切粉・鉄粉の搬送装置及び分離搬送システム
【課題】高価なオイルセパレータを使用することなく切粉・鉄粉をタンクから分離除去する切粉・鉄粉の搬送装置を提供すること。
【解決手段】鉄粉搬送装置10は、鉄粉の搬送方向に沿って複数の溝111を並設する鉄芯11と、溝111に挿通するコイル13と、鉄粉を搬送する非磁性材(又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板)の搬送面151を有している。複数の溝111に挿通するコイル13の巻線131に三相交流電流を流すことによって合成磁界を形成し、この合成磁界は時間とともに移動する移動磁界を形成する。この鉄粉搬送装置10の一端を、鉄粉と冷却水が貯溜しているタンク内に配置することによって、タンク内の鉄粉は鉄粉搬送装置10の搬送面151上を搬送して外部に排出されることとなる。
【解決手段】鉄粉搬送装置10は、鉄粉の搬送方向に沿って複数の溝111を並設する鉄芯11と、溝111に挿通するコイル13と、鉄粉を搬送する非磁性材(又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板)の搬送面151を有している。複数の溝111に挿通するコイル13の巻線131に三相交流電流を流すことによって合成磁界を形成し、この合成磁界は時間とともに移動する移動磁界を形成する。この鉄粉搬送装置10の一端を、鉄粉と冷却水が貯溜しているタンク内に配置することによって、タンク内の鉄粉は鉄粉搬送装置10の搬送面151上を搬送して外部に排出されることとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削盤で削られた切粉や研削盤で削られた鉄粉をタンクから排出する切粉・鉄粉の搬送装置及び分離搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
切削盤又は研削盤等の成形機械で削られた切粉・鉄粉等は、循環する冷却水によってタンクに回収される。タンク内の冷却水は循環されることから、通常、切粉や鉄粉を含まないように、切粉・鉄粉を分離して排出するようにしている。従来においては、図10〜11に示すように、切粉・鉄粉分離除去装置50は、回転可能な吸着ドラム型のオイルセパレータ55と呼ばれるものを使用して行われていた。このオイルセパレータ55は、特許文献1によっても示されているように、吸着ドラム56の周壁内に沿って、多数の鉄板57を設置し、吸着ドラム55の周壁内面位置側に対向して永久磁石58を鉄板の回転移動時に追従できるように設置している。また、吸着ドラム56の内面の他側には鉄板57の消磁装置として電磁石59を設置して構成されている。
【0003】
図11に示すように、このオイルセパレータ55を使用する切粉・鉄粉分離除去装置50は、タンク51内を切粉・鉄粉回収部52と冷却水送給部53とに2分割するとともに、オイルセパレータ55を切粉・鉄粉回収部52側に配置していた。切削盤又は研削盤等の成形機械54から、循環する冷却水とともにタンク51内に回収された切粉・鉄粉は、オイルセパレータ55によって永久磁石58で吸着ドラム56に吸着され、シュートの部位において手で剥ぎ取られることによって排出されていた。
【0004】
これによって、切粉・鉄粉が除去された冷却水は冷却水送給部53に流入され、冷却水がタンク51から成形機械54内に循環できることとなっていた。
【特許文献1】特開平5−57211号公報(2〜3頁、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているオイルセパレータ55は、希土類の磁石を使用しているため磁力が大きく、また複雑に構成されていることからコストが高くなっていた。しかもこのオイルセパレータ55を使用する切粉・鉄粉分離除去装置50は、タンク51を2分割に構成するとともに切粉・鉄粉を切削盤54からタンクに戻すためのポンプ60と、タンク51内の切粉・鉄粉をオイルセパレータ55に吸引するポンプ61とを備えることになるから、部品点数を多くしてコストを上昇させることとなっていた。しかも、吸着ドラム56内に可動部を有していることからメンテナンスの必要が生じて手間のかかることとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡単な構成でしかも廉価に構成するとともにメンテナンスフリーで行なうことのできる切粉・鉄粉の搬送装置及び分離搬送システムを提供することを目的とする。そのため、本発明に係る切粉・鉄粉の搬送装置は、
請求項1記載の発明では、切粉・鉄粉の搬送方向に延設して形成されるとともに前記搬送方向に対して直交又は略直交あるいは傾斜する溝が搬送方向に複数並設された鉄芯と、前記溝に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、前記鉄芯の周りに配置される搬送面と、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させることによって、切粉・鉄粉を前記搬送面に沿って搬送可能に構成されることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明では、前記鉄芯に形成される溝には、前記コイルの第1の巻線、第2の巻線又は第3の巻線が搬送方向に沿って順番に挿通されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明では、前記溝に挿通される各巻線のピッチは、切粉の大きさによって可変に設定されることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4記載の発明では、前記鉄芯は、前記鉄粉・切粉を吸い上げる吸入部と、前記鉄粉・切粉を搬送する搬送部と、前記鉄粉・切粉を外部に排出する排出部とを有し、前記吸入部に巻回されるコイルには少なくとも直流電流が流され、前記搬送部には交流電流が流されることを特徴としている。
【0010】
さらに請求項5記載の発明では、前記吸入部は、前記直流電流と交流電流とが所定のタイミングで切り換え可能に回路構成されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項6記載の発明では、前記鉄芯は、前記鉄粉・切粉を吸い上げる吸入部と、前記鉄粉・切粉を搬送する搬送部と、前記鉄粉・切粉を外部に排出する排出部とを有し、前記排出部が消磁可能に形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項7記載の発明では、前記搬送面が、非磁性材又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板で形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項8記載の発明では、前記弱磁性材が、透磁率1.01〜5500の範囲であることを特徴としている。
【0014】
請求項9記載の発明では、前記薄板状の鉄板が、3.5mm以内の厚みで形成されていることを特徴としている。
【0015】
さらに、この発明に係る切粉・鉄粉の分離搬送システムは、請求項10記載の発明では、成形機械と、前記成形機械で切削又は研削された切粉・鉄粉が冷却水とともに回収されるタンクと、前記タンクに前記切粉・鉄粉を前記冷却水とともに回収させるポンプと、前記タンク内の切粉・鉄粉を外部に排出する搬送装置とを備えて、前記切粉・鉄粉を冷却水から分離可能に構成する切粉・鉄粉の分離搬送システムであって、
前記搬送装置が、切粉・鉄粉の搬送方向に延設して形成されるとともに前記搬送方向に対して直交又は略直交あるいは傾斜する溝が搬送方向に複数並設された鉄芯と、前記溝に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、前記鉄芯の周りに配置される搬送面と、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させることによって、切粉・鉄粉を前記搬送面に沿って搬送可能に構成されることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11記載の発明では、前記搬送面が、非磁性材又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板で形成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項12記載の発明では、前記弱磁性材が、透磁率1.01〜5500の範囲であることを特徴としている。
【0018】
請求項13記載の発明では、前記薄板状の鉄板が、3.5mm以内の厚みで形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、切粉・鉄粉搬送装置は、鉄芯に巻回されたコイルに位相の異なる交流電流、例えば、二相又は三相交流の電流を流すことによって合成磁界を発生させる。合成磁界は時間とともに移動する移動磁界を形成することから、搬送面の一端に移動した切粉・鉄粉は吸引されて搬送面上を磁力で移動することとなり、搬送装置の他端から外部に排出される。従って、搬送装置の一端を、例えば、冷却水とともに循環された切粉・鉄粉が流入されているタンク内に配置し、他端をタンク外に配置すれば、タンク内の切粉・鉄粉は外部に排出されて冷却水を機内に送給することができる。このように、切粉・鉄粉搬送装置は、鉄芯とコイル及び搬送面だけの構成で切粉や鉄粉を搬送できることから高価なオイルセパレータを使用することなく簡単で廉価に構成することができる。しかも、この搬送装置はオイルセパレータのメンテナンスを必要としないことから手間がかかることもない。
【0020】
なお、搬送面が、非磁性材であれば切粉・鉄粉の搬送を良好にするものであるが、それに限らず、透磁率が1.01〜5500の弱磁性材、あるいは3.5mm以内の厚みの薄い鉄板であってもよい。
【0021】
また、この発明によれば、鉄芯の溝に挿通する第1の巻線、第2の巻線又は第3の巻線は、位相の異なる交流電流、例えば、二相又は三相交流の電流が流れることによって位相をずらして合成磁界を発生させ、この合成磁界が時間とともに移動する移動磁界を形成することになるから、切粉・鉄粉は搬送面に沿って搬送される。これによって、簡単な構造で切粉・鉄粉を外部に排出させることができる。
【0022】
また、この発明によれば、成形機械によって切削される切粉は、その切削物しだいによりその大きさが変化する。大きさが異なる切粉に対して、第1の巻線ピッチ、第2の巻線ピッチ、又は第3の巻線ピッチを可変とすれば、つまり、各巻線を各巻線が挿通する溝の位置をずらして巻回すれば、切粉の大きさにバラツキがあっても1個の搬送装置で切粉を最適の速度で搬送することができる。
【0023】
さらに、この発明の切粉・鉄粉搬送装置は、前記鉄芯の切粉搬送方向に沿って、順に、吸入部、搬送部、排出部が形成されている。吸入部に直流電流を流し、搬送部に交流電流を流すことによって、吸入部においては、その磁力によって切粉を集めることができ、搬送部においては移動磁界によって切粉や鉄粉を順に搬送させることができる。この際、吸入部には所定のタイミングで交流電流を流すように回路構成することによって、吸入部に集められた切粉や鉄粉は移動磁界によって搬送され、その後搬送部によって排出部に向かって搬送されることとなる。
【0024】
また、排出部に搬送された切粉や鉄粉は、一旦排出部に溜められることとなるが、排出部が消磁されることによって簡単に外部に排出させることができる。
【0025】
この発明の切粉・鉄粉分離搬送システムによれば、成形機械で削られた切粉・鉄粉は、冷却水とともにポンプによってタンク内に回収される。タンク内では、切粉・鉄粉は切粉・鉄粉搬送装置によって搬送されて外部に排出される。この搬送装置は、請求項1に記載した構成と同様であり、位相の異なる交流電流を流すことによって発生する移動磁界で、タンク内の切粉・鉄粉をすべて吸引して搬送することから、タンク内を2分割に形成する必要はなく簡単に構成できる。また、高価なセパレータを使用することなく切粉・鉄粉を分離することができることから、切粉・鉄粉搬送装置も請求項1と同様の効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、一形態の切粉・鉄粉分離搬送システム及び切粉・鉄粉搬送装置の詳細を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、切粉・鉄粉分離搬送システム1を示す簡略図面であり、成形機械としては一例として研削盤で説明する。研削盤で研削することによって発生する切り屑は主に鉄粉であるため、以下、「切粉・鉄粉」を「鉄粉」で説明し「切粉・鉄粉搬送装置」及び「切粉・鉄粉分離搬送システム」を、「鉄粉搬送装置10」、及び「鉄粉分離搬送システム1」とする。
【0028】
鉄粉分離搬送システム1は、研削盤3と、研削盤3で研削材を研削することによって発生した鉄粉を冷却水とともに回収させるポンプ5と、鉄粉・冷却水を回収するタンク7と、タンク7内の鉄粉を外部に搬送して排出する鉄粉搬送装置10と、研削盤3とタンク7とをポンプ5を介して接続する回収経路8及び冷却水だけを研削盤3に送給する送給経路9とを備えている。
【0029】
実施形態の鉄粉搬送装置10は、一端をタンク7内に配置し他端をタンク7外に配置してタンク7内の切粉・鉄粉をタンク7内から分離してタンク7外に搬送可能に配置する。また、鉄粉搬送装置10は、図2〜3に示すように、コイル13を巻回した鉄芯11をケース体15に収納して構成されている。鉄芯11は、磁性材の珪素鋼板あるいは鉄板を鉄芯11の幅方向に積層して形成するとともに、搬送方向と直交する短手方向に向かって複数の溝部111と溝部111間に配置されるコア部112とを有して形成している。なお、この溝部111は、鉄芯11の搬送方向に対して、略直交あるいは所定角度に傾斜して形成してもよい。
【0030】
鉄芯11の溝部111にはコイル13の巻線131がそれぞれ挿通して巻回されている。実施形態においては、コイル13には、三相交流電流を流して合成磁界を発生させる。つまり、図2に示すように、鉄芯11に形成された溝部111a、111b、111c、111´a、111´b、111´c…には、それぞれ第1の巻線131a、第2の巻線131b、第3の巻線131c、第1の巻線131´a、第2の巻線131´b、第3の巻線131´c…と順次挿通させる。
【0031】
第1の巻線131aは、第1順目の溝部111aと第2順目の溝部111´aを挿通するように巻回され、第2の巻線131bは、第1順目の溝部111bと第2順目の溝部111´bを挿通するように巻回され、第3の巻線131cは第1順目の溝部111cと第2順目の溝部111´cを挿通するように巻回される。そして、以下、同様に各巻線131が順に巻回されることとなる。
【0032】
このように巻回されたコイル13は、図4に示すように、第1の巻線131aが、例えば三相交流のU相コイル13Uであり、第1順目の溝部111aと第2順目の溝部111´aとを巻回する巻線131a(U相コイル13U)の間で閉ループを形成するとともに第2順目と第3順目で閉ループを形成する巻線131a(U相コイル13U)とを直列に結線し、以下同様に結線する。また、第2の巻線131bは、例えば三相交流のW相コイル13Wであり、第3の巻線131cは、例えば三相交流のV相コイル13Vであり、W相、V相と同様に順次配置されている。
【0033】
なお、図4における右側から順に1個のU相コイル13U、1個のW相コイル13W、1個のV相コイル13Vを配置してコイル組14を構成する。隣接するコイル組14どうしにおける各相のコイルは、各相におけるコイル13の巻き方向をそれぞれ逆にして順に配置されている。さらに、端末のコイル組14におけるU相とV相における巻き始め側は電源E側に接続するとともに、W相における巻き終わり側が電源E側に接続されている。また、左端のコイル組14は中点結線されている。
【0034】
コイル13を巻回した鉄芯11は、図2に示すように、角筒状に形成されたケース体15内に挿入されて鉄粉搬送装置10を構成する。ケース体15は、電気抵抗の高い非磁性材、例えば、ステンレス製で形成され、図2における鉄芯11の上方に位置する面を搬送面151として形成する。
【0035】
このケース体15は、非磁性材以外に、弱磁性材、あるいは、磁性材であれば薄い厚みの鉄板であってもよい。弱磁性材の場合、透磁率1.01〜5500(望ましくは、1.01〜1000)の範囲であればよく、この範囲は、例えば、ステンレス製のケース体の表面を研削加工して磁性を帯びることを含むものである。
【0036】
また、薄板状の鉄板の場合は、その厚みが3.5mm以下のものであれば、切粉が留まらず搬送可能となる結果が実験により示されている。
【0037】
さらに、ケース体15は、角筒状でなくても平板であってもよい。
【0038】
次に、上記のように構成された鉄粉搬送装置10及び分離搬送システム1の作用について説明する。
【0039】
コイル13に三相交流電流を流すと、図5に示すように、第1の巻線131a(U相コイル13U)と第2の巻線131b(W相コイル13W)及び第3の巻線131c(V相コイル13V)は、それぞれ120度位相がずれた正弦波形を描くこととなる。例えば、図5において時間tとともに経過する3位置を選択し、それぞれの位置を時点P1、P2、P3とすると、時点P1、P2、P3における合成磁界は、図6に示すように表される。つまり、それぞれの時点P1、P2、P3における最大磁力がずれることとなるから、これが時間とともに移動する移動磁界となって鉄粉搬送装置10の搬送面151に載った鉄粉は搬送されることとなる。搬送された鉄粉は鉄粉搬送装置10の他端で外部に配置された図示しない鉄粉受け皿に落下される。
【0040】
一方、実施形態においては、鉄粉搬送装置10は、図7に示すように、3部位を形成している。例えば、タンク7内に位置する部位の一端を吸引部101とし、吸引部101に連接する鉄粉搬送路を搬送部102とし、他端に配置して鉄粉を外部に排出する部位を排出部103とする。
【0041】
吸入部101と排出部103とはそれぞれ短路に形成され、搬送部102は吸入部101と排出部103との間で長路に形成されている。そして、吸入部101には直流電流を流し、搬送部102、排出部103には三相の交流電流を流しておく。
【0042】
そして、吸入部101に鉄粉が集められると、直流電流を三相交流電流に切り換えて吸入部101に溜められた鉄粉を搬送部102に向けて搬送させる。搬送部102では、三相交流電流が流れていることからやはり移動磁界によって鉄粉を排出部103に向かって搬送することとなる。排出部103では、当初、三相交流電流が流れていることから搬送された鉄粉は排出部103の端部まで搬送され、端部で一旦溜められる。そして、排出部103に流れている交流電流を次第に弱めることによって排出部103を消磁状態にする。これによって、排出部103の端部に溜められていた鉄粉を外部に落下させて排出することになる。
【0043】
なお、吸引部101と搬送部102との間には、例えば、リレーを配置させて、所定のタイミングで直流電流から三相交流電流に回路を切り換えるようにしておく。そして直流電流を流すことによって、磁力を増大できることから、タンク7内の多量の鉄粉を搬送部102に移動しやすくし、三相交流電流に切り換えることによって移動磁界を発生させて鉄粉を搬送することとなる。
【0044】
この際、吸引部101は、鉄粉を搬送部102上に、容易に移動させやすいように、傾斜面101aに形成することが望ましい。また、排出部103は、消磁することによって鉄粉を落下しやすいように搬送部102に対して下方に傾斜して形成することが望ましい。
【0045】
さらに、図8に示すように、搬送装置10Aの排出部103A部位を折り返して略「つ」字状に形成するとともに、排出部103Aを上方から下方にむけるように、鉄粉搬送装置10Aを縦長状に配置してもよい。この場合、搬送された鉄粉は吸入部101Aから搬送部102Aを通り、排出部103Aに進入した後、排出部103Aを消磁状態にすることによって吸引力がなくなるから、自重で落下しやすくなる。
【0046】
なお、実施形態では吸入部101(101A)に直流電流を流して、所定のタイミングで三相交流電流に切り換えるようにしているが、吸入部101(101A)に三相交流電流を流したままにしておいてもよく、また、直流電流と三相交流電流とを切り換えることなく直流電流で鉄粉を搬送させるようにしてもよい。
【0047】
また、成形機械が切削機であって、切削される切粉に大きさの相異がある場合、鉄芯11の溝部111を挿通する巻線のピッチを変えることができる。例えば、図9に示すように、鉄芯11の溝部には、2種類のコイル13の巻線131、132を交互に挿通する。つまり、鉄芯11の溝部111には、順次、A種の第1の巻線131a、B種の第1の巻線132a、A種の第2の巻線131b、B種の第2の巻線132b、A種の第3の巻線131c、B種の第3の巻線132c、…を挿通させて巻回する。これによって、巻線131の溝部挿入間ピッチを変えることができ、切粉の大きさに合わせることができる。
【0048】
上述のように、実施形態の鉄粉搬送装置10は、細長状の鉄芯11に搬送方向に沿って溝部111を並設して形成し、溝部111に挿通したコイル13に三相交流電流を流すことによって移動磁界を発生させることができることから、非磁性材で形成された搬送面151上で鉄粉を搬送させることができる。これによって高価なオイルセパレータを使用しないで鉄粉を分離除去できることから廉価でメンテナンスフリーの鉄粉搬送装置10及び鉄板分離搬送システム1を提供することができる。
【0049】
なお、本発明の切粉・鉄粉の搬送装置及び分離搬送システムは、上記の形態に限定するものではない。例えば、コイルに流す電流を三相交流電流でなく二相の交流電流を流すようにしてもよい。この場合、二相交流は単相交流にコンデンサを入れて作り出すことができる。
【0050】
さらに、搬送面を形成する非磁性材のケース体は、電気抵抗の高い材料であれば、ステンレス材に限定するものではない。
【0051】
また、コイルに流す交流電流は、位相の異なる交流電流であれば、二相交流電流や三相交流電流以外でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一形態の鉄粉分離搬送システムを示す簡略斜視図である。
【図2】図1における搬送装置の一部を示す分解斜視図である。
【図3】図1における鉄粉搬送装置の主要部を示す一部断面図である。
【図4】図2におけるコイルの巻回状態を示す結線図である。
【図5】図2におけるコイルの三相交流電流を示す波形図である。
【図6】図5における3位置での合成磁界を示す波形図である。
【図7】図1における鉄粉搬送装置の3部位を示す斜視図である。
【図8】鉄粉搬送装置の別の形状を示す斜視図である。
【図9】鉄芯の溝部に挿通する巻線間のピッチを変えた状態を示す断面図である。
【図10】従来のオイルセパレータを示す断面図である。
【図11】図10のオイルセパレータを使用する従来の鉄粉分離搬送システムを示す簡略斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1、鉄粉分離搬送システム
3、研磨機(成形機械)
5、ポンプ
7、タンク
10、鉄粉搬送装置
101、吸入部
102、搬送部
103、排出部
11、鉄芯
111、溝部
13、コイル
131、巻線
15、ケース体
P1、時点
P2、時点
P3、時点
E、電源
【技術分野】
【0001】
本発明は切削盤で削られた切粉や研削盤で削られた鉄粉をタンクから排出する切粉・鉄粉の搬送装置及び分離搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
切削盤又は研削盤等の成形機械で削られた切粉・鉄粉等は、循環する冷却水によってタンクに回収される。タンク内の冷却水は循環されることから、通常、切粉や鉄粉を含まないように、切粉・鉄粉を分離して排出するようにしている。従来においては、図10〜11に示すように、切粉・鉄粉分離除去装置50は、回転可能な吸着ドラム型のオイルセパレータ55と呼ばれるものを使用して行われていた。このオイルセパレータ55は、特許文献1によっても示されているように、吸着ドラム56の周壁内に沿って、多数の鉄板57を設置し、吸着ドラム55の周壁内面位置側に対向して永久磁石58を鉄板の回転移動時に追従できるように設置している。また、吸着ドラム56の内面の他側には鉄板57の消磁装置として電磁石59を設置して構成されている。
【0003】
図11に示すように、このオイルセパレータ55を使用する切粉・鉄粉分離除去装置50は、タンク51内を切粉・鉄粉回収部52と冷却水送給部53とに2分割するとともに、オイルセパレータ55を切粉・鉄粉回収部52側に配置していた。切削盤又は研削盤等の成形機械54から、循環する冷却水とともにタンク51内に回収された切粉・鉄粉は、オイルセパレータ55によって永久磁石58で吸着ドラム56に吸着され、シュートの部位において手で剥ぎ取られることによって排出されていた。
【0004】
これによって、切粉・鉄粉が除去された冷却水は冷却水送給部53に流入され、冷却水がタンク51から成形機械54内に循環できることとなっていた。
【特許文献1】特開平5−57211号公報(2〜3頁、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているオイルセパレータ55は、希土類の磁石を使用しているため磁力が大きく、また複雑に構成されていることからコストが高くなっていた。しかもこのオイルセパレータ55を使用する切粉・鉄粉分離除去装置50は、タンク51を2分割に構成するとともに切粉・鉄粉を切削盤54からタンクに戻すためのポンプ60と、タンク51内の切粉・鉄粉をオイルセパレータ55に吸引するポンプ61とを備えることになるから、部品点数を多くしてコストを上昇させることとなっていた。しかも、吸着ドラム56内に可動部を有していることからメンテナンスの必要が生じて手間のかかることとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡単な構成でしかも廉価に構成するとともにメンテナンスフリーで行なうことのできる切粉・鉄粉の搬送装置及び分離搬送システムを提供することを目的とする。そのため、本発明に係る切粉・鉄粉の搬送装置は、
請求項1記載の発明では、切粉・鉄粉の搬送方向に延設して形成されるとともに前記搬送方向に対して直交又は略直交あるいは傾斜する溝が搬送方向に複数並設された鉄芯と、前記溝に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、前記鉄芯の周りに配置される搬送面と、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させることによって、切粉・鉄粉を前記搬送面に沿って搬送可能に構成されることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明では、前記鉄芯に形成される溝には、前記コイルの第1の巻線、第2の巻線又は第3の巻線が搬送方向に沿って順番に挿通されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明では、前記溝に挿通される各巻線のピッチは、切粉の大きさによって可変に設定されることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4記載の発明では、前記鉄芯は、前記鉄粉・切粉を吸い上げる吸入部と、前記鉄粉・切粉を搬送する搬送部と、前記鉄粉・切粉を外部に排出する排出部とを有し、前記吸入部に巻回されるコイルには少なくとも直流電流が流され、前記搬送部には交流電流が流されることを特徴としている。
【0010】
さらに請求項5記載の発明では、前記吸入部は、前記直流電流と交流電流とが所定のタイミングで切り換え可能に回路構成されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項6記載の発明では、前記鉄芯は、前記鉄粉・切粉を吸い上げる吸入部と、前記鉄粉・切粉を搬送する搬送部と、前記鉄粉・切粉を外部に排出する排出部とを有し、前記排出部が消磁可能に形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項7記載の発明では、前記搬送面が、非磁性材又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板で形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項8記載の発明では、前記弱磁性材が、透磁率1.01〜5500の範囲であることを特徴としている。
【0014】
請求項9記載の発明では、前記薄板状の鉄板が、3.5mm以内の厚みで形成されていることを特徴としている。
【0015】
さらに、この発明に係る切粉・鉄粉の分離搬送システムは、請求項10記載の発明では、成形機械と、前記成形機械で切削又は研削された切粉・鉄粉が冷却水とともに回収されるタンクと、前記タンクに前記切粉・鉄粉を前記冷却水とともに回収させるポンプと、前記タンク内の切粉・鉄粉を外部に排出する搬送装置とを備えて、前記切粉・鉄粉を冷却水から分離可能に構成する切粉・鉄粉の分離搬送システムであって、
前記搬送装置が、切粉・鉄粉の搬送方向に延設して形成されるとともに前記搬送方向に対して直交又は略直交あるいは傾斜する溝が搬送方向に複数並設された鉄芯と、前記溝に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、前記鉄芯の周りに配置される搬送面と、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させることによって、切粉・鉄粉を前記搬送面に沿って搬送可能に構成されることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11記載の発明では、前記搬送面が、非磁性材又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板で形成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項12記載の発明では、前記弱磁性材が、透磁率1.01〜5500の範囲であることを特徴としている。
【0018】
請求項13記載の発明では、前記薄板状の鉄板が、3.5mm以内の厚みで形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、切粉・鉄粉搬送装置は、鉄芯に巻回されたコイルに位相の異なる交流電流、例えば、二相又は三相交流の電流を流すことによって合成磁界を発生させる。合成磁界は時間とともに移動する移動磁界を形成することから、搬送面の一端に移動した切粉・鉄粉は吸引されて搬送面上を磁力で移動することとなり、搬送装置の他端から外部に排出される。従って、搬送装置の一端を、例えば、冷却水とともに循環された切粉・鉄粉が流入されているタンク内に配置し、他端をタンク外に配置すれば、タンク内の切粉・鉄粉は外部に排出されて冷却水を機内に送給することができる。このように、切粉・鉄粉搬送装置は、鉄芯とコイル及び搬送面だけの構成で切粉や鉄粉を搬送できることから高価なオイルセパレータを使用することなく簡単で廉価に構成することができる。しかも、この搬送装置はオイルセパレータのメンテナンスを必要としないことから手間がかかることもない。
【0020】
なお、搬送面が、非磁性材であれば切粉・鉄粉の搬送を良好にするものであるが、それに限らず、透磁率が1.01〜5500の弱磁性材、あるいは3.5mm以内の厚みの薄い鉄板であってもよい。
【0021】
また、この発明によれば、鉄芯の溝に挿通する第1の巻線、第2の巻線又は第3の巻線は、位相の異なる交流電流、例えば、二相又は三相交流の電流が流れることによって位相をずらして合成磁界を発生させ、この合成磁界が時間とともに移動する移動磁界を形成することになるから、切粉・鉄粉は搬送面に沿って搬送される。これによって、簡単な構造で切粉・鉄粉を外部に排出させることができる。
【0022】
また、この発明によれば、成形機械によって切削される切粉は、その切削物しだいによりその大きさが変化する。大きさが異なる切粉に対して、第1の巻線ピッチ、第2の巻線ピッチ、又は第3の巻線ピッチを可変とすれば、つまり、各巻線を各巻線が挿通する溝の位置をずらして巻回すれば、切粉の大きさにバラツキがあっても1個の搬送装置で切粉を最適の速度で搬送することができる。
【0023】
さらに、この発明の切粉・鉄粉搬送装置は、前記鉄芯の切粉搬送方向に沿って、順に、吸入部、搬送部、排出部が形成されている。吸入部に直流電流を流し、搬送部に交流電流を流すことによって、吸入部においては、その磁力によって切粉を集めることができ、搬送部においては移動磁界によって切粉や鉄粉を順に搬送させることができる。この際、吸入部には所定のタイミングで交流電流を流すように回路構成することによって、吸入部に集められた切粉や鉄粉は移動磁界によって搬送され、その後搬送部によって排出部に向かって搬送されることとなる。
【0024】
また、排出部に搬送された切粉や鉄粉は、一旦排出部に溜められることとなるが、排出部が消磁されることによって簡単に外部に排出させることができる。
【0025】
この発明の切粉・鉄粉分離搬送システムによれば、成形機械で削られた切粉・鉄粉は、冷却水とともにポンプによってタンク内に回収される。タンク内では、切粉・鉄粉は切粉・鉄粉搬送装置によって搬送されて外部に排出される。この搬送装置は、請求項1に記載した構成と同様であり、位相の異なる交流電流を流すことによって発生する移動磁界で、タンク内の切粉・鉄粉をすべて吸引して搬送することから、タンク内を2分割に形成する必要はなく簡単に構成できる。また、高価なセパレータを使用することなく切粉・鉄粉を分離することができることから、切粉・鉄粉搬送装置も請求項1と同様の効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、一形態の切粉・鉄粉分離搬送システム及び切粉・鉄粉搬送装置の詳細を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、切粉・鉄粉分離搬送システム1を示す簡略図面であり、成形機械としては一例として研削盤で説明する。研削盤で研削することによって発生する切り屑は主に鉄粉であるため、以下、「切粉・鉄粉」を「鉄粉」で説明し「切粉・鉄粉搬送装置」及び「切粉・鉄粉分離搬送システム」を、「鉄粉搬送装置10」、及び「鉄粉分離搬送システム1」とする。
【0028】
鉄粉分離搬送システム1は、研削盤3と、研削盤3で研削材を研削することによって発生した鉄粉を冷却水とともに回収させるポンプ5と、鉄粉・冷却水を回収するタンク7と、タンク7内の鉄粉を外部に搬送して排出する鉄粉搬送装置10と、研削盤3とタンク7とをポンプ5を介して接続する回収経路8及び冷却水だけを研削盤3に送給する送給経路9とを備えている。
【0029】
実施形態の鉄粉搬送装置10は、一端をタンク7内に配置し他端をタンク7外に配置してタンク7内の切粉・鉄粉をタンク7内から分離してタンク7外に搬送可能に配置する。また、鉄粉搬送装置10は、図2〜3に示すように、コイル13を巻回した鉄芯11をケース体15に収納して構成されている。鉄芯11は、磁性材の珪素鋼板あるいは鉄板を鉄芯11の幅方向に積層して形成するとともに、搬送方向と直交する短手方向に向かって複数の溝部111と溝部111間に配置されるコア部112とを有して形成している。なお、この溝部111は、鉄芯11の搬送方向に対して、略直交あるいは所定角度に傾斜して形成してもよい。
【0030】
鉄芯11の溝部111にはコイル13の巻線131がそれぞれ挿通して巻回されている。実施形態においては、コイル13には、三相交流電流を流して合成磁界を発生させる。つまり、図2に示すように、鉄芯11に形成された溝部111a、111b、111c、111´a、111´b、111´c…には、それぞれ第1の巻線131a、第2の巻線131b、第3の巻線131c、第1の巻線131´a、第2の巻線131´b、第3の巻線131´c…と順次挿通させる。
【0031】
第1の巻線131aは、第1順目の溝部111aと第2順目の溝部111´aを挿通するように巻回され、第2の巻線131bは、第1順目の溝部111bと第2順目の溝部111´bを挿通するように巻回され、第3の巻線131cは第1順目の溝部111cと第2順目の溝部111´cを挿通するように巻回される。そして、以下、同様に各巻線131が順に巻回されることとなる。
【0032】
このように巻回されたコイル13は、図4に示すように、第1の巻線131aが、例えば三相交流のU相コイル13Uであり、第1順目の溝部111aと第2順目の溝部111´aとを巻回する巻線131a(U相コイル13U)の間で閉ループを形成するとともに第2順目と第3順目で閉ループを形成する巻線131a(U相コイル13U)とを直列に結線し、以下同様に結線する。また、第2の巻線131bは、例えば三相交流のW相コイル13Wであり、第3の巻線131cは、例えば三相交流のV相コイル13Vであり、W相、V相と同様に順次配置されている。
【0033】
なお、図4における右側から順に1個のU相コイル13U、1個のW相コイル13W、1個のV相コイル13Vを配置してコイル組14を構成する。隣接するコイル組14どうしにおける各相のコイルは、各相におけるコイル13の巻き方向をそれぞれ逆にして順に配置されている。さらに、端末のコイル組14におけるU相とV相における巻き始め側は電源E側に接続するとともに、W相における巻き終わり側が電源E側に接続されている。また、左端のコイル組14は中点結線されている。
【0034】
コイル13を巻回した鉄芯11は、図2に示すように、角筒状に形成されたケース体15内に挿入されて鉄粉搬送装置10を構成する。ケース体15は、電気抵抗の高い非磁性材、例えば、ステンレス製で形成され、図2における鉄芯11の上方に位置する面を搬送面151として形成する。
【0035】
このケース体15は、非磁性材以外に、弱磁性材、あるいは、磁性材であれば薄い厚みの鉄板であってもよい。弱磁性材の場合、透磁率1.01〜5500(望ましくは、1.01〜1000)の範囲であればよく、この範囲は、例えば、ステンレス製のケース体の表面を研削加工して磁性を帯びることを含むものである。
【0036】
また、薄板状の鉄板の場合は、その厚みが3.5mm以下のものであれば、切粉が留まらず搬送可能となる結果が実験により示されている。
【0037】
さらに、ケース体15は、角筒状でなくても平板であってもよい。
【0038】
次に、上記のように構成された鉄粉搬送装置10及び分離搬送システム1の作用について説明する。
【0039】
コイル13に三相交流電流を流すと、図5に示すように、第1の巻線131a(U相コイル13U)と第2の巻線131b(W相コイル13W)及び第3の巻線131c(V相コイル13V)は、それぞれ120度位相がずれた正弦波形を描くこととなる。例えば、図5において時間tとともに経過する3位置を選択し、それぞれの位置を時点P1、P2、P3とすると、時点P1、P2、P3における合成磁界は、図6に示すように表される。つまり、それぞれの時点P1、P2、P3における最大磁力がずれることとなるから、これが時間とともに移動する移動磁界となって鉄粉搬送装置10の搬送面151に載った鉄粉は搬送されることとなる。搬送された鉄粉は鉄粉搬送装置10の他端で外部に配置された図示しない鉄粉受け皿に落下される。
【0040】
一方、実施形態においては、鉄粉搬送装置10は、図7に示すように、3部位を形成している。例えば、タンク7内に位置する部位の一端を吸引部101とし、吸引部101に連接する鉄粉搬送路を搬送部102とし、他端に配置して鉄粉を外部に排出する部位を排出部103とする。
【0041】
吸入部101と排出部103とはそれぞれ短路に形成され、搬送部102は吸入部101と排出部103との間で長路に形成されている。そして、吸入部101には直流電流を流し、搬送部102、排出部103には三相の交流電流を流しておく。
【0042】
そして、吸入部101に鉄粉が集められると、直流電流を三相交流電流に切り換えて吸入部101に溜められた鉄粉を搬送部102に向けて搬送させる。搬送部102では、三相交流電流が流れていることからやはり移動磁界によって鉄粉を排出部103に向かって搬送することとなる。排出部103では、当初、三相交流電流が流れていることから搬送された鉄粉は排出部103の端部まで搬送され、端部で一旦溜められる。そして、排出部103に流れている交流電流を次第に弱めることによって排出部103を消磁状態にする。これによって、排出部103の端部に溜められていた鉄粉を外部に落下させて排出することになる。
【0043】
なお、吸引部101と搬送部102との間には、例えば、リレーを配置させて、所定のタイミングで直流電流から三相交流電流に回路を切り換えるようにしておく。そして直流電流を流すことによって、磁力を増大できることから、タンク7内の多量の鉄粉を搬送部102に移動しやすくし、三相交流電流に切り換えることによって移動磁界を発生させて鉄粉を搬送することとなる。
【0044】
この際、吸引部101は、鉄粉を搬送部102上に、容易に移動させやすいように、傾斜面101aに形成することが望ましい。また、排出部103は、消磁することによって鉄粉を落下しやすいように搬送部102に対して下方に傾斜して形成することが望ましい。
【0045】
さらに、図8に示すように、搬送装置10Aの排出部103A部位を折り返して略「つ」字状に形成するとともに、排出部103Aを上方から下方にむけるように、鉄粉搬送装置10Aを縦長状に配置してもよい。この場合、搬送された鉄粉は吸入部101Aから搬送部102Aを通り、排出部103Aに進入した後、排出部103Aを消磁状態にすることによって吸引力がなくなるから、自重で落下しやすくなる。
【0046】
なお、実施形態では吸入部101(101A)に直流電流を流して、所定のタイミングで三相交流電流に切り換えるようにしているが、吸入部101(101A)に三相交流電流を流したままにしておいてもよく、また、直流電流と三相交流電流とを切り換えることなく直流電流で鉄粉を搬送させるようにしてもよい。
【0047】
また、成形機械が切削機であって、切削される切粉に大きさの相異がある場合、鉄芯11の溝部111を挿通する巻線のピッチを変えることができる。例えば、図9に示すように、鉄芯11の溝部には、2種類のコイル13の巻線131、132を交互に挿通する。つまり、鉄芯11の溝部111には、順次、A種の第1の巻線131a、B種の第1の巻線132a、A種の第2の巻線131b、B種の第2の巻線132b、A種の第3の巻線131c、B種の第3の巻線132c、…を挿通させて巻回する。これによって、巻線131の溝部挿入間ピッチを変えることができ、切粉の大きさに合わせることができる。
【0048】
上述のように、実施形態の鉄粉搬送装置10は、細長状の鉄芯11に搬送方向に沿って溝部111を並設して形成し、溝部111に挿通したコイル13に三相交流電流を流すことによって移動磁界を発生させることができることから、非磁性材で形成された搬送面151上で鉄粉を搬送させることができる。これによって高価なオイルセパレータを使用しないで鉄粉を分離除去できることから廉価でメンテナンスフリーの鉄粉搬送装置10及び鉄板分離搬送システム1を提供することができる。
【0049】
なお、本発明の切粉・鉄粉の搬送装置及び分離搬送システムは、上記の形態に限定するものではない。例えば、コイルに流す電流を三相交流電流でなく二相の交流電流を流すようにしてもよい。この場合、二相交流は単相交流にコンデンサを入れて作り出すことができる。
【0050】
さらに、搬送面を形成する非磁性材のケース体は、電気抵抗の高い材料であれば、ステンレス材に限定するものではない。
【0051】
また、コイルに流す交流電流は、位相の異なる交流電流であれば、二相交流電流や三相交流電流以外でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一形態の鉄粉分離搬送システムを示す簡略斜視図である。
【図2】図1における搬送装置の一部を示す分解斜視図である。
【図3】図1における鉄粉搬送装置の主要部を示す一部断面図である。
【図4】図2におけるコイルの巻回状態を示す結線図である。
【図5】図2におけるコイルの三相交流電流を示す波形図である。
【図6】図5における3位置での合成磁界を示す波形図である。
【図7】図1における鉄粉搬送装置の3部位を示す斜視図である。
【図8】鉄粉搬送装置の別の形状を示す斜視図である。
【図9】鉄芯の溝部に挿通する巻線間のピッチを変えた状態を示す断面図である。
【図10】従来のオイルセパレータを示す断面図である。
【図11】図10のオイルセパレータを使用する従来の鉄粉分離搬送システムを示す簡略斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1、鉄粉分離搬送システム
3、研磨機(成形機械)
5、ポンプ
7、タンク
10、鉄粉搬送装置
101、吸入部
102、搬送部
103、排出部
11、鉄芯
111、溝部
13、コイル
131、巻線
15、ケース体
P1、時点
P2、時点
P3、時点
E、電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切粉・鉄粉の搬送方向に延設して形成されるとともに前記搬送方向に対して直交又は略直交あるいは傾斜する溝が搬送方向に複数並設された鉄芯と、前記溝に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、前記鉄芯の周りに配置される搬送面と、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させることによって、切粉・鉄粉を前記搬送面に沿って搬送可能に構成されることを特徴とする切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項2】
前記鉄芯に形成される溝には、前記コイルの第1の巻線、第2の巻線又は第3の巻線が搬送方向に沿って順番に挿通されていることを特徴とする請求項1記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項3】
前記溝に挿通される各巻線のピッチは、切粉の大きさによって可変に設定されることを特徴とする請求項2記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項4】
前記鉄芯は、前記鉄粉・切粉を吸い上げる吸入部と、前記鉄粉・切粉を搬送する搬送部と、前記鉄粉・切粉を外部に排出する排出部とを有し、前記吸入部に巻回されるコイルには少なくとも直流電流が流され、前記搬送部には交流電流が流されることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれかに記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項5】
前記吸入部は、前記直流電流と交流電流とが所定のタイミングで切り換え可能に回路構成されていることを特徴とする請求項4記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項6】
前記鉄芯は、前記鉄粉・切粉を吸い上げる吸入部と、前記鉄粉・切粉を搬送する搬送部と、前記鉄粉・切粉を外部に排出する排出部とを有し、前記排出部が消磁可能に形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれかに記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項7】
前記搬送面が、非磁性材又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板で形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項8】
前記弱磁性材が、透磁率1.01〜5500の範囲であることを特徴とする請求項7記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項9】
前記薄板状の鉄板が、3.5mm以内の厚みで形成されていることを特徴とする請求項7記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項10】
成形機械と、前記成形機械で切削又は研削された切粉・鉄粉が冷却水とともに回収されるタンクと、前記タンクに前記切粉・鉄粉を前記冷却水とともに回収させるポンプと、前記タンク内の切粉・鉄粉を外部に排出する搬送装置とを備えて、前記切粉・鉄粉を冷却水から分離可能に構成する切粉・鉄粉の分離搬送システムであって、
前記搬送装置が、切粉・鉄粉の搬送方向に延設して形成されるとともに前記搬送方向に対して直交又は略直交あるいは傾斜する溝が搬送方向に複数並設された鉄芯と、前記溝に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、前記鉄芯の周りに配置される非磁性の搬送面と、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させることによって、切粉・鉄粉を前記搬送面に沿って搬送可能に構成されることを特徴とする切粉・鉄粉の分離搬送システム。
【請求項11】
前記搬送面が、非磁性材又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板で形成されていることを特徴とする請求項10記載の切粉・鉄粉の分離搬送システム。
【請求項12】
前記弱磁性材が、透磁率1.01〜5500の範囲であることを特徴とする請求項10記載の切粉・鉄粉の分離搬送システム。
【請求項13】
前記薄板状の鉄板が、3.5mm以内の厚みで形成されていることを特徴とする請求項10記載の切粉・鉄粉の分離搬送システム。
【請求項1】
切粉・鉄粉の搬送方向に延設して形成されるとともに前記搬送方向に対して直交又は略直交あるいは傾斜する溝が搬送方向に複数並設された鉄芯と、前記溝に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、前記鉄芯の周りに配置される搬送面と、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させることによって、切粉・鉄粉を前記搬送面に沿って搬送可能に構成されることを特徴とする切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項2】
前記鉄芯に形成される溝には、前記コイルの第1の巻線、第2の巻線又は第3の巻線が搬送方向に沿って順番に挿通されていることを特徴とする請求項1記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項3】
前記溝に挿通される各巻線のピッチは、切粉の大きさによって可変に設定されることを特徴とする請求項2記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項4】
前記鉄芯は、前記鉄粉・切粉を吸い上げる吸入部と、前記鉄粉・切粉を搬送する搬送部と、前記鉄粉・切粉を外部に排出する排出部とを有し、前記吸入部に巻回されるコイルには少なくとも直流電流が流され、前記搬送部には交流電流が流されることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれかに記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項5】
前記吸入部は、前記直流電流と交流電流とが所定のタイミングで切り換え可能に回路構成されていることを特徴とする請求項4記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項6】
前記鉄芯は、前記鉄粉・切粉を吸い上げる吸入部と、前記鉄粉・切粉を搬送する搬送部と、前記鉄粉・切粉を外部に排出する排出部とを有し、前記排出部が消磁可能に形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれかに記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項7】
前記搬送面が、非磁性材又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板で形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項8】
前記弱磁性材が、透磁率1.01〜5500の範囲であることを特徴とする請求項7記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項9】
前記薄板状の鉄板が、3.5mm以内の厚みで形成されていることを特徴とする請求項7記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項10】
成形機械と、前記成形機械で切削又は研削された切粉・鉄粉が冷却水とともに回収されるタンクと、前記タンクに前記切粉・鉄粉を前記冷却水とともに回収させるポンプと、前記タンク内の切粉・鉄粉を外部に排出する搬送装置とを備えて、前記切粉・鉄粉を冷却水から分離可能に構成する切粉・鉄粉の分離搬送システムであって、
前記搬送装置が、切粉・鉄粉の搬送方向に延設して形成されるとともに前記搬送方向に対して直交又は略直交あるいは傾斜する溝が搬送方向に複数並設された鉄芯と、前記溝に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、前記鉄芯の周りに配置される非磁性の搬送面と、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させることによって、切粉・鉄粉を前記搬送面に沿って搬送可能に構成されることを特徴とする切粉・鉄粉の分離搬送システム。
【請求項11】
前記搬送面が、非磁性材又は弱磁性材あるいは薄板状の鉄板で形成されていることを特徴とする請求項10記載の切粉・鉄粉の分離搬送システム。
【請求項12】
前記弱磁性材が、透磁率1.01〜5500の範囲であることを特徴とする請求項10記載の切粉・鉄粉の分離搬送システム。
【請求項13】
前記薄板状の鉄板が、3.5mm以内の厚みで形成されていることを特徴とする請求項10記載の切粉・鉄粉の分離搬送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−281435(P2006−281435A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314270(P2005−314270)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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