説明

初期タックが改善された粘着剤組成物

【課題】本発明は、低温特性に優れたカルボキシル基含有粘着ポリマー成分に粘着ポリマー成分と相溶する塩基含有非粘着ポリマー及び架橋剤を添加することにより、適切な初期タックと低温接着性を両立した粘着剤及びそれを用いたマーキングシートを提供することを目的とする。
【解決手段】重量平均分子量が80万未満で、ガラス転移温度が−100℃〜−30℃のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー(1)、及び重量平均分子量が3万〜10万で、ガラス転移温度が20℃〜90℃のアミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマー(2)を含有し、ポリマー(1)100質量部に対し、ポリマー(2)を1質量部以上20質量部未満含む粘着剤組成物を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期タックが改善された粘着剤組成物、または粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
装飾用マーキングフィルムは、塗装代替材料として、屋外・屋内で広く使用されている。装飾用マーキングフィルムの粘着剤として、冬場から夏場まで幅広い温度域で貼り付け特性の優れた粘着特性を有する素材が望まれており、屋外耐候性に優れたアクリル系ポリマーが好適なものとして使用されている。
【0003】
このようなアクリル系ポリマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これにカルボキシル基含有モノマーを共重合させて得た重量平均分子量80万以上の樹脂組成物と、メタアクリル酸アルキルエステル等を主成分とし、これにアミノ基含有モノマーを共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上で重量平均分子量10万以下の樹脂組成物とからなる粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献1。)。
【0004】
また、カルボン酸含有アクリル酸エステル共重合体と、アミン化合物共重合体を混合してなるホットメルト接着剤として好適な接着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2。)。
【0005】
さらに、感圧接着剤成分、重量平均分子量が100,000を上回る高Tgポリマーおよび架橋剤のブレンドを含む、光学製品に適した接着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献3。)。
【0006】
また、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを主成分とし、これにカルボキシル基含有モノマーを共重合させて得た重量平均分子量60万以上の粘着性ポリマーと、メタアクリル酸アルキルエステル等を主成分とし、これにアミノ基含有モノマーを共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上で重量平均分子量5万以下の低分子量ポリマー、及び架橋剤とを含有する粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献4。)。
【0007】
一般に、冬場の低温接着性に優れた粘着組成物は、常温域以上で初期タックが強く貼り難いという問題がある。初期タックを抑制するにはガラス転移温度(Tg)の高いモノマーを利用されることがあるが、この場合、低温での接着性に問題がでてくる。また、無機物や可塑剤等の非粘着成分を粘着ポリマーに分散することも行われるが、低温接着性が極端に低下したり、添加剤が表面移行したりして接着性が損なわれるという問題点があった。
【0008】
【特許文献1】特許第3516035号公報
【特許文献2】特開昭54−88938号公報
【特許文献3】特表2006−522856号公報
【特許文献4】特開2002−327160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低温特性に優れたカルボキシル基含有粘着ポリマー成分に粘着ポリマー成分と相溶する塩基含有非粘着ポリマー及び架橋剤を添加することにより、適切な初期タックと低温接着性を両立した粘着剤及びそれを用いたマーキングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、重量平均分子量が80万未満で、ガラス転移温度が−100℃〜−30℃のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー(1)、及び重量平均分子量が3万〜10万で、ガラス転移温度が20℃〜90℃のアミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマー(2)を含有し、ポリマー(1)100質量部に対し、ポリマー(2)を1質量部以上20質量部未満含む粘着剤組成物を提供するものである。
【0011】
さらに本発明は、ベースフィルム層と、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層とを有し、前記粘着剤層の表面が凹凸を有するマーキングフィルムを提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の粘着剤組成物は、重量平均分子量が80万未満で、ガラス転移温度が−100℃〜−30℃のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー(1)、及び
平均分子量が3万〜10万で、ガラス転移温度が20℃〜90℃のアミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマー(2)を含む。そして、前記ポリマー(1)100質量部に対して、前記ポリマー(2)を1質量部以上20質量部未満含む。
かかる組成とすることにより、非粘着成分が粘着ポリマー中に相溶して、非常に微小なサイズで局在し、初期の濡れ性が抑制され、経時で粘着ポリマーが濡れ広がることで接着力が向上すると考えられ、通年での貼り付け特性に優れた粘着剤を得ることができる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、またはメタクリルを意味する。
【0013】
本発明のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とするポリマーであって、その一部にカルボキシル基を含有するモノエチレン性不飽和モノマー(カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマー)を含有するものである。前記モノエチレン性不飽和モノマーは、ポリマーの主成分となるものであって、一般には式CH2=CR1COOR2(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖、環状又は分岐状のアルキル基やフェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、環状エーテル基である)で表される。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、またはドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。必要に応じ、1種又は2種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。
【0014】
前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、または2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸等を挙げることができる。
【0015】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマーは、例えば前記モノエチレン性不飽和モノマーを80〜99.5質量部と、前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを0.5〜20質量部の割合で共重合することにより得られる。あるいは、前記モノエチレン性不飽和モノマーを90〜99質量部、前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを1〜10質量部とすることもできる。
また、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマーの重量平均分子量は80万未満とすることができる。好ましくは、10万〜80万、または30万〜75万である。
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマーのガラス転移温度は、−100℃〜−10℃、−80℃〜−20℃、または−60℃〜−30℃とすることができる。
【0016】
本発明のアミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とするポリマーであって、その一部にアミノ基含有不飽和モノマーを含有するものである。かかるモノエチレン性不飽和モノマーは、前記カルボキシル基含有(メタ)剤中アクリル系ポリマーの場合と同様である。
【0017】
前記アミノ基含有不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテル;またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0018】
前記アミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマーは、例えば前記モノエチレン性不飽和モノマーを80〜99.5質量部と、前記アミノ基含有不飽和モノマーを0.5〜20質量部の割合で共重合することにより得られる。あるいは、前記モノエチレン性不飽和モノマーを90〜99質量部、前記アミノ基含有不飽和モノマーを1〜10質量部とすることもできる。
【0019】
前記アミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマーの重量平均分子量は、3万〜10万とすることができる。好ましくは、3万〜8万とすることができる。
前記アミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマーのガラス転移温度は、20℃〜95℃とすることができる。好ましくは、30℃〜90℃とすることができる。
【0020】
また、上記各ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフ法)により測定することができる。測定条件として例えば、以下の条件を採用することができる。
装置:HP−1090 Series II(Hewlett−Packard社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Plgel MIXED−Bx2(300mm、外径7.5mm、内径5mm)
フローレート:1.0mL/min
検出手段:屈折率
サンプル濃度:0.1wt%
キャリブレーション標準:ポリスチレン
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー、及び前記アミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求めることができる。
1/Tg=X1/(Tg1+273.15)+X2/(Tg2+273.15)+・・・+Xn/(Tgn+273.15)
Tg1:成分1のホモポリマーのガラス転移温度
Tg2:成分2のホモポリマーのガラス転移温度
X1:重合の際に添加した成分1のモノマーの重量分率
X2:重合の際に添加した成分2のモノマーの重量分率
X1+X2+・・・+Xn=1
【0021】
本発明の粘着剤組成物は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー(1)100質量部に対して、前記アミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマー(2)を1質量部以上20質量部未満含む。好ましくは、前記アミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマー(2)を1質量部以上15質量部、あるいは1質量部以上10質量部とすることができる。
【0022】
さらに、本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含んでも良い。かかる架橋剤として、例えば、ビスアミド系架橋剤(例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン))、アジリジン系架橋剤(例えば、日本触媒製ケミタイトPZ33、アビシア製NeoCryl CX−100)、カルボジイミド系架橋剤(例えば、日清紡製カルボジライトV−03,V−05,V−07)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX,E−5XM,E5C)、イソシアネート系架橋剤(例えば、日本ポリウレタン製コロネートL、コロネートHK、バイエル社製デスモジュールH、デスモジュールW、デスモジュールI)、またはエポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX、E−5XM、E5C)等を用いることができる。
【0023】
本発明において、架橋剤の添加量は、カルボキシル基を含有するポリマー中のカルボキシル基、あるいはアミノ基を含有するポリマー中のアミノ基に対して0.01から0.5当量とすることができる。
【0024】
上記したポリマーの共重合は、例えば、ラジカル重合により行なうことができる。この場合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、あるいは塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、0.05〜5質量部とすることができる。
【0025】
本発明の粘着剤組成物は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマーに、前記アミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマーとを従来公知の方法を用いて混合することにより得られる。所望により、さらに上記架橋剤を添加する。
【0026】
本発明のマーキングフィルムは、ベースフィルム層と、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層とを有する。さらに前記粘着剤層の表面は凹凸を有している。
【0027】
前記ベースフィルム層は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、またはポリアミドフィルム等を使用することが出来る。
【0028】
本発明のマーキングフィルムはさらに、前記粘着剤層の前記ベースフィルム層とは反対側に剥離紙を設けることができる。このようなライナーは、粘着テープなどの分野で一般的に使用されているものでよく、特定の部材に限定されるものではない。好適な剥離紙としては、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、または酢酸セルロース等のプラスチック材料、あるいはこのようなプラスチック材料で被覆又はそれを積層された紙やその他の材料などを挙げることができる。これらの剥離紙は、表面に凹凸を有し、かかる凹凸により前記粘着剤層表面の凹凸を設けることができる。また、これら剥離紙は、そのまま使用してもよいが、シリコーン処理あるいはその他の方法で処理して剥離特性を向上させた後に使用することができる。
【0029】
前記粘着剤層表面の凹凸のサイズは、表面平均粗さ(Ra)で規定され、表面平均粗さが0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。前記凹凸の形状は、特に限定されず、ランダムな凹凸、規則的な凹凸のいずれでも構わない。さらに凸部とそれらの周囲を取り囲む様に連続して形成された溝部とから形成された凹凸が好ましい。規則的な凹凸形状としては、例えば、水平断面(粘着面に平行な断面)が、四角形等の多角形、円形、またはそれらに類似した形状を有する凸部と、それらの周囲を取り囲む様に連続して形成された溝部とから形成される形状を挙げることができる。凸部の垂直断面(粘着面に対して垂直な断面)の形状は、台形、長方形等の四角形、半円、またはそれらに類似したものが好ましい。
前記粘着剤層表面に凹凸を施す方法として、たとえば、フィルムの平坦な表面に、凹凸(ポジ形状)を有する圧接ツールを押し当て、フィルム表面にかかるポジ形状に対応する凹凸(ネガ形状)を転写して形成する方法を挙げることができる。前記圧接の際には、上記圧縮ツールを加熱して使用することもできる。上記ポジ形状は、通常、粘着面に形成されるべき凹凸構造と同一形状、同一寸法を有する。
さらに前記粘着剤層表面に凹凸を施す方法として、表面に凹凸を有する剥離紙を前記粘着剤にラミネートする方法を挙げることができる。かかる剥離紙は、通常、紙、プラスチックフィルム、またはこれら両者を積層したフィルムから形成される。かかる剥離紙として従来公知のものを使用することができる、その他例えば、ポジ形状を有する金型に、プラスチックを含有する流動性材料を流し込み、金型上でその材料を固化した後、金型を除去して得られる、ネガ形状に相当する凹凸構造を有する剥離紙を使用することができる。
剥離紙の凹凸構造面には、必要によりシリコーン処理等の剥離処理を施すこともできる。また、上記プラスチックがポリオレフィンからなる場合、剥離処理を省くこともできる。
【0030】
本発明のマーキングフィルムは、さらに、プライマー層など他の機能を有する層を有していても良い。
【0031】
また、本発明のマーキングフィルムにおいて、各層の厚さは特に限定されない。好ましくは、前記ベースフィルム層は約5μm〜約300μm、前記粘着剤層は、約5μm〜約100μm、及び前記ライナーは、通常約10〜約500μm、あるいは約25〜約200μmとすることができる。
【0032】
本発明のマーキングフィルムは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、本発明のアクリル系着色粘着剤を有機系の溶媒に溶解した溶液を、ナイフコートあるいはバーコータ等によりライナー上に塗布して乾燥し粘着剤層を得る。続いて、得られた粘着剤層に本発明のベースフィルム層をドライラミネートなどにより積層して本発明のマーキングフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0033】
表1に記載した組成及び組成比のモノマーを、表1にそれぞれ記載された溶剤中で共重合し、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー(粘着性ポリマー1〜4)、及びアミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマー(非粘着性ポリマー1〜3)を製造した。
表1中に示した各ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、以下の測定条件を用いてGPC法により測定した。
装置:HP−1090 Series II(Hewlett−Packard社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Plgel MIXED−Bx2(300mm、外径7.5mm、内径5mm)
フローレート:1.0mL/min
検出手段:屈折率
サンプル濃度:0.1wt%
キャリブレーション標準:ポリスチレン
また、表1中の各ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、上述したFOXの式により求めた。
【表1】

表1で使用した略号は以下のとおりである。
BA: ブチルアクリレート
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレート
AN: アクリロニトリル
AA: アクリル酸
MMA: メチルメタクリレート
DMAEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
BMA: ブチルメタクリレート
2MBA: 2−メチルブチルアクリレート
【0034】
下記表2に記載の成分を、混合して実施例1〜5、参考例1、及び比較例1〜7の粘着剤組成物溶液を製造した。各溶液を観察して相溶性を測定した。相溶性は、溶液が透明の場合は“Good”、濁りがある場合は“Poor”とした。
【0035】
【表2】

【0036】
得られた粘着剤組成物溶液を、ナイフコートによりシリコン面が凹凸処理された両面ポリエチレン処理剥離紙(住友3M社製SCW860)上に乾燥後の厚さが33μmになるように塗布した。その後、90℃で5分間加熱し、乾燥及び架橋した。その後、50μm白色塩ビフィルム(住友3M社製)とドライラミネートしてマーキングフィルムを得た。
前記剥離紙の凹凸処理されたシリコン面(シリコン処理面)は、粘着剤層の接着面に形成されるべき溝部に対応する複数の突条が、互いに交差する様に、碁盤目を描く線に沿って連続して配置された構造を有していた。その突条の高さは11μm、突条の幅は20μm、隣接する突条間の最大距離(突条の底面間の距離)は0.2mmであった。また、突条に囲まれた凹部の垂直断面形状は略台形であり、これに対応して粘着剤層の接着層の凸部の形状は、垂直断面形状が略台形であった。
前記シリコン処理面の表面粗さを表面粗さ計(Toyo Seimitsu製 Handysurf E−35A)で測定した。Cut−off値は0.8mm、測定長さは4mmであった。平均表面粗さRaは2.2μmであった。
実施例6及び7の粘着剤組成は、実施例1と同様である。
実施例6ではサンエー化研社製RHC11T(シリコン処理両面ポリエチレンラミネート剥離紙)を使用した。Raは1.1μmであった。
実施例7では住友3M社製JINT106(シリコン処理両面クレーコート剥離紙)を使用した。Raは0.9μmであった。
比較例5のみ、表面に凹凸のないシリコン処理PET剥離紙を使用した。Raは0.06μmであった。
得られた粘着フィルムをについて、接着力、接触面積率、及び初期タック・貼り剥し作業性を測定し、結果を表3に示した。各測定方法は次のとおりである。
【0037】
接着力
粘着フィルムを長さ150mm×幅25mmに切断し試験片とした。20℃及び5℃の環境下で試験片をパルテック社製メラミン焼き付け塗装板に貼り付けた。貼り付けはJIS Z 0237 8.2.3に従った。同温度下で5分間放置後に180°剥離強度をテンシロンで測定した。
【0038】
接触面積率
76mm(縦)×26mm(横)×1mm(厚)のスライドガラス(マツナミガラス工業(株)製、MICRO SLIDE GLASS 白縁磨No.1、平坦面のRaは、約0.001μm)の平坦面に、剥離紙を除去した粘着フィルム(幅25mm×長さ70mm)の粘着剤面を貼り合わせ、約45mm幅の2kgのロ−ラ−で長さ方向に3往復し圧着したものを試験片とした。
フィルムが貼り付けられていない側のガラス板に白色光を照らし、偏向板を通して観察すると、粘着剤とガラス表面が接触している領域(接触領域)は黒っぽく見え、非接触領域は白っぽく見える。これを光学顕微鏡(協和光学製EMP−ST)で観察し、CCDカメラ(NEC製TI−32XA)を通して画像処理装置(日本アビオニクス製Excel−II)に取り込み、接触領域の面積と観察視野全体の面積の比を百分率で表して「面積接触率」とした。観察視野の面積は約1cmであった。25℃環境下で試験片を作製し、同温度下で5分間及び24時間放置後に接触面積率を測定した。
【0039】
初期タック・貼り剥し作業性
長さ150mm×幅70mmに粘着フィルムを切断し試験片とした。23℃の環境下で試験片をパルテック社製メラミン焼き付け塗装板にスキージで貼り付けた。貼り付け直後にフィルムを高速で引き剥がし剥離力を官能で評価した。フィルム変形なく容易に剥離できた場合は“Good”、タックは強いがフィルム変形なく剥離できた場合は“Fair”、タックが強く剥離時にフィルムが変形した場合は“Poor”と判断した。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が80万未満で、ガラス転移温度が−100℃〜−30℃のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー(1)、及び
重量平均分子量が3万〜10万で、ガラス転移温度が20℃〜90℃のアミノ基含有(メタ)アクリル系非粘着ポリマー(2)を含有し、ポリマー(1)100質量部に対し、ポリマー(2)を1質量部以上20質量部未満含む粘着剤組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー(1)の重量平均分子量が10万〜80万である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー(1)のガラス転移温度が−80℃〜−30℃である請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリマー(1)100質量部に対し、ポリマー(2)を1質量部以上10質量部未満含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
さらに架橋剤を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
ベースフィルム層と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤からなる粘着剤層とを有し、前記粘着剤層の表面が凹凸を有するマーキングフィルム。
【請求項7】
さらに、表面に凹凸を有する剥離紙を、前記粘着剤層の表面に積層してなる請求項6に記載のマーキングフィルム。
【請求項8】
前記粘着剤表面の凹凸が、前記剥離紙により施された凹凸である請求項6または7に記載のマーキングフィルム。

【公開番号】特開2009−35602(P2009−35602A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199630(P2007−199630)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】