列車運行管理装置、臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラム
【課題】臨時速度制限の多重掛けを記憶して管理し、臨時速度制限がなくなった線路区間を正しく認識して解除する機能を備える列車運行管理装置、臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムを提供する。
【解決手段】列車運行管理装置103は、臨時速度制限の多重掛けの回数を臨時速度制限カウンタテーブルのカウンタフィールドで管理する。そして、カウンタフィールドの値が0になったとき、つまり本当に臨時速度制限の要因が全て除去された時になって初めて、臨時速度制限を解除する指令を出力する。このように、線路区間と速度段の組み合わせに対する臨時速度制限の設定回数をカウンタで管理することで、複数の異なる要因で、同じ速度段の臨時速度制限が複数、線路上に重なり合うように設定されていた場合に、そのうちの一つの臨時速度制限を解除しようとした際、臨時速度制限を解除できる線路区間を正しく特定して、誤りのない臨時速度制限解除命令を発行することができる。
【解決手段】列車運行管理装置103は、臨時速度制限の多重掛けの回数を臨時速度制限カウンタテーブルのカウンタフィールドで管理する。そして、カウンタフィールドの値が0になったとき、つまり本当に臨時速度制限の要因が全て除去された時になって初めて、臨時速度制限を解除する指令を出力する。このように、線路区間と速度段の組み合わせに対する臨時速度制限の設定回数をカウンタで管理することで、複数の異なる要因で、同じ速度段の臨時速度制限が複数、線路上に重なり合うように設定されていた場合に、そのうちの一つの臨時速度制限を解除しようとした際、臨時速度制限を解除できる線路区間を正しく特定して、誤りのない臨時速度制限解除命令を発行することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車運行管理装置、臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムに関する。
より詳細には、列車運行管理装置において、臨時速度制限を正しく管理することで、不用意な臨時速度制限解除指令の発行を防ぎ、列車運行管理システムを安全に保つことができる、列車運行管理装置と、これに係る臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨時速度制限とは、主に車内信号を有する車両の路線、すなわちATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)設置路線に設けられている、臨時に線路上のある区間を走行する列車に対して課せられる速度制限のことである。
臨時速度制限には、二種類の発生要因がある。一つは、臨時駅の設置や緊急路盤工事等の、線路等の設備状態に応じ、当日の列車運行において予め計画された臨時速度制限である。もう一つは、強風や大雨などの自然災害、或は偶発的に発生する事故等の緊急事態に対して、列車運行の安全確保の観点から即座に行われる臨時速度制限である。
【0003】
列車運行管理システムは、ダイヤに基づく列車の進路制御を行うと共に、列車の運行状況を表示するシステムであり、高速鉄道や大都市圏の高密度運転線区等に、列車運行管理の効率化等を目的として導入されている。
新幹線などの高速列車、そして首都圏を網羅する高密度のダイヤで運行される鉄道路線には、列車運行管理システムの存在が必要不可欠である。この列車運行管理システムは、ATCを包含する。
臨時速度制限を実施するには、列車運行管理システムに臨時速度制限の設定を指示する設定情報を入力することで実現する。逆に、一度設定した臨時速度制限の設定を解除するには、列車運行管理システムにその設定の解除を指示する解除情報を入力することで実現する。
列車運行管理システムは、運行管理装置と、操作端末と、臨時速度制限信号装置と、複数の線路区間と、制御対象である車両に備えられている車上装置で構成される。
【0004】
操作端末から入力された臨時速度制限情報は、運行管理装置で処理された後、臨時速度制限信号装置を通じて、臨時速度制限を実施しようとする線路区間に存在する、制御対象となる車両の車上装置に送信される。
車上装置は、臨時速度制限信号装置から臨時速度制限情報を受信すると、臨時制限速度値が運転台に備え付けられている運転台表示装置に表示される。運転士は、運転台表示装置に表示された臨時制限速度を超えない範囲で列車運行を実施する。
もし、臨時制限速度を超える速度で走行すると、走行速度と臨時制限速度値とを比較するATCにより自動的にブレーキ制御がかかり、走行速度を臨時制限速度値以下に落とす。
なお、本発明に関係すると思われる先行技術文献を特許文献1に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−188249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
列車運行管理システムは、列車の運行状況等に応じて、同一線路区間を含む線路区間に対し、複数の異なる要因に基づく臨時速度制限を実施することがある。いわば、臨時速度制限の多重掛けともいえる。
従来技術のATCには、臨時速度制限の多重掛けを記憶して管理する機能が存在しなかった。
【0007】
本発明はかかる課題を解決し、臨時速度制限の多重掛けを記憶して管理し、臨時速度制限がなくなった線路区間を正しく認識して解除する機能を備える列車運行管理装置、臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の列車運行管理装置は、臨時速度制限の発生要因を区別する識別コードが格納される要因コードフィールドと、臨時速度制限にて設定される速度段を示すコードが格納される速度段フィールドと、線路区間を識別する線路区間コードが格納される線路区間コードフィールドとを備える臨時速度制限データベースと、線路区間コードフィールドと、速度段フィールドと、線路区間コードと速度段の組み合わせにおける臨時速度制限の設定回数が格納されるカウンタフィールドとを備える臨時速度制限カウンタテーブルと、操作端末から送信される操作情報を受けて臨時速度制限データベースに臨時速度制限の登録及び削除を行う操作情報登録部と、操作端末から送信される操作情報を受けて操作情報登録部が臨時速度制限データベースに登録されている臨時速度制限の削除を行う際、臨時速度制限カウンタテーブルの該当するレコードのカウンタフィールドの値を減じ、カウンタフィールドの値が0になったレコードに限り、レコードの線路区間コード及び速度段に係る臨時速度制限設定解除指令を出力するカウンタ操作部とを具備する。
【0009】
臨時速度制限の多重掛けの回数を臨時速度制限カウンタテーブルのカウンタフィールドで管理する。そして、カウンタフィールドの値が0になったとき、つまり本当に臨時速度制限の要因が全て除去された時になって初めて、臨時速度制限を解除する指令を出力する。このように、線路区間と速度段の組み合わせに対する臨時速度制限の設定回数をカウンタで管理することで、複数の異なる要因で、同じ速度段の臨時速度制限が複数、線路上に重なり合うように設定されていた場合に、そのうちの一つの臨時速度制限を解除しようとした際、臨時速度制限を解除できる線路区間を正しく特定して、誤りのない臨時速度制限解除命令を発行することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、臨時速度制限の多重掛けを記憶して管理し、臨時速度制限がなくなった線路区間を正しく認識して解除する機能を備える列車運行管理装置、臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である列車運行管理装置を有する、列車運行管理システムの機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態である列車運行管理装置の機能ブロック図である。
【図3】列車運行管理装置に備わっているテーブルのフィールド構成を示す図である。
【図4】列車運行管理装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】列車運行管理装置の、臨時速度制限の設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】列車運行管理装置の、臨時速度制限の設定解除処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】線路と臨時速度制限の設定状態を示す模式図である。
【図8】臨時速度制限の設定解除処理前の、臨時速度制限要因テーブルと臨時速度制限区間テーブルに記憶されている情報を示す模式図である。
【図9】臨時速度制限の設定解除処理前の、臨時速度制限カウンタテーブルに記憶されている情報を示す模式図である。
【図10】臨時速度制限の設定解除処理後の、臨時速度制限要因テーブルと臨時速度制限区間テーブルに記憶されている情報を示す模式図である。
【図11】臨時速度制限の設定解除処理後の、臨時速度制限カウンタテーブルに記憶されている情報を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[システム構成]
図1は、本発明の一実施形態である列車運行管理装置を有する、列車運行管理システムの機能ブロック図である。
中央管制室102に設けられている列車運行管理装置103は、予め同じく中央管制室102に設けられている操作端末104から入力されて図示しない不揮発性ストレージに格納されたダイヤに基づいて、列車の進路制御を行うための、様々な指令情報を出力する。その指令情報の中に、臨時速度制限情報も含まれる。つまり、列車運行管理システム101は列車の速度を管理する自動列車制御システムを包含する。
列車運行管理装置103が出力する臨時速度制限指令は、臨時速度制限信号装置105に送信される。
臨時速度制限信号装置105は、臨時速度制限指令に含まれる、臨時速度制限の設定或は解除の指令、速度段、線路106の対象となる線路区間に従って、所定の変調又はエンコード処理を施して、該当する線路区間に指定された速度段の設定或は解除の信号を出力する。これ以降、この線路区間に流す信号を臨時速度制限信号と呼ぶ。
【0013】
なお、線路区間とは、線路を所定の区間で区切る単位である。所定の区間は路線の設計上の任意であり、例えば駅と駅の間や、駅間よりも短い距離である場合もある。臨時速度制限は、指定された一つ以上の連続する線路区間に対し、指定又は解除が行われる。
また、速度段とは、臨時速度制限において指定される制限速度を意味する。例えば、時速100km/h、80km/h、60km/h、40km/h、20km/hというように、段階的に複数の設定速度を有する。
【0014】
臨時速度制限信号は、線路区間L107a、線路区間L107b、線路区間L107c…の線路に流される。列車108は、この臨時速度制限信号を、車輪109を通じて車上装置110で受信する。車上装置110は受信した臨時速度制限信号に所定の復調又はデコード処理を施して、臨時速度制限情報を得る。
復調又はデコード処理によって得られた臨時速度制限情報は、運転台に備えられている運転台表示装置111に表示されると共に、列車速度制限装置112に入力される。列車速度制限装置112は図示しない速度センサで現在の列車108の速度を取得し、臨時速度制限情報と比較し、現在の列車108の速度が臨時速度制限情報の速度を越えている場合は、図示しない常用ブレーキを作動させて、モータ113の速度を制御し、列車108の走行速度を臨時速度制限情報によって指定された速度以下に落とす。
【0015】
臨時速度制限は、大別して二種類の要因によって発生する。
一つは、線路等の設備状態に応じ当日の列車運行において予め計画された、臨時速度制限の設定指示である。
もう一つは、強風、大雨などの自然災害、偶発的に発生する事故等に対して、列車運行の安全確保の観点から行われる、臨時速度制限の設定指示である。
これら臨時速度制限を設定する指示は、臨時速度制限信号装置105によって入力され、列車運行管理装置103に登録される。また、臨時速度制限の要因がなくなったら、当該臨時速度制限を解除する指示も、臨時速度制限信号装置105によって入力され、列車運行管理装置103に登録されていた該当する臨時速度制限情報のエントリが削除される。
【0016】
ここで、臨時速度制限信号装置105について、簡単に説明する。
図1では、臨時速度制限信号装置105は一つの機能ブロックとして表現されているが、実際には駅毎に管轄する線路区間が別れており、中央管制室102の側から各駅に臨時速度制限指令が送信された後、駅に備えられている装置が更に該当する線路区間に臨時速度制限信号を流す、という、階層的な構造のシステムで構成されている。そして、この臨時速度制限信号装置105は、臨時速度制限の発生要因に関しては全く情報を得ない仕様となっている。このため、線路区間に対して異なる速度段の速度制限を指定することはできるものの、異なる発生要因で生じる、同じ速度段の速度制限を多重掛けしても、その回数は計数されない。
【0017】
例えば、ある線路区間に予め臨時列車を通行させるために時速80km/hの臨時速度制限が設定されていたとする。そして、天候が悪化したために改めて当該線路区間に時速80km/hの臨時速度制限が掛かった場合、同じ線路区間に再度時速80km/hの臨時速度制限が設定されたこととなる。しかし、線路区間近傍に接地されている臨時速度制限信号装置105には、列車運行管理装置103からそれら臨時速度制限の要因に関する情報は渡されない。当該線路区間を担当する臨時速度制限信号装置105に渡されるのは、線路区間の指定と、「時速○○km」という臨時速度制限の速度段と、その臨時速度制限を設定するか解除するかを示す指令のみである。したがって、臨時速度制限信号装置105は中央管制室102から当該線路区間に対して「時速80km/h」という臨時速度制限の設定を受けても、既に設定済みである時速80km/hの臨時速度制限の設定に変化は全く生じず、またその臨時速度制限が多重掛けされていることも認識できない。
【0018】
このような臨時速度制限信号装置105に対し、天候が回復したので、天候不順に基づく臨時速度制限の設定を解除しようとする。ところが、臨時列車運行用の臨時速度制限は解除すべきでないのに、この時点で天候不順に基づく臨時速度制限の設定を解除する指令を中央管制室102から送信すると、当該線路区間の時速80km/hという臨時速度制限そのものが解除されてしまう。つまり、本来解除すべきでない臨時速度制限が解除されてしまう。
【0019】
臨時速度制限信号装置105は各駅に配置されており、これらの仕様を変更することは費用と時間が掛かり、非効率的である。そこで、中央管制室102にある列車運行管理装置103の側で、臨時速度制限の多重掛けの回数をカウンタで管理する。そして、カウンタが0になったとき、つまり本当に臨時速度制限の要因が全て除去された時になって初めて、臨時速度制限を解除する指令を出力する機能を追加すれば、最小限の変更で対応できる。
以下、本実施形態の列車運行管理装置103に追加された、臨時速度制限情報管理機能について、順を追って説明する。
【0020】
図2は列車運行管理装置103の機能ブロック図である。
列車運行管理装置103は周知のコンピュータで構成される。列車運行管理装置103を構成するコンピュータは、オフコンと呼ばれるオフィスコンピュータ、或はPOSIX系OSが稼働するワークステーション等、所定の堅牢性を備える装置であればよい。また、列車運行管理装置103は複数の操作端末104から操作が可能になっていることが望ましい。
コンピュータに列車運行管理プログラムを読み込ませて実行させることで、コンピュータは列車運行管理装置103として機能する。
【0021】
操作情報登録部201は、臨時速度制限信号装置105から出力される操作情報を受信する。そして、操作情報に含まれる臨時速度制限を登録する旨の情報を、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203に登録する。また、臨時速度制限を解除する旨の情報に従って、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203の該当するレコードを削除する。
【0022】
カウンタ操作部204は、操作情報登録部201による臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203に対する情報の登録に伴って、臨時速度制限カウンタテーブル205に新規のレコードを追記録したり、レコードの内容を更新する。特に、後述する臨時速度制限カウンタテーブル205のカウンタフィールドを操作して、線路区間における特定の速度段の設定回数を管理する。
【0023】
情報出力インターフェース206は、操作情報登録部201及びカウンタ操作部204によって生成される臨時速度制限の設定及び解除の情報を、臨時速度制限信号装置105に出力する。
【0024】
図3は、列車運行管理装置103に備わっているテーブルのフィールド構成を示す図である。
臨時速度制限要因テーブル202は、IDXフィールドと、要因コードフィールドと、要因テキストフィールドと、速度段フィールドと、設定日時フィールドよりなる。
IDXフィールドは、臨時速度制限区間テーブル203との紐付けのための索引情報(index)が格納される。例えば一意性を有する(unique:重複のない)1から65536迄の自然数を用いる。
要因コードフィールドは、臨時速度制限の発生要因を区別する識別コードが格納される。予め、「臨時ダイヤ」、「大雨」、「大雪」、「強風」、「地震」、「その他天候不順」、「事故」等というように、臨時速度制限の発生要因を分類し、これに識別コードを付与する。勿論、図示はしていないものの、要因マスタと呼べる、臨時速度制限の発生要因の名称と識別コードとの対応関係を示すマスタテーブルが存在する。
要因テキストフィールドは、臨時速度制限の発生要因の詳細を記述する文字列が格納される。
速度段フィールドは、臨時速度制限にて設定される速度段を示すコードが格納される。
設定日時フィールドは、この臨時速度制限を設定する、或は設定した時点の日時が格納される。「臨時速度制限を設定する」とは、臨時ダイヤ等の予め計画されている臨時速度制限であり、「臨時速度制限を設定した」とは、天候不順等の突発的要因に基づく臨時速度制限である。
【0025】
臨時速度制限区間テーブル203は、IDXフィールドと、線路区間コードフィールドよりなる。
IDXフィールドは、前述の臨時速度制限要因テーブル202のIDXフィールドと同じものであり、臨時速度制限要因テーブル202との紐付けのための索引情報である。なお、臨時速度制限要因テーブル202のレコードと臨時速度制限区間テーブル203のレコードは、一対多の関係である。
線路区間コードフィールドは、線路区間を識別する線路区間コードが格納される。勿論、図示はしていないものの、線路区間マスタと呼べる、線路区間の名称と線路区間コードを関連付けるマスタテーブルが存在する。
【0026】
臨時速度制限を設定する対象は、一つ以上の線路区間である。殆どの場合、臨時速度制限を設定する対象が一つだけの線路区間のみ、ということはなく、連続する複数の線路区間に対し、臨時速度制限が設定される。そして、指定される線路区間の数は臨時速度制限毎にまちまちである。したがって、臨時速度制限要因テーブル202には臨時速度制限の要因と速度段を記録し、数が変動する線路区間については、臨時速度制限区間テーブル203で一対多の関係を形成して、臨時速度制限に関する情報を表現する。
【0027】
レコード毎にフィールド数を可変にできるデータベースであれば、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203を一体化させることもできる。
つまり、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203はIDXフィールドで結合することで、臨時速度制限データベース207を構成する、ともいえる。
【0028】
臨時速度制限カウンタテーブル205は、線路区間コードフィールドと、速度段フィールドと、カウンタフィールドよりなる。
線路区間コードフィールドは、臨時速度制限区間テーブル203の線路区間コードフィールドと同じものである。
速度段フィールドは、臨時速度制限要因テーブル202の速度段フィールドと同じものである。
カウンタフィールドは、線路区間コードと速度段の組み合わせにおける、臨時速度制限の設定回数(計数値)が格納される。
【0029】
[動作]
図4は、列車運行管理装置103の動作の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(S401)、列車運行管理装置103の操作情報登録部201は操作端末104を通じて操作者の入力操作を待つ(S402)。
ステップS402で、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限に関する情報を受信すると、操作情報登録部201は当該情報が臨時速度制限を設定する指示なのか、それとも解除する指示なのかを確認する(S403)。
当該情報が臨時速度制限を設定する指示であれば(S403のYES)、操作情報登録部201は臨時速度制限の設定処理を遂行して(S404)、処理を終了する(S405)。
当該情報が臨時速度制限の設定を解除する指示であれば(S403のNO)、操作情報登録部201は臨時速度制限の設定解除処理を遂行して(S406)、処理を終了する(S405)。
【0030】
図5は、列車運行管理装置103の、臨時速度制限の設定処理の流れを示すフローチャートである。図4のステップS404の詳細である。
処理を開始すると(S501)、操作情報登録部201は臨時速度制限要因テーブル202に対し、臨時速度制限信号装置105から入力された、臨時速度制限の要因コード、要因テキスト、速度段及び設定日時を、新規レコードとして追記録する。またその際、一意性を有するIDX番号を生成し、IDXフィールドに記録する。次に、操作情報登録部201は臨時速度制限区間テーブル203に対し、臨時速度制限信号装置105から入力された、臨時速度制限を設定する対象線路範囲の始点となる線路区間コードと、終点となる線路区間コードに基づいて、臨時速度制限信号装置105から指定された対象線路範囲に含まれる全ての線路区間の線路区間コードを抽出する。そして、先に臨時速度制限要因テーブル202に追記録を行った際に生成したIDX番号を伴って、臨時速度制限区間テーブル203に追記録する(S502)。
【0031】
操作情報登録部201は、ステップS502迄の作業を完遂すると、次にカウンタ操作部204を起動する。
カウンタ操作部204は先のIDX番号で臨時速度制限区間テーブル203を絞込み検索する。この時点で、操作情報登録部201が臨時速度制限区間テーブル203に登録した、先のIDX番号に係る全ての線路区間コードを得ることができる。
そして、カウンタ操作部204は先のIDX番号で絞込み検索した臨時速度制限区間テーブル203の、最初のレコードを注目する(S503)。これは、ステップS502で、操作情報登録部201が臨時速度制限区間テーブル203に追記録した、臨時速度制限信号装置105から指定された対象線路範囲に含まれる全ての線路区間の、最初の線路区間を注目することと等しい。
【0032】
これ以降はループである。
カウンタ操作部204は現在注目している臨時速度制限区間テーブル203のレコードに記憶されている線路区間コードと、先に操作情報登録部201から受け取った速度段の組み合わせよりなる臨時速度制限設定指令を、情報出力インターフェース206を通じて送信する(S504)。
次にカウンタ操作部204は、臨時速度制限区間テーブル203の、現在注目しているレコードの線路区間コードと、先に操作情報登録部201から受け取った速度段で、臨時速度制限カウンタテーブル205を検索して、レコードを特定する(S505)。
そして、カウンタ操作部204は臨時速度制限カウンタテーブル205の当該特定したレコードのカウンタフィールドの値を読み取り、その値を1インクリメントする(S506)。
次にカウンタ操作部204は、臨時速度制限区間テーブル203の、現在注目しているレコードが、最後のレコードであるか否か(臨時速度制限信号装置105から指定された対象線路範囲に含まれる全ての線路区間の、最後の線路区間であるか否か)を確認する(S507)。最後のレコード(最後の線路区間)でないならば(S507のNO)、次のレコード(次の線路区間)を注目して(S508)、再びステップS504から処理を繰り返す。
ステップS507で最後のレコード(最後の線路区間)であるならば(S507のYES)、一連の処理を終了する(S509)。
【0033】
図6は、列車運行管理装置103の、臨時速度制限の設定解除処理の流れを示すフローチャートである。図4のステップS406の詳細である。
処理を開始すると(S601)、カウンタ操作部204は操作情報登録部201を通じて臨時速度制限信号装置105によって特定された、臨時速度制限要因テーブル202のレコードからIDX番号を取得し、そのIDX番号で臨時速度制限区間テーブル203を絞込み検索して、当該臨時速度制限に該当する対象線路範囲に含まれる全ての線路区間の線路区間コードを取得する(S602)。
次にカウンタ操作部204は、先のIDX番号で絞込み検索した臨時速度制限区間テーブル203の、最初のレコードを注目する(S603)。
【0034】
これ以降はループである。
カウンタ操作部204は、臨時速度制限区間テーブル203の、現在注目しているレコードの線路区間コードと、ステップS602の時点で特定した、臨時速度制限要因テーブル202のレコードの速度段で、臨時速度制限カウンタテーブル205を検索して、レコードを特定する(S604)。
そして、カウンタ操作部204は臨時速度制限カウンタテーブル205の当該特定したレコードのカウンタフィールドの値を読み取り、その値を1デクリメントする(S605)。
次に、カウンタ操作部204はデクリメントした結果、当該カウンタフィールドの値は「0」になったか否か、確認する(S606)。もし、0になったら(S606のYES)、カウンタ操作部204は現在注目している臨時速度制限カウンタテーブル205のレコードに記憶されている線路区間コードと速度段に対する、臨時速度制限設定解除指令を、情報出力インターフェース206を通じて送信する(S607)。
次にカウンタ操作部204は、臨時速度制限区間テーブル203の、現在注目しているレコードが、最後のレコードであるか否かを確認する(S608)。最後のレコード(最後の線路区間)でないならば(S608のNO)、次のレコード(次の線路区間)を注目して(S609)、再びステップS604から処理を繰り返す。
ステップS606において、当該カウンタフィールドの値が0でなければ(S606のNO)、カウンタ操作部204は何もせずに、ステップS608の処理に移行する。
【0035】
ステップS608で最後のレコード(最後の線路区間)であるならば(S608のYES)、操作情報登録部201は、臨時速度制限信号装置105によって特定された、臨時速度制限要因テーブル202の該当レコードを削除して(S610)、一連の処理を終了する(S611)。
【0036】
これより、図7から図11に掛けて、本実施形態の列車運行管理装置103の、臨時速度制限の設定解除処理の流れを、模式図にて説明する。
図7は、線路と臨時速度制限の設定状態を示す模式図である。
図8は、臨時速度制限の設定解除処理前の、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203に記憶されている情報を示す模式図である。
図9は、臨時速度制限の設定解除処理前の、臨時速度制限カウンタテーブル205に記憶されている情報を示す模式図である。
図10は、臨時速度制限の設定解除処理後の、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203に記憶されている情報を示す模式図である。
図11は、臨時速度制限の設定解除処理後の、臨時速度制限カウンタテーブル205に記憶されている情報を示す模式図である。
【0037】
図7において、線路上には線路区間L701、線路区間L702、線路区間L703、線路区間L704、線路区間L705が存在する。これらの線路区間に対し、臨時速度制限P710が線路区間L701及び線路区間L702に、臨時速度制限P711が線路区間L702、線路区間L703及び線路区間L704に、臨時速度制限P712が線路区間L704及び線路区間L705に設定されている。
【0038】
図8は、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203を、IDXフィールドで紐付けた上で、臨時速度制限要因テーブル202の要因コードと速度段と、臨時速度制限区間テーブル203の線路区間を明示した状態を示す。
第一のレコードは臨時速度制限P710であり、第二のレコードは臨時速度制限P711であり、第三のレコードは臨時速度制限P712である。
これら設定されている臨時速度制限の速度段は全て時速100km/hとする。
【0039】
図9は、臨時速度制限カウンタテーブル205の各レコードのうち、速度段を時速100km/hで絞込み検索した結果を示す。
線路区間L702には、臨時速度制限P710及び臨時速度制限P711が多重掛けされているため、カウンタフィールドの値は「2」である。
同様に線路区間L704には、臨時速度制限P711及び臨時速度制限P712が多重掛けされているため、カウンタフィールドの値は「2」である。
【0040】
この時点で、臨時速度制限P711の解除指示入力を臨時速度制限信号装置105より行う(図6のステップS601)。すると、列車運行管理装置103のカウンタ操作部204はステップS602で、臨時速度制限区間テーブル203から線路区間L702、線路区間L703及び線路区間L704を特定する。
次にステップS604で、カウンタ操作部204は臨時速度制限カウンタテーブル205の、速度段「時速100km/h」における線路区間L702に係るレコードを特定することで、速度段「時速100km/h」における線路区間L702のカウンタ値は「2」であることが判る。そして、ステップS605でカウンタ値を「2」から「1」に減ずる。その後、ステップS606ではカウンタ値が「1」なので、臨時速度制限の解除はせずに(S606のNO)、次の線路区間の処理に移行する(S608のNO→S609)。
【0041】
次にステップS604で、カウンタ操作部204は臨時速度制限カウンタテーブル205の、速度段「時速100km/h」における線路区間L703に係るレコードを特定することで、速度段「時速100km/h」における線路区間L702のカウンタ値は「1」であることが判る。そして、ステップS605でカウンタ値を「1」から「0」に減ずる。その後、ステップS606ではカウンタ値が「0」なので、カウンタ操作部204は速度段「時速100km/h」における線路区間L703に対する臨時速度制限設定解除指令を、情報出力インターフェース206を通じて送信する(S607)。そして、次の線路区間の処理に移行する(S608のNO→S609)。
線路区間L704の処理については前述の線路区間L702と同様である。
【0042】
線路区間L704は最後の線路区間になるので、ステップS608の判断でステップS610に移行する。そして、臨時速度制限要因テーブル202の該当するレコードを削除して(S610)処理を終了する(S611)。
この結果、臨時速度制限要因テーブル202及び臨時速度制限区間テーブル203は、図10のようになり、臨時速度制限カウンタテーブル205は図11のようになる。
【0043】
以上の一連の説明で明らかなように、臨時速度制限が解除された線路区間は、臨時速度制限カウンタテーブル205のカウンタ値フィールドの値が「0」になった線路区間L703だけである。つまり、複数の異なる要因で、同じ速度段の臨時速度制限が複数、線路上に重なり合うように設定されていた場合に、そのうちの一つの臨時速度制限を解除しようとした際、臨時速度制限を解除できる線路区間を正しく特定して、誤りのない臨時速度制限解除命令を発行することができる。
【0044】
本実施形態では以下の応用例が可能である。
(1)臨時速度制限の設定処理をより確実に遂行するため、図5のステップS504において臨時速度制限設定指令を送信した後、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限の設定を完了した旨の報告が返ってくるまでステップS505の処理を待つように、カウンタ操作部204を構成することができる。
同様に、図6のステップS607において臨時速度制限設定解除指令を送信した後、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限の設定解除を完了した旨の報告が返ってくるまでステップS608の処理を待つように、カウンタ操作部204を構成することができる。
【0045】
(2)列車運行管理装置103のOSがマルチタスクOSであれば、カウンタ操作部204をマルチプロセスにて構成し、図5のステップS504において臨時速度制限設定指令を送信した後、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限の設定を完了した旨の報告が返ってくるまでステップS505の処理を待つ処理を別プロセスで起動させて、全体の処理を高速化させることができる。
同様に、図6のステップS607において臨時速度制限設定解除指令を送信した後、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限の設定解除を完了した旨の報告が返ってくるまでステップS608の処理を待つ処理を別プロセスで起動させて、全体の処理を高速化させることができる。
また周知のように、マルチプロセスで構成する処理はマルチスレッドで構成することもできる。
【0046】
(3)現在の臨時速度制限信号装置105は、予め設定した特定の速度段のみ識別可能に構成されているが、本実施形態の列車運行管理装置103はカウンタで速度段を管理することができる。したがって、任意の速度段を設定できるように、列車運行管理装置103を構成することもできる。その際、臨時速度制限信号装置105は、速度段を識別することなく、単に列車運行管理装置103から受信した臨時速度制限設定指令及び臨時速度制限設定解除指令を臨時速度制限信号に変換して送信するだけでよい。
【0047】
本実施形態では、列車運行管理装置103を開示した。
列車運行管理装置103は、臨時速度制限の多重掛けの回数を臨時速度制限カウンタテーブルのカウンタフィールドで管理する。そして、カウンタフィールドの値が0になったとき、つまり本当に臨時速度制限の要因が全て除去された時になって初めて、臨時速度制限を解除する指令を出力する。このように、線路区間と速度段の組み合わせに対する臨時速度制限の設定回数をカウンタで管理することで、複数の異なる要因で、同じ速度段の臨時速度制限が複数、線路上に重なり合うように設定されていた場合に、そのうちの一つの臨時速度制限を解除しようとした際、臨時速度制限を解除できる線路区間を正しく特定して、誤りのない臨時速度制限解除命令を発行することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0049】
101…列車運行管理システム、102…中央管制室、103…列車運行管理装置、104…操作端末、105…臨時速度制限信号装置、106…線路、108…列車、109…車輪、110…車上装置、111…運転台表示装置、112…列車速度制限装置、113…モータ、201…操作情報登録部、202…臨時速度制限要因テーブル、203…臨時速度制限区間テーブル、204…カウンタ操作部、205…臨時速度制限カウンタテーブル、206…情報出力インターフェース、207…臨時速度制限データベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車運行管理装置、臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムに関する。
より詳細には、列車運行管理装置において、臨時速度制限を正しく管理することで、不用意な臨時速度制限解除指令の発行を防ぎ、列車運行管理システムを安全に保つことができる、列車運行管理装置と、これに係る臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨時速度制限とは、主に車内信号を有する車両の路線、すなわちATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)設置路線に設けられている、臨時に線路上のある区間を走行する列車に対して課せられる速度制限のことである。
臨時速度制限には、二種類の発生要因がある。一つは、臨時駅の設置や緊急路盤工事等の、線路等の設備状態に応じ、当日の列車運行において予め計画された臨時速度制限である。もう一つは、強風や大雨などの自然災害、或は偶発的に発生する事故等の緊急事態に対して、列車運行の安全確保の観点から即座に行われる臨時速度制限である。
【0003】
列車運行管理システムは、ダイヤに基づく列車の進路制御を行うと共に、列車の運行状況を表示するシステムであり、高速鉄道や大都市圏の高密度運転線区等に、列車運行管理の効率化等を目的として導入されている。
新幹線などの高速列車、そして首都圏を網羅する高密度のダイヤで運行される鉄道路線には、列車運行管理システムの存在が必要不可欠である。この列車運行管理システムは、ATCを包含する。
臨時速度制限を実施するには、列車運行管理システムに臨時速度制限の設定を指示する設定情報を入力することで実現する。逆に、一度設定した臨時速度制限の設定を解除するには、列車運行管理システムにその設定の解除を指示する解除情報を入力することで実現する。
列車運行管理システムは、運行管理装置と、操作端末と、臨時速度制限信号装置と、複数の線路区間と、制御対象である車両に備えられている車上装置で構成される。
【0004】
操作端末から入力された臨時速度制限情報は、運行管理装置で処理された後、臨時速度制限信号装置を通じて、臨時速度制限を実施しようとする線路区間に存在する、制御対象となる車両の車上装置に送信される。
車上装置は、臨時速度制限信号装置から臨時速度制限情報を受信すると、臨時制限速度値が運転台に備え付けられている運転台表示装置に表示される。運転士は、運転台表示装置に表示された臨時制限速度を超えない範囲で列車運行を実施する。
もし、臨時制限速度を超える速度で走行すると、走行速度と臨時制限速度値とを比較するATCにより自動的にブレーキ制御がかかり、走行速度を臨時制限速度値以下に落とす。
なお、本発明に関係すると思われる先行技術文献を特許文献1に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−188249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
列車運行管理システムは、列車の運行状況等に応じて、同一線路区間を含む線路区間に対し、複数の異なる要因に基づく臨時速度制限を実施することがある。いわば、臨時速度制限の多重掛けともいえる。
従来技術のATCには、臨時速度制限の多重掛けを記憶して管理する機能が存在しなかった。
【0007】
本発明はかかる課題を解決し、臨時速度制限の多重掛けを記憶して管理し、臨時速度制限がなくなった線路区間を正しく認識して解除する機能を備える列車運行管理装置、臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の列車運行管理装置は、臨時速度制限の発生要因を区別する識別コードが格納される要因コードフィールドと、臨時速度制限にて設定される速度段を示すコードが格納される速度段フィールドと、線路区間を識別する線路区間コードが格納される線路区間コードフィールドとを備える臨時速度制限データベースと、線路区間コードフィールドと、速度段フィールドと、線路区間コードと速度段の組み合わせにおける臨時速度制限の設定回数が格納されるカウンタフィールドとを備える臨時速度制限カウンタテーブルと、操作端末から送信される操作情報を受けて臨時速度制限データベースに臨時速度制限の登録及び削除を行う操作情報登録部と、操作端末から送信される操作情報を受けて操作情報登録部が臨時速度制限データベースに登録されている臨時速度制限の削除を行う際、臨時速度制限カウンタテーブルの該当するレコードのカウンタフィールドの値を減じ、カウンタフィールドの値が0になったレコードに限り、レコードの線路区間コード及び速度段に係る臨時速度制限設定解除指令を出力するカウンタ操作部とを具備する。
【0009】
臨時速度制限の多重掛けの回数を臨時速度制限カウンタテーブルのカウンタフィールドで管理する。そして、カウンタフィールドの値が0になったとき、つまり本当に臨時速度制限の要因が全て除去された時になって初めて、臨時速度制限を解除する指令を出力する。このように、線路区間と速度段の組み合わせに対する臨時速度制限の設定回数をカウンタで管理することで、複数の異なる要因で、同じ速度段の臨時速度制限が複数、線路上に重なり合うように設定されていた場合に、そのうちの一つの臨時速度制限を解除しようとした際、臨時速度制限を解除できる線路区間を正しく特定して、誤りのない臨時速度制限解除命令を発行することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、臨時速度制限の多重掛けを記憶して管理し、臨時速度制限がなくなった線路区間を正しく認識して解除する機能を備える列車運行管理装置、臨時速度制限管理方法及び列車運行管理プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である列車運行管理装置を有する、列車運行管理システムの機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態である列車運行管理装置の機能ブロック図である。
【図3】列車運行管理装置に備わっているテーブルのフィールド構成を示す図である。
【図4】列車運行管理装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】列車運行管理装置の、臨時速度制限の設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】列車運行管理装置の、臨時速度制限の設定解除処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】線路と臨時速度制限の設定状態を示す模式図である。
【図8】臨時速度制限の設定解除処理前の、臨時速度制限要因テーブルと臨時速度制限区間テーブルに記憶されている情報を示す模式図である。
【図9】臨時速度制限の設定解除処理前の、臨時速度制限カウンタテーブルに記憶されている情報を示す模式図である。
【図10】臨時速度制限の設定解除処理後の、臨時速度制限要因テーブルと臨時速度制限区間テーブルに記憶されている情報を示す模式図である。
【図11】臨時速度制限の設定解除処理後の、臨時速度制限カウンタテーブルに記憶されている情報を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[システム構成]
図1は、本発明の一実施形態である列車運行管理装置を有する、列車運行管理システムの機能ブロック図である。
中央管制室102に設けられている列車運行管理装置103は、予め同じく中央管制室102に設けられている操作端末104から入力されて図示しない不揮発性ストレージに格納されたダイヤに基づいて、列車の進路制御を行うための、様々な指令情報を出力する。その指令情報の中に、臨時速度制限情報も含まれる。つまり、列車運行管理システム101は列車の速度を管理する自動列車制御システムを包含する。
列車運行管理装置103が出力する臨時速度制限指令は、臨時速度制限信号装置105に送信される。
臨時速度制限信号装置105は、臨時速度制限指令に含まれる、臨時速度制限の設定或は解除の指令、速度段、線路106の対象となる線路区間に従って、所定の変調又はエンコード処理を施して、該当する線路区間に指定された速度段の設定或は解除の信号を出力する。これ以降、この線路区間に流す信号を臨時速度制限信号と呼ぶ。
【0013】
なお、線路区間とは、線路を所定の区間で区切る単位である。所定の区間は路線の設計上の任意であり、例えば駅と駅の間や、駅間よりも短い距離である場合もある。臨時速度制限は、指定された一つ以上の連続する線路区間に対し、指定又は解除が行われる。
また、速度段とは、臨時速度制限において指定される制限速度を意味する。例えば、時速100km/h、80km/h、60km/h、40km/h、20km/hというように、段階的に複数の設定速度を有する。
【0014】
臨時速度制限信号は、線路区間L107a、線路区間L107b、線路区間L107c…の線路に流される。列車108は、この臨時速度制限信号を、車輪109を通じて車上装置110で受信する。車上装置110は受信した臨時速度制限信号に所定の復調又はデコード処理を施して、臨時速度制限情報を得る。
復調又はデコード処理によって得られた臨時速度制限情報は、運転台に備えられている運転台表示装置111に表示されると共に、列車速度制限装置112に入力される。列車速度制限装置112は図示しない速度センサで現在の列車108の速度を取得し、臨時速度制限情報と比較し、現在の列車108の速度が臨時速度制限情報の速度を越えている場合は、図示しない常用ブレーキを作動させて、モータ113の速度を制御し、列車108の走行速度を臨時速度制限情報によって指定された速度以下に落とす。
【0015】
臨時速度制限は、大別して二種類の要因によって発生する。
一つは、線路等の設備状態に応じ当日の列車運行において予め計画された、臨時速度制限の設定指示である。
もう一つは、強風、大雨などの自然災害、偶発的に発生する事故等に対して、列車運行の安全確保の観点から行われる、臨時速度制限の設定指示である。
これら臨時速度制限を設定する指示は、臨時速度制限信号装置105によって入力され、列車運行管理装置103に登録される。また、臨時速度制限の要因がなくなったら、当該臨時速度制限を解除する指示も、臨時速度制限信号装置105によって入力され、列車運行管理装置103に登録されていた該当する臨時速度制限情報のエントリが削除される。
【0016】
ここで、臨時速度制限信号装置105について、簡単に説明する。
図1では、臨時速度制限信号装置105は一つの機能ブロックとして表現されているが、実際には駅毎に管轄する線路区間が別れており、中央管制室102の側から各駅に臨時速度制限指令が送信された後、駅に備えられている装置が更に該当する線路区間に臨時速度制限信号を流す、という、階層的な構造のシステムで構成されている。そして、この臨時速度制限信号装置105は、臨時速度制限の発生要因に関しては全く情報を得ない仕様となっている。このため、線路区間に対して異なる速度段の速度制限を指定することはできるものの、異なる発生要因で生じる、同じ速度段の速度制限を多重掛けしても、その回数は計数されない。
【0017】
例えば、ある線路区間に予め臨時列車を通行させるために時速80km/hの臨時速度制限が設定されていたとする。そして、天候が悪化したために改めて当該線路区間に時速80km/hの臨時速度制限が掛かった場合、同じ線路区間に再度時速80km/hの臨時速度制限が設定されたこととなる。しかし、線路区間近傍に接地されている臨時速度制限信号装置105には、列車運行管理装置103からそれら臨時速度制限の要因に関する情報は渡されない。当該線路区間を担当する臨時速度制限信号装置105に渡されるのは、線路区間の指定と、「時速○○km」という臨時速度制限の速度段と、その臨時速度制限を設定するか解除するかを示す指令のみである。したがって、臨時速度制限信号装置105は中央管制室102から当該線路区間に対して「時速80km/h」という臨時速度制限の設定を受けても、既に設定済みである時速80km/hの臨時速度制限の設定に変化は全く生じず、またその臨時速度制限が多重掛けされていることも認識できない。
【0018】
このような臨時速度制限信号装置105に対し、天候が回復したので、天候不順に基づく臨時速度制限の設定を解除しようとする。ところが、臨時列車運行用の臨時速度制限は解除すべきでないのに、この時点で天候不順に基づく臨時速度制限の設定を解除する指令を中央管制室102から送信すると、当該線路区間の時速80km/hという臨時速度制限そのものが解除されてしまう。つまり、本来解除すべきでない臨時速度制限が解除されてしまう。
【0019】
臨時速度制限信号装置105は各駅に配置されており、これらの仕様を変更することは費用と時間が掛かり、非効率的である。そこで、中央管制室102にある列車運行管理装置103の側で、臨時速度制限の多重掛けの回数をカウンタで管理する。そして、カウンタが0になったとき、つまり本当に臨時速度制限の要因が全て除去された時になって初めて、臨時速度制限を解除する指令を出力する機能を追加すれば、最小限の変更で対応できる。
以下、本実施形態の列車運行管理装置103に追加された、臨時速度制限情報管理機能について、順を追って説明する。
【0020】
図2は列車運行管理装置103の機能ブロック図である。
列車運行管理装置103は周知のコンピュータで構成される。列車運行管理装置103を構成するコンピュータは、オフコンと呼ばれるオフィスコンピュータ、或はPOSIX系OSが稼働するワークステーション等、所定の堅牢性を備える装置であればよい。また、列車運行管理装置103は複数の操作端末104から操作が可能になっていることが望ましい。
コンピュータに列車運行管理プログラムを読み込ませて実行させることで、コンピュータは列車運行管理装置103として機能する。
【0021】
操作情報登録部201は、臨時速度制限信号装置105から出力される操作情報を受信する。そして、操作情報に含まれる臨時速度制限を登録する旨の情報を、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203に登録する。また、臨時速度制限を解除する旨の情報に従って、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203の該当するレコードを削除する。
【0022】
カウンタ操作部204は、操作情報登録部201による臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203に対する情報の登録に伴って、臨時速度制限カウンタテーブル205に新規のレコードを追記録したり、レコードの内容を更新する。特に、後述する臨時速度制限カウンタテーブル205のカウンタフィールドを操作して、線路区間における特定の速度段の設定回数を管理する。
【0023】
情報出力インターフェース206は、操作情報登録部201及びカウンタ操作部204によって生成される臨時速度制限の設定及び解除の情報を、臨時速度制限信号装置105に出力する。
【0024】
図3は、列車運行管理装置103に備わっているテーブルのフィールド構成を示す図である。
臨時速度制限要因テーブル202は、IDXフィールドと、要因コードフィールドと、要因テキストフィールドと、速度段フィールドと、設定日時フィールドよりなる。
IDXフィールドは、臨時速度制限区間テーブル203との紐付けのための索引情報(index)が格納される。例えば一意性を有する(unique:重複のない)1から65536迄の自然数を用いる。
要因コードフィールドは、臨時速度制限の発生要因を区別する識別コードが格納される。予め、「臨時ダイヤ」、「大雨」、「大雪」、「強風」、「地震」、「その他天候不順」、「事故」等というように、臨時速度制限の発生要因を分類し、これに識別コードを付与する。勿論、図示はしていないものの、要因マスタと呼べる、臨時速度制限の発生要因の名称と識別コードとの対応関係を示すマスタテーブルが存在する。
要因テキストフィールドは、臨時速度制限の発生要因の詳細を記述する文字列が格納される。
速度段フィールドは、臨時速度制限にて設定される速度段を示すコードが格納される。
設定日時フィールドは、この臨時速度制限を設定する、或は設定した時点の日時が格納される。「臨時速度制限を設定する」とは、臨時ダイヤ等の予め計画されている臨時速度制限であり、「臨時速度制限を設定した」とは、天候不順等の突発的要因に基づく臨時速度制限である。
【0025】
臨時速度制限区間テーブル203は、IDXフィールドと、線路区間コードフィールドよりなる。
IDXフィールドは、前述の臨時速度制限要因テーブル202のIDXフィールドと同じものであり、臨時速度制限要因テーブル202との紐付けのための索引情報である。なお、臨時速度制限要因テーブル202のレコードと臨時速度制限区間テーブル203のレコードは、一対多の関係である。
線路区間コードフィールドは、線路区間を識別する線路区間コードが格納される。勿論、図示はしていないものの、線路区間マスタと呼べる、線路区間の名称と線路区間コードを関連付けるマスタテーブルが存在する。
【0026】
臨時速度制限を設定する対象は、一つ以上の線路区間である。殆どの場合、臨時速度制限を設定する対象が一つだけの線路区間のみ、ということはなく、連続する複数の線路区間に対し、臨時速度制限が設定される。そして、指定される線路区間の数は臨時速度制限毎にまちまちである。したがって、臨時速度制限要因テーブル202には臨時速度制限の要因と速度段を記録し、数が変動する線路区間については、臨時速度制限区間テーブル203で一対多の関係を形成して、臨時速度制限に関する情報を表現する。
【0027】
レコード毎にフィールド数を可変にできるデータベースであれば、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203を一体化させることもできる。
つまり、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203はIDXフィールドで結合することで、臨時速度制限データベース207を構成する、ともいえる。
【0028】
臨時速度制限カウンタテーブル205は、線路区間コードフィールドと、速度段フィールドと、カウンタフィールドよりなる。
線路区間コードフィールドは、臨時速度制限区間テーブル203の線路区間コードフィールドと同じものである。
速度段フィールドは、臨時速度制限要因テーブル202の速度段フィールドと同じものである。
カウンタフィールドは、線路区間コードと速度段の組み合わせにおける、臨時速度制限の設定回数(計数値)が格納される。
【0029】
[動作]
図4は、列車運行管理装置103の動作の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(S401)、列車運行管理装置103の操作情報登録部201は操作端末104を通じて操作者の入力操作を待つ(S402)。
ステップS402で、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限に関する情報を受信すると、操作情報登録部201は当該情報が臨時速度制限を設定する指示なのか、それとも解除する指示なのかを確認する(S403)。
当該情報が臨時速度制限を設定する指示であれば(S403のYES)、操作情報登録部201は臨時速度制限の設定処理を遂行して(S404)、処理を終了する(S405)。
当該情報が臨時速度制限の設定を解除する指示であれば(S403のNO)、操作情報登録部201は臨時速度制限の設定解除処理を遂行して(S406)、処理を終了する(S405)。
【0030】
図5は、列車運行管理装置103の、臨時速度制限の設定処理の流れを示すフローチャートである。図4のステップS404の詳細である。
処理を開始すると(S501)、操作情報登録部201は臨時速度制限要因テーブル202に対し、臨時速度制限信号装置105から入力された、臨時速度制限の要因コード、要因テキスト、速度段及び設定日時を、新規レコードとして追記録する。またその際、一意性を有するIDX番号を生成し、IDXフィールドに記録する。次に、操作情報登録部201は臨時速度制限区間テーブル203に対し、臨時速度制限信号装置105から入力された、臨時速度制限を設定する対象線路範囲の始点となる線路区間コードと、終点となる線路区間コードに基づいて、臨時速度制限信号装置105から指定された対象線路範囲に含まれる全ての線路区間の線路区間コードを抽出する。そして、先に臨時速度制限要因テーブル202に追記録を行った際に生成したIDX番号を伴って、臨時速度制限区間テーブル203に追記録する(S502)。
【0031】
操作情報登録部201は、ステップS502迄の作業を完遂すると、次にカウンタ操作部204を起動する。
カウンタ操作部204は先のIDX番号で臨時速度制限区間テーブル203を絞込み検索する。この時点で、操作情報登録部201が臨時速度制限区間テーブル203に登録した、先のIDX番号に係る全ての線路区間コードを得ることができる。
そして、カウンタ操作部204は先のIDX番号で絞込み検索した臨時速度制限区間テーブル203の、最初のレコードを注目する(S503)。これは、ステップS502で、操作情報登録部201が臨時速度制限区間テーブル203に追記録した、臨時速度制限信号装置105から指定された対象線路範囲に含まれる全ての線路区間の、最初の線路区間を注目することと等しい。
【0032】
これ以降はループである。
カウンタ操作部204は現在注目している臨時速度制限区間テーブル203のレコードに記憶されている線路区間コードと、先に操作情報登録部201から受け取った速度段の組み合わせよりなる臨時速度制限設定指令を、情報出力インターフェース206を通じて送信する(S504)。
次にカウンタ操作部204は、臨時速度制限区間テーブル203の、現在注目しているレコードの線路区間コードと、先に操作情報登録部201から受け取った速度段で、臨時速度制限カウンタテーブル205を検索して、レコードを特定する(S505)。
そして、カウンタ操作部204は臨時速度制限カウンタテーブル205の当該特定したレコードのカウンタフィールドの値を読み取り、その値を1インクリメントする(S506)。
次にカウンタ操作部204は、臨時速度制限区間テーブル203の、現在注目しているレコードが、最後のレコードであるか否か(臨時速度制限信号装置105から指定された対象線路範囲に含まれる全ての線路区間の、最後の線路区間であるか否か)を確認する(S507)。最後のレコード(最後の線路区間)でないならば(S507のNO)、次のレコード(次の線路区間)を注目して(S508)、再びステップS504から処理を繰り返す。
ステップS507で最後のレコード(最後の線路区間)であるならば(S507のYES)、一連の処理を終了する(S509)。
【0033】
図6は、列車運行管理装置103の、臨時速度制限の設定解除処理の流れを示すフローチャートである。図4のステップS406の詳細である。
処理を開始すると(S601)、カウンタ操作部204は操作情報登録部201を通じて臨時速度制限信号装置105によって特定された、臨時速度制限要因テーブル202のレコードからIDX番号を取得し、そのIDX番号で臨時速度制限区間テーブル203を絞込み検索して、当該臨時速度制限に該当する対象線路範囲に含まれる全ての線路区間の線路区間コードを取得する(S602)。
次にカウンタ操作部204は、先のIDX番号で絞込み検索した臨時速度制限区間テーブル203の、最初のレコードを注目する(S603)。
【0034】
これ以降はループである。
カウンタ操作部204は、臨時速度制限区間テーブル203の、現在注目しているレコードの線路区間コードと、ステップS602の時点で特定した、臨時速度制限要因テーブル202のレコードの速度段で、臨時速度制限カウンタテーブル205を検索して、レコードを特定する(S604)。
そして、カウンタ操作部204は臨時速度制限カウンタテーブル205の当該特定したレコードのカウンタフィールドの値を読み取り、その値を1デクリメントする(S605)。
次に、カウンタ操作部204はデクリメントした結果、当該カウンタフィールドの値は「0」になったか否か、確認する(S606)。もし、0になったら(S606のYES)、カウンタ操作部204は現在注目している臨時速度制限カウンタテーブル205のレコードに記憶されている線路区間コードと速度段に対する、臨時速度制限設定解除指令を、情報出力インターフェース206を通じて送信する(S607)。
次にカウンタ操作部204は、臨時速度制限区間テーブル203の、現在注目しているレコードが、最後のレコードであるか否かを確認する(S608)。最後のレコード(最後の線路区間)でないならば(S608のNO)、次のレコード(次の線路区間)を注目して(S609)、再びステップS604から処理を繰り返す。
ステップS606において、当該カウンタフィールドの値が0でなければ(S606のNO)、カウンタ操作部204は何もせずに、ステップS608の処理に移行する。
【0035】
ステップS608で最後のレコード(最後の線路区間)であるならば(S608のYES)、操作情報登録部201は、臨時速度制限信号装置105によって特定された、臨時速度制限要因テーブル202の該当レコードを削除して(S610)、一連の処理を終了する(S611)。
【0036】
これより、図7から図11に掛けて、本実施形態の列車運行管理装置103の、臨時速度制限の設定解除処理の流れを、模式図にて説明する。
図7は、線路と臨時速度制限の設定状態を示す模式図である。
図8は、臨時速度制限の設定解除処理前の、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203に記憶されている情報を示す模式図である。
図9は、臨時速度制限の設定解除処理前の、臨時速度制限カウンタテーブル205に記憶されている情報を示す模式図である。
図10は、臨時速度制限の設定解除処理後の、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203に記憶されている情報を示す模式図である。
図11は、臨時速度制限の設定解除処理後の、臨時速度制限カウンタテーブル205に記憶されている情報を示す模式図である。
【0037】
図7において、線路上には線路区間L701、線路区間L702、線路区間L703、線路区間L704、線路区間L705が存在する。これらの線路区間に対し、臨時速度制限P710が線路区間L701及び線路区間L702に、臨時速度制限P711が線路区間L702、線路区間L703及び線路区間L704に、臨時速度制限P712が線路区間L704及び線路区間L705に設定されている。
【0038】
図8は、臨時速度制限要因テーブル202と臨時速度制限区間テーブル203を、IDXフィールドで紐付けた上で、臨時速度制限要因テーブル202の要因コードと速度段と、臨時速度制限区間テーブル203の線路区間を明示した状態を示す。
第一のレコードは臨時速度制限P710であり、第二のレコードは臨時速度制限P711であり、第三のレコードは臨時速度制限P712である。
これら設定されている臨時速度制限の速度段は全て時速100km/hとする。
【0039】
図9は、臨時速度制限カウンタテーブル205の各レコードのうち、速度段を時速100km/hで絞込み検索した結果を示す。
線路区間L702には、臨時速度制限P710及び臨時速度制限P711が多重掛けされているため、カウンタフィールドの値は「2」である。
同様に線路区間L704には、臨時速度制限P711及び臨時速度制限P712が多重掛けされているため、カウンタフィールドの値は「2」である。
【0040】
この時点で、臨時速度制限P711の解除指示入力を臨時速度制限信号装置105より行う(図6のステップS601)。すると、列車運行管理装置103のカウンタ操作部204はステップS602で、臨時速度制限区間テーブル203から線路区間L702、線路区間L703及び線路区間L704を特定する。
次にステップS604で、カウンタ操作部204は臨時速度制限カウンタテーブル205の、速度段「時速100km/h」における線路区間L702に係るレコードを特定することで、速度段「時速100km/h」における線路区間L702のカウンタ値は「2」であることが判る。そして、ステップS605でカウンタ値を「2」から「1」に減ずる。その後、ステップS606ではカウンタ値が「1」なので、臨時速度制限の解除はせずに(S606のNO)、次の線路区間の処理に移行する(S608のNO→S609)。
【0041】
次にステップS604で、カウンタ操作部204は臨時速度制限カウンタテーブル205の、速度段「時速100km/h」における線路区間L703に係るレコードを特定することで、速度段「時速100km/h」における線路区間L702のカウンタ値は「1」であることが判る。そして、ステップS605でカウンタ値を「1」から「0」に減ずる。その後、ステップS606ではカウンタ値が「0」なので、カウンタ操作部204は速度段「時速100km/h」における線路区間L703に対する臨時速度制限設定解除指令を、情報出力インターフェース206を通じて送信する(S607)。そして、次の線路区間の処理に移行する(S608のNO→S609)。
線路区間L704の処理については前述の線路区間L702と同様である。
【0042】
線路区間L704は最後の線路区間になるので、ステップS608の判断でステップS610に移行する。そして、臨時速度制限要因テーブル202の該当するレコードを削除して(S610)処理を終了する(S611)。
この結果、臨時速度制限要因テーブル202及び臨時速度制限区間テーブル203は、図10のようになり、臨時速度制限カウンタテーブル205は図11のようになる。
【0043】
以上の一連の説明で明らかなように、臨時速度制限が解除された線路区間は、臨時速度制限カウンタテーブル205のカウンタ値フィールドの値が「0」になった線路区間L703だけである。つまり、複数の異なる要因で、同じ速度段の臨時速度制限が複数、線路上に重なり合うように設定されていた場合に、そのうちの一つの臨時速度制限を解除しようとした際、臨時速度制限を解除できる線路区間を正しく特定して、誤りのない臨時速度制限解除命令を発行することができる。
【0044】
本実施形態では以下の応用例が可能である。
(1)臨時速度制限の設定処理をより確実に遂行するため、図5のステップS504において臨時速度制限設定指令を送信した後、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限の設定を完了した旨の報告が返ってくるまでステップS505の処理を待つように、カウンタ操作部204を構成することができる。
同様に、図6のステップS607において臨時速度制限設定解除指令を送信した後、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限の設定解除を完了した旨の報告が返ってくるまでステップS608の処理を待つように、カウンタ操作部204を構成することができる。
【0045】
(2)列車運行管理装置103のOSがマルチタスクOSであれば、カウンタ操作部204をマルチプロセスにて構成し、図5のステップS504において臨時速度制限設定指令を送信した後、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限の設定を完了した旨の報告が返ってくるまでステップS505の処理を待つ処理を別プロセスで起動させて、全体の処理を高速化させることができる。
同様に、図6のステップS607において臨時速度制限設定解除指令を送信した後、臨時速度制限信号装置105から臨時速度制限の設定解除を完了した旨の報告が返ってくるまでステップS608の処理を待つ処理を別プロセスで起動させて、全体の処理を高速化させることができる。
また周知のように、マルチプロセスで構成する処理はマルチスレッドで構成することもできる。
【0046】
(3)現在の臨時速度制限信号装置105は、予め設定した特定の速度段のみ識別可能に構成されているが、本実施形態の列車運行管理装置103はカウンタで速度段を管理することができる。したがって、任意の速度段を設定できるように、列車運行管理装置103を構成することもできる。その際、臨時速度制限信号装置105は、速度段を識別することなく、単に列車運行管理装置103から受信した臨時速度制限設定指令及び臨時速度制限設定解除指令を臨時速度制限信号に変換して送信するだけでよい。
【0047】
本実施形態では、列車運行管理装置103を開示した。
列車運行管理装置103は、臨時速度制限の多重掛けの回数を臨時速度制限カウンタテーブルのカウンタフィールドで管理する。そして、カウンタフィールドの値が0になったとき、つまり本当に臨時速度制限の要因が全て除去された時になって初めて、臨時速度制限を解除する指令を出力する。このように、線路区間と速度段の組み合わせに対する臨時速度制限の設定回数をカウンタで管理することで、複数の異なる要因で、同じ速度段の臨時速度制限が複数、線路上に重なり合うように設定されていた場合に、そのうちの一つの臨時速度制限を解除しようとした際、臨時速度制限を解除できる線路区間を正しく特定して、誤りのない臨時速度制限解除命令を発行することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0049】
101…列車運行管理システム、102…中央管制室、103…列車運行管理装置、104…操作端末、105…臨時速度制限信号装置、106…線路、108…列車、109…車輪、110…車上装置、111…運転台表示装置、112…列車速度制限装置、113…モータ、201…操作情報登録部、202…臨時速度制限要因テーブル、203…臨時速度制限区間テーブル、204…カウンタ操作部、205…臨時速度制限カウンタテーブル、206…情報出力インターフェース、207…臨時速度制限データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨時速度制限の発生要因を区別する識別コードが格納される要因コードフィールドと、前記臨時速度制限にて設定される速度段を示すコードが格納される速度段フィールドと、線路区間を識別する線路区間コードが格納される線路区間コードフィールドとを備える臨時速度制限データベースと、
前記線路区間コードフィールドと、前記速度段フィールドと、前記線路区間コードと前記速度段の組み合わせにおける前記臨時速度制限の設定回数が格納されるカウンタフィールドとを備える臨時速度制限カウンタテーブルと、
操作端末から送信される操作情報を受けて前記臨時速度制限データベースに臨時速度制限の登録及び削除を行う操作情報登録部と、
前記操作端末から送信される操作情報を受けて前記操作情報登録部が前記臨時速度制限データベースに登録されている臨時速度制限の削除を行う際、前記臨時速度制限カウンタテーブルの該当するレコードの前記カウンタフィールドの値を減じ、前記カウンタフィールドの値が0になった前記レコードに限り、前記レコードの前記線路区間コード及び前記速度段に係る臨時速度制限設定解除指令を出力するカウンタ操作部と
を具備する列車運行管理装置。
【請求項2】
前記臨時速度制限データベースは、
紐付けのための索引情報が格納されるIDXフィールドと、前記要因コードフィールドと、前記速度段フィールドとよりなる臨時速度制限要因テーブルと、
前記IDXフィールドと、前記線路区間コードフィールドとよりなる臨時速度制限区間テーブルと
で構成される、請求項1記載の列車運行管理装置。
【請求項3】
操作端末から指定された臨時速度制限の設定を解除する指示を受けて、対象となる線路区間及び速度段を特定する線路区間特定ステップと、
前記速度段及び前記線路区間に係る前記臨時速度制限の設定回数を減じる設定回数減算ステップと、
前記設定回数減算ステップにおいて前記臨時速度制限の設定回数が0になった場合にのみ、前記速度段及び前記線路区間に係る前記臨時速度制限の設定を解除する指令を送信する、臨時速度制限設定解除送信ステップと
を有する、臨時速度制限管理方法。
【請求項4】
コンピュータを、
臨時速度制限の発生要因を区別する識別コードが格納される要因コードフィールドと、前記臨時速度制限にて設定される速度段を示すコードが格納される速度段フィールドと、線路区間を識別する線路区間コードが格納される線路区間コードフィールドとを備える臨時速度制限データベースと、
前記線路区間コードフィールドと、前記速度段フィールドと、前記線路区間コードと前記速度段の組み合わせにおける前記臨時速度制限の設定回数が格納されるカウンタフィールドとを備える臨時速度制限カウンタテーブルと、
操作端末から送信される操作情報を受けて前記臨時速度制限データベースに臨時速度制限の登録及び削除を行う操作情報登録部と、
前記操作端末から送信される操作情報を受けて前記操作情報登録部が前記臨時速度制限データベースに登録されている臨時速度制限の削除を行う際、前記臨時速度制限カウンタテーブルの該当するレコードの前記カウンタフィールドの値を減じ、前記カウンタフィールドの値が0になった前記レコードに限り、前記レコードの前記線路区間コード及び前記速度段に係る臨時速度制限設定解除指令を出力するカウンタ操作部と
を具備する列車運行管理装置として機能させる列車運行管理プログラム。
【請求項1】
臨時速度制限の発生要因を区別する識別コードが格納される要因コードフィールドと、前記臨時速度制限にて設定される速度段を示すコードが格納される速度段フィールドと、線路区間を識別する線路区間コードが格納される線路区間コードフィールドとを備える臨時速度制限データベースと、
前記線路区間コードフィールドと、前記速度段フィールドと、前記線路区間コードと前記速度段の組み合わせにおける前記臨時速度制限の設定回数が格納されるカウンタフィールドとを備える臨時速度制限カウンタテーブルと、
操作端末から送信される操作情報を受けて前記臨時速度制限データベースに臨時速度制限の登録及び削除を行う操作情報登録部と、
前記操作端末から送信される操作情報を受けて前記操作情報登録部が前記臨時速度制限データベースに登録されている臨時速度制限の削除を行う際、前記臨時速度制限カウンタテーブルの該当するレコードの前記カウンタフィールドの値を減じ、前記カウンタフィールドの値が0になった前記レコードに限り、前記レコードの前記線路区間コード及び前記速度段に係る臨時速度制限設定解除指令を出力するカウンタ操作部と
を具備する列車運行管理装置。
【請求項2】
前記臨時速度制限データベースは、
紐付けのための索引情報が格納されるIDXフィールドと、前記要因コードフィールドと、前記速度段フィールドとよりなる臨時速度制限要因テーブルと、
前記IDXフィールドと、前記線路区間コードフィールドとよりなる臨時速度制限区間テーブルと
で構成される、請求項1記載の列車運行管理装置。
【請求項3】
操作端末から指定された臨時速度制限の設定を解除する指示を受けて、対象となる線路区間及び速度段を特定する線路区間特定ステップと、
前記速度段及び前記線路区間に係る前記臨時速度制限の設定回数を減じる設定回数減算ステップと、
前記設定回数減算ステップにおいて前記臨時速度制限の設定回数が0になった場合にのみ、前記速度段及び前記線路区間に係る前記臨時速度制限の設定を解除する指令を送信する、臨時速度制限設定解除送信ステップと
を有する、臨時速度制限管理方法。
【請求項4】
コンピュータを、
臨時速度制限の発生要因を区別する識別コードが格納される要因コードフィールドと、前記臨時速度制限にて設定される速度段を示すコードが格納される速度段フィールドと、線路区間を識別する線路区間コードが格納される線路区間コードフィールドとを備える臨時速度制限データベースと、
前記線路区間コードフィールドと、前記速度段フィールドと、前記線路区間コードと前記速度段の組み合わせにおける前記臨時速度制限の設定回数が格納されるカウンタフィールドとを備える臨時速度制限カウンタテーブルと、
操作端末から送信される操作情報を受けて前記臨時速度制限データベースに臨時速度制限の登録及び削除を行う操作情報登録部と、
前記操作端末から送信される操作情報を受けて前記操作情報登録部が前記臨時速度制限データベースに登録されている臨時速度制限の削除を行う際、前記臨時速度制限カウンタテーブルの該当するレコードの前記カウンタフィールドの値を減じ、前記カウンタフィールドの値が0になった前記レコードに限り、前記レコードの前記線路区間コード及び前記速度段に係る臨時速度制限設定解除指令を出力するカウンタ操作部と
を具備する列車運行管理装置として機能させる列車運行管理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−230475(P2012−230475A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97165(P2011−97165)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】
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