説明

刈込み機

【課題】刈込み機の騒音を低減する。
【解決手段】モータ31からの動力を受けて回転する歯車41に設けられた孔41cと、上ブレード51と下ブレード52を刈込み運動させる上カム44と下カム45に立設され、孔41cの内径に比して小さい外径に形成された外周部47aと、外周部47aの外径に比して小さい外径に形成された小径部47bとを有するピン47と、孔41cと小径部47bとの間に介在する弾性部材としてのOリング48とを備えることで、上カム44と下カム45に発生する衝撃のハウジング10への伝達を抑制し、刈込み機の騒音を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木や芝草の刈込みに使用する刈込み機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹木や芝草の刈込みに使用される刈込み機として、ヘッジトリマやバリカンが知られている。これらの刈込み機は、駆動源からの回転をブレードの刈込み運動に変換するカム装置が備えられている。具体的には、駆動源の回転は、出力軸に取付けられたピニオンからハウジングに支持部材を介して固定されたカム軸に回動可能に嵌合する歯車に減速して伝達され、さらにこの歯車に連結されたカムに伝達される。ブレードにはカムと嵌合する嵌合孔が形成されており、カムにブレードの嵌合孔が嵌合した状態でカムが回転することでブレードが刈込み運動を行うように構成されている。
たとえばヘッジトリマにおいては、長手方向に沿って櫛歯状に切断刃が形成された上下一対のブレードが刈込み運動として往復直線運動を行うように構成されている。
【0003】
上述の構成において、歯車とカムの連結は、歯車に穿設された孔にカムに立設されたピンが嵌合することで行われ、これにより歯車とカムは同期回転するようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−199431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような刈込み機では、製造上の形状のバラツキを考慮して、カムとブレードの嵌合孔との間には隙間を設ける必要がある。この隙間があることで、ブレードの運動方向の反転時に、ブレードの嵌合孔がカムから瞬間的に離れ、その後ブレードの嵌合孔がカムに衝突するため、比較的大きな騒音が発生することとなる。
【0006】
このため、住宅密集地においては使用が避けられる場合があったが、近年のガーデニング人気により、住宅密集地においても庭木や芝生を植える場合が増えており、このような環境での使用に適した騒音の少ない刈込み機が求められていた。
【0007】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであって、その目的は、騒音の少ない刈り込み機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る刈込み機は、駆動源の回転をブレードの刈込み運動に変換する駆動伝達部を備える刈込み機であって、前記駆動伝達部は、駆動伝達系において並列に配置される第一伝達部と第二伝達部と、を備え、前記第一伝達部においては、駆動側部材と被駆動側部材は弾性部材を介して連結され、前記第二伝達部においては、駆動側部材と被駆動側部材との間に隙間が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る刈込み機においては、前記駆動伝達部は、歯車と、前記歯車と連結され同期回転するカムと、を備え、前記第一伝達部と前記第二伝達部は、前記歯車又は前記カムのいずれか一方に穿設される孔と、前記歯車又は前記カムのいずれか他方に立設されて前記孔に挿入されるピンとによって並列に配置されていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る刈込み機は、駆動源からの動力を受けて回転する歯車と、前記歯車と連結され同期回転するカムと、前記カムの回転により刈込み運動を行うブレードと、を備える刈込み機であって、前記歯車又は前記カムのいずれか一方に穿設される孔と、前記歯車又は前記カムのいずれか他方に立設され、前記孔に挿入され、前記孔の内径より小さい外径に形成された外周部と、前記外周部より小さい外径に形成された小径部とを有するピンと、前記孔と前記小径部との間に介在する弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、騒音の少ない刈込み機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るヘッジトリマの正面断面図である。
【図2】本実施形態に係るヘッジトリマの上面図である。
【図3】本実施形態に係るヘッジトリマの要部断面図である。
【図4】本実施形態に係るヘッジトリマの要部説明のための底面図である。
【図5】別の実施形態に係るヘッジトリマの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、ヘッジトリマの場合について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係るヘッジトリマの概略構造について説明する。本実施形態に係るヘッジトリマは、ハウジング10と補助ハンドル21とガード板22とハウジング10から突出する刈刃部50とを備えており、ハウジング10にはメインハンドル11が一体的に形成されている。メインハンドル11には刈刃部50の運転操作を行うためのトリガスイッチ12が備えられており、ハウジング10の内部には、刈刃部50を運転するための駆動部30が備えられている。
【0015】
次に、刈刃部50を運転するための駆動部30について、さらに図3を参酌して説明する。駆動部30には、駆動源としてのモータ31と、モータ31の出力軸32の回転を刈刃部50の往復直線運動に変換する駆動伝達部40を備えており、駆動伝達部40には、モータ31の出力軸32の下端側に形成されたピニオン33と、ピニオン33に噛み合う歯車41と、歯車41に連結され、歯車41の回転を刈刃部50の刈込み運動である往復直線運動に変換するカム(後述する上カム44、下カム45)とを備えている。歯車41は、その回転中心に穿設された軸孔41aにブッシュ41bが固定されおり、上端側をハウジング10に取付けられた支持部材13に固定され、下端側を後述する刈刃部50のブレードホルダ53に支持されたカム軸42に回動自在に嵌合されている。なお、歯車41の歯数はピニオン33の歯数より多く設定されており、減速装置として機能することで、歯車41はモータ31の出力軸32よりも低速で回転するようになっている。また、歯車41には、回転中心から離間した位置に孔41c、41cが穿設されている。
【0016】
歯車41の下方には、順に、プレート43、上カム44、下カム45、スペーサ46がカム軸42に遊嵌状態で位置しており、上カム44と下カム45は、上カム44と下カム45を連通する孔にピン47、47を挿嵌し、下カム45の下面側においてピン47、47の下端部をかしめることで互いに固定されている。ピン47、47の上端側は上カム44に上方に立設された上端部を有し、この上端部は、歯車41の孔41c、41cの内径に比して小さい外径に形成された外周部47a、47aと、外周部47a、47aの長手方向の中間位置に外周部47a、47aの外径に比して小さい外径に形成された小径部47b、47bとを有している。小径部47b、47bには弾性部材としてのOリング48、48が密着して挿嵌されており、Oリング48、48の外径は、小径部47b、47bに挿嵌された状態で、孔41c、41cの内径よりわずかに大きくなるように設定されている。
【0017】
このような構成において、第一伝達部は、被駆動側部材であるピン47、47の小径部47b、47bと、駆動側部材である歯車41の孔41c、41cと、弾性部材であるOリング48、48とで構成され、ピン47、47の小径部47b、47bと孔41c、41cとは挿入された状態でOリング48,48を介して連結され、歯車41と上カム44と下カム45は同期回転することとなる。
【0018】
また、第二伝達部は、被駆動側部材であるピン47、47の外周部47a、47aと、駆動側部材である歯車41の孔41c、41cとで構成され、上述のように、外周部47a、47aの外径は孔41c、41cの内径に比して小さく設定されているため、これらの間には隙間が存在することとなる。この隙間により外周部47a、47aと孔41c、41cとは当接しないことになるが、長年の使用によりOリング48、48の磨耗、へたりが増大した場合には、駆動伝達系において第一伝達部と並列に配置されている第二伝達部において、外周部47a、47aと孔41c、41cが当接することで連結されるようになっている。さらに、隙間の大きさ、Oリング48、48の形状、個数およびゴム硬度は、太い枝の噛み込み等による過負荷がないような通常負荷運転での刈込み作業における弾性変形量では、外周部47a、47aと孔41c、41cが当接しないように設定されている。
【0019】
次に、刈刃部50を往復直線運動させるためのカムの構成について、さらに図4を参酌して説明する。上カム44と下カム45は外周を円形状に形成され、その円形状の中心が回転中心であるカム軸42から偏芯した位置にある偏芯カムとして構成されており、偏芯の方向は、互いに180度位相がずれて配置されている。上カム44と下カム45には、後述する上ブレード51と下ブレード52に形成された長孔形状の嵌合孔51a、52aがそれぞれ嵌合している。なお、製造上の形状のバラツキを考慮して、長孔形状の二辺間の距離は、上カム44と下カム45の外周直径よりわずかに大きく設定されている。すなわち、嵌合孔51a、52aと上カム44と下カム45の間には嵌合した状態で隙間が存在している。
【0020】
刈刃部50は、ブレード押え54と、長手方向に沿って櫛歯状の切断刃を有する上ブレード51と下ブレード52と、ハウジング11に固定されたブレードホルダ53が重なり合った状態でハウジング10の底部から前方(図では右側)に向かって突出して備えられており、上ブレード51と下ブレード52は、ブレード押え54とブレードホルダ53の間で、上カム44と下カム45の回転により互いに180度ずれた位相で前後に往復直線運動が可能となっている。
【0021】
このような構成において、刈込み作業を行う場合、操作者は、一方と手でメインハンドル11を把持し、もう一方の手で補助ハンドル21を把持した状態で、トリガスイッチ12を操作する。これによりモータ31が回転し、ピニオン33と歯車41によりモータ31の回転が減速されて上カム44と下カム45に伝達され、上カム44と下カム45により上ブレード51と下ブレード52が180度ずれた位相で往復直線運動することで、櫛歯状の切断刃により樹木の刈込みを行うことができる。
【0022】
上ブレード51と下ブレード52の往復直線運動は、嵌合孔51a、52aにそれぞれ嵌合した上カム44と下カム45の回転によって行われるが、嵌合孔51a、52aとカム44とカム45の間には隙間があるため、上ブレード51と下ブレード52の運動方向の反転時に、嵌合孔51a、52aが上カム44と下カム45から瞬間的に離れ、その後嵌合孔51a、52aが上カム44と下カム45に衝突するため、上カム44と下カム45には、大きな衝撃が発生することとなる。
【0023】
従来のヘッジトリマにおいては、このカムに発生した衝撃が、ピン、歯車、カム軸、支持部材の経路を経てハウジングに伝達されることで、ハウジングから大きな騒音が発生していたが、本発明におけるヘッジトリマにおいては、この衝撃伝達経路の途中となる第一伝達部に弾性部材としてのOリング48、48が介在しているため、ピン47、47から歯車41への衝撃伝達が抑制されることで、ハウジング10からの騒音の発生を低減することができる。
【0024】
また、太い枝の噛み込み等による過負荷が発生した場合、第一伝達部のOリング48、48の弾性変形量が、第二伝達部である外周部47a、47aと孔41c、41cの当接により制限されるため、過大な負荷及び弾性変形に起因するOリング48、48の磨耗、へたりが低減されることとなり、弾性部材としてのOリング48、48の長寿命化を図ることができる。
【0025】
さらに、長年の使用により第一伝達部のOリング48、48の磨耗、へたりが増大した場合でも、第二伝達部である外周部47a、47aと孔41c、41cが当接することで連結され、歯車41からカム44とカム45へ駆動が伝わることで、従来のヘッジトリマと同等の条件で刈込み作業を行うことができる。
【0026】
次に、図5を用いて、本発明の別の実施形態について説明する。なお、前述の実施形態と同じ内容については説明を省略する。
【0027】
モータ31の出力軸32の回転を刈刃部50に往復直線運動に変換して伝動する駆動伝達部60を構成する歯車61には、回転中心から離間した位置に、上方より大径孔61d、61dと小径孔61e、61eが連通して穿設されている。
【0028】
上カム44と下カム45は、上カム44と下カム45を連通する孔にピン67、67を挿嵌し、下カム45の下面側においてピン67、67の下端部をかしめることで互いに固定されている。ピン67、67の上端側は上カム44に上方に立設された上端部を有し、この上端部は、歯車61の小径孔61e、61eに対応する位置に、小径孔61e、61eの内径に比して小さい外径に形成された外周部67a、67aと、歯車61の大径孔61d、61dに対応する位置に、外周部67a、67aの外径に比して小さい外径に形成された小径部67b、67bとを有している。小径部67b、67bには円筒形状の弾性部材68、68が密着して挿嵌されており、弾性部材68、68の外径は、小径部67b、67bに挿嵌された状態で、大径孔61d、61dの内径よりわずかに大きくなるように設定されている。
【0029】
このような構成において、第一伝達部は、被駆動側部材であるピン67、67の小径部67b、67bと、駆動側部材である歯車61の大径孔61d、61dと、弾性部材68、68とで構成され、ピン67、67の小径部67b、67bと歯車61の大径孔61d、61dとが挿入された状態で弾性部材68、68を介して連結され、歯車61と上カム44と下カム45は同期回転することとなる。
【0030】
また、第二伝達部は、被駆動側部材であるピン67、67の外周部67a、67aと、駆動側部材である歯車61の小径孔61e、61eとで構成され、上述のように、外周部67a、67aの外径は小径孔61e、61eの内径に比して小さく設定されているため、これらの間には隙間が存在することとなる。この隙間により外周部67a、67aと小径孔61e、61eとは当接しないことになるが、長年の使用により第一伝達部の弾性部材68、68の磨耗、へたりが増大した場合には、駆動伝達系において第一伝達部と並列に配置されている第二伝達部において、外周部67a、67aと小径孔61e、61eが当接することで連結されるようになっている。さらに、隙間の大きさ、弾性部材68、68の形状とゴム硬度は、太い枝の噛み込み等による過負荷がないような通常負荷運転での刈込み作業における弾性変形量では、外周部67a、67aと小径孔61e、61eが当接しないように設定されている。
【0031】
また、歯車61と支持部材13の間には、押えプレート69が、カム軸42に遊嵌状態で設置されており、弾性部材68、68の大径孔61d、61dからの離脱を防止している。
【0032】
このような構成において、刈込み作業を行う場合、上カム44と下カム45には、大きな衝撃が発生することとなるが、本発明におけるヘッジトリマにおいては、衝撃伝達経路の途中となる第一伝達部に弾性部材68、68が介在しているため、ピン67、67から歯車61への衝撃伝達が抑制されることで、ハウジング10からの騒音の発生を低減することができる。
【0033】
また、太い枝の噛み込み等による過負荷が発生した場合、第一伝達部の弾性部材68、68の弾性変形量が、第二伝達部である外周部67a、67aと小径孔61e、61eの当接により制限されるため、弾性部材68、68の磨耗、へたりが低減されることとなり、弾性部材68、68の長寿命化を図ることができる。
【0034】
さらに、長年の使用により第一伝達部の弾性部材68、68の磨耗、へたりが増大した場合でも、第二伝達部の外周部67a、67aと小径孔61e、61eが当接することで連結され、歯車61からカム44とカム45へ駆動が伝わることで、従来のヘッジトリマと同等の条件で刈込み作業を行うことができる。
【0035】
なお、上述の構成においては、歯車(歯車41、61)に孔(孔41a、大径孔61d、小径孔61e)を穿設し、カム(上カム44、下カム45)にピン(ピン47、67)を立設したが、歯車にピンを立設し、カムに孔を穿設してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 ハウジング、11 メインハンドル、12 トリガスイッチ、21 補助ハンドル、22 ガード板、30 駆動部、31 モータ、32 出力軸、33 ピニオン、40 駆動伝達部、41 歯車、41a 軸孔、41b ブッシュ、41c 孔、42 カム軸、43 プレート、44 上カム、45 下カム、スペーサ46、47 ピン、47a 外周部、47b 小径部、48 Oリング、50 刈刃部、51 上ブレード、52 下ブレード、53 ブレードホルダ、54 ブレード押え、60 伝動部、61 歯車、61d 大径孔、61e 小径孔、67 ピン、67a 外周部、67b 小径部、68 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の回転をブレードの刈込み運動に変換する駆動伝達部を備える刈込み機において、
前記駆動伝達部は、駆動伝達系において並列に配置される第一伝達部と第二伝達部と、を備え、
前記第一伝達部においては、駆動側部材と被駆動側部材は弾性部材を介して連結され、
前記第二伝達部においては、駆動側部材と被駆動側部材との間に隙間が設けられていることを特徴とする刈込み機。
【請求項2】
前記駆動伝達部は、歯車と、前記歯車と連結され同期回転するカムと、を備え、
前記第一伝達部と前記第二伝達部は、前記歯車又は前記カムのいずれか一方に穿設される孔と、前記歯車又は前記カムのいずれか他方に立設されて前記孔に挿入されるピンとによって並列に配置されていることを特徴とする請求項1記載の刈込み機。
【請求項3】
駆動源からの動力を受けて回転する歯車と、前記歯車と連結され同期回転するカムと、前記カムの回転により刈込み運動を行うブレードと、を備える刈込み機において、
前記歯車又は前記カムのいずれか一方に穿設される孔と、
前記歯車又は前記カムのいずれか他方に立設され、前記孔に挿入され、前記孔の内径より小さい外径に形成された外周部と、前記外周部より小さい外径に形成された小径部とを有するピンと、
前記孔と前記小径部との間に介在する弾性部材と、
を備えることを特徴とする刈込み機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−130322(P2012−130322A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287161(P2010−287161)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】