説明

刈取作業機のバンパー構造

【課題】弾性体の挟持力でデバイダに保持される従来のバンパーに比べ、デバイダに対する保持力を高め、デバイダからの脱落を防止する。
【解決手段】前処理部2の前端部に、茎稈を分草する複数のデバイダ8が設けられると共に、複数のデバイダ8に対して着脱自在なバンパー12を装着してなるコンバイン1において、デバイダ8は、少なくとも一部が金属製(金属製板材11)であり、バンパー12は、複数のデバイダ8に対してそれぞれ個別に装着されると共に、バンパー12内に埋め込まれた永久磁石13の磁力でデバイダ8(金属製板材11)に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン、バインダなどの刈取作業機のバンパー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン、バインダなどの刈取作業機は、刈取部の前端部に、茎稈を分草する複数のデバイダが設けられている。デバイダの前端部は、通常、側面視で三角形状の金属製板材で形成されているので、トラックの荷台に載せて運搬する際などには、デバイダの前端部を保護するために、着脱自在なバンパーを装着している。
【0003】
従来のバンパーは、複数のデバイダの前端部を覆う横長の板材からなり、左右両端のデバイダに対して、ボルト及びナットを用いて取り付けている。そのため、バンパーの取り付けや取り外しに際し、ボルト及びナットの締め付け操作や緩み操作を行う必要があり、着脱作業性に劣るという問題があった。
【0004】
そこで、複数のデバイダに対してそれぞれ個別に装着されるバンパー(カバー部材)も提案されている(例えば、特許文献1参照)。このバンパーは、全体が弾性体で構成され、デバイダの前端部を覆うと共に、デバイダの前端部を弾性的に挟持することにより、自身がデバイダの前端部に保持させるようになっている。このようなバンパーによれば、ボルトやナットが不要になるので、デバイダに対する着脱が容易になるだけでなく、デバイダから取り外した際、コンパクトに収納できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−178339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されるバンパーは、弾性体の挟持力でデバイダに保持されるので、デバイダからの脱落によって紛失の惧れがあり、また、デバイダから取り外した際に紛失する惧れがあるので、刈取作業機の内部に収納場所を確保する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、刈取部の前端部に、茎稈を分草する複数のデバイダが設けられると共に、複数のデバイダに対して着脱自在なバンパーを装着してなる刈取作業機において、前記デバイダは、少なくとも一部が金属製であり、前記バンパーは、複数のデバイダに対してそれぞれ個別に装着されると共に、バンパー内に埋め込まれた磁石の磁力でデバイダに保持されることを特徴とする。
また、前記バンパーは、デバイダから取り外したとき、刈取作業機の金属部分に対して、磁石の磁力で保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明とすることにより、バンパーは、複数のデバイダに対してそれぞれ個別に装着されるものでありながら、バンパー内に埋め込まれた磁石の磁力でデバイダに保持されるので、弾性体の挟持力でデバイダに保持される従来のバンパーに比べ、デバイダに対する保持力を高め、デバイダからの脱落を防止することができる。
また、請求項2の発明とすることにより、バンパーは、デバイダから取り外したとき、刈取作業機の金属部分に対して、磁石の磁力で保持可能となるので、デバイダから取り外した際に紛失する可能性を低減できるだけでなく、刈取作業機の内部に収納場所を確保する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コンバインの全体左側面図である。
【図2】コンバインの全体正面図である。
【図3】補助デバイダ装置が取り付けられたコンバインの全体左側面図である。
【図4】補助デバイダ装置が取り付けられたコンバインの全体正面図である。
【図5】(A)はバンパーの平面図、(B)はバンパーの正面図、(C)はバンパーの左側面図である。
【図6】(A)はバンパー装着状態を示すデバイダの正面図、(B)はバンパー装着状態を示すデバイダの左側面図である。
【図7】(A)はバンパー装着状態を示す中デバイダの正面図、(B)はバンパー装着状態を示す中デバイダの左側面図である。
【図8】(A)はバンパー装着状態を示す補助デバイダ装置(前端部のみ)の正面図、(B)はバンパー装着状態を示す補助デバイダ装置(前端部のみ)の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図4において、1はコンバイン(刈取作業機)であって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部(刈取部)2、刈取茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3、選別した穀粒を貯溜する穀粒タンク4、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5、オペレータが乗車する運転部6、左右一対のクローラ走行装置からなる走行部7などを備えて構成されている。
【0011】
前処理部2は、未刈り茎稈の株元付近を分草するデバイダ8、茎稈を引き起す引起装置9、茎稈の株元付近を掻き込むスターホイル(図示せず)及び掻込ベルト(図示せず)、茎稈の株元を切断する刈刃10、刈取茎稈を集稈して後方へ搬送する株元搬送装置(図示せず)、茎稈の扱深さを調節する扱深さ搬送装置(図示せず)などを備えて構成される。
【0012】
デバイダ8は、刈取条端及び刈取条間に位置するように、左右方向に所定の間隔を存して、前処理部2の前端部に複数設けられている。デバイダ8の個数は、刈取条数+1であり、例えば、4条刈りの前処理部2は、5つのデバイダ8を備える。デバイダ8の前端部は、側面視で三角形状の金属製板材11で形成されているが、金属製板材11の形状は一種類ではなく、複数種類の形状がある。例えば、図1及び図2に示すように、同一機種においても、茎稈合流経路の外側に設けられるデバイダ8Aと、茎稈合流経路の中間に設けられる中デバイダ8Bとでは、金属製板材11A、11Bの形状(先端角度)が相違しており、また、引起爪13で強制的な分草を行うオプション仕様の補助デバイダ装置8Cを装着した場合も、金属製板材11Cの形状(先端角度及び厚さ)が相違することになる。
【0013】
図1〜図4に示すように、コンバイン1は、デバイダ8の前端部に着脱自在に装着可能なバンパー12を備えている。このバンパー12は、コンバイン1をトラックの荷台に載せて運搬する際などにデバイダ8の前端部に装着され、デバイダ8の前端部を保護するようになっている。
【0014】
本発明の実施形態に係るバンパー12は、複数のデバイダ8に対してそれぞれ個別に装着されるように構成されると共に、ボルトやナットを用いることなく、各デバイダ8に保持させるようになっている。このようなバンパー12によれば、デバイダ8に対する着脱が容易になるだけでなく、デバイダ8から取り外した際、コンパクトに収納できるという利点がある。以下、本発明の実施形態に係るバンパー12の構造について、図5〜図8を参照して説明する。
【0015】
図5に示すように、本発明の実施形態に係るバンパー12は、合成ゴムなどの弾性体からなり、デバイダ8に対して装着するための保持部を有している。本実施形態の保持部は、デバイダ8(金属製板材11)の前端部形状に対応した保持穴12aであり、該保持穴12aに金属製板材11の先端部を嵌合状に挿入することによって、バンパー12が、金属製板材11の先端部を被覆しつつ、デバイダ8に保持されるようになっている。このようなバンパー12によれば、ボルトやナットを用いることなく、各デバイダ8にバンパー12を保持させることが可能であるが、金属製板材11との嵌合だけでは保持力が不足し、バンパー12がデバイダ8から脱落する惧れがある。
【0016】
そこで、本実施形態のバンパー12においては、その内部に永久磁石(磁石)14を埋め込み、該永久磁石14の磁力を利用してバンパー12の脱落を防止する。例えば、バンパー12における保持穴12aの前端位置に永久磁石14を埋め込み、保持穴12aに挿入した金属製板材11の先端部を永久磁石14に磁着させる。このようにすると、バンパー12は、複数のデバイダ8に対してそれぞれ個別に装着されるものでありながら、バンパー12内に埋め込まれた永久磁石14の磁力でデバイダ8に保持されるので、弾性体の挟持力でデバイダ8に保持される従来のバンパーに比べ、デバイダ8に対する保持力を高め、デバイダ8からの脱落を防止することができる。
【0017】
また、バンパー12は、デバイダ8から取り外したとき、コンバイン1の金属部分(金属製カバーなど)に対して、永久磁石14の磁力で保持されることが好ましい。例えば、バンパー12の底面に永久磁石14の一部を露出させておき、該露出部をコンバイン1の金属部分に磁着させることにより、不使用状態のバンパー12をコンバイン1の任意箇所に収納可能とする。このように構成されたバンパー12によれば、デバイダ8から取り外した際に紛失する可能性を低減できるだけでなく、コンバイン1の内部に収納場所を確保する必要がない。
【0018】
また、本発明の実施形態に係るバンパー12は、複数のデバイダ8に対してそれぞれ個別に装着するにあたり、各種デバイダ8A〜8C(金属製板材11A〜11C)の形状に対応した複数種類の保持部を有し、一種類のバンパー12で複数種類のデバイダ形状に対応可能としてある。例えば、各種デバイダ8A〜8C(金属製板材11A〜11C)の先端部形状に対応した複数種類の保持穴12a〜12cを、多面体からなるバンパー12の一つの面に形成する。
【0019】
このようなバンパー12によれば、複数のデバイダ8A〜8C(金属製板材11A〜11C)に対してそれぞれ個別に装着されるものでありながら、一種類のバンパー12で複数種類のデバイダ形状に対応することができるので、デバイダ8A〜8Cの種類毎に専用のバンパー12を用意する場合に比べ、コストダウンが図れる。しかも、各種デバイダ8A〜8C(金属製板材11A〜11C)の先端部形状に対応した複数種類の保持穴12a〜12cをバンパー12の一つの面にまとめて形成した場合は、バンパー12の成形が容易になると共に、各種のデバイダ8A〜8Cに対して同等の操作で装着することができる。
【0020】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、前処理部2の前端部に、茎稈を分草する複数のデバイダ8が設けられると共に、複数のデバイダ8に対して着脱自在なバンパー12を装着してなるコンバイン1において、デバイダ8は、少なくとも一部が金属製(金属製板材11)であり、バンパー12は、複数のデバイダ8に対してそれぞれ個別に装着されると共に、バンパー12内に埋め込まれた永久磁石13の磁力でデバイダ8(金属製板材11)に保持されるので、弾性体の挟持力でデバイダ8に保持される従来のバンパーに比べ、デバイダ8に対する保持力を高め、デバイダ8からの脱落を防止することができる。
【0021】
また、バンパー12は、デバイダ8から取り外したとき、コンバイン1の金属部分に対して、永久磁石13の磁力で保持されるので、デバイダ8から取り外した際に紛失する可能性を低減できるだけでなく、コンバイン1の内部に収納場所を確保する必要がない。
【符号の説明】
【0022】
1 コンバイン
2 前処理部
8A デバイダ
8B 中デバイダ
8C 補助デバイダ装置
11A〜11C 金属製板材
12 バンパー
12a〜12c 保持穴
14 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部の前端部に、茎稈を分草する複数のデバイダが設けられると共に、複数のデバイダに対して着脱自在なバンパーを装着してなる刈取作業機において、
前記デバイダは、少なくとも一部が金属製であり、
前記バンパーは、複数のデバイダに対してそれぞれ個別に装着されると共に、バンパー内に埋め込まれた磁石の磁力でデバイダに保持される
ことを特徴とする刈取作業機のバンパー構造。
【請求項2】
前記バンパーは、デバイダから取り外したとき、刈取作業機の金属部分に対して、磁石の磁力で保持されることを特徴とする請求項1記載の刈取作業機のバンパー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−158197(P2010−158197A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2221(P2009−2221)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】