制御性T細胞を増殖する方法と組成物
本発明は、Treg細胞の発生に関与する3種類のシグナルのうちの少なくとも1種を刺激する共刺激性部分を含む1以上のコンジュゲートを用いて、および/または、抗原でパルスしTGF-βをディスプレイするように修飾された樹状細胞、もしくはTGF-βをディスプレイするように修飾された造血幹細胞もしくは骨髄細胞を用いて、ex vivoまたはin vivoでTreg細胞を増殖させる方法と組成物を提供する。該方法と組成物は、例えば、I型糖尿病を含む自己免疫疾患の治療および予防、外来移植片の拒絶反応の予防、ならびに混合キメラの確立、自己抗原、同種抗原、もしくは異種抗原に対する免疫寛容の誘導、β細胞再生、外来移植片拒絶反応の予防、および遺伝的造血系障害の治療に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
NIHの助成金
この仕事は部分的にはNIH(R21 DK61333, R01 AI47864, R21 AI057903, R21 HL080108)、Juvenile Diabetes Research Foundation(1-2001-328)、American Diabetes Association(I-05-JF-56)、およびCommonwealth of Kentucky Research Challenge Trust Fundからの助成金で行われた。
【0002】
関連特許出願への相互参照
本出願はつぎのU.S. provisional applicationの35 U.S.C. §119(e)のもとでの出願日の優先権を主張するものである:60/748,177(2005年12月8日出願)、60/758,391(2006年1月12日出願)、60/799,642(2006年5月12日出願)、および60/799,643(2006年5月12日出願)。これらの先行出願はその全体を本明細書中に参照により組み入れる。
【0003】
発明の分野
本発明は一般的に、免疫療法の分野に関する。特に、本発明は制御性T細胞の増殖のための方法と組成物を提供する。それらの方法と組成物は、例えば、糖尿病を含む、免疫が基礎にある疾患の予防と治療、および外来性の移植片拒絶反応の予防に有用である。
【背景技術】
【0004】
制御性T(Treg)細胞はヒトおよびげっ歯類ではCD4+細胞の5〜10%を占め、構成的にCD25、CD28、CTLA-4、GITR、CD62L、および4-1BB、ならびにTreg細胞の発生と機能に関与している転写因子FoxP3を発現する。IL-2もTreg細胞の発生とホメオスタシスに重要な役割を果たすものと考えられるが、それはIL2またはIL-2の受容体の構成成分を欠損した動物はT細胞の過剰増殖と自己免疫疾患を起こすが、その状態はナイーブな動物から得られたTreg細胞の養子免疫細胞移植法(adoptive transfer)で補正されうるからである。同様に、CD28/CD80相互作用を介するシグナル伝達の欠如がTreg細胞の細胞数と機能性の低下に伴って起こることは、この受容体/リガンド系がTreg細胞の発生と機能に重要な役割と果たしていることを示唆している。
【0005】
天然のCD4+CD25+FoxP3+Treg細胞は胸腺の高アフィニティーリガンド上でポジティブに選択され、自己抗原に対する免疫学的寛容の確立と維持に重要な役割を果たす、明確に識別しうる細胞集団である。これらの細胞の発生および/もしくは機能が欠如すると、先天性、または誘発自己免疫のヒトおよび種々の動物モデルで重篤な自己免疫状態が起こる。
【0006】
Treg細胞はその免疫寛容誘導作用を細胞-細胞の直接的接触または溶解性因子を介して間接的に表す。Treg細胞の抑制機構は依然として完全には判明されていないが、エフェクターT細胞(Teff)におけるIL-2発現のブロック、Teff細胞の物理的排除、CTLA-4/B7系(axis)を介する免疫寛容誘導性の樹状細胞(dendritic cell:DC)の誘導、ならびにTGF-βおよびIL-10を介するTeff細胞の阻害は、現在までのところ考えられている機構のいくつかである。また、CTLA-4/CD80を通過してTeff細胞へと伝達される逆行シグナル伝達がTreg細胞によるTeff細胞の阻害に重要な役割を担っていることが示されている。同様にTreg細胞上のCTLA-4とDC上のCD80との間の相互作用は逆行シグナル伝達と、トリプトファン代謝の調節を介して免疫寛容に関与しているインドールアミンジオキシゲナーゼ酵素のアップレギュレーションをもたらしうる。
【0007】
Treg細胞はその天然状態での役割である自己抗原に対する免疫寛容の確立と維持という役割に加えて、様々な免疫修飾性のアプローチによって誘導される、外来抗原に対する末梢の免疫寛容において役割を果たしていることが明らかとなっている。例えば、Treg細胞は移植抗原に対する末梢の免疫寛容に関与する機構の、免疫寛容を得るために用いられた免疫修飾性のアプローチに関わらず、共通事項(common denominator)である。Treg細胞はまた、腫瘍および種々の病原体による免疫忌避(immune evasion)機構に関連しているとされている。
【0008】
自己抗原に対する免疫寛容を確立し維持すること、および外来抗原に対する免疫寛容を誘導することにおけるTreg細胞の重要性から、治療目的でTreg細胞をex vivo(体外)で増殖させるための方法が大きな関心を呼んできた。例えば、Tangら, 2004, J. Exp. Med. 199:1455-65;Battagliaら, 2005, Blood 105:4743-48;Earleら, 2005, Clin. Immunol. 115:3-9;Godfreyら, 2004, Blood 104:453-61;Hoffmannら, 2004, Blood 104:895-903を参照せよ。Treg細胞の発生はT細胞受容体(TCR)、CD28、およびIL-2を介するシグナル伝達で起こるので、Treg細胞を増殖させる方法はそれらのシグナルを提供することに焦点が当てられてきた。例えば、Tangら, 上述の文献、Godfreyら, 上述の文献、Hoffmannら, 上述の文献を参照せよ。Tangら(上述の文献)は、多量のIL-2(2000 IU/mL)の存在下で抗CD3抗体および抗CD28抗体を結合させたビーズを用いて刺激することによって、非肥満型糖尿病(NOD)動物からTreg細胞を増殖させうることを報告している。養子免疫細胞移植モデルにおいて、自己抗原に特異的な、増殖させたTCRトランスジェニックTreg細胞の養子免疫細胞移植によって糖尿病が防止され、また、新たに糖尿病となったNODマウスでは糖尿病から回復させた。このプロトコールに基づいたその他の少数の増殖プロトコールが最近開発され、げっ歯類およびヒトから得たTreg細胞の増殖にある程度の成功を収めている。例えば、Earleら(上述の文献)、Godfreyら(上述の文献)を参照せよ。例えば、GodfreyらはFcγRII(CD32)を発現している細胞系統をビーズに替わるものとしてCD3およびCD28に対する抗体を細胞の表面上にFc受容体を介して固定するために用いたヒトTreg細胞の増殖法について報告している。これまでに報告された体外での増殖プロトコールのほとんど全ては類似のスキームに基づいたものであり、多量のIL-2の使用を必要とする。
【0009】
これらの進歩はあったものの、依然としてTreg細胞を体外で増殖させるために有用な方法と組成物は求められている。特に、固体支持体の使用を必要としない方法が求められている。また、効力に多量のIL-2を必要としない方法も求められている。また、in vivoでTreg細胞を増殖させるのに有用な方法と組成物も求められている。
【0010】
I型糖尿病は依然として世界中で人口の1%を超える人々の長期にわたる罹患率と死亡率の主因となっている。インスリン療法およびランゲルハンス島(膵島)移植は現在のところ最も有効な治療レジメンとなってはいるが、これらのアプローチは双方とも大きな限界がある。従って、I型糖尿病の有効でかつ永続的な治療のために、ランゲルハンス島特異的な自己、同種、および異種免疫寛容を誘導する方法が依然として必要とされている。
【0011】
上述のとおり、Treg細胞は自己反応性応答の制御、および外来抗原に対する免疫寛容の確立と維持に重要な役割を果たしている。従って、Treg細胞は、I型糖尿病を含む種々の自己免疫疾患、固形臓器、組織、幹細胞、骨髄細胞、造血幹細胞の拒絶反応、および移植片対宿主病(GVHD)の予防と治療の重要なターゲットである。これらの病態の治療のための、in vivoでのTreg細胞の、制御された計画的な増殖方法が求められている。
【発明の開示】
【0012】
本発明は一般的には、制御性T細胞の増殖のための方法と組成物を提供する。
【0013】
1態様においては、本発明は、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲートを含んでいる、組み合わせを提供する。
【0014】
特定の1実施形態においては、該結合ペアの第1のメンバーはアビジンまたはストレプトアビジン(コア・ストレプトアビジンなど)を含んでおり、該結合ペアの第2のメンバーはビオチンを含んでいる。別の特定の1実施形態においては、該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つは、該第1および第2のコンジュゲートメンバーを含んでいる融合ポリペプチドを含んでなる。さらに別の1実施形態においては、該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つは、該第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと、該第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して結合している。
【0015】
特定の1実施形態においては、該サイトカインは、IL-2およびIL-4からなる群から選択されたものである。別の特定の1実施形態においては、該抗原は自己抗原である。また別の特定の1実施形態においては、該抗原は、インスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、およびMHC/抗原複合体からなる群から選択されたものである。さらに別の特定の1実施形態においては、該抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである。
【0016】
別の1態様では、本発明はTreg細胞を増殖する方法を提供し、その方法は、Treg細胞の集団を、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲートと、
接触させることを含んでなる。
【0017】
特定の1実施形態においては、該Treg細胞は、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つについての受容体を含んでおり、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つはそのTreg細胞と、第1のコンジュゲートメンバーとその受容体との間の結合を介して結合し、第4、第5、第6、および第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つは該Treg細胞に第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して結合する。さらに別の1実施形態においては、Treg細胞の集団は、CD4+細胞、CD25+細胞、およびFoxP3+細胞からなる群から選択されたTreg細胞を含んでいる。さらに別の1実施形態においては、Treg細胞の集団はCD4+CD25+FoxP3+細胞を含んでいる。
【0018】
1実施形態においては、該方法はさらに、該Treg細胞を遊離のIL-2と接触させることを含んでいる。別の1実施形態においては、該方法はさらに、該Treg細胞を遊離の抗CD抗体と接触させることを含んでいる。
【0019】
1実施形態においては、該接触はex vivoで行われる。さらに別の1実施形態においては、該方法はさらに増殖させたTreg細胞を患者に投与することを含んでいる。
【0020】
別の1実施形態においては、該接触は該コンジュゲートを患者に投与することによってin vivoで行われる。さらに別の1実施形態においては、その患者は、I型糖尿病などの自己免疫疾患に罹患しているかまたは罹患する危険性のある患者である。別の1実施形態においては、その患者は外来性の移植片の移植を受けた患者である。
【0021】
1実施形態においては、該方法はさらに、ラパマイシンを患者に投与することを含んでいる。別の1実施形態においては、該方法は、TGF-βをディスプレイしている外来細胞を含んでいる組成物を、該患者に投与することを含んでいる。特定の1実施形態においては、その外来細胞は、脾臓細胞、膵島組織の細胞、および骨髄細胞からなる群から選択された細胞である。別の特定の1実施形態においては、該外来細胞は、(a) 外来細胞を、結合ペアの第1のメンバーと該細胞の表面に結合する分子とを含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾された外来細胞を形成させ、(b) その修飾された外来細胞を、TGF-βと該結合ペアの第2のメンバーとを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている外来細胞を形成すること、を含んでいる方法によって得られたものである。
【0022】
別の1形態では、本発明はTGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を得る方法を提供し、その方法は、(a)未熟樹状細胞を抗原でパルスして、パルスされた樹状細胞を得て、(b)そのパルスされた樹状細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよびその樹状細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾されたパルス樹状細胞を形成させ、(c)該修飾されたパルス樹状細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を形成させることを含んでいる。1実施形態においては、該方法はさらにそのパルス樹状細胞を成熟した細胞へと駆動することを含んでいる。
【0023】
1実施形態においては、該抗原は糖尿病の病原性のある自己抗原、例えばグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、または自己抗原NRP-A7などである。別の1実施形態においては、該抗原はコラーゲンである。別の1実施形態においては、該抗原はミエリン塩基性タンパク質である。
【0024】
別の1態様においては、本発明は、上述の方法によって作られたものなどの、TGF-βをディスプレイしている、抗原でパルスされた樹状細胞の集団を提供する。
【0025】
別の1態様においては、本発明はTreg細胞を患者の体内で増幅させる方法を提供し、その方法は、上述の方法で作られたものなどの、TGF-βをディスプレイしている、抗原でパルスした樹状細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでなる。1実施形態においては、該方法はさらに、ラパマイシンを患者に投与することを含んでいる。
【0026】
さらに別の1態様では、本発明は、TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞または骨髄細胞を得る方法を提供し、その方法は、(a)造血幹細胞または骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し、(b)その修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させることを含んでいる。
【0027】
また別の1態様では、本発明は患者の体内でTreg細胞を増殖させる方法を提供し、その方法は、上述の方法で作製したものなどの、TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞またはTGF-βをディスプレイしている骨髄細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでなる。1実施形態においては、該方法はさらに、その患者にラパマイシンを投与することを含んでなる。特定の1実施形態においては、該患者は、自己抗原、同種抗原、または異種抗原に対しての免疫寛容の誘導、β-細胞の再生、外来性の移植片拒絶反応の予防、または、遺伝性造血障害の治療を必要としている患者である。
【0028】
別の1態様においては、本発明は、上述の方法で作製したものなどの、TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞または骨髄細胞の集団を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明はTreg細胞発生に関与する3種類のシグナルのうちの少なくとも1つを刺激することによって、Treg細胞を増殖させるための方法と組成物を提供する。シグナル1にはTCRが関与し、抗CD3抗体などの抗体、または、TCRを介してシグナルを発する抗原を用いて刺激することができる。シグナル2は数種類の異なる分子によってメディエートされるもので、そのような分子としては、CD80や4-1BBLなどの免疫共刺激性分子(immune co-stimulatory molecule)が含まれる。シグナル3はIL-2やTGF-βなどのサイトカインを介して変換される。本発明は、ex vivoまたはin vivoで行うことのできる、Treg細胞の増殖方法を提供し、また、そのような方法を行うための組成物をも提供する。1実施形態においては、該方法と組成物はそれらのシグナルのうちの1種を刺激する。また別の1実施形態においては、該方法と組成物はそれらのシグナルのうちの2種を刺激する。また別の1実施形態においては、該方法と組成物はこれらのシグナルの3種を刺激する。
【0030】
別の1態様においては、本発明は、抗原でパルスしTGF-βをディスプレイするように修飾した樹状細胞(DC)を用いて、またはTGF-βをディスプレイするように修飾した造血幹細胞もしくは骨髄細胞を用いて、Treg細胞を増殖させる方法と組成物を提供する。
【0031】
ヒトやその他の動物の多数の自己免疫疾患では、Treg細胞の数が少ないこと、および/もしくはTreg細胞の調節機能の喪失が関連している。従って、自己免疫疾患の患者(例えばI型糖尿病患者)の体内で自己免疫性のTeff細胞よりもTreg細胞を強く増殖させることが、治療上非常に有益なものとなるものと期待される。従って、本発明の方法と組成物は、例えば、I型糖尿病を含む、免疫がベースとなった疾患の予防および治療、ならびに同種移植片の拒絶反応の防止に有用である。
【0032】
本出願においては、下記の用語は下記説明の定義を有する。
【0033】
本明細書中で"a"または"an"とは、特にそれが1つのみであることを断らない限りは、1つまたはそれ以上を意味する。
【0034】
本明細書中で「投与」とは、患者にある物質を提供する適切な手段の全てを包含する。一般的な経路としては、経口、舌下、経粘膜、経皮、直腸、経膣、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、髄腔内、カテーテルを介して、インプラントを介して、その他が含まれる。
【0035】
「結合ペア」とは、様々な分子間力、例えば、イオン結合、共有結合、疎水結合、ファン・デル・ワールス力、および水素結合などの分子間力のいずれかを介してお互いに相互作用して、お互いに対して特異的に結合する性質をそのペアが有するようになった2つの分子を意味する。特異的な結合とは、結合ペアのメンバーが、別の分子とは結合しないような条件下でお互いに結合することを意味する。結合ペアの例としては、ビオチン-アビジン、ホルモン-受容体、受容体-リガンド、酵素-基質、IgG-プロテインA、抗原-抗体、および類似のものが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いている「患者」には、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、鳥類、イヌ、ネコ、および霊長類を含む全ての脊椎動物が含まれる。1実施形態においては、その患者はヒトである。当業者であれば、特定の免疫共刺激性分子、シグナル伝達分子、細胞マーカー、細胞のタイプ、感染性物質、その他のものがある動物種について述べられていれば、異なる種においてそれと対応する類似物がありうること、ならびにそのような類似物と、その対応および関連する種における使用が本発明に包含されることは理解できよう。
【0037】
1態様では、本発明はシグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する、少なくとも1つの共刺激性部分を含んでいるコンジュゲートを提供する。特定の1実施形態においては、該コンジュゲートはその共刺激性部分と結合ペアの1メンバーを含んでいる。3種のシグナルのうちの1つを刺激する部分であればどのようなものであっても本発明で用いることができ、同様にどのような結合ペアをも用いることができる。代表的な共刺激性部分および結合ペアについては下記に詳述する。
【0038】
本明細書中で「完全長」と断らない限りは、共刺激性部分は完全長のもの(例えば、完全長のポリペプチド)、ならびにそれの共刺激機能を示す断片もしくは一部分をも意味し、そのような断片および一部分は下記で特定したものに限定されない。従って、例えば、4-1BBLとは、4-1BBLの細胞外ドメインもしくは完全長の4-1BBLタンパク質などのような共刺激機能を示す、完全長の4-1BBLの断片もしくは一部分を含んでいるポリペプチドを意味する。
【0039】
シグナル1
シグナル1を刺激するための、共刺激性部分の代表的なものとしては、CD3もしくはCD3とTCRとの複合体の何らかの成分に対する抗体、、抗原/MHC複合体、およびTCRを経由してシグナルを伝達するイオノマイシンおよびホルボールミリスチン酸アセテート(PMA)などの薬剤が含まれる。
【0040】
免疫的治療法に有用な抗CD3抗体については当業界では既知である。例えば、Earleら, 2005, Clin. Immunol. 115:3-9を参照せよ。適切な抗CD3抗体として代表的なものには、ヒトもしくはマウスの抗体、ヒト化抗体、遺伝子組換えによって作成した抗体、単鎖抗体、およびCD3結合性抗体フラグメントが含まれる。そのような抗CD3抗体は当業界では既知の方法で得ることができる。
【0041】
上述のとおり、TCR複合体の何どのような成分に対する抗体であっても、用いることができ、例えばTCRのα鎖またはTCRのβ鎖に対する抗体を用いることができ、またCD3の成分に対する抗体を用いることができる。例えば、Niederbergerら, 2005, J. Leukoc. Biol. 77:830-41;Hamanoら, J. Immunol. 164:6113-19を参照せよ。さらに、どのようなタイプの抗体であっても(ヒト、マウス、組換え、単鎖、その他)用いることができる。
【0042】
シグナル1を刺激するための共刺激性部分として有用な抗原としては、標的とする疾患または病状に関連している抗原が含まれる。例えば、自己抗原およびインスリン(特にI型糖尿病の治療に適している)、コラーゲン(特に慢性関節リウマチの治療に適している)、ミエリン塩基性タンパク質(特に多発性硬化症の治療に適している)、およびMHC(外来性の移植片拒絶反応の治療および予防に適している)が挙げられる。それらの抗原は結合ペアの1メンバーを含んでいるコンジュゲートの1部分として投与することができる。任意で、該抗原はMHC/抗原複合体の一部分として提供される。この実施形態においては、MHCおよび抗原はそれぞれ独立に外来性のものまたは同系なものとすることができる。例えば、ドナーMHCと同種もしくは同系の抗原を用いることができる。
【0043】
本発明の1態様においては、該抗原は自己抗原である。例えば、該抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、または自己抗原NRP-A7(膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼの触媒サブユニット関連自己抗原に由来するもので、近年、糖尿病に重要な役割を果たしていることが示されている)とすることができる。これらの抗原は膵島特異的自己抗原レパートリーの重要な部分を占めており、そのため、エピトープスプレッディング(epitope spreading)またはTreg細胞が支配する免疫調節機作を介して他の自己抗原に対する免疫寛容を付与することに有効である可能性がある。特定の1実施形態においては、該自己抗原はGAD65、ICA512、またはNRP-A7である。
【0044】
1実施形態においては、本発明は上述の抗CD3抗体または抗原/MHC複合体を共刺激性部分として含み、ビオチンを結合ペアメンバーとして含んでいるコンジュゲートを提供する。そのようなコンジュゲートは、当業界では既知の方法によって抗CD3抗体または抗原/MHC複合体をビオチニル化して作製することができ、そのことについては下記の実施例中で例示している。あるいはまた、該抗体または抗原は、例えばコア・ストレプトアビジンなどの結合ペアメンバーと連結させるか、またはそれとの融合タンパク質として発現させて、本発明に有用な別の形のコンジュゲートを形成させることができる。
【0045】
シグナル2
シグナル2を刺激するための、共刺激性部分の代表的なものとしては、B7およびTNFファミリーのメンバーが挙げられ、そのようなものとしては、限定はされないが、下記のものが含まれる。
【0046】
【0047】
これらの部分のヌクレオチド配列および/もしくはアミノ酸配列は下記のとおり先行文献中に記載されている。
【0048】
【0049】
適切な共刺激性部分の特別な例としては、4-1BBL、CD80、OX40L、およびCD86が挙げられ、これらは下記でより詳細に述べる。しかし、上述のどの共刺激性部分でも本発明で用いることができることは理解されるべきである。
【0050】
あるいはまた、それらの共刺激性部分のいずれかの受容体に対する抗体を用いることができる。そのような抗体は当業界では既知であり、市販のものを入手することができ、または当業界で既知の方法によって得ることができる。本発明の1実施形態においては、抗CD28抗体が用いられる。免疫的治療法に有用な抗CD28抗体は当業界では既知である。例えば、Earleら, 上述の文献を参照せよ。適切な抗CD28抗体の代表的なものとしては、ヒトまたはマウスの抗体、ヒト化抗体、遺伝子組換えで産生された抗体、単鎖抗体、およびCD28結合抗体フラグメントが挙げられる。そのような抗CD28抗体は当業界では既知の方法によって得ることができる。
【0051】
4-1BBL(4-BB-L、4-BBリガンド、TNFSF9、ILAリガンドとしても知られている)は、TNF受容体ファミリーのメンバーで、活性化B細胞、マクロファージ、およびDCを含む活性化抗原提示細胞(APC)上に、活性化の2〜3日後に発現される。4-1BB(CD137としても知られている)は4-1BBLの受容体であるが、これは活性化CD4+およびCD8+細胞表面上、ナチュラルキラー細胞(NK)、単球、および休止期のDC上に発現されている。最近、Treg細胞が構成的に4-1BB受容体を発現することも示されている。例えば、Choiら, 2004, J. Leukoc. Biol. 75:785-91;<cHugら, 2002, Immunity 16:311-23を参照せよ。
【0052】
4-1BBLは254個のアミノ酸を含んでいる(26624 Da)。例えば、Aldersonら, 1994, Euro. J. Immunol. 24(9):2219-27を参照せよ。ヒト4-1BBLの完全なアミノ酸配列はSwiss-Prot データベースの寄託No.P41273で見ることができる。4-1BBLはII型糖タンパク質で、残基1-28は細胞質ドメインを形成していると考えられ、残基29-49は単一の膜貫通ドメインと予測され、残基50-254は細胞外ドメインを形成しているものと考えられ、残基35-41はポリLeuストレッチを示している。ヒト4-1BBLをコードしているヌクレオチド配列はGenBank寄託No.NM_003811で見ることができる。
【0053】
同系の受容体である4-1BBと結合することのできる4-1BBLの残基50-254またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーとの融合タンパク質として連結または発現させることができる。例えば、図3AおよびBはCSA-マウス4-1BBL融合タンパク質のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示している(配列番号5および6)。図4は、ヒト4-1BBLの細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいるキメラタンパク質のアミノ酸配列を示している(配列番号7)。あるいはまた、4-1BBLはビオチニル化して、共刺激性部分として4-1BBLを含み、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートを形成させることができる。
【0054】
CD80(B7.1、CD28LG、またはLAB7としても知られている)およびCD86(B7.2、CD28LG2、LAB72としても知られている)は代表的な共刺激性ポリペプチドで、どちらもT細胞によって発現されたCD28/CTLA4共受容体と結合する。CD80は288個のアミノ酸を含んでいる(33048 Da)。Freemanら, J. Immunol. 143(8):2714-2722(1989)を参照せよ。ヒトB7.1の完全なアミノ酸配列はSwiss-Protデータベースの寄託No.P33681で見ることができる。
【0055】
B7.1はI型糖タンパク質で、残基1-34は分泌シグナルを形成し、残基35-242は細胞外ドメインを形成していると考えられ、残基243-263は膜貫通ドメインを形成していると考えられ、残基264-288は細胞質ドメインを形成しているものと考えられる。従って分泌シグナル配列を持たない成熟したB7.1分子はアミノ酸35-288である。ヒトでB7.1をコードするヌクレオチド配列は、GenBank寄託No.NM_005191で見ることができる。
【0056】
同系の受容体であるCD28と結合することのできるB7.1の残基35-242またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーとの融合タンパク質として連結または発現させることができる。例えば、図2Aおよび2Bは、ヒトB7.1(CD80)の細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいるキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)を示している。あるいはまた、CD80はビオチニル化して、共刺激性部分としてCD80を含み、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートを形成させることができる。
【0057】
B7.2は329個のアミノ酸を含んでいる(37696 Da)。Freemanら, Science 262(5135):909-911(1993)を参照せよ。ヒトB7.2の完全なアミノ酸配列はSwiss-Protデータベースの寄託No.P42081で見ることができる。B7.2はI型の糖タンパク質で、残基1-23は分泌シグナルを形成しており、残基24-267は細胞外ドメインを形成していると考えられ、残基248-268は膜貫通ドメインを形成しているものと考えられ、残基269-329は細胞質ドメインを形成しているものと考えられる。従って分泌シグナル配列を持たない成熟したB7.2分子はアミノ酸24-329である。ヒトでB7.2をコードするヌクレオチド配列は、GenBank寄託No.NM_175862で見ることができる。
【0058】
同系の受容体であるCD28と結合することのできるB7.2の残基24-247またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーとの融合タンパク質として連結または発現させることができる。例えば、図5Aおよび5Bは、ヒトB7.2(CD86)の細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいるキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号8)およびアミノ酸配列(配列番号9)を示している。あるいはまた、CD86はビオチニル化して、共刺激性部分としてCD86を含み、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートを形成させることができる。
【0059】
B7.2は通常は休止期のB細胞上には発現されておらず、末梢血単球(PBC)およびDC上には低レベルで発現されている。しかし、その発現は、B細胞上およびその他の、マクロファージやDCなどのAPC上では活性化後にアップレギュレートされる。これに対して、CD86はPBCやDC上で構成的に発現され、B細胞上ではより急速にアップレギュレートされる。T細胞受容体(TCR)のAPC上でのMHC/ペプチド複合体との相互作用によって、T細胞上のCD80/86のCD28との共結合が可能となり、そのことが脂質キナーゼであるホスファチジルイノシトール3-キナーゼのチロシンリン酸化をもたらし、今度はそのことが一連の細胞内イベントを開始させてIL-2遺伝子発現の誘導、細胞増殖、およびエフェクター機能への分化をもたらす。シグナル2はさらに抗アポトーシス遺伝子、例えばBclxLなどの調節による細胞死を防ぐことによって増大性の免疫応答を増やすことができる。
【0060】
OX40Lは樹状細胞およびそのほかのAPCによって発現され、活性化T細胞上に存在するOX40と結合する。OX40Lは183個のアミノ酸を含んでいる(21950 Da)。Miuraら, Mol. Cell. Biol. 11:1313-1325(1991)を参照せよ。OX40Lの完全なアミノ酸配列はSwiss-Protデータベースの寄託No.P23510で見ることができる。OX40LはII型の糖タンパク質で、残基1-23は細胞質ドメインであり、残基24-50は膜貫通ドメイン、残基51-183は膜貫通ドメインを形成している。OX40Lのヌクレオチド配列は3510bpで、コード配列は157-708である(GenBank寄託No.NM_003326.2を参照せよ)。同系の受容体であるOX40と結合することのできるOX40Lの残基51-183またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーと連結またはC末端で結合ペアメンバーと融合させたものとして発現させることができる。
【0061】
LIGHTポリペプチド(TNFS14、HVEM-L、LTg、TR2としても知られている)はTNFスーパーファミリーのメンバーで、リンホトキシンと相同である。Mauriら, Immunity 8(1):21-30(1998)を参照せよ。ヒトLIGHTの完全なアミノ酸配列はSwiss-Protデータベースの寄託No.O43557で見ることができる。LIGHTは240個のアミノ酸を含んでおり(26351 Da)、II型の糖タンパク質で、残基1-37は細胞質ドメインを形成するものと考えられ、残基38-58は単一の膜貫通ドメインを形成していると考えられ、残基59-240は細胞外ドメインを形成しているものと考えられる。切断部位は残基82-83にある。ヒトのLIGHTをコードするヌクレオチド配列はGenBank寄託No.NM_172014で見ることができる。
【0062】
同系の受容体であるHVEM、LTβR、またはTR6と結合することのできるLIGHTの残基59-240またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーとの融合タンパク質として連結または発現させることができる。例えば、図1Aおよび1Bは、マウスLIGHTの細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいるキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)を示している。あるいはまた、LIGHTはビオチニル化して、共刺激性部分としてLIGHTを含み、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートを形成させることができる。
【0063】
LIGHTは主として活性化されたT細胞、NK細胞、および未熟な樹状細胞上に発現され、免疫応答の様々な様相の調節に関わる。LIGHTは膜結合タンパク質として合成されるが、その細胞表面での発現はいくつかの翻訳後機構によって調節されている。LIGHTはそれの発現から数分以内にマトリクスメタロプロテイナーゼによって細胞表面から切り離され、可溶性の分子として蓄積する(アイソフォーム1;これはほぼ残基83-240である;Swiss-Prot O43557-1)。細胞表面の細胞質セグメントはアイソフォーム2である(Swiss-Prot O43557-2)。さらに、種々の細胞のタイプが小胞内にLIGHTを貯蔵しており、様々な生理学的刺激による活性化で分泌される。LIGHTの可溶性の形態のものの役割については十分にその特性が明らかになってはいないが、HVEMおよびLTβRと競合することによって、膜に結合した形態のLIGHTの機能を阻害するネガティブフィードバックとして働いているのかもしれない。
【0064】
LIGHTは3種類の異なる受容体と相互作用する:(1)T細胞上のヘルペスウイルス侵入介在因子(Herpesvirus Entry Mediator:HEMV);(2)主として上皮細胞および間質細胞上に発現されるLTβR、ならびに(3)種々の細胞上にある可溶性デコイ受容体3。これらの相互作用がLIGHTに種々の機能をもたらしている。間質細胞上のLTβRとの相互作用は、種々のサイトカイン/ケモカインの産生、リンパ節(LN)器官形成、および二次リンパ構造の回復を伴う。他方、LIGHTのリンパ球上にあるHVEM受容体との相互作用は、IFN-γおよびGM-CSFを主とするサイトカインの活性化と産生をもたらす。このような状況では、LIGHT/HVEM系はTh1タイプの応答の活性化、これは腫瘍の根絶に非常に重要な役割を果たすが、この活性化を伴って共刺激シグナルを送るものと思われる。
【0065】
シグナル3
シグナル3を刺激するための共刺激性部分の代表的なものとしては、シグナル3を刺激するサイトカインや成長因子、例えば、IL-2、IL-4、およびTGF-β(TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3を含む)などが含まれる。免疫治療法に有用なIL-2とIL-4部分は当業界では既知である。例えば、Earleら, 2005, 上述の文献;Thorntonら, 2004, J. Immunol. 172:6519-23;Thorntonら, 2004, Eur. J. Immunol. 34:366-76を参照せよ。1実施形態においては、該サイトカインの成熟した部分が用いられる。
【0066】
例えば、IL-2もしくはIL-4、またはそれらの活性を有する断片は、本発明での使用のために、結合ペアメンバーと連結するかまたは融合タンパク質として発現させることができる。例えば、同時係属の米国特許出願第10/312,245号では、本発明において有用な、IL-2もしくはIL-4の成熟した部分とコア・ストレプトアビジンとを含んでいるキメラタンパク質について開示されている。図6Aと6BはIL-2-CSAキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号10)およびアミノ酸配列(配列番号11)を示しており、それらも参照せよ。あるいはまた、IL-2もしくはIL-4は当業界では既知の方法でビオチニル化して、IL-2もしくはIL-4を共刺激性部分とし、ビオチンを結合ペアメンバーとして含んでいるコンジュゲートが提供される。例えば、Jordanら, 2003, Clin. Diag.Lab.Immunol. 10:339-44;DeJongら, 1995, J. Immunol. Methods, 184:101-12を参照せよ。
【0067】
TGF-β1(TGF-β、TGF1、CED、DPD1、HGNC:2997、進行性骨幹異型性症1、トランスフォーミング成長因子β1としても知られている)は、多機能性ペプチドで多数の細胞タイプで増殖、分化、およびその他の機能を調節している。多数の細胞がTGF-β1を合成(および分泌)しており、ほぼ全てはこのペプチドに対する受容体を有している。TGF-β1は他の多数のペプチド性の成長因子の作用を調節し、それらの効果の正か負かの方向性を定める。TGF-β1は骨の再構築(remodeling)に重要な役割を果たしており、また、骨芽細胞による骨形成の強力な刺激剤であり、方向の定まった(committed)骨芽細胞の走化性、増殖、および分化を起こさせる。
【0068】
TGF-β1分子は390個のアミノ酸を含んでいる(44341 Da)。これは前駆体であり、切断された成熟したTGF-β1とLAP(latency-associated peptide)となる。不活性型はTGF-β1ホモダイマーが非共有結合でLAPホモダイマーと連結されたものからなっている。この不活性な複合体は表面に出ないTGF-β結合タンパク質を含んでいる。活性型は、112個のアミノ酸の成熟したTGF-βがモノマーの形態である、ホモダイマーでジスルフィド結合で連結されている。このアミノ酸配列はSwiss Protデータベース中に寄託No.P01137で記載されており、その配列には残基1-29に29個のアミノ酸からなるシグナルペプチドがあり、残基30-278に249個のアミノ酸からなるLAPがあり、残基279-390に112個のアミノ酸からなる活性型TGF-β1配列があり、残基244-246に3個のアミノ酸からなる細胞付着部位がある。多数の変異体配列があり、それらは、本発明に包含される。TGF-β1遺伝子のヌクレオチド1-2745を示しているヌクレオチド配列はGenBankで寄託No.NM-000660で見ることができ、その配列でコード配列は塩基842-2017である。この核酸配列はもともとはDnrykら, 1987, Nucl. Acids. Res.で公表されたものである。
【0069】
TGF-β1は可溶性および膜に結合した成長因子として存在し、主として器官形成および胚の早期パターン形成に関与している。TGF-βは免疫系において重要な役割を果たしている。例えば、TGF-β1の欠損したマウスは短命で、重要な臓器中への炎症性リンパ球およびマクロファージの多量の浸潤により死亡するが、これはTGF-β1が末梢における免疫寛容に影響を及ぼしていることを示している。
【0070】
最近の一連の研究ではTGF-βは、種々の自己免疫および移植免疫の状況において、自己抗原および同種抗原に対する免疫寛容をメディエートすることができることが示唆されている。例えば、ラットでドナー特異的輸血を用いて同種移植片免疫寛容を起こさせると、それには、リンパ球浸潤による移植片内の高レベルのTGF-β発現、およびTGF-βで抑制される免疫寛容に対するブロッキング抗体を伴う(Josienら, 1998, J. Clin. Invest., 102:1920-26)。さらに、移植された心臓内でTGF-βの異所性の発現が起こると、同種移植レシピエントの長期間の生存をもたらした(同上の文献)。さらに、NODでは抗CD3抗体を用いて確立された自己寛容はTGF-β依存性であることが見出された(Belghithら, 2003, Nat. Med., 9:12-02-08)。また、膵島細胞におけるTGF-βの一時的発現は、Treg細胞の増殖をもたらし、それによってNODでの自己免疫性糖尿病の予防に有効であることが示された(Pengら, 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1-1:4572-77)。同様に、TGF-β1を用いた全身的遺伝子治療は、免疫寛容、β細胞の再生、および明らかに糖尿病状態のNODの糖尿病の治療をもたらした(Luoら, 2005, Transplantation, 79:1091-96)。
【0071】
TGF-βは、Treg細胞の発生、ホメオスタシス、および増殖に重要な役割を果たしている。例えば、TGF-β1を欠損しているマウスでは末梢でのTreg細胞の数がTGF-βによるFoxP3の調節により、減少している(Pengら, 上述の文献)。TGF-β欠損マウスから野生型マウスへTreg細胞を養子免疫細胞移植すると、Treg細胞は持続的に存在し機能するが、それはおそらくTGF-β1のパラクリン作用によるものであろう。TGF-βはまた、NODでTreg細胞のホメオスタシスと機能に重要な役割を果たしていることも示されている。例えば、PoPら, 2005, J. Exp. Med., 201:1333-46を参照せよ。NODマウスでは、疾患(糖尿病)に抵抗性の系統と比較すると、Treg細胞の絶対数が著しく減少している。この減少はTGF-βの細胞表面での発現の低下によってもたらされたものであり、そのことが今度は疾病の発生と同時に起こるFoxP3の発現の低下とTreg細胞の機能の変化をもたらす。例えば、Greggら, 2004, J. Immunol., 173:7308-16;Youら, 2005, Diabetes, 54:1415-22;Popら, 上述の文献、を参照せよ。
【0072】
TGF-βはまた、FoxP3の発現を誘導することによってナイーブなCD4+CD25-T細胞のTreg細胞への転換に重要な役割を果たす。TGF-βによって転換されたTreg細胞はT細胞の増殖を抑制し、抗原によるチャレンジ後のT細胞のクローンの増殖を防ぐ。TGF-βがFoxP3の発現を誘導する機構に焦点を当てた研究はごく少数しかないが、この作用はFox`3による阻害性Smad7のダウンレギュレーションが起こり、それによってTGF-βのポジティブレギュレーターであるSmad3と4を介するシグナル伝達が可能となることによってメディエートされているものと思われる。
【0073】
TGF-β、またはそれの活性を有する断片は、本発明での使用のために、結合ペアメンバーと連結するかまたは融合タンパク質として発現させることができる。例えば、同時係属の米国特許出願第10/312,245号では、本発明において有用な、ヒトTGF-βの活性ドメインとコア・ストレプトアビジンとを含んでいるキメラタンパク質について開示されている。図7Aと7Bはこのキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号12)およびアミノ酸配列(配列番号13)を示しており、それらも参照せよ。あるいはまた、TGF-βまたはそれの活性を有する断片は当業界では既知の方法でビオチニル化して、TGF-βを共刺激性部分とし、ビオチンを結合ペアメンバーとして含んでいるコンジュゲートが提供される。ビオチニル化したIL-2も市販のもの(R&D Systems)を購入することができる。
【0074】
結合ペアメンバー
結合ペアの代表例としては、ビオチンと、ストレプトアビジン(SA)またはアビジンが挙げられる。ビオチンとの結合活性を実質的に保持している、例えば天然のSAまたはアビジンの少なくとも50%以上の結合アフィニティーを保持しているSAまたはアビジンの断片も用いることができる。そのような断片としては、完全長のストレプトアビジンポリペプチドの末端切断型のものである「コア・ストレプトアビジン」(CSA)が含まれ、そのCSAにはストレプトアビジンの残基13-138、14-138、13-139、または14-139のものが含まれる。例えば、Parlerら, 1987, J. Biol. Chem., 262:13933-37を参照せよ。その他のストレプトアビジンおよびアビジンの末端切断型のものでビオチンに対する強い結合性を保持しているものも用いることができる。例えば、Sanoら, 1995, J. Biol. Chem. 270(47):28204-09を参照せよ(コア・ストレプトアビジンの変異体16-133と14-138について述べている)(米国特許第6,022,951号)。ビオチンとの結合活性を実質的に保持しているかまたはビオチンとの結合活性が増大しているストレプトアビジンの変異体およびストレプトアビジンのコア型のものも用いることができる。例えば、Chilcotiら, 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92(5):1754-58;Reznikら, 1996, Nat. Biotechnol., 14(8):1007-11を参照せよ。例えば、免疫原性を低減させた変異体、例えばT細胞エピトープまたはリンパ球エピトープと思われるものを除去するために部位特異的突然変異誘発によって変異させた変異体などを用いることができる。Meyerら, 2001, Protein Sci., 10:491-503を参照せよ。同様に、ビオチンとの結合活性を実質的に保持しているかまたはビオチンとの結合活性が増大しているアビジンおよびアビジンのコア型ものも用いることができる。Hillerら, 1991, J. Biochem. 278:573-85;Livnahら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5076-80(1993)を参照せよ。便宜上、本明細書中では「アビジン」および「ストレプトアビジン」という用語は、それらの結合ペアメンバーのビオチン結合性の断片、変異体、およびコア型のものを包含するものとする。アビジンおよびストレプトアビジンは市販されている。さらに、ストレプトアビジンとアビジンをコードする核酸配列、およびストレプトアビジンとアビジンのアミノ酸配列は、例えば、GenBank寄託No.X65082、X03591、NM_205320、X05343、Z21611、およびZ21554で見ることができる。
【0075】
本明細書で用いている「ビオチン」には、細胞表面(腫瘍細胞の表面を含む)に結合することのできる、ビオチン含有部分が含まれ、そのようなものとしては例えば、NHS-ビオチンおよびEZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-Biotin(Pierce)などが挙げられる。ビオチンのこのようなタンパク質反応性の形態のものが市販されている。
【0076】
ビオチンとその結合パートナーであるアビジンまたはストレプトアビジンとの間の相互作用は、本発明ではいくつかの利点がある。例えば、ビオチンはストレプトアビジン(1013M-1)およびアビジン(1015M-1)の双方に対して非常に強いアフィニティーを有している。この実施形態は、ストレプトアビジンまたはアビジンを含んでいるコンジュゲートをさらにビオチンを含んでいるコンジュゲートと複合体化できるので有利である。さらに、ストレプトアビジンおよびアビジンの双方とも4量体ポリペプチドであり、各々がビオチン4分子と結合する。従って、ストレプトアビジンまたはアビジンを含んでいるコンジュゲートは4量体またはそれより高次の構造を形成する傾向があり、複数のビオチン含有部分と複合体を形成することができる。
【0077】
当業者であれば、免疫共刺激性分子の2量体、3量体、4量体、およびより高次な多量体を含んでいるコンジュゲートなどの、より高次の構造を持つ免疫共刺激性分子を提供するために、他のメカニズム(例えば、他の連結部分または化学的もしくは遺伝子の架橋を用いる他のコンジュゲーション方法など)を用いることができ、それもまた有利な性質を示すものとなることは理解されよう。そのようなコンジュゲートは本発明の範囲内に含まれる。
【0078】
コンジュゲート
上述のとおり、本発明の1態様は、少なくとも1つの共刺激性部分と結合ペアのメンバーを含んでいるコンジュゲートに関する。そのようなコンジュゲートは当業界ではよく知られた方法で作製することができる。例えば、その共刺激性部分と結合ペアメンバーは共有結合でお互いに結合させることができ、または直接的にもしくはリンカーを介してコンジュゲート化することができる。
【0079】
本発明の1実施形態においては、該コンジュゲートは共刺激性ポリペプチドおよび結合ペアメンバー、例えばCSAなどを含んだ融合タンパク質である。融合タンパク質は当業界で既知の様々な多数の方法のいずれかによって作製することができる。例えば、その融合タンパク質の1つ以上の成分ポリペプチドは化学的に合成することができ、またはよく知られた組換え核酸技法を用いて作ることができる(本明細書では「核酸」とはRNAまたはDNAを意味する)。本発明で有用な核酸配列は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いて得ることができる。種々のPCR法が、例えば、「PCRプライマー:実験室マニュアル」"PCR Primer:A Laboratory Manual", Dieffenbach 7 Dveksler編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995中に記載されている。
【0080】
1実施形態においては、共刺激性ポリペプチドはそのC末端から結合ペアメンバーのN末端を介して結合する。例えば、本発明は、CD80-CSA融合タンパク質、TGF-β-CSA融合タンパク質、IL-2-CSA融合タンパク質、およびIL-4-CSA融合タンパク質が含まれ、それらではCD80、TGF-β、IL-2、またはIL-4部分がそのC末端からCSAのN末端を介して結合している。別の1実施形態においては、共刺激性ポリペプチドはそのN末端から結合ペアメンバーのC末端を介して結合する。例えば、本発明は、CSA-4-1BBL融合タンパク質を含み、その融合タンパク質では、CSA部分はそのC末端からその共刺激性部分のN末端を介して結合している。共刺激性ポリペプチドは結合ペアメンバーと直接的にまたは1つ以上の連結部分、例えば1つ以上の連結ポリペプチドなどを介して結合することができる。
【0081】
共刺激性ポリペプチドの断片および/もしくは結合ペアメンバーの断片を含んでいる核酸及びポリペプチドは、その断片のもととなっている完全長のポリペプチドの活性を保持しているものである限りは、本発明に有用である。従って、そのような共刺激性断片は共刺激活性を保持し(例えば、受容体またはリガンドと結合する活性を保持し)、結合メンバーの断片はそれの結合パートナーとの結合能を保持しているはずである。そのような断片は、当業界では日常的に行われている方法、例えば下記の実施例中に例示しているような方法を含むが、そのような方法によって、保持している活性でスクリーニングすることができる。共刺激性ポリペプチドの典型的な断片については上述している。
【0082】
コンジュゲートにはペプチドリンカーなどのリンカーを、結合ペアメンバーと共刺激性部分との間に含めることができる。リンカーの長さと組成はその共刺激性部分の機能のどちらの活性をも増強するものを選択することができる。リンカーは通常はアミノ酸約3個から15個の長さであり、より好ましくはアミノ酸約5個から10個の長さであるが、より長いまたはより短いリンカーを用いることもでき、また、リンカーを全くなくすこともできる。単鎖抗体の重鎖と軽鎖をつなぐために用いられているものなどのフレキシブルなリンカー(例えば、(Gly4Ser)3)を用いることができる。例えば、Hustonら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883;米国特許第5,091,513号、第5,132,405号、第4,956,778号、第5,258,498号、および第5,482,858号を参照せよ。その他のリンカーとしては、FENDAQAPKSまたはLQNDAQAPKSが挙げられる。免疫グロブリンのFc領域の1つ以上のドメイン(例えば、CH1、CH2、および/もしくはCH3)もリンカーとして用いることができる。
【0083】
修飾された、変化させた、または変異させた核酸及びポリペプチドも、それらが関連する核酸またはポリペプチドの活性を保持しているものである限りは、本発明に有用である。例えば、本発明での使用に適した核酸及びポリペプチド配列は、関連する核酸またはポリペプチドに対して、すなわち、既知の免疫共刺激性ポリペプチドまたは結合ペアメンバーをコードする核酸に対して、少なくとも約80%の配列の同一性(少なくとも80%の配列の同一性を含む)を有するものとすることができる。いくつかの実施形態においては、該核酸配列またはポリペプチドは、関連する核酸またはポリペプチドと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列の同一性を有する。
【0084】
本発明は、塩基を「サイレント」に変化させて同じアミノ酸をコードするようにした(すなわち、縮重核酸配列)核酸を包含する。本発明はまた、保存的なアミノ酸の置換が行われたポリペプチドをコードする核酸、およびそのポリペプチドをも包含する。保存的なアミノ酸置換(例えば、1つの疎水性残基を別の疎水性残基と置換する、など)は、当業界ではよく知られており、例えば、点突然変異や類似の方法で行うことができる。ある修飾された配列、変異体が適切であるか否かは、断片に関して上記で述べた方法などのような、当業界では既知の、受容体結合および/または生物学的スクリーニング法を用いて確認することができる。
【0085】
本明細書で用いている「配列同一性%」は、整列させた核酸配列またはポリペプチド配列中でのマッチした位置の数を求め、マッチした位置の数を整列させたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数で割り、100をかけることによって計算される。マッチした位置とは、整列させた配列内の同じ位置で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸となっている位置のことを意味する。整列させたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数とは、第2の配列を整列させるために必要なヌクレオチドまたはアミノ酸の最少の数を意味し、非相同配列とのアラインメント(例えば、強制的なアラインメント)、例えば、対象とする配列(すなわち、免疫共刺激性ポリペプチドまたは結合ペアメンバーをコードする配列)のN末端またはC末端で融合させた配列などは含まない。整列させたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数は、コード配列全体に対応したものであってもよく、またはここで定義した完全長の配列の断片に対応するものであってもよい。
【0086】
配列はBLAST(basic local alignment search tool)プログラム中に組み込まれている、Altschulら(1997, Nucleic Acids res., 25:3389-3402)によって報告されたアルゴリズムを用いて整列させることができ、それはインターネットでncbi.nlm.nih.govで入手することができる。BLASTでのサーチまたはアラインメントはある核酸分子(「問合せ(query)配列」)と何らかの配列またはその部分との間の配列の同一性のパーセンテージをAltschulアルゴリズムを用いて求めるために行うことができる。BLASTNは核酸配列を整列させその同一性を比較するために用いることができ、BLASTPはアミノ酸配列を整列させその同一性を比較するために用いることができる。ある治療用ポリペプチドをコードする配列および別の1配列の間の同一性のパーセンテージを計算するためにBLASTプログラムを用いる場合には、ギャップペナルティーのデフォルトを含むそれぞれのプログラムのデフォルトパラメーターを用いることができる。
【0087】
本発明の核酸は、サザンプロット分析またはノーザンブロット分析(すなわちハイブリダイゼーション)、PCR、またはin situハイブリダイゼーション分析などの方法によって検出することができる。ポリペプチドは典型的には、トランスフェクトされた細胞系統での免疫細胞化学的方法、またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後にクーマシーブルー染色を行うか、またはその特定のポリペプチドに対して特異的結合アフィニティーを有する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)を用いてウエスタンブロット分析を行うことによって検出することができる。これらの方法の多くは、Sambrookらの文献(1989, 「分子クローニング、実験室マニュアル」"Molecular Cloning, A Laboratory Manual", 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)に詳細に述べられている。
【0088】
共刺激性ポリペプチドおよび結合ペアメンバーをコードする核酸配列は、従来の分子生物学の技法を用いて、1つの構築物中にお互いに機能しうる形で連結させることができる。例えば、「分子クローニング、実験室マニュアル」"Molecular Cloning, A Laboratory Manual"(Sambrookら, 2001, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press)、または「分子生物学の短いプロトコール」"Short Protocols in Molecular Biology"(Ausbelら, 2002, 第5版, Current Protocols)を参照せよ。これらの方法での使用に適した構築物は市販されており、当業界では日常的に用いられている。構築物には、核酸配列の発現をモジュレートさせるプロモーター配列、エンハンサー配列などの調節エレメント、および応答エレメント、および/または誘導エレメントなどの発現に必要なエレメントを含めることができる。本明細書で「機能しうる形で連結された」とは、(i)プロモーターおよび/もしくはその他の調節エレメントを、核酸配列に対して、その核酸配列の発現を指令または調節するように配置すること、および/または(ii)該共刺激性ポリペプチドをコードする核酸、および該結合ペアメンバーをコードする核酸を、それらのコード配列が「インフレーム」となり、すなわち該構築物が共刺激性ポリペプチドおよび結合ペアメンバーを含んでいる融合タンパク質をコードすることとなるように配置することを意味する。
【0089】
構築物は当業界では既知の方法によって増加または発現させて、宿主細胞中でポリペプチドを生成させることができる。本明細書で用いている「宿主」または「宿主細胞」という用語は、大腸菌(E.coli)などの原核生物のみならず、酵母、昆虫、植物、および動物細胞などの真核生物の細胞をも含んでいる。動物細胞としては、例えば、COS細胞およびHeLa細胞が含まれる。宿主細胞は当業者には広く知られている技法のいずれか、例えばリン酸カルシウムもしくは酢酸リチウム沈殿、エレクトロポレーション(電気穿孔法)、リポフェクション、および遺伝子銃(particle bombardment)などを用いて、DNA分子(例えば、ある構築物)で形質転換またはトランスフェクトさせることができる。本発明のベクターを含んでいる宿主細胞は、例えば、ベクターの増殖、核酸(DNAまたはRNA)の産生、免疫共刺激性ポリペプチドもしくはそれの断片の発現、または上述のとおり、融合タンパク質の発現などの目的に用いることができる。
【0090】
図1Aと1B、2Aと2B、3Aと3B、4、5Aと5B、6Aと6B、および7Aと7Bはコア・ストレプトアビジンと共刺激性ポリペプチドを含んでいるコンジュゲートをコードする核酸配列(配列番号1、3、5、8、10、および12)、ならびにそれらによってコードされる対応するアミノ酸配列(配列番号2、4、6、7、9、11、および13)を示している。
【0091】
本発明はまた、共刺激性部分と、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートをも提供する。共刺激性部分は当業界では既知の方法でビオチニル化することができ、それについては下記の実施例中で例示している。
【0092】
たとえば、Avidity, Inc.(Denver, CO)のBiotin AviTag技法を、ビオチニル化タンパク質の作製に用いることができる。Biotin AviTagは、ビオチンリガーゼであるBirAによって認識されるユニークな15個のアミノ酸のペプチドを含んでおり、それはビオチンをそのペプチド配列中のリジン残基に付着させる(Schatz, 1993, Biotechnology, 11:1138-43)。このBiotin AviTagを対象とするどのようなタンパク質とも遺伝子的に融合させることができ、それによってそのタンパク質をビオチン分子でタグすることができる。
【0093】
Biotin AviTag技法の1つの欠点となりうることは、ビオチニル化の程度が低い可能性があることであり、それはこのシステムがタグされる領域中の単一の、ユニークなリジンでビオチニル化するためである。そのような問題点を克服するために、生成したビオチンリガーゼを用いて精製されたタグを付されたタンパク質をin vitroで修飾することができる。ビオチニル化は酵素的に行われるので、反応条件はより穏和であり、標識は高度に特異的であり、その反応は、ビオチン誘導体を用いてタンパク質を化学的に修飾するよりも効率的である。あるいはまた、Jordanら(上述の文献)が報告している方法を遺伝子工学でビオチニル化したタンパク質を産生させるために用いることができる。
【0094】
コンジュゲートの組み合わせ
1実施形態においては、本発明はTreg細胞を増殖させる方法で有用なコンジュゲートの組み合わせを提供する。特定の1実施形態においては、その組み合わせは、(a)(i)シグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する部分、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる少なくとも1つのコンジュゲート、ならびに(b)(i)シグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する部分、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる少なくとも1つのコンジュゲート、を含んでなる。1実施形態においては、その組み合わせは、シグナル1、2、または3のうちの少なくとも1つを刺激する部分を含んでいる。特別な1実施形態においては、その部分はシグナル3を刺激する。例えば、その部分はIL-2またはIL-4を含むものとすることができる。別の1実施形態においては、その組み合わせはシグナル1、2、および3のうちの少なくとも2つを刺激する部分を含んでいる。特別な1実施形態においては、その部分はシグナル2および3を刺激する。別の特別な1実施形態においては、その部分はシグナル1および3を刺激する。また別の1実施形態においては、その組み合わせはシグナル1、2、および3の各々を刺激する部分を含む。
【0095】
1実施形態においては、該組み合わせは、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲートを含んでいる。
【0096】
上述のとおり、1個以上のいずれかのコンジュゲートを、第1のコンジュゲートメンバー(例えば、共刺激性部分)および第2のコンジュゲートメンバー(例えば、結合ペアメンバー)を含んでいる融合ポリペプチドを含んだものとすることができる。1実施形態においては、該結合ペアの第1のメンバーはアビジンまたはストレプトアビジン(コア・ストレプトアビジンを含む)であり、該結合ペアの第2のメンバーはビオチンである。
【0097】
コンジュゲートは別々の組成物中に入っている形で提供することができ、または単一の組成物中に入ったものとすることができる。各組成物はさらに、当業界では既知の、製薬上許容される担体、添加剤、または希釈剤を含むことができる。製薬上許容される担体は、投与を考慮する際に、それが不活性であるかまたは医学上許容されるものであり、活性成分と共存しうるものであるので、その組成物のためのビヒクルとして用いることのできる物質である。製薬上許容される担体は、従来の製薬に用いられる添加剤、例えば希釈剤や保存剤などを含んだものとすることができる。
【0098】
該組み合わせが単一の組成物で提供される場合には、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと、第1および第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して、結合することができる。
【0099】
代表的な組み合わせとしては、次のものの1つ以上が挙げられる:
4-1BBLとコア・ストレプトアビジンを含んでいるコンジュゲートまたは融合タンパク質;
CD80とコア・ストレプトアビジンを含んでいるコンジュゲートまたは融合タンパク質;
TGF-βおよびコア・ストレプトアビジンを含んでいるコンジュゲートまたは融合タンパク質;
抗原(または抗原/MHC複合体)およびビオチンを含んでいるコンジュゲート;
IL-2およびビオチンを含んでいるコンジュゲート;
IL-4およびビオチンを含んでいるコンジュゲート;
抗CD3抗体およびビオチンを含んでいるコンジュゲート;および
抗CD28抗体およびビオチンを含んでいるコンジュゲート。
【0100】
方法
本発明は、Treg細胞を増殖する方法をも提供する。1実施形態においては、その方法はTreg細胞を、(a)(i)シグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する部分、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる少なくとも1つのコンジュゲート、ならびに(b)(i)シグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する部分、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる少なくとも1つのコンジュゲートと接触させることを含んでいる。1実施形態においては、該方法はTreg細胞を、シグナル1、2、または3のうちの少なくとも1つを刺激する部分と接触させることを含んでいる。特別な1実施形態においては、その部分はシグナル3を刺激する。例えば、その部分はIL-2またはIL-4を含んだものとすることができる。別の1実施形態においては、該方法はTreg細胞をシグナル1、2、および3のうちの少なくとも2つを刺激する部分と接触させることを含んでいる。特別な1実施形態においては、その部分はシグナル2および3を刺激する。別の1実施形態においては、その部分はシグナル1および3を刺激する。また別の1実施形態においては、該方法はTreg細胞をシグナル1、2、および3の各々を刺激する部分と接触させることを含んでいる。
【0101】
特定の1実施形態においては、該方法はTreg細胞の集団を次のものと接触させることを含んでいる:
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート。
【0102】
上述のとおり、Treg細胞は、4-1BBL、CD80、およびTGF-βに対する受容体を発現していることが見出されている。従って、1実施形態においては、Treg細胞は第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つについての受容体を含んでおり、それによって、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、第1のコンジュゲートメンバーと受容体との間の結合を介して、Treg細胞と結合する。この実施形態においては、該コンジュゲートはそれらの受容体と結合して、Treg細胞の活性化と増殖のために受容体と架橋する。この実施形態のさらに別の1態様においては、第4、第5、第6、および第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して、第1または第2のコンジュゲートのうちの少なくとも1つを経由してTreg細胞と結合する。
【0103】
Treg細胞の集団は、CD4+細胞、CD25+細胞、およびFoxP3+細胞を含んだものとすることができる。特別な1実施形態においては、そのTreg細胞の集団はCD4+CD25+FoxP3+細胞を含んでいる。
【0104】
1実施形態においては、該方法はex vivoで、Treg細胞をex vivoでコンジュゲートと接触させることによって行われる。この実施形態の1態様においては、少なくとも2つのコンジュゲートがTreg細胞と実質的に同時に接触する。例えば、少なくとも2つのコンジュゲートは、Treg細胞の集団と接触する単一の組成物中に入った形で提供することができる。特別な1実施形態においては、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して、第4、第5、第6、および第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと結合する。
【0105】
本発明の方法のまた別のex vivoの1実施形態においては、少なくとも2つのコンジュゲートがTreg細胞と順次接触する。例えば、少なくとも2つのコンジュゲートは、Treg細胞の集団と順次接触する別々の組成物中に入った形で提供することができる。この後者の実施形態においては、第1、第2、および/もしくは第3のコンジュゲートをまず接触させ、4-1BBL、および/もしくはCD80、および/もしくはTGF-βと、Treg細胞上のその受容体との間の結合を介して、Treg細胞を結合させることができる。次いで、第4、第5、第6、および/もしくは第7のコンジュゲートを接触させ、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介してTreg細胞を結合させることができる。
【0106】
例えば、Treg細胞のex vivoでの増殖は、患者からTreg細胞を得て、標準的な技法、例えばCD25およびCD4に対する抗体を用いてその細胞を精製することによって得ることができる。その後、精製したTreg細胞を共刺激性部分(CSA-4-1BBLなど)を含んでいるコンジュゲート、抗CD3抗体を含んでいるコンジュゲート(ビオチニル化抗CD3抗体など)、およびIL-2(ビオチニル化IL-2を含む)の存在下で培養する。3日間刺激した後、その培養液にIL-2(さらに4-1BBLを添加または添加せずに)を添加して7日間置く。1実施形態においては、TGF-βを含んでいるコンジュゲート(例えばCSA-TGF-βまたはビオチニル化TGF-β)も開始時から2-3週間、または培養プロセスを通じて、用いることができる。このサイクルは、細胞が培養液中に維持されている限りは反復することができる。
【0107】
別の1実施形態においては、Treg細胞を増殖させる方法はin vivoで、該コンジュゲートを患者に投与することによって行われる。この実施形態においては、コンジュゲートは順次、または実質的に同時に投与することができる。例えば、コンジュゲートは順次投与されるかまたは実質的に同時に投与される別々の組成物中に入った形で投与することができ、またはコンジュゲートは単一の組成物中に入った形で投与することができる。
【0108】
該組成物が順次投与される実施形態においては、第1、第2、および/もしくは第3のコンジュゲートがまず投与され、4-1BBL、および/もしくはCD80、および/もしくはTGF-βと、Treg細胞上のその受容体との間の結合を介して、Treg細胞への局在化が行われる。次いで、第4、第5、第6、および/もしくは第7のコンジュゲートが投与されて、それらを、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して、Treg細胞に集中させることができる。
【0109】
該組成物が単一の組成物中に入った形で同時に投与される実施形態においては、第1、第2、および/もしくは第3のコンジュゲートは、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して第4、第5、第6、および/もしくは第7のコンジュゲートと結合させることができる。この実施形態においては、該コンジュゲートは、そのコンジュゲートの4-1BBLおよび/もしくはCD80および/もしくはTGF-β成分とTreg細胞上のそれらの受容体との間の結合を介してTreg細胞上に局在化させることができる。
【0110】
該コンジュゲートは全身的にまたは局所的に投与することができ、例えば、静脈内、腹腔内、または皮下注射などで投与することができる。1実施形態においては、1つ以上のコンジュゲートが異なる投与経路で投与される。例えば、1つ以上のコンジュゲートを局所的に投与し、1つ以上を全身的に投与することができる。
【0111】
本発明はまた、遊離の共刺激性部分、すなわち上述のコンジュゲートの構成成分ではないものをコンジュゲートと共に用いることをも含んでいる。従って、例えば、Treg細胞を上述のとおり、1つ以上のコンジュゲートと接触させ、また、1つ以上の遊離の共刺激性部分、例えば外因性のIL-2、IL-4、または抗CD3抗体などとも接触させる。Treg細胞は1つ以上の遊離の共刺激性部分と、1つ以上のコンジュゲートのTreg細胞との接触と同時に、それに先だって、またはその後に、接触させることができる。この接触は上述のとおりex vivoで、またはin vivoで行うことができる。
【0112】
この実施形態においては、用いられる外因性のIL-2の量は、従来技術で必要とされた大きな量よりもはるかに少ない。例えば、従来技術の方法では2000 IU/mLが用いられたが、我々のものでは、はるかに少ない量、それには25 IU/mLのIL−2が含まれるが、そのような量で作用した。従って、本発明はIL-2を約25 IU/mL未満から少なくとも約1000 IU/mL以上に至るまでの範囲の量で用いる方法を含んでいる。例えば、本発明はIL-2を約25 IU/mL未満、約25 IU/mL、約50 IU/mL、約75 IU/mL、約100 IU/mL、約150 IU/mL、約200 IU/mL、約250 IU/mL、約300 IU/mL、約350 IU/mL、約400 IU/mL、約450 IU/mL、約500 IU/mL、約600 IU/mL、約700 IU/mL、約800 IU/mL、約900 IU/mL、約1000 IU/mL、またはそれ以上用いる方法を含んでいる。
【0113】
下記の実施例で論じるデータは、シグナル3の刺激がTreg細胞の増殖に重要であることを示唆している。本発明では、IL-2、IL-4、または別のサイトカインなどのシグナル3を刺激する部分を含んでいるコンジュゲートを用いて、シグナル3を刺激することができる。あるいはまた、外因性のIL-2またはIL-4などの、シグナル3を刺激する遊離の共刺激性部分を用いてシグナル3を刺激することができる。また別の代替法としては、シグナル3は何らかの別の手段、例えば当業界で既知の他の手段などによって刺激することができる。
【0114】
本発明はまた、上述の方法でex vivoで増殖させたTreg細胞を患者に投与する方法をも提供する。この実施形態においては、そのようなTreg細胞は、静脈内投与などの上述のどのような投与経路によっても投与することができる。
【0115】
適切な患者としては、Treg細胞の増殖を必要とするヒトまたはその他の動物が含まれる。例えば、自己免疫疾患、例えばI型糖尿病などに罹患している、またはその危険性のある患者、または外来性の移植片の移植を受けた患者(すなわち、同種移植患者および異種移植患者)は本発明のTreg細胞増殖の標的となる患者であり、骨髄移植を受けた腫瘍を有する患者(GVHD予防のため)や外来性の造血幹細胞もしくはその他の幹細胞の移植を受けた患者(例えば、造血性の遺伝的欠損または自己免疫疾患を治療するために混合キメラ(mixed chimerism)が生ずるように治療を受けた患者など)。本発明はまた、病原性のTeff細胞の増殖によって生ずる、またはその増殖に伴う何らかの疾患に罹患している、またはその危険性のある患者を治療するためにも有用である。
【0116】
1実施形態においては、該方法はさらに、ラパマイシンを患者に投与することを含んでいる。ラパマイシンは強力な免疫抑制活性を有し、実験的にも臨床的にも、移植片拒絶反応を予防するために広く用いられてきた。ラパマイシンはT細胞の活性化を妨害しないが、IL-2がメディエートするシグナル伝達の防止、および細胞サイクルのG1-S境界での分裂停止に作用し、それによってT細胞のアネルギーおよび/もしくはアポトーシスをもたらし、操作しうる免疫寛容を誘発する。ラパマイシンはmTORを阻害することによって作用するが、これは蛋白合成の開始および生存シグナルの伝達に関与するセリン/トレオニンキナーゼである。
【0117】
本発明の実施において重要なのは、ラパマイシンのTreg細胞とTeff細胞に及ぼす作用が、それらの細胞の発生、維持、および機能に関して異なることである。シクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニュリン阻害剤とは異なり、ラパマイシンはTreg細胞内のFoxP3の活性化および高レベルの発現を妨害しない。例えば、Baanら, 2005, Transplantation, 80:110-17を参照せよ。ラパマイシンはin vivoでCD4+CD8+の胸腺細胞のアポトーシスを誘発し、その結果、末梢の制御性CD4+CD25+T細胞の増殖をもたらすことが示されている(Tianら, 2004, Transplantation, 77:183-89)。ex vivoでの培養では、ラパマイシンはヒトTreg細胞の機能を妨害せず、Teff細胞の増殖およびサイトカイン分泌を阻害することが示され、Teff細胞とは異なりTreg細胞はラパマイシンが誘発するアポトーシスに抵抗性である(Gameら, 2005, Am. J. Transplant, 5:454-64)。これらの研究と同様に、ラパマイシンの存在下ではTeff細胞は、抗原によるin vitroでの活性化後に活性化によって誘発される細胞死(AICD)を起こすが、Treg細胞では優先的に増殖され、移植のレシピエントの体内に養子免疫細胞移植を行うと、同種移植された膵島の拒絶反応をブロックしうる(Battagliaら, 2005, Blood 105:4743-48)。ラパマイシンはまた、DCのより寛容誘導性の表現型に対する免疫刺激機能を変えることも示されており、それが今度はTreg細胞の分化と増殖のためのポジティブフィードバックのループとして働くことができる(Chiangら, 2004, J. Immunol. 172:1355-63)。これらの報告は、カルシニュリン阻害剤とは異なりラパマイシンは免疫寛容の誘導を妨害しない、との広く信じられていることと一致している。従って、ラパマイシンは、Treg細胞の増殖を所望している、本発明の方法での使用に適している。
【0118】
別の1実施形態においては、該方法はさらに、TGF-βをディスプレイしている外来細胞(例えば同種または異種の細胞)を含んでいる組成物を投与することを含んでなる。例えば、脾臓細胞、抗原でパルスした樹状細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、固形臓器、および膵島細胞などの外来細胞をTGF-βをディスプレイするように修飾することができる。この実施形態の特定の1態様においては、ラパマイシンもその患者に投与される。
【0119】
1実施形態においては、修飾された外来性の細胞は、(a)外来細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび外来細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾された外来細胞を形成させ、(b)その修飾された外来細胞を、TGF-βおよび結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている外来細胞を形成させる、ことを含んだ方法によって得られる。そのTGF-βは、上述のとおり、完全長のTGF-β、またはそれの活性を有する何らかの断片とすることができる。この二機能性分子は、その二機能性分子の細胞表面結合部分を介して細胞表面に結合した後に、該結合ペアの第1のメンバーが、該結合ペアの第2のメンバーに対するアフィニティーを実質的に保持しているようにデザインされる。該二機能性分子がビオチンを含んでいる場合には、その分子を下記に例示する方法、またはその他の方法、例えばWO 02/02751に記載の方法などによって細胞表面に局在化させることができる。特別な1実施形態においては、その二機能性分子は、in vivoで細胞の表面上のタンパク質と結合することのできるビオチンの形態であり、例えばNHS-ビオチンなどであるが、それにはSulfo-NHS-LC-ビオチンが含まれる。その二機能性分子がビオチンを含んでいる実施形態においては、該結合ペアの第2のメンバーはアビジンまたはストレプトアビジン(またはコア・ストレプトアビジンを含む、上述のそれらの変化体)を含んでいる。
【0120】
本発明はまた、ex vivoでTGF-βをディスプレイするように修飾された、抗原をパルスしたDCを用いてTreg細胞を増殖する方法をも提供する。本発明のこの態様においては、DCは1種以上の抗原、例えば1種以上の自己抗原などでパルスされ、次いで上述のとおりex vivoでTGF-βをディスプレイするように修飾される。1実施形態においては、そのDCは1種以上の糖尿病性自己抗原、例えばGAD、膵島細胞自己抗原(ICA)、または自己抗原NRP-A7などでパルスされる。特定の1実施形態においては、DCはGAD 65、ICA 512、およびNRP-A7の各々でパルスされる。あるいはまた、未熟なDCを膵島の溶解物を用いてパルスすることもできる。別の1実施形態においては、DCはコラーゲンでパルスされる(例えば、関節炎の治療のために)。別の1実施形態においては、DCはミエリン塩基性タンパク質でパルスされる(例えば、多発性硬化症の治療のために)。
【0121】
TGF-βをディスプレイしている、パルスされたDCを得る方法の1実施形態は、(a)未熟な樹状細胞を抗原でパルスして、パルスされた樹状細胞を得て、(b)そのパルスされた樹状細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよびその樹状細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾されたパルス樹状細胞を形成させ、(c)該修飾されたパルス樹状細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を形成させることを含んでいる。そのTGF-βは上述のとおり、完全長のTGF-β、またはそれの活性を有する何らかの断片とすることができる。特別な1実施形態においては、該二機能性分子はSulfo-NHS-LC-ビオチンを含んでいる。該二機能性分子がビオチンを含んでいる実施形態においては、該結合ペアの第2のメンバーは、アビジンまたはストレプトアビジン(またはコア・ストレプトアビジンを含む、上述のそれらの変化体)を含んでいる。
【0122】
1実施形態においては、該パルスされたDCは当業界では既知の方法によって成熟したものへ駆動される。例えば、パルスされたDCを4-1BBLとインキュベートすることによって成熟したものへと駆動することができる。
【0123】
本発明のこの態様においては、パルスされ、TGF-βをディスプレイしているDCはTreg細胞の増殖を必要としている患者、例えば、上述した標的となる患者に投与することができる。そのDCは上述したどのような投与経路によっても、例えば静脈内投与によっても投与することができる。DCの最適投与量は下記に述べるように、実験的に定めることができる。以前のパルスされたDCをNODマウスに用いた研究では、5 x 105個の細胞/動物、および2 x 105個の細胞/動物がTreg細胞の増殖を誘発させることに有効であった。
【0124】
本発明はまた、パルスされ、TGF-βをディスプレイしているDCを、上述の共刺激性コンジュゲートの1つ以上、および/もしくはラパマイシンとともに投与する方法をも包含している。従って、例えば、患者にはパルスされ、TGF-βをディスプレイしているDCを、4-1BBL、CD80、および/もしくはIL-2、または上述のその他の共刺激性部分を含んでいるコンジュゲートとともに投与することができる。さらに、またはその替わりに、患者には、ラパマイシンを投与することができる。これらの実施形態においては、1つ以上のコンジュゲートおよび/もしくはラパマイシンはDCと実質的に同時に投与することができ、またはDCの投与の前に、もしくはその後に投与することができる。
【0125】
本発明の1実施形態においては、非特異的Treg細胞の増殖が、4-1BBLおよび/もしくはCD80、IL-2、および任意でTGF-βを含んでいるコンジュゲートを用いて行われる。別の1実施形態においては、抗原特異的Treg細胞の増殖は、4-1BBLおよび/もしくはCD80およびIL-2を含んでいるコンジュゲートを外来の膵島もしくは臓器もしくは関連の抗原でパルスした樹状細胞と共に用い、ラパマイシンを一時的に使用してTGF-βを装飾させて行われる。
【0126】
本発明はまた、造血幹細胞または骨髄細胞(BMC)、それには外来の(例えば同種または異種の)BMCを含むが、それらにTGF-βを装飾させたものを用いてTreg細胞を増殖する方法をも提供するが、これは上述のパルスされたDCで行った方法とほぼ同じである。この方法は、例えば、自己抗原、同種抗原、および異種抗原に対する免疫寛容の誘導のため、および自己免疫状態および造血系の遺伝的欠損の治療のための混合キメラを確立するためには有用である。この方法は単独で、または上述の共刺激性コンジュゲートと共に、および/もしくは上述のとおり、ラパマイシンと共に用いることができる。造血幹細胞またはBMCの使用はTreg細胞を増殖させるのみならず、自己免疫を制御し、膵臓のβ細胞の再生を可能として糖尿病の予防および/もしくは治療を行える、混合キメラを確立させる。TGF-βを装飾させた造血幹細胞または外来性BMCを、コンジュゲートと共に用いると、Treg細胞を増殖させ、それによって今度は幹細胞またはBMCの拒絶反応の予防と、自己への反応性と同種のものへの反応性の双方を制御する混合キメラの確立をもたらすこととなる。
【0127】
本発明のこの実施形態においては、造血幹細胞またはBMCはビオチニル化され、上述のとおり、TGF-β-CSAで装飾され、ラパマイシンの併用のもとで静脈内に注射される。この治療は、免疫寛容誘導作用を増大させるために、上述のとおり作製された1つ以上の共刺激性コンジュゲート、それにはCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートが含まれるが、そのようなコンジュゲートの投与と共に行うことができる。装飾されていないかまたはTGF-βを装飾された造血幹細胞またはBMCとラパマイシンを用いた治療はTreg細胞を増殖させ、糖尿病の予防をもたらす。
【0128】
上述のとおり、TGF-βおよびラパマイシンは相乗的に作用して自己抗原特異的Teff細胞の活性化と増殖をブロックし、一方Treg細胞の活性化と増殖、またはCD4+CD25-T細胞からのTreg細胞への変換を促進する。1つ以上の共刺激性コンジュゲートを最適な形で使用すればこの効果はさらに増大させることができる。
【0129】
下記の実施例は本発明をより詳細に説明したものであって、本発明の範囲をどのような点からも限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0130】
一般的な方法論
動物
非肥満型糖尿病マウス(NOD)はJackson Laboratories(Bar Harbor, Maine)から購入し、NIH及びガイドラインに従って維持する。BALB/cおよびC57BL/6マウスはJackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入し、SPF条件下でUniversity of Louisvilleにて維持し、実験施設のガイドラインおよびNIHのガイドラインに従って飼育する。
【0131】
昆虫のDES発現系を用いたIL-2および4-1BBL、CD80、ならびにTGF-βキメラタンパク質の発現と精製
Drosophila DES Expression System(Invitrogen; Calsbad, CA)を用いて、Singhら, 2003, Cancer Res. 63:4067-73に記載されているとおり、これらの分子を発現している安定なトランスフェクタントを確立することができる。トランスフェクタントは、1 mMの硫酸銅を添加したDrosophila無血清培地(Gibco; Carlsbad, CA)中でインキュベーターシェーカー中で25℃105 rpmにセットして72時間かけて組換えタンパク質発現を誘導させる。遠心して培養上清を採取し、タンパク質内に加工した6x-His-tagを利用して、コバルト(II)-カルボキシメチルアスパラギン酸架橋アガロース固定化金属アフィニティー樹脂(BD-Talon, BD Biosciences)またはNi-NTA金属アフィニティー樹脂(Qiagen)を用いて大規模精製にかける。簡潔に記せば、組換えタンパク質を含んでいる培地に95%エタノールを終濃度が10%エタノールとなるように滴下することによって沈殿させる。4℃で一晩インキュベートした後、その沈殿したタンパク質を、開始時の液量の1/10の結合バッファー(50 mM リン酸ナトリウム pH 7.0;500 mM 塩化ナトリウム;0.5% Tween-20;1% グリセロール;5 mM 2-メルカプトエタノール)中に再溶解する。金属アフィニティー樹脂をゲルベッド容積の5倍量の結合バッファーを用いて平衡化し、再溶解させたタンパク質溶液中に添加し、前方に回転する方式の回転を室温で45分間かける。タンパク質が結合した金属アフィニティー樹脂を50〜100 mLの洗浄バッファー(50 mM リン酸ナトリウム pH 7.0;500 mM 塩化ナトリウム)で2回洗う。結合したタンパク質をゲルベッド容積の2倍量の溶出バッファー(50 mM リン酸ナトリウム pH 7.0;500 mM 塩化ナトリウム;150 mM イミダゾール)で金属アフィニティー樹脂から溶出する。
【0132】
精製されたタンパク質溶出液をプールし、30 kD分子量カットオフ膜を備えたAmicon UltraTM(Millipore; Bedford, Mass.)遠心フィルター装置にロードする。この遠心フィルター装置を4℃で3000 rpm(2000 x g)で15分間遠心する。滅菌済のPBSをろ過残液(retentate)に添加し、フィルターを3000 rpm(2000 x g)で再度遠心する。濃縮された/脱塩されたタンパク質を含んでいるこのろ過残液を、遠心フィルター装置から吸引して、滅菌クリオバイアル(cryovial)中に入れ、液体窒素中で保管する。単離したタンパク質の純度はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動でアッセイする。タンパク濃度はBCAタンパク質アッセイを製造者(Pierce)の使用説明書に従って用いて測定する。
【0133】
ビオチニル化GADの発現と精製
NODから膵島を採取し、直ちに4M グアニジンチオシアネート中でホモゲナイズする。総RNAを既に報告されている方法で単離する。例えば、Shirwanら, 1993, J. Immunol. 150:2295-304を参照せよ。この精製RNAをジエチルピロカルボネートで処理した水に溶解し、少量のアリコートに分けて、使用するまで−70℃で保管した。このRNAの一部分をRT-PCRのための鋳型として用いるが、そのRT-PCRはマウスGADのコード配列に特異的なプライマーを用いる。たとえば、Leeら, 1993, Biochim. Biophys. Acta, 1216:157-60を参照せよ。このPCRの産物をTA クローニングベクター(Invitrogen)中にクローン化する。機能を有するクローンを同定し、発現用のpACベクター(Avidity)中にサブクローン化するために用いる。細菌を形質転換し、アンピシリンを含んだ培地で選択した後、いくつかのクローンをミニプラスミド調製に供し、適切な制限酵素で消化して陽性のクローンを同定する。所望のインサートを含んだクローンをラージプラスミド調製に用いる。プラスミドを用いてAVB100 E.coliを形質転換するが、この株は染色体中にbirAリガーゼ遺伝子が安定的に組み入れられた株である。タンパク質の発現は、ビオチンタグを有するGADの高レベルの発現を行うために、L-アラビノースを用いて誘導する。発現されたタンパク質はAviTag抗体アガロースを用いて精製する。精製されたGADは、濃度、エンドトキシン量、およびビオチニル化の程度について、ウエスタンブロットおよびアルカリホスファターゼをコンジュゲートさせたストレプトアビジンをプローブとして用いて評価する。必要に応じて、エンドトキシンはPierce社のDetoxi-Gel Endotoxin Removing kitを用いて除去する。ビオチニル化GADはアリコートに分け使用するまで−70℃で凍結しておく。
【0134】
免疫修飾
共刺激性部分とコア・ストレプトアビジンを含んでいるコンジュゲートは、ビオチニル化IL-2および/もしくはビオチニル化GADタンパク質とPBS中で混合することにより1:1のモル比で結合する。PBS中の全てのコンジュゲートとDCを下記の投与量で静脈内に注射する。
【0135】
同種混合リンパ球反応
ナイーブなBALA/cマウスから採取した脾臓とリンパ節の細胞(1 x 105個/ウエル)を5日間のアッセイでのレスポンダーとし、ナイーブなC57BL/6マウスから採取し照射(2000cGy)した脾臓細胞(1 x 105個/ウエル)をスティミュレーターとして培養する。その培養液に増殖させたTreg細胞を、レスポンダーとTreg細胞の比率を様々に変えて培養する。培養の最後の16時間に、細胞をH3-チミジンでパルスする。
【0136】
膵島移植
雄のBALB/cマウス(22〜26グラム、6〜8週齢)に200 mg/kgのストレプトゾトシン(Biomol, Plymouth Meeting, PA)を単回静脈内注射することによって糖尿病とし、糖尿病であるか否かは血糖値が2回連続して>300 mg/dLであるかどうかによって確認する。膵島移植の1日前に、5〜8 x 106個の増殖させたTreg細胞を各マウスに静脈内注射で移入する。ドナーの膵島は完全にミスマッチのC57BL/6マウスから、0.2 mg/mLのリベラーゼ酵素溶液(Roche)を用いて膵臓のin situ灌流によって採取する。37℃で17分間消化させた後、膵島を、Ficollグラディエントを用いて精製し、完全培地(10% FBS、2 mM L-グルタミン、100 U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、および50 mMの2-メルカプトエタノールを添加したRPMI)中で37℃で一晩維持する。翌日、膵島を集め、PBSで洗い、400〜600個の膵島を各BALB/c移植片レシピエントの左腎被膜下に移植する。対象のマウスには同種の膵島を移植するが、Treg細胞は投与しない。移植したマウスを週3回モニターし、拒絶反応が起こっているか否かは、血糖値が2回連続して>300 mg/dLであるかどうかによって確認する。
【0137】
膵島に浸潤するリンパ球
浸潤しているリンパ球はNOD動物の膵島から、まず膵臓を、例えばYolcuら, 2002, Immunity, 17:795-808に報告されているように、0.2 mg/mLのリベラーゼ(Roche)で消化することによって採取する。単一の膵島を得た後、膵島に浸潤しているリンパ球を得るために、例えば、Greenら, 2002, Immunity 16:183-91に既に述べられているように膵島を消化する。リンパ球はフローサイトメトリー分析のために染色する。
【0138】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリー分析は、まず対象の一次抗体および二次抗体を滴定した後、フローサイトメトリーに最適な濃度で、標準的な方法を用いて行う。例えば、Mhoyanら, 1997, Transplantation, 64:1665-70を参照せよ。アイソタイプ適合の(isotype-matched)抗体は陰性対照として用いる。サンプルはFACS CaliburまたはVantage(Becton Dickinson; Mountain View, CA)上でランさせ、分析はFlowJo(TreeSoft)またはCellqQuest(BD Biosciences)ソフトウエアで行う。
【0139】
フローサイトメトリーを用いた細胞内サイトカイン分析
細胞内のIL-2、IL-4、IL-10、およびIFN-γの分析をそれらのサイトカインに特異的なモノクローナル抗体(PharMingen)を用いてフローサイトメトリー分析で行う。例えば、Elsonら, 1995, J. Immunol., 154:4294-301を参照せよ。細胞を4%のパラホルムアルデヒドで37℃5分間で固定し、PBS/1% BSAで2回洗う。0.1% BSAおよび10% FCSを添加したPBS-Sバッファー(PBS、0.01 M HEPES、0.1% サポニン)中で氷上で一晩インキュベートして非特異的結合をブロックした後、細胞をPBS-Sバッファーで2回洗い、氷上でサイトカイン特異的抗体と30分間インキュベートする。PBS-Sバッファーで2回洗った後、氷上でマウスIgGに対するFITCをコンジュゲートさせたラット抗体と30分間インキュベートし、フローサイトメトリーで分析する。アイソタイプをマッチさせた、無関係の抗体を陰性対照として用いる。細胞内FoxP3の分析は製造者のプロトコール(eBioscience)に従って行う。
【0140】
フローサイトメトリーによるT細胞ソーティングと表現型分析
脾臓細胞とリンパ節細胞はナイーブなBALB/cマウスから採取し、単一細胞懸濁液となるように処理し、赤血球はACK溶液を用いて溶解させた。細胞ソーティング用に、細胞を抗CD4-FITC、抗CD25-PE、および抗CD8-APCで染色し、CD4+CD25-シングルポジティブ(SP)およびCD4+CD25+ダブルポジティブ(DP)T細胞を、FACSVantage セルソーター(BD Bioscience, San Jose, CA)を用いてソートした。ソートした細胞は純度が>95%であった。ナイーブな、および増殖させたTreg細胞についてCD4-APC、CD4-FITC、CD8-PE、CD8-PerCP、4-1BBL-PE、CD25-PE、CD95-RITC、ビオチン-CD137、ビオチン-CD28、ビオチン-GITR、ビオチン-TGF-βに対する抗体、およびFITC標識アビジンを用いてフローサイトメトリーで表現型を調べた。マッチさせたフルオロクロームを有するアイソタイプ抗体を、対照として用いた。細胞内のFoxP3染色は製造者のプロトコール(eBioscience, San Diego, CA)に従って行った。
【0141】
受容体発現アッセイには、ソートしたCD4+CD25+またはCD4+CD25-のT細胞を96ウエルのプレート中で2日間、単独で、またはIL-2(25 U/mL)、照射した脾臓細胞のいずれかの、またはそれらの双方の存在下で培養した。2日間培養した後、細胞の一部を取り、PBSで2回洗い、2つの別々の培養物に分けた。一方の培養物にIL-2を添加し、もう一方はIL-2を添加せずに維持した。2日間培養した後、細胞を4-1BBまたはCD28に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【0142】
1群の細胞をIL-2と脾臓細胞とともに2日間培養した後に採取し、2回洗い、さらに2日間処理せずに培養した。もう一方の群の細胞にはday 2にIL-2を添加してさらに2日間培養した。細胞を4-1BBまたはCD28に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【0143】
FoxP3のためのRT-PCR
ナイーブなBALB/cマウスの脾臓とリンパ節から新たにソートしたCD4+CD25-およびCD4+CD25+のT細胞から、または増殖させたTreg細胞から、TRI試薬を用いて総RNAを単離する。第1鎖cDNAを作製するために2μgのRNAを用い、PCR増幅は、FoxP3とHPRTに特異的なプライマーを用いてそれぞれ33サイクルおよび27サイクルで行う。プライマー配列は、次のとおりである:
FoxP3フォワード 5'-CAG CTG CCT ACA GTG CCC CTA G-3'
FoxP3リバース 5'-CAT TTG CCA GCA GTG GGT AG-3'
HPRTフォワード 5'-GAA GTG TTG GAT ACA GCC CAG AC-3'
HPRTリバース 5'-GAG GGT AGG CTG GCA TCT AGG CT-3'
【0144】
病理組織所見
膵臓は自己免疫性の組織学的徴候があるか否か、およびインスリン分泌能について評価する。処理したNODと対照のNODから、処理後の様々な時点で膵臓を摘出する。各膵臓の組織片を10% 緩衝化ホルマリンで固定し、パラフィン中に包埋し、4μmの切片を作製し、ヘマトキシリンとエオジン(H&E)で染色して一般的な組織学的変化を調べる。サイトカイン、T細胞、およびインスリンの免疫組織化学的検討については、既に報告されている方法で行う。例えばGreenら, 2002, Immunity, 16:183-91を参照せよ。
【0145】
DCの調製と糖尿病性抗原でのパルス処理
未熟なDCは、NODの骨髄(BM)細胞から、GM-CSFおよびIL-4を用いて4〜5日間培養して作製する。細胞をGAD 65、ICA 512、およびNRP-A7ペプチドの混合物(30μg/ペプチド/mL)でパルスし、100 ng/mLのマウスCSA-4-1BBLコンジュゲート、またはCD40Lを用いて、一晩分化を行わせる。ペプチドはGenScript Corporationから市販されているものを購入する。細胞を十分に洗い、上記で概略を示し、下記に詳述する方法に従って、TGF-β(または対照のタンパク質としてコア・ストレプトアビジン)で装飾する。実験によっては、NODのAPCは、自己抗原のソースとして、NODの膵島から調製した十分に透析したNP40溶解物の種々の濃度のものを共存させてインキュベートする。PBSで洗った後、その細胞を免疫修飾に用いる前に、細胞の一部をとって細胞の表面上におけるTGF-βのディスプレイ、クラスIIおよびCD80/CD86共刺激性分子のアップレギュレーションについて、フローサイトメトリーで分析する。
【0146】
細胞表面上のTGF-βのディスプレイ
DCを氷冷したPBSで洗い、5μM EZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-ビオチン(Pierce)を含有するPBS, pH 8.0中に2.5 x 106個/mLとし、室温で20分間インキュベートする。細胞を十分に洗い、1 x 106個/mLとして50〜100ngの精製TGF-β-コア・ストレプトアビジンコンジュゲート(または対照としてコア・ストレプトアビジン)と4℃で15分間インキュベートする。PBSで十分に洗った後、細胞をフローサイトメトリー用に処理し、下記のとおりそれ以降の研究に用いる。
【0147】
統計解析
I型糖尿病の予防に対する処理の効果はKaplan-Meier曲線を用いて推定する。種々の群間の生存率の差は、log-rank検定(generalized Savage/Mantel Cox)を用いて評価する。個々の動物の群から得られたデータの比較の方法は、まず最初にF検定(2群間)またはLevene検定(多群間)を用いて等分散を調べる。分散が等しくない場合には、対数変換を行う。正規分布しているサンプルの平均値を比較しようとする際にはStudentのt検定(2群間)またはNewman-Kreul検定(多群間)を用いる。データが正規分布していない場合には、Mann-WhitneyのU検定(2群間)またはKruskal-Wallisの検定(多群間)を用いる。統計学的に有意とはp<0.05と定義する。
【0148】
実施例1:CSA-4-1BBLコンジュゲートのクローニングと発現
LPS(5μg/mL)で2日間刺激したマウスの脾臓細胞からTRI試薬(Molecular Research Center, Cincinnati, OH)を用いて総RNAを単離した。このRNAの2μgをcDNAの第1鎖を作製するために用い、それはセンスプライマー(5'-ATC GAA TTC CGC ACC GAG CCT CGG CCA GCG-3')およびアンチセンスプライマー(5'-GGA CTC GAG CAT AGC AGC TTG AGG ACT TAG C-3')を用いて4-1BBLの細胞外ドメイン(aa 104-309)を増幅するためのPCRの鋳型として用いた。プライマーはDES発現ベクター(Invitrogen, San Diego, CA)中へのディレクショナルクローニングおよびインフレームクローニングを容易にするために、EcoRIおよびXhoI制限酵素切断部位を含むようにした。このPCR産物をPCR2.1TOPOベクター中にクローン化しいくつかのポジティブクローンをDNA配列分析にかけた。4-1BBLの正確な配列を含んでいる1個のクローンをEcoRIおよびXhoIで消化し、6xHis Tagおよびコア・ストレプトアビジン(CSA)を含んでいるpMT/BiP/V5-His発現ベクター中にサブクローン化して、マウス4-1BBLの細胞外ドメインがCSAのビオチン結合ドメインおよび四量体形成ドメインのC末端となるようにした。図8A。 キメラ遺伝子をDrosophilaの分泌シグナルとインフレームとなるように金属誘導性発現ベクター中にサブクローン化し、CSA-4-1BBLコンジュゲートをS2昆虫細胞内でDrosophila DES 発現系を用いて発現させ、セファロースカラムを用いて精製し、エンドトキシンが含まれていないかをLimulus amebocyte lysate kit(Chrles River)で試験した。
【0149】
このCSA-4-1BBLコンジュゲートはネイティブな条件下でPAGEで調べると、四量体およびより高次の構造で存在していた。この四量体/オリゴマー構造は、変性条件でのみ約37 kDaの単量体へと解離し、SDS-PAGEで分画した。図8Bは精製CSA-4-1BBLのウエスタンブロット分析で、変性させたもの(レーン2)、およびネイティブなもの(レーン3)を示している。変性条件下では、このCSA-4-1BBLは37 kDaの単量体として認められるが、ネイティブな条件下ではこのタンパク質は>150 kDaの四量体およびより高次の構造をとっていることが認められる。
【0150】
CSA-4-1BBLの4-1BB受容体への結合を、下記のとおり調べた。総混合リンパ球反応(total mixed lymphocyte reaction:MLR) 培地(5% FBS、2 mM L-グルタミン、100 U/mL ペニシリン/ストレプトマイシン、10 mM HEPES、および100 mM MEM-ピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM)(Invitrogen, Carlsbad, CA)、ならびに50 mM 2-メルカプトエタノール中の、BALB/cマウスまたはC57BL/6マウスから得た脾臓細胞を、5μgのConA(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で48時間刺激した。次いで活性化されたおよび/もしくは休止期の細胞をCSA-4-1BBLコンジュゲート(200 ng/1 x 106個の細胞)、または等モル量のCSA対照タンパク質(76 ng/1 x 106個の細胞)と、ロータリーシェーカーで4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで数回洗い、CD4(APC)、CD8(PerCP)、4-1BBL(PE)、およびSA(FITC)に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。休止期でCSAとインキュベートした細胞を陰性対照として用いた。
【0151】
ブロッキングアッセイには、1 x 106個の活性化した細胞を、過剰量(50μg/1 x 106個)の4-1BBに対する抗体(3H3、Emery UniversityのR. Mittler氏から好意で提供を受けたもの)と30分間インキュベートした。次いで細胞をPBSで数回洗った後、200 ngのキメラ4-1BBL(CSA-4-1BBL)と、さらに30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗い、CD4-APC、CD8-PerCP、4-1BBL-PE、およびCSA-FITCに対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。休止期でCSAとインキュベートした細胞を陰性対照として用いた。
【0152】
BALB/cマウスから得た休止期またはConAで活性化させた脾臓細胞を、4-1BBL(200 ng/1 x 106個の細胞)または対照のCSAタンパク質(76 ng/1 x 106個の細胞)と、4℃で30分間インキュベートした。4-1BBL(黒線)のCD4+細胞およびCD8+細胞上への結合はマウス4-1BBLに対する抗体を用いて検出した。CSAタンパク質とインキュベートした細胞は対照として用いた(グレーで塗りつぶした部分)。図8Cに示すとおり、CSA-4-1BBLは、4-1BBL受容体を発現している活性化されたCD4+細胞およびCD8+細胞と結合した。受容体を持たないナイーブなT細胞では結合がみられず、また、さらに、4-1BBに対する抗体で受容体を最初にブロックしておくと結合が起こらないので、この結合は4-1BBに特異的なものである(図8C、右側のパネル)。
【0153】
4-1BBLが機能を保持しているか調べるために、ナイーブなBALB/cマウスから得た脾臓およびリンパ節から精製した総CD4+T細胞を、様々な濃度(図8D中にng/mLで示している)の可溶性CSA-4-1BBLコンジュゲートまたは対照のCSAタンパク質の存在下で、最適濃度未満の濃度の抗CD3抗体(0.5 μg/mL)を用いて4日間刺激した。図8D。CSA-4-1BBLコンジュゲートでの共刺激はCD4+細胞の激しい増殖反応を引き起こし、それは濃度依存性で統計学的に有意であった(p<0.05)。その増殖反応は4-1BBL依存性であったが、それは対照のCSAタンパク質では等モル量用いても、抗CD3抗体の最適量未満の量で得られた応答に対してその応答を増大させなかったからである。これらを併せると、これらの結果はCSA-4-1BBLコンジュゲートはコア・ストレプトアビジンが四量体およびオリゴマーを形成するという構造的特徴を有していて、活性化されたT細胞上の4-1BBと結合し、最適量未満の抗CD3抗体での刺激下でT細胞の強力な活性化剤として作用することを示している。
【0154】
実施例2:CSA-4-1BBLコンジュゲートを用いたTreg細胞の増殖
BALB/cマウスの脾臓から、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いてCD4+CD25+Treg細胞をソートし(図9A)、同系のAPCの存在下で、抗CD3抗体(0.5μg/mL)、CSA-4-1BBL(1μg/mL)、およびIL-2(25 IU/mL)で活性化した。次いで細胞を、IL-2を添加した培地で、3日毎に10〜12日間、約1 x 106個/mLのレベルに維持した。その培養液をもう1ラウンドの活性化にかけた後、IL-2で維持した。図9に示すとおり、このレジメンによって18〜24日間以内に55倍から110倍、25日間では110倍のTreg細胞の増殖を行うことができた(図9B)。同一の条件下だがCSA-4-1BBLコンジュゲートを加えずに維持したTreg細胞ではその増殖はごくわずかであった。増殖したTreg細胞は、FoxP3タンパク質を高レベルで(RT-PCRまたは抗FoxP3抗体で測定)発現しているとともにFas、CD62L、GITR、CD25、CD28、および細胞表面にTGF-βを発現しているCD4+CD25bright細胞の均一な集団を形成し(図9A、下右のパネル)、そのTreg細胞は同種のものに対する応答を抑制し、抗CD3刺激を用いたT細胞のポリクローナルな活性化も抑制した(データはここには示していない)。これに対して、4-1BBLを含まない培養ではDP細胞数の2.5倍の増殖が示されたにすぎず、CD4+CD25dim細胞およびCD4+CD25bright細胞からなる不均一な集団が認められた(図9A、上右のパネル)。増殖させたCD4+ SP T細胞とは異なり、Treg細胞は高レベルの4-1BBを発現した。図10(黒く塗りつぶした細胞集団は対照のアイソタイプである)。
【0155】
実施例3:増殖させたTreg細胞は膵島同種移植の生存を延長する
ポリクローナルに増殖させたTreg細胞の治療効果を調べるために、化学的誘発させた(ストレプトゾトシンによる)糖尿病BALB/cマウスに、上述のとおり20〜25日間培養して増殖させたTreg細胞5〜10 x 106個を用いて養子免疫細胞移植を行い、その24時間後に完全にミスマッチのC57BL/6同系膵島を移植した。マウスの血糖値を週3回測定した。Treg細胞での治療を受けたマウス(○)は全て、生存期間が延長し(MST=68.7±10日間)、1/3を超えるマウス(66%)が約85日間の観察期間内には拒絶反応を起こさなかった。図11。これとは全く異なり、Treg細胞療法を受けなかった対照のマウスでは(黒丸)、移植片の急性拒絶反応が見られた(MST=16.6±2.7日間)。
【0156】
実施例4:増殖させたCD4+CD25+Treg細胞は抑制的である
増殖させたTreg細胞の機能を、CD3刺激を用いた古典的な抑制アッセイで調べた。ナイーブなTreg細胞と同様に、増殖させた細胞はCD3の刺激に対してアネルギー性のままであり、CD4+Teff細胞のポリクローナルな増殖を抑制することができ、この抑制機能は4-1BBLによって阻害しうるものであった(図12A)。
【0157】
本発明で増殖させたTreg細胞の抑制機能のさらに別の証拠は、混合リンパ球反応を用いて示された。ナイーブなBALB/cマウスから得た脾臓細胞と末梢リンパ節細胞をレスポンダーとして用い、ナイーブなC57BL/6マウスから得た脾臓細胞を照射したものをスティミュレーターとして用いた。同種抗原によって駆動されるTeff細胞の増殖は、増殖させたTreg細胞によって強く阻害され、その阻害はレスポンダーとTreg細胞の比が10:1となっても依然として有意(p<0.05)であった(図12B)。このことは、増殖させたTreg細胞が、天然のTreg細胞の持つ古典的な抑制機能を有していることを示している。これらを併せると、これらのデータはCSA-4-1BBLコンジュゲートで増殖させたTreg細胞が抑制的に作用し、天然のTreg細胞と同様な様式で挙動することを示している。
【0158】
実施例5
A. Treg細胞上の4-1BBLとIL-2の相乗作用
ソートしたナイーブなDP細胞を同系の脾臓細胞の照射したものと、0.5μg/mLの抗CD3抗体の存在下で3日間同時培養した。培養液には、25 U/mLのIL-2、1μg/mLのCSA-4-1BBL、またはその双方の組み合わせを添加した。IL-2または4-1BBLのいずれかをTreg細胞培養液に添加するだけでTreg細胞(DP)の増殖を誘発する。しかし、1μg/mLの4-1BBLを添加した場合と比べると、25 U/mLのIL-2添加では4倍の増殖が見られる。図13A。4-1BBLとIL-2を組み合わせて用いると、最大の増殖応答が得られ(IL-2単独の場合の2倍;図13A)、このことはこれらの2種類のタンパク質が相乗的に作用してTreg細胞の増殖を促進することを示している。
【0159】
Treg細胞の増殖に対してのシグナル1、2、および3の各々の寄与をAPCを含まない培地系で調べた。このアッセイでは、シグナル1は可溶性抗CD3抗体によって提供され、シグナル2は4-1BBLにより、シグナル3はIL-2により提供される。ソートしたナイーブなDP細胞を、照射した脾臓細胞を用いずに、単独で用い、培養液には抗CD3抗体、CSA-4-1BBL、および/もしくはIL-2を添加した。図13Bに示し、表1に要約したとおり、シグナル1または2の刺激は単独では、Treg細胞の増殖を誘導するには不十分であり、一方、シグナル3の刺激は中等度の増殖をもたらす。シグナル1と2の双方を刺激してもTreg細胞増殖への効果は非常に小さい。しかし、シグナル1または2をIL-2によるシグナル3刺激と組み合わせて刺激すると著しい増殖作用を示し、3つのシグナル全てを刺激すると最も劇的なTreg細胞の増殖(2〜3週間で最高110倍の増殖)が観察された。この増殖したTreg細胞は全てCD25brightで、4-1BBLなしで増殖させたDP細胞と比較すると、CD28、4-1BB、GITR、Fas、CD62L、膜結合TGF-β、およびFoxP3の発現レベルがより高かった。
【表1】
【0160】
これらの結果はTreg細胞の増殖に対してシグナル1、2、および3を刺激する効果には階層性があることを示唆している。シグナル1または2を単独で刺激してもほとんど効果はないが、シグナル3(IL-2を介して)を単独で、またはシグナル1および/もしくは2に加えて刺激すると、著しい効果を示す。3つのシグナル全てを刺激するとその効果は最も顕著であり、それに続いてシグナル2と3、次いでシグナル1と3の刺激であった。
【0161】
B. IL-2はCD4+CD25+Treg細胞上の4-1BB受容体の発現をアップレギュレートする
ソートしたCD4+CD25+(DP)Treg細胞およびCD4+CD25-(SP)Teff細胞を、IL-2および/もしくは照射APCの存在下または不在下で2日間培養した。次いで、細胞を採取し、フローサイトメトリーで4-1BBの発現について分析した。新たにソートしたTreg細胞のうちで4-1BBを発現していたのは22%にすぎなかったが、Teff細胞ではこの受容体が陽性を示したものはなかった。細胞を単独で2日間培養した場合には、4-1BBの発現はバックグラウンドのレベル(2%)までダウンレギュレートされていた。Treg細胞を照射APCの存在下で培養すると、Treg細胞上での4-1BBの構成的発現の維持に対する効果はわずかであった(8%)。それとは著しく異なり、IL-2をTreg細胞の培養液に添加すると、4-1BB受容体の維持のみならず中等度のアップレギュレーション(新鮮な細胞での22%に対して29%)がもたらされた。照射したAPCを添加すると、4-1BB発現のアップレギュレーションに及ぼすIL-2の効果はさらに増強された(53%)。
【0162】
Treg細胞上の4-1BBの維持/アップレギュレーションにおけるIL-2の役割をさらに調べるために、APCとIL-2の存在下で培養した細胞を十分に洗い、IL-2を含まない状態で2日間再培養した(図13C、上側のパネルの最後のヒストグラム)。Treg細胞は全てその4-1BB発現をバックグラウンドのレベルまでダウンレギュレートさせた。Teff細胞に同様な処理を行っても4-1BB発現のパターンを変えることはできなかったので、IL-2による4-1BB発現の調節はTreg細胞に特異的であった(図13C、下のパネル)。これらの結果は、我々の知る限りでは、IL-2がTreg細胞上の4-1BBの発現の維持/アップレギュレーションを行うことを示した最初のものであり、このことはex vivoでのTreg細胞の増殖に及ぼすIL-2と4-1BBLの間に観察された相乗作用に作用機構の上でのベースを与えるものである。
【0163】
実施例6:機能を有するTGF-β-CSAコンジュゲートの構築
CSAと活性型のTGF-β1を含んでいるコンジュゲートを上記で概説した一般的プロトコールに従って作製した。TGF-β-CSAコンジュゲートは、MLRアッセイ(図14)または抗CD3でのポリクローナルな活性化(データはここには示していない)に用いると、T細胞の増殖に強力な阻害活性を示した。これらのデータは、TGF-β-CSAコンジュゲートが活性を有し、抗原特異的な増殖をブロックするために用いることができることを示しており、そのため、in vitroおよびin vivoでTreg細胞の増殖に有用なものとなろう。
【0164】
実施例7:4-1BBL、CD80、およびIL-2を用いたTreg細胞の非選択的増殖
上述のとおり、NODマウスでの糖尿病の進行はTreg細胞が病原性のTeff細胞を制御する機能の崩壊が関与しているものと考えられる。NODマウスは糖尿病に抵抗性の系統と比較すると、末梢では、Treg細胞の数がより低くなっており、糖尿病の発症と相関している年齢とともにTreg細胞の量と機能は低下することが示されている。このことのメカニズムは正確にはわかっていないが、Treg細胞の発生と維持を調節するAPCの能力の欠如が役割を果たしているのかもしれない。このような考え方と、(i)NOD中のDCでは、Treg細胞の発生と機能にとって重要なCD80などの共刺激性分子の発現が低下している、および(ii)NODマウスにおいて糖尿病の発症に対して防護作用を有している腸内寄生虫やウイルスなどの様々な生物学的作用物が、DCの修飾を介してTreg細胞を誘導している可能性がある、という観察結果は一致している。
【0165】
この実施例は、CD80および/もしくは4-1BBLとIL-2を含んでいるコンジュゲートを用いた、NODマウスにおけるTreg細胞の選択的増殖について説明しており、このアプローチがNODにおいてI型糖尿病の予防に有効であることを示している。このコンジュゲートはTreg細胞に選択的に結合し、治療目的で用いうる形でTreg細胞を増殖させる。
【0166】
NODでの糖尿病のステージは大まかには、前インスリン炎(preinsulitis)(1〜3週間)、インスリン炎(4〜8週間)、前糖尿病(8〜24週間)、および糖尿病(>28週間)に分けられる。これらのステージは動物飼育施設によって異なる。前糖尿病状態の雌のNODマウスを選択したが、それはこのようなマウスは自己免疫性の必要条件が揃っており、またTreg細胞とAPCの欠損が予測され、これらのマウスで糖尿病が予防しうるとすれば臨床的な効果があるものと考えられるからである。
【0167】
Treg細胞をin vivoで増殖させるために、CD80とIL-2、または4-1BBLとIL-2を含んでいるコンジュゲートを、いろいろな組み合わせ、頻度、および投与量でマウスに静脈内投与する。コア・ストレプトアビジン(CSA)/IL-2コンジュゲートは対照として用いる。これらのコンジュゲートは、実験に用いる前に、PBS中でCSA-CD80またはCSA-4-1BBLコンジュゲートをビオチニル化IL-2と1:1のモル比で混合することによって調製する。
【0168】
CD28に対する超作動性(superagonistic)抗体を用いて、Treg細胞の増殖のピークが注射の3日後に起こったことが見出された。従って、動物にはコンジュゲートを3日毎に注射し、Treg細胞増殖のレベルを評価するための採血は次のコンジュゲートの注射の直前に行った。タイピングはフローサイトメトリーでCD4およびFoxP3に対する抗体を用いて行った。この血液分析によってTreg細胞増殖のピークの時点が判明した後に、動物を屠殺して末梢リンパ節(膵臓のリンパ節を含む)、脾臓、および膵臓を採取する。各動物の脾臓とリンパ節および膵島から単離したGILを単一細胞懸濁液とし、種々のマーカー、すなわち細胞表面のマーカーとしてCD4、CD8、4-1BB、CD62L、TGF-β、CD25、ならびに細胞内マーカーとしてFoxP3、IL-10、およびIFN-γを用いて多パラメーターのフローサイトメトリーで類別してT細胞の状態を全体的に把握した。
【0169】
前糖尿病状態のNODマウスを本明細書中に記載のように治療すると、Treg細胞がTeff細胞よりも急速に増殖することとなる。CD80、4-1BBL、およびIL-2を介して共刺激性および生存のシグナルを提供すると、Treg細胞の急速な増殖がもたらされるものと期待される。この効果はDCの4-1BBL活性化によってさらに強められ、それはTreg細胞の増殖および/もしくはTreg細胞の機能の回復に寄与しうる。これらの結果として起こる増殖は全身性のものとなりうるが、Treg細胞は防御反応として膵臓のリンパ節および膵臓に集まりうる。増殖したTreg細胞は、古典的なTreg細胞のマーカー、例えば細胞表面のTGF-β、CD25、4-1BB、および細胞内のIL-10などのマーカーの全てを発現する。
【0170】
実施例8:非選択的Treg細胞増殖を介する1型糖尿病の予防
前糖尿病状態のNOD動物におけるTreg細胞の増殖が1型糖尿病の発症を予防または遅延させることを下記のとおり調べる。前糖尿病状態のNOD(12週齢)を、上述のCD80とIL-2、または4-1BBLとIL-2を含んでいるコンジュゲート用い、上述の各研究で定めたTreg細胞を活発に増殖させることのできる条件下で、治療する。動物は糖尿病発症の有無について25週間観察する(この25週の時点までに、我々のコロニーでは処置しなかった雌の85%以上が糖尿病を発症する)。血糖値の毎日の測定で2日間連続して250 mg/dLを超えた場合には糖尿病が確認されたものと見なす。治療できなかった動物および28週目までに糖尿病を発症しない動物は屠殺し、種々の組織を採取してTreg細胞の表現型を分析し、免疫組織化学的検討を行って疾病の状態を定めた(正常vs. 前インスリン炎 vs. インスリン炎)。治療しなかった動物またはCSA-IL-2コンジュゲートで治療した動物は糖尿病発症率を調べるための対照とした。
【0171】
本発明に従って前糖尿病状態の動物のTreg細胞を増殖させると、糖尿病の発症を予防する。持続的な予防効果を得るには、Treg細胞のTeff細胞に対する比を高く維持するために、コンジュゲートでの治療を定期的に行う必要があるであろう。長期にわたって糖尿病を発症しない動物は完全に発症しないか、または臨床的な徴候を示さない前インスリン炎である可能性がある。糖尿病を発症した動物ではTreg細胞の数が低下していて、膜のTGF-β及び分泌性IL-10の発現量がより低いものと考えられる。これらの動物では、IFN-γ分泌性CD4+Teff細胞およびCD8+Teff細胞を多く含んでいる可能性もある。
【0172】
実施例9:4-1BBLおよび自己抗原を用いたTreg細胞の選択的増殖
Treg細胞は抗原非特異的に免疫応答を抑制することができるが、Treg細胞の抗原によって駆動される活性化および増殖は、その特異性および有効性の増大の点で利点がある。この実施例では、4-1BBLと自己抗原GADを含んでいるコンジュゲートを、自己抗原のDCへの効果的な送達のために、CD80とIL-2、およびTGF-βとIL-2を含んでいるコンジュゲートとともに用いた、自己抗原特異的なTreg細胞の選択的増殖を説明したものである。ラパマイシンも有効性を増強するために用いる。
【0173】
上述のとおり、DCは構成的に4-1BBを発現し、この受容体の、4-1BBL/GADコンジュゲートによる結合を介してのシグナル伝達は、DCの活性化、共刺激性分子のアップレギュレーション、および有効なT細胞の応答に必要とされる種々のサイトカインの合成と分泌をもたらす。さらに、CD80とIL-2は優先的にTreg細胞を増殖し、それは構成的にCD28およびCD25を発現する。同時に、TGF-βとIL-2を使用すると、Treg細胞の機能と増殖を増強する一方、Teff細胞の機能と増殖をブロックする。ラパマイシンはTreg細胞の増殖に大きな影響を及ぼすことなくTeff細胞の増殖をブロックし、アポトーシスを容易にすることによってTGF-βの効果を増強する。従って、TGF-βとラパマイシンの存在下で自己抗原が認識されると、Teff細胞の活性化と機能が選択的にブロックされる一方で、抗原特異的なTreg細胞の発生と増殖には好都合で、また、4-1BBLはTreg細胞の応答を持続させるためにDCを活性化する。
【0174】
12週齢の前糖尿病状態の動物に、4-1BBLとGAD、CD80とIL-2、およびTGF-βとIL-2を含んでいるコンジュゲートを様々な組み合わせ、頻度、および投与量で投与する(静脈内注射による)。これらのコンジュゲートは、CSA-4-1BBLコンジュゲートをビオチニル化したGAD(上述のとおり調製したもの)を混合することによって、またはCSA-CD80もしくはTGF-β-CSAコンジュゲートを上述のとおりビオチニル化したIL-2と混合することによって調製する。ラパマイシンは腹腔内に1.5 mg/kgの投与量で、コンジュゲートでの治療の間、毎日投与する。
【0175】
動物の血中のTreg細胞の増殖のピークについては、フローサイトメトリーでCD4およびFoxP3に対する抗体を用いてモニターした。Treg細胞の応答のピークの時点が見つかった後に、膵臓のリンパ節を含む末梢のリンパ節、脾臓、および膵臓の採取のために動物を安楽死させ、実施例7に記載の種々の細胞表面マーカーおよび細胞内マーカーについて多パラメータータイピングを行う。非治療のNODレシピエントまたは種々の組み合わせのコンジュゲートで治療したNODレシピエントを対照として用いた。Treg細胞の最も強力な増殖条件がわかった後に、その条件を、糖尿病の予防のために別のセットの動物の処置に用いる。
【0176】
4種類のコンジュゲート(4-1BBL/GAD、4-1BBL/IL-2、CD80/IL-2、TGF-β/IL-2)全てとラパマイシンの組み合わせ治療は、抗原特異的なTreg細胞の増殖と前糖尿病状態の動物の糖尿病発症予防に強力なレジメンとなることが期待される。4-1BBL/GADコンジュゲートはGAD自己抗原をDCへと運び、タンパク質のプロセシング、DCの活性化、およびGADのTreg細胞と病原性のTeff細胞への提示をもたらす。TGF-βとラパマイシンは相乗的に自己抗原特異的Teff細胞の活性化と増殖をブロックし、一方、CD80/IL-2ならびに4-1BBL/IL-2および/もしくは4-1BBL/GADコンジュゲートによるTreg細胞の活性化と増殖を促進する。また、TGF-βとラパマイシンは、ナイーブなCD4+CD25-T細胞のTreg細胞への転換を、FoxP3発現を誘導することによって、促進する。自己抗原特異的なTreg細胞の特異的増殖は、TGF-βまたはラパマイシンのうちの少なくとも1つで治療された群で達成されるが、それはこれらの2つが、Treg細胞の増殖に大きな影響を与えることなくTeff細胞の増殖を優先的にブロックするからである。
【0177】
Treg細胞の増殖は糖尿病の予防と相関する。コンジュゲートでの治療を定期的に反復することはおそらくTreg細胞のプールを維持するために有用であろう。自己抗原をさらに用いることによって(例えば、4-1BBLおよび追加の異なる自己抗原を含んでいるコンジュゲートなどで)、Treg細胞のより広いクラスのものの増殖が行われて効力が増強される可能性がある。
【0178】
実施例10:装飾され、パルスされたDCを用いたTreg細胞の選択的増殖
この実施例はTreg細胞の増殖のために、3種の糖尿病誘発性自己抗原(GAD、ICA152、およびNRP-A7)の混合物でパルスし、TGF-βを装飾したDCの使用について説明している。この方法は、単独で、または上述の共刺激性コンジュゲートとともに、および/もしくは上述のとおり、ラパマイシンとともに用いることができる。3種の自己抗原でパルスしたDCの使用によって多様なタイプのTreg細胞を引き出し、DC上のTGF-βの直接的なディスプレイは、可溶性タンパク質の全身的使用に伴って起こりうる毒性を制限するばかりでなく、Treg細胞を効果的に増殖させ、および/もしくは機能の回復を行わせ、NODにおける糖尿病の予防をもたらすこととなる。
【0179】
未熟なDCは、NODの骨髄細胞から、上述のとおり、GM-CSFおよびIL-4を用いて作製する。細胞を、糖尿病誘発性自己抗原であるGAD 65、膵島細胞自己抗原(ICA)512ペプチド、およびNRP-A7ペプチドの混合物でパルスする。未熟なDCは、4-1BBLと一晩インキュベートして成熟化させ、CD11cに対する抗体を用いたフローサイトメトリー、および種々の成熟化マーカー、例えばMHCクラスII、CD80、およびCD86分子のレベルがより高いことなどを用いて特徴を調べる。
【0180】
DCをビオチニル化し(5μM EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin, Pierce)、TGF-β-CSA(100 ng/106個の細胞)で上述のとおり装飾し、ラパマイシンを用いつつ前糖尿病状態の動物の静脈内に注射する。DCは様々な量で静脈内に注射するが、開始量は5 x 105個/動物とする。(2種類のGADペプチドと1種類のhsp60ペプチドでパルスしたDCのこの投与量は、前糖尿病状態のNODマウスで糖尿病の発症を低減させる効果があることが示されている。)。
【0181】
関連実験においては、上述のとおり作製したCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートも(パルスされ、装飾されたDCとともに)、免疫寛容誘導性効果を増強するために投与される。
【0182】
修飾されていない細胞およびCSAで装飾された細胞を対照として用いる。上述のとおり、Treg細胞の増殖および糖尿病の予防について動物を分析する。
【0183】
装飾されていないまたはTGF-βで装飾され、パルスされたDCとラパマイシンでの治療はTreg細胞を増殖させ、糖尿病の予防をもたらす。上記のとおり、TGF-βおよびラパマイシンは相乗的に作用して自己抗原特異的なTeff細胞の活性化と増殖をブロックする一方、Treg細胞の活性化と増殖、またはCD4+CD25-細胞からのTreg細胞への転換を促進する。任意でCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートを用いると、この効果はさらに増強される可能性がある。
【0184】
実施例11:装飾されたBMCを用いた、Treg細胞の選択的増殖
この実施例は、Treg細胞増殖のための、TGF-βで装飾された、外来(同種または異種)骨髄細胞(BMC)の使用について説明している。この方法は、単独で、または上述の共刺激性コンジュゲートとともに、および/もしくは上述のとおり、ラパマイシンとともに用いることができる。BMCを使用すると、Treg細胞の増殖のみならず、自己免疫を制御し、膵臓のβ細胞の再生を可能とする混合キメラをも確立し、糖尿病の予防および/もしくは治療をもたらす。TGF-βで装飾された外来のBMCをコンジュゲートとともに用いると、Treg細胞を増殖させ、それが今度はBMCの拒絶反応を予防し、自己反応性および同種反応性の双方を制御する混合キメラの確立をもたらす。
【0185】
BMCをビオチニル化し(5μM EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin, Pierce)、TGF-β-CSA(100 ng/106個の細胞)で上述のとおり装飾し、ラパマイシンを用いつつ前糖尿病状態の動物の静脈内に注射する。BMCは様々な量で静脈内に注射するが、開始量は5 x 105個/動物とする。
【0186】
関連実験においては、上述のとおり作製したCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートも(装飾されたBMCとともに)、免疫寛容誘導性効果を増強するために投与される。
【0187】
修飾されていない細胞およびCSAで装飾された細胞を対照として用いる。上述のとおり、Treg細胞の増殖、混合キメラ、および糖尿病の予防について動物を分析する。
【0188】
装飾されていないBMCまたはTGF-βで装飾されたBMCとラパマイシンでの治療はTreg細胞を増殖させ、糖尿病の予防をもたらす。上記のとおり、TGF-βおよびラパマイシンは相乗的に作用して自己抗原特異的なTeff細胞の活性化と増殖をブロックする一方、Treg細胞の活性化と増殖、またはCD4+CD25-T細胞からのTreg細胞への転換を促進する。任意でCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートを用いると、この効果はさらに増強される可能性がある。
【0189】
実施例12:キメラ4-1BBL(CSA-4-1BBL)はTreg細胞とTeff細胞の双方の増殖を促進するが、Treg細胞の抑制機能を阻害する
我々はTreg細胞の機能における4-1BBシグナル伝達の役割をキメラ4-1BBLタンパク質(CSA-4-1BBL)を用いて調べた。ナイーブなBALB/cマウスから得た、ソートしたCD4+CD25+二重陽性(DP)T細胞は、[3H]チミジンの取り込みをベースとした共培養実験において、CD3での刺激によって誘導された単一陽性(SP)CD4+CD25-Teff細胞の増殖応答を著しく阻害した(図15A)。この抑制作用は、培地に1μg/mLのキメラ4-1BBL(CSA-4-1BBL)を添加することによって、効果的に(p<0.05)かつ特異的に阻害されたが、等モル濃度で使用した対照のCSAタンパク質では阻害されなかった。
【0190】
この観察された抑制作用のキメラ4-1BBLによる阻害が、CD4+Teff細胞の増殖応答の回復によるものか、またはTreg細胞の増殖が誘発されたのか調べるために、SP細胞をCFSE(カルボキシフルオレセインスクシニミジルエステル)で標識し、共培養実験に用いた(図2B、上部のパネル)。キメラ4-1BBLを用いた共刺激は、対照(56%)と比較して、CD4+Teff細胞の増殖の増加(75%)をもたらした。この培養液へのTreg細胞の添加はCD4+Teff細胞の増殖を著しく低減させたが(30%)、それは4-1BBLによって部分的に回復した(62%)。共培養実験において4-1BBLでの共刺激でもそれに応答するCD4+Teff細胞の完全な回復が見られないことは、おそらくキメラタンパク質および/もしくはIL-2などの他の因子についてTreg細胞がTeff細胞と競合するためであろう。並行して行った実験で、CFSE標識DP細胞を共培養実験に用いて、Treg細胞は4-1BBL刺激に応答した増殖をも示すか否かを調べた(図15B、下のパネル)。Treg細胞は4-1BBLに応答する著しい増殖を、単独で培養した場合(対照の17%に対して44%)、またはSP Teff細胞との組み合わせで(対照の28%に対して58%)示した。これらの結果を併せると、4-1BBLはTreg細胞の増殖を促進し、一方Treg細胞の抑制機能を阻害することを示している。
【0191】
実施例13:増殖させたCD4+CD25+Treg細胞の表現型
実施例2で増殖させた細胞を、フローサイトメトリーを用いて古典的Treg細胞マーカーについて特徴を調べた。増殖させたTreg細胞は、CD25、4-1BB、CD28、GITR、Fas、CD62L、および細胞表面にTGF-βを発現していた。重要なことは、これらのマーカーの全てが、4-1BBLで増殖させたTreg細胞では、4-1BBLを用いずに増殖させた細胞と比較すると、著しくアップレギュレートされていたことである(図9Aと16A)。増殖させたTreg細胞はまた、RT-PCR(図16B)および細胞内染色(図16C)で調べると典型的な転写因子FoxP3を発現していた。重要なことは、4-1BBLの存在下で増殖させたTreg細胞は、4-1BB刺激を行わなかったTreg細胞と比較してFoxP3タンパク質の量を増加させたことである。併せて考えると、これらのデータは4-1BBLでの刺激は、天然のTreg細胞の発生/機能に関与する細胞表面マーカーの全てとFoxP3をアップレギュレートすることを示している。
【0192】
本発明は当業者にとっては十分な詳細さで記述され例示されてはいるが、種々の代案、改変、および改良を本発明の精神と範囲から逸脱することなく行いうることは、明白なはずである。本明細書で提示した実施例は、好ましい実施形態を代表するものであり、本発明の範囲を代表するものであって、範囲を限定することを意図したものではない。当業者であれば、改変およびその他の使用を思いつくであろう。それらの改変も本発明の精神の範囲内に包含され、特許請求の範囲によって定義される。
【0193】
当業者であれば様々な代替や改変が、本明細書で開示されている本発明に対して、本発明の範囲と精神から逸脱することなく行いうることは容易に明らかであろう。
【0194】
本明細書中で言及した特許および刊行物の全ては、本発明が属する業界の当業者のレベルを示すものである。本明細書中で言及した特許および刊行物はそのすべてを、あたかも個々の刊行物が特別におよび個別に参照により組み込まれるものであると示した場合と同程度に、本明細書中に参照により組み入れる。
【0195】
本発明は、本明細書に特に開示していないような要素、限定のない状態でも、適切に実施することができるように説明がなされている。従って、例えば、本明細書の各場合において、「含んでいる」「本質的に〜からなる」および「〜からなる」という用語のうちの1つは他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。用いられた用語と表現は説明のための用語であって限定するものではなく、そのような用語および表現をここに示し説明したものと等価のものまたはその部分を排除することに用いる意図はないが、特許請求している本発明の範囲内で様々な改変が可能であることは理解されるべきである。従って、本発明は好ましい実施形態および任意の事項によって特定的に開示されているとはいえ、本明細書に開示している概念の改変は、当業者によって再分類されて、そのような改変が添付の「特許請求の範囲」によって定義される本発明の範囲内にあるものと見なされることは、理解すべきである。
【0196】
他の実施形態は、下記の代表的な実施形態、および特許請求の範囲で説明している。
【0197】
代表的な実施形態:
1. (A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
を含んでいる組み合わせ。
【0198】
実施形態1において、サイトカインの選択は限定しない。
【0199】
2. 該結合ペアの第1のメンバーが、アビジンまたはストレプトアビジンを含んでおり、該結合ペアの第2のメンバーがビオチンを含んでいる、実施形態1の組み合わせ。
【0200】
3. 該結合ぺの第1のメンバーがコア・ストレプトアビジンを含んでいる、実施形態1の組み合わせ。
【0201】
4. 該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1種が、該第1のコンジュゲートメンバーおよび該第2のコンジュゲートメンバーを含んでいる融合ポリペプチドを含んでいる、実施形態1の組み合わせ。
【0202】
5. 該サイトカインが、IL-2、IL-4、またはIL-7からなる群から選択されたものである、実施形態1の組み合わせ。
【0203】
6. 該抗原が自己抗原である、実施形態1の組み合わせ。
【0204】
7. 該抗原がインスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、およびMHC/抗原複合体からなる群から選択されたものである、実施形態1の組み合わせ。
【0205】
8. 該抗原がグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、実施形態1の組み合わせ。
【0206】
9. 該コンジュゲートが別々の組成物中に含まれた形で提供される、実施形態1の組み合わせ。
【0207】
10. 該別々の組成物のうちの少なくとも1つが、さらに製薬上許容される担体、添加剤、または希釈剤を含んでいる、実施形態1の組み合わせ。
【0208】
11. 該コンジュゲートが単一の組成物で提供される、実施形態1の組み合わせ。
【0209】
12. 該単一の組成物がさらに製薬上許容される担体、添加剤、または希釈剤を含んでいる、実施形態8の組み合わせ。
【0210】
13. 該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、該第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと、該結合ペアの第1および第2のメンバーの間の結合を介して結合する、実施形態8の組み合わせ。
【0211】
14. Treg細胞を増殖させる方法であって、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲートとTreg細胞の集団を接触させることを含んでいる方法。
【0212】
15. 該Treg細胞が該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つのための受容体を含んでおり、該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが該第1のコンジュゲートメンバーと該受容体の間の結合を介して該Treg細胞と結合しており、該第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが該第1および第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して該Treg細胞と結合している、実施形態14の方法。
【0213】
16. 該接触がex vivoで行われる、実施形態14の方法。
【0214】
17. 該コンジュゲートのうちの少なくとも2つが該Treg細胞と実質的に同時に接触する、実施形態16の方法。
【0215】
18. 該コンジュゲートのうちの少なくとも2つが単一の組成物中に入った形で提供される、実施形態16の方法。
【0216】
19. 該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、該第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと、該第1および第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して結合する、実施形態18の方法。
【0217】
20. 該コンジュゲートのうちの少なくとも2つが該Treg細胞と順次接触する、実施形態16の方法。
【0218】
21. 該増殖させたTreg細胞を患者に投与することをさらに含んでいる、実施形態16の方法。
【0219】
22. 該接触が、該コンジュゲートを患者に投与することによってin vivoで行われる、実施形態14の方法。
【0220】
23. 該Treg細胞の集団が、CD4+細胞、CD25+細胞、およびFoxP3+細胞からなる群から選択されたTreg細胞を含む、実施形態14の方法。
【0221】
24. Treg細胞の該集団がCD4+CD25+FoxP3+細胞を含んでいる、実施形態23の方法。
【0222】
25. 該患者が自己免疫疾患に罹患しているかまたはその危険性のある患者である、実施形態21または22の方法。
【0223】
26. 該患者がI型糖尿病に罹患しているかまたはその危険性のある患者である、実施形態25の方法。
【0224】
27. 該患者が外来の移植片の移植を受けた患者である、実施形態21または22の方法。
【0225】
28. 該患者にラパマイシンを投与することをさらに含んでいる、実施形態21または22の方法。
【0226】
29. 該患者にTGF-βをディスプレイしている外来細胞を含んでいる組成物を投与することをさらに含んでいる、実施形態21または22の方法。
【0227】
30. 該患者にラパマイシンを投与することをさらに含んでいる、実施形態29の方法。
【0228】
31. 該外来細胞が、脾臓細胞、膵島組織の細胞、および骨髄細胞からなる群から選択されたものである、実施形態29の方法。
【0229】
32. 該外来細胞が:
(a) 結合ペアの第1のメンバーと、該細胞の表面に結合する分子とを含んでいる二機能性分子と外来細胞を接触させて、修飾された外来細胞を形成させ;
(b) TGF-βと該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと該修飾された外来細胞とを接触させて、TGF-βをディスプレイしている外来細胞を形成すること、
を含んでいる方法によって得られたものである、実施形態29の方法。
【0230】
33. 該結合ペアの第1のメンバーがアビジンまたはストレプトアビジンを含んでおり、該結合ペアの第2のメンバーがビオチンを含んでいる、実施形態14の方法。
【0231】
34. 該結合ペアの第1のメンバーがコア・ストレプトアビジンを含んでいる、実施形態14の方法。
【0232】
35. 該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、該第1のコンジュゲートメンバーおよび該第2のコンジュゲートメンバーを含んでいる融合ポリペプチドを含んだものである、実施形態14の方法。
【0233】
36. 該サイトカインがIL-2およびIL-4からなる群から選択されたものである、実施形態14の方法。
【0234】
37. 該抗原が自己抗原である、実施形態14の方法。
【0235】
38. 該抗原が、インスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、およびMHC/抗原複合体からなる群から選択されたものである、実施形態14の方法。
【0236】
39. 該抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、実施形態14の方法。
【0237】
40. 該Treg細胞を遊離のIL-2と接触させることをさらに含んでいる、実施形態14の方法。
【0238】
41. 該Treg細胞を遊離の抗CD3抗体または遊離の抗CD28抗体と接触させることをさらに含んでいる、実施形態14の方法。
【0239】
42. TGF-βをディスプレイしているパルスされた樹状細胞を得る方法であって:
(a)未熟な樹状細胞を抗原でパルスして、パルスされた樹状細胞を得て;
(b)該パルスされた樹状細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾されたパルス樹状細胞を形成させ;
(c)該修飾されたパルス樹状細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を形成させること、
を含んでいる方法。
【0240】
43. 該抗原が糖尿病誘発性の自己抗原である、実施形態42の方法。
【0241】
44. 該糖尿病誘発性自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、実施形態43の方法。
【0242】
45. 該糖尿病誘発性自己抗原が、GAD 65およびICA 512からなる群から選択されたものである、実施形態44の方法。
【0243】
46. 該未熟な樹状細胞をGAD 65、ICA 512、およびNRP-A7の各々でパルスすることを含んでいる、実施形態45の方法。
【0244】
47. 該抗原がコラーゲンである、実施形態42の方法。
【0245】
48. 該抗原がミエリン塩基性タンパク質である、実施形態42の方法。
【0246】
49. 該パルスされた樹状細胞を成熟へと駆動させることをさらに含んでいる、実施形態42の方法。
【0247】
50. 該駆動が該パルスされた樹状細胞を4-1BBLとともにインキュベートすることを含んでいる、実施形態49の方法。
【0248】
51. TGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスされた樹状細胞の集団。
【0249】
52. 実施形態42の方法で作製された、TGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスされた樹状細胞の集団。
【0250】
53. 患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者にTGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスされた樹状細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでいる、方法。
【0251】
54. 患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者に、実施形態42の方法によって作製した、TGF-βをディスプレイしている、パルスされた樹状細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでいる、方法。
【0252】
55. 該患者にラパマイシンを投与することをさらに含んでいる、実施形態54の方法。
【0253】
56. TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞または骨髄細胞を得る方法であって:
(a) 造血幹細胞または骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b) 該修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含んでいる方法。
【0254】
57. 該結合ペアの第1のメンバーがビオチンを含んでおり、該結合ペアの第2のメンバーがコア・ストレプトアビジンを含んでいる、実施形態56の方法。
【0255】
58. 患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者にTGF-βをディスプレイしている造血幹細胞またはTGF-βをディスプレイしている骨髄細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでいる、方法。
【0256】
59. TGF-βをディスプレイしている該細胞が、
(a) 造血幹細胞または骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b) 該修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含んでいる方法によって作製される、実施形態58の方法。
【0257】
60. 該患者にラパマイシンを投与することをさらに含んでいる、実施形態58の方法。
【0258】
61. 該患者が、自己抗原、同種抗原、または異種抗原に対する免疫寛容の誘導;β細胞の再生;外来移植片の拒絶反応の予防;または、遺伝的造血系障害の治療を必要としている患者である、実施形態58の方法。
【0259】
62. TGF-βをディスプレイしている骨髄細胞の集団。
【0260】
63. TGF-βをディスプレイしている骨髄細胞の集団であって、
(a) 骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b) 該修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含んでいる方法によって作製された、集団。
【0261】
64. TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞の集団。
【0262】
65. TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞の集団であって、
(a) 造血幹細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b) 該修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含んでいる方法によって作製された、集団。
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1A】図1Aと1Bは、コア・ストレプトアビジンとマウスLIGHTタンパク質の細胞外ドメインを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号1)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)を示している。コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図1B】図1Aの続きである。
【図2A】図2Aと2Bは、ヒトCD80の細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号3)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号4)を示している。コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図2B】図2Aの続きである。
【図3A】図3Aと3Bは、マウス4-1BBLの細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号5)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号6)を示している。コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図3B】図3Aの続きである。
【図4】図4は、コア・ストレプトアビジンとヒト4-1BBLの細胞外ドメインを含んでいる融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号7)を示している。コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図5A】図5Aと5Bは、コア・ストレプトアビジンとヒトB7.2の細胞外ドメインを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号8)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号9)を示している。
【図5B】図5Aの続きである。
【図6A】図6Aと6Bは、IL-2の活性フラグメントとコア・ストレプトアビジンを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号10)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号11)を示している。図6Bで、IL-2配列はイタリック体で書かれており、コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図6B】図6Aの続きである。
【図7A】図7Aと7Bは、コア・ストレプトアビジンと成熟TGF-βを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号12)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号13)を示している。図7Bで、TGF-β配列はイタリック体で書かれており、コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図7B】図7Aの続きである。
【図8】図8A-Dは、キメラCSA-4-1-BBL融合タンパク質の構成と特徴を示している。(A)マウス4-1BBLの細胞外ドメインはC末端でコア・ストレプトアビジン(SA)と結合させた形でPMT/BiP/V5-HisAベクター中にクローン化した。(B)精製したキメラ4-1BBLタンパク質(CSA-4-1BBL)のウエスタンブロット分析を、変性させた条件(レーン2)および天然の条件(レーン3)で行ったもの。4-1BBLは変性させた条件下では37kDaの単量体となっており、天然の条件下では>150kDaの四量体かそれより大きな構造をとっているものと思われる。(C)キメラ4-1BBL(CSA-4-1BBL)の4-1BB受容体への結合。BALB/cの休止状態もしくはConAで活性化させた脾臓細胞を、CSA-4-1BBL(200 ng/1 x 106個の細胞)と、もしくは等モル量の対照のCSAタンパク質(灰色、塗りつぶしたもの)とインキュベートし、CD4+T細胞およびCD8+T細胞上の4-1BBL(黒線)の結合を、抗4-1BBL抗体を用いてフローサイトメトリーで検出した。いくつかの活性化された細胞は抗CD-137とインキュベートして受容体をブロックした。(D)T細胞のCSA-4-1BBLでの刺激。ソートしたCD4+細胞を、抗CD3抗体(0.5μg/mL)と照射した脾臓細胞を用いて、可溶性CSA-4-1BBLまたは等モル量のCSAを示された濃度(ng/ml)で存在させて、刺激した。陽性対照として抗CD3抗体を5μg/mLで用いた。* p<0.05:お互いの比較と対照のCSAタンパク質との比較。C及びDについてのデータ(平均±SD)は、類似の結果の得られた3回の独立した実験の代表的なものである。
【図9】図9はTreg細胞の4-1BBLを用いたex vivoでの増殖を示す。図9は本発明でのCSA-4-1BBL融合タンパク質を、照射APC、抗CD3抗体、およびIL-2の存在下で用い、IL-2を用いて10〜14日間維持した、Treg細胞の長期ex vivo増殖を示している。CD4+CD25+Treg細胞を、ナイーブなBALB/cマウスの脾臓およびリンパ節から採取してソートし、6ウエルのプレート中で0.5μg/mLの可溶性CD3抗体、1 x 106個の照射した同系の脾臓細胞、および25 U/mlのIL-2の存在下で、1μg/mLの可溶性4-1BBLとともに、または可溶性4-1BBLを用いずに培養した。3〜4日毎に細胞を、IL-2を添加した新鮮な培地で分けて、1 x 106個/mLの濃度でプレートに蒔いた。(A)CD4+CD25+細胞集団のソーティング前および4-1BBL共存または不在で増殖後のフローサイトメトリー分析。(B)ナイーブTreg細胞のex vivoでの増殖倍数で、4-1BBL共存下での培養(□)または4-1BBL不在下での培養(■)を示す。最後の3回の独立した増殖実験結果を示している。矢印は抗CD3、IL-2、4-1BBL、およびAPCでの活性化(二次および三次活性化剤)を示している。CSA-4-1BBLが不在の条件下で得られた細胞を増殖が最小限であった対照として用いた。
【図10】図10は本発明に従ってex vivoで増殖させたTreg細胞上の4-1BB受容体の発現を示している。18〜24日間培養液中に維持したTeffおよびTreg細胞を、4-1BBに対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。黒の塗りつぶした細胞集団はアイソタイプの対照である。
【図11】図11は本発明に従ってex vivoで増殖させたTreg細胞による同種移植片の拒絶反応の予防を示している。ナイーブなBALB/cマウスにストレプトゾトシンを単回投与することによって糖尿病とし、そのマウスに同種であるC57BL/6の膵島を移植する1日前に、5〜8 x 106個の増殖させたTreg細胞を養子免疫細胞移植した(○)。対照のマウスはTreg細胞の移植を受けずに同種膵島の移植を受けた(黒塗りの丸)。拒絶反応は血糖値が2日間連続で300 mg/dLを超えたことで確認した。生存率はKaplan-Meier log-rank検定で比較した(p<0.05)。
【図12】図12は増殖させたTreg細胞はex vivoでTeff細胞のポリクローナルな増殖、または抗原特異的な増殖を抑制することを示す。(A)ポリクローナル(抗CD3抗体)抑制アッセイは、図9に示すとおりに、1μg/mLの4-1BBLの存在または不在の条件で、増殖させたTreg細胞(Exp-DP)を用いて行った。(B)同種抗原抑制アッセイ。ナイーブなBALB/cマウスから得た脾臓細胞と末梢リンパ節細胞(レスポンダー)を、ナイーブなC57BL/6マウスからの、照射した脾臓細胞(スティミュレーター)および増殖させたTreg細胞(Exp-DP)と、図に示した比率で、5日間共培養した。* p<0.05:お互いと対照を比較。データ(平均±SD)はAについては4回の独立した実験の代表的なもの、Bについては類似の結果の得られた2回の独立した実験の代表的なものである。
【図13】図13はTreg細胞増殖に対してのTCR、4-1BB、およびIL-2Rシグナル伝達の相乗的効果を示す。図13Aと13Bは本発明に従ってTreg細胞の増殖に及ぼすTCR、4-1BB、およびIL-2Rを介するシグナル1、2、および3を刺激する相乗的効果を示している。(A)ソートしたナイーブなDP Treg細胞を、0.5μg/mLの抗CD3抗体の共存下で、照射した同系の脾臓細胞と3日間共培養した。培養液には、示しているとおり、25 U/mLのIL-2および/もしくは1μg/mlの4-1BBLを添加した。(B)ソートしたナイーブなDP Treg細胞を、示されているように照射した脾臓細胞の共存または不在の状態で、可溶性抗CD3抗体、4-1BBL、およびIL-2とともに、またはそれらを伴わずに培養した。*p<0.05:お互いと対照を比較。データ(平均±SD)は類似の結果の得られた2回の独立した実験を代表するものである。(C)ソートしたDPおよびSP細胞を2日間、未処理で、またはIL-2および/もしくはAPCの存在下で培養した。細胞のいくらかはAPCおよびIL-2と2日間培養し、IL-2を洗って除去し、さらに2日間培養し、その細胞のいくらかを未処理のまま2日間培養し、さらにIL-2を添加して2日間培養した。4-1BBの発現(黒線)をアイソタイプの対照(灰色の塗りつぶした部分)と比較してフローサイトメトリーで分析した。
【図14】図14はTGF-β-CSA融合タンパク質がin vitroでの同種応答を阻害することを示している。ACI脾臓細胞をCFSEで標識し、等しい数の照射WF細胞と、TGF-βを含んだ状態(B)、またはTGF-βを含まない状態(A)で培養した。5日後に、細胞を集めCFSE希釈アッセイをフローサイトメトリーで行った。
【図15】図15は、4-1BB受容体を介してシグナル伝達が行われるとTreg細胞の抑制機能が阻害され、2種の細胞の双方の集団の増殖が駆動されることを示す。(A)CD4+CD25-(SP)Teff細胞、およびCD4+CD25+(DP)Treg細胞をナイーブなBALB/cマウスの脾臓および末梢リンパ節から得てソートし、単独で、または1:1の比で3日間培養した。培養液には、照射した脾臓細胞、抗CD3抗体(0.5μg/mL)、および示された濃度(μg/mL)の4-1BBLまたは等モル量の対照のSAタンパク質を添加した。(B)SP細胞およびDP細胞の増殖を評価するためのCFSEアッセイ。SP細胞またはDP細胞をCFSEで標識し、上述の抑制アッセイで用いた。分裂中の細胞のパーセンテージは各ヒストグラムに示している。*p<0.05:お互いを比較。データ(平均±SD)は類似の結果の得られた3回の独立した実験を代表するものである。
【図16】図16は、増殖させたTreg細胞の表現型の特性解析を示す。(A)Treg細胞の機能に重要な、細胞表面マーカーの発現について、4-1BBL共存下で、または4-1BBL不在条件下で増殖させた細胞について分析した。4-1BBL共存サンプルと4-1BBL不在サンプル間の相対比較の参照として、任意の垂線を挿入した。(B)増殖させたTreg細胞によるFoxP3の発現を示しているRT-PCR (M, マーカー;H=HPRT;F=FoxP3;SP=CD4+CD25-;DP=CD4+CD25+;Exp-DP=増殖させたTreg細胞)。(C)4-1BBL共存下(点線)、または4-1BBL不在下(実線)で増殖させたTreg細胞による細胞内FoxP3の発現レベルを示している細胞内染色。FoxP3のアイソタイプ対照を対照として用いた(塗りつぶした線)。データは類似の結果の得られた3回の独立した実験を代表するものである。
【技術分野】
【0001】
NIHの助成金
この仕事は部分的にはNIH(R21 DK61333, R01 AI47864, R21 AI057903, R21 HL080108)、Juvenile Diabetes Research Foundation(1-2001-328)、American Diabetes Association(I-05-JF-56)、およびCommonwealth of Kentucky Research Challenge Trust Fundからの助成金で行われた。
【0002】
関連特許出願への相互参照
本出願はつぎのU.S. provisional applicationの35 U.S.C. §119(e)のもとでの出願日の優先権を主張するものである:60/748,177(2005年12月8日出願)、60/758,391(2006年1月12日出願)、60/799,642(2006年5月12日出願)、および60/799,643(2006年5月12日出願)。これらの先行出願はその全体を本明細書中に参照により組み入れる。
【0003】
発明の分野
本発明は一般的に、免疫療法の分野に関する。特に、本発明は制御性T細胞の増殖のための方法と組成物を提供する。それらの方法と組成物は、例えば、糖尿病を含む、免疫が基礎にある疾患の予防と治療、および外来性の移植片拒絶反応の予防に有用である。
【背景技術】
【0004】
制御性T(Treg)細胞はヒトおよびげっ歯類ではCD4+細胞の5〜10%を占め、構成的にCD25、CD28、CTLA-4、GITR、CD62L、および4-1BB、ならびにTreg細胞の発生と機能に関与している転写因子FoxP3を発現する。IL-2もTreg細胞の発生とホメオスタシスに重要な役割を果たすものと考えられるが、それはIL2またはIL-2の受容体の構成成分を欠損した動物はT細胞の過剰増殖と自己免疫疾患を起こすが、その状態はナイーブな動物から得られたTreg細胞の養子免疫細胞移植法(adoptive transfer)で補正されうるからである。同様に、CD28/CD80相互作用を介するシグナル伝達の欠如がTreg細胞の細胞数と機能性の低下に伴って起こることは、この受容体/リガンド系がTreg細胞の発生と機能に重要な役割と果たしていることを示唆している。
【0005】
天然のCD4+CD25+FoxP3+Treg細胞は胸腺の高アフィニティーリガンド上でポジティブに選択され、自己抗原に対する免疫学的寛容の確立と維持に重要な役割を果たす、明確に識別しうる細胞集団である。これらの細胞の発生および/もしくは機能が欠如すると、先天性、または誘発自己免疫のヒトおよび種々の動物モデルで重篤な自己免疫状態が起こる。
【0006】
Treg細胞はその免疫寛容誘導作用を細胞-細胞の直接的接触または溶解性因子を介して間接的に表す。Treg細胞の抑制機構は依然として完全には判明されていないが、エフェクターT細胞(Teff)におけるIL-2発現のブロック、Teff細胞の物理的排除、CTLA-4/B7系(axis)を介する免疫寛容誘導性の樹状細胞(dendritic cell:DC)の誘導、ならびにTGF-βおよびIL-10を介するTeff細胞の阻害は、現在までのところ考えられている機構のいくつかである。また、CTLA-4/CD80を通過してTeff細胞へと伝達される逆行シグナル伝達がTreg細胞によるTeff細胞の阻害に重要な役割を担っていることが示されている。同様にTreg細胞上のCTLA-4とDC上のCD80との間の相互作用は逆行シグナル伝達と、トリプトファン代謝の調節を介して免疫寛容に関与しているインドールアミンジオキシゲナーゼ酵素のアップレギュレーションをもたらしうる。
【0007】
Treg細胞はその天然状態での役割である自己抗原に対する免疫寛容の確立と維持という役割に加えて、様々な免疫修飾性のアプローチによって誘導される、外来抗原に対する末梢の免疫寛容において役割を果たしていることが明らかとなっている。例えば、Treg細胞は移植抗原に対する末梢の免疫寛容に関与する機構の、免疫寛容を得るために用いられた免疫修飾性のアプローチに関わらず、共通事項(common denominator)である。Treg細胞はまた、腫瘍および種々の病原体による免疫忌避(immune evasion)機構に関連しているとされている。
【0008】
自己抗原に対する免疫寛容を確立し維持すること、および外来抗原に対する免疫寛容を誘導することにおけるTreg細胞の重要性から、治療目的でTreg細胞をex vivo(体外)で増殖させるための方法が大きな関心を呼んできた。例えば、Tangら, 2004, J. Exp. Med. 199:1455-65;Battagliaら, 2005, Blood 105:4743-48;Earleら, 2005, Clin. Immunol. 115:3-9;Godfreyら, 2004, Blood 104:453-61;Hoffmannら, 2004, Blood 104:895-903を参照せよ。Treg細胞の発生はT細胞受容体(TCR)、CD28、およびIL-2を介するシグナル伝達で起こるので、Treg細胞を増殖させる方法はそれらのシグナルを提供することに焦点が当てられてきた。例えば、Tangら, 上述の文献、Godfreyら, 上述の文献、Hoffmannら, 上述の文献を参照せよ。Tangら(上述の文献)は、多量のIL-2(2000 IU/mL)の存在下で抗CD3抗体および抗CD28抗体を結合させたビーズを用いて刺激することによって、非肥満型糖尿病(NOD)動物からTreg細胞を増殖させうることを報告している。養子免疫細胞移植モデルにおいて、自己抗原に特異的な、増殖させたTCRトランスジェニックTreg細胞の養子免疫細胞移植によって糖尿病が防止され、また、新たに糖尿病となったNODマウスでは糖尿病から回復させた。このプロトコールに基づいたその他の少数の増殖プロトコールが最近開発され、げっ歯類およびヒトから得たTreg細胞の増殖にある程度の成功を収めている。例えば、Earleら(上述の文献)、Godfreyら(上述の文献)を参照せよ。例えば、GodfreyらはFcγRII(CD32)を発現している細胞系統をビーズに替わるものとしてCD3およびCD28に対する抗体を細胞の表面上にFc受容体を介して固定するために用いたヒトTreg細胞の増殖法について報告している。これまでに報告された体外での増殖プロトコールのほとんど全ては類似のスキームに基づいたものであり、多量のIL-2の使用を必要とする。
【0009】
これらの進歩はあったものの、依然としてTreg細胞を体外で増殖させるために有用な方法と組成物は求められている。特に、固体支持体の使用を必要としない方法が求められている。また、効力に多量のIL-2を必要としない方法も求められている。また、in vivoでTreg細胞を増殖させるのに有用な方法と組成物も求められている。
【0010】
I型糖尿病は依然として世界中で人口の1%を超える人々の長期にわたる罹患率と死亡率の主因となっている。インスリン療法およびランゲルハンス島(膵島)移植は現在のところ最も有効な治療レジメンとなってはいるが、これらのアプローチは双方とも大きな限界がある。従って、I型糖尿病の有効でかつ永続的な治療のために、ランゲルハンス島特異的な自己、同種、および異種免疫寛容を誘導する方法が依然として必要とされている。
【0011】
上述のとおり、Treg細胞は自己反応性応答の制御、および外来抗原に対する免疫寛容の確立と維持に重要な役割を果たしている。従って、Treg細胞は、I型糖尿病を含む種々の自己免疫疾患、固形臓器、組織、幹細胞、骨髄細胞、造血幹細胞の拒絶反応、および移植片対宿主病(GVHD)の予防と治療の重要なターゲットである。これらの病態の治療のための、in vivoでのTreg細胞の、制御された計画的な増殖方法が求められている。
【発明の開示】
【0012】
本発明は一般的には、制御性T細胞の増殖のための方法と組成物を提供する。
【0013】
1態様においては、本発明は、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲートを含んでいる、組み合わせを提供する。
【0014】
特定の1実施形態においては、該結合ペアの第1のメンバーはアビジンまたはストレプトアビジン(コア・ストレプトアビジンなど)を含んでおり、該結合ペアの第2のメンバーはビオチンを含んでいる。別の特定の1実施形態においては、該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つは、該第1および第2のコンジュゲートメンバーを含んでいる融合ポリペプチドを含んでなる。さらに別の1実施形態においては、該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つは、該第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと、該第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して結合している。
【0015】
特定の1実施形態においては、該サイトカインは、IL-2およびIL-4からなる群から選択されたものである。別の特定の1実施形態においては、該抗原は自己抗原である。また別の特定の1実施形態においては、該抗原は、インスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、およびMHC/抗原複合体からなる群から選択されたものである。さらに別の特定の1実施形態においては、該抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである。
【0016】
別の1態様では、本発明はTreg細胞を増殖する方法を提供し、その方法は、Treg細胞の集団を、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲートと、
接触させることを含んでなる。
【0017】
特定の1実施形態においては、該Treg細胞は、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つについての受容体を含んでおり、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つはそのTreg細胞と、第1のコンジュゲートメンバーとその受容体との間の結合を介して結合し、第4、第5、第6、および第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つは該Treg細胞に第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して結合する。さらに別の1実施形態においては、Treg細胞の集団は、CD4+細胞、CD25+細胞、およびFoxP3+細胞からなる群から選択されたTreg細胞を含んでいる。さらに別の1実施形態においては、Treg細胞の集団はCD4+CD25+FoxP3+細胞を含んでいる。
【0018】
1実施形態においては、該方法はさらに、該Treg細胞を遊離のIL-2と接触させることを含んでいる。別の1実施形態においては、該方法はさらに、該Treg細胞を遊離の抗CD抗体と接触させることを含んでいる。
【0019】
1実施形態においては、該接触はex vivoで行われる。さらに別の1実施形態においては、該方法はさらに増殖させたTreg細胞を患者に投与することを含んでいる。
【0020】
別の1実施形態においては、該接触は該コンジュゲートを患者に投与することによってin vivoで行われる。さらに別の1実施形態においては、その患者は、I型糖尿病などの自己免疫疾患に罹患しているかまたは罹患する危険性のある患者である。別の1実施形態においては、その患者は外来性の移植片の移植を受けた患者である。
【0021】
1実施形態においては、該方法はさらに、ラパマイシンを患者に投与することを含んでいる。別の1実施形態においては、該方法は、TGF-βをディスプレイしている外来細胞を含んでいる組成物を、該患者に投与することを含んでいる。特定の1実施形態においては、その外来細胞は、脾臓細胞、膵島組織の細胞、および骨髄細胞からなる群から選択された細胞である。別の特定の1実施形態においては、該外来細胞は、(a) 外来細胞を、結合ペアの第1のメンバーと該細胞の表面に結合する分子とを含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾された外来細胞を形成させ、(b) その修飾された外来細胞を、TGF-βと該結合ペアの第2のメンバーとを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている外来細胞を形成すること、を含んでいる方法によって得られたものである。
【0022】
別の1形態では、本発明はTGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を得る方法を提供し、その方法は、(a)未熟樹状細胞を抗原でパルスして、パルスされた樹状細胞を得て、(b)そのパルスされた樹状細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよびその樹状細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾されたパルス樹状細胞を形成させ、(c)該修飾されたパルス樹状細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を形成させることを含んでいる。1実施形態においては、該方法はさらにそのパルス樹状細胞を成熟した細胞へと駆動することを含んでいる。
【0023】
1実施形態においては、該抗原は糖尿病の病原性のある自己抗原、例えばグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、または自己抗原NRP-A7などである。別の1実施形態においては、該抗原はコラーゲンである。別の1実施形態においては、該抗原はミエリン塩基性タンパク質である。
【0024】
別の1態様においては、本発明は、上述の方法によって作られたものなどの、TGF-βをディスプレイしている、抗原でパルスされた樹状細胞の集団を提供する。
【0025】
別の1態様においては、本発明はTreg細胞を患者の体内で増幅させる方法を提供し、その方法は、上述の方法で作られたものなどの、TGF-βをディスプレイしている、抗原でパルスした樹状細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでなる。1実施形態においては、該方法はさらに、ラパマイシンを患者に投与することを含んでいる。
【0026】
さらに別の1態様では、本発明は、TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞または骨髄細胞を得る方法を提供し、その方法は、(a)造血幹細胞または骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し、(b)その修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させることを含んでいる。
【0027】
また別の1態様では、本発明は患者の体内でTreg細胞を増殖させる方法を提供し、その方法は、上述の方法で作製したものなどの、TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞またはTGF-βをディスプレイしている骨髄細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでなる。1実施形態においては、該方法はさらに、その患者にラパマイシンを投与することを含んでなる。特定の1実施形態においては、該患者は、自己抗原、同種抗原、または異種抗原に対しての免疫寛容の誘導、β-細胞の再生、外来性の移植片拒絶反応の予防、または、遺伝性造血障害の治療を必要としている患者である。
【0028】
別の1態様においては、本発明は、上述の方法で作製したものなどの、TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞または骨髄細胞の集団を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明はTreg細胞発生に関与する3種類のシグナルのうちの少なくとも1つを刺激することによって、Treg細胞を増殖させるための方法と組成物を提供する。シグナル1にはTCRが関与し、抗CD3抗体などの抗体、または、TCRを介してシグナルを発する抗原を用いて刺激することができる。シグナル2は数種類の異なる分子によってメディエートされるもので、そのような分子としては、CD80や4-1BBLなどの免疫共刺激性分子(immune co-stimulatory molecule)が含まれる。シグナル3はIL-2やTGF-βなどのサイトカインを介して変換される。本発明は、ex vivoまたはin vivoで行うことのできる、Treg細胞の増殖方法を提供し、また、そのような方法を行うための組成物をも提供する。1実施形態においては、該方法と組成物はそれらのシグナルのうちの1種を刺激する。また別の1実施形態においては、該方法と組成物はそれらのシグナルのうちの2種を刺激する。また別の1実施形態においては、該方法と組成物はこれらのシグナルの3種を刺激する。
【0030】
別の1態様においては、本発明は、抗原でパルスしTGF-βをディスプレイするように修飾した樹状細胞(DC)を用いて、またはTGF-βをディスプレイするように修飾した造血幹細胞もしくは骨髄細胞を用いて、Treg細胞を増殖させる方法と組成物を提供する。
【0031】
ヒトやその他の動物の多数の自己免疫疾患では、Treg細胞の数が少ないこと、および/もしくはTreg細胞の調節機能の喪失が関連している。従って、自己免疫疾患の患者(例えばI型糖尿病患者)の体内で自己免疫性のTeff細胞よりもTreg細胞を強く増殖させることが、治療上非常に有益なものとなるものと期待される。従って、本発明の方法と組成物は、例えば、I型糖尿病を含む、免疫がベースとなった疾患の予防および治療、ならびに同種移植片の拒絶反応の防止に有用である。
【0032】
本出願においては、下記の用語は下記説明の定義を有する。
【0033】
本明細書中で"a"または"an"とは、特にそれが1つのみであることを断らない限りは、1つまたはそれ以上を意味する。
【0034】
本明細書中で「投与」とは、患者にある物質を提供する適切な手段の全てを包含する。一般的な経路としては、経口、舌下、経粘膜、経皮、直腸、経膣、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、髄腔内、カテーテルを介して、インプラントを介して、その他が含まれる。
【0035】
「結合ペア」とは、様々な分子間力、例えば、イオン結合、共有結合、疎水結合、ファン・デル・ワールス力、および水素結合などの分子間力のいずれかを介してお互いに相互作用して、お互いに対して特異的に結合する性質をそのペアが有するようになった2つの分子を意味する。特異的な結合とは、結合ペアのメンバーが、別の分子とは結合しないような条件下でお互いに結合することを意味する。結合ペアの例としては、ビオチン-アビジン、ホルモン-受容体、受容体-リガンド、酵素-基質、IgG-プロテインA、抗原-抗体、および類似のものが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いている「患者」には、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、鳥類、イヌ、ネコ、および霊長類を含む全ての脊椎動物が含まれる。1実施形態においては、その患者はヒトである。当業者であれば、特定の免疫共刺激性分子、シグナル伝達分子、細胞マーカー、細胞のタイプ、感染性物質、その他のものがある動物種について述べられていれば、異なる種においてそれと対応する類似物がありうること、ならびにそのような類似物と、その対応および関連する種における使用が本発明に包含されることは理解できよう。
【0037】
1態様では、本発明はシグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する、少なくとも1つの共刺激性部分を含んでいるコンジュゲートを提供する。特定の1実施形態においては、該コンジュゲートはその共刺激性部分と結合ペアの1メンバーを含んでいる。3種のシグナルのうちの1つを刺激する部分であればどのようなものであっても本発明で用いることができ、同様にどのような結合ペアをも用いることができる。代表的な共刺激性部分および結合ペアについては下記に詳述する。
【0038】
本明細書中で「完全長」と断らない限りは、共刺激性部分は完全長のもの(例えば、完全長のポリペプチド)、ならびにそれの共刺激機能を示す断片もしくは一部分をも意味し、そのような断片および一部分は下記で特定したものに限定されない。従って、例えば、4-1BBLとは、4-1BBLの細胞外ドメインもしくは完全長の4-1BBLタンパク質などのような共刺激機能を示す、完全長の4-1BBLの断片もしくは一部分を含んでいるポリペプチドを意味する。
【0039】
シグナル1
シグナル1を刺激するための、共刺激性部分の代表的なものとしては、CD3もしくはCD3とTCRとの複合体の何らかの成分に対する抗体、、抗原/MHC複合体、およびTCRを経由してシグナルを伝達するイオノマイシンおよびホルボールミリスチン酸アセテート(PMA)などの薬剤が含まれる。
【0040】
免疫的治療法に有用な抗CD3抗体については当業界では既知である。例えば、Earleら, 2005, Clin. Immunol. 115:3-9を参照せよ。適切な抗CD3抗体として代表的なものには、ヒトもしくはマウスの抗体、ヒト化抗体、遺伝子組換えによって作成した抗体、単鎖抗体、およびCD3結合性抗体フラグメントが含まれる。そのような抗CD3抗体は当業界では既知の方法で得ることができる。
【0041】
上述のとおり、TCR複合体の何どのような成分に対する抗体であっても、用いることができ、例えばTCRのα鎖またはTCRのβ鎖に対する抗体を用いることができ、またCD3の成分に対する抗体を用いることができる。例えば、Niederbergerら, 2005, J. Leukoc. Biol. 77:830-41;Hamanoら, J. Immunol. 164:6113-19を参照せよ。さらに、どのようなタイプの抗体であっても(ヒト、マウス、組換え、単鎖、その他)用いることができる。
【0042】
シグナル1を刺激するための共刺激性部分として有用な抗原としては、標的とする疾患または病状に関連している抗原が含まれる。例えば、自己抗原およびインスリン(特にI型糖尿病の治療に適している)、コラーゲン(特に慢性関節リウマチの治療に適している)、ミエリン塩基性タンパク質(特に多発性硬化症の治療に適している)、およびMHC(外来性の移植片拒絶反応の治療および予防に適している)が挙げられる。それらの抗原は結合ペアの1メンバーを含んでいるコンジュゲートの1部分として投与することができる。任意で、該抗原はMHC/抗原複合体の一部分として提供される。この実施形態においては、MHCおよび抗原はそれぞれ独立に外来性のものまたは同系なものとすることができる。例えば、ドナーMHCと同種もしくは同系の抗原を用いることができる。
【0043】
本発明の1態様においては、該抗原は自己抗原である。例えば、該抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、または自己抗原NRP-A7(膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼの触媒サブユニット関連自己抗原に由来するもので、近年、糖尿病に重要な役割を果たしていることが示されている)とすることができる。これらの抗原は膵島特異的自己抗原レパートリーの重要な部分を占めており、そのため、エピトープスプレッディング(epitope spreading)またはTreg細胞が支配する免疫調節機作を介して他の自己抗原に対する免疫寛容を付与することに有効である可能性がある。特定の1実施形態においては、該自己抗原はGAD65、ICA512、またはNRP-A7である。
【0044】
1実施形態においては、本発明は上述の抗CD3抗体または抗原/MHC複合体を共刺激性部分として含み、ビオチンを結合ペアメンバーとして含んでいるコンジュゲートを提供する。そのようなコンジュゲートは、当業界では既知の方法によって抗CD3抗体または抗原/MHC複合体をビオチニル化して作製することができ、そのことについては下記の実施例中で例示している。あるいはまた、該抗体または抗原は、例えばコア・ストレプトアビジンなどの結合ペアメンバーと連結させるか、またはそれとの融合タンパク質として発現させて、本発明に有用な別の形のコンジュゲートを形成させることができる。
【0045】
シグナル2
シグナル2を刺激するための、共刺激性部分の代表的なものとしては、B7およびTNFファミリーのメンバーが挙げられ、そのようなものとしては、限定はされないが、下記のものが含まれる。
【0046】
【0047】
これらの部分のヌクレオチド配列および/もしくはアミノ酸配列は下記のとおり先行文献中に記載されている。
【0048】
【0049】
適切な共刺激性部分の特別な例としては、4-1BBL、CD80、OX40L、およびCD86が挙げられ、これらは下記でより詳細に述べる。しかし、上述のどの共刺激性部分でも本発明で用いることができることは理解されるべきである。
【0050】
あるいはまた、それらの共刺激性部分のいずれかの受容体に対する抗体を用いることができる。そのような抗体は当業界では既知であり、市販のものを入手することができ、または当業界で既知の方法によって得ることができる。本発明の1実施形態においては、抗CD28抗体が用いられる。免疫的治療法に有用な抗CD28抗体は当業界では既知である。例えば、Earleら, 上述の文献を参照せよ。適切な抗CD28抗体の代表的なものとしては、ヒトまたはマウスの抗体、ヒト化抗体、遺伝子組換えで産生された抗体、単鎖抗体、およびCD28結合抗体フラグメントが挙げられる。そのような抗CD28抗体は当業界では既知の方法によって得ることができる。
【0051】
4-1BBL(4-BB-L、4-BBリガンド、TNFSF9、ILAリガンドとしても知られている)は、TNF受容体ファミリーのメンバーで、活性化B細胞、マクロファージ、およびDCを含む活性化抗原提示細胞(APC)上に、活性化の2〜3日後に発現される。4-1BB(CD137としても知られている)は4-1BBLの受容体であるが、これは活性化CD4+およびCD8+細胞表面上、ナチュラルキラー細胞(NK)、単球、および休止期のDC上に発現されている。最近、Treg細胞が構成的に4-1BB受容体を発現することも示されている。例えば、Choiら, 2004, J. Leukoc. Biol. 75:785-91;<cHugら, 2002, Immunity 16:311-23を参照せよ。
【0052】
4-1BBLは254個のアミノ酸を含んでいる(26624 Da)。例えば、Aldersonら, 1994, Euro. J. Immunol. 24(9):2219-27を参照せよ。ヒト4-1BBLの完全なアミノ酸配列はSwiss-Prot データベースの寄託No.P41273で見ることができる。4-1BBLはII型糖タンパク質で、残基1-28は細胞質ドメインを形成していると考えられ、残基29-49は単一の膜貫通ドメインと予測され、残基50-254は細胞外ドメインを形成しているものと考えられ、残基35-41はポリLeuストレッチを示している。ヒト4-1BBLをコードしているヌクレオチド配列はGenBank寄託No.NM_003811で見ることができる。
【0053】
同系の受容体である4-1BBと結合することのできる4-1BBLの残基50-254またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーとの融合タンパク質として連結または発現させることができる。例えば、図3AおよびBはCSA-マウス4-1BBL融合タンパク質のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示している(配列番号5および6)。図4は、ヒト4-1BBLの細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいるキメラタンパク質のアミノ酸配列を示している(配列番号7)。あるいはまた、4-1BBLはビオチニル化して、共刺激性部分として4-1BBLを含み、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートを形成させることができる。
【0054】
CD80(B7.1、CD28LG、またはLAB7としても知られている)およびCD86(B7.2、CD28LG2、LAB72としても知られている)は代表的な共刺激性ポリペプチドで、どちらもT細胞によって発現されたCD28/CTLA4共受容体と結合する。CD80は288個のアミノ酸を含んでいる(33048 Da)。Freemanら, J. Immunol. 143(8):2714-2722(1989)を参照せよ。ヒトB7.1の完全なアミノ酸配列はSwiss-Protデータベースの寄託No.P33681で見ることができる。
【0055】
B7.1はI型糖タンパク質で、残基1-34は分泌シグナルを形成し、残基35-242は細胞外ドメインを形成していると考えられ、残基243-263は膜貫通ドメインを形成していると考えられ、残基264-288は細胞質ドメインを形成しているものと考えられる。従って分泌シグナル配列を持たない成熟したB7.1分子はアミノ酸35-288である。ヒトでB7.1をコードするヌクレオチド配列は、GenBank寄託No.NM_005191で見ることができる。
【0056】
同系の受容体であるCD28と結合することのできるB7.1の残基35-242またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーとの融合タンパク質として連結または発現させることができる。例えば、図2Aおよび2Bは、ヒトB7.1(CD80)の細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいるキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)を示している。あるいはまた、CD80はビオチニル化して、共刺激性部分としてCD80を含み、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートを形成させることができる。
【0057】
B7.2は329個のアミノ酸を含んでいる(37696 Da)。Freemanら, Science 262(5135):909-911(1993)を参照せよ。ヒトB7.2の完全なアミノ酸配列はSwiss-Protデータベースの寄託No.P42081で見ることができる。B7.2はI型の糖タンパク質で、残基1-23は分泌シグナルを形成しており、残基24-267は細胞外ドメインを形成していると考えられ、残基248-268は膜貫通ドメインを形成しているものと考えられ、残基269-329は細胞質ドメインを形成しているものと考えられる。従って分泌シグナル配列を持たない成熟したB7.2分子はアミノ酸24-329である。ヒトでB7.2をコードするヌクレオチド配列は、GenBank寄託No.NM_175862で見ることができる。
【0058】
同系の受容体であるCD28と結合することのできるB7.2の残基24-247またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーとの融合タンパク質として連結または発現させることができる。例えば、図5Aおよび5Bは、ヒトB7.2(CD86)の細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいるキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号8)およびアミノ酸配列(配列番号9)を示している。あるいはまた、CD86はビオチニル化して、共刺激性部分としてCD86を含み、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートを形成させることができる。
【0059】
B7.2は通常は休止期のB細胞上には発現されておらず、末梢血単球(PBC)およびDC上には低レベルで発現されている。しかし、その発現は、B細胞上およびその他の、マクロファージやDCなどのAPC上では活性化後にアップレギュレートされる。これに対して、CD86はPBCやDC上で構成的に発現され、B細胞上ではより急速にアップレギュレートされる。T細胞受容体(TCR)のAPC上でのMHC/ペプチド複合体との相互作用によって、T細胞上のCD80/86のCD28との共結合が可能となり、そのことが脂質キナーゼであるホスファチジルイノシトール3-キナーゼのチロシンリン酸化をもたらし、今度はそのことが一連の細胞内イベントを開始させてIL-2遺伝子発現の誘導、細胞増殖、およびエフェクター機能への分化をもたらす。シグナル2はさらに抗アポトーシス遺伝子、例えばBclxLなどの調節による細胞死を防ぐことによって増大性の免疫応答を増やすことができる。
【0060】
OX40Lは樹状細胞およびそのほかのAPCによって発現され、活性化T細胞上に存在するOX40と結合する。OX40Lは183個のアミノ酸を含んでいる(21950 Da)。Miuraら, Mol. Cell. Biol. 11:1313-1325(1991)を参照せよ。OX40Lの完全なアミノ酸配列はSwiss-Protデータベースの寄託No.P23510で見ることができる。OX40LはII型の糖タンパク質で、残基1-23は細胞質ドメインであり、残基24-50は膜貫通ドメイン、残基51-183は膜貫通ドメインを形成している。OX40Lのヌクレオチド配列は3510bpで、コード配列は157-708である(GenBank寄託No.NM_003326.2を参照せよ)。同系の受容体であるOX40と結合することのできるOX40Lの残基51-183またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーと連結またはC末端で結合ペアメンバーと融合させたものとして発現させることができる。
【0061】
LIGHTポリペプチド(TNFS14、HVEM-L、LTg、TR2としても知られている)はTNFスーパーファミリーのメンバーで、リンホトキシンと相同である。Mauriら, Immunity 8(1):21-30(1998)を参照せよ。ヒトLIGHTの完全なアミノ酸配列はSwiss-Protデータベースの寄託No.O43557で見ることができる。LIGHTは240個のアミノ酸を含んでおり(26351 Da)、II型の糖タンパク質で、残基1-37は細胞質ドメインを形成するものと考えられ、残基38-58は単一の膜貫通ドメインを形成していると考えられ、残基59-240は細胞外ドメインを形成しているものと考えられる。切断部位は残基82-83にある。ヒトのLIGHTをコードするヌクレオチド配列はGenBank寄託No.NM_172014で見ることができる。
【0062】
同系の受容体であるHVEM、LTβR、またはTR6と結合することのできるLIGHTの残基59-240またはその断片は、本発明で用いるために、結合ペアメンバーとの融合タンパク質として連結または発現させることができる。例えば、図1Aおよび1Bは、マウスLIGHTの細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいるキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)を示している。あるいはまた、LIGHTはビオチニル化して、共刺激性部分としてLIGHTを含み、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートを形成させることができる。
【0063】
LIGHTは主として活性化されたT細胞、NK細胞、および未熟な樹状細胞上に発現され、免疫応答の様々な様相の調節に関わる。LIGHTは膜結合タンパク質として合成されるが、その細胞表面での発現はいくつかの翻訳後機構によって調節されている。LIGHTはそれの発現から数分以内にマトリクスメタロプロテイナーゼによって細胞表面から切り離され、可溶性の分子として蓄積する(アイソフォーム1;これはほぼ残基83-240である;Swiss-Prot O43557-1)。細胞表面の細胞質セグメントはアイソフォーム2である(Swiss-Prot O43557-2)。さらに、種々の細胞のタイプが小胞内にLIGHTを貯蔵しており、様々な生理学的刺激による活性化で分泌される。LIGHTの可溶性の形態のものの役割については十分にその特性が明らかになってはいないが、HVEMおよびLTβRと競合することによって、膜に結合した形態のLIGHTの機能を阻害するネガティブフィードバックとして働いているのかもしれない。
【0064】
LIGHTは3種類の異なる受容体と相互作用する:(1)T細胞上のヘルペスウイルス侵入介在因子(Herpesvirus Entry Mediator:HEMV);(2)主として上皮細胞および間質細胞上に発現されるLTβR、ならびに(3)種々の細胞上にある可溶性デコイ受容体3。これらの相互作用がLIGHTに種々の機能をもたらしている。間質細胞上のLTβRとの相互作用は、種々のサイトカイン/ケモカインの産生、リンパ節(LN)器官形成、および二次リンパ構造の回復を伴う。他方、LIGHTのリンパ球上にあるHVEM受容体との相互作用は、IFN-γおよびGM-CSFを主とするサイトカインの活性化と産生をもたらす。このような状況では、LIGHT/HVEM系はTh1タイプの応答の活性化、これは腫瘍の根絶に非常に重要な役割を果たすが、この活性化を伴って共刺激シグナルを送るものと思われる。
【0065】
シグナル3
シグナル3を刺激するための共刺激性部分の代表的なものとしては、シグナル3を刺激するサイトカインや成長因子、例えば、IL-2、IL-4、およびTGF-β(TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3を含む)などが含まれる。免疫治療法に有用なIL-2とIL-4部分は当業界では既知である。例えば、Earleら, 2005, 上述の文献;Thorntonら, 2004, J. Immunol. 172:6519-23;Thorntonら, 2004, Eur. J. Immunol. 34:366-76を参照せよ。1実施形態においては、該サイトカインの成熟した部分が用いられる。
【0066】
例えば、IL-2もしくはIL-4、またはそれらの活性を有する断片は、本発明での使用のために、結合ペアメンバーと連結するかまたは融合タンパク質として発現させることができる。例えば、同時係属の米国特許出願第10/312,245号では、本発明において有用な、IL-2もしくはIL-4の成熟した部分とコア・ストレプトアビジンとを含んでいるキメラタンパク質について開示されている。図6Aと6BはIL-2-CSAキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号10)およびアミノ酸配列(配列番号11)を示しており、それらも参照せよ。あるいはまた、IL-2もしくはIL-4は当業界では既知の方法でビオチニル化して、IL-2もしくはIL-4を共刺激性部分とし、ビオチンを結合ペアメンバーとして含んでいるコンジュゲートが提供される。例えば、Jordanら, 2003, Clin. Diag.Lab.Immunol. 10:339-44;DeJongら, 1995, J. Immunol. Methods, 184:101-12を参照せよ。
【0067】
TGF-β1(TGF-β、TGF1、CED、DPD1、HGNC:2997、進行性骨幹異型性症1、トランスフォーミング成長因子β1としても知られている)は、多機能性ペプチドで多数の細胞タイプで増殖、分化、およびその他の機能を調節している。多数の細胞がTGF-β1を合成(および分泌)しており、ほぼ全てはこのペプチドに対する受容体を有している。TGF-β1は他の多数のペプチド性の成長因子の作用を調節し、それらの効果の正か負かの方向性を定める。TGF-β1は骨の再構築(remodeling)に重要な役割を果たしており、また、骨芽細胞による骨形成の強力な刺激剤であり、方向の定まった(committed)骨芽細胞の走化性、増殖、および分化を起こさせる。
【0068】
TGF-β1分子は390個のアミノ酸を含んでいる(44341 Da)。これは前駆体であり、切断された成熟したTGF-β1とLAP(latency-associated peptide)となる。不活性型はTGF-β1ホモダイマーが非共有結合でLAPホモダイマーと連結されたものからなっている。この不活性な複合体は表面に出ないTGF-β結合タンパク質を含んでいる。活性型は、112個のアミノ酸の成熟したTGF-βがモノマーの形態である、ホモダイマーでジスルフィド結合で連結されている。このアミノ酸配列はSwiss Protデータベース中に寄託No.P01137で記載されており、その配列には残基1-29に29個のアミノ酸からなるシグナルペプチドがあり、残基30-278に249個のアミノ酸からなるLAPがあり、残基279-390に112個のアミノ酸からなる活性型TGF-β1配列があり、残基244-246に3個のアミノ酸からなる細胞付着部位がある。多数の変異体配列があり、それらは、本発明に包含される。TGF-β1遺伝子のヌクレオチド1-2745を示しているヌクレオチド配列はGenBankで寄託No.NM-000660で見ることができ、その配列でコード配列は塩基842-2017である。この核酸配列はもともとはDnrykら, 1987, Nucl. Acids. Res.で公表されたものである。
【0069】
TGF-β1は可溶性および膜に結合した成長因子として存在し、主として器官形成および胚の早期パターン形成に関与している。TGF-βは免疫系において重要な役割を果たしている。例えば、TGF-β1の欠損したマウスは短命で、重要な臓器中への炎症性リンパ球およびマクロファージの多量の浸潤により死亡するが、これはTGF-β1が末梢における免疫寛容に影響を及ぼしていることを示している。
【0070】
最近の一連の研究ではTGF-βは、種々の自己免疫および移植免疫の状況において、自己抗原および同種抗原に対する免疫寛容をメディエートすることができることが示唆されている。例えば、ラットでドナー特異的輸血を用いて同種移植片免疫寛容を起こさせると、それには、リンパ球浸潤による移植片内の高レベルのTGF-β発現、およびTGF-βで抑制される免疫寛容に対するブロッキング抗体を伴う(Josienら, 1998, J. Clin. Invest., 102:1920-26)。さらに、移植された心臓内でTGF-βの異所性の発現が起こると、同種移植レシピエントの長期間の生存をもたらした(同上の文献)。さらに、NODでは抗CD3抗体を用いて確立された自己寛容はTGF-β依存性であることが見出された(Belghithら, 2003, Nat. Med., 9:12-02-08)。また、膵島細胞におけるTGF-βの一時的発現は、Treg細胞の増殖をもたらし、それによってNODでの自己免疫性糖尿病の予防に有効であることが示された(Pengら, 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1-1:4572-77)。同様に、TGF-β1を用いた全身的遺伝子治療は、免疫寛容、β細胞の再生、および明らかに糖尿病状態のNODの糖尿病の治療をもたらした(Luoら, 2005, Transplantation, 79:1091-96)。
【0071】
TGF-βは、Treg細胞の発生、ホメオスタシス、および増殖に重要な役割を果たしている。例えば、TGF-β1を欠損しているマウスでは末梢でのTreg細胞の数がTGF-βによるFoxP3の調節により、減少している(Pengら, 上述の文献)。TGF-β欠損マウスから野生型マウスへTreg細胞を養子免疫細胞移植すると、Treg細胞は持続的に存在し機能するが、それはおそらくTGF-β1のパラクリン作用によるものであろう。TGF-βはまた、NODでTreg細胞のホメオスタシスと機能に重要な役割を果たしていることも示されている。例えば、PoPら, 2005, J. Exp. Med., 201:1333-46を参照せよ。NODマウスでは、疾患(糖尿病)に抵抗性の系統と比較すると、Treg細胞の絶対数が著しく減少している。この減少はTGF-βの細胞表面での発現の低下によってもたらされたものであり、そのことが今度は疾病の発生と同時に起こるFoxP3の発現の低下とTreg細胞の機能の変化をもたらす。例えば、Greggら, 2004, J. Immunol., 173:7308-16;Youら, 2005, Diabetes, 54:1415-22;Popら, 上述の文献、を参照せよ。
【0072】
TGF-βはまた、FoxP3の発現を誘導することによってナイーブなCD4+CD25-T細胞のTreg細胞への転換に重要な役割を果たす。TGF-βによって転換されたTreg細胞はT細胞の増殖を抑制し、抗原によるチャレンジ後のT細胞のクローンの増殖を防ぐ。TGF-βがFoxP3の発現を誘導する機構に焦点を当てた研究はごく少数しかないが、この作用はFox`3による阻害性Smad7のダウンレギュレーションが起こり、それによってTGF-βのポジティブレギュレーターであるSmad3と4を介するシグナル伝達が可能となることによってメディエートされているものと思われる。
【0073】
TGF-β、またはそれの活性を有する断片は、本発明での使用のために、結合ペアメンバーと連結するかまたは融合タンパク質として発現させることができる。例えば、同時係属の米国特許出願第10/312,245号では、本発明において有用な、ヒトTGF-βの活性ドメインとコア・ストレプトアビジンとを含んでいるキメラタンパク質について開示されている。図7Aと7Bはこのキメラタンパク質のヌクレオチド配列(配列番号12)およびアミノ酸配列(配列番号13)を示しており、それらも参照せよ。あるいはまた、TGF-βまたはそれの活性を有する断片は当業界では既知の方法でビオチニル化して、TGF-βを共刺激性部分とし、ビオチンを結合ペアメンバーとして含んでいるコンジュゲートが提供される。ビオチニル化したIL-2も市販のもの(R&D Systems)を購入することができる。
【0074】
結合ペアメンバー
結合ペアの代表例としては、ビオチンと、ストレプトアビジン(SA)またはアビジンが挙げられる。ビオチンとの結合活性を実質的に保持している、例えば天然のSAまたはアビジンの少なくとも50%以上の結合アフィニティーを保持しているSAまたはアビジンの断片も用いることができる。そのような断片としては、完全長のストレプトアビジンポリペプチドの末端切断型のものである「コア・ストレプトアビジン」(CSA)が含まれ、そのCSAにはストレプトアビジンの残基13-138、14-138、13-139、または14-139のものが含まれる。例えば、Parlerら, 1987, J. Biol. Chem., 262:13933-37を参照せよ。その他のストレプトアビジンおよびアビジンの末端切断型のものでビオチンに対する強い結合性を保持しているものも用いることができる。例えば、Sanoら, 1995, J. Biol. Chem. 270(47):28204-09を参照せよ(コア・ストレプトアビジンの変異体16-133と14-138について述べている)(米国特許第6,022,951号)。ビオチンとの結合活性を実質的に保持しているかまたはビオチンとの結合活性が増大しているストレプトアビジンの変異体およびストレプトアビジンのコア型のものも用いることができる。例えば、Chilcotiら, 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92(5):1754-58;Reznikら, 1996, Nat. Biotechnol., 14(8):1007-11を参照せよ。例えば、免疫原性を低減させた変異体、例えばT細胞エピトープまたはリンパ球エピトープと思われるものを除去するために部位特異的突然変異誘発によって変異させた変異体などを用いることができる。Meyerら, 2001, Protein Sci., 10:491-503を参照せよ。同様に、ビオチンとの結合活性を実質的に保持しているかまたはビオチンとの結合活性が増大しているアビジンおよびアビジンのコア型ものも用いることができる。Hillerら, 1991, J. Biochem. 278:573-85;Livnahら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5076-80(1993)を参照せよ。便宜上、本明細書中では「アビジン」および「ストレプトアビジン」という用語は、それらの結合ペアメンバーのビオチン結合性の断片、変異体、およびコア型のものを包含するものとする。アビジンおよびストレプトアビジンは市販されている。さらに、ストレプトアビジンとアビジンをコードする核酸配列、およびストレプトアビジンとアビジンのアミノ酸配列は、例えば、GenBank寄託No.X65082、X03591、NM_205320、X05343、Z21611、およびZ21554で見ることができる。
【0075】
本明細書で用いている「ビオチン」には、細胞表面(腫瘍細胞の表面を含む)に結合することのできる、ビオチン含有部分が含まれ、そのようなものとしては例えば、NHS-ビオチンおよびEZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-Biotin(Pierce)などが挙げられる。ビオチンのこのようなタンパク質反応性の形態のものが市販されている。
【0076】
ビオチンとその結合パートナーであるアビジンまたはストレプトアビジンとの間の相互作用は、本発明ではいくつかの利点がある。例えば、ビオチンはストレプトアビジン(1013M-1)およびアビジン(1015M-1)の双方に対して非常に強いアフィニティーを有している。この実施形態は、ストレプトアビジンまたはアビジンを含んでいるコンジュゲートをさらにビオチンを含んでいるコンジュゲートと複合体化できるので有利である。さらに、ストレプトアビジンおよびアビジンの双方とも4量体ポリペプチドであり、各々がビオチン4分子と結合する。従って、ストレプトアビジンまたはアビジンを含んでいるコンジュゲートは4量体またはそれより高次の構造を形成する傾向があり、複数のビオチン含有部分と複合体を形成することができる。
【0077】
当業者であれば、免疫共刺激性分子の2量体、3量体、4量体、およびより高次な多量体を含んでいるコンジュゲートなどの、より高次の構造を持つ免疫共刺激性分子を提供するために、他のメカニズム(例えば、他の連結部分または化学的もしくは遺伝子の架橋を用いる他のコンジュゲーション方法など)を用いることができ、それもまた有利な性質を示すものとなることは理解されよう。そのようなコンジュゲートは本発明の範囲内に含まれる。
【0078】
コンジュゲート
上述のとおり、本発明の1態様は、少なくとも1つの共刺激性部分と結合ペアのメンバーを含んでいるコンジュゲートに関する。そのようなコンジュゲートは当業界ではよく知られた方法で作製することができる。例えば、その共刺激性部分と結合ペアメンバーは共有結合でお互いに結合させることができ、または直接的にもしくはリンカーを介してコンジュゲート化することができる。
【0079】
本発明の1実施形態においては、該コンジュゲートは共刺激性ポリペプチドおよび結合ペアメンバー、例えばCSAなどを含んだ融合タンパク質である。融合タンパク質は当業界で既知の様々な多数の方法のいずれかによって作製することができる。例えば、その融合タンパク質の1つ以上の成分ポリペプチドは化学的に合成することができ、またはよく知られた組換え核酸技法を用いて作ることができる(本明細書では「核酸」とはRNAまたはDNAを意味する)。本発明で有用な核酸配列は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いて得ることができる。種々のPCR法が、例えば、「PCRプライマー:実験室マニュアル」"PCR Primer:A Laboratory Manual", Dieffenbach 7 Dveksler編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995中に記載されている。
【0080】
1実施形態においては、共刺激性ポリペプチドはそのC末端から結合ペアメンバーのN末端を介して結合する。例えば、本発明は、CD80-CSA融合タンパク質、TGF-β-CSA融合タンパク質、IL-2-CSA融合タンパク質、およびIL-4-CSA融合タンパク質が含まれ、それらではCD80、TGF-β、IL-2、またはIL-4部分がそのC末端からCSAのN末端を介して結合している。別の1実施形態においては、共刺激性ポリペプチドはそのN末端から結合ペアメンバーのC末端を介して結合する。例えば、本発明は、CSA-4-1BBL融合タンパク質を含み、その融合タンパク質では、CSA部分はそのC末端からその共刺激性部分のN末端を介して結合している。共刺激性ポリペプチドは結合ペアメンバーと直接的にまたは1つ以上の連結部分、例えば1つ以上の連結ポリペプチドなどを介して結合することができる。
【0081】
共刺激性ポリペプチドの断片および/もしくは結合ペアメンバーの断片を含んでいる核酸及びポリペプチドは、その断片のもととなっている完全長のポリペプチドの活性を保持しているものである限りは、本発明に有用である。従って、そのような共刺激性断片は共刺激活性を保持し(例えば、受容体またはリガンドと結合する活性を保持し)、結合メンバーの断片はそれの結合パートナーとの結合能を保持しているはずである。そのような断片は、当業界では日常的に行われている方法、例えば下記の実施例中に例示しているような方法を含むが、そのような方法によって、保持している活性でスクリーニングすることができる。共刺激性ポリペプチドの典型的な断片については上述している。
【0082】
コンジュゲートにはペプチドリンカーなどのリンカーを、結合ペアメンバーと共刺激性部分との間に含めることができる。リンカーの長さと組成はその共刺激性部分の機能のどちらの活性をも増強するものを選択することができる。リンカーは通常はアミノ酸約3個から15個の長さであり、より好ましくはアミノ酸約5個から10個の長さであるが、より長いまたはより短いリンカーを用いることもでき、また、リンカーを全くなくすこともできる。単鎖抗体の重鎖と軽鎖をつなぐために用いられているものなどのフレキシブルなリンカー(例えば、(Gly4Ser)3)を用いることができる。例えば、Hustonら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883;米国特許第5,091,513号、第5,132,405号、第4,956,778号、第5,258,498号、および第5,482,858号を参照せよ。その他のリンカーとしては、FENDAQAPKSまたはLQNDAQAPKSが挙げられる。免疫グロブリンのFc領域の1つ以上のドメイン(例えば、CH1、CH2、および/もしくはCH3)もリンカーとして用いることができる。
【0083】
修飾された、変化させた、または変異させた核酸及びポリペプチドも、それらが関連する核酸またはポリペプチドの活性を保持しているものである限りは、本発明に有用である。例えば、本発明での使用に適した核酸及びポリペプチド配列は、関連する核酸またはポリペプチドに対して、すなわち、既知の免疫共刺激性ポリペプチドまたは結合ペアメンバーをコードする核酸に対して、少なくとも約80%の配列の同一性(少なくとも80%の配列の同一性を含む)を有するものとすることができる。いくつかの実施形態においては、該核酸配列またはポリペプチドは、関連する核酸またはポリペプチドと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列の同一性を有する。
【0084】
本発明は、塩基を「サイレント」に変化させて同じアミノ酸をコードするようにした(すなわち、縮重核酸配列)核酸を包含する。本発明はまた、保存的なアミノ酸の置換が行われたポリペプチドをコードする核酸、およびそのポリペプチドをも包含する。保存的なアミノ酸置換(例えば、1つの疎水性残基を別の疎水性残基と置換する、など)は、当業界ではよく知られており、例えば、点突然変異や類似の方法で行うことができる。ある修飾された配列、変異体が適切であるか否かは、断片に関して上記で述べた方法などのような、当業界では既知の、受容体結合および/または生物学的スクリーニング法を用いて確認することができる。
【0085】
本明細書で用いている「配列同一性%」は、整列させた核酸配列またはポリペプチド配列中でのマッチした位置の数を求め、マッチした位置の数を整列させたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数で割り、100をかけることによって計算される。マッチした位置とは、整列させた配列内の同じ位置で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸となっている位置のことを意味する。整列させたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数とは、第2の配列を整列させるために必要なヌクレオチドまたはアミノ酸の最少の数を意味し、非相同配列とのアラインメント(例えば、強制的なアラインメント)、例えば、対象とする配列(すなわち、免疫共刺激性ポリペプチドまたは結合ペアメンバーをコードする配列)のN末端またはC末端で融合させた配列などは含まない。整列させたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数は、コード配列全体に対応したものであってもよく、またはここで定義した完全長の配列の断片に対応するものであってもよい。
【0086】
配列はBLAST(basic local alignment search tool)プログラム中に組み込まれている、Altschulら(1997, Nucleic Acids res., 25:3389-3402)によって報告されたアルゴリズムを用いて整列させることができ、それはインターネットでncbi.nlm.nih.govで入手することができる。BLASTでのサーチまたはアラインメントはある核酸分子(「問合せ(query)配列」)と何らかの配列またはその部分との間の配列の同一性のパーセンテージをAltschulアルゴリズムを用いて求めるために行うことができる。BLASTNは核酸配列を整列させその同一性を比較するために用いることができ、BLASTPはアミノ酸配列を整列させその同一性を比較するために用いることができる。ある治療用ポリペプチドをコードする配列および別の1配列の間の同一性のパーセンテージを計算するためにBLASTプログラムを用いる場合には、ギャップペナルティーのデフォルトを含むそれぞれのプログラムのデフォルトパラメーターを用いることができる。
【0087】
本発明の核酸は、サザンプロット分析またはノーザンブロット分析(すなわちハイブリダイゼーション)、PCR、またはin situハイブリダイゼーション分析などの方法によって検出することができる。ポリペプチドは典型的には、トランスフェクトされた細胞系統での免疫細胞化学的方法、またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後にクーマシーブルー染色を行うか、またはその特定のポリペプチドに対して特異的結合アフィニティーを有する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)を用いてウエスタンブロット分析を行うことによって検出することができる。これらの方法の多くは、Sambrookらの文献(1989, 「分子クローニング、実験室マニュアル」"Molecular Cloning, A Laboratory Manual", 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)に詳細に述べられている。
【0088】
共刺激性ポリペプチドおよび結合ペアメンバーをコードする核酸配列は、従来の分子生物学の技法を用いて、1つの構築物中にお互いに機能しうる形で連結させることができる。例えば、「分子クローニング、実験室マニュアル」"Molecular Cloning, A Laboratory Manual"(Sambrookら, 2001, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press)、または「分子生物学の短いプロトコール」"Short Protocols in Molecular Biology"(Ausbelら, 2002, 第5版, Current Protocols)を参照せよ。これらの方法での使用に適した構築物は市販されており、当業界では日常的に用いられている。構築物には、核酸配列の発現をモジュレートさせるプロモーター配列、エンハンサー配列などの調節エレメント、および応答エレメント、および/または誘導エレメントなどの発現に必要なエレメントを含めることができる。本明細書で「機能しうる形で連結された」とは、(i)プロモーターおよび/もしくはその他の調節エレメントを、核酸配列に対して、その核酸配列の発現を指令または調節するように配置すること、および/または(ii)該共刺激性ポリペプチドをコードする核酸、および該結合ペアメンバーをコードする核酸を、それらのコード配列が「インフレーム」となり、すなわち該構築物が共刺激性ポリペプチドおよび結合ペアメンバーを含んでいる融合タンパク質をコードすることとなるように配置することを意味する。
【0089】
構築物は当業界では既知の方法によって増加または発現させて、宿主細胞中でポリペプチドを生成させることができる。本明細書で用いている「宿主」または「宿主細胞」という用語は、大腸菌(E.coli)などの原核生物のみならず、酵母、昆虫、植物、および動物細胞などの真核生物の細胞をも含んでいる。動物細胞としては、例えば、COS細胞およびHeLa細胞が含まれる。宿主細胞は当業者には広く知られている技法のいずれか、例えばリン酸カルシウムもしくは酢酸リチウム沈殿、エレクトロポレーション(電気穿孔法)、リポフェクション、および遺伝子銃(particle bombardment)などを用いて、DNA分子(例えば、ある構築物)で形質転換またはトランスフェクトさせることができる。本発明のベクターを含んでいる宿主細胞は、例えば、ベクターの増殖、核酸(DNAまたはRNA)の産生、免疫共刺激性ポリペプチドもしくはそれの断片の発現、または上述のとおり、融合タンパク質の発現などの目的に用いることができる。
【0090】
図1Aと1B、2Aと2B、3Aと3B、4、5Aと5B、6Aと6B、および7Aと7Bはコア・ストレプトアビジンと共刺激性ポリペプチドを含んでいるコンジュゲートをコードする核酸配列(配列番号1、3、5、8、10、および12)、ならびにそれらによってコードされる対応するアミノ酸配列(配列番号2、4、6、7、9、11、および13)を示している。
【0091】
本発明はまた、共刺激性部分と、結合ペアメンバーとしてビオチンを含んでいるコンジュゲートをも提供する。共刺激性部分は当業界では既知の方法でビオチニル化することができ、それについては下記の実施例中で例示している。
【0092】
たとえば、Avidity, Inc.(Denver, CO)のBiotin AviTag技法を、ビオチニル化タンパク質の作製に用いることができる。Biotin AviTagは、ビオチンリガーゼであるBirAによって認識されるユニークな15個のアミノ酸のペプチドを含んでおり、それはビオチンをそのペプチド配列中のリジン残基に付着させる(Schatz, 1993, Biotechnology, 11:1138-43)。このBiotin AviTagを対象とするどのようなタンパク質とも遺伝子的に融合させることができ、それによってそのタンパク質をビオチン分子でタグすることができる。
【0093】
Biotin AviTag技法の1つの欠点となりうることは、ビオチニル化の程度が低い可能性があることであり、それはこのシステムがタグされる領域中の単一の、ユニークなリジンでビオチニル化するためである。そのような問題点を克服するために、生成したビオチンリガーゼを用いて精製されたタグを付されたタンパク質をin vitroで修飾することができる。ビオチニル化は酵素的に行われるので、反応条件はより穏和であり、標識は高度に特異的であり、その反応は、ビオチン誘導体を用いてタンパク質を化学的に修飾するよりも効率的である。あるいはまた、Jordanら(上述の文献)が報告している方法を遺伝子工学でビオチニル化したタンパク質を産生させるために用いることができる。
【0094】
コンジュゲートの組み合わせ
1実施形態においては、本発明はTreg細胞を増殖させる方法で有用なコンジュゲートの組み合わせを提供する。特定の1実施形態においては、その組み合わせは、(a)(i)シグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する部分、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる少なくとも1つのコンジュゲート、ならびに(b)(i)シグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する部分、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる少なくとも1つのコンジュゲート、を含んでなる。1実施形態においては、その組み合わせは、シグナル1、2、または3のうちの少なくとも1つを刺激する部分を含んでいる。特別な1実施形態においては、その部分はシグナル3を刺激する。例えば、その部分はIL-2またはIL-4を含むものとすることができる。別の1実施形態においては、その組み合わせはシグナル1、2、および3のうちの少なくとも2つを刺激する部分を含んでいる。特別な1実施形態においては、その部分はシグナル2および3を刺激する。別の特別な1実施形態においては、その部分はシグナル1および3を刺激する。また別の1実施形態においては、その組み合わせはシグナル1、2、および3の各々を刺激する部分を含む。
【0095】
1実施形態においては、該組み合わせは、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲートを含んでいる。
【0096】
上述のとおり、1個以上のいずれかのコンジュゲートを、第1のコンジュゲートメンバー(例えば、共刺激性部分)および第2のコンジュゲートメンバー(例えば、結合ペアメンバー)を含んでいる融合ポリペプチドを含んだものとすることができる。1実施形態においては、該結合ペアの第1のメンバーはアビジンまたはストレプトアビジン(コア・ストレプトアビジンを含む)であり、該結合ペアの第2のメンバーはビオチンである。
【0097】
コンジュゲートは別々の組成物中に入っている形で提供することができ、または単一の組成物中に入ったものとすることができる。各組成物はさらに、当業界では既知の、製薬上許容される担体、添加剤、または希釈剤を含むことができる。製薬上許容される担体は、投与を考慮する際に、それが不活性であるかまたは医学上許容されるものであり、活性成分と共存しうるものであるので、その組成物のためのビヒクルとして用いることのできる物質である。製薬上許容される担体は、従来の製薬に用いられる添加剤、例えば希釈剤や保存剤などを含んだものとすることができる。
【0098】
該組み合わせが単一の組成物で提供される場合には、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと、第1および第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して、結合することができる。
【0099】
代表的な組み合わせとしては、次のものの1つ以上が挙げられる:
4-1BBLとコア・ストレプトアビジンを含んでいるコンジュゲートまたは融合タンパク質;
CD80とコア・ストレプトアビジンを含んでいるコンジュゲートまたは融合タンパク質;
TGF-βおよびコア・ストレプトアビジンを含んでいるコンジュゲートまたは融合タンパク質;
抗原(または抗原/MHC複合体)およびビオチンを含んでいるコンジュゲート;
IL-2およびビオチンを含んでいるコンジュゲート;
IL-4およびビオチンを含んでいるコンジュゲート;
抗CD3抗体およびビオチンを含んでいるコンジュゲート;および
抗CD28抗体およびビオチンを含んでいるコンジュゲート。
【0100】
方法
本発明は、Treg細胞を増殖する方法をも提供する。1実施形態においては、その方法はTreg細胞を、(a)(i)シグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する部分、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる少なくとも1つのコンジュゲート、ならびに(b)(i)シグナル1、シグナル2、またはシグナル3のうちの少なくとも1種を刺激する部分、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる少なくとも1つのコンジュゲートと接触させることを含んでいる。1実施形態においては、該方法はTreg細胞を、シグナル1、2、または3のうちの少なくとも1つを刺激する部分と接触させることを含んでいる。特別な1実施形態においては、その部分はシグナル3を刺激する。例えば、その部分はIL-2またはIL-4を含んだものとすることができる。別の1実施形態においては、該方法はTreg細胞をシグナル1、2、および3のうちの少なくとも2つを刺激する部分と接触させることを含んでいる。特別な1実施形態においては、その部分はシグナル2および3を刺激する。別の1実施形態においては、その部分はシグナル1および3を刺激する。また別の1実施形態においては、該方法はTreg細胞をシグナル1、2、および3の各々を刺激する部分と接触させることを含んでいる。
【0101】
特定の1実施形態においては、該方法はTreg細胞の集団を次のものと接触させることを含んでいる:
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート。
【0102】
上述のとおり、Treg細胞は、4-1BBL、CD80、およびTGF-βに対する受容体を発現していることが見出されている。従って、1実施形態においては、Treg細胞は第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つについての受容体を含んでおり、それによって、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、第1のコンジュゲートメンバーと受容体との間の結合を介して、Treg細胞と結合する。この実施形態においては、該コンジュゲートはそれらの受容体と結合して、Treg細胞の活性化と増殖のために受容体と架橋する。この実施形態のさらに別の1態様においては、第4、第5、第6、および第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して、第1または第2のコンジュゲートのうちの少なくとも1つを経由してTreg細胞と結合する。
【0103】
Treg細胞の集団は、CD4+細胞、CD25+細胞、およびFoxP3+細胞を含んだものとすることができる。特別な1実施形態においては、そのTreg細胞の集団はCD4+CD25+FoxP3+細胞を含んでいる。
【0104】
1実施形態においては、該方法はex vivoで、Treg細胞をex vivoでコンジュゲートと接触させることによって行われる。この実施形態の1態様においては、少なくとも2つのコンジュゲートがTreg細胞と実質的に同時に接触する。例えば、少なくとも2つのコンジュゲートは、Treg細胞の集団と接触する単一の組成物中に入った形で提供することができる。特別な1実施形態においては、第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して、第4、第5、第6、および第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと結合する。
【0105】
本発明の方法のまた別のex vivoの1実施形態においては、少なくとも2つのコンジュゲートがTreg細胞と順次接触する。例えば、少なくとも2つのコンジュゲートは、Treg細胞の集団と順次接触する別々の組成物中に入った形で提供することができる。この後者の実施形態においては、第1、第2、および/もしくは第3のコンジュゲートをまず接触させ、4-1BBL、および/もしくはCD80、および/もしくはTGF-βと、Treg細胞上のその受容体との間の結合を介して、Treg細胞を結合させることができる。次いで、第4、第5、第6、および/もしくは第7のコンジュゲートを接触させ、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介してTreg細胞を結合させることができる。
【0106】
例えば、Treg細胞のex vivoでの増殖は、患者からTreg細胞を得て、標準的な技法、例えばCD25およびCD4に対する抗体を用いてその細胞を精製することによって得ることができる。その後、精製したTreg細胞を共刺激性部分(CSA-4-1BBLなど)を含んでいるコンジュゲート、抗CD3抗体を含んでいるコンジュゲート(ビオチニル化抗CD3抗体など)、およびIL-2(ビオチニル化IL-2を含む)の存在下で培養する。3日間刺激した後、その培養液にIL-2(さらに4-1BBLを添加または添加せずに)を添加して7日間置く。1実施形態においては、TGF-βを含んでいるコンジュゲート(例えばCSA-TGF-βまたはビオチニル化TGF-β)も開始時から2-3週間、または培養プロセスを通じて、用いることができる。このサイクルは、細胞が培養液中に維持されている限りは反復することができる。
【0107】
別の1実施形態においては、Treg細胞を増殖させる方法はin vivoで、該コンジュゲートを患者に投与することによって行われる。この実施形態においては、コンジュゲートは順次、または実質的に同時に投与することができる。例えば、コンジュゲートは順次投与されるかまたは実質的に同時に投与される別々の組成物中に入った形で投与することができ、またはコンジュゲートは単一の組成物中に入った形で投与することができる。
【0108】
該組成物が順次投与される実施形態においては、第1、第2、および/もしくは第3のコンジュゲートがまず投与され、4-1BBL、および/もしくはCD80、および/もしくはTGF-βと、Treg細胞上のその受容体との間の結合を介して、Treg細胞への局在化が行われる。次いで、第4、第5、第6、および/もしくは第7のコンジュゲートが投与されて、それらを、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して、Treg細胞に集中させることができる。
【0109】
該組成物が単一の組成物中に入った形で同時に投与される実施形態においては、第1、第2、および/もしくは第3のコンジュゲートは、第1と第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して第4、第5、第6、および/もしくは第7のコンジュゲートと結合させることができる。この実施形態においては、該コンジュゲートは、そのコンジュゲートの4-1BBLおよび/もしくはCD80および/もしくはTGF-β成分とTreg細胞上のそれらの受容体との間の結合を介してTreg細胞上に局在化させることができる。
【0110】
該コンジュゲートは全身的にまたは局所的に投与することができ、例えば、静脈内、腹腔内、または皮下注射などで投与することができる。1実施形態においては、1つ以上のコンジュゲートが異なる投与経路で投与される。例えば、1つ以上のコンジュゲートを局所的に投与し、1つ以上を全身的に投与することができる。
【0111】
本発明はまた、遊離の共刺激性部分、すなわち上述のコンジュゲートの構成成分ではないものをコンジュゲートと共に用いることをも含んでいる。従って、例えば、Treg細胞を上述のとおり、1つ以上のコンジュゲートと接触させ、また、1つ以上の遊離の共刺激性部分、例えば外因性のIL-2、IL-4、または抗CD3抗体などとも接触させる。Treg細胞は1つ以上の遊離の共刺激性部分と、1つ以上のコンジュゲートのTreg細胞との接触と同時に、それに先だって、またはその後に、接触させることができる。この接触は上述のとおりex vivoで、またはin vivoで行うことができる。
【0112】
この実施形態においては、用いられる外因性のIL-2の量は、従来技術で必要とされた大きな量よりもはるかに少ない。例えば、従来技術の方法では2000 IU/mLが用いられたが、我々のものでは、はるかに少ない量、それには25 IU/mLのIL−2が含まれるが、そのような量で作用した。従って、本発明はIL-2を約25 IU/mL未満から少なくとも約1000 IU/mL以上に至るまでの範囲の量で用いる方法を含んでいる。例えば、本発明はIL-2を約25 IU/mL未満、約25 IU/mL、約50 IU/mL、約75 IU/mL、約100 IU/mL、約150 IU/mL、約200 IU/mL、約250 IU/mL、約300 IU/mL、約350 IU/mL、約400 IU/mL、約450 IU/mL、約500 IU/mL、約600 IU/mL、約700 IU/mL、約800 IU/mL、約900 IU/mL、約1000 IU/mL、またはそれ以上用いる方法を含んでいる。
【0113】
下記の実施例で論じるデータは、シグナル3の刺激がTreg細胞の増殖に重要であることを示唆している。本発明では、IL-2、IL-4、または別のサイトカインなどのシグナル3を刺激する部分を含んでいるコンジュゲートを用いて、シグナル3を刺激することができる。あるいはまた、外因性のIL-2またはIL-4などの、シグナル3を刺激する遊離の共刺激性部分を用いてシグナル3を刺激することができる。また別の代替法としては、シグナル3は何らかの別の手段、例えば当業界で既知の他の手段などによって刺激することができる。
【0114】
本発明はまた、上述の方法でex vivoで増殖させたTreg細胞を患者に投与する方法をも提供する。この実施形態においては、そのようなTreg細胞は、静脈内投与などの上述のどのような投与経路によっても投与することができる。
【0115】
適切な患者としては、Treg細胞の増殖を必要とするヒトまたはその他の動物が含まれる。例えば、自己免疫疾患、例えばI型糖尿病などに罹患している、またはその危険性のある患者、または外来性の移植片の移植を受けた患者(すなわち、同種移植患者および異種移植患者)は本発明のTreg細胞増殖の標的となる患者であり、骨髄移植を受けた腫瘍を有する患者(GVHD予防のため)や外来性の造血幹細胞もしくはその他の幹細胞の移植を受けた患者(例えば、造血性の遺伝的欠損または自己免疫疾患を治療するために混合キメラ(mixed chimerism)が生ずるように治療を受けた患者など)。本発明はまた、病原性のTeff細胞の増殖によって生ずる、またはその増殖に伴う何らかの疾患に罹患している、またはその危険性のある患者を治療するためにも有用である。
【0116】
1実施形態においては、該方法はさらに、ラパマイシンを患者に投与することを含んでいる。ラパマイシンは強力な免疫抑制活性を有し、実験的にも臨床的にも、移植片拒絶反応を予防するために広く用いられてきた。ラパマイシンはT細胞の活性化を妨害しないが、IL-2がメディエートするシグナル伝達の防止、および細胞サイクルのG1-S境界での分裂停止に作用し、それによってT細胞のアネルギーおよび/もしくはアポトーシスをもたらし、操作しうる免疫寛容を誘発する。ラパマイシンはmTORを阻害することによって作用するが、これは蛋白合成の開始および生存シグナルの伝達に関与するセリン/トレオニンキナーゼである。
【0117】
本発明の実施において重要なのは、ラパマイシンのTreg細胞とTeff細胞に及ぼす作用が、それらの細胞の発生、維持、および機能に関して異なることである。シクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニュリン阻害剤とは異なり、ラパマイシンはTreg細胞内のFoxP3の活性化および高レベルの発現を妨害しない。例えば、Baanら, 2005, Transplantation, 80:110-17を参照せよ。ラパマイシンはin vivoでCD4+CD8+の胸腺細胞のアポトーシスを誘発し、その結果、末梢の制御性CD4+CD25+T細胞の増殖をもたらすことが示されている(Tianら, 2004, Transplantation, 77:183-89)。ex vivoでの培養では、ラパマイシンはヒトTreg細胞の機能を妨害せず、Teff細胞の増殖およびサイトカイン分泌を阻害することが示され、Teff細胞とは異なりTreg細胞はラパマイシンが誘発するアポトーシスに抵抗性である(Gameら, 2005, Am. J. Transplant, 5:454-64)。これらの研究と同様に、ラパマイシンの存在下ではTeff細胞は、抗原によるin vitroでの活性化後に活性化によって誘発される細胞死(AICD)を起こすが、Treg細胞では優先的に増殖され、移植のレシピエントの体内に養子免疫細胞移植を行うと、同種移植された膵島の拒絶反応をブロックしうる(Battagliaら, 2005, Blood 105:4743-48)。ラパマイシンはまた、DCのより寛容誘導性の表現型に対する免疫刺激機能を変えることも示されており、それが今度はTreg細胞の分化と増殖のためのポジティブフィードバックのループとして働くことができる(Chiangら, 2004, J. Immunol. 172:1355-63)。これらの報告は、カルシニュリン阻害剤とは異なりラパマイシンは免疫寛容の誘導を妨害しない、との広く信じられていることと一致している。従って、ラパマイシンは、Treg細胞の増殖を所望している、本発明の方法での使用に適している。
【0118】
別の1実施形態においては、該方法はさらに、TGF-βをディスプレイしている外来細胞(例えば同種または異種の細胞)を含んでいる組成物を投与することを含んでなる。例えば、脾臓細胞、抗原でパルスした樹状細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、固形臓器、および膵島細胞などの外来細胞をTGF-βをディスプレイするように修飾することができる。この実施形態の特定の1態様においては、ラパマイシンもその患者に投与される。
【0119】
1実施形態においては、修飾された外来性の細胞は、(a)外来細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび外来細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾された外来細胞を形成させ、(b)その修飾された外来細胞を、TGF-βおよび結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている外来細胞を形成させる、ことを含んだ方法によって得られる。そのTGF-βは、上述のとおり、完全長のTGF-β、またはそれの活性を有する何らかの断片とすることができる。この二機能性分子は、その二機能性分子の細胞表面結合部分を介して細胞表面に結合した後に、該結合ペアの第1のメンバーが、該結合ペアの第2のメンバーに対するアフィニティーを実質的に保持しているようにデザインされる。該二機能性分子がビオチンを含んでいる場合には、その分子を下記に例示する方法、またはその他の方法、例えばWO 02/02751に記載の方法などによって細胞表面に局在化させることができる。特別な1実施形態においては、その二機能性分子は、in vivoで細胞の表面上のタンパク質と結合することのできるビオチンの形態であり、例えばNHS-ビオチンなどであるが、それにはSulfo-NHS-LC-ビオチンが含まれる。その二機能性分子がビオチンを含んでいる実施形態においては、該結合ペアの第2のメンバーはアビジンまたはストレプトアビジン(またはコア・ストレプトアビジンを含む、上述のそれらの変化体)を含んでいる。
【0120】
本発明はまた、ex vivoでTGF-βをディスプレイするように修飾された、抗原をパルスしたDCを用いてTreg細胞を増殖する方法をも提供する。本発明のこの態様においては、DCは1種以上の抗原、例えば1種以上の自己抗原などでパルスされ、次いで上述のとおりex vivoでTGF-βをディスプレイするように修飾される。1実施形態においては、そのDCは1種以上の糖尿病性自己抗原、例えばGAD、膵島細胞自己抗原(ICA)、または自己抗原NRP-A7などでパルスされる。特定の1実施形態においては、DCはGAD 65、ICA 512、およびNRP-A7の各々でパルスされる。あるいはまた、未熟なDCを膵島の溶解物を用いてパルスすることもできる。別の1実施形態においては、DCはコラーゲンでパルスされる(例えば、関節炎の治療のために)。別の1実施形態においては、DCはミエリン塩基性タンパク質でパルスされる(例えば、多発性硬化症の治療のために)。
【0121】
TGF-βをディスプレイしている、パルスされたDCを得る方法の1実施形態は、(a)未熟な樹状細胞を抗原でパルスして、パルスされた樹状細胞を得て、(b)そのパルスされた樹状細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよびその樹状細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾されたパルス樹状細胞を形成させ、(c)該修飾されたパルス樹状細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を形成させることを含んでいる。そのTGF-βは上述のとおり、完全長のTGF-β、またはそれの活性を有する何らかの断片とすることができる。特別な1実施形態においては、該二機能性分子はSulfo-NHS-LC-ビオチンを含んでいる。該二機能性分子がビオチンを含んでいる実施形態においては、該結合ペアの第2のメンバーは、アビジンまたはストレプトアビジン(またはコア・ストレプトアビジンを含む、上述のそれらの変化体)を含んでいる。
【0122】
1実施形態においては、該パルスされたDCは当業界では既知の方法によって成熟したものへ駆動される。例えば、パルスされたDCを4-1BBLとインキュベートすることによって成熟したものへと駆動することができる。
【0123】
本発明のこの態様においては、パルスされ、TGF-βをディスプレイしているDCはTreg細胞の増殖を必要としている患者、例えば、上述した標的となる患者に投与することができる。そのDCは上述したどのような投与経路によっても、例えば静脈内投与によっても投与することができる。DCの最適投与量は下記に述べるように、実験的に定めることができる。以前のパルスされたDCをNODマウスに用いた研究では、5 x 105個の細胞/動物、および2 x 105個の細胞/動物がTreg細胞の増殖を誘発させることに有効であった。
【0124】
本発明はまた、パルスされ、TGF-βをディスプレイしているDCを、上述の共刺激性コンジュゲートの1つ以上、および/もしくはラパマイシンとともに投与する方法をも包含している。従って、例えば、患者にはパルスされ、TGF-βをディスプレイしているDCを、4-1BBL、CD80、および/もしくはIL-2、または上述のその他の共刺激性部分を含んでいるコンジュゲートとともに投与することができる。さらに、またはその替わりに、患者には、ラパマイシンを投与することができる。これらの実施形態においては、1つ以上のコンジュゲートおよび/もしくはラパマイシンはDCと実質的に同時に投与することができ、またはDCの投与の前に、もしくはその後に投与することができる。
【0125】
本発明の1実施形態においては、非特異的Treg細胞の増殖が、4-1BBLおよび/もしくはCD80、IL-2、および任意でTGF-βを含んでいるコンジュゲートを用いて行われる。別の1実施形態においては、抗原特異的Treg細胞の増殖は、4-1BBLおよび/もしくはCD80およびIL-2を含んでいるコンジュゲートを外来の膵島もしくは臓器もしくは関連の抗原でパルスした樹状細胞と共に用い、ラパマイシンを一時的に使用してTGF-βを装飾させて行われる。
【0126】
本発明はまた、造血幹細胞または骨髄細胞(BMC)、それには外来の(例えば同種または異種の)BMCを含むが、それらにTGF-βを装飾させたものを用いてTreg細胞を増殖する方法をも提供するが、これは上述のパルスされたDCで行った方法とほぼ同じである。この方法は、例えば、自己抗原、同種抗原、および異種抗原に対する免疫寛容の誘導のため、および自己免疫状態および造血系の遺伝的欠損の治療のための混合キメラを確立するためには有用である。この方法は単独で、または上述の共刺激性コンジュゲートと共に、および/もしくは上述のとおり、ラパマイシンと共に用いることができる。造血幹細胞またはBMCの使用はTreg細胞を増殖させるのみならず、自己免疫を制御し、膵臓のβ細胞の再生を可能として糖尿病の予防および/もしくは治療を行える、混合キメラを確立させる。TGF-βを装飾させた造血幹細胞または外来性BMCを、コンジュゲートと共に用いると、Treg細胞を増殖させ、それによって今度は幹細胞またはBMCの拒絶反応の予防と、自己への反応性と同種のものへの反応性の双方を制御する混合キメラの確立をもたらすこととなる。
【0127】
本発明のこの実施形態においては、造血幹細胞またはBMCはビオチニル化され、上述のとおり、TGF-β-CSAで装飾され、ラパマイシンの併用のもとで静脈内に注射される。この治療は、免疫寛容誘導作用を増大させるために、上述のとおり作製された1つ以上の共刺激性コンジュゲート、それにはCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートが含まれるが、そのようなコンジュゲートの投与と共に行うことができる。装飾されていないかまたはTGF-βを装飾された造血幹細胞またはBMCとラパマイシンを用いた治療はTreg細胞を増殖させ、糖尿病の予防をもたらす。
【0128】
上述のとおり、TGF-βおよびラパマイシンは相乗的に作用して自己抗原特異的Teff細胞の活性化と増殖をブロックし、一方Treg細胞の活性化と増殖、またはCD4+CD25-T細胞からのTreg細胞への変換を促進する。1つ以上の共刺激性コンジュゲートを最適な形で使用すればこの効果はさらに増大させることができる。
【0129】
下記の実施例は本発明をより詳細に説明したものであって、本発明の範囲をどのような点からも限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0130】
一般的な方法論
動物
非肥満型糖尿病マウス(NOD)はJackson Laboratories(Bar Harbor, Maine)から購入し、NIH及びガイドラインに従って維持する。BALB/cおよびC57BL/6マウスはJackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入し、SPF条件下でUniversity of Louisvilleにて維持し、実験施設のガイドラインおよびNIHのガイドラインに従って飼育する。
【0131】
昆虫のDES発現系を用いたIL-2および4-1BBL、CD80、ならびにTGF-βキメラタンパク質の発現と精製
Drosophila DES Expression System(Invitrogen; Calsbad, CA)を用いて、Singhら, 2003, Cancer Res. 63:4067-73に記載されているとおり、これらの分子を発現している安定なトランスフェクタントを確立することができる。トランスフェクタントは、1 mMの硫酸銅を添加したDrosophila無血清培地(Gibco; Carlsbad, CA)中でインキュベーターシェーカー中で25℃105 rpmにセットして72時間かけて組換えタンパク質発現を誘導させる。遠心して培養上清を採取し、タンパク質内に加工した6x-His-tagを利用して、コバルト(II)-カルボキシメチルアスパラギン酸架橋アガロース固定化金属アフィニティー樹脂(BD-Talon, BD Biosciences)またはNi-NTA金属アフィニティー樹脂(Qiagen)を用いて大規模精製にかける。簡潔に記せば、組換えタンパク質を含んでいる培地に95%エタノールを終濃度が10%エタノールとなるように滴下することによって沈殿させる。4℃で一晩インキュベートした後、その沈殿したタンパク質を、開始時の液量の1/10の結合バッファー(50 mM リン酸ナトリウム pH 7.0;500 mM 塩化ナトリウム;0.5% Tween-20;1% グリセロール;5 mM 2-メルカプトエタノール)中に再溶解する。金属アフィニティー樹脂をゲルベッド容積の5倍量の結合バッファーを用いて平衡化し、再溶解させたタンパク質溶液中に添加し、前方に回転する方式の回転を室温で45分間かける。タンパク質が結合した金属アフィニティー樹脂を50〜100 mLの洗浄バッファー(50 mM リン酸ナトリウム pH 7.0;500 mM 塩化ナトリウム)で2回洗う。結合したタンパク質をゲルベッド容積の2倍量の溶出バッファー(50 mM リン酸ナトリウム pH 7.0;500 mM 塩化ナトリウム;150 mM イミダゾール)で金属アフィニティー樹脂から溶出する。
【0132】
精製されたタンパク質溶出液をプールし、30 kD分子量カットオフ膜を備えたAmicon UltraTM(Millipore; Bedford, Mass.)遠心フィルター装置にロードする。この遠心フィルター装置を4℃で3000 rpm(2000 x g)で15分間遠心する。滅菌済のPBSをろ過残液(retentate)に添加し、フィルターを3000 rpm(2000 x g)で再度遠心する。濃縮された/脱塩されたタンパク質を含んでいるこのろ過残液を、遠心フィルター装置から吸引して、滅菌クリオバイアル(cryovial)中に入れ、液体窒素中で保管する。単離したタンパク質の純度はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動でアッセイする。タンパク濃度はBCAタンパク質アッセイを製造者(Pierce)の使用説明書に従って用いて測定する。
【0133】
ビオチニル化GADの発現と精製
NODから膵島を採取し、直ちに4M グアニジンチオシアネート中でホモゲナイズする。総RNAを既に報告されている方法で単離する。例えば、Shirwanら, 1993, J. Immunol. 150:2295-304を参照せよ。この精製RNAをジエチルピロカルボネートで処理した水に溶解し、少量のアリコートに分けて、使用するまで−70℃で保管した。このRNAの一部分をRT-PCRのための鋳型として用いるが、そのRT-PCRはマウスGADのコード配列に特異的なプライマーを用いる。たとえば、Leeら, 1993, Biochim. Biophys. Acta, 1216:157-60を参照せよ。このPCRの産物をTA クローニングベクター(Invitrogen)中にクローン化する。機能を有するクローンを同定し、発現用のpACベクター(Avidity)中にサブクローン化するために用いる。細菌を形質転換し、アンピシリンを含んだ培地で選択した後、いくつかのクローンをミニプラスミド調製に供し、適切な制限酵素で消化して陽性のクローンを同定する。所望のインサートを含んだクローンをラージプラスミド調製に用いる。プラスミドを用いてAVB100 E.coliを形質転換するが、この株は染色体中にbirAリガーゼ遺伝子が安定的に組み入れられた株である。タンパク質の発現は、ビオチンタグを有するGADの高レベルの発現を行うために、L-アラビノースを用いて誘導する。発現されたタンパク質はAviTag抗体アガロースを用いて精製する。精製されたGADは、濃度、エンドトキシン量、およびビオチニル化の程度について、ウエスタンブロットおよびアルカリホスファターゼをコンジュゲートさせたストレプトアビジンをプローブとして用いて評価する。必要に応じて、エンドトキシンはPierce社のDetoxi-Gel Endotoxin Removing kitを用いて除去する。ビオチニル化GADはアリコートに分け使用するまで−70℃で凍結しておく。
【0134】
免疫修飾
共刺激性部分とコア・ストレプトアビジンを含んでいるコンジュゲートは、ビオチニル化IL-2および/もしくはビオチニル化GADタンパク質とPBS中で混合することにより1:1のモル比で結合する。PBS中の全てのコンジュゲートとDCを下記の投与量で静脈内に注射する。
【0135】
同種混合リンパ球反応
ナイーブなBALA/cマウスから採取した脾臓とリンパ節の細胞(1 x 105個/ウエル)を5日間のアッセイでのレスポンダーとし、ナイーブなC57BL/6マウスから採取し照射(2000cGy)した脾臓細胞(1 x 105個/ウエル)をスティミュレーターとして培養する。その培養液に増殖させたTreg細胞を、レスポンダーとTreg細胞の比率を様々に変えて培養する。培養の最後の16時間に、細胞をH3-チミジンでパルスする。
【0136】
膵島移植
雄のBALB/cマウス(22〜26グラム、6〜8週齢)に200 mg/kgのストレプトゾトシン(Biomol, Plymouth Meeting, PA)を単回静脈内注射することによって糖尿病とし、糖尿病であるか否かは血糖値が2回連続して>300 mg/dLであるかどうかによって確認する。膵島移植の1日前に、5〜8 x 106個の増殖させたTreg細胞を各マウスに静脈内注射で移入する。ドナーの膵島は完全にミスマッチのC57BL/6マウスから、0.2 mg/mLのリベラーゼ酵素溶液(Roche)を用いて膵臓のin situ灌流によって採取する。37℃で17分間消化させた後、膵島を、Ficollグラディエントを用いて精製し、完全培地(10% FBS、2 mM L-グルタミン、100 U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、および50 mMの2-メルカプトエタノールを添加したRPMI)中で37℃で一晩維持する。翌日、膵島を集め、PBSで洗い、400〜600個の膵島を各BALB/c移植片レシピエントの左腎被膜下に移植する。対象のマウスには同種の膵島を移植するが、Treg細胞は投与しない。移植したマウスを週3回モニターし、拒絶反応が起こっているか否かは、血糖値が2回連続して>300 mg/dLであるかどうかによって確認する。
【0137】
膵島に浸潤するリンパ球
浸潤しているリンパ球はNOD動物の膵島から、まず膵臓を、例えばYolcuら, 2002, Immunity, 17:795-808に報告されているように、0.2 mg/mLのリベラーゼ(Roche)で消化することによって採取する。単一の膵島を得た後、膵島に浸潤しているリンパ球を得るために、例えば、Greenら, 2002, Immunity 16:183-91に既に述べられているように膵島を消化する。リンパ球はフローサイトメトリー分析のために染色する。
【0138】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリー分析は、まず対象の一次抗体および二次抗体を滴定した後、フローサイトメトリーに最適な濃度で、標準的な方法を用いて行う。例えば、Mhoyanら, 1997, Transplantation, 64:1665-70を参照せよ。アイソタイプ適合の(isotype-matched)抗体は陰性対照として用いる。サンプルはFACS CaliburまたはVantage(Becton Dickinson; Mountain View, CA)上でランさせ、分析はFlowJo(TreeSoft)またはCellqQuest(BD Biosciences)ソフトウエアで行う。
【0139】
フローサイトメトリーを用いた細胞内サイトカイン分析
細胞内のIL-2、IL-4、IL-10、およびIFN-γの分析をそれらのサイトカインに特異的なモノクローナル抗体(PharMingen)を用いてフローサイトメトリー分析で行う。例えば、Elsonら, 1995, J. Immunol., 154:4294-301を参照せよ。細胞を4%のパラホルムアルデヒドで37℃5分間で固定し、PBS/1% BSAで2回洗う。0.1% BSAおよび10% FCSを添加したPBS-Sバッファー(PBS、0.01 M HEPES、0.1% サポニン)中で氷上で一晩インキュベートして非特異的結合をブロックした後、細胞をPBS-Sバッファーで2回洗い、氷上でサイトカイン特異的抗体と30分間インキュベートする。PBS-Sバッファーで2回洗った後、氷上でマウスIgGに対するFITCをコンジュゲートさせたラット抗体と30分間インキュベートし、フローサイトメトリーで分析する。アイソタイプをマッチさせた、無関係の抗体を陰性対照として用いる。細胞内FoxP3の分析は製造者のプロトコール(eBioscience)に従って行う。
【0140】
フローサイトメトリーによるT細胞ソーティングと表現型分析
脾臓細胞とリンパ節細胞はナイーブなBALB/cマウスから採取し、単一細胞懸濁液となるように処理し、赤血球はACK溶液を用いて溶解させた。細胞ソーティング用に、細胞を抗CD4-FITC、抗CD25-PE、および抗CD8-APCで染色し、CD4+CD25-シングルポジティブ(SP)およびCD4+CD25+ダブルポジティブ(DP)T細胞を、FACSVantage セルソーター(BD Bioscience, San Jose, CA)を用いてソートした。ソートした細胞は純度が>95%であった。ナイーブな、および増殖させたTreg細胞についてCD4-APC、CD4-FITC、CD8-PE、CD8-PerCP、4-1BBL-PE、CD25-PE、CD95-RITC、ビオチン-CD137、ビオチン-CD28、ビオチン-GITR、ビオチン-TGF-βに対する抗体、およびFITC標識アビジンを用いてフローサイトメトリーで表現型を調べた。マッチさせたフルオロクロームを有するアイソタイプ抗体を、対照として用いた。細胞内のFoxP3染色は製造者のプロトコール(eBioscience, San Diego, CA)に従って行った。
【0141】
受容体発現アッセイには、ソートしたCD4+CD25+またはCD4+CD25-のT細胞を96ウエルのプレート中で2日間、単独で、またはIL-2(25 U/mL)、照射した脾臓細胞のいずれかの、またはそれらの双方の存在下で培養した。2日間培養した後、細胞の一部を取り、PBSで2回洗い、2つの別々の培養物に分けた。一方の培養物にIL-2を添加し、もう一方はIL-2を添加せずに維持した。2日間培養した後、細胞を4-1BBまたはCD28に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【0142】
1群の細胞をIL-2と脾臓細胞とともに2日間培養した後に採取し、2回洗い、さらに2日間処理せずに培養した。もう一方の群の細胞にはday 2にIL-2を添加してさらに2日間培養した。細胞を4-1BBまたはCD28に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【0143】
FoxP3のためのRT-PCR
ナイーブなBALB/cマウスの脾臓とリンパ節から新たにソートしたCD4+CD25-およびCD4+CD25+のT細胞から、または増殖させたTreg細胞から、TRI試薬を用いて総RNAを単離する。第1鎖cDNAを作製するために2μgのRNAを用い、PCR増幅は、FoxP3とHPRTに特異的なプライマーを用いてそれぞれ33サイクルおよび27サイクルで行う。プライマー配列は、次のとおりである:
FoxP3フォワード 5'-CAG CTG CCT ACA GTG CCC CTA G-3'
FoxP3リバース 5'-CAT TTG CCA GCA GTG GGT AG-3'
HPRTフォワード 5'-GAA GTG TTG GAT ACA GCC CAG AC-3'
HPRTリバース 5'-GAG GGT AGG CTG GCA TCT AGG CT-3'
【0144】
病理組織所見
膵臓は自己免疫性の組織学的徴候があるか否か、およびインスリン分泌能について評価する。処理したNODと対照のNODから、処理後の様々な時点で膵臓を摘出する。各膵臓の組織片を10% 緩衝化ホルマリンで固定し、パラフィン中に包埋し、4μmの切片を作製し、ヘマトキシリンとエオジン(H&E)で染色して一般的な組織学的変化を調べる。サイトカイン、T細胞、およびインスリンの免疫組織化学的検討については、既に報告されている方法で行う。例えばGreenら, 2002, Immunity, 16:183-91を参照せよ。
【0145】
DCの調製と糖尿病性抗原でのパルス処理
未熟なDCは、NODの骨髄(BM)細胞から、GM-CSFおよびIL-4を用いて4〜5日間培養して作製する。細胞をGAD 65、ICA 512、およびNRP-A7ペプチドの混合物(30μg/ペプチド/mL)でパルスし、100 ng/mLのマウスCSA-4-1BBLコンジュゲート、またはCD40Lを用いて、一晩分化を行わせる。ペプチドはGenScript Corporationから市販されているものを購入する。細胞を十分に洗い、上記で概略を示し、下記に詳述する方法に従って、TGF-β(または対照のタンパク質としてコア・ストレプトアビジン)で装飾する。実験によっては、NODのAPCは、自己抗原のソースとして、NODの膵島から調製した十分に透析したNP40溶解物の種々の濃度のものを共存させてインキュベートする。PBSで洗った後、その細胞を免疫修飾に用いる前に、細胞の一部をとって細胞の表面上におけるTGF-βのディスプレイ、クラスIIおよびCD80/CD86共刺激性分子のアップレギュレーションについて、フローサイトメトリーで分析する。
【0146】
細胞表面上のTGF-βのディスプレイ
DCを氷冷したPBSで洗い、5μM EZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-ビオチン(Pierce)を含有するPBS, pH 8.0中に2.5 x 106個/mLとし、室温で20分間インキュベートする。細胞を十分に洗い、1 x 106個/mLとして50〜100ngの精製TGF-β-コア・ストレプトアビジンコンジュゲート(または対照としてコア・ストレプトアビジン)と4℃で15分間インキュベートする。PBSで十分に洗った後、細胞をフローサイトメトリー用に処理し、下記のとおりそれ以降の研究に用いる。
【0147】
統計解析
I型糖尿病の予防に対する処理の効果はKaplan-Meier曲線を用いて推定する。種々の群間の生存率の差は、log-rank検定(generalized Savage/Mantel Cox)を用いて評価する。個々の動物の群から得られたデータの比較の方法は、まず最初にF検定(2群間)またはLevene検定(多群間)を用いて等分散を調べる。分散が等しくない場合には、対数変換を行う。正規分布しているサンプルの平均値を比較しようとする際にはStudentのt検定(2群間)またはNewman-Kreul検定(多群間)を用いる。データが正規分布していない場合には、Mann-WhitneyのU検定(2群間)またはKruskal-Wallisの検定(多群間)を用いる。統計学的に有意とはp<0.05と定義する。
【0148】
実施例1:CSA-4-1BBLコンジュゲートのクローニングと発現
LPS(5μg/mL)で2日間刺激したマウスの脾臓細胞からTRI試薬(Molecular Research Center, Cincinnati, OH)を用いて総RNAを単離した。このRNAの2μgをcDNAの第1鎖を作製するために用い、それはセンスプライマー(5'-ATC GAA TTC CGC ACC GAG CCT CGG CCA GCG-3')およびアンチセンスプライマー(5'-GGA CTC GAG CAT AGC AGC TTG AGG ACT TAG C-3')を用いて4-1BBLの細胞外ドメイン(aa 104-309)を増幅するためのPCRの鋳型として用いた。プライマーはDES発現ベクター(Invitrogen, San Diego, CA)中へのディレクショナルクローニングおよびインフレームクローニングを容易にするために、EcoRIおよびXhoI制限酵素切断部位を含むようにした。このPCR産物をPCR2.1TOPOベクター中にクローン化しいくつかのポジティブクローンをDNA配列分析にかけた。4-1BBLの正確な配列を含んでいる1個のクローンをEcoRIおよびXhoIで消化し、6xHis Tagおよびコア・ストレプトアビジン(CSA)を含んでいるpMT/BiP/V5-His発現ベクター中にサブクローン化して、マウス4-1BBLの細胞外ドメインがCSAのビオチン結合ドメインおよび四量体形成ドメインのC末端となるようにした。図8A。 キメラ遺伝子をDrosophilaの分泌シグナルとインフレームとなるように金属誘導性発現ベクター中にサブクローン化し、CSA-4-1BBLコンジュゲートをS2昆虫細胞内でDrosophila DES 発現系を用いて発現させ、セファロースカラムを用いて精製し、エンドトキシンが含まれていないかをLimulus amebocyte lysate kit(Chrles River)で試験した。
【0149】
このCSA-4-1BBLコンジュゲートはネイティブな条件下でPAGEで調べると、四量体およびより高次の構造で存在していた。この四量体/オリゴマー構造は、変性条件でのみ約37 kDaの単量体へと解離し、SDS-PAGEで分画した。図8Bは精製CSA-4-1BBLのウエスタンブロット分析で、変性させたもの(レーン2)、およびネイティブなもの(レーン3)を示している。変性条件下では、このCSA-4-1BBLは37 kDaの単量体として認められるが、ネイティブな条件下ではこのタンパク質は>150 kDaの四量体およびより高次の構造をとっていることが認められる。
【0150】
CSA-4-1BBLの4-1BB受容体への結合を、下記のとおり調べた。総混合リンパ球反応(total mixed lymphocyte reaction:MLR) 培地(5% FBS、2 mM L-グルタミン、100 U/mL ペニシリン/ストレプトマイシン、10 mM HEPES、および100 mM MEM-ピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM)(Invitrogen, Carlsbad, CA)、ならびに50 mM 2-メルカプトエタノール中の、BALB/cマウスまたはC57BL/6マウスから得た脾臓細胞を、5μgのConA(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で48時間刺激した。次いで活性化されたおよび/もしくは休止期の細胞をCSA-4-1BBLコンジュゲート(200 ng/1 x 106個の細胞)、または等モル量のCSA対照タンパク質(76 ng/1 x 106個の細胞)と、ロータリーシェーカーで4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで数回洗い、CD4(APC)、CD8(PerCP)、4-1BBL(PE)、およびSA(FITC)に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。休止期でCSAとインキュベートした細胞を陰性対照として用いた。
【0151】
ブロッキングアッセイには、1 x 106個の活性化した細胞を、過剰量(50μg/1 x 106個)の4-1BBに対する抗体(3H3、Emery UniversityのR. Mittler氏から好意で提供を受けたもの)と30分間インキュベートした。次いで細胞をPBSで数回洗った後、200 ngのキメラ4-1BBL(CSA-4-1BBL)と、さらに30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗い、CD4-APC、CD8-PerCP、4-1BBL-PE、およびCSA-FITCに対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。休止期でCSAとインキュベートした細胞を陰性対照として用いた。
【0152】
BALB/cマウスから得た休止期またはConAで活性化させた脾臓細胞を、4-1BBL(200 ng/1 x 106個の細胞)または対照のCSAタンパク質(76 ng/1 x 106個の細胞)と、4℃で30分間インキュベートした。4-1BBL(黒線)のCD4+細胞およびCD8+細胞上への結合はマウス4-1BBLに対する抗体を用いて検出した。CSAタンパク質とインキュベートした細胞は対照として用いた(グレーで塗りつぶした部分)。図8Cに示すとおり、CSA-4-1BBLは、4-1BBL受容体を発現している活性化されたCD4+細胞およびCD8+細胞と結合した。受容体を持たないナイーブなT細胞では結合がみられず、また、さらに、4-1BBに対する抗体で受容体を最初にブロックしておくと結合が起こらないので、この結合は4-1BBに特異的なものである(図8C、右側のパネル)。
【0153】
4-1BBLが機能を保持しているか調べるために、ナイーブなBALB/cマウスから得た脾臓およびリンパ節から精製した総CD4+T細胞を、様々な濃度(図8D中にng/mLで示している)の可溶性CSA-4-1BBLコンジュゲートまたは対照のCSAタンパク質の存在下で、最適濃度未満の濃度の抗CD3抗体(0.5 μg/mL)を用いて4日間刺激した。図8D。CSA-4-1BBLコンジュゲートでの共刺激はCD4+細胞の激しい増殖反応を引き起こし、それは濃度依存性で統計学的に有意であった(p<0.05)。その増殖反応は4-1BBL依存性であったが、それは対照のCSAタンパク質では等モル量用いても、抗CD3抗体の最適量未満の量で得られた応答に対してその応答を増大させなかったからである。これらを併せると、これらの結果はCSA-4-1BBLコンジュゲートはコア・ストレプトアビジンが四量体およびオリゴマーを形成するという構造的特徴を有していて、活性化されたT細胞上の4-1BBと結合し、最適量未満の抗CD3抗体での刺激下でT細胞の強力な活性化剤として作用することを示している。
【0154】
実施例2:CSA-4-1BBLコンジュゲートを用いたTreg細胞の増殖
BALB/cマウスの脾臓から、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いてCD4+CD25+Treg細胞をソートし(図9A)、同系のAPCの存在下で、抗CD3抗体(0.5μg/mL)、CSA-4-1BBL(1μg/mL)、およびIL-2(25 IU/mL)で活性化した。次いで細胞を、IL-2を添加した培地で、3日毎に10〜12日間、約1 x 106個/mLのレベルに維持した。その培養液をもう1ラウンドの活性化にかけた後、IL-2で維持した。図9に示すとおり、このレジメンによって18〜24日間以内に55倍から110倍、25日間では110倍のTreg細胞の増殖を行うことができた(図9B)。同一の条件下だがCSA-4-1BBLコンジュゲートを加えずに維持したTreg細胞ではその増殖はごくわずかであった。増殖したTreg細胞は、FoxP3タンパク質を高レベルで(RT-PCRまたは抗FoxP3抗体で測定)発現しているとともにFas、CD62L、GITR、CD25、CD28、および細胞表面にTGF-βを発現しているCD4+CD25bright細胞の均一な集団を形成し(図9A、下右のパネル)、そのTreg細胞は同種のものに対する応答を抑制し、抗CD3刺激を用いたT細胞のポリクローナルな活性化も抑制した(データはここには示していない)。これに対して、4-1BBLを含まない培養ではDP細胞数の2.5倍の増殖が示されたにすぎず、CD4+CD25dim細胞およびCD4+CD25bright細胞からなる不均一な集団が認められた(図9A、上右のパネル)。増殖させたCD4+ SP T細胞とは異なり、Treg細胞は高レベルの4-1BBを発現した。図10(黒く塗りつぶした細胞集団は対照のアイソタイプである)。
【0155】
実施例3:増殖させたTreg細胞は膵島同種移植の生存を延長する
ポリクローナルに増殖させたTreg細胞の治療効果を調べるために、化学的誘発させた(ストレプトゾトシンによる)糖尿病BALB/cマウスに、上述のとおり20〜25日間培養して増殖させたTreg細胞5〜10 x 106個を用いて養子免疫細胞移植を行い、その24時間後に完全にミスマッチのC57BL/6同系膵島を移植した。マウスの血糖値を週3回測定した。Treg細胞での治療を受けたマウス(○)は全て、生存期間が延長し(MST=68.7±10日間)、1/3を超えるマウス(66%)が約85日間の観察期間内には拒絶反応を起こさなかった。図11。これとは全く異なり、Treg細胞療法を受けなかった対照のマウスでは(黒丸)、移植片の急性拒絶反応が見られた(MST=16.6±2.7日間)。
【0156】
実施例4:増殖させたCD4+CD25+Treg細胞は抑制的である
増殖させたTreg細胞の機能を、CD3刺激を用いた古典的な抑制アッセイで調べた。ナイーブなTreg細胞と同様に、増殖させた細胞はCD3の刺激に対してアネルギー性のままであり、CD4+Teff細胞のポリクローナルな増殖を抑制することができ、この抑制機能は4-1BBLによって阻害しうるものであった(図12A)。
【0157】
本発明で増殖させたTreg細胞の抑制機能のさらに別の証拠は、混合リンパ球反応を用いて示された。ナイーブなBALB/cマウスから得た脾臓細胞と末梢リンパ節細胞をレスポンダーとして用い、ナイーブなC57BL/6マウスから得た脾臓細胞を照射したものをスティミュレーターとして用いた。同種抗原によって駆動されるTeff細胞の増殖は、増殖させたTreg細胞によって強く阻害され、その阻害はレスポンダーとTreg細胞の比が10:1となっても依然として有意(p<0.05)であった(図12B)。このことは、増殖させたTreg細胞が、天然のTreg細胞の持つ古典的な抑制機能を有していることを示している。これらを併せると、これらのデータはCSA-4-1BBLコンジュゲートで増殖させたTreg細胞が抑制的に作用し、天然のTreg細胞と同様な様式で挙動することを示している。
【0158】
実施例5
A. Treg細胞上の4-1BBLとIL-2の相乗作用
ソートしたナイーブなDP細胞を同系の脾臓細胞の照射したものと、0.5μg/mLの抗CD3抗体の存在下で3日間同時培養した。培養液には、25 U/mLのIL-2、1μg/mLのCSA-4-1BBL、またはその双方の組み合わせを添加した。IL-2または4-1BBLのいずれかをTreg細胞培養液に添加するだけでTreg細胞(DP)の増殖を誘発する。しかし、1μg/mLの4-1BBLを添加した場合と比べると、25 U/mLのIL-2添加では4倍の増殖が見られる。図13A。4-1BBLとIL-2を組み合わせて用いると、最大の増殖応答が得られ(IL-2単独の場合の2倍;図13A)、このことはこれらの2種類のタンパク質が相乗的に作用してTreg細胞の増殖を促進することを示している。
【0159】
Treg細胞の増殖に対してのシグナル1、2、および3の各々の寄与をAPCを含まない培地系で調べた。このアッセイでは、シグナル1は可溶性抗CD3抗体によって提供され、シグナル2は4-1BBLにより、シグナル3はIL-2により提供される。ソートしたナイーブなDP細胞を、照射した脾臓細胞を用いずに、単独で用い、培養液には抗CD3抗体、CSA-4-1BBL、および/もしくはIL-2を添加した。図13Bに示し、表1に要約したとおり、シグナル1または2の刺激は単独では、Treg細胞の増殖を誘導するには不十分であり、一方、シグナル3の刺激は中等度の増殖をもたらす。シグナル1と2の双方を刺激してもTreg細胞増殖への効果は非常に小さい。しかし、シグナル1または2をIL-2によるシグナル3刺激と組み合わせて刺激すると著しい増殖作用を示し、3つのシグナル全てを刺激すると最も劇的なTreg細胞の増殖(2〜3週間で最高110倍の増殖)が観察された。この増殖したTreg細胞は全てCD25brightで、4-1BBLなしで増殖させたDP細胞と比較すると、CD28、4-1BB、GITR、Fas、CD62L、膜結合TGF-β、およびFoxP3の発現レベルがより高かった。
【表1】
【0160】
これらの結果はTreg細胞の増殖に対してシグナル1、2、および3を刺激する効果には階層性があることを示唆している。シグナル1または2を単独で刺激してもほとんど効果はないが、シグナル3(IL-2を介して)を単独で、またはシグナル1および/もしくは2に加えて刺激すると、著しい効果を示す。3つのシグナル全てを刺激するとその効果は最も顕著であり、それに続いてシグナル2と3、次いでシグナル1と3の刺激であった。
【0161】
B. IL-2はCD4+CD25+Treg細胞上の4-1BB受容体の発現をアップレギュレートする
ソートしたCD4+CD25+(DP)Treg細胞およびCD4+CD25-(SP)Teff細胞を、IL-2および/もしくは照射APCの存在下または不在下で2日間培養した。次いで、細胞を採取し、フローサイトメトリーで4-1BBの発現について分析した。新たにソートしたTreg細胞のうちで4-1BBを発現していたのは22%にすぎなかったが、Teff細胞ではこの受容体が陽性を示したものはなかった。細胞を単独で2日間培養した場合には、4-1BBの発現はバックグラウンドのレベル(2%)までダウンレギュレートされていた。Treg細胞を照射APCの存在下で培養すると、Treg細胞上での4-1BBの構成的発現の維持に対する効果はわずかであった(8%)。それとは著しく異なり、IL-2をTreg細胞の培養液に添加すると、4-1BB受容体の維持のみならず中等度のアップレギュレーション(新鮮な細胞での22%に対して29%)がもたらされた。照射したAPCを添加すると、4-1BB発現のアップレギュレーションに及ぼすIL-2の効果はさらに増強された(53%)。
【0162】
Treg細胞上の4-1BBの維持/アップレギュレーションにおけるIL-2の役割をさらに調べるために、APCとIL-2の存在下で培養した細胞を十分に洗い、IL-2を含まない状態で2日間再培養した(図13C、上側のパネルの最後のヒストグラム)。Treg細胞は全てその4-1BB発現をバックグラウンドのレベルまでダウンレギュレートさせた。Teff細胞に同様な処理を行っても4-1BB発現のパターンを変えることはできなかったので、IL-2による4-1BB発現の調節はTreg細胞に特異的であった(図13C、下のパネル)。これらの結果は、我々の知る限りでは、IL-2がTreg細胞上の4-1BBの発現の維持/アップレギュレーションを行うことを示した最初のものであり、このことはex vivoでのTreg細胞の増殖に及ぼすIL-2と4-1BBLの間に観察された相乗作用に作用機構の上でのベースを与えるものである。
【0163】
実施例6:機能を有するTGF-β-CSAコンジュゲートの構築
CSAと活性型のTGF-β1を含んでいるコンジュゲートを上記で概説した一般的プロトコールに従って作製した。TGF-β-CSAコンジュゲートは、MLRアッセイ(図14)または抗CD3でのポリクローナルな活性化(データはここには示していない)に用いると、T細胞の増殖に強力な阻害活性を示した。これらのデータは、TGF-β-CSAコンジュゲートが活性を有し、抗原特異的な増殖をブロックするために用いることができることを示しており、そのため、in vitroおよびin vivoでTreg細胞の増殖に有用なものとなろう。
【0164】
実施例7:4-1BBL、CD80、およびIL-2を用いたTreg細胞の非選択的増殖
上述のとおり、NODマウスでの糖尿病の進行はTreg細胞が病原性のTeff細胞を制御する機能の崩壊が関与しているものと考えられる。NODマウスは糖尿病に抵抗性の系統と比較すると、末梢では、Treg細胞の数がより低くなっており、糖尿病の発症と相関している年齢とともにTreg細胞の量と機能は低下することが示されている。このことのメカニズムは正確にはわかっていないが、Treg細胞の発生と維持を調節するAPCの能力の欠如が役割を果たしているのかもしれない。このような考え方と、(i)NOD中のDCでは、Treg細胞の発生と機能にとって重要なCD80などの共刺激性分子の発現が低下している、および(ii)NODマウスにおいて糖尿病の発症に対して防護作用を有している腸内寄生虫やウイルスなどの様々な生物学的作用物が、DCの修飾を介してTreg細胞を誘導している可能性がある、という観察結果は一致している。
【0165】
この実施例は、CD80および/もしくは4-1BBLとIL-2を含んでいるコンジュゲートを用いた、NODマウスにおけるTreg細胞の選択的増殖について説明しており、このアプローチがNODにおいてI型糖尿病の予防に有効であることを示している。このコンジュゲートはTreg細胞に選択的に結合し、治療目的で用いうる形でTreg細胞を増殖させる。
【0166】
NODでの糖尿病のステージは大まかには、前インスリン炎(preinsulitis)(1〜3週間)、インスリン炎(4〜8週間)、前糖尿病(8〜24週間)、および糖尿病(>28週間)に分けられる。これらのステージは動物飼育施設によって異なる。前糖尿病状態の雌のNODマウスを選択したが、それはこのようなマウスは自己免疫性の必要条件が揃っており、またTreg細胞とAPCの欠損が予測され、これらのマウスで糖尿病が予防しうるとすれば臨床的な効果があるものと考えられるからである。
【0167】
Treg細胞をin vivoで増殖させるために、CD80とIL-2、または4-1BBLとIL-2を含んでいるコンジュゲートを、いろいろな組み合わせ、頻度、および投与量でマウスに静脈内投与する。コア・ストレプトアビジン(CSA)/IL-2コンジュゲートは対照として用いる。これらのコンジュゲートは、実験に用いる前に、PBS中でCSA-CD80またはCSA-4-1BBLコンジュゲートをビオチニル化IL-2と1:1のモル比で混合することによって調製する。
【0168】
CD28に対する超作動性(superagonistic)抗体を用いて、Treg細胞の増殖のピークが注射の3日後に起こったことが見出された。従って、動物にはコンジュゲートを3日毎に注射し、Treg細胞増殖のレベルを評価するための採血は次のコンジュゲートの注射の直前に行った。タイピングはフローサイトメトリーでCD4およびFoxP3に対する抗体を用いて行った。この血液分析によってTreg細胞増殖のピークの時点が判明した後に、動物を屠殺して末梢リンパ節(膵臓のリンパ節を含む)、脾臓、および膵臓を採取する。各動物の脾臓とリンパ節および膵島から単離したGILを単一細胞懸濁液とし、種々のマーカー、すなわち細胞表面のマーカーとしてCD4、CD8、4-1BB、CD62L、TGF-β、CD25、ならびに細胞内マーカーとしてFoxP3、IL-10、およびIFN-γを用いて多パラメーターのフローサイトメトリーで類別してT細胞の状態を全体的に把握した。
【0169】
前糖尿病状態のNODマウスを本明細書中に記載のように治療すると、Treg細胞がTeff細胞よりも急速に増殖することとなる。CD80、4-1BBL、およびIL-2を介して共刺激性および生存のシグナルを提供すると、Treg細胞の急速な増殖がもたらされるものと期待される。この効果はDCの4-1BBL活性化によってさらに強められ、それはTreg細胞の増殖および/もしくはTreg細胞の機能の回復に寄与しうる。これらの結果として起こる増殖は全身性のものとなりうるが、Treg細胞は防御反応として膵臓のリンパ節および膵臓に集まりうる。増殖したTreg細胞は、古典的なTreg細胞のマーカー、例えば細胞表面のTGF-β、CD25、4-1BB、および細胞内のIL-10などのマーカーの全てを発現する。
【0170】
実施例8:非選択的Treg細胞増殖を介する1型糖尿病の予防
前糖尿病状態のNOD動物におけるTreg細胞の増殖が1型糖尿病の発症を予防または遅延させることを下記のとおり調べる。前糖尿病状態のNOD(12週齢)を、上述のCD80とIL-2、または4-1BBLとIL-2を含んでいるコンジュゲート用い、上述の各研究で定めたTreg細胞を活発に増殖させることのできる条件下で、治療する。動物は糖尿病発症の有無について25週間観察する(この25週の時点までに、我々のコロニーでは処置しなかった雌の85%以上が糖尿病を発症する)。血糖値の毎日の測定で2日間連続して250 mg/dLを超えた場合には糖尿病が確認されたものと見なす。治療できなかった動物および28週目までに糖尿病を発症しない動物は屠殺し、種々の組織を採取してTreg細胞の表現型を分析し、免疫組織化学的検討を行って疾病の状態を定めた(正常vs. 前インスリン炎 vs. インスリン炎)。治療しなかった動物またはCSA-IL-2コンジュゲートで治療した動物は糖尿病発症率を調べるための対照とした。
【0171】
本発明に従って前糖尿病状態の動物のTreg細胞を増殖させると、糖尿病の発症を予防する。持続的な予防効果を得るには、Treg細胞のTeff細胞に対する比を高く維持するために、コンジュゲートでの治療を定期的に行う必要があるであろう。長期にわたって糖尿病を発症しない動物は完全に発症しないか、または臨床的な徴候を示さない前インスリン炎である可能性がある。糖尿病を発症した動物ではTreg細胞の数が低下していて、膜のTGF-β及び分泌性IL-10の発現量がより低いものと考えられる。これらの動物では、IFN-γ分泌性CD4+Teff細胞およびCD8+Teff細胞を多く含んでいる可能性もある。
【0172】
実施例9:4-1BBLおよび自己抗原を用いたTreg細胞の選択的増殖
Treg細胞は抗原非特異的に免疫応答を抑制することができるが、Treg細胞の抗原によって駆動される活性化および増殖は、その特異性および有効性の増大の点で利点がある。この実施例では、4-1BBLと自己抗原GADを含んでいるコンジュゲートを、自己抗原のDCへの効果的な送達のために、CD80とIL-2、およびTGF-βとIL-2を含んでいるコンジュゲートとともに用いた、自己抗原特異的なTreg細胞の選択的増殖を説明したものである。ラパマイシンも有効性を増強するために用いる。
【0173】
上述のとおり、DCは構成的に4-1BBを発現し、この受容体の、4-1BBL/GADコンジュゲートによる結合を介してのシグナル伝達は、DCの活性化、共刺激性分子のアップレギュレーション、および有効なT細胞の応答に必要とされる種々のサイトカインの合成と分泌をもたらす。さらに、CD80とIL-2は優先的にTreg細胞を増殖し、それは構成的にCD28およびCD25を発現する。同時に、TGF-βとIL-2を使用すると、Treg細胞の機能と増殖を増強する一方、Teff細胞の機能と増殖をブロックする。ラパマイシンはTreg細胞の増殖に大きな影響を及ぼすことなくTeff細胞の増殖をブロックし、アポトーシスを容易にすることによってTGF-βの効果を増強する。従って、TGF-βとラパマイシンの存在下で自己抗原が認識されると、Teff細胞の活性化と機能が選択的にブロックされる一方で、抗原特異的なTreg細胞の発生と増殖には好都合で、また、4-1BBLはTreg細胞の応答を持続させるためにDCを活性化する。
【0174】
12週齢の前糖尿病状態の動物に、4-1BBLとGAD、CD80とIL-2、およびTGF-βとIL-2を含んでいるコンジュゲートを様々な組み合わせ、頻度、および投与量で投与する(静脈内注射による)。これらのコンジュゲートは、CSA-4-1BBLコンジュゲートをビオチニル化したGAD(上述のとおり調製したもの)を混合することによって、またはCSA-CD80もしくはTGF-β-CSAコンジュゲートを上述のとおりビオチニル化したIL-2と混合することによって調製する。ラパマイシンは腹腔内に1.5 mg/kgの投与量で、コンジュゲートでの治療の間、毎日投与する。
【0175】
動物の血中のTreg細胞の増殖のピークについては、フローサイトメトリーでCD4およびFoxP3に対する抗体を用いてモニターした。Treg細胞の応答のピークの時点が見つかった後に、膵臓のリンパ節を含む末梢のリンパ節、脾臓、および膵臓の採取のために動物を安楽死させ、実施例7に記載の種々の細胞表面マーカーおよび細胞内マーカーについて多パラメータータイピングを行う。非治療のNODレシピエントまたは種々の組み合わせのコンジュゲートで治療したNODレシピエントを対照として用いた。Treg細胞の最も強力な増殖条件がわかった後に、その条件を、糖尿病の予防のために別のセットの動物の処置に用いる。
【0176】
4種類のコンジュゲート(4-1BBL/GAD、4-1BBL/IL-2、CD80/IL-2、TGF-β/IL-2)全てとラパマイシンの組み合わせ治療は、抗原特異的なTreg細胞の増殖と前糖尿病状態の動物の糖尿病発症予防に強力なレジメンとなることが期待される。4-1BBL/GADコンジュゲートはGAD自己抗原をDCへと運び、タンパク質のプロセシング、DCの活性化、およびGADのTreg細胞と病原性のTeff細胞への提示をもたらす。TGF-βとラパマイシンは相乗的に自己抗原特異的Teff細胞の活性化と増殖をブロックし、一方、CD80/IL-2ならびに4-1BBL/IL-2および/もしくは4-1BBL/GADコンジュゲートによるTreg細胞の活性化と増殖を促進する。また、TGF-βとラパマイシンは、ナイーブなCD4+CD25-T細胞のTreg細胞への転換を、FoxP3発現を誘導することによって、促進する。自己抗原特異的なTreg細胞の特異的増殖は、TGF-βまたはラパマイシンのうちの少なくとも1つで治療された群で達成されるが、それはこれらの2つが、Treg細胞の増殖に大きな影響を与えることなくTeff細胞の増殖を優先的にブロックするからである。
【0177】
Treg細胞の増殖は糖尿病の予防と相関する。コンジュゲートでの治療を定期的に反復することはおそらくTreg細胞のプールを維持するために有用であろう。自己抗原をさらに用いることによって(例えば、4-1BBLおよび追加の異なる自己抗原を含んでいるコンジュゲートなどで)、Treg細胞のより広いクラスのものの増殖が行われて効力が増強される可能性がある。
【0178】
実施例10:装飾され、パルスされたDCを用いたTreg細胞の選択的増殖
この実施例はTreg細胞の増殖のために、3種の糖尿病誘発性自己抗原(GAD、ICA152、およびNRP-A7)の混合物でパルスし、TGF-βを装飾したDCの使用について説明している。この方法は、単独で、または上述の共刺激性コンジュゲートとともに、および/もしくは上述のとおり、ラパマイシンとともに用いることができる。3種の自己抗原でパルスしたDCの使用によって多様なタイプのTreg細胞を引き出し、DC上のTGF-βの直接的なディスプレイは、可溶性タンパク質の全身的使用に伴って起こりうる毒性を制限するばかりでなく、Treg細胞を効果的に増殖させ、および/もしくは機能の回復を行わせ、NODにおける糖尿病の予防をもたらすこととなる。
【0179】
未熟なDCは、NODの骨髄細胞から、上述のとおり、GM-CSFおよびIL-4を用いて作製する。細胞を、糖尿病誘発性自己抗原であるGAD 65、膵島細胞自己抗原(ICA)512ペプチド、およびNRP-A7ペプチドの混合物でパルスする。未熟なDCは、4-1BBLと一晩インキュベートして成熟化させ、CD11cに対する抗体を用いたフローサイトメトリー、および種々の成熟化マーカー、例えばMHCクラスII、CD80、およびCD86分子のレベルがより高いことなどを用いて特徴を調べる。
【0180】
DCをビオチニル化し(5μM EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin, Pierce)、TGF-β-CSA(100 ng/106個の細胞)で上述のとおり装飾し、ラパマイシンを用いつつ前糖尿病状態の動物の静脈内に注射する。DCは様々な量で静脈内に注射するが、開始量は5 x 105個/動物とする。(2種類のGADペプチドと1種類のhsp60ペプチドでパルスしたDCのこの投与量は、前糖尿病状態のNODマウスで糖尿病の発症を低減させる効果があることが示されている。)。
【0181】
関連実験においては、上述のとおり作製したCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートも(パルスされ、装飾されたDCとともに)、免疫寛容誘導性効果を増強するために投与される。
【0182】
修飾されていない細胞およびCSAで装飾された細胞を対照として用いる。上述のとおり、Treg細胞の増殖および糖尿病の予防について動物を分析する。
【0183】
装飾されていないまたはTGF-βで装飾され、パルスされたDCとラパマイシンでの治療はTreg細胞を増殖させ、糖尿病の予防をもたらす。上記のとおり、TGF-βおよびラパマイシンは相乗的に作用して自己抗原特異的なTeff細胞の活性化と増殖をブロックする一方、Treg細胞の活性化と増殖、またはCD4+CD25-細胞からのTreg細胞への転換を促進する。任意でCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートを用いると、この効果はさらに増強される可能性がある。
【0184】
実施例11:装飾されたBMCを用いた、Treg細胞の選択的増殖
この実施例は、Treg細胞増殖のための、TGF-βで装飾された、外来(同種または異種)骨髄細胞(BMC)の使用について説明している。この方法は、単独で、または上述の共刺激性コンジュゲートとともに、および/もしくは上述のとおり、ラパマイシンとともに用いることができる。BMCを使用すると、Treg細胞の増殖のみならず、自己免疫を制御し、膵臓のβ細胞の再生を可能とする混合キメラをも確立し、糖尿病の予防および/もしくは治療をもたらす。TGF-βで装飾された外来のBMCをコンジュゲートとともに用いると、Treg細胞を増殖させ、それが今度はBMCの拒絶反応を予防し、自己反応性および同種反応性の双方を制御する混合キメラの確立をもたらす。
【0185】
BMCをビオチニル化し(5μM EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin, Pierce)、TGF-β-CSA(100 ng/106個の細胞)で上述のとおり装飾し、ラパマイシンを用いつつ前糖尿病状態の動物の静脈内に注射する。BMCは様々な量で静脈内に注射するが、開始量は5 x 105個/動物とする。
【0186】
関連実験においては、上述のとおり作製したCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートも(装飾されたBMCとともに)、免疫寛容誘導性効果を増強するために投与される。
【0187】
修飾されていない細胞およびCSAで装飾された細胞を対照として用いる。上述のとおり、Treg細胞の増殖、混合キメラ、および糖尿病の予防について動物を分析する。
【0188】
装飾されていないBMCまたはTGF-βで装飾されたBMCとラパマイシンでの治療はTreg細胞を増殖させ、糖尿病の予防をもたらす。上記のとおり、TGF-βおよびラパマイシンは相乗的に作用して自己抗原特異的なTeff細胞の活性化と増殖をブロックする一方、Treg細胞の活性化と増殖、またはCD4+CD25-T細胞からのTreg細胞への転換を促進する。任意でCD80/IL-2および4-1BBL/IL-2コンジュゲートを用いると、この効果はさらに増強される可能性がある。
【0189】
実施例12:キメラ4-1BBL(CSA-4-1BBL)はTreg細胞とTeff細胞の双方の増殖を促進するが、Treg細胞の抑制機能を阻害する
我々はTreg細胞の機能における4-1BBシグナル伝達の役割をキメラ4-1BBLタンパク質(CSA-4-1BBL)を用いて調べた。ナイーブなBALB/cマウスから得た、ソートしたCD4+CD25+二重陽性(DP)T細胞は、[3H]チミジンの取り込みをベースとした共培養実験において、CD3での刺激によって誘導された単一陽性(SP)CD4+CD25-Teff細胞の増殖応答を著しく阻害した(図15A)。この抑制作用は、培地に1μg/mLのキメラ4-1BBL(CSA-4-1BBL)を添加することによって、効果的に(p<0.05)かつ特異的に阻害されたが、等モル濃度で使用した対照のCSAタンパク質では阻害されなかった。
【0190】
この観察された抑制作用のキメラ4-1BBLによる阻害が、CD4+Teff細胞の増殖応答の回復によるものか、またはTreg細胞の増殖が誘発されたのか調べるために、SP細胞をCFSE(カルボキシフルオレセインスクシニミジルエステル)で標識し、共培養実験に用いた(図2B、上部のパネル)。キメラ4-1BBLを用いた共刺激は、対照(56%)と比較して、CD4+Teff細胞の増殖の増加(75%)をもたらした。この培養液へのTreg細胞の添加はCD4+Teff細胞の増殖を著しく低減させたが(30%)、それは4-1BBLによって部分的に回復した(62%)。共培養実験において4-1BBLでの共刺激でもそれに応答するCD4+Teff細胞の完全な回復が見られないことは、おそらくキメラタンパク質および/もしくはIL-2などの他の因子についてTreg細胞がTeff細胞と競合するためであろう。並行して行った実験で、CFSE標識DP細胞を共培養実験に用いて、Treg細胞は4-1BBL刺激に応答した増殖をも示すか否かを調べた(図15B、下のパネル)。Treg細胞は4-1BBLに応答する著しい増殖を、単独で培養した場合(対照の17%に対して44%)、またはSP Teff細胞との組み合わせで(対照の28%に対して58%)示した。これらの結果を併せると、4-1BBLはTreg細胞の増殖を促進し、一方Treg細胞の抑制機能を阻害することを示している。
【0191】
実施例13:増殖させたCD4+CD25+Treg細胞の表現型
実施例2で増殖させた細胞を、フローサイトメトリーを用いて古典的Treg細胞マーカーについて特徴を調べた。増殖させたTreg細胞は、CD25、4-1BB、CD28、GITR、Fas、CD62L、および細胞表面にTGF-βを発現していた。重要なことは、これらのマーカーの全てが、4-1BBLで増殖させたTreg細胞では、4-1BBLを用いずに増殖させた細胞と比較すると、著しくアップレギュレートされていたことである(図9Aと16A)。増殖させたTreg細胞はまた、RT-PCR(図16B)および細胞内染色(図16C)で調べると典型的な転写因子FoxP3を発現していた。重要なことは、4-1BBLの存在下で増殖させたTreg細胞は、4-1BB刺激を行わなかったTreg細胞と比較してFoxP3タンパク質の量を増加させたことである。併せて考えると、これらのデータは4-1BBLでの刺激は、天然のTreg細胞の発生/機能に関与する細胞表面マーカーの全てとFoxP3をアップレギュレートすることを示している。
【0192】
本発明は当業者にとっては十分な詳細さで記述され例示されてはいるが、種々の代案、改変、および改良を本発明の精神と範囲から逸脱することなく行いうることは、明白なはずである。本明細書で提示した実施例は、好ましい実施形態を代表するものであり、本発明の範囲を代表するものであって、範囲を限定することを意図したものではない。当業者であれば、改変およびその他の使用を思いつくであろう。それらの改変も本発明の精神の範囲内に包含され、特許請求の範囲によって定義される。
【0193】
当業者であれば様々な代替や改変が、本明細書で開示されている本発明に対して、本発明の範囲と精神から逸脱することなく行いうることは容易に明らかであろう。
【0194】
本明細書中で言及した特許および刊行物の全ては、本発明が属する業界の当業者のレベルを示すものである。本明細書中で言及した特許および刊行物はそのすべてを、あたかも個々の刊行物が特別におよび個別に参照により組み込まれるものであると示した場合と同程度に、本明細書中に参照により組み入れる。
【0195】
本発明は、本明細書に特に開示していないような要素、限定のない状態でも、適切に実施することができるように説明がなされている。従って、例えば、本明細書の各場合において、「含んでいる」「本質的に〜からなる」および「〜からなる」という用語のうちの1つは他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。用いられた用語と表現は説明のための用語であって限定するものではなく、そのような用語および表現をここに示し説明したものと等価のものまたはその部分を排除することに用いる意図はないが、特許請求している本発明の範囲内で様々な改変が可能であることは理解されるべきである。従って、本発明は好ましい実施形態および任意の事項によって特定的に開示されているとはいえ、本明細書に開示している概念の改変は、当業者によって再分類されて、そのような改変が添付の「特許請求の範囲」によって定義される本発明の範囲内にあるものと見なされることは、理解すべきである。
【0196】
他の実施形態は、下記の代表的な実施形態、および特許請求の範囲で説明している。
【0197】
代表的な実施形態:
1. (A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
を含んでいる組み合わせ。
【0198】
実施形態1において、サイトカインの選択は限定しない。
【0199】
2. 該結合ペアの第1のメンバーが、アビジンまたはストレプトアビジンを含んでおり、該結合ペアの第2のメンバーがビオチンを含んでいる、実施形態1の組み合わせ。
【0200】
3. 該結合ぺの第1のメンバーがコア・ストレプトアビジンを含んでいる、実施形態1の組み合わせ。
【0201】
4. 該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1種が、該第1のコンジュゲートメンバーおよび該第2のコンジュゲートメンバーを含んでいる融合ポリペプチドを含んでいる、実施形態1の組み合わせ。
【0202】
5. 該サイトカインが、IL-2、IL-4、またはIL-7からなる群から選択されたものである、実施形態1の組み合わせ。
【0203】
6. 該抗原が自己抗原である、実施形態1の組み合わせ。
【0204】
7. 該抗原がインスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、およびMHC/抗原複合体からなる群から選択されたものである、実施形態1の組み合わせ。
【0205】
8. 該抗原がグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、実施形態1の組み合わせ。
【0206】
9. 該コンジュゲートが別々の組成物中に含まれた形で提供される、実施形態1の組み合わせ。
【0207】
10. 該別々の組成物のうちの少なくとも1つが、さらに製薬上許容される担体、添加剤、または希釈剤を含んでいる、実施形態1の組み合わせ。
【0208】
11. 該コンジュゲートが単一の組成物で提供される、実施形態1の組み合わせ。
【0209】
12. 該単一の組成物がさらに製薬上許容される担体、添加剤、または希釈剤を含んでいる、実施形態8の組み合わせ。
【0210】
13. 該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、該第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと、該結合ペアの第1および第2のメンバーの間の結合を介して結合する、実施形態8の組み合わせ。
【0211】
14. Treg細胞を増殖させる方法であって、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート、
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート、
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート、
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート、
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート、
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)該結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲートとTreg細胞の集団を接触させることを含んでいる方法。
【0212】
15. 該Treg細胞が該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つのための受容体を含んでおり、該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが該第1のコンジュゲートメンバーと該受容体の間の結合を介して該Treg細胞と結合しており、該第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが該第1および第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して該Treg細胞と結合している、実施形態14の方法。
【0213】
16. 該接触がex vivoで行われる、実施形態14の方法。
【0214】
17. 該コンジュゲートのうちの少なくとも2つが該Treg細胞と実質的に同時に接触する、実施形態16の方法。
【0215】
18. 該コンジュゲートのうちの少なくとも2つが単一の組成物中に入った形で提供される、実施形態16の方法。
【0216】
19. 該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、該第4、第5、第6、または第7のコンジュゲートのうちの少なくとも1つと、該第1および第2の結合ペアメンバーの間の結合を介して結合する、実施形態18の方法。
【0217】
20. 該コンジュゲートのうちの少なくとも2つが該Treg細胞と順次接触する、実施形態16の方法。
【0218】
21. 該増殖させたTreg細胞を患者に投与することをさらに含んでいる、実施形態16の方法。
【0219】
22. 該接触が、該コンジュゲートを患者に投与することによってin vivoで行われる、実施形態14の方法。
【0220】
23. 該Treg細胞の集団が、CD4+細胞、CD25+細胞、およびFoxP3+細胞からなる群から選択されたTreg細胞を含む、実施形態14の方法。
【0221】
24. Treg細胞の該集団がCD4+CD25+FoxP3+細胞を含んでいる、実施形態23の方法。
【0222】
25. 該患者が自己免疫疾患に罹患しているかまたはその危険性のある患者である、実施形態21または22の方法。
【0223】
26. 該患者がI型糖尿病に罹患しているかまたはその危険性のある患者である、実施形態25の方法。
【0224】
27. 該患者が外来の移植片の移植を受けた患者である、実施形態21または22の方法。
【0225】
28. 該患者にラパマイシンを投与することをさらに含んでいる、実施形態21または22の方法。
【0226】
29. 該患者にTGF-βをディスプレイしている外来細胞を含んでいる組成物を投与することをさらに含んでいる、実施形態21または22の方法。
【0227】
30. 該患者にラパマイシンを投与することをさらに含んでいる、実施形態29の方法。
【0228】
31. 該外来細胞が、脾臓細胞、膵島組織の細胞、および骨髄細胞からなる群から選択されたものである、実施形態29の方法。
【0229】
32. 該外来細胞が:
(a) 結合ペアの第1のメンバーと、該細胞の表面に結合する分子とを含んでいる二機能性分子と外来細胞を接触させて、修飾された外来細胞を形成させ;
(b) TGF-βと該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと該修飾された外来細胞とを接触させて、TGF-βをディスプレイしている外来細胞を形成すること、
を含んでいる方法によって得られたものである、実施形態29の方法。
【0230】
33. 該結合ペアの第1のメンバーがアビジンまたはストレプトアビジンを含んでおり、該結合ペアの第2のメンバーがビオチンを含んでいる、実施形態14の方法。
【0231】
34. 該結合ペアの第1のメンバーがコア・ストレプトアビジンを含んでいる、実施形態14の方法。
【0232】
35. 該第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1つが、該第1のコンジュゲートメンバーおよび該第2のコンジュゲートメンバーを含んでいる融合ポリペプチドを含んだものである、実施形態14の方法。
【0233】
36. 該サイトカインがIL-2およびIL-4からなる群から選択されたものである、実施形態14の方法。
【0234】
37. 該抗原が自己抗原である、実施形態14の方法。
【0235】
38. 該抗原が、インスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、およびMHC/抗原複合体からなる群から選択されたものである、実施形態14の方法。
【0236】
39. 該抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、実施形態14の方法。
【0237】
40. 該Treg細胞を遊離のIL-2と接触させることをさらに含んでいる、実施形態14の方法。
【0238】
41. 該Treg細胞を遊離の抗CD3抗体または遊離の抗CD28抗体と接触させることをさらに含んでいる、実施形態14の方法。
【0239】
42. TGF-βをディスプレイしているパルスされた樹状細胞を得る方法であって:
(a)未熟な樹状細胞を抗原でパルスして、パルスされた樹状細胞を得て;
(b)該パルスされた樹状細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾されたパルス樹状細胞を形成させ;
(c)該修飾されたパルス樹状細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を形成させること、
を含んでいる方法。
【0240】
43. 該抗原が糖尿病誘発性の自己抗原である、実施形態42の方法。
【0241】
44. 該糖尿病誘発性自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、実施形態43の方法。
【0242】
45. 該糖尿病誘発性自己抗原が、GAD 65およびICA 512からなる群から選択されたものである、実施形態44の方法。
【0243】
46. 該未熟な樹状細胞をGAD 65、ICA 512、およびNRP-A7の各々でパルスすることを含んでいる、実施形態45の方法。
【0244】
47. 該抗原がコラーゲンである、実施形態42の方法。
【0245】
48. 該抗原がミエリン塩基性タンパク質である、実施形態42の方法。
【0246】
49. 該パルスされた樹状細胞を成熟へと駆動させることをさらに含んでいる、実施形態42の方法。
【0247】
50. 該駆動が該パルスされた樹状細胞を4-1BBLとともにインキュベートすることを含んでいる、実施形態49の方法。
【0248】
51. TGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスされた樹状細胞の集団。
【0249】
52. 実施形態42の方法で作製された、TGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスされた樹状細胞の集団。
【0250】
53. 患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者にTGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスされた樹状細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでいる、方法。
【0251】
54. 患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者に、実施形態42の方法によって作製した、TGF-βをディスプレイしている、パルスされた樹状細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでいる、方法。
【0252】
55. 該患者にラパマイシンを投与することをさらに含んでいる、実施形態54の方法。
【0253】
56. TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞または骨髄細胞を得る方法であって:
(a) 造血幹細胞または骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b) 該修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含んでいる方法。
【0254】
57. 該結合ペアの第1のメンバーがビオチンを含んでおり、該結合ペアの第2のメンバーがコア・ストレプトアビジンを含んでいる、実施形態56の方法。
【0255】
58. 患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者にTGF-βをディスプレイしている造血幹細胞またはTGF-βをディスプレイしている骨髄細胞を含んでいる組成物を投与することを含んでいる、方法。
【0256】
59. TGF-βをディスプレイしている該細胞が、
(a) 造血幹細胞または骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b) 該修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含んでいる方法によって作製される、実施形態58の方法。
【0257】
60. 該患者にラパマイシンを投与することをさらに含んでいる、実施形態58の方法。
【0258】
61. 該患者が、自己抗原、同種抗原、または異種抗原に対する免疫寛容の誘導;β細胞の再生;外来移植片の拒絶反応の予防;または、遺伝的造血系障害の治療を必要としている患者である、実施形態58の方法。
【0259】
62. TGF-βをディスプレイしている骨髄細胞の集団。
【0260】
63. TGF-βをディスプレイしている骨髄細胞の集団であって、
(a) 骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b) 該修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含んでいる方法によって作製された、集団。
【0261】
64. TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞の集団。
【0262】
65. TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞の集団であって、
(a) 造血幹細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b) 該修飾された細胞を、TGF-βおよび該結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含んでいる方法によって作製された、集団。
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1A】図1Aと1Bは、コア・ストレプトアビジンとマウスLIGHTタンパク質の細胞外ドメインを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号1)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)を示している。コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図1B】図1Aの続きである。
【図2A】図2Aと2Bは、ヒトCD80の細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号3)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号4)を示している。コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図2B】図2Aの続きである。
【図3A】図3Aと3Bは、マウス4-1BBLの細胞外ドメインとコア・ストレプトアビジンを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号5)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号6)を示している。コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図3B】図3Aの続きである。
【図4】図4は、コア・ストレプトアビジンとヒト4-1BBLの細胞外ドメインを含んでいる融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号7)を示している。コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図5A】図5Aと5Bは、コア・ストレプトアビジンとヒトB7.2の細胞外ドメインを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号8)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号9)を示している。
【図5B】図5Aの続きである。
【図6A】図6Aと6Bは、IL-2の活性フラグメントとコア・ストレプトアビジンを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号10)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号11)を示している。図6Bで、IL-2配列はイタリック体で書かれており、コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図6B】図6Aの続きである。
【図7A】図7Aと7Bは、コア・ストレプトアビジンと成熟TGF-βを含んでいる融合タンパク質の核酸配列(配列番号12)およびそれによってコードされるアミノ酸配列(配列番号13)を示している。図7Bで、TGF-β配列はイタリック体で書かれており、コア・ストレプトアビジンの配列は下線を付している。
【図7B】図7Aの続きである。
【図8】図8A-Dは、キメラCSA-4-1-BBL融合タンパク質の構成と特徴を示している。(A)マウス4-1BBLの細胞外ドメインはC末端でコア・ストレプトアビジン(SA)と結合させた形でPMT/BiP/V5-HisAベクター中にクローン化した。(B)精製したキメラ4-1BBLタンパク質(CSA-4-1BBL)のウエスタンブロット分析を、変性させた条件(レーン2)および天然の条件(レーン3)で行ったもの。4-1BBLは変性させた条件下では37kDaの単量体となっており、天然の条件下では>150kDaの四量体かそれより大きな構造をとっているものと思われる。(C)キメラ4-1BBL(CSA-4-1BBL)の4-1BB受容体への結合。BALB/cの休止状態もしくはConAで活性化させた脾臓細胞を、CSA-4-1BBL(200 ng/1 x 106個の細胞)と、もしくは等モル量の対照のCSAタンパク質(灰色、塗りつぶしたもの)とインキュベートし、CD4+T細胞およびCD8+T細胞上の4-1BBL(黒線)の結合を、抗4-1BBL抗体を用いてフローサイトメトリーで検出した。いくつかの活性化された細胞は抗CD-137とインキュベートして受容体をブロックした。(D)T細胞のCSA-4-1BBLでの刺激。ソートしたCD4+細胞を、抗CD3抗体(0.5μg/mL)と照射した脾臓細胞を用いて、可溶性CSA-4-1BBLまたは等モル量のCSAを示された濃度(ng/ml)で存在させて、刺激した。陽性対照として抗CD3抗体を5μg/mLで用いた。* p<0.05:お互いの比較と対照のCSAタンパク質との比較。C及びDについてのデータ(平均±SD)は、類似の結果の得られた3回の独立した実験の代表的なものである。
【図9】図9はTreg細胞の4-1BBLを用いたex vivoでの増殖を示す。図9は本発明でのCSA-4-1BBL融合タンパク質を、照射APC、抗CD3抗体、およびIL-2の存在下で用い、IL-2を用いて10〜14日間維持した、Treg細胞の長期ex vivo増殖を示している。CD4+CD25+Treg細胞を、ナイーブなBALB/cマウスの脾臓およびリンパ節から採取してソートし、6ウエルのプレート中で0.5μg/mLの可溶性CD3抗体、1 x 106個の照射した同系の脾臓細胞、および25 U/mlのIL-2の存在下で、1μg/mLの可溶性4-1BBLとともに、または可溶性4-1BBLを用いずに培養した。3〜4日毎に細胞を、IL-2を添加した新鮮な培地で分けて、1 x 106個/mLの濃度でプレートに蒔いた。(A)CD4+CD25+細胞集団のソーティング前および4-1BBL共存または不在で増殖後のフローサイトメトリー分析。(B)ナイーブTreg細胞のex vivoでの増殖倍数で、4-1BBL共存下での培養(□)または4-1BBL不在下での培養(■)を示す。最後の3回の独立した増殖実験結果を示している。矢印は抗CD3、IL-2、4-1BBL、およびAPCでの活性化(二次および三次活性化剤)を示している。CSA-4-1BBLが不在の条件下で得られた細胞を増殖が最小限であった対照として用いた。
【図10】図10は本発明に従ってex vivoで増殖させたTreg細胞上の4-1BB受容体の発現を示している。18〜24日間培養液中に維持したTeffおよびTreg細胞を、4-1BBに対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。黒の塗りつぶした細胞集団はアイソタイプの対照である。
【図11】図11は本発明に従ってex vivoで増殖させたTreg細胞による同種移植片の拒絶反応の予防を示している。ナイーブなBALB/cマウスにストレプトゾトシンを単回投与することによって糖尿病とし、そのマウスに同種であるC57BL/6の膵島を移植する1日前に、5〜8 x 106個の増殖させたTreg細胞を養子免疫細胞移植した(○)。対照のマウスはTreg細胞の移植を受けずに同種膵島の移植を受けた(黒塗りの丸)。拒絶反応は血糖値が2日間連続で300 mg/dLを超えたことで確認した。生存率はKaplan-Meier log-rank検定で比較した(p<0.05)。
【図12】図12は増殖させたTreg細胞はex vivoでTeff細胞のポリクローナルな増殖、または抗原特異的な増殖を抑制することを示す。(A)ポリクローナル(抗CD3抗体)抑制アッセイは、図9に示すとおりに、1μg/mLの4-1BBLの存在または不在の条件で、増殖させたTreg細胞(Exp-DP)を用いて行った。(B)同種抗原抑制アッセイ。ナイーブなBALB/cマウスから得た脾臓細胞と末梢リンパ節細胞(レスポンダー)を、ナイーブなC57BL/6マウスからの、照射した脾臓細胞(スティミュレーター)および増殖させたTreg細胞(Exp-DP)と、図に示した比率で、5日間共培養した。* p<0.05:お互いと対照を比較。データ(平均±SD)はAについては4回の独立した実験の代表的なもの、Bについては類似の結果の得られた2回の独立した実験の代表的なものである。
【図13】図13はTreg細胞増殖に対してのTCR、4-1BB、およびIL-2Rシグナル伝達の相乗的効果を示す。図13Aと13Bは本発明に従ってTreg細胞の増殖に及ぼすTCR、4-1BB、およびIL-2Rを介するシグナル1、2、および3を刺激する相乗的効果を示している。(A)ソートしたナイーブなDP Treg細胞を、0.5μg/mLの抗CD3抗体の共存下で、照射した同系の脾臓細胞と3日間共培養した。培養液には、示しているとおり、25 U/mLのIL-2および/もしくは1μg/mlの4-1BBLを添加した。(B)ソートしたナイーブなDP Treg細胞を、示されているように照射した脾臓細胞の共存または不在の状態で、可溶性抗CD3抗体、4-1BBL、およびIL-2とともに、またはそれらを伴わずに培養した。*p<0.05:お互いと対照を比較。データ(平均±SD)は類似の結果の得られた2回の独立した実験を代表するものである。(C)ソートしたDPおよびSP細胞を2日間、未処理で、またはIL-2および/もしくはAPCの存在下で培養した。細胞のいくらかはAPCおよびIL-2と2日間培養し、IL-2を洗って除去し、さらに2日間培養し、その細胞のいくらかを未処理のまま2日間培養し、さらにIL-2を添加して2日間培養した。4-1BBの発現(黒線)をアイソタイプの対照(灰色の塗りつぶした部分)と比較してフローサイトメトリーで分析した。
【図14】図14はTGF-β-CSA融合タンパク質がin vitroでの同種応答を阻害することを示している。ACI脾臓細胞をCFSEで標識し、等しい数の照射WF細胞と、TGF-βを含んだ状態(B)、またはTGF-βを含まない状態(A)で培養した。5日後に、細胞を集めCFSE希釈アッセイをフローサイトメトリーで行った。
【図15】図15は、4-1BB受容体を介してシグナル伝達が行われるとTreg細胞の抑制機能が阻害され、2種の細胞の双方の集団の増殖が駆動されることを示す。(A)CD4+CD25-(SP)Teff細胞、およびCD4+CD25+(DP)Treg細胞をナイーブなBALB/cマウスの脾臓および末梢リンパ節から得てソートし、単独で、または1:1の比で3日間培養した。培養液には、照射した脾臓細胞、抗CD3抗体(0.5μg/mL)、および示された濃度(μg/mL)の4-1BBLまたは等モル量の対照のSAタンパク質を添加した。(B)SP細胞およびDP細胞の増殖を評価するためのCFSEアッセイ。SP細胞またはDP細胞をCFSEで標識し、上述の抑制アッセイで用いた。分裂中の細胞のパーセンテージは各ヒストグラムに示している。*p<0.05:お互いを比較。データ(平均±SD)は類似の結果の得られた3回の独立した実験を代表するものである。
【図16】図16は、増殖させたTreg細胞の表現型の特性解析を示す。(A)Treg細胞の機能に重要な、細胞表面マーカーの発現について、4-1BBL共存下で、または4-1BBL不在条件下で増殖させた細胞について分析した。4-1BBL共存サンプルと4-1BBL不在サンプル間の相対比較の参照として、任意の垂線を挿入した。(B)増殖させたTreg細胞によるFoxP3の発現を示しているRT-PCR (M, マーカー;H=HPRT;F=FoxP3;SP=CD4+CD25-;DP=CD4+CD25+;Exp-DP=増殖させたTreg細胞)。(C)4-1BBL共存下(点線)、または4-1BBL不在下(実線)で増殖させたTreg細胞による細胞内FoxP3の発現レベルを示している細胞内染色。FoxP3のアイソタイプ対照を対照として用いた(塗りつぶした線)。データは類似の結果の得られた3回の独立した実験を代表するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート;
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート;
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート;
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート;
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート;
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート;
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
を含んでいる、組み合わせ。
【請求項2】
前記第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1種が、前記第1のコンジュゲートメンバーおよび前記第2のコンジュゲートメンバーを含んでいる融合ポリペプチドを含んでいる、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記サイトカインが、IL-2、IL-4、またはIL-7からなる群から選択されたものである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記抗原が自己抗原である、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記抗原がインスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、MHC/抗原複合体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記コンジュゲートが別々の組成物中に含まれた形で提供される、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記コンジュゲートが単一の組成物で提供される、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項8】
Treg細胞を増殖させる方法であって、Treg細胞の集団を、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート;
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート;
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート;
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート;
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート;
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート;
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
と接触させることを含む、前記方法。
【請求項9】
前記接触が(a)ex vivo、および/もしくは(b)in vivoで行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Treg細胞の集団が、CD4+細胞、CD25+細胞、およびFoxP3+細胞からなる群から選択されたTreg細胞を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
脾臓細胞、膵島組織の細胞、および骨髄細胞からなる群から選択されるTGF-βをディスプレイしている外来細胞を含んでいる組成物を患者に投与することをさらに含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原がインスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、MHC/抗原複合体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
TGF-βをディスプレイしているパルスされた樹状細胞を得る方法であって、
(a)未熟樹状細胞を抗原でパルスして、パルスされた樹状細胞を得て;
(b)該パルスされた樹状細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾されたパルス樹状細胞を形成させ;
(c)該修飾されたパルス樹状細胞を、TGF-βおよび結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を形成させること、
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記抗原が、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、および糖尿病性自己抗原からなる群から選択されたものであり、該糖尿病性自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群からさらに選択されたものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
TGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスされた樹状細胞の集団。
【請求項16】
患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者にTGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスさせた樹状細胞を含んでいる組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞または骨髄細胞を得る方法であって、
(a)造血幹細胞または骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b)該修飾された細胞を、TGF-βおよび結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含む、前記方法。
【請求項18】
患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者にTGF-βをディスプレイしている造血幹細胞またはTGF-βをディスプレイしている骨髄細胞を含んでいる組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
TGF-βをディスプレイしている細胞の集団であって、該細胞が骨髄細胞および造血幹細胞から選択される、前記集団。
【請求項20】
(a)骨髄細胞および造血幹細胞から選択される細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾された細胞を形成し;
および、
(b)該修飾された細胞を、TGF-βおよび結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含む方法によって作製された、請求項19に記載のTGF-βをディスプレイしている細胞の集団。
【請求項1】
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート;
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート;
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート;
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート;
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート;
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート;
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
を含んでいる、組み合わせ。
【請求項2】
前記第1、第2、または第3のコンジュゲートのうちの少なくとも1種が、前記第1のコンジュゲートメンバーおよび前記第2のコンジュゲートメンバーを含んでいる融合ポリペプチドを含んでいる、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記サイトカインが、IL-2、IL-4、またはIL-7からなる群から選択されたものである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記抗原が自己抗原である、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記抗原がインスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、MHC/抗原複合体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記コンジュゲートが別々の組成物中に含まれた形で提供される、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記コンジュゲートが単一の組成物で提供される、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項8】
Treg細胞を増殖させる方法であって、Treg細胞の集団を、
(A)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a)(i)4-1BBLポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第1のコンジュゲート;
(b)(i)CD80ポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第2のコンジュゲート;
および
(c)(i)TGF-βポリペプチドを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第1のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第3のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート;
ならびに、
(B)1つ以上のコンジュゲートであって、
(a')(i)抗CD3抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバーを含んでなる、第4のコンジュゲート;
(b')(i)サイトカインを含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第5のコンジュゲート;
(c')(i)抗原を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第6のコンジュゲート;
および
(d')(i)抗CD28抗体を含んでいる第1のコンジュゲートメンバー、および(ii)結合ペアの第2のメンバーを含んでいる第2のコンジュゲートメンバー、を含んでなる第7のコンジュゲート、
からなる群から選択された1つ以上のコンジュゲート、
と接触させることを含む、前記方法。
【請求項9】
前記接触が(a)ex vivo、および/もしくは(b)in vivoで行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Treg細胞の集団が、CD4+細胞、CD25+細胞、およびFoxP3+細胞からなる群から選択されたTreg細胞を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
脾臓細胞、膵島組織の細胞、および骨髄細胞からなる群から選択されるTGF-βをディスプレイしている外来細胞を含んでいる組成物を患者に投与することをさらに含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原がインスリン、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、MHC/抗原複合体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群から選択されたものである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
TGF-βをディスプレイしているパルスされた樹状細胞を得る方法であって、
(a)未熟樹状細胞を抗原でパルスして、パルスされた樹状細胞を得て;
(b)該パルスされた樹状細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾されたパルス樹状細胞を形成させ;
(c)該修飾されたパルス樹状細胞を、TGF-βおよび結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしているパルス樹状細胞を形成させること、
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記抗原が、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、および糖尿病性自己抗原からなる群から選択されたものであり、該糖尿病性自己抗原が、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、膵島細胞自己抗原(ICA)、および自己抗原NRP-A7からなる群からさらに選択されたものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
TGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスされた樹状細胞の集団。
【請求項16】
患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者にTGF-βをディスプレイしている、抗原をパルスさせた樹状細胞を含んでいる組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
TGF-βをディスプレイしている造血幹細胞または骨髄細胞を得る方法であって、
(a)造血幹細胞または骨髄細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて修飾された細胞を形成し;
(b)該修飾された細胞を、TGF-βおよび結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含む、前記方法。
【請求項18】
患者体内でTreg細胞を増殖させる方法であって、該患者にTGF-βをディスプレイしている造血幹細胞またはTGF-βをディスプレイしている骨髄細胞を含んでいる組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
TGF-βをディスプレイしている細胞の集団であって、該細胞が骨髄細胞および造血幹細胞から選択される、前記集団。
【請求項20】
(a)骨髄細胞および造血幹細胞から選択される細胞を、結合ペアの第1のメンバーおよび該細胞の表面に結合する分子を含んでいる二機能性分子と接触させて、修飾された細胞を形成し;
および、
(b)該修飾された細胞を、TGF-βおよび結合ペアの第2のメンバーを含んでいるコンジュゲートと接触させて、TGF-βをディスプレイしている細胞を形成させること、
を含む方法によって作製された、請求項19に記載のTGF-βをディスプレイしている細胞の集団。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−521409(P2009−521409A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544502(P2008−544502)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/046664
【国際公開番号】WO2007/067683
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508170379)ユニバーシティー オブ ルーイビル リサーチ ファンデーション,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/046664
【国際公開番号】WO2007/067683
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508170379)ユニバーシティー オブ ルーイビル リサーチ ファンデーション,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】
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