するには、まず、一方の手で、切断ひねり絞り具1の把持部10を握り、他方の手でレトルトパウチ41の切断部42を絞り間隙22に挿入する。つづいて、他方の手で、レトルトパウチ41の切断部42の下方でかつカッター31に近い側を掴み(例えば、図9中の二点鎖線Pで示す部分)、この状態で、切断ひねり絞り具1を手前に引いて、カッター31を手前に移動させる。これにより、切断部42を切断することができる。この際、カッター31が傾斜して取り付けられているので、切断部42を円滑に切断することができる。
【0037】
つづいて、レトルトパウチ41を逆さにして、切断部42から内容物S(後述)を容器95にあける。さらに、図10(a)に示すように、レトルトパウチ41の底部44側を下方から、絞り間隙22に通し、切断ひねり絞り具1をその軸心C(図1参照)を中心に少し回転させて、絞り間隙22の実質的な幅を狭める。この状態で、図10(b)に示すように、切断ひねり絞り具1を下方に移動させ、内容物Sを切断部42から絞り出して、容器95に入れる。これにより、レトルトパウチ41の内面に付着していた内容物Sがきれいに絞り出される。さらに、図3に示すように、絞りスリット11を使用して、レトルトパウチ41を2つ折りにして、絞り作業を行うことで、内容物Sを確実に絞り出すことができる。すなわち、レトルトパウチ41の表面には凸部21aにより筋が付けられているので、筋に添ってレトルトパウチ41を2つ折りにして、底部44近傍を絞りスリット11に挿入する。底部44近傍を他方の手で掴み、この状態で、切断ひねり絞り具1の絞りスリット11をレトルトパウチ41の切断部42に向けて矢印方向にひねりながら移動、すなわち、少し回転させてスリット11内の間隙の実質的な幅を狭めながら移動させる。これにより、レトルトパウチ41の内面に付着していた内容物Sをより一層確実に絞り出すことができる。
【0038】
本実施形態によれば、切断ひねり絞り具1は、簡単な構成でありながら、レトルトパウチ41の切断及び内容物Sの絞り出しを、切断ひねり絞り具1を持ち替えることなく、一連の動作として連続して円滑に、しかも確実に行うことができる。
【0039】
以上の説明では、絞り間隙22の幅を、先端側から基端側まで同じ幅としたが、これに代えて、先端側ほど狭くなるように、すなわちカッター31に近づくほど狭くなるように形成してもよい。この場合には、レトルトパウチ41の切断部42を切断する際に、切断部42をカッター31に円滑に導くことができる。
【0040】
また、図13に示すように、把持部10を正面側から背面側に貫通する窓部16を設け、ここに、軸17を基準として回転可能に砂時計15を配置するようにしてもよい。これによれば、熱湯によるレトルト食品40の加熱時間を、他の時計を頼ることなく計測することができて便宜である。また、例えばカップラーメンの蓋を開けて、熱湯を注いで、3〜4分間待つ際に、カップラーメンの蓋を閉じて、この蓋があかないように、切断ひねり絞り具1を蓋の上に載せ、このとき把持部10が蓋から飛び出して、砂時計15が蓋にかからないようにする。この状態で、砂時計15をほぼ90度回転させて砂が入っている側を上方に位置させることで計時を開始することができる。計時に際し、他の時計等を使用する必要がないので、極めて便宜である。
【0041】
また、例えば、図1(a)に示す、2本の棒状部21,21のうちの、上側に位置する棒状部21の上端縁、あるいは下側に位置する棒状部21の下端縁に、長手方向に沿って凹凸部(ギザギザ部)を設けるようにしてもよい。この凹凸部によって、例えば、レトルトパウチを開封前に外側から叩くことにより、固まっていた内容物を細かくし、スープ状の離乳食、流動食のようにすることができる。このとき、凹凸がない場合と比較して、滑ることなく有効に内容物を叩くことができる。なお、この凹凸部は、肉を叩いて軟らかくする際にも使用することができる。
【0042】
なお、本発明に係る切断ひねり絞り具は、少なくとも把持部10と絞り部20とカット部30とを備え、さらに絞り部20に絞り間隙22を有し、カット部30にカッター31を有していれば足り、他の絞りスリット11、ラップ刃外し12、第1フック13、缶詰オープナー14、第2フック34、キャップオープナー35等については、必要に応じて、適宜設けるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)は、切断ひねり絞り具1の正面図であり、(b)は上側面図であり、(c)は下側面図である。
【図2】絞りスリット11の使用状態を説明する図である。
【図3】絞りスリット11の他の使用状態を説明する図である。
【図4】絞りスリット11のさらに別の使用状態を説明する図である。
【図5】ラップ刃外し12の使用状態を説明する図である。
【図6】第1フック13の使用状態を説明する図である。
【図7】第1フック13の他の使用状態を説明する図である。
【図8】(a),(b)は、缶詰オープナー14の使用状態を説明する図である。
【図9】カッター31の使用状態を説明する図である。
【図10】(a),(b)は、絞り間隙22の使用状態を説明する図である。
【図11】第2フック34の使用状態を説明する図である。
【図12】キャップオープナー35の使用状態を説明する図である。
【図13】図13は、把持部10に砂時計15を取り付けた状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0044】
1 切断ひねり絞り具
10 把持部
11 絞りスリット
12 ラップ刃外し
13 第1フック
14 缶詰オープナー
20 絞り部
21 棒状部
22 絞り間隙
30 カット部
31 カッター
32 スリット(位置決め部)
33 ボルト(固定具)
34 第2フック(フック)
35 キャップオープナー
40 レトルト食品
41 レトルトパウチ
42 切断部
C 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が詰められたレトルトパウチの切断部を切断するとともに、前記切断部から前記内容物を絞り出す切断ひねり絞り具において、
基端部に設けられて使用者の手で握られる把持部と、
前記把持部から先端側に向かって延びる絞り部と、
前記絞り部の先端側に設けられたカット部とを備え、
前記絞り部は、前記把持部側から前記カット部側に向かって延びる一対の棒状部と、
前記一対の棒状部の間に形成されて、前記レトルトパウチの挿入及び移動を許容する絞り間隙と、を有し、
前記カット部は、前記絞り間隙の先端部近傍に、刃部が前記把持部側に向けられてかつ前記刃部が前記絞り間隙を横断するような姿勢で取り付けられたカッターを有し、
前記絞り間隙に前記レトルトパウチの切断部を挿入して前記切断部と前記カッターとを相対移動させることで前記レトルトパウチの切断部を切断し、
切断後の前記レトルトパウチを、前記切断部から遠い側から前記切断部に向けて前記絞り間隙に挿通させることで前記内容物を前記レトルトパウチから絞り出す、
ことを特徴とする切断ひねり絞り具。
【請求項2】
前記カッターは、前記刃部が前記絞り間隙の幅方向に対して、一端側が前記基端側に位置し他端側が前記先端側に位置するように傾斜して取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の切断ひねり絞り具。
【請求項3】
前記カット部は、前記カッターを位置決めする位置決め部と、前記位置決め部に位置決めされた前記カッターを着脱可能に固定する固定具と、を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の切断ひねり絞り具。
【請求項4】
前記絞り間隙は、前記把持部側から前記カッターまで、幅が一定となる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の切断ひねり絞り具。
【請求項5】
前記内容物が絞り出された前記レトルトパウチを折り畳んだ状態で挿通させる絞りスリットを有する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の切断ひねり絞り具。
【請求項6】
前記カット部に、前記レトルトパウチの周端縁に引っかけて前記レトルトパウチを移動させるフックを有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の切断ひねり絞り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−220673(P2010−220673A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68688(P2009−68688)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【特許番号】特許第4468477号(P4468477)
【特許公報発行日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(509079824)
【Fターム(参考)】