説明

列車搭載用画像処理システム

【課題】車外映像から沿線設置機器の画像を短時間で探せるシステムを簡便に実現する。
【解決手段】鉄道の軌道10を走行する列車20に搭載される列車搭載用画像処理システム30において、車外を撮る撮像装置32と、GPS受信機35と、その測位結果から列車位置Qを得る列車位置検出部41と、軌道10に沿って設置された沿線設置機器に係る機器位置Nおよび機器画像Pをデータ保持する沿線設置機器データ記憶部46と、撮像装置32で撮った画像D1において機器画像Pを検出するに際して列車位置Qと機器位置Nとに基づいて画像探索位置を決定する沿線設置機器検出部47とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軌道を走行する列車に搭載されて軌道を撮影する列車搭載用画像処理システムに関し、詳しくは、軌道に沿って設置された沿線設置機器の画像を検出する列車搭載用画像処理システムに関する。なお、列車には一両編成のものや路面電車も含まれる。
【背景技術】
【0002】
鉄道では、軌道を走行する列車に車上装置と共にGPS受信機が搭載されて、GPS受信機が衛星航法システム(Global Positioning System)による測位を行うとともに、車上装置がGPS受信機の測位結果に基づき路線マップデータ等も利用して列車位置を得ることにより、停留所における路面電車の発着を判定したり(特許文献1参照)、信号冒進警報装置を安価に実現したり(特許文献2参照)、車両運転状況記録装置を少ない装備で実現したり(特許文献3参照)、運転管理センタでも列車位置を把握したり(特許文献4参照)、といったことができるようになっている。
【0003】
なかでも、車両運転状況記録装置では(特許文献3参照)、列車の前方の軌道を第1撮像装置で撮って前方軌道映像を得るとともに、列車の運転席を第2撮像装置で撮って運転席映像を得て、GPS利用で得た列車の位置情報と一緒に前方軌道映像と運転席映像を記録するようになっている。そうして、記録された映像は、列車走行後に行われる路線状況や運転状態の確認などに役立つものである。また(例えば非特許文献1参照)、画像処理の負担が軽ければ列車走行中に撮像しながら画像処理することも可能であり、運転手の頭部の画像をパターンマッチングで検出する等のことにより、運転異常をリアルタイムに検知して、事故発生の未然防止に寄与することもできるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240478号公報
【特許文献2】特開2007−159309号公報
【特許文献3】特開2008−221902号公報
【特許文献4】特開2009−234349号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】伊藤昇,竹内俊裕,水間毅,吉永純著「鉄道におけるヒューマンエラー検知機能の検討」電気学会研究会資料TER−05−29/LD−05−32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、運転席映像だけでなく、前方軌道映像についても、リアルタイムな処理が求められることがある。例えば、軌道に沿って設置された沿線設置機器の画像を検出対象の部分画像とし、或る瞬間の前方軌道映像を全体画像として、全体画像の中に部分画像が含まれているか否かや、含まれているとすれば何処に位置しているのか、といったことを調べなければならない場合がある。そして、そのような場合も、リアルタイム処理が要求されているので、上述した運転席映像における運転手頭部画像の検出と同様、部分画像のテンプレートを予め用意しておいてパターンマッチングを高速化する等のことにより、画像探索処理を短時間のうちに済ませなければならない。
【0007】
しかしながら、走行列車から外を撮って得た前方軌道映像等の車外映像では、列車内の運転席を撮った運転席映像と異なり、部分画像の変形や動きが激しい。そのため、運転手頭部画像検出時のように画像探索を全体画像中の固定位置から始めたのでは、なかなか沿線設置機器の画像が見つからないことが多く、全体画像のほぼ全域を探し回って時間を浪費してしまうこともしばしば起こるので、リアルタイム性が損なわれて不都合である。
そこで、車外映像から沿線設置機器の画像を短時間で探せる列車搭載用画像処理システムを簡便に実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の列車搭載用画像処理システムは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、鉄道の軌道を走行する列車に搭載される列車搭載用画像処理システムにおいて、車外を撮る撮像装置と、衛星航法システムによる測位を行うGPS受信機と、前記GPS受信機の測位結果に基づいて列車位置を得る列車位置検出部と、前記軌道に沿って設置された沿線設置機器に係る機器位置および機器画像をデータ保持する沿線設置機器データ記憶部と、前記撮像装置で撮った画像において前記機器画像を検出するに際して前記列車位置と前記機器位置とに基づいて画像探索位置を決定する沿線設置機器検出部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の列車搭載用画像処理システムは(解決手段2)、上記解決手段1の列車搭載用画像処理システムであって、前記列車への前記撮像装置の装着状態に係る撮像条件をデータ保持する撮像条件データ記憶部を備え、前記沿線設置機器検出部が、前記機器画像の検出結果と前記撮像条件とに基づいて列車位置を算出するようになっていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の列車搭載用画像処理システムは(解決手段3)、上記解決手段2の列車搭載用画像処理システムであって、前記列車位置検出部の列車位置と前記沿線設置機器検出部の列車位置との相違に応じて前記撮像条件を修正するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明の列車搭載用画像処理システムにあっては(解決手段1)、GPSを利用して列車位置が得られるとともに、部分画像検出対象の沿線設置機器に係る機器位置が機器画像と一緒にデータ保持されている。そして、撮像装置で撮った車外映像から全体画像を得て、その中から沿線設置機器検出部が機器画像を検出するときに、列車位置と機器位置とに基づいて画像探索位置が決定される。これらの列車位置と機器位置に撮像装置取付仕様など既知の撮像条件を加えれば、全体画像のうち何処に機器画像が位置しているのかが幾何的演算で判明するので、画像探索位置が容易かつ迅速に求まる。
したがって、この発明によれば、車外映像から沿線設置機器の画像を短時間で探せる列車搭載用画像処理システムを簡便に実現することができる。
【0012】
また、本発明の列車搭載用画像処理システムにあっては(解決手段2)、GPSを利用して列車位置検出部によって列車位置が求められるのに加えて、沿線設置機器検出部によっても列車位置が求められる。沿線設置機器検出部の列車位置は、機器画像の検出結果と撮像条件とに基づいて、上述した画像探索位置の算出とはほぼ逆向きの幾何的演算で得られるので、やはり容易かつ迅速に求まる。しかも、沿線設置機器検出部の列車位置の誤差は列車の揺れ等が主要因と考えられるのに対し、列車位置検出部の列車位置の誤差はGPSの迷走が主要因と考えられるので、性質の異なる両位置を取得することは、列車位置の即時校正ばかりか、後の映像解析やデータ処理に際しても、役に立つ。
【0013】
さらに、本発明の列車搭載用画像処理システムにあっては(解決手段3)、撮像条件が更新可能にデータ保持されていて列車位置検出部の列車位置と沿線設置機器検出部の列車位置との相違に応じて修正される。両位置の誤差には、上述した揺れや迷走による偶発的な雑音成分と、撮像条件の設定値の誤差に起因した定常的な固定成分とが含まれているが、上記修正によって定常的な固定成分が除去される。なお、偶発的な雑音成分による過剰修正を回避するには、例えば、一回当りの修正量や修正割合を小さく抑える微修正を採用し、そのような微修正を繰り返すことで、雑音成分を相殺させながら、固定成分を積み重ねると良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の列車搭載用画像処理システムの実施例1である運転状況記録装置の構造等を示し、(a)が列車等の平面図、(b)が運転状況記録装置の外観斜視図、(c)がデータ処理装置(演算装置)のブロック図である。
【図2】列車搭載用画像処理システムの動作状態を示し、(a)が列車等の平面図、(b)が列車等の側面図、(c)が前方軌道映像の例、(d)がその画像に探索位置を示した例、(e)がマッチング対象のパターン例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
このような本発明の列車搭載用画像処理システムについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)を総て具現化したものであり、既述した特許文献3記載の運転状況記録装置30に沿線設置機器データ46と沿線設置機器検出部47を追加することにより、列車搭載用画像処理システムを運転状況記録装置30への組み込み態様で実現している。
【実施例1】
【0016】
本発明の列車搭載用画像処理システムの一実施例である運転状況記録装置30について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、運転状況記録装置30の構造を示し、(a)が搭載先の列車の先頭車両20等の平面図、(b)が運転状況記録装置30の外観斜視図、(c)がデータ処理装置40(演算装置)のブロック図である。
【0017】
運転状況記録装置30は(図1(a)参照)、レール10(軌道)上を走行する列車の先頭車両20に搭載されるものである。
その車両20の中の前側部分には運転席21が設けられており(図1(a)参照)、そこには速度計22や高度計23が装備されている(図1(b)参照)。
速度計22は、例えば台車部に設置された速度発電機などからなるが、信号出力部に改造が施されて、信号ケーブル等で運転状況記録装置30に接続され、速度情報Vを運転状況記録装置30へ随時送出するようになっている。高度計23も、随時、高度情報Hを取得して運転状況記録装置30へ送出するものであり、市販の汎用品で足りる。
【0018】
この運転状況記録装置30(図1(b)参照)には、車両20の前方軌道11を撮る撮像装置32(第1撮像装置)と、運転席21を撮る撮像装置33(第2撮像装置)と、衛星航法システムによる測位を行うGPSアンテナ34及びGPS受信機35と、ハードディスク等からなり十分な記憶容量を具えた記録装置36と、プログラマブルなマイクロプロセッサシステムやデジタルシグナルプロセッサ等からなり列車位置検出部41や記録制御部44として機能するデータ処理装置40と、GPS受信機35と記録装置36とデータ処理装置40と図示しない電源ユニット等を納めた筐体31とが、設けられている。
筐体31は、運転席21の下や脇などで空いているところに設置される。
【0019】
撮像装置32は(図1(a),(b)参照)、例えばCCDカメラからなり、撮影方向を前方軌道11に向けた状態で(図1(a)の一点鎖線を参照)、車両20の前端部たとえば運転席21上面の最前部位に設置され、撮った前方軌道映像D1を映像信号ケーブルでデータ処理装置40へ随時送出するようになっている。
撮像装置33は(図1(a),(b)参照)、例えばCCDカメラからなり、撮影方向を運転席21に向けた状態で(図1(a)の二点鎖線を参照)、車両20の中のうち前側の脇部分たとえば運転席21の右脇などに設置され、好ましくは運転士の手元に加えて計器類の表示もできるだけ多く且つ鮮明に撮れるところに設置されて、撮った運転席映像D2を映像信号ケーブルでデータ処理装置40へ随時送出するようになっている。
【0020】
GPSアンテナ34は、車両20の天井などに設置されて、GPS(Global Positioning Satellite)衛星から電波を受信し、それを同軸ケーブル等でGPS受信機35へ随時送信するようになっている。
GPS受信機35は、衛星航法システム(Global Positioning System)による測位を行って、例えば緯度対応値Xと経度対応値Yと高度対応値Zの組データである測位結果[X,Y,Z]をデータ処理装置40へ随時送出するようになっている。
【0021】
記録装置36は(図1(c)参照)、データを多数のファイルに分けて保持するようになっており、例えば、特異事象のイベント情報は、発生時刻や発生位置の情報と共に、テキスト形式のファイルで蓄積されるようになっている。また、前方軌道映像D1や運転席映像D2は、30秒や1分といった時間単位で分割されて、デジタル動画規格のMPEG(Moving Picture Experts Group)形式でファイルに記録されるようになっている。さらに、そのファイルには、撮影日時が分かるように、映像D1,D2を取得した年月日と時刻とが埋め込まれるようにもなっている。
【0022】
データ処理装置40は(図1(c)参照)、例えばマイクロプロセッサのプログラムで具現化された列車位置検出部41と記録制御部44と映像処理部45と沿線設置機器検出部47と、例えば不揮発性メモリからなるデータ記憶部に保持されたマップデータ42と沿線設置機器データ46と撮像条件データ48と、電源供給停止時も電池等で動作可能な内蔵の時計43とを具えている。なお、撮像条件データ48の記憶部は書き換え可能になっているが、マップデータ42や沿線設置機器データ46は書換可能でなくても良い。
映像処理部45は、前方軌道映像D1や運転席映像D2をそれぞれMPEG形式のうちでも圧縮度の高い例えばAVI(Audio Video Interleave)形式に変換して記録制御部44に引き渡すが、前方軌道映像D1については取り込み要求に応じて沿線設置機器検出部47にも一コマずつ引き渡すようになっている。
【0023】
列車位置検出部41は、GPS受信機35から測位結果[X,Y,Z]を取得し、それをマップデータ42に照らして修正する等のことにより迷走を防止するとともに、速度計22から速度情報Vを取得し、高度計23から高度情報Hを取得して、速度情報Vと高度情報HをGPS受信機35の測位結果[X,Y,Z]に反映させることで、より正確な列車位置Q[X,Y,Z]を得るものである。
また、列車位置検出部41は、列車位置Q[X,Y,Z]に基づいて停車位置超過の特異事象を検出するとともに、速度情報Vに基づいて速度偏差過大の特異事象を検出して、それらの特異事象Eを記録制御部44に引き渡すようにもなっている。
【0024】
記録制御部44は、映像処理部45からAVI形式の前方軌道映像D1及び運転席映像D2を入力して、それぞれを上記の時間単位で分割し、さらに時計43からの日時Tを埋め込んだファイル名を付けて、記録装置36に記録するようになっている。
また、記録制御部44は、上記の特異事象Eに加えて、映像D1,D2の分割単位を記録したことを示す定時記録情報も、イベント情報Eとして扱い、それらの情報を記録装置36のファイルに追加で書き込むようにもなっている。
【0025】
沿線設置機器データ46には、レール10(軌道)に沿って設置された沿線設置機器のうち列車走行接近時に画像検出したい物それぞれについて機器位置Nと機器画像Pとの組データが一組ずつ予め設定されている。沿線設置機器の典型例は、信号機や,踏切しゃ断機,転てつ機などであり、それを撮っておいた画像が機器画像Pであるが、これは、前方軌道映像D1の一コマからなる全体画像よりも小さい。機器位置Nは列車位置Qと同じく[X,Y,Z]で規定される。撮像条件データ48は、列車20への撮像装置32の装着状態に係る撮像条件Mであり、この撮像条件Mには、列車位置Qと撮像装置32との前後方向差ΔXと左右方向差ΔYと上下方向差ΔZに加えて、撮像装置32の視点方向の左右方向傾きθと上下方向傾きφも含まれている。撮像条件Mも予め設定されている。
【0026】
沿線設置機器検出部47は、列車位置検出部41から列車位置Qを得るとともに、列車進行方向に在って最も近い沿線設置機器の機器位置Nを沿線設置機器データ46から選出して、その沿線設置機器が前方軌道映像D1に映り込むところまで列車位置Qが進んだことを確認する。そして、確認できると、前方軌道映像D1の一コマを全体画像(D1)として取り込むとともに、そのときの列車位置Qと組になっている機器画像Pを検出対象の部分画像として沿線設置機器データ46から選出するようになっている。
【0027】
また、沿線設置機器検出部47は、選出した全体画像(D1)の中をパターンマッチングにて探索することで機器画像Pが含まれて存在しているのか否か更には何処に存在しているのかを調べる機器画像検出処理も行うが、それに先立ち、画像探索時間の短縮のため、全体画像(D1)において探索を開始する位置となる画像探索位置を、列車位置Qと機器位置Nと撮像条件Mとに基づいて決定するようになっている。その算出式は種々変形が可能なので具体的な提示は割愛するが、何れの式で演算しても端数誤差は別として、幾何学的関係によって、画像探索位置は一意に定まるようになっている。
【0028】
そして、全体画像(D1)における画像探索位置が決まると、そこを中心にして探索範囲を広げながら全体画像(D1)の中でその部分画像と機器画像Pとのパターンマッチング処理を許容時間内で繰り返すようになっている。
さらに、沿線設置機器検出部47は、全体画像(D1)の中に機器画像Pを見つけたときには、その機器画像Pの検出結果すなわち全体画像(D1)における機器画像Pの検出位置や拡縮度などと、撮像条件Mとに基づいて、列車位置R[X,Y,Z]を算出するようになっている。この列車位置Rも、幾何学的関係によって一意に定まり、記録制御部44によって列車位置Qと共に記録装置36へ記録されるようになっている。
【0029】
また、沿線設置機器検出部47は、上述のようにして得られた二種類の列車位置Qと列車位置Rとの相違に応じて撮像条件Mを微修正するようにもなっている。撮像条件Mのうち前後方向差ΔXと左右方向差ΔYと上下方向差ΔZは、測定が容易で誤差が少ないうえ画像探索位置決定に及ぼす影響も小さいので、修正対象から外しても良いが、左右方向傾きθと上下方向傾きφは、測定し辛いうえ画像探索位置決定に及ぼす影響が大きいので、修正対象になっている。修正量の算出は、例えば、機器位置Nから見た列車位置Q,Rの方角の左右方向差や上下方向差を計算してから、偶発的な雑音成分による過剰修正を回避するため例えば数十分の一の微量に減縮させることで行われ、修正は、その算出値で左右方向傾きθや上下方向傾きφを加減する微修正になっている。
【0030】
この実施例1の運転状況記録装置30(列車搭載用画像処理システム)について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図2は、(a)が搭載先の列車の先頭車両20等の平面図、(b)が車両20等の側面図、(c)が前方軌道映像D1の画像例、(d)がその画像D1に探索位置(P0)を示した例、(e)がマッチング対象のパターン例である。
【0031】
車両20に搭載された運転状況記録装置30は、始発駅や折返し駅で車両20の出発態勢を調える際に起動され、終着駅や折返し駅で車両20を停めた後に停止される。そして、その間、走行状態や運転状況が記録装置36にデジタルデータで記録される。
具体的には、イベント情報Eが年月日時Tと列車位置Q[X,Y,Z]と速度情報Vなどと組にして記録装置36に記録され、前方軌道映像D1や運転席映像D2の連続映像が上述の時間単位で分割されて記録装置36に記録される。これらの記録情報にあっては、組データの一部や分割ファイルの名称などに事象発生時等の年月日時Tが含まれているので、それを利用して相互に対応させることができる。
【0032】
また、車両20の走行中には、上述した運転状況の記録と並行して、レール10の沿線に設置されている機器の画像検出も沿線設置機器検出部47によって行われる。詳述すると、列車位置検出部41から列車位置Qが取り込まれるとともに、最も近い沿線設置機器の機器位置Nが沿線設置機器データ46から選出されて、その沿線設置機器が前方軌道映像D1に映り込むところまで列車位置Qが進んだことが確認されと、前方軌道映像D1の一コマが全体画像(D1)として取り込まれるとともに(図2(c)参照)、そのときの列車位置Qと組になっている機器画像Pが、検出対象の部分画像として、沿線設置機器データ46から選出される。機器画像Pの具体例を挙げると、沿線設置機器が踏切しゃ断機なら閉状態の画像P1や開状態の画像P2が使用され(図2(e)参照)、沿線設置機器が転てつ機なら本線側切替状態の画像や支線側切替状態の画像が使用され、沿線設置機器が信号機なら青色点灯状態の画像や赤色点灯状態の画像が使用される(図示せず)。
【0033】
それから、全体画像(D1)において探索を開始する位置となる画像探索位置P0が決定されるが(図2(d)参照)、その位置算出は、マップデータ42と列車位置Q[X,Y,Z]と機器位置N[X,Y,Z]と撮像条件M[ΔX,ΔY,ΔZ,θ,φ]とから、幾何学的関係に基づいて(図2(a),(b)参照)、迅速に行われる。さらに、画像探索位置P0を中心にして探索範囲を広げながら全体画像(D1)の中で機器画像P1,P2とマッチングする部分画像が探索され、それによって、機器画像Pすなわち機器画像P1か機器画像P2が全体画像(D1)の中から見つかると、全体画像(D1)における機器画像Pの検出位置や拡縮度などと、撮像条件Mとに基づいて、列車位置R[X,Y,Z]が算出され、この列車位置Rも列車位置Qと共に記録装置36に記録される。さらに、撮像条件Mのうち左右方向傾きθと上下方向傾きφが、二種類の列車位置Qと列車位置Rとの相違に応じて、微修正される。
【0034】
[その他]
なお、上記実施例では撮像装置32の撮影対象が前方軌道11であったが、撮像装置32の撮影対象は、前方に限られる訳でなく、例えば後方軌道でも良い。
【符号の説明】
【0035】
10…レール(軌道)、11…前方軌道、
20…車両(列車)、21…運転席、22…速度計、23…高度計、
30…運転状況記録装置(列車搭載用画像処理システム)、
31…筐体、32…第1撮像装置(車外の前方軌道撮影用)、
33…第2撮像装置(車内の運転席撮影用の任意部材)、
34…GPSアンテナ、35…GPS受信機、36…記録装置、
40…データ処理装置、41…列車位置検出部、
42…マップデータ、43…時計、44…記録制御部、
45…映像処理部、46…沿線設置機器データ記憶部、
47…沿線設置機器検出部、48…撮像条件データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の軌道を走行する列車に搭載される列車搭載用画像処理システムにおいて、車外を撮る撮像装置と、衛星航法システムによる測位を行うGPS受信機と、前記GPS受信機の測位結果に基づいて列車位置を得る列車位置検出部と、前記軌道に沿って設置された沿線設置機器に係る機器位置および機器画像をデータ保持する沿線設置機器データ記憶部と、前記撮像装置で撮った画像において前記機器画像を検出するに際して前記列車位置と前記機器位置とに基づいて画像探索位置を決定する沿線設置機器検出部とを備えていることを特徴とする列車搭載用画像処理システム。
【請求項2】
前記列車への前記撮像装置の装着状態に係る撮像条件をデータ保持する撮像条件データ記憶部を備え、前記沿線設置機器検出部が、前記機器画像の検出結果と前記撮像条件とに基づいて列車位置を算出するようになっている請求項1記載の列車搭載用画像処理システム。
【請求項3】
前記列車位置検出部の列車位置と前記沿線設置機器検出部の列車位置との相違に応じて前記撮像条件を修正するようになっていることを特徴とする請求項2記載の列車搭載用画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201423(P2011−201423A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70547(P2010−70547)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(301028761)独立行政法人交通安全環境研究所 (55)
【出願人】(000207470)大同信号株式会社 (83)
【Fターム(参考)】