説明

別部品のエアデフレクタを備える空気分配モジュール

【課題】HVACユニットにおける空気の混合および制御の両方において、より単純でより信頼できる機構を提供する。
【解決手段】HVACユニットのハウジングの下部に配置したデフレクタ手段を利用した熱上昇の低減、およびリブを用いた気流の配向による気流の混合を行わせる。このHVACユニットには、パッケージング容積を縮小する別部品のデフレクタ手段が用いられ、このデフレクタ手段は、HVACユニットの分配領域に気流を配向し、かつ分配領域に気流が達する前に、不所望の水分を除去する排水部を画定している。これにより、HVACユニットは、大きなHVACユニットと同様の機能を果たすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の冷暖房または空調システム(HVAC)における空気の流れの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、換気、暖房、または空調システムにおける換気、または空気の流れの制御の分野に関する。本発明は、詳しく言うと、HVACハウジング内の別部品であるエアデフレクタによって、空気の流れの向きを定めるようになっている装置および方法に関する。
【0003】
自動車用換気システムまたは汎用換気システムでは、HVACユニット内に空気を導入して、各空気通路に流す前に、所望の領域に、適切な量および温度の空気を送ることが必要である。空気は、選択した設計条件下で、所望の領域に向かって流れるように、ドア、例えば混合ドアなどの配向手段によって案内されるようになっている。
【0004】
例えば、ある設計では、加熱空気または冷却空気は、エバポレータまたはヒータコアを介して、分配領域、すなわち一定温度のゾーンへ送られ、最終的に、自動車の運転席、乗客席、または他の領域などの適当な領域へ分配される。
【0005】
現代の自動車における換気、暖房、または空調システムは、車内全体の空調を行うことを目的としている。このシステムは、外気、冷却空気、および加熱空気の適当な混合空気を、車内に供給して所望の温度を維持する。
【0006】
このような従来のシステムでは、外気または車内に選択的に連結できる空気ダクト、空気を送る送風機、および空気を冷却または加熱するために各ダクト内に配置されたエバポレータユニット、およびヒータユニットを有している。エバポレータユニットから出る冷空気は、車内の様々な空気出口に供給されるか、または冷空気の一部を熱交換器(ヒータ)に通して、このヒータから出る熱空気を冷空気と混合して、空気の温度調節を行った後、車内に供給される。HVACを通る冷空気または熱空気の配向は、一連のいわゆる「混合ドア」で制御することができる。
【0007】
1999年11月23日に発行されたシュワルツ(Schwarz)による米国特許第5,988,263号の明細書には、第1の空気の流れのための第1の導管、第2の空気の流れのための第2の導管、第1の空気の流れと第2の空気の流れを合流領域で合流させるための第1の導管と第2の導管との間の開口、および合流した空気の流れのための共通空気通路を有する自動車用空調システムのための空気混合装置が開示されている。
【0008】
この空気混合装置は、第1の空気の流れを制御するための第1の導管に配置されており、混合領域内に開口した空気入口領域および空気出口領域を有する。またこの空気混合装置は、入口領域の空気の流れを、混合領域に開口した複数の開口における複数の空気の流れに分割するための、空気入口領域と空気出口領域との間に配置された複数の空気通路を有する。
【0009】
従来、多くのHVACシステムが考案されている。従来のHVACシステムは、加熱された空気、および冷却された空気を、自動車の室内の様々な領域に送るために、複数の混合ドアおよびモードドアを必要としている。
【0010】
いずれのHVACシステムも、1つまたは2つの部品に成形されたハウジングを有する。ハウジングは、それと一体成形されるか、またはハウジングの壁部の一部である空気を配向するための構成、すなわち、混合機能を制御するための複数のドア、レバー、およびリンクを備えている。したがって、このようなシステムには、大きなハウジング空間が必要である。
【0011】
従来では、ハウジング内に成形されたデフレクタを備えるか、または備えていない多数のデザインが知られている。しかし、デフレクタをハウジング内に直接成形するには、HVACを備えるために、自動車自体により大きな空間が必要となる。
【0012】
空間に制限がある場合、大きなユニットの構造を備えた成形可能なハウジングが必要であり、例えば、HVACハウジング全体に対して、小さなパッケージング領域で機能できるある種の空気配向装置が必要である。
【0013】
本発明は、HVACハウジングと一体成形するのではなく、別個に成形するのが好ましい別個のデフレクタ部品を用意し、後にHVAC内に配置することにより、従来よりも小さい空間内に収まる高機能の空調システムを提供するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、HVACユニットにおける空気の混合および制御の両方において、より単純で、より信頼できる機構を提供することを目的とする。本発明の目的はまた、多数のドアの必要性、空気の配向の必要性、およびHVACユニットから出る水の排水などのHVACユニットにおける空間すなわちパッケージングの制限によって生じる問題を解消することにある。
【0015】
本発明は、HVACユニット内の空気の混合または分配の前のドアを、好ましくは1つの混合ドア(より好ましくは、混合バレルドア)に削減した、別部品のデフレクタを有するHVACユニットを備えるHVACシステムを提供することにより、適当な空気の混合に必要な部品数を削減し、必要な空間を単純化および縮小し、かつこのシステムの全体のコストを低減させることを可能とすると同時に、エバポレータからヒータコアに吐出する水、およびデフレクタ手段の両側からの所望しない水の排出の影響を効果的に最小限にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、自動車の暖房、換気、または空調システムのための新規な空気分配モジュールを提供するもので、これにより、上記した要望が満たされる。
【0017】
本発明の空気分配モジュールは、小さなHVACユニットの空間内で、空気の流れを混合するとともに、自動車用にHVACユニット内で空気を配向する。
【0018】
空気分配モジュールは、好ましくは、少なくとも1つの熱交換器を備え、より好ましくは、少なくとも1つのエバポレータ手段、好ましくは、ヒータ手段、さらに好ましくは、エバポレータとヒータコアなどを備えている。
【0019】
本発明による自動車の暖房、換気、または空調システムのための空気分配モジュールは、HVACハウジング、ヒータ手段、エバポレータ手段、およびHVACハウジングとは別個のデフレクタ手段を有している。
【0020】
デフレクタ手段および別部品のデフレクタ手段は、HVACユニットのハウジングと一体的に成形されるのでも、このハウジングと共に成形されるのでもなく、別部品として、別個に成形されるか、あるいは別の方法で形成され、HVACハウジング内に、別個にまたは別のステップで配置されるデフレクタ手段である。
【0021】
本発明の好適な実施形態では、ハウジングの内部に、空気を混合するための、好ましくは混合ドアである少なくとも1つのドア、別個のエアデフレクタ、および少なくとも1つのリブまたは複数のリブを有している。
【0022】
より好ましくは、ハウジングは、少なくとも2つの部分からなり、ヒータ手段は、ヒータコアであり、エバポレータ手段は、エバポレータコアであり、ドアは、ヒータコアおよびエバポレータコアの下流側に配置された混合バレルドアであり、デフレクタ手段は、HVACユニットから出る水、すなわち凝縮液を排出するために、可能な限り、ハウジングのフロア、すなわちベースに近接して配置された排水手段を備えている。
【0023】
本発明は、配向のための構造が、従来の成形ハウジングの一部ではなく、別部品であるため、ハウジングの空間が小さいシステムに用いることができる。成形後に、デフレクタ手段をHVACハウジングの内部に配置することにより、デフレクタ手段、具体的には、好ましくは、2つの側面を備え、このいずれかの側面に、2つの排水手段を備える別個に成形された手段が、空気の配向機能および水の排出機能の両方を果たすと共に、これらの機能を果たすために、通常は必要となる部品数を減らすことができる。
【0024】
具体的には、HVACハウジングの成形後に、別部品としてのデフレクタ手段を配置することにより、パッケージング空間の条件は緩和され、デフレクタ手段を位置決めできるとともに、デフレクタ手段のエバポレータ側、またはヒータコア側の空気から、水分を分離すなわち除去することができる。
【0025】
このような別部品のデフレクタ手段を用いることにより、容易に製造可能な部品となり、HVACユニットにおけるドアの数を削減することができ、かつHVACユニットのための排水路を画定するという利点が得られる。
【0026】
本発明の好適な実施形態では、エバポレータとヒータコアとの間の混合ドアを省いて、分配領域の部分に、唯1つの混合バレルドアを配置することにより、混合機能を制御するためのレバー、およびリンクを配置する必要がなくなっている。
【0027】
本発明のある実施形態では、ハウジング自体とは別個に形成されたデフレクタ手段は、HVACユニットのハウジング内に配置され、このモジュールのエバポレータとヒータコアとの間に位置している。ハウジングおよびデフレクタ手段の両方は、プラスチック、樹脂、またはプラスチックや樹脂のような成形可能な材料から形成されるのが好ましい。好ましくは、ハウジングまたはデフレクタ手段は、モールド成形される。より好ましくは、ハウジングとデフレクタ手段の両方が、モールド成形される。
【0028】
本発明の好適な実施形態では、エバポレータとヒータコアとの間に、デフレクタ手段を配置することにより、分配領域の下流側の領域のエバポレータと熱交換器との間に、混合ドアなどの別のドアを配置する必要がなくなっている。
【0029】
本発明の好適な実施形態では、デフレクタ手段は、分配領域の上流側に位置している。また、好適な実施形態では、混合ドア、具体的にはバレル形の混合バレルドアが、デフレクタ手段の下流側のヒータコアとエバポレータとの間に配置されている。最も好ましくは、混合ドアは、エバポレータ、およびヒータコアの下流側、そして分配領域の上流側に配置されている。
【0030】
最も好ましくは、エバポレータおよびヒータコアの下流側で、かつ分配領域の上流側に位置するように、1つのドアは、エバポレータとヒータコアとの接合部に配置される。この1つのドアは、一端の位置では、エバポレータのみを通過した気流における空気(冷空気)が分配領域に流入し、他端の位置では、エバポレータを通過した気流における空気が、全くまたは殆ど分配領域に流入しないように動作する。
【0031】
同様に、ドアの位置により、ヒートコアを通過する空気に対して、同様の効果が得られる。すなわち、一端の位置では、ヒートコアを通過した気流における空気(熱空気)が分配領域に流入し、他端の位置では、熱交換器を通過した気流における空気が、全くまたは殆ど分配領域に流入しない。中間位置では、様々な割合の冷空気と熱空気を得ることができる。
【0032】
好適な動作モードでは、混合ドア、好ましくは、混合バレルドアは、ヒートコアおよびエバポレータの下流側に位置し、ヒートコアからの熱空気(または、ヒートコアのすぐ下流の空気(暖空気))の空気通路と、エバポレータからの冷空気との間で移動することができる。ドアの軸は、ドアによって閉じられる通路の下流側とすることがある。
【0033】
HVACユニットのハウジングは、本発明の好適な実施形態では、2つまたは3つの部品から形成されている。好適な実施形態では、HVACユニットは、組み立てられると、少なくとも、推進装置の後続部、すなわち送風機吹出し部を有する送風機、または空気推進手段のための領域(送風機部)と、熱交換器(冷却要素または加熱要素)が配置されている領域(下部)とを備えている。
【0034】
所望の温度または量の空気が、換気システムの出口、すなわちダクトに分配される前に通過するかまたは滞留する(分配領域を形成する上部内壁)別の部分を、「上部」と呼ぶこともある。
【0035】
本発明の好適な実施形態では、ハウジングの下側部分には、空気が流れるハウジングの内部領域が設けられている。エバポレータ手段とヒータ手段との間に、様々な混合ドアの代わりに、別部品のデフレクタ手段を用いることにより、設計によっては、熱上昇、すなわち、HVACユニット内における熱ゾーンまたは暖ゾーンから、冷ゾーンへの二次的な逆循環すなわち逆流が大きくなる。
【0036】
上記したように、空気または空気の流れは、空気が特定のタイプの熱交換器を通過したか否かによって、冷空気または熱空気となる。
【0037】
本発明のより好適な実施形態では、ハウジングの内部領域または壁部は、熱空気が存在するか、または熱空気が流れる部分を熱ゾーン、エバポレータ手段からの冷空気が存在するか、または冷空気が流れる部分を冷ゾーン、デフレクタ手段とヒータ手段との間の空気が存在する部分を暖ゾーンと定義する。
【0038】
熱ゾーン、好ましくは、熱ゾーンおよび暖ゾーンは、ハウジングの内壁から延出する1または複数の突出部、すなわちリブを有する。1または複数の突出部すなわちリブは、ハウジング壁の熱ゾーンに成形するのがより好ましい。リブにより、熱空気が混合ドアに向かって下流側に配向され、熱空気がヒートコアを通過して、下側ハウジングの冷ゾーンに逆流する著しい「再循環」すなわち「再配向」が起こらず、暖ゾーンまたは冷ゾーンでの熱上昇が防止される。熱ゾーンにおける1または複数のリブは、ヒータ手段の下流側に配置されている。
【0039】
好適な実施形態では、1または複数のリブは、熱ゾーンの通常の空気の流れに整合している。このような突出部、すなわちリブを配置することにより、混合ドアに到達する適当な温度の熱空気が維持されるため、下側ハウジングの熱ゾーンまたは冷ゾーンからの空気が通過した後に、分配領域で、適当な温度の空気が生成される。
【0040】
本発明の好適な実施形態では、デフレクタ手段は、エバポレータの下流側で、このデフレクタ手段の上流側の下側ハウジングの領域、いわゆる「冷ゾーン」からの冷空気を配向できる形状を有する。
【0041】
デフレクタ手段は、好ましくは、プラスチックまたは樹脂、またはプラスチックや樹脂のような材料から成形され、少なくとも2つの別個の成形面を有するように、折り畳み、折り曲げ、または成形された別部品である。少なくとも2つの面を備えるデフレクタ手段は、HVACユニットの下側ハウジングに適切に配置されると、一方の面がエバポレータに面し、他方の面がヒータコアに面するようにするのが好ましい。
【0042】
基本的に平滑な外面を有するデフレクタ手段であるのが好ましい。基本的に平滑な外面は、エバポレータに面しているデフレクタ手段の側にあるのが好ましい。冷領域から分配領域に向かって流れる空気を最大にする、少なくとも1つの成形面を備えたデフレクタ手段であるのが好ましい。また、空気を分配領域に向かって配向すると同時に、エバポレータを通過した空気によって生じる全ての凝縮液すなわち水をHVACユニットの下側ハウジングの底部、すなわち排水手段に向かって排出する少なくとも1つの成形面を有するデフレクタ手段であるのが好ましい。
【0043】
上記したように、本発明の好適な実施形態では、デフレクタ手段は、これらの表面に加えて、HVACユニットから、最終的に水を排出する領域、すなわちベース、すなわちHVACハウジングのフロアよりも上に、デフレクタ手段を保持するための延長部、すなわちアームを有している。
【0044】
好適な実施形態では、デフレクタ手段のアームはまた、熱交換器、特にエバポレータをHVACユニットのベース、すなわちフロアから離隔させるための配置および支持領域となっている。
【0045】
少なくとも1つの成形された面を備えるデフレクタ手段は、空気または空気の流れを妨げることなく、冷ゾーン、熱ゾーン、および暖ゾーンに適当に空気を配向し、最終的に分配領域に案内する。
【0046】
デフレクタ手段は、過度に妨げられるのを防止するために(すなわち、分配領域に到達する空気が不十分、すなわち不適切なレベルにならいようにするため)、このデフレクタ手段を通る空気、または配向される空気が、通路により不適当な程度にまで妨げられないように配置されている。
【0047】
本発明の好適な実施形態では、デフレクタ手段が、折り曲げ、折り畳み、または成形された一部品の場合、デフレクタ手段の最も低い点から屈曲した点までの高さは、エバポレータの高さの1/2未満、または下側ハウジングの高さの1/3未満であり、かつヒートコアなどの加熱手段の高さの1/2未満である。
【0048】
デフレクタ手段の実際の高さ、および幅は、様々にすることができるが、配置されると、デフレクタ手段は、その最高点が、エバポレータの高さの1/2よりも低い位置に面し、エバポレータの上から1/3と、デフレクタ手段の最高点が17度の角度を成している。例えば、例示的なエバポレータとデフレクタ手段は、次に示すように、θ=17°である。
【表1】

【0049】
本発明のより好適な実施形態では、デフレクタ手段は、エバポレータおよびヒータコアの両方に面する位置に配置されている。エバポレータを通過する空気、特にエバポレータ表面からの空気は、湿気すなわち水分を含む場合が多いため、このような空気は、下側ハウジングを通過する際、特に、エバポレータを通過した後、空調システムをより効率的に機能させるために、HVACユニットから排出すべき湿気すなわち水分が除去される。
【0050】
本発明の好適な実施形態では、デフレクタ手段を、別部品のエアデフレクタとしているため、重力によって決まるエバポレータおよびヒータコアの両方の下側ハウジングに安定して静止させるための手段と、冷空気の湿気、すなわち水分をHVACユニットから排出するための手段とを備えている。
【0051】
本発明の、より好適な実施形態では、排水手段を備えるデフレクタ手段が提供される。この排水手段は、デフレクタ手段を通過する空気から、湿気すなわち水分を分離する手段である。
【0052】
排出手段は、様々な形態とすることができる。例えば、少なくとも1つの孔、カットアウト、スロット、またはチューブなどの様々な構造とし、水が、デフレクタ手段の一側から、HVACユニットの外部に向かって、このデフレクタ手段を通過し、最終的に、HVACハウジングユニットの水の最終排水路に流れるようにすることができる。
【0053】
好ましくは、排水を最大にするために、少なくとも1つの孔、カットアウト、スロット、チューブ、およびスリットなどは、デフレクタ手段の少なくとも1つの縁、底部、または側面、より好ましくは、デフレクタ手段の少なくとも1つのアーム、すなわち延長部の上または縁、さらに好ましくは、デフレクタ手段の2つのアームの上、最も好ましくは、デフレクタ手段の底部、すなわち最も低い部分、またはエアデフレクタ手段に近接した領域、およびデフレクタ手段のアーム部分に配置される。
【0054】
本発明では、排水路は、デフレクタ手段のエバポレータに面する側(上流側)、好ましくは、デフレクタ手段の上流側のアームに配置され、冷ゾーンの水分および湿気が、HVACユニットの下側ハウジングから排出されるようにする。
【0055】
少なくとも1つの孔、カットアウト、スロット、スリット、およびチューブなどは、好ましくは、下流(ヒータコア)側のデフレクタ手段の面、より好ましくは、HVACユニットの下側ハウジングのデフレクタ手段のアーム内、さらに好ましくは、HVACユニットの下側ハウジングのデフレクタ手段の下流側にも、湿気または水分が存在する可能性があるため、デフレクタ手段の下流側に配置される。
【0056】
デフレクタ手段のアームまたは側面の両方に排出手段を設けることにより、たとえ予想よりも多量の水分または湿気が来ても、このような水分は、上流側の冷ゾーンから、ヒータコアの近傍のデフレクタ手段の反対側の下流側の領域(暖ゾーン)に押されて排出されることとなる。
【0057】
本発明の好適な実施形態では、デフレクタ手段または下側ハウジングは、位置決め手段を備えている。この位置決め手段により、別部品のデフレクタ手段が、HVACユニットの下側ハウジング内により安定して配置され、デフレクタ手段の振動が軽減される。
【0058】
本発明より好適な実施形態では、位置決め手段は、デフレクタ手段またはハウジング壁のリブ、または他の隆起部分とデフレクタ手段、またはハウジング壁の相補的なスロットまたは凹部からなっているため、デフレクタ手段は、下側ハウジング内の適当な位置に案内され配置される。
【0059】
リブおよびスロットまたは他の同等の構造を備える位置決め手段を用いることにより、デフレクタ手段は、ハウジングに正確に配置され、デフレクタ手段の振動、または他の運動などの運動が、最小限になると同時に、デフレクタ手段は最適な位置に維持される。
【0060】
リブが壁部に位置し、スロットまたは他のガイドが、デフレクタ手段上に位置していると、より好ましい。
【0061】
上述したように、本発明の好適な実施形態によるデフレクタ手段は、1または複数の延長部、すなわちアームを有する。本発明のより好適な実施形態では、少なくとも1つのアームは、ハウジングの下側部分を含むエバポレータに向かって延びている。
【0062】
少なくとも1つのアームは、デフレクタ手段がハウジングに支持されるように、好ましくは、ハウジングの下側部分のフロアに接触して、このフロアに支持されている。より好適な実施形態では、少なくとも1つのアームは、デフレクタ手段がハウジング内に配置されると、エバポレータに面する側にくる、少なくとも1つのリブすなわち隆起した支持手段を有する。
【0063】
より好適な他の実施形態では、エバポレータが配置されるハウジングの下側部分のハウジングの内壁は、少なくとも1つのリブ、すなわち隆起した支持手段を備える支持構造を有している。
【0064】
ハウジングは、エバポレータまたはデフレクタ手段のアームが、下側ハウジング内に正確に配置された時に、これらを支持する複数の支持構造を備えているのが好ましい。このようにすると、アームにより、エバポレータをこのアームの僅かに上に支持することができ、かつデフレクタ手段が、エバポレータの重量によって正確な位置に維持され、デフレクタ手段の領域における振動が最小限になる。
【0065】
上記したように、本発明における内壁は、ヒータコアの上流の下側ハウジングの熱ゾーンに、突出部すなわちリブを有するのが好ましい。
【0066】
他の好適な実施形態では、突出部すなわちリブは、HVACユニットの下側ハウジングの他の領域、例えばヒータコアの上流側でデフレクタ手段の下流側のハウジングの壁部に配置される。
【0067】
他のより好適な実施形態では、熱上昇、すなわち暖ゾーンからその下流側の冷ゾーンへ流れる二次的な逆循環の防止に役立つように、1または複数の別のリブが、暖ゾーンに設けられている。ただし、場合によっては、エバポレータからデフレクタ手段の下流側の暖ゾーンに向かう不所望の水滴の吐出が、一定の条件下で起こる。この吐出により、デフレクタ手段の下流側の暖ゾーンに水が来る可能性があり、万一、二次的な逆循環、すなわち暖ゾーンから冷ゾーンへ向かう流れが生じると、水を含む空気が、暖ゾーンから冷ゾーンに流れ、最終的に分配領域に流れてしまうことになる。
【0068】
1または複数のリブを、あらゆる二次的な逆循環すなわち逆流の向き一致しないように配置することにより、熱上昇を減少させ、水を含む空気のヒートコア近傍から、下流側の領域への流れを低減させることができる。上記したようにリブすなわち突出部を壁部に配置することにより、空気または水または水蒸気を、それぞれの分配領域、または排水領域に案内する空気容積または凝縮領域を設けることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明の特徴および創意面は、図面を参照しながら行う以下の詳細な説明、および添付の特許請求の範囲を読めば、明らかになると思う。
【0070】
図1は、従来のHVACシステムを示している。HVACシステム、すなわちアセンブリ100の中心部は、上側ハウジング2および下側ハウジング8を有する。外気または再循環空気が、渦形ハウジング1内のHVAC送風機9によって、空調エバポレータ4内に案内される。空気がエバポレータ4から出ると、一部の空気は、下側ハウジング8を介して、ヒータコア6に案内される。
【0071】
図2は、従来技術を示し、送風機車輪12からの空気は、エバポレータ24に向かう空気通路22を生成する。冷空気が冷空気通路23に存在し、空気の冷却により凝縮液が生じ、この凝縮液は、凝縮液通路26から排水管15に案内される。混合ドア17が空気を配向し、様々な量の空気を、ヒータコア16を介して、熱空気通路14に送ることができる。
【0072】
冷空気は、通路21aに沿って分配領域25に流れ、加熱された空気は、別の混合ドア17aを通過してから通路21bに沿って分配領域25に流れる。空気は、モードドア20を介して、パネルなどの出口(不図示)、デフロスト領域、およびフロア領域に分配される。図示のように、冷ゾーン28および熱ゾーン29が設けられている。
【0073】
図3は、従来のHVACユニットを例示している。下側ハウジング311を有するハウジング303は、分配ドア301、302に加えて、複数のドア305、307、310、レバー304、308、およびリンク306、309を備えている。
【0074】
図4は、HVACユニットを例示している。車輪32を備える送風機モータ渦形ハウジング31が、空気の流れ、すなわち空気通路42を生成する。この空気通路42は、エバポレータ34を通過し、冷空気通路43となって冷ゾーン38内に至る。リブ45が、ハウジング内の冷ゾーンの領域に配置されている。デフレクタ手段47が、HVACユニットの下側ハウジング41内に、別部品として配置されている。
【0075】
下側ハウジングのベース、すなわちフロア41aも例示してある。デフレクタ手段の周りの4つの矢印は、凝縮液を排水領域44bおよび排水管44に案内する凝縮液通路P1、P2、P3、P4を表わしている。ヒータ36が、エバポレータ34およびデフレクタ手段47の下流側に配置されている。アーム47aは、排水手段51を有する。暖ゾーン40は、デフレクタ手段47とヒータ手段36との間に配置されている。
【0076】
熱空気通路49により、加熱された空気が、熱ゾーン39に案内される。リブ33が、ハウジング内の熱ゾーン39の領域に配置されている。ヒータ手段36およびエバポレータ34の下流側に、混合バレルドア37(2つの位置で示されている)が配置されている。この混合バレルドア37は、空気温度均一化領域(分配領域35)の上流側に位置している。ハウジング46の上部は、分配領域35の一部を構成している。モードドア30は、分配領域35の下流側の2つの位置で示されている。
【0077】
図5は、デフレクタ手段、具体的には、別個に成形されたデフレクタ手段47を示している。デフレクタ47は、ヒータコアに面する表面53、およびエバポレータに面する表面54を有する。アーム55が、エバポレータに面するデフレクタ47側の本体56から延びている。アーム55は、排水手段48も備えている。この排水手段48により、凝縮液が、ハウジング領域を通過して図4に示すような排水管44に流れる。図示のリブ59の支持構造の上に、エバポレータを配置することができる。
【0078】
位置決め、すなわちガイドスロット50が、図6に示されている相補的なリブ61、すなわちハウジングの隆起部を受容する位置決め手段の一部として形成されている。オプションのアーム57は、デフレクタ47のヒータコア側における凝縮液の排水手段51を画定している。
【0079】
図6は、位置決め手段として、位置決めスロット50およびリブ61を有するデフレクタ手段60を備えるHVACハウジング70を示している。デフレクタ手段60は、そのエバポレータ側にアーム71を、またそのヒータコア側にアーム72を有する。このアーム72は、別の排水路65を画定している。アーム71は、リブ62と、支持構造および排水手段64として、ハウジング上の別の支持リブ63を有する。ハウジング70は、エバポレータ(不図示)のための支持リブ63を有する。
【0080】
図7は、HVACユニットを例示している。送風機車輪32を備える送風機モータ渦形ハウジング31が、空気の流れ、すなわち空気通路42を生成する。この空気通路42は、エバポレータ34を通過し、冷空気通路43となって冷ゾーン38内に至る。デフレクタ手段47は、HVACユニットの下側ハウジング41内に別部品として配置されている。デフレクタ手段の下側の2つの矢印は、凝縮液を排水管44に案内する凝縮液通路P2、P4を示している。
【0081】
ヒータ手段36は、エバポレータ34およびデフレクタ手段47の下流側に配置されている。暖ゾーン40は、デフレクタ手段47とヒータ手段36との間に位置し、図示のように、ヒータ手段からの一部の逆流が冷ゾーンに流れる。ヒータ手段36とエバポレータ手段34の下流側に、混合バレルドア37が配置されている。混合バレルドア37は、図示のように、空気温度均一化領域(分配領域35)の上流側の十分に冷たい位置にある。
【0082】
図8は、HVACユニットを例示している。車輪32を備える送風機モータ渦形ハウジング31が、空気の流れ、すなわち空気通路42を生成する。この空気通路42は、エバポレータ34を通過し、冷空気通路43となって冷ゾーン38内に至る。デフレクタ手段47は、HVACユニットの下側ハウジング41内に、別部品として配置されている。デフレクタ手段の下側の2つの矢印は、凝縮液を排水管44に案内する凝縮液通路P2、P4を表している。
【0083】
ヒータ手段36は、エバポレータ34およびデフレクタ手段47の下流側に配置されている。暖ゾーン40は、デフレクタ手段47とヒータ手段36との間に位置している。排水手段47bを備えるデフレクタ手段アーム47aが、エバポレータ手段34の下側に位置している。排水領域44bは、デフレクタ手段47の下側に位置している。
【0084】
リブ33は、HVACユニットのハウジング48内を向いており、熱ゾーンから空気の一部が、ヒータ手段36に戻る循環を防止し、熱空気を混合バレルドア37に向かって案内する。冷空気通路46は、冷空気を分配領域35に案内する。混合バレルドア37は、図示のように、空気温度均一化領域(分配領域35)の上流側の十分に冷たい位置にある。
【0085】
本発明の好適な実施形態を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲内で、変更形態が可能であることを理解できると思う。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲および内容を判断するための根據となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】例示的な従来技術のHVACシステムの断面図である。
【図2】別の例示的な従来技術のHVACユニットの断面図である。
【図3】図1および図2に示す従来技術の機能に必要な様々なリンク、およびレバーの模式的な組立分解図である。
【図4】本発明の一態様による例示的なHVACユニットの断面図である。
【図5】本発明の一態様によるHVACユニットに用いるデフレクタ手段の斜視図である。
【図6】本発明の一態様によるHVACユニットのハウジング内のデフレクタ手段の斜視図である。
【図7】本発明の一態様による例示的なHVACユニットの断面図で、空気の流れを示している。
【図8】本発明の一態様による例示的なHVACユニットの断面図で、空気の流れ、および空気の流れを配向するリブを示している。
【符号の説明】
【0087】
1 送風機渦形ハウジング
2 上側ハウジング
4 エバポレータ
6 ヒータコア
8 下側ハウジング
9 送風機
12 送風機車輪
14 熱空気通路
15 配水管
16 ヒータコア
17、17a 混合ドア
20 モードドア
21a、21b 通路
22 空気通路
23 冷空気通路
24 エバポレータ
25 分配領域
26 凝縮液通路
28 冷ゾーン
29 熱ゾーン
30 モードドア
31 送風機モータ渦形ハウジング
32 送風機車輪
33 リブ
34 エバポレータ
35 分配領域
36 ヒータ手段
37 混合バレルドア
38 冷ゾーン
39 熱ゾーン
40 暖ゾーン
41 下側ハウジング
41a フロア
42 空気通路
43 冷空気通路
44 配水管
44b 排水領域
45 リブ
46 ハウジング
47 デフレクタ手段
47a アーム
48 排水手段
49 熱空気通路
50 位置決めスロット
51 排水手段
53、54 表面
55 アーム
56 本体
57 アーム
59、61、62 リブ
63 支持リブ
65 排水路
70 HVACハウジング
71 エバポレータ側のアーム
72 ヒータコア側のアーム
100 HVACユニット
301、302 分配ドア
303 ハウジング
304、308 レバー
305、307、310 ドア
306、309 リンク
311 下側ハウジング
P1、P2、P3、P4 凝縮液通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HVACユニットを有する、空調システムのための空気分配モジュールであって、
上側部品および下側部品を有するHVACハウジングと、
ヒータ手段と、
エバポレータ手段と、
別部品のデフレクタ手段と、
排水手段と、
前記デフレクタ手段の下側の排水領域とを備え、
前記デフレクタ手段が、前記ハウジングのフロア、すなわちベースに近接したハウジングの下側部品内に配置されており、そのため、水すなわち凝縮液が、前記排水手段によって、前記デフレクタ手段の下側の前記排水領域に流れ、最終的に、前記HVACユニットの外部に流れるようになっていることを特徴とする空気分配モジュール。
【請求項2】
ハウジングの下側部品は、1または複数のリブを有することを特徴とする、請求項1に記載の空気分配モジュール。
【請求項3】
1または複数のリブは、ハウジングの内壁に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の空気分配モジュール。
【請求項4】
ハウジングの下側部品の1または複数のリブは、デフレクタ手段の下流側の熱ゾーンに位置していることを特徴とする、請求項2に記載の空気分配モジュール。
【請求項5】
さらに、位置決め手段を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の空気分配モジュール。
【請求項6】
HVACユニットを有する、自動車用の暖房、換気、または空調システムのための空気分配モジュールであって、
前記HVACユニットは、空気推進装置すなわち送風機、後続の推進装置すなわち送風機吹出し部、および空気分配領域を有し、空気が、前記吹出し部の上流側から、前記空気分配領域に向かって下流側に流れるようになっており、かつ
ハウジングと、
エバポレータ手段と、
前記エバポレータ手段の下流側のヒータ手段と、
前記エバポレータ手段の下流側であって、前記ヒータ手段の上流側に配置されている別体のデフレクタ手段と、
前記ヒータ手段の下流側の熱ゾーンと、
前記デフレクタ手段の下流側の暖ゾーンと、
前記エバポレータ手段の下流側の冷ゾーンと、
前記デフレクタ手段における排水手段と、
前記デフレクタ手段の下側の排水領域と、
前記エバポレータ手段、前記デフレクタ手段、前記ヒータ手段の下流側に配置されている混合バレルドアとを備え、
前記混合バレルドアは、前記熱ゾーンおよび前記冷ゾーンから、空気を適切に前記空気分配領域に案内して、前記HVACユニットの外部に供給する前に、調節した空気の所望の温度および湿度特性を得るために、湿分を低減させた混合空気を供給するようになっていることを特徴とする空気分配モジュール。
【請求項7】
熱ゾーンまたは暖ゾーンの領域におけるハウジングの内壁は、リブを備えていることを特徴とする、請求項6に記載の空気分配モジュール。
【請求項8】
熱ゾーンの領域におけるハウジングの内壁は、リブを備えていることを特徴とする、請求項7に記載の空気分配モジュール。
【請求項9】
熱ゾーンまたは暖ゾーンの領域におけるハウジングの内壁は、リブを備えていることを特徴とする、請求項6に記載の空気分配モジュール。
【請求項10】
さらに、位置決め手段を備えていることを特徴とする、請求項7に記載の空気分配モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2008−514508(P2008−514508A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534820(P2007−534820)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/035290
【国際公開番号】WO2006/039549
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(507103260)ヴァレオ クライメイト コントロール コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】