説明

制動灯制御装置

【課題】急減速時における制動灯の短い周期での明滅中も、制動灯制御回路中の切り替えスイッチを故障診断し得るような回路構成を提案する。
【解決手段】急減速時に制動灯3を明滅させる場合、制動制御部7(ACC制御部7A)が制動灯制御部5を介し切り替えスイッチSL1-RLYをリレーコイル40への通電により接点S2側に接続されたOFF状態となし、電気接続路2を開成状態に保つ。同時に制動制御部7(ACC制御部7A)は、切り替えスイッチICC-RLYにESS駆動指令を発して、このICC-RLYをリレーコイル42への通電・非通電の周期的な繰り返しにより開閉させ、これと同じ周期で制動灯3を明滅させる。切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYの故障診断に際しては、切り替えスイッチSL1-RLYのON指令時間中に、切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYが実際に作動信号を発生しているか否かにより、作動信号が有れば正常、作動信号が無ければ故障と診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動装置が作動中であるのを後続車などに表示すべく制動灯を点灯制御するための制動灯制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
制動装置は、運転者がブレーキペダルを踏み込み操作するとき、ブレーキ液などの媒体を介し、ディスクブレーキユニットなどのブレーキユニットを作動させることで制動力を発生する。
かかる制動装置の作動による制動中は、これを安全のため後続車などに知らせる必要があり、保安基準ではこれを制動灯の点灯により表示することを義務づけている。
【0003】
そのため一般的には例えば特許文献1に記載のように、ブレーキペダルの踏み込み操作に連動し、その操作量が、制動力を発生する所定操作量以上になる時に閉じる制動灯スイッチを、電源バッテリおよび制動灯間の電気接続路中に挿置している。
かかる制動灯制御装置にあっては、ブレーキペダルの踏み込みによる制動中、これに連動する制動灯スイッチが閉じ、電源バッテリおよび制動灯間の電気接続路を導通状態にして閉成する。これにより制動灯がバッテリにより附勢され、その点灯により制動中であることを後続車などに知らせることができる。
【0004】
ところで昨今は、自車の加減速による先行車追従走行制御(ACC制御)や、左右制動力差による車両挙動制御VDC(Vehicle Dynamic Control)およびレーン逸脱防止制御LDP(Lane Departure Prevention)などのため、ブレーキペダルの操作に関わりなく、車輪の自動ブレーキによっても車輪制動力を個々に制御可能な制動制御装置付きの制動装置も用いられることが多くなりつつある。
そして、このような制動装置の場合、制動システムの構成によっては、先行車追従走行制御ACCや、車両挙動制御VDCおよびレーン逸脱防止制御LDPのためのブレーキ液圧がブレーキペダルの踏み込みストロークを惹起することがある。
【0005】
上記した従来の制動灯制御装置にあっては、これら先行車追従走行制御ACCや、車両挙動制御VDCおよびレーン逸脱防止制御LDPのためのブレーキ液圧でブレーキペダルの踏み込みストロークが発生した場合も、制動灯スイッチがこれに連動して閉じ、制動灯がバッテリにより点灯されることになってしまう。
【0006】
しかし、前者の先行車追従走行制御ACCは車体速度変化を生起させることを旨とするものであるが、後者の車両挙動制御VDCやレーン逸脱防止制御LDPは、車両を減速させるためのものではなく、車両の走行中において車体速度を変えることなく向きを制御するものであるため、後続車などに知らせる必要はないし、むしろ無用な制動灯の点灯であって後続車の運転者を戸惑わせることになるため知らせないようにすべきである。
【0007】
それにもかかわらず上記のごとく、これら車両挙動制御VDCやレーン逸脱防止制御LDPが行われるときに制動灯が点灯したのでは、車体速度低下を旨とする制動中でもないのに制動灯が点灯して、後続車の運転者を戸惑わせるという問題を生ずる。
【0008】
この問題解決のため従来、特許文献1に記載のように、車両挙動制御VDCやレーン逸脱防止制御LDPを司る制動制御装置の作動による左右輪選択制動制御に応答して作動する切り替えスイッチを、電源バッテリおよび制動灯間における電気接続路中に挿置し、
制動制御装置による車両挙動制御VDC中やレーン逸脱防止制御LDP中は、この切り替えスイッチにより電源バッテリおよび制動灯間の電気接続路を開成するようになすことで、ブレーキペダルの上記ストロークにより制動灯スイッチが閉じても制動灯が点灯されることのないよう対策する技術が提案されている。
【0009】
他方で制動制御装置が先行車追従走行制御ACCを行う場合は、先行車追従走行のために車体速度を変化させることから、ブレーキペダルの踏み込みストロークが発生しなくても(これに連動する制動灯スイッチが閉じなくても)、安全のため制動灯を車両減速時にバッテリで点灯させて、当該減速を後続車の運転者に知らせる必要がある。
そのため特許文献1には、制動制御装置が先行車追従走行制御ACCを行う時に閉じる別のスイッチを上記切り替えスイッチに対し並列接続して設け、これにより上記の要求を漢族させるようになす技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−264824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで昨今は、急減速を伴う制動時のように後続車の追突が懸念される状況下で、このことを後続車の運転者に知らせるため、制動灯を周期的なON,OFF切り替えにより明滅させるESS(Emergency Stoplamp System)機能を制動灯制御装置に持たせることが進みつつある。
【0012】
上記した型式の制動灯制御装置に当該ESS機能を持たせるに当たって、部品の追加なしに安価に目的を達成するためには、前記した切り替えスイッチを周期的にON,OFF切り替えさせ、これにより制動灯を明滅させるのがよい。
【0013】
ところで上記の切り替えスイッチは、制動制御装置による車両挙動制御VDCやレーン逸脱防止制御LDPに応答して開閉する必要があることから、大抵の場合、電磁式のリレースイッチで構成するのが普通である。
かかる電磁リレー式の切り替えスイッチは、開(OFF)状態または閉(ON)状態のままに固着されて、開閉切り替えが不能になる故障を生じやすく、この故障時は前記の対策が役に立たなくなってしまうし、上記のESS機能が得られなくなってしまう。
【0014】
従って、前記対策およびESS機能のために切り替えスイッチを用いる場合、当該切り替えスイッチの開固着故障や閉固着故障の診断が不可欠である。
しかし、前記した通りESS機能のために上記切り替えスイッチを周期的にON,OFF切り替えさせて制動灯を明滅させる場合、当該切り替えスイッチの周期的ON,OFF切り替え中(制動灯の明滅中)に当該切り替えスイッチの故障診断ができなくなることがある。
【0015】
その理由を以下に説明する。
上記ESS機能中における切り替えスイッチの故障診断に際しては、この切り替えスイッチの作動指令が出力されている間(ON指令時間およびOFF指令時間よりなる1周期のON指令時間中)に、切り替えスイッチが実際に作動信号を発生しているか否かを、つまり切り替えスイッチからの作動信号の有無をチェックし、作動信号が有れば正常、作動信号が無ければ故障と診断することになる。
【0016】
しかし、切り替えスイッチの作動(ON)指令が出力されてから、実際に切り替えスイッチが作動するまでの間には遅れ時間が存在するため、切り替えスイッチからの作動信号の有無をチェック可能な故障診断可能時間は、切り替えスイッチが上記遅れ時間後実際に作動した瞬時から、切り替えスイッチの作動(ON)指令が出力されなくなる作動(ON)指令消失瞬時までの時間であり、切り替えスイッチが作動(ON)指令に応答して実際に作動している時間よりも短い。
【0017】
ここで、切り替えスイッチの作動(ON)指令時間を長くすれば、その分だけ故障診断可能時間を長くすることができるが、作動(ON)指令時間を長くするということは、同じだけ切り替えスイッチの非作動(OFF)指令時間を長くすることとなって、ON指令時間およびOFF指令時間よりなる1周期(制動灯の明滅周期)が大幅に延長されることを意味する。
【0018】
しかし、後続車の追突が懸念される急制動時などで、このことを後続車の運転者に知らせる時に要求される制動灯の明滅周期は極短く、この要求が満足されるよう切り替えスイッチのON指令時間およびOFF指令時間よりなる1周期(制動灯の明滅周期)を決定すると、上記の故障診断可能時間が不足する。
【0019】
かように故障診断可能時間が不足すると、上記切り替えスイッチが実際は故障しているのに正常と誤診断したり、逆に切り替えスイッチが実際は故障していないのに故障と誤診断する虞があり、故障診断しない場合よりも悪影響が大きいことから、切り替えスイッチの周期的ON,OFF切り替えによる制動灯の明滅中は当該切り替えスイッチの故障診断を禁止せざるを得ない。
これが、切り替えスイッチの周期的ON,OFF切り替え中(制動灯の明滅中)に上記切り替えスイッチの故障診断ができなくなる理由である。
【0020】
本発明は、上記のような制動灯制御装置において、制動灯の明滅を上記切り替えスイッチの周期的ON,OFF切り替えに頼ることなく行い得るようにして、制動灯の明滅中も当該切り替えスイッチの故障診断が可能になるよう改善した制動灯制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的のため、本発明の制動灯制御装置は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる制動灯制御装置を説明するに、これは、
運転者が操作する制動操作子に応動して制動力を発生するほか、該制動操作子の操作に関わりなく、制動制御手段からの信号によっても制動力を制御可能な制動装置に用いる制動灯制御装置であって、
電源および制動灯間における電気接続路中に、上記制動操作子の動作に連動して開閉する制動灯スイッチと、上記制動制御手段による制動力制御に応答して開閉する切り替えスイッチとを挿置したものである。
【0022】
本発明の制動灯制御装置は、上記切り替えスイッチに対し並列接続して明滅用スイッチを設け、また、
上記制動灯の明滅要求時に、上記切り替えスイッチをOFF状態に保って、該明滅用スイッチを繰り返しON,OFF切り替えすることにより制動灯を明滅させる制動灯明滅制御手段を設けた構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0023】
かかる本発明の制動灯制御装置によれば、運転者が制動操作子を操作して行う制動時は、制動操作子の動作に連動して開閉する制動灯スイッチにより制動灯を点灯することができる。
【0024】
ところで、制動制御手段が制動操作子の操作に関わりなく行う制動力制御時は、これに応答して開閉する切り替えスイッチが、制動灯スイッチの開閉に関係なく制動灯の点灯を禁止する。
このため、上記の制動力制御に連れ動かされて制動操作子が動作し、これに応動して制動灯スイッチが閉じられた場合でも、制動灯は点灯されることがなく、上記制動力制御時に制動灯が無駄に点灯されるのを防止し得る。
【0025】
ところで上記切り替えスイッチに対し並列接続して明滅用スイッチを設け、制動灯の明滅要求時は、該切り替えスイッチをOFF状態に保って、明滅用スイッチを繰り返しON,OFF切り替えすることで制動灯を明滅させるため、
明滅用スイッチの繰り返しON,OFF切り替えによる制動灯の明滅中であっても、上記切り替えスイッチの開閉指令と、制動灯への電気信号とに基づき、当該切り替えスイッチの故障を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例になる制動灯制御装置を示す電気回路図である。
【図2】図1の電気回路中における制動制御部の機能別ブロック線図である。
【図3】図1の電気回路中における制動灯制御部の周辺部を示す機能別ブロック線図である。
【図4】図1の電気回路中における制動灯制御部の周辺部を更に詳細に示す電気回路図である。
【図5】図4におけるブレーキ操作判定手段が実行するブレーキ操作判定処理に関した制御プログラムのフローチャートである。
【図6】従来の制動灯制御装置を用いた場合における切り替えスイッチの故障診断動作を示すタイムチャートである。
【図7】図1に示す第1実施例の制動灯制御装置を用いた場合における切り替えスイッチの故障診断動作を示すタイムチャートである。
【図8】図7による切り替えスイッチの故障診断の概略を一覧表として示した論理説明図である。
【図9】本発明の第2実施例になる制動灯制御装置を示す、図1と同様な電気回路図である。
【図10】本発明の第3実施例になる制動灯制御装置を示す、図1と同様な電気回路図である。
【図11】図10に示す第3実施例の制動灯制御装置を用いた場合における切り替えスイッチ故障診断の概略を一覧表として示した論理説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明の第1実施例になる制動灯制御装置を示す電気回路図である。
図1において、1は、バッテリ等の電源で、この電源1に、第1電気接続路2を介して制動灯3を電気的に接続する。
【0028】
この第1電気接続路2は、その途中に、第1制動灯スイッチBNO-SWを介挿する。
この第1制動灯スイッチBNO-SWは、本発明における制動灯スイッチを構成し、常態で開放しているノーマルオープン型のスイッチとし、
運転者が制動に際して踏み込むブレーキペダル(制動操作子)4の踏み込み動作に連動して開状態から閉状態に作動するものとする。
更に詳述すると第1制動灯スイッチBNO-SWは、ブレーキペダル4のストローク量が、制動開始を示す予め決められた所定ストローク以上になる時、当該ストロークに連動して開状態から閉状態に作動し、第1電気接続路2を開成状態から閉成状態に切り替える。
【0029】
ところで第1制動灯スイッチBNO-SWは2接点S3,S4を有し、これら2接点S3,S4がそれぞれブレーキペダル4の動作に連動して同じ開閉動作を行う2接点スイッチにより構成する。
該第1制動灯スイッチBNO-SWの一方の接点S3が、一端においては第1切り替えスイッチ(切り替えスイッチ)SL1-RLYを介して電源1に接続され、他端においては制動灯3に接続されるよう、第1制動灯スイッチBNO-SWを第1電気接続路2の途中に介挿する。
第1制動灯スイッチBNO-SWの他方の接点S4は、一端を電源1に直接接続し、他端をアースすると共に、その途中に抵抗Rを介挿する。
【0030】
上記のごとく電源1から第1制動灯スイッチBNO-SWの接点S3に至る第1電気接続路2の部分に介挿した第1切り替えスイッチSL1-RLYは、常態で第1接点S1側に接続されて第1電気接続路2を閉成しているノーマルクローズ型のリレースイッチとする。
このため第1接点S1は、上記第1制動灯スイッチBNO-SWの接点S3に直列接続する。
第1切り替えスイッチSL1-RLYは、そのリレーコイル40の一端を制動灯制御部5に接続し、他端をイグニッションスイッチIGN経由で電源1に接続する。
【0031】
リレーコイル40への駆動指令(第1切り替えスイッチSL1-RLYのON指令)は、制動灯制御部5がこれを発するものとし、制動灯制御部5によるリレーコイル40への通電により第1切り替えスイッチSL1-RLYは、第1接点S1側に接続された第1電気接続路2を閉成状態から、第2接点S2側に接続された状態へ切り替わるものとする。
第1切り替えスイッチSL1-RLYは、第2接点S2側に接続された状態へ切り替わるとき、第1電気接続路2を開成して非導通状態となす。
従って、上記リレーコイル40へ駆動指令(切り替えスイッチON指令)を出力している状態が、1電気接続路2の遮断指令を供給している状態である。
【0032】
第1切り替えスイッチSL1-RLYの第2接点S2は、第4電気接続路6を介して第2切り替えスイッチSL2-RLYにおけるリレーコイル41の一端に接続し、リレーコイル41の他端をアースする。
【0033】
イグニッションスイッチIGNを経て電源1に接続した第2電気接続路8に、第2制動灯スイッチBNC-SWを介して制動制御部7(制動制御部7と、これにより制御されるVDC,LDP制御ユニットおよび前記したACC制御ユニットとで制動制御手段を構成する)を接続する。
第2制動灯スイッチBNC-SWは、常態で閉じているノーマルクローズ型のスイッチとし、通常は第2電気接続路8を閉成し、これを通電状態となす。
この第2制動灯スイッチBNC-SWは、第1制動灯スイッチBNO-SWと共に、ブレーキペダル4の踏み込みストロークに連動して作動し、ブレーキペダル4のストローク量が前記の所定ストローク以上になる時、閉状態から開状態に作動して第2電気接続路8を閉成状態から開成状態(非通電状態)に切り替えるものとする。
この第2制動灯スイッチBNC-SWの出力(非通電状態)は、先行車両追従走行制御解除信号となる。
【0034】
上記第2制動灯スイッチBNC-SWに対し並列となるよう第2電気接続路8に接続して第2切り替えスイッチSL2-RLYを設ける。
この第2切り替えスイッチSL2-RLYは、常態で開いているノーマルオープン型のスイッチとし、上記のごとく第1切り替えスイッチSL1-RLYの第2接点S2に接続されているリレーコイル41に通電することで閉状態に切り替わり、第2制動灯スイッチBNC-SWが開いていても、第2電気接続路8を閉成して通電状態となして、先行車両追従走行制御解除信号の出力を抑制する。
【0035】
制動灯3は第3電気接続路9によっても電源1に接続し、この第3電気接続路9中に第3切り替えスイッチICC-RLYを介挿する。
第3切り替えスイッチICC-RLYは、常態で開いているノーマルオープン型のスイッチとして通常は第3電気接続路9を開成し、イグニッションスイッチIGNを介して電源1に接続したリレーコイル42への駆動指令(通電)によって閉状態(導通状態)に切り替わるものとする。
なおリレーコイル42への駆動指令(通電)は、制動制御部7内におけるACC制御部7Aからの指令によって発する。
【0036】
本実施例においては制動制御部7を、図2に示すようにACC制御部7Aと、左右輪選択制動制御部7Bとで構成する。
ACC制御部7Aは、先行車両追従走行制御を行う制御部であり、設定した車間時間内に先行車両が存在しない場合は、設定された車速となるよう制動装置10(図1も参照)およびエンジン制御部11を介して車両の制駆動力制御を行い、設定した車間時間内に先行車が存在する場合は、先行車両に対し設定した車間時間となるよう制動装置10およびエンジン制御部11を介して車両の制駆動力制御を行うものである。
【0037】
一方で左右輪選択制動制御部7Bは、車両の減速を旨とせず(車速変化が起きないように)、車両の挙動修正を旨とする左右輪選択制動制御を行うもので、例えば、車両挙動制御VDC(Vehicle Dynamic Control)や、レーン逸脱防止制御LDP(Lane Departure Prevention)などのため、車両に所定のヨーモーメントを付与することを目的とし、制動装置10(図1も参照)により左右輪選択制動制御を行うものである。
【0038】
制動装置10は、ブレーキブースタおよびマスタシリンダが、ブレーキペダル4の作動(踏み込みストローク)に応動して発生させたマスタシリンダ液圧を、各車輪のブレーキ液圧回路により個々に調整してブレーキ液圧となし、これらブレーキ液圧を各輪ホイールシリンダへ供給することで所定の制動作用を行うものである。
【0039】
制動制御部7は、上記の先行車両追従走行制御や左右輪選択制動制御を行う場合、制動装置10のブレーキブースタを操作したり、制動装置10内における液圧制御弁およびポンプの操作により各輪のブレーキ液圧を制御することで、ブレーキペダル4の操作に関わりなく、各輪に所期の制動作用を惹起させる。
ところで、かかる制動制御部7(ACC制御部7Aおよび左右輪選択制動制御部7B)による各輪制動時に、ブレーキブースタ操作や、液圧制御弁およびポンプの操作に連動して、ブレーキペダル4が、運転者による操作とは関係のない踏み込みストロークを生ずることがある。
【0040】
かようにブレーキペダル4が、運転者による操作とは関係のない踏み込みストロークを生じた場合も、この踏み込みストロークに応動して制動灯3が点灯したのでは、
特に車両の減速を趣旨とせず、車両の挙動制御が目的である車両挙動制御VDC時やレーン逸脱防止制御LDP時に、車速低下を伴わないのに制動灯3が点灯して、後続車の運転者を戸惑わせる。
【0041】
この問題解決のため本実施例においては、制動灯制御装置を図1につき上述したごとくに構成すると共に、図2に示すように、ACC制御部7Aからの先行車両追従走行制御要求(ACC要求)信号、および左右輪選択制動制御部7Bからのヨーモーメント制御要求信号をそれぞれ、制動灯制御部5に向け出力するようになす。
【0042】
制動灯制御部5を中心とした、その周辺における制御系をブロック線図で示すと、図3,4のごとくに表される。
制動灯制御部5は、図4に明示した通りブレーキ操作判定手段5AおよびSTS-RLY駆動処理部5Bにより構成する。
【0043】
ブレーキ操作判定手段5Aの入力に接続したBP動作検出装置12は、ブレーキペダル4の動作を検出する装置であり、これにより検出したブレーキペダル4の動作を制動灯制御部5のBP動作検出装置12に出力する。
ここでBP動作検出装置12は、ブレーキペダル4のストローク自体を直接検出したり、マスタシリンダ液圧を検出したりすることで、ブレーキペダル4の動作を検出するものとする。
【0044】
ブレーキ操作判定手段5Aの他入力に接続した左右輪選択制動作動状態検出部13は、左右輪選択制動制御部7Bによる左右輪選択制動制御作動の有無を検出し、検出した左右輪選択制動制御作動信号をブレーキ操作判定手段5Aに出力する。
例えば、左右輪選択制動制御部7Bから制動装置10に左右輪選択制動のための作動信号が出力されていることを検知すると、左右輪選択制動制御部7Bによる左右輪選択制動制御の作動が有ると判定する。
【0045】
そしてブレーキ操作判定手段5Aは、左右輪選択制動作動状態検出部13からの左右輪選択制動制御作動信号およびBP動作検出装置12からの操作検出信号に基づき、運転者によるブレーキペダル4の操作の有無を検出する。
ブレーキ操作判定手段5Aの処理例を図5に示す。
ブレーキ操作判定手段5Aは、BP動作検出装置12からのBP操作検出信号があり、且つ作動状態検出部13からの左右輪選択制動制御作動信号が無い場合(ステップS300,S310)、運転者によるブレーキペダル4の操作が有ると判定して、BP操作判定信号を出力する(ステップS330)。
【0046】
またブレーキ操作判定手段5Aは、BP動作検出装置12からのBP操作検出信号があり、且つ作動状態検出部13からの左右輪選択制動制御作動信号がある場合(ステップS300,S310,S320)、BP操作検出信号と左右輪選択制動制御作動信号との対応関係が有るか、無いかに応じて運転者によるブレーキペダル4の操作が有るか否かを判定する。
つまり、BP操作検出信号と左右輪選択制動制御作動信号との対応関係が所定度合以上である場合、運転者によるブレーキペダル4の操作が有ると判定して、BP操作判定信号を出力し(ステップS330)、BP操作検出信号と左右輪選択制動制御作動信号との対応関係が所定度合未満である場合、運転者によるブレーキペダル4の操作が無いと判定して、操作判定信号を出力しない。
【0047】
次に、図4のSTS-RLY駆動処理部5Bによる処理を説明する。
STS-RLY駆動処理部5Bは、図4に示すように、実制動要求判定部5Baと、モーメント制動判定部5Bbと、信号出力処理部5Bcとを具備する。
実制動要求判定部5Baは、前記したブレーキ操作判定手段5Aからの操作判定信号を入力されるか、制動制御部7からのACC要求信号を入力されると、実制動信号を信号出力処理部5Bcへ出力する。
ACC要求信号は前記した通り、ACC制御部7Aによる追従制御用の制動制御が行われている場合に出力される。
【0048】
モーメント制動判定部5Bbは、左右輪選択制動制御部7Bからヨーモーメント制御要求信号が入力されると、リレー駆動信号を信号出力処理部5Bcへ出力する。
ヨーモーメント制御要求信号は前記した通り、左右輪選択制動制御部7Bによる左右輪選択制動制御が実施されている場合に出力される。
信号出力処理部5Bcは、ヨーモーメント制動判定部5Bbからリレー駆動信号が入力されると、そのリレー駆動信号を駆動指令として前記第1切り替えスイッチSL1-RLYのリレーコイル40に出力する。
但し、実制動要求判定部5Baから実制動信号が入力されると、上記リレー駆動信号の入力があっても、信号出力を停止する。
上記リレー駆動信号は、左右輪選択制動制御によって制動制御が行われている場合にのみ出力される。
【0049】
<第1実施例の作用>
「制動制御部7が作動していない場合」
運転者がブレーキペダル4を踏み込むと、第1制動灯スイッチBNO-SWが作動して当該第1制動灯スイッチBNO-SWはONとなる。
これにより第1電気接続路2が閉成されて、電源1に対し制動灯3が通電状態となり、当該制動灯3が点灯して後続車の運転者に車両の減速を知らせることができる。
上記第1制動灯スイッチBNO-SWのON作動に連動して、第2制動灯スイッチBNC-SWも作動され、当該第2制動灯スイッチBNC-SWがOFFとなる。
【0050】
このとき制動制御部7には、第1制動灯スイッチBNO-SWからブレーキペダル4の作動情報(スイッチON出力)が入力されると共に、第2制動灯スイッチBNC-SWから先行車両追従走行制御解除情報(スイッチOFF出力)が入力される。
これらの入力によって、少なくともACC制御部7Aによる先行車両追従走行制御のための制動制御が停止される。
また、第1制動灯スイッチBNO-SWからのブレーキペダル作動情報(スイッチON出力)および第2制動灯スイッチBNC-SWからの先行車両追従走行制御解除情報(スイッチOFF出力)が冗長化されていることにより信号の信頼性を高めることができる。
【0051】
「先行車両追従走行制御など減速を趣旨として制動制御部7が作動している場合」
この場合、ACC制御部7Aが第3切り替えスイッチICC-RLYのリレーコイル42に駆動電流を供給し、第3切り替えスイッチICC-RLYをONとなす。
これにより第3電気接続路9が閉成され、この第3電気接続路9が第1電気接続路2に対し並列接続されていることから、制動灯3は、第1制動灯スイッチBNO-SWの状態に関係なく、従ってブレーキペダル4の作動の有無に関係なく点灯され、後続車の運転者に車両の減速を知らせることができる。
【0052】
なお、第3電気接続路9は図1に示すごとく制動灯制御部5にも接続されており、上記第3切り替えスイッチICC-RLYのONにより制動灯3が点灯されたのを制動灯制御部5がモニタ可能である。
【0053】
「制動制御部7が左右輪選択制動制御(VDC,LDPなど)を行っている場合」
制動灯制御部5内におけるSTS-RLYリレースイッチは、下記3つの条件を全て満足するとき、第1切り替えスイッチSL1-RLYのリレーコイル40に対し駆動電流を供給する。
条件:
(1)運転者によるブレーキペダル4の操作が操作されていない。
(2)先行車両追従走行制御などの車両の減速を目的とする制動制御が行われていない。
(3)車両挙動制御(VDC)や車線逸脱防止制御(LDP)などのための左右輪選択制動制御が行われている。
【0054】
そして、第1切り替えスイッチSL1-RLYのリレーコイル40に対し駆動電流を供給すると、第1切り替えスイッチSL1-RLYは、第1接点S1側から第2接点S2側に切り替わり、第1電気接続路2による制動灯3への通電が遮断される。
従って、運転者によりブレーキペダル4が操作されていないのに、第1制動灯スイッチBNO-SWが制動制御部7による制動制御に応動して接続状態に切り替わることがあっても、制動灯3の点灯を防止することができる。
但し、制動制御部7内におけるACC制御部7Aが、先行車両追従走行制御などの減速を目的とする制動制御を行っている場合は、第3切り替えスイッチICC-RLYが前記した通りにONとなって制動灯3を点灯し、車両の減速を後続車の運転者に知らせることができる。
【0055】
この結果、左右輪選択制動制御のために例えばブレーキブースタが作動し、ブレーキペダル4がブレーキブースタに連動して作動(ストローク)したことで、第1制動灯スイッチBNO-SWがONすることがあっても、制動灯3が減速時でもないのに点灯してしまう不都合を回避することができる。
また、上述のように第1切り替えスイッチSL1-RLYが、第1接点S1側から第2接点S2側に切り替わるとき、第2切り替えスイッチSL2-RLYのリレーコイル41が通電状態となって、第2切り替えスイッチSL2-RLYがONされるため、
第2制動灯スイッチBNC-SWの作動状態(ブレーキペダル4のストローク)に関係なく、先行車両追従走行制御解除信号(BNC-SWのOFF信号)が制動制御部7に出力されることを防止することができる。
【0056】
このような機能が得られない場合、運転者がブレーキペダル4を操作していないのに、制動制御部7(ACC制御部7A)による先行車両追従走行制御に連動してブレーキペダル4がストロークし、これに応動して第2制動灯スイッチBNC-SWがOFFになった時、第2制動灯スイッチBNC-SWから制動制御部7へ先行車両追従走行制御解除信号(BNC-SWのOFF信号)が送信されて、制動制御部7(ACC制御部7A)による先行車両追従走行制御が停止され、この先行車両追従走行制御を遂行不能になる。
【0057】
しかし本実施例では上記のごとく、第2制動灯スイッチBNC-SWの作動状態(ブレーキペダル4のストローク)に関係なく、第2切り替えスイッチSL2-RLYがリレーコイル41の通電によりONされるため、
制動制御部7へ先行車両追従走行制御解除信号(BNC-SWのOFF信号)が送信されることがなくなり、制動制御部7(ACC制御部7A)による先行車両追従走行制御を継続的に遂行可能である。
【0058】
<制動灯のESS用明滅制御>
急減速を伴う制動時のように後続車の追突が懸念される状況下では、このことを後続車の運転者に知らせるため、制動灯3を周期的なON,OFF切り替えにより明滅させるのが安全上好ましい。
かかるESS(Emergency Stoplamp System)機能を本実施例においては、以下のようにして得ることとする。
【0059】
かかるESS(制動灯明滅)機能が必要な急減速時か否かを、図1,3における制動制御部7(ACC制御部7A)が、ブレーキペダル動作検出信号およびACC要求信号からチェックする。
制動制御部7(ACC制御部7A)は、ESS(制動灯明滅)機能が必要な急減速時であると判定するとき、図1,3に示すように制動灯制御部5へESS作動信号を供給して、制動灯制御部5に、第1切り替えスイッチSL1-RLYをリレーコイル40への通電により第2接点S2側に接続されたOFF状態となすよう指令する。
かくて第1電気接続路2は開成された状態に保たれ、これを経由して制動灯3が電源1により点灯されることはない。
【0060】
このとき制動制御部7(ACC制御部7A)は更に図3に示すごとく、第3切り替えスイッチICC-RLYにESS駆動指令を発して、この第3切り替えスイッチICC-RLYをリレーコイル42への通電・非通電の周期的な繰り返しにより開閉させる。
かかる第3切り替えスイッチICC-RLYの開閉により、第3電気接続路9が周期的にON,OFFされ、同じ周期で制動灯3を明滅させて後続車の運転者に急減速であることを知らせることができる。
【0061】
<切り替えスイッチSL1-RLYおよびSL2-RLYの故障診断>
ところで本実施例の場合もそうであるが、第1切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYは、制動制御部7(左右輪選択制動制御部7B)による前記した車両挙動制御VDCやレーン逸脱防止制御LDPに応答して開閉する必要があることから、電磁式のリレースイッチで構成するのが普通である。
かかる電磁リレー式の切り替えスイッチSL1-RLYおよびSL2-RLYは、開(OFF)状態または閉(ON)状態のままに固着されて、開閉切り替えが不能になる故障を生じやすく、この故障時は前記した所定の作用が得られなくなってしまう。
【0062】
従って、切り替えスイッチSL1-RLYおよびSL2-RLYの開固着故障や閉固着故障の診断が不可欠である。
しかし、前記したESS機能を得るに際し、本実施例と異なって第1切り替えスイッチSL1-RLYを周期的にON,OFF切り替えさせて制動灯3を明滅させる場合、当該第1切り替えスイッチSL1-RLYの周期的ON,OFF切り替え中(制動灯3の明滅中)に、第1切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYの故障診断ができなくなることがある。
【0063】
その理由を以下に説明する。
ESS機能中における第1切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYの故障診断に際しては、第1切り替えスイッチSL1-RLYの作動指令が出力されている間(ON指令時間およびOFF指令時間よりなる1周期のON指令時間中)に、第1切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYが実際に作動信号を発生しているか否かを、つまり第1切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYからの作動信号の有無をチェックし、作動信号が有れば正常、作動信号が無ければ故障と診断することになる。
【0064】
図6に基づき付言するに、この図は瞬時t1〜t4間においてESS作動要求が発せられ、この間に第1切り替えスイッチSL1-RLYのON,OFFにより制動灯3を明滅させる場合の動作タイムチャートである。
この場合、ESS作動要求期間t1〜t4において、第1切り替えスイッチSL1-RLYの作動指令は、瞬時t1から所定時間T1が経過する瞬時t2までの間「ON指令」となり、瞬時t2から所定時間T2が経過する瞬時t3までの間「OFF指令」となり、これらON指令時間T1およびOFF指令時間T2の和値を1周期とする、図6に示すような矩形波形となる。
【0065】
しかし、かかる第1切り替えスイッチSL1-RLYの作動指令に応答して実際に第1切り替えスイッチSL1-RLYがONするのは、「ON指令」開始瞬時t1からON遅れ時間T3(通常、40〜50ms程度)だけ遅れた時であり、また、実際に第1切り替えスイッチSL1-RLYがOFFするのは、「OFF指令」開始瞬時t2からOFF遅れ時間T4(通常、50〜60ms程度)だけ遅れた時である。
【0066】
そして第2切り替えスイッチSL2-RLYは、第1切り替えスイッチSL1-RLYに応動することから、ON,OFFタイミングが図6に示すごとく第1切り替えスイッチSL1-RLYよりも更に遅れる。
【0067】
そのため、第1切り替えスイッチSL1-RLYの作動指令が出力されている間(ON指令時間T1中)に第1切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYが実際にONして対応する作動信号を発生しているか否かをチェックして行う、これら切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYの故障診断が可能な時間はそれぞれ、
切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYが上記遅れ時間後実際にON作動した瞬時から、第1切り替えスイッチSL1-RLYのON指令が消失する瞬時t2までの時間T5(第1切り替えスイッチSL1-RLY),T6(第2切り替えスイッチSL2-RLY)であり、切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYがON指令に応答して実際に作動している時間よりも短い。
【0068】
ここで、第1切り替えスイッチSL1-RLYの作動(ON)指令時間を長くすれば、その分だけ故障診断可能時間T5, T6を長くすることができるが、作動(ON)指令時間を長くするということは、同じだけ第1切り替えスイッチSL1-RLYの非作動(OFF)指令時間を長くすることとなって、ON指令時間およびOFF指令時間よりなる1周期(制動灯3の明滅周期)が大幅に延長されることを意味する。
【0069】
しかし、後続車の追突が懸念される急制動時などで、このことを後続車の運転者に知らせる時に要求される制動灯3の明滅周期は極短く、この要求が満足されるよう第1切り替えスイッチSL1-RLYのON指令時間およびOFF指令時間よりなる1周期(制動灯3の明滅周期)を決定すると、上記の故障診断可能時間T5, T6が不足する。
【0070】
かように故障診断可能時間T5, T6が不足すると、切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYが実際は故障しているのに正常と誤診断したり、逆に切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYが実際は故障していないのに故障と誤診断する虞があり、故障診断しない場合よりも悪影響が大きいことから、第1切り替えスイッチSL1-RLYの周期的ON,OFF切り替えによる制動灯3の明滅中は切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYの故障診断を禁止せざるを得ない。
これが、第1切り替えスイッチSL1-RLYの周期的ON,OFF切り替えによる制動灯3の明滅中に切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYの故障診断ができなくなる理由である。
【0071】
しかし本実施例においては、第1切り替えスイッチSL1-RLYの周期的ON,OFF切り替えにより制動灯3を明滅させるのではなく、第1切り替えスイッチSL1-RLYをリレーコイル40への通電により第2接点S2側に接続された開(OFF)状態となして、第1電気接続路2を開成状態に保ち、第3切り替えスイッチICC-RLYをリレーコイル42への通電・非通電の周期的な繰り返しにより開閉させて(第3電気接続路9を周期的にON,OFFさせて)、制動灯3を明滅させるため、以下のようにして制動灯3の明滅中も切り替えスイッチSL1-RLY,SL2-RLYの故障診断が可能である。
【0072】
ESS(制動灯明滅)機能が必要な急減速時は前記した通り、かかるESS要求に呼応して図1,3におけるように制動制御部7(ACC制御部7A)が制動灯制御部5へESS作動信号を供給し、制動灯制御部5に対し図7に示すごとく、第1切り替えスイッチSL1-RLYをリレーコイル40の駆動により第2接点S2側に接続された状態(電路2を開状態)となすよう指令し、
同時に制動制御部7(ACC制御部7A)は更に図3に示すごとく、ESS要求に呼応して第3切り替えスイッチICC-RLYにESS駆動指令を発し、この第3切り替えスイッチICC-RLYを図7に示すように、リレーコイル42への通電・非通電の周期的な繰り返しにより開閉させる。
【0073】
上記した第1切り替えスイッチSL1-RLYの駆動指令(電路2の開指令)と、第3切り替えスイッチICC-RLYの周期的な開閉との組み合わせは、第1切り替えスイッチSL1-RLYが駆動指令に呼応して正常に第2接点S2側に切り替えし、電路2を開状態にしていれば、図1における制動制御部駆動信号E4が発生している場合において、制動灯駆動信号E3を図7に実線で示すごとく第3切り替えスイッチICC-RLYの上記した開閉と同じ周期でレベル変化させることにより、制動灯3を明滅させる。
【0074】
これに伴って認識BNO論理も同図に実線で示すごとく、実線図示の制動灯駆動信号E3と同じ波形でレベル変化し、かかる認識BNO論理のレベル変化をもって、
第1切り替えスイッチSL1-RLYが、駆動指令(電路2の開指令)に応答して正常に作動し、第2接点S2側に接続された状態であるのを判定することができる。
【0075】
ところで、第1切り替えスイッチSL1-RLYが、駆動指令(電路2の開指令)にもかかわらず正常に作動し得ず、第1接点S1側に接続されたON固着の故障状態である場合は、図1における制動制御部駆動信号E4が発生していることを条件に、制動灯駆動信号E3を図7に破線で示すごとく、第3切り替えスイッチICC-RLYの上記した開閉周期にも関わらず、電源電圧と同レベルに維持し、制動灯3を継続的に点灯させる。
【0076】
これに伴って認識BNO論理も同図に破線で示すごとく、破線図示の制動灯駆動信号E3と同様に一定レベルに保たれ、かかる認識BNO論理の一定レベルをもって、
第1切り替えスイッチSL1-RLYが、駆動指令(電路2の開指令)に応答した正常作動を行い得ず、第1接点S1側に接続されたままのON固着状態であると故障診断することができる。
【0077】
なお、第1切り替えスイッチSL1-RLYが駆動指令に呼応して正常に第2接点S2側に切り替えしているのを前記により診断した状態では、図1において第2切り替えスイッチSL2-RLYが本来ならリレーコイル41への通電により制動制御信号E5を出力する筈であることから、このとき制動制御信号E5が発生していない状態をもって、
第2切り替えスイッチSL2-RLYがOFF→ON切り替え不能なOFF固着の故障状態であるとの診断を行うことができる。
【0078】
そして図7に示すごとく、認識BNOのレベル変動周期が(ESS駆動指令周期±SL1-RLYのON,OFF遅れ差)の範囲外になるか否かの、ごく僅かな時間で上記の故障診断を行い得るため、
急減速を後続車の運転者に知らせるのに必要な短い制動灯明滅周期に設定した場合においても、第1切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYの故障診断を行うことができる。
また、認識BNOのレベル変動が有るか否かのみで第1切り替えスイッチSL1-RLYの故障診断を行うため、上記のような僅かな時間でも第1切り替えスイッチSL1-RLYおよび第2切り替えスイッチSL2-RLYの故障診断を正確に行うことができる。
【0079】
なお、本実施例における第1切り替えスイッチSL1-RLYのON固着検出方法の概要を、図8に一覧表として示した。
【0080】
<第2実施例>
図9は、本発明の第2実施例になる制動灯制御装置を示す電気回路図であり、図1におけると同様な部分には同一符号を付して示し、重複説明を避けた。
本実施例においては、第1制動灯スイッチBNO-SWの接点S4を電源1に接続するに際し、この接点S4を、図1のごとく電源1に直接接続する代わりに、第1切り替えスイッチSL1-RLYの第1接点S1を介して電源1に接続した。
【0081】
本実施例では、それ以外を前記した第1実施例と同様に構成するため、奏し得られる作用・効果も、第1実施例と同様である。
【0082】
<第3実施例>
図10は、本発明の第3実施例になる制動灯制御装置を示す電気回路図であり、図1におけると同様な部分には同一符号を付して示し、重複説明を避けた。
本実施例においては、図1の第1実施例から第2切り替えスイッチSL2-RLYを排除し、これを接続していた第1切り替えスイッチSL1-RLYの第2接点S2を除去し、第1切り替えスイッチSL1-RLYを、接点S1が常態で閉じられている常閉スイッチとしたものである。
【0083】
本実施例では、それ以外を前記した第1実施例と同様に構成するため、第2切り替えスイッチSL2-RLYに関わる動作が無くなる以外、奏し得られる作用・効果も、第1実施例と同様である。
【0084】
本実施例における第1切り替えスイッチSL1-RLYのON固着検出方法の概要を、図11に一覧表として示した。
【符号の説明】
【0085】
1 電源
2 第1電気接続路
3 制動灯
4 ブレーキペダル(制動操作子)
5 制動灯制御部
5A ブレーキ操作判定手段
5B STS-RLY駆動処理部
5Ba 実制動要求判定部
5Bb モーメント制動判定部
5Bc 信号出力処理部
7 制動制御部
7A ACC制御部
7B 左右輪選択制動制御部
8 第2電気接続路
9 第3電気接続路
10 制動装置
11 エンジン制御部
12 BP動作検出装置
13 左右輪選択制動作動状態検出部
BNC-SW 第1制動灯スイッチ(制動灯スイッチ)
BNO-SW 第2制動灯スイッチ
SL1-RLY 第1切り替えスイッチ(切り替えスイッチ)
SL2-RLY 第2切り替えスイッチ
ICC-RLY 第3切り替えスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が操作する制動操作子に応動して制動力を発生するほか、該制動操作子の操作に関わりなく、制動制御手段からの信号によっても制動力を制御可能な制動装置に用いる制動灯制御装置であって、
電源および制動灯間における電気接続路中に、前記制動操作子の動作に連動して開閉する制動灯スイッチと、前記制動制御手段による制動力制御に応答して開閉する切り替えスイッチとを挿置した制動灯制御装置において、
前記切り替えスイッチに対し並列接続した明滅用スイッチと、
前記制動灯の明滅要求時に、前記切り替えスイッチをOFF状態に保って、前記明滅用スイッチを繰り返しON,OFF切り替えすることにより、前記制動灯を明滅させる制動灯明滅制御手段と
を具備してなることを特徴とする制動灯制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制動灯制御装置において、
前記切り替えスイッチは、前記制動操作子の操作に関わりなく、前記制動制御手段からの信号によって行われる、車速変化を伴わない制動力制御中に、前記制動灯の点灯を防止すべくOFF状態にされるスイッチであることを特徴とする制動灯制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制動灯制御装置において、
前記明滅用スイッチは、前記制動操作子の操作に関わりなく、前記制動制御手段からの信号によって行われる、車速変化を伴う制動力制御中に前記制動灯を点灯すべく、ON状態にされるスイッチを流用したものであることを特徴とする制動灯制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の制動灯制御装置において、
前記切り替えスイッチの開閉指令と、前記制動灯への電気信号とに基づき、前記切り替えスイッチの故障を診断する故障診断手段を設けたことを特徴とする制動灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−86611(P2013−86611A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227764(P2011−227764)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】