説明

制御回路、電磁弁、バルブセレクタ及び流体移送装置

【課題】 電磁弁を制御するための、回路サイズが従来よりも小さい制御回路等を提供する。
【解決手段】 制御回路は、電磁弁を制御するものであり、電磁弁を動作させるソレノイドと、コンデンサと、接続関係を切り替える切替手段と、接続関係の切り替えを制御する切替制御手段とを備える。ソレノイドとコンデンサと切替手段とは、順に接続される。切替制御手段は、ソレノイド、コンデンサ及び切替手段と並列に接続される。通電を行う電源は、ソレノイド、コンデンサ及び切替手段と並列に接続される。切替制御手段は、切替手段を制御して、電源、ソレノイド、コンデンサ及び切替手段を含む閉回路であって、ソレノイドに対する通電及びコンデンサへの蓄電を行う回路と、電源及び切替制御手段のいずれも含まずに、ソレノイド、コンデンサ及び切替手段を含む閉回路であって、コンデンサの放電によりソレノイドに対する通電を行う回路とを切り替えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御回路、電磁弁、バルブセレクタ及び流体移送装置に関し、特に、電磁弁を制御する制御回路等を用いた省発熱、省電力に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
電磁弁の発熱は、一般に望ましくない。そのため、従来、電磁弁の発熱低減・省電力が図られてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、図4及び図5に示す自己保持型電磁弁の制御装置41及び71が記載されている。制御装置41は、コイル43、43の励磁によって消磁後も開弁状態を保つようにした自己保持型電磁弁に関するものである。制御装置41は、電圧降下前にコンデンサ49に充電し、電圧検出回路51が電圧の降下を検出すると、コンデンサ49の電荷をコイル43、43に与えて自己保持型電磁弁を閉弁状態とするものである。制御装置71も、同様に、電圧降下前にコンデンサ79に充電し、電圧検出回路81が電圧の降下を検出すると、コンデンサ79の電荷をコイル73に与えて自己保持型電磁弁を閉弁状態とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−146273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の制御回路41及び71は、停電などの緊急時に、ガス燃料の供給/遮断を行う電磁弁を自動的に閉弁状態とすることを目的としている。回路サイズが大きくとも取り立てて課題とされることはない。そのため、特許文献1に開示された制御回路41及び71は、いずれも、複雑に構成されて回路サイズが大きいという問題がある。
【0006】
例えば、図4の制御回路41は、電磁弁の開弁制御及び閉弁制御のために複数のコイル43及び43を必要とする。さらに、駆動回路45は、複数のコイル43及び43を個別に制御するものである。そのため、制御回路41の回路サイズが大きくなってしまう。
【0007】
また、図5の制御回路71は、1つのコイル73を制御するために4つものトランジスタ75、75、75及び75を必要とする。さらに、これらのトランジスタを個別に制御するための駆動回路を必要とする。さらに、図5の制御回路71においては、検出回路81がトランジスタ75、75、75及び75を駆動させることとされている。そのため、検出回路81にはこれらのトランジスタのベース電流のレベルを増減する機能が必要となる。よって、制御回路71の回路サイズが大きくなってしまう。
【0008】
しかしながら、例えば、流体移送装置では、高価で極度に熱に弱い抗体液を移送する場合がある。このような流体移送装置は、流路の断面積が小さい。そのため、バルブセレクタのような小さな機器において、電磁弁を用いて液体の流路への流入及び流路からの流出を制御する場合、複雑な構成の回路は、省発熱及び省電力の観点から採用することはできない。
【0009】
このような流体移送装置における実用的な電磁弁をより適切な形で実現するためには、さらなる回路サイズの縮小が課題となっていた。出願人は、長年にわたり、最低限度の印加電圧で電磁弁の開閉等の動作を可能とする、省発熱・省電力の制御回路の開発を行ってきた。
【0010】
ゆえに、本願発明は、電磁弁を制御するための、回路サイズが従来よりも小さい制御回路等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、電磁弁を制御する制御回路であって、通電されることにより前記電磁弁を動作させるソレノイドと、前記通電の開始に伴って電荷を蓄えるコンデンサと、接続関係を切り替える切替手段と、前記切替手段による接続関係の切り替えを制御する切替制御手段とを備え、前記ソレノイドと前記コンデンサと前記切替手段とは、順に接続されており、前記切替制御手段は、前記ソレノイド、前記コンデンサ及び前記切替手段と並列に接続されており、前記通電を行う電源は、前記ソレノイド、前記コンデンサ及び前記切替手段と並列に接続されるものであり、前記切替制御手段は、前記切替手段を制御して、前記電源、前記ソレノイド、前記コンデンサ及び前記切替手段を含む閉回路であって、前記ソレノイドに対する前記通電及び前記コンデンサへの蓄電を行う回路である第1回路の形成と、前記電源及び前記切替制御手段のいずれも含まずに、前記ソレノイド、前記コンデンサ及び前記切替手段を含む閉回路であって、前記コンデンサの放電により前記ソレノイドに対する前記通電を行う回路である第2回路の形成とを切り替えさせる、制御回路である。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の制御回路であって、前記切替手段は、リレーであり、前記切替制御手段は、前記電源が電圧の印加を開始又は停止することにより、前記リレーを制御して前記第1回路と前記第2回路との接続を切り替えさせる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の制御回路であって、前記リレーは、第1接点、第2接点及び第3接点を有するものであり、前記第1接点は、前記コンデンサに接続され、前記第2接点は、前記ソレノイド及び前記切替制御手段に接続され、前記第3接点は、前記切替制御手段に接続されるものであり、前記コンデンサは、一方を前記第1接点に、他方を前記ソレノイドに接続されるものであり、前記ソレノイドは、一方を前記コンデンサに、他方を前記第2接点及び前記切替制御手段に接続されるものであり、前記切替制御手段は、一方を前記第2接点及び前記ソレノイドに、他方を前記第3接点に接続されるものであり、前記切替制御手段は、前記リレーを制御して、前記印加が開始されることにより、前記第1接点と前記第3接点を接続させて、前記第1回路を形成させ、前記印加が停止されることにより、前記第1接点と前記第2接点を接続させて前記第2回路を形成させる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の制御回路であって、前記ソレノイドは、少なくとも1つの前記電磁弁を動作させるために1つのみ存在し、前記切替手段は、1つ又は複数のトランジスタを有するトランジスタ部であり、前記切替制御手段は、前記トランジスタ部に制御信号を付与する制御信号付与手段であり、前記制御信号付与手段は、前記1つ又は複数のトランジスタのゲート電極への前記制御信号の付与により前記トランジスタ部を制御して、前記第1回路と前記第2回路との接続を切り替えさせる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の制御回路であって、前記トランジスタ部は、ゲート電極同士が接続された第1トランジスタ及び第2トランジスタを有しており、前記第1トランジスタのキャリアのタイプ及び前記第2トランジスタのキャリアのタイプは異なるものであり、前記第1トランジスタのソース電極と前記第2トランジスタのドレイン電極とが接続されており、又は、前記第1トランジスタのドレイン電極と前記第2トランジスタのソース電極とが接続されており、前記第1トランジスタと前記第2トランジスタのうち、前記第1回路には、前記第1トランジスタのみが含まれており、前記第2回路には、前記第2トランジスタのみが含まれており、前記制御信号付与手段は、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの接続された前記ゲート電極に接続されて、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの前記ゲート電極に同一の前記制御信号を付与する。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれかに記載の制御回路によって制御される電磁弁である。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項6記載の電磁弁により弁の開閉を行うバルブセレクタである。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項7記載のバルブセレクタを備える流体移送装置である。
【0019】
なお、切替制御手段は、電磁コイルによるものであってもよい。また、電磁弁は、通電されることにより開弁又は閉弁等の動作を行い、通電を停止しても弁の開閉状態を保持する、自己保持型の電磁弁であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本願各請求項に係る発明によれば、1つのソレノイドで電磁弁の開閉を制御できる。さらに、シンプルな構成の切替手段及び切替制御手段のみが、ソレノイドに流れる電流の向きを決定する手段として回路の構成上必要なものである。したがって、従来よりも小さいサイズの制御回路で電磁弁を制御することが可能となる。その結果、発熱を極力抑えることが可能となる。例えば、ごく少量の液体を移送する流体移送装置において、バルブセレクタのような小さな機器に自己保持型の電磁弁を用いることにより、例えば抗体液のような高価で極度に熱に弱い液体を少量移送する際に、液体に深刻なダメージを与えることなく移送することが可能となる。
【0021】
なお、特許文献1は、ガス燃料の供給/遮断を行う電磁弁に関するものである。そのため、本願発明とは、産業上の利用分野を異にし、目的を異にするものである。さらに、特許文献1に記載の回路は、例えば、ソレノイドの数が異なる、リレーを備えていない、トランジスタの数と配置が異なるなど、本願発明とは構成上も相違するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の実施の形態に係る制御回路の一例を示す回路図である。
【図2】図1の制御回路3において、(a)第1端子13及び第2端子13間の電圧V、(b)電磁リレー23の電磁コイル9にかかる電圧V、(c)第1ラインLを流れる電流I、(d)コンデンサ7にかかる電圧V、(e)ソレノイド5、コンデンサ7及びリレー9の閉回路が形成された場合に当該閉回路を流れる電流I、(f)ソレノイド5にかかる電圧Vの経時変化を示すグラフである。
【図3】本願発明の実施の形態に係る制御回路の他の例を示す回路図である。
【図4】従来の制御回路の一例を示す回路図である。
【図5】従来の制御回路の別の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明は、実施例に限定されるものではない。
【0024】
電磁弁は、駆動時に、一定以上の電圧の印加が必要である。電磁弁は、電圧の印加に伴って電力消費により発熱する。そこで、電磁弁からの発熱を抑制するためには、電磁弁として、自己保持型の電磁弁、すなわち、通電されることにより開弁又は閉弁等の動作を行い、通電を停止しても弁の開閉状態を保持するものを用いることが有効である。通電を停止しても弁の開閉状態を保持できるため、電磁弁からの発熱を極めて抑制することが可能となる。
【実施例1】
【0025】
図1において、電磁弁1(本願請求項の「電磁弁」の一例)は、自己保持型の電磁弁である。電磁弁1は、例えばラッチ式電磁弁である。電磁弁1は、弁の開閉を担うプランジャ(図示を省略)と、通電による電磁力によりプランジャを移動させるソレノイド5(本願請求項の「ソレノイド」の一例)と、通電の停止後にも通電時のプランジャの位置を保持する磁石(図示を省略)と、プランジャの通電前の位置からの変位方向とは逆向きに力を加えて位置を保とうとするスプリング(図示を省略)を備える。制御回路3(本願請求項の「制御回路」の一例)は、電磁弁1のプランジャを制御するソレノイド5の通電を制御するものである。
【0026】
続いて、電磁弁1の動作について述べる。ソレノイド5に通電すると、電磁力によりプランジャが移動して弁を開閉する。移動したプランジャは、スプリングの弾性力よりも大きな磁石の磁力により位置が保持される。そのため、通電を停止してもプランジャの位置は保持される。このとき、スプリングは、引き伸ばされて又は押し込まれて、弾性エネルギーを蓄積したまま保持される。プランジャの位置を元に戻すには、通電する電圧の極性を逆方向とした電圧をソレノイド5に印加する。すると、ソレノイド5から磁石とは逆の磁界が発生し、電磁力と変位したスプリングの弾性力の和が磁力を上回って、プランジャは元の位置に戻る。元の位置では、プランジャの変位を妨げるスプリングの弾性力は、単独で、プランジャを引きつけようとする磁石の磁力を上回る。そのため、通電を停止してもプランジャの位置は保持される。
【0027】
図1を参照して、本願発明の実施例に係る制御回路3の回路構成について説明する。図1は、本願発明の実施例に係る制御回路の一例である制御回路3を示す回路図である。
【0028】
制御回路3は、電磁弁1を制御する回路である。制御回路3は、通電されることにより電磁弁1を開閉するソレノイド5と、ソレノイド5への通電の開始に伴って電荷を蓄えるコンデンサ7(本願請求項の「コンデンサ」の一例)と、接続関係を切り替えるリレー9(本願請求項の「リレー」の一例)と、リレー9の切り替えを制御する電磁コイル11(本願請求項の「切替制御手段」の一例)と、電磁コイル11並びにソレノイド5、コンデンサ7及びリレー9に電圧を印加して通電を行うための電源(本願請求項の「電源」の一例)を接続する第1端子13及び第2端子13とを備える。ここで、リレー9は、本願請求項の「切替手段」の一例でもある。
【0029】
電磁弁1は、ソレノイド5に電流が流れると、電磁力により開閉する。ここで、電磁弁1は、一度電磁力により開閉した後は、ソレノイド5への電流が停止されてもその開閉が維持される。例えば、図1中の実践矢印A方向に電流が流れたときに電磁弁1が開弁されたとすると、A方向の電流がゼロとなった後も開弁状態が保たれる。逆に、点線矢印B方向に電流が流れると電磁弁1は閉弁し、B方向の電流がゼロとなった後も閉弁状態が保たれる。
【0030】
続いて、制御回路3が備える回路素子の接続関係について述べる。ソレノイド5とコンデンサ7とリレー9とは、順に接続されている。また、電磁コイル11は、ソレノイド5、コンデンサ7及びリレー9と並列に接続されている。さらに、電磁コイル11と並列に電圧を印加するべく、第1端子13及び第2端子13が接続されている。リレー9は、3つの接点(第1接点15(本願請求項の「第1接点」の一例)、第2接点15(本願請求項の「第2接点」の一例)及び第3接点15(本願請求項の「第3接点」の一例))を有する。リレー9の第1接点15は、コンデンサ7に接続され、第2接点15は、ソレノイド5及び電磁コイル11に接続され、第3接点15は、電磁コイル11に接続される。第1ラインLは、リレー9の第3接点15と第1端子13とを接続する導線である。第2ラインLは、ソレノイド5と第2端子13とを接続する導線である。コンデンサ7は、一方をリレー9の第1接点15に、他方をソレノイド5に接続される。ソレノイド5は、一方をコンデンサ7に、他方をリレー9の第2接点15及び電磁コイル11に接続される。電磁コイル11は、一方で、接続点17において第1ラインLに接続されている。また、電磁コイル11は、他方で、接続点19において、第2ラインLに接続されている。さらに、リレー9の第2端子13も、接続点21において、第2ラインLに接続されている。リレー9及び電磁コイル11は、全体として電磁リレー23をなしている。
【0031】
ここで、電磁リレー23について具体的に説明する。リレー9の第1接点15は、第2接点15又は第3接点15のいずれか一方にのみ接続されるコモン接点である。また、第1接点15は、電磁コイル11への電圧の印加が無い場合には、ノーマルクローズ接点である第2接点15に接続され、電磁コイル11への電圧の印加が有る場合には、ノーマルオープン接点である第3接点15に接続される。
【0032】
第1端子13及び第2端子13に電源が接続され、コモン接点である第1接点15とノーマルクローズ接点である第3接点15が接続されたとき、通電を行う電源、ソレノイド5、コンデンサ7及びリレー9を含む閉回路であって、ソレノイド5に対する通電及びコンデンサ7への蓄電を行う第1回路(本願請求項の「第1回路」の一例)が形成される。
【0033】
また、第1接点15とノーマルオープン接点である第2接点15が接続されたとき、通電を行う電源及び電磁コイル11のいずれも含まずに、ソレノイド5、コンデンサ7及びリレー9を含む閉回路であって、コンデンサ7の放電によりソレノイド5に対する通電を行う回路である第2回路(本願請求項の「第2回路」の一例)が形成される。
【0034】
電磁コイル11は、電磁コイル11と並列に電圧が印加又は停止されることにより、リレー9を制御して第1回路と第2回路との接続を切り替えさせる。
【0035】
続いて、図2を参照して、本願発明の実施例に係る制御回路3の動作について説明する。図2は、図1の制御回路3において、(a)第1端子13及び第2端子13間の電源電圧V、(b)電磁リレー23の電磁コイル11にかかる電圧V、(c)第1ラインLを流れる電流I、(d)コンデンサ7にかかる電圧V、(e)ソレノイド5、コンデンサ7及びリレー9の閉回路が形成された場合に当該閉回路を流れる電流I、(f)ソレノイド5にかかる電圧Vの経時変化を示すグラフである。
【0036】
時刻T以前においては、第1端子13及び第2端子13間に電圧は印加されておらず、電磁コイル11にも電圧が印加されていないとする。このとき、リレー9においては、コモン接点である第1接点15とノーマルクローズ接点である第2接点15とが接続されている。このとき、制御回路3には、電流I及びI共に流れていない。また、電磁弁1は、閉弁状態であるとする。
【0037】
まず、時刻Tにおいて、第1端子13及び第2端子13間に電源電圧VとしてVの印加(本願請求項の「電圧の印加」の一例)が開始される(図2(a))。すると、電磁コイル11に印加される電圧Vは、徐々に増加し、時刻Tにおいて、電圧Vに達する(図2(b))。このとき、リレー9において、コモン接点である第1接点15とノーマルオープン端子である第3接点15とが接続されて第1回路が形成される。直後に、ソレノイド5に電圧Vが印加されて(図2(c))、例えばコンデンサ7からソレノイド5に向かう図1中のA方向に電流Iが流れる(図2(d))。また、ソレノイド5への通電(本願請求項の「通電」の一例)に伴って電磁弁1のプランジャが移動し、開弁状態となる。電流Iによりコンデンサ7に電荷が蓄積されるにつれて、コンデンサ7にかかる電圧Vは徐々に増加し(図2(e))、一方でV及びIは徐々に減少する(図2(c)及び(d))。ここで、ソレノイド5及びコンデンサ7にそれぞれ印加される電圧V及びVの和は、常にVで一定である。
【0038】
コンデンサ7の時定数で定まる時刻Tにおいて、ソレノイド5への印加電圧V、電流I共にほぼゼロとなり(図2(c)及び(d))、コンデンサ7にほぼVの電圧が印加される(図2(e))。ソレノイド5の電磁力は、ほぼゼロとなるが、移動したプランジャは、磁石により位置を保持される。そのため、自己保持型の電磁弁1は、ほとんど発熱することなく開弁状態に保たれる。また、コンデンサ7には、電圧Vに相当する電荷が蓄積されている。
【0039】
時刻Tにおいて、電源電圧Vの印加を停止すると(図2(a))、電磁コイル11に印加される電圧Vは徐々に減少し、時刻Tにおいて、ゼロとなる(図2(b))。このとき、リレー9において、再び、コモン接点である第1接点15とノーマルクローズ接点である第2接点15とが接続されて第2回路が形成される。すると、電源及び電磁コイル11のいずれも含まずに、ソレノイド5、コンデンサ7、リレー9を含む閉回路に、コンデンサ7に蓄積された電荷が、例えばB方向に電流Iとして流れる(図2(f))。このとき、ソレノイド5に先ほどとは逆方向の電圧Vが印加されて(図2(c))電磁力を発生し、電磁弁1が閉弁状態となる。コンデンサ7に蓄積された電荷が放出されるに伴い(図2(e))、電流I及びソレノイドに印加される電圧Vは徐々に減少する(図2(c)及び(f))。
【0040】
時刻Tにおいて、V及びI共にゼロとなる(図2(c)及び(f))。その後も、自己保持型の電磁弁1は、ほとんど発熱することなく閉弁状態に保たれる。コンデンサ7に蓄積されていた電荷は全て放出され(図2(e))、制御回路3は、時刻T以前の状態となる。
【0041】
このように、本願の実施の形態に係る制御回路3を用いることにより、自己保持型の電磁弁1をごくシンプルで小さな回路により制御することが可能となる。
【0042】
なお、ソレノイド5、コンデンサ7及びリレー9と、リレー9を制御する電磁コイル11と、電圧を印加するための第1端子13及び第2端子13間とが並列に接続されていれば、接続点17は、必ずしも第1ラインLの線分上になくともよい。同じく、接続点19及び接続点21は、必ずしも第2ラインLの線分上になくともよい。
【0043】
また、リレー9の第1接点15は、電圧の印加がある状態では第3接点15と接続され、かつ、電圧の印加が停止された際に第2接点15と接続されるものであればよく、コンデンサ7に蓄積された電荷が完全に放出された後に電圧の印加が無い状態で待機する間、図5の第3接点15と接続されるものであってもよい。
【実施例2】
【0044】
続いて、図3を参照して、制御回路103について述べる。図3は、本願発明の実施の形態に係る制御回路の他の例である制御回路103を示す回路図である。
【0045】
制御回路103は、電磁弁101(本願請求項の「電磁弁」の他の一例)を制御する回路である。制御回路103は、通電されることにより電磁弁101を開閉するソレノイド105(本願請求項の「ソレノイド」の他の一例)と、ソレノイド105への通電の開始に伴って電荷を蓄えるコンデンサ107(本願請求項の「コンデンサ」の他の一例)と、接続関係を切り替えるトランジスタ部109(本願請求項の「トランジスタ部」の一例)と、トランジスタ部109の切り替えを制御する制御信号付与部111(本願請求項の「制御信号付与手段」の一例)と、制御信号付与部111並びにソレノイド105、コンデンサ107及びトランジスタ部109に電圧を印加するための電源(本願請求項の「電源」の他の一例)を接続する第1端子113及び第2端子113とを備える。ここで、トランジスタ部109は、本願請求項の「切替手段」の一例でもある。また、制御信号付与部111は、本願請求項の「切替制御手段」の一例でもある。
【0046】
実施例1と実施例2を比較して、電磁弁101は、電磁弁1に対応する。制御回路103は、制御回路3に対応する。ソレノイド105は、ソレノイド5に対応する。コンデンサ107は、コンデンサ7に対応する。トランジスタ部109は、リレー9に対応する。制御信号付与部111は、電磁コイル11に対応する。第1端子113及び第2端子113は、それぞれ第1端子13及び第2端子13に対応する。以下では、主に実施例1と異なる部分について述べる。
【0047】
トランジスタ部109は、第1トランジスタ115(本願請求項の「第1トランジスタ」の一例)及び第2トランジスタ115(本願請求項の「第2トランジスタ」の一例)を有する。第1トランジスタ115のソース電極と第2トランジスタ115のドレイン電極とは接続点115において接続されており、接続点115は、コンデンサ107とも接続されている。また、第1トランジスタ115と第2トランジスタ115とはゲート電極同士が接続点125で接続されており、接続点125は、制御信号付与部111とも接続されている。第3ラインLは、トランジスタ部109の第1トランジスタ115と第1端子113とを接続する導線である。第4ラインLは、ソレノイド105と第2端子113とを接続する導線である。第2トランジスタ115は、接続点121において第4ラインLにも接続されている。
【0048】
ここで、第1トランジスタ115のキャリアのタイプと第2トランジスタ115のキャリアのタイプとは、異なるものである。例えば、ここでは、第1トランジスタ115は正孔をキャリアとするPMOSのFET(電界効果トランジスタ)であり、第2トランジスタ115は電子をキャリアとするNMOSのFETであるとする。第1トランジスタ115は、ゲート電極に電圧が印加されるとオフとなり、ゲート電極への電圧印加が停止されるとオンとなるものである。第2トランジスタ115は、ゲート電極に電圧が印加されるとオンとなり、ゲート電極への電圧印加が停止されるとオフとなるものである。
【0049】
制御信号付与部111は、抵抗129,129と、スイッチ131とを有する。抵抗129は、第3ラインLと接続点117において接続され、また、抵抗129とも接続点127において接続されている。抵抗129は、第4ラインLと接続点119において接続され、また、抵抗129とも接続点127において接続されている。抵抗129,129は、ゲート電極に印加される電圧の値を調整するためのものである。スイッチ131は、トランジスタ部109と接続点125において接続され、第4ラインLと接続点126において接続されている。スイッチ131と接続点125とを結ぶ導線である第5ラインLと、抵抗129と抵抗129とを接続する導線であるLとは、接続点127において接続されている。
【0050】
続いて、制御回路103の動作について説明する。まず、電磁弁101は閉弁状態であり、第1端子113及び第2端子113に電源が接続されて電圧が印加され、スイッチ131は開状態であるとする。このとき、第1トランジスタ115はオフであり、第2トランジスタ115はオンとなっている。なお、第2端子113は、接地されているとする。この時点で、制御信号付与部111からトランジスタ部109へは制御信号は付与されていない。
【0051】
次に、スイッチ131を閉状態とすると、トランジスタ部109の接続点125を通じてゲート電極は0V側に導通される(制御信号が付与される)。このとき、第1トランジスタ115はオンとなり、第2トランジスタ115はオフとなる。したがって、通電を行う電源、ソレノイド105、コンデンサ107及びトランジスタ部109を含む閉回路であって、ソレノイド105に対する通電及びコンデンサ107への蓄電を行う回路である第1回路(本願請求項の「第1回路」の他の一例)が形成される。このとき、ソレノイド105には、例えば、図3中に実践矢印で示すAの向きに電流が流れて電磁弁101が開弁される。コンデンサ107への蓄電が完了してソレノイド105に流れる電流値が0となった後も、電磁弁101の開弁状態は保たれる。
【0052】
続いて、スイッチ131を開状態とすると、接続点125を通じてゲート電極へは再び電圧が印加される(制御信号の付与が停止される)。このとき、第1トランジスタ115は再びオフとなり、第2トランジスタ115は再びオンとなる。したがって、通電を行う電源及び制御信号付与部111のいずれも含まずに、ソレノイド105、コンデンサ107及びトランジスタ部109を含む閉回路であって、コンデンサ107の放電によりソレノイド105に対する通電を行う第2回路(本願請求項の「第2回路」の他の一例)が形成される。このとき、ソレノイド105には、例えば、図3中に点線矢印で示すBの向きに電流が流れて電磁弁101が閉弁される。コンデンサ107の放電が完了してソレノイド105に流れる電流値が0となった後も電磁弁101の閉弁状態は保たれる。
【0053】
なお、第1トランジスタ115と第2トランジスタ115とは、電圧の印加及び停止によってトランジスタ部109が第1回路と第2回路とを切り替え可能であればよく、各トランジスタのキャリアのタイプはいずれが正孔をキャリアとするものであってもよい。
【0054】
さらに、第1トランジスタ115と第2トランジスタ115とは、接続点115において第1トランジスタ115のドレイン電極と第2トランジスタ115のソース電極とが接続されたものであってもよい。
【0055】
さらに、第1端子と第2端子との間で電源を接続して電圧を印加したときに電位差があればよく、第2端子113は接地されていなくともよい。
【0056】
さらに、制御信号付与部111は、制御信号の付与の有無で第1回路と第2回路とをトランジスタ部109に切り替えさせることができればよく、0Vに接地したときを制御信号が付与されたと捉えてもよいし制御信号の付与が停止されたと捉えてもよい。
【0057】
さらに、電磁弁1,101は、発熱を抑制するためにソレノイド5,105に通電して弁の開閉を行う自己保持型の電磁弁であればよく、ラッチ式電磁弁以外のものであってもよい。
【0058】
さらに、切替手段が行う回路の切り替えによって電磁弁1,101の開閉が行われればよく、第1回路又は第2回路によって電流が流れる向きはA方向又はB方向のいずれでもよいし、いずれの方向に流れたときに電磁弁1,101が開弁又は閉弁するかもどちらでもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,101・・・電磁弁、3,103・・・制御回路、5,105・・・ソレノイド、7,107・・・コンデンサ、9・・・リレー、11・・・電磁コイル、23・・・電磁リレー、109・・・トランジスタ部、111・・・制御信号付与部、115,115・・・トランジスタ、131・・・スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁を制御する制御回路であって、
通電されることにより前記電磁弁を動作させるソレノイドと、
前記通電の開始に伴って電荷を蓄えるコンデンサと、
接続関係を切り替える切替手段と、
前記切替手段による接続関係の切り替えを制御する切替制御手段とを備え、
前記ソレノイドと前記コンデンサと前記切替手段とは、順に接続されており、
前記切替制御手段は、前記ソレノイド、前記コンデンサ及び前記切替手段と並列に接続されており、
前記通電を行う電源は、前記ソレノイド、前記コンデンサ及び前記切替手段と並列に接続されるものであり、
前記切替制御手段は、前記切替手段を制御して、
前記電源、前記ソレノイド、前記コンデンサ及び前記切替手段を含む閉回路であって、前記ソレノイドに対する前記通電及び前記コンデンサへの蓄電を行う回路である第1回路の形成と、
前記電源及び前記切替制御手段のいずれも含まずに、前記ソレノイド、前記コンデンサ及び前記切替手段を含む閉回路であって、前記コンデンサの放電により前記ソレノイドに対する前記通電を行う回路である第2回路の形成
とを切り替えさせる、制御回路。
【請求項2】
前記切替手段は、リレーであり、
前記切替制御手段は、前記電源が電圧の印加を開始又は停止することにより、前記リレーを制御して前記第1回路と前記第2回路との接続を切り替えさせる、請求項1記載の制御回路。
【請求項3】
前記リレーは、第1接点、第2接点及び第3接点を有するものであり、
前記第1接点は、前記コンデンサに接続され、
前記第2接点は、前記ソレノイド及び前記切替制御手段に接続され、
前記第3接点は、前記切替制御手段に接続されるものであり、
前記コンデンサは、一方を前記第1接点に、他方を前記ソレノイドに接続されるものであり、
前記ソレノイドは、一方を前記コンデンサに、他方を前記第2接点及び前記切替制御手段に接続されるものであり、
前記切替制御手段は、一方を前記第2接点及び前記ソレノイドに、他方を前記第3接点に接続されるものであり、
前記切替制御手段は、前記リレーを制御して、
前記印加が開始されることにより、前記第1接点と前記第3接点を接続させて、前記第1回路を形成させ、
前記印加が停止されることにより、前記第1接点と前記第2接点を接続させて前記第2回路を形成させる、請求項2記載の制御回路。
【請求項4】
前記ソレノイドは、少なくとも1つの前記電磁弁を動作させるために1つのみ存在し、
前記切替手段は、1つ又は複数のトランジスタを有するトランジスタ部であり、
前記切替制御手段は、前記トランジスタ部に制御信号を付与する制御信号付与手段であり、
前記制御信号付与手段は、前記1つ又は複数のトランジスタのゲート電極への前記制御信号の付与により前記トランジスタ部を制御して、前記第1回路と前記第2回路との接続を切り替えさせる、請求項1記載の制御回路。
【請求項5】
前記トランジスタ部は、ゲート電極同士が接続された第1トランジスタ及び第2トランジスタを有しており、
前記第1トランジスタのキャリアのタイプ及び前記第2トランジスタのキャリアのタイプは異なるものであり、
前記第1トランジスタのソース電極と前記第2トランジスタのドレイン電極とが接続されており、又は、前記第1トランジスタのドレイン電極と前記第2トランジスタのソース電極とが接続されており、
前記第1トランジスタと前記第2トランジスタのうち、
前記第1回路には、前記第1トランジスタのみが含まれており、
前記第2回路には、前記第2トランジスタのみが含まれており、
前記制御信号付与手段は、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの接続された前記ゲート電極に接続されて、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの前記ゲート電極に同一の前記制御信号を付与する、
請求項4記載の制御回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の制御回路によって制御される電磁弁。
【請求項7】
請求項6記載の電磁弁により弁の開閉を行うバルブセレクタ。
【請求項8】
請求項7記載のバルブセレクタを備える流体移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21641(P2012−21641A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228470(P2010−228470)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(509031899)矢部川電気工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】