説明

切片化可能な弾性発泡材料を備えた生検支持体

組織学的組織標本支持デバイスは、ミクロトームで首尾よく切片化することができ、組織(40)の固定、処理、染色に使用される溶液及び化学物質による劣化に耐性がある材料から形成される組織支持体(12)を含む。弾性発泡材料(20)が組織支持体(12)に結合され、処理及び包埋中、組織(40)に係合し組織を定位置に維持するように構成されている。弾性発泡材料(20)はまた、ミクロトームで首尾よく切片化することができ、組織の固定、処理、染色に使用される溶液及び化学物質の浸透、ならびに弾性発泡材料(20)によって組織(40)を維持しながら組織(40)を包埋するために使用される包埋材料(50)の浸透を可能にするように多孔性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年12月12日に出願された特許文献1(係属中)の利益を主張し、またその開示の全体を参照によって援用する。
【0002】
本発明は一般に、病理分析用の組織標本をハンドリングし包埋するための支持体に関し、より詳細には、1つ又は複数の組織標本を受け、包埋し、その後1つ又は複数の組織標本とともにミクロトームで切り出すことができる支持体に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な組織の疾患及び病態を正確に診断するために、医療従事者は、患者の身体から1つ又は複数の組織標本を取り出さなければならない。身体から組織を採取するこのプロセスは、生検として知られている。1つ又は複数の組織標本が取り出され、病理検査室に送られると、組織に関連する1つ又は複数の病態を診断するために、組織は、臨床検査技師、及び最終的には病理医によって実施される一連の手順を受けることになる。本発明は一般に、1つ又は複数の組織標本を病理医が顕微鏡下で分析することができるスライドに作製するために、臨床検査技師によって通常実施されるこれらの手順に関するものである。
【0004】
本明細書全体を通じて単数形の「標本」という用語を用いるが、この用語は、「複数の標本」という複数形も同様に含むことを理解されたい。患者の身体から組織標本が取り出されると、組織標本は典型的には、組織固定溶液を収容する試料容器中に置かれ、次いで、容器は病理検査室に移される。組織は、病理検査室では「グロスイン」として知られるプロセスにかけられることになる。このプロセス中に、臨床検査技師は、容器から組織標本を回収し、典型的には、組織を組織処理に適切なサイズに切断し、個々の標本を適切に寸法設定された小型の組織用プラスチックカセット内に置き、各カセットに追跡番号を割り当てる。次いで、これらの追跡番号を検査室で使用する追跡システムに記録する。擦過標本などの最も小さい組織標本の場合は、カセットは側面及び底面に微細なメッシュ状の開口を有する。非常に小さい組織標本を含む他の状況では、標本をティーバッグに似たバッグ内に置き、これら最も小さい組織標本が失われないようにする。比較的大きい組織標本は、いくらか大型のスロット開口を有するカセット内に置くが、これらの開口は、カセット内の組織標本よりも小さい。
【0005】
次いで、カセットをステンレス鋼の穴あきバスケット内に置き、多くの場合は一晩中、組織処理機にかける。この機械は、真空、熱、及び化学物質の組合せを使用して組織内の間質液を除去する。組織標本から間質液を除去した後、処理機は、組織標本を溶融パラフィン(すなわち、ワックスの一形態)などの硬化可能な材料の浴に浸して、組織内の隙間をパラフィンで置き換える。次いで、臨床検査技師は、機械からバスケットを取り出し、個々の組織カセットを取り出す。長年実施されてきた従来の手順では、臨床検査技師は、各カセットから組織標本を個々に取り出す。臨床検査技師は、組織用カセットとほぼ同じサイズで、溶融パラフィンが部分的に充填されたステンレス鋼のベースモールド内に、組織のタイプに基づき、組織標本の向きに注意して入れなければならない。組織標本は、モールドの底面に対して、一般には鉗子を使用して手で保持しなければならない。そのようにしないと、後にミクロトームで組織標本の適正なスライスを作製することが不可能になる可能性がある。次いで、この溶融パラフィンを、熱電式冷却器(TEC)とすることができる冷却プレート上で急速に冷却し、パラフィンを部分的に固化させ、それにより組織標本をモールドの底面に対して正しい向きで保持する。その後、カセットをベースモールドの上面に置き、やはり典型的にはパラフィンワックスである包埋材料を、カセットの上部開口を通してベースモールド内に注ぎ込む。この手順のこの時点で、カセットの機能は、組織を保持するコンポーネントから、ミクロトーム内に設置し、固化したパラフィンからミクロトームでシェービング又はスライスを作製するための固定タイプのデバイスに変わる。ベースモールドは、溶融パラフィンがすべて硬化するまで冷却され、臨床検査技師は、包埋パラフィンのブロックからステンレス鋼のベースモールドを取り出す。したがって、組織標本は、プラスチックの組織カセットが反対側にある状態で、硬化したパラフィンの矩形のブロック内に包埋される。上記のように、カセットはその後、ミクロトームチャック内で保持器又は固定器として使用することができる。組織処理機の場合と同様に、包埋プロセスはバッチで実施され、このプロセス中に、平均的な臨床検査技師は1時間あたり約40〜60個のカセットを包埋することができる。
【0006】
次いで、包埋された組織標本を含む硬化したパラフィンブロックは、顕微鏡スライド上に配置するための非常に薄い切片にスライスするよう準備される。臨床検査技師は、包埋された組織ブロックを、包埋されたプラスチックカセットを有する方のブロック面を受けるように寸法設定されているミクロトームチャック内に載せる。次いで、臨床検査技師は、プラスチックカセット表面の反対側に包埋された組織標本を含むパラフィンブロックのスライシングを開始することができる。これにより、硬化されたパラフィン中に包埋された組織のリボン状の個々のスライスが得られる。ミクロトームの動作が正常に行われると、個々のスライスは互いにくっつく。その後、これらの非常に薄いリボン状のスライスを水浴中に浮かべ、このスライスの下に、ガラススライドを注意深く置く。スライスは、薄く切片化された組織標本がこのスライス内に包埋された状態で、スライドの上面に付着する。
【0007】
臨床検査技師により組織標本から十分な数のスライドが得られると、これらのスライドは、自動染色機内に置かれる。染色機では、一連の浸潤ステップを経て、このスライドの異なる組織及び細胞が異なる色に染色される。これにより、病理医が異なる構造を識別する助けになり、組織中の異常を発見することがより容易になる。この染色手順が完了した後、スライドにカバーガラスを載せ、それらを病理医が顕微鏡下に置いて分析する準備が整えられる。
【0008】
上記で示した手順の概要に基づいて、従来の組織標本のハンドリング及び処理が、臨床検査技師によって実施されるいくつかの手作業のステップを伴う非常に労力を要するプロセスであることが理解されよう。したがって、手根管症候群など、繰り返し圧迫を受けることによる障害が蔓延している。これは、組織標本を包埋するプロセスに特に当てはまる。これら複数の手作業の操作及び繰り返される組織のハンドリングにより、人的ミスが起きやすくなり、さらに、病理医による分析を行うために最終的にスライドに付着させる組織標本を、正確な診断が行われるように最適な状態かつ向きになるようにするために、高度な訓練を受けた熟練臨床検査技師が必要になる。
【0009】
特許文献2及び特許文献3、及び特許文献4、特許文献5及び特許文献6は、グロスイン、包埋、及びミクロトーム又はスライシングの手順の際の組織標本の新しい保持方法を含む、本技術領域の様々な改良を開示している。特許文献2及び特許文献4、特許文献5、及び特許文献6の開示は、その全体を参照によって本願に援用する。例えば、特許文献2は、カセットとすることができ、ミクロトームを使用して首尾よく切片化することができる、組織を閉じ込め支持するデバイスに関する。そのようなカセットを使用する場合、組織標本をカセット内に固定し、組織液をパラフィンで置き換える処理にかける。次いで、その後顕微鏡スライド上に載せるために、この組織標本及びカセットを同時にスライスする。この組織標本は、組織処理機で処理するときから、ミクロトームで切断又はスライスするときまで、カセットから取り出さないので、かなりの長さのハンドリングの時間が節約される。さらに、別個の組織ハンドリングステップが不要になるために、人的ミス又は組織の損失の可能性がかなり小さくなる。特許文献2及び上記で援用した特許文献1は、プロセス全体の自動化を助け、及び新しい組織支持体(例えば、カセット)と併せて、手順全体中におけるハンドリングステップをさらに少なくし、手順をさらに信頼性の高いものにすることができる、さらなる改良も一般に開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/869,629号
【特許文献2】米国特許第5,817,032号
【特許文献3】米国特許第7,156,814号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0226770号
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0147538号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0084425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この分野では様々な進歩がなされているが、さらに生産能力を上げ、包埋組織標本及び診断に使用される最終的なスライス又はリボン状の包埋組織の品質のばらつきをなくすことに関するさらなる改良がますます求められている。これはより小さい組織標本サイズをハンドリングするときに特に重要となることがあるが、本願で開示された改良はすべての組織標本サイズに当てはまるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般的な一実施形態では、組織学的組織標本の支持体が提供され、一般に弾性発泡材料と結合された組織支持体を含むことができる。弾性発泡材料は3次元的であり、ミクロトームにより切片化可能であり、変形可能な構造であり、上記で援用された特許文献2に開示された、ミクロトームにより切片化可能であり、変形可能な構造に対する改良である。組織標本支持デバイスは、より詳細には、ミクロトームで首尾よく切片化することができ、組織の固定、処理、染色に使用される溶液及び化学物質による劣化に耐性がある材料から形成される組織支持体を含むことができる。弾性発泡材料の多孔性によって、組織の固定、処理、染色に使用される溶液及び化学物質の浸透、ならびに弾性発泡材料によって組織を維持しながら組織を包埋するために使用される包埋材料の浸透が可能になる。弾性発泡材料は、圧縮可能であり、処理及び包埋中、組織に係合し組織を定位置に維持し、後に硬化する液化した包埋材料で隙間又は孔を充填した後、ミクロトームで首尾よく切片化することもできるように構成された厚さを有する。
【0013】
弾性発泡材料はさらに、ポリエーテル又はポリウレタンの少なくとも一方を含む発泡体など、独立気泡発泡体材料を含むことができる。また、独立気泡発泡体は完全網状発泡体とすることができる。これにより、処理及び包埋手順中に使用される流体を完全に浸透させることを助ける。ポリエステル、アルギン酸塩、又は、包埋材料を充填することができ、最終的なリボン状の組織及び包埋材料に悪影響を及ぼさずに、ミクロトームで首尾よく切片化することができる他の材料など、他の合成及び天然材料を使用することもできる。
【0014】
支持体はさらに、少なくとも1つの側壁によって囲まれ底壁を含む凹部又は内部領域を含む組織収容部分を含むことができる。凹部又は内部領域は、デバイスを製造する間、あるいは、処理及び包埋手順中に組織標本を定位置に維持するために、ユーザが発泡材料を凹部又は内部領域へと挿入する間、弾性発泡材料の少なくとも一部を含むように構成することができる。支持体はさらに、収容部分に連結されるように構成された蓋を有するカセットを含むことができる。一実施形態では、弾性発泡材料は蓋に結合され、蓋を収容部分に連結すると、少なくとも一部が凹部へと挿入される。
【0015】
支持体を形成する材料は、組織分析中に妨げとならないように、少なくとも半透明とすることができる。例えば、支持体は、フッ素化ポリマー又はフルオロポリマー(例えば、PFA)を含むポリマーなど、上記で援用された特許及び特許出願で開示されたいずれの材料からも形成することができる。
【0016】
アセンブリは、支持体及び別個のフレームで構成することができる。そのようなアセンブリでは、組織支持体がフレーム上に解除可能に維持され、フレームはさらに、ミクロトームチャック内で解除可能に固定されるように構成される。フレームは内部をさらに含むことができ、組織支持体は、内部内で少なくとも第1の位置と第2の位置の間に嵌合し動くように寸法設定することができる。第1の位置は組織標本の処理中に使用され、第2の位置は、組織標本をミクロトームで切片化できるように、組織をフレームから外向きに定位置に露出するために使用される。
【0017】
様々な方法が開示され、又は開示された実施形態及び特徴を詳細に検討することによって明らかとなろう。例えば、組織学的検査のための1つ又は複数の生検組織標本を作製する方法は、
組織標本をミクロトームにより切片化可能な支持体に近接して位置決めするステップと、
組織標本を組織支持体に結合されたミクロトームにより切片化可能な弾性発泡材料と接触させることによって、組織標本を支持体上に固定するステップと、
ミクロトームにより切片化可能な支持体、弾性発泡材料及び組織標本に、組織標本内の流体を硬化可能な材料に置き換えるプロセスを実施するステップと、
ミクロトームにより切片化可能な支持体、弾性発泡材料及び組織標本を包埋材料に包埋するステップと、
包埋材料をブロックへと硬化するステップと、
ブロックをミクロトームで、包埋材料、ミクロトームにより切片化可能な支持体、弾性発泡材料及び組織標本の薄いスライスにスライシングするステップとを含むことができる。
【0018】
硬化可能な材料及び包埋材料は、ワックス(例えば、パラフィン)など、同じ材料とすることができる。支持体はさらに、組織標本を保持するように構成された底面部分及び弾性発泡材料を保持する蓋を含むことができる。組織標本を固定するステップはさらに、組織標本を弾性発泡材料と底面部分の間に閉じ込めるように、蓋を組織標本の上面の上に閉じるステップを含むことができる。底面部分は、少なくとも1つの側壁によって囲まれた内部空間を含むことができ、位置決めするステップ及び固定するステップはさらに、組織標本を内部空間内に置くステップ及び弾性発泡材料の少なくとも一部を内部空間内に挿入し組織標本と接触させるステップを含むことができる。弾性発泡材料は固定するステップ中に組織標本を受ける3次元空間を形成するように変形することができる。これにより、組織標本を支持体又はカセットの底面に対して平坦な所望の形態に固定することを助けることができる。組織に対してかかる弾性発泡材料の力は、組織を固定及び/又は平坦化するのに十分であるが、標本の歪みを引き起こすほどではないべきである。ミクロトームにより切片化可能な支持体は、組織標本内の流体を硬化可能な材料に置き換える処理を実施する前に、フレームに結合することができる。次いで、方法はさらに、ブロックをスライシングする前に、フレームをミクロトーム内に固定するステップを含むことができる。ミクロトームにより切片化可能な支持体、弾性発泡材料及び組織標本を包埋材料に包埋するステップの前に、ミクロトームにより切片化可能な支持体を、フレーム内の第1の位置から、ミクロトームで同時に切片化するために支持体、弾性発泡材料及び組織標本が露出される第2の位置へ、動かすことができる。
【0019】
本発明のさらなる様々な詳細、特徴、利点及び態様は、以下の例示的でより詳細な説明を詳細に検討すれば、当業者には容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】フレーム内に受けられた、ミクロトームにより切片化可能な組織カセットを含むアセンブリの斜視図であり、カセットの蓋が開位置で示されている図である。
【図2】図1と同様であるが、カセットの蓋が閉位置にあることを示す、斜視図である。
【図3】全体的に図2の線3−3に沿って見た断面図である。
【図4】図3と同様であるが、カセット/フレームアセンブリがパラフィンに包埋されており、カセットが切片化のためにフレーム内で第2の下側位置にあることを示す断面図である。
【図5】全体的に図4の線5−5に沿って見た断面図である。
【図6】全体的に図4の線6−6に沿って見た断面図である。
【図7】フレーム内に受けられた、別の実施形態に従って作製されたミクロトームにより切片化可能な組織カセットを含むアセンブリの斜視図であり、カセットの蓋が開位置で示されている図である。
【図8】図7に示すアセンブリと同様であるが、蓋が閉位置にあり、アセンブリがモールド内にあることを示す上面図である。
【図9】図8の線9−9に沿って見た断面図であり、蓋が閉位置へと押し込まれていることを概略的に示す図である。
【図10】図9と同様であるが、カセットの下側部分がモールド内へと延びるように、カセットがフレーム内で第2の下側位置にあることを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び2は、フレーム14内に載せられた組織標本カセット12を含むアセンブリ10を全体的に示す。組織カセット12とフレーム14の連結は、上記で援用された特許及び特許出願で開示された方法のいずれかなど、様々な方法で達成することができる。カセット12は組織支持体として任意の適切な方法で構成することができ、フレーム14は任意の適切な方法で構成することができることが理解されよう。上記で援用された特許及び特許出願で開示された組織支持体(例えば、カセット)及びフレームの構成、特徴、特色及び材料のいずれも、カセット12及びフレーム14に使用することができる。図示された実施形態では、カセット12は多孔性であり、フレーム14内に解除可能に維持され、フレーム14は、ミクロトームチャック(図示せず)内に解除可能に固定されるようにさらに構成されている。フレーム14は一般に、周囲外壁14a、14b、14c、14d間に画成された内部を含み、カセット12は摩擦的又は「スナップ式に」嵌められ、やはり上記で援用された特許及び特許出願で、同じ目的のために一般に論じられている、少なくとも第1の位置と第2の位置の間を内部内で動くように寸法設定及び構成されている。第1の位置は図3に示されており、第2の位置は、フレーム14をミクロトームチャック内に維持しながら、カセット12及び組織標本をミクロトームにより切片化することができるように、カセット12の下側部分が図3に示されたフレーム14の下側より下に露出される位置(図示せず)である。処理、包埋、及び切片化の一般的な手順は、上記で援用された特許及び特許出願に開示されている。カセットは、上記で援用された特許及び特許出願に従って、パーフルオロアルコキシエチレン(PFA)から形成することができる。
【0022】
カセット12の蓋12aは、蝶番16によってカセット12の本体12bと結合することができる。蓋12aもまた、カセット本体12b上のフィンガー又は突起コネクタ13が蓋12aの4つの側面のそれぞれにある蓋12aの外側フランジ15と係合することによって、図2に示す閉位置へとスナップ嵌めすることができる。蓋12aには、例えばポリエーテル又はポリウレタンの少なくとも1つを含む発泡体などの独立気泡発泡体材料とすることができ、及び完全網状発泡体とすることができる、弾性発泡材料20が乗せられている。ここで「完全網状」とは、発泡体の少なくとも実質的にすべての気泡が開放されていることを意味する。図1に示すように、1つ又は複数の組織標本を、少なくとも1つの側壁32によって囲まれ底壁34を含む凹部又は内部領域を画成することができる多孔性の組織収容部分30内に、置くことができる。円形の凹部は示されていないが、代わりにどのような他の形状も使用することができることが理解されよう。
【0023】
図3にさらに示すように、蓋12aが閉じられると、発泡体材料20は組織標本40を押圧し、組織標本40の周りで3次元的に変形して、各組織標本40の周りに3次元空間を形成し、組織の処理及び包埋手順の際、各組織標本40を実質的に固定する。これにより、ミクロトームスライスが作製されるとき、一般に図5に示すように、組織標本40の完全で連続的な切片を形成することができるように、組織標本40が組織カセット12の底壁34に対して平坦に保持されるようにすることもできる。弾性発泡材料20に適した1つの特定のタイプの発泡体構造は、50〜60ppi(1インチあたりの孔数)の孔サイズであり、各孔の直径が約0.017インチから0.20インチである。発泡体構造は、撓み0.55lbs./in及び密度1.4lbs./ftの20%撓みの圧縮力で、完全網状である。発泡体材料は、ニュージャージー州MoonachieのCrest Foamから、T−50という名で入手することができる。これはポリエーテル/ポリウレタン発泡体であり、0.06インチから0.10インチの厚さで良好に作用し、0.075インチの厚さが実際的な製造例である。発泡体は、組織処理機の各試薬サイクル後、処理流体を排出又は放出するように作製されるべきである。発泡体が高密度すぎる、又は厚すぎる場合、あるいは完全網状でない場合、各流体浴は完全に清浄し、1つの流体から次へと交換しなければならないため、試薬が相互汚染され、又は組織に流体が完全に浸透しないことがある。
【0024】
使用の際は、1つ又は複数の組織標本40が、図1に示すように、内部空間又は凹部内、詳細には底壁34の上に置かれる。次いで、図3に示すように弾性発泡材料(例えば、発泡体)20が底壁34に対して組織標本40を支え、閉じ込めるように、カセットの蓋12aが閉じられ、その位置にスナップ嵌めされる。この時点で、閉じ込められた組織標本40を含むアセンブリ10には、真空、熱、及び化学物質を使用して組織内の間質液を除去し、間質液を溶融パラフィンなど硬化可能な材料で置き換える、従来の組織処理作業を行うことができる。上記のように、これらの処理ステップ中、発泡体又は他の弾性発泡材料20の多孔性の性質により、流体は組織標本40に到着し、その中に完全に浸透することができる。さらに、発泡体20は、その後の顕微鏡下の分析に妨げとなる可能性のある歪みや印を組織上に残すことなく、組織標本40を底壁34に対して平坦に閉じ込める。例えば、処理及び分析しようとする組織のタイプに基づいて、異なるタイプの弾性発泡材料を選択することができることが理解されよう。例えば、小さい粘膜組織標本は上記のT−50発泡体を使用して首尾よく保持し処理することができ、脂肪組織など他のタイプの組織は、別のタイプの弾性発泡材料でより良く処理することができる。
【0025】
処理ステップは、組織カセット12とフレーム14を組み立てる前に実施することができることも理解されよう。組織処理が完了した後、組織カセット12を図4に示すように、第2の位置に動かし、収容部分30がフレーム14の底面14eより下に露出することができる。次いで、カセット12及びフレーム14は適切なモールド(図示せず)内に置かれ、パラフィン50に包埋され、下側の露出された収容部分30を含むアセンブリ全体がパラフィンワックス50の硬化したブロック内に包埋される。モールドは一般にカセット12の底面の輪郭に従うことができるが、収容部分30を囲むモールドの部分は、好ましくは円形ではなく正方形である。これは、後にリボン状スライスを製造するときに役立つ。したがって、手順のこの部分は、上記で援用された特許及び特許出願で開示されたものと同様とすることができる。本願に記載されているように、次いでフレーム14を、包埋されたアセンブリ10をミクロトームチャック内に設置するための取付具として使用し、図5に示されたものと同様の十分な切片が取れるまで必要な数のスライスを露出された下側から取り、顕微鏡スライドの上に適切に設置し、染色し、カバーを載せる。
【0026】
図7〜10は、代替実施形態を図示する。この実施形態では、図ならびに以下の説明の詳細な検討から分かるように、カセットが第1の実施形態とはいくらか異なる設計で作製されている。図1〜10の同様の参照符号は同様の構造を示すものであり、したがって、図7〜10に関する追加の説明は必要ではない。図7〜10のダッシュ記号(’)を有する同様の参照符号は、図1〜6に関して示し説明したものと同様の要素を示すが、図面自体を詳細に検討することによって、又は図の詳細な検討と以下に述べられた追加の説明を組み合わせることによって、理解される違いを有する。
【0027】
アセンブリ10とアセンブリ10’の主な違いは、蓋12a、12a’及び蓋12a、12a’とカセット12、12’の本体12b、12b’との連結方法に関する。第1の実施形態では、蓋12aは、カセット本体12bの4つの側面のそれぞれにある一連のスナップ嵌めコネクタ13によって、本体12bに対して下向きに保持されている。これらのコネクタ13は、蓋12aの外側フランジセクション15に係合する。したがって、ユーザは一般に、指でカセット蓋12aの4つの側面のそれぞれを下向きに押し下げて、複数組のスナップ嵌めコネクタ13のそれぞれと係合させる。図7〜10に示すカセット12’は、その代わりに、120度離れた3つの連結要素60を有する円形の蓋12a’を使用する。要素60は、蓋12a’が図8及び9に示すように折り畳まれると、カセット本体12b’上のコネクタ62とスナップ嵌めによって連結する。図9にさらに示すように、ユーザが1本の指64で蓋12a’を押し下げることによって、3つの嵌め合いコネクタ60、62を利用して、蓋12a’を閉じ、スナップ嵌めによってロックすることができる。上記で述べたように、カセット12’は、図9に示すフレーム14の上側位置から、図10に示す下側位置へと、ユニットとして全体的に押し下げることができる。これにより多孔性組織収容部分30がモールド68へと延出する。次いで、モールドをパラフィン50などの包埋材料で充填することができる。これにより、上記で図4と関連して説明した構造が形成される。カセット12’の基本的な穴あき設計は、図1〜6に示すカセット12の穴あき設計に関して変更することができることが、さらに理解されよう。基本的に、図7〜10に示すモールドカセット12’の設計によって、カセット12’を形成するのに必要なPFA材料の量が低減される。アセンブリ10’の他の構造及び機能の態様及び使用はすべて、第1の実施形態のアセンブリ10と関連して説明されている。
【0028】
以上、本発明を様々な例示的な実施形態の説明によって示し、これらの実施形態をいくらか詳細に説明したが、これらは添付の特許請求の範囲をそのような詳細に限定又はどのようにも制限すると本出願人が意図するものではない。追加の利点及び改変形態は、当業者には容易に理解できる。本発明の様々な特徴は、ユーザの必要性及び好みに従って、単独で又はどのようにも組み合わせて使用することができる。しかし、本発明自体は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0029】
10 アセンブリ
12 カセット
12a 蓋
12b 本体
13 コネクタ
14 フレーム
14a 外壁
14b 外壁
14c 外壁
14d 外壁
14e 底面
15 フランジ
20 弾性発泡材料
30 収容部分
32 側壁
34 底壁
40 組織標本
50 パラフィン
60 コネクタ
62 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロトームで首尾よく切片化することができ、組織の固定、処理、染色に使用される溶液及び化学物質による劣化に耐性がある材料から形成される組織支持体と、
前記組織支持体に結合される弾性発泡材料であって、処理及び包埋中、組織に係合し組織を定位置に維持するように構成され、さらに前記ミクロトームで首尾よく切片化することができ、組織の固定、処理、染色に使用される前記溶液及び化学物質の浸透、ならびに前記弾性発泡材料によって前記組織を維持しながら前記組織を包埋するために使用される包埋材料の浸透を可能にするように多孔性である弾性発泡材料と、
を含む組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項2】
前記弾性発泡材料が独立気泡発泡体材料をさらに含む、請求項1に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項3】
前記独立気泡発泡体材料が、ポリエーテル又はポリウレタンの少なくとも一方をさらに含む、請求項2に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項4】
前記独立気泡発泡体が完全網状発泡体である、請求項2に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項5】
少なくとも1つの側壁によって囲まれているとともに、底壁を含む凹部を含み、前記凹部が前記弾性発泡材料の少なくとも一部を含むように構成された、組織収容部分をさらに含む、請求項1に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項6】
前記収容部分に連結されるように構成された蓋をさらに含む、請求項5に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項7】
前記弾性発泡材料が前記蓋に結合され、前記蓋と前記収容部分とを連結すると、少なくとも一部が前記凹部内へ挿入される、請求項6に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項8】
前記支持体を形成する材料が、組織分析中に妨げとならないように少なくとも半透明である、請求項1に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項9】
前記支持体がポリマーから形成される、請求項8に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項10】
前記ポリマーがフッ素化ポリマーである、請求項9に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項11】
前記ポリマーがフルオロポリマーである、請求項9に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項12】
フレームと、
前記フレーム上に解除可能に維持される組織支持体であって、ミクロトームで首尾よく切片化することができ、組織の固定、処理、染色に使用される溶液及び化学物質による劣化に耐性がある材料から形成される組織支持体と、
前記組織支持体に結合される弾性発泡材料であって、処理及び包埋中、組織に係合し組織を定位置に維持するように構成され、さらに前記ミクロトームで首尾よく切片化することができ、組織の固定、処理、染色に使用される前記溶液及び化学物質の浸透、ならびに前記弾性発泡材料によって前記組織を維持しながら前記組織を包埋するために使用される包埋材料の浸透を可能にするように多孔性である弾性発泡材料と、
を含む組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項13】
前記組織支持体が前記フレームに解除可能に結合されるように構成され、前記フレームがミクロトームチャック内で解除可能に固定されるように構成されている、請求項12に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項14】
前記フレームは内部を含み、前記組織支持体は、前記内部内で少なくとも第1の位置と第2の位置との間に嵌合し動くように寸法設定され、前記第1の位置は前記組織標本の処理中に使用され、前記第2の位置は、前記組織標本をミクロトームで切片化できるように、前記組織を前記フレームから外向きに定位置に露出するために使用される、請求項13に記載の組織学的組織標本支持デバイス。
【請求項15】
組織学的検査のための1つ又は複数の生検組織標本を作製する方法であって、
組織標本をミクロトームにより切片化可能な支持体に近接して位置決めするステップと、
前記組織標本を前記組織支持体に結合されたミクロトームにより切片化可能な弾性発泡材料と接触させることによって、前記組織標本を前記支持体上に固定するステップと、
前記ミクロトームにより切片化可能な支持体、弾性発泡材料及び前記組織標本に、前記組織標本内の流体を硬化可能な材料に置き換えるプロセスを実施するステップと、
前記ミクロトームにより切片化可能な支持体、弾性発泡材料及び前記組織標本を包埋材料に包埋するステップと、
前記包埋材料をブロックへと硬化するステップと、
前記ブロックをミクロトームで、前記包埋材料、前記ミクロトームにより切片化可能な支持体、前記弾性発泡材料及び前記組織標本の薄いスライスにスライシングするステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記包埋材料がワックスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ミクロトームにより切片化可能な支持体が前記組織標本を保持するように構成された底面部分及び前記弾性発泡材料を保持する蓋をさらに含み、
前記組織標本を固定するステップがさらに、前記組織標本を前記弾性発泡材料と前記底面部分の間に閉じ込めるように、前記蓋を前記組織標本の上面の上に閉じるステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記底面部分が、少なくとも1つの側壁によって囲まれた内部空間を含み、
前記位置決めするステップ及び前記固定するステップがさらに、
前記組織標本を前記内部空間内に置くステップと、
前記弾性発泡材料の少なくとも一部を前記内部空間内に挿入し前記組織標本と接触させるステップと、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記弾性発泡材料が、前記固定するステップ中に前記組織標本を受ける3次元空間を形成するように変形する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ミクロトームにより切片化可能な支持体が、前記組織標本内の流体を前記硬化可能な材料に置き換える処理を実施する前にフレームに結合され、前記ブロックをスライシングする前に前記フレームをミクロトーム内に固定するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記ミクロトームにより切片化可能な支持体、弾性発泡材料及び前記組織標本を前記包埋材料に包埋するステップの前に、前記ミクロトームにより切片化可能な支持体が、前記フレーム内の第1の位置から、ミクロトームで同時に切片化するために前記支持体、弾性発泡材料及び組織標本が露出される第2の位置へと動く、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−503519(P2011−503519A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541332(P2009−541332)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/025253
【国際公開番号】WO2008/073387
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(505077404)バイオパス・オートメーション・エル・エル・シー (8)
【Fターム(参考)】