説明

制御盤

【課題】電線束の固定に使用するクリートを押し込み形クリートにすることにより、組立配線の作業性の向上を図った制御盤にする。
【解決手段】本発明の制御盤は、本体筐体1内に固定された複数の制御装置ユニット2と、複数の外部入出力用の端子台4と、複数の制御装置ユニット2と複数の外部入出力用の端子台4のそれぞれを配線する電線を束ねる結束バンド7と、結束バンド7を被固定部材9に固定するクリート8を備え、クリート8が被固定部材9の角穴14に合う回転防止壁11が設けられ、クリート8を被固定部材9に押し込むことにより開いて固定される爪部10が設け、強度を維持しつつ板厚に左右されない押し込み式構造のクリートにすることで、制御盤の組立配線の作業性が向上するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線束の固定に使用するクリートを押し込み形クリートにすることにより、組立配線の作業性の向上を図った制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御盤は、〔特許文献1〕に記載のように、例えば計器,表示器,表示灯,制御スイッチおよび制御リレー等の監視,制御用器具が表面に装着された表面パネル,電磁リレー,タイマー及びラッチリレー等の監視,制御補助用器具が裏面に装着された側面パネル,電磁リレー,タイマー及びノーヒューズ遮断器等の保護用器具が裏面に装着された裏面パネルで構成されている。
【0003】
このように構成された従来の制御盤においては、各器具間は配線されており、特に同経路の電線は回路区分ごとに結束バンドで束ねられ、クリートにより部材に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−351113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の制御盤の組立配線作業では、束線の固定はクリート及び結束バンドが使用されている。
【0006】
このような従来の電線束の固定方法では、一般的に、部材の裏側にフランジナット又は角ナットを押し当て、部材の表側にクリートを押し当ててナベネジを用いて締結した後に、結束バンド穴へ結束バンドを通し、電線束を束ねた後、フックボックスへ引き通して、固定する方法が取られている。この場合、部材に予めナット類を溶接しておく、部材にネジ穴を設けておくこともある。
【0007】
クリートは、ネジ止めであるので、被固定部材の厚みが取り付けに影響することは少なく、ネジで取り付けているので、強度的に強いという利点がある。その反面、ネジを用いて締結するため、部品点数が多く、ネジの取り付けの際にはクリート自体の回転を防止するために指で保持する必要があり、多くの工数を要すという問題点がある。
【0008】
工数を低減して作業性を向上するためには、ネジを使用しないワンタッチな取り付け方法が求められ、実用化されているものには、押し込み式固定具が挙げられる。しかし、実用されている押し込み式固定具は、特定の厚みの被固定部材にしか対応しておらず、厚みが薄いと回転してしまい、強度的にも弱いという問題点がある。
【0009】
本発明の目的は、電線束固定を含む組立配線作業の作業性向上を図った制御盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の制御盤は、クリートに被固定部材の角穴に合う回転防止壁を設け、回転を防止するようにし、クリートを被固定部材に押し込むことにより開いて固定される爪部を設けて固定し、結束バンド穴へ結束バンドを通して配線を固定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被固定部材への電線束の固定をワンタッチで行え、制御盤組立配線の作業性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例である制御盤の構成を示す斜視図である。
【図2】制御盤のクリート被固定部材へのクリート固定を説明するための斜視図である。
【図3】電線束固定用クリートの平面図である。
【図4】図3の矢視A−A断面図である。
【図5】図3の矢視B−B断面図である。
【図6】電線束固定用クリートを下から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例を図1から図6により説明する。図1は、本実施例の制御盤の構成を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本体筐体1は、平面状の上面板20a及び下面板20b、上面板20aと下面板20bとの間の背面側に設けられた背面板21、上面板20aと下面板20bの前方側の隅部に設置された支柱22a,22b、背面板21より前方に設けられた中央仕切り板3、支柱22aと背面板21との間の側面に縦方向に2列設けられた取り付け金具5及びクリート8の被固定部材9、支柱22bと背面板21との間の横方向に複数段設けられた横枠23で構成されている。図示はしていないが、側面側には、側面板が、正面側には、正面扉が設けられる。
【0015】
中央仕切り板3には、例えばネジ留めにより複数段の制御装置ユニット2a,2b,2c,2dが装着されている。取り付け金具5には、例えば複数個の外部入出力用の端子台4a,4b,4cが設置され、被固定部材9には、複数個のクリート8a,8b,8c,8dが固定されている。
【0016】
各制御装置ユニット2a,2b,2c,2dにそれぞれ設置されている端子台は、他の制御ユニットの端子台及び外部入出力用の端子台4a,4b,4cと相互に電線で接続されて配線されている。このため、複数の電線が、結束バンド7a,7b,7c,7dを用いて電線束6として束ねられている。電線束6は、クリート8a,8b,8c,8dに固定され、クリート8a,8b,8c,8dは、被固定部材9に固定されている。
【0017】
クリート8及び被固定部材9は、図2に示すように構成されている。図2に示すように、被固定部材9には角穴14が設けられ、角穴14にクリート8に設けられた爪部10が挿入される。
【0018】
クリート8は、図3から図6に示すように、本体の上部側に設けられる結束バンド7を通すための結束バンド穴12と、下部側に設けられる回転防止壁11及び爪部10で構成されている。結束バンド穴12は、上向きの斜め方向に設けられ、長方形状に形成されている。結束バンド穴12の上向きの斜め方向の側には、爪部10が設けられている。
【0019】
結束バンド穴12には、結束バンド7を通した際に左右へのすべりを防止するためのスリット13を1mm間隔で形成している。回転防止壁11は、クリート8本体の下面に2箇所設けられ、角穴14に挿入されたとき、2箇所の突起状の壁でクリート8が回転しないような位置に設けられている。回転防止壁11の外側で下方側に、2箇所のU字形状の爪部10が設けられ、爪部10は厚さが2mmで形成されているので弾性を有し、角穴14に押し込む際に内側へ曲がり、角穴14を通り抜けたときに元の形状に広がって被固定部材9に固定されるようになっている。
【0020】
本実施例の制御盤の組立配線作業は次のようにして行われる。まず、制御盤外の別の場所で、各制御装置ユニット2a,2b,2c,2dの組立配線作業をそれぞれ行う。次に、各制御装置ユニット2a,2b,2c,2dを、本体筐体1の中央仕切り板3に組込み、中央仕切り板3にネジ留めする。
【0021】
取り付け金具5を本体筐体1の側面側にネジ留めし、取り付け金具5の指定された位置に端子台4a,4b,4cを取り付ける。クリート8を固定するための被固定部材9を本体筐体1の側面側にネジ留めする。
【0022】
被固定部材9にクリート8を取り付ける作業及び電線束の固定作業について図2を用いて説明する。クリート8の取り付け方向を決め、クリートの爪部10を被固定部材9に開けた角穴14に当て、爪部10が完全に角穴14を通り抜け、クリート8の裏面が被固定部材9に接するまで押し込む。クリート8の裏面が被固定部材9に接するまで押し込むと、爪部10が弾性により開くため、クリート8が被固定部材9に締結される。
【0023】
その後、各クリート8上に配線6を行い、結束バンド穴12へ結束バンド7aを通し、電線束を束ねた後、フックボックスへ引き通して固定する。
【0024】
このように、制御盤の組立配線における電線束の固定を、一定範囲内の被固定材の厚みにおいては被固定材の厚みに左右されることなくワンタッチで、強度も損なわずに行うことができる。
【0025】
このように、本実施例によれば、クリートをネジ留めすることなく、押し込むだけで、被固定部材に締結でき、クリートの取り付け作業を容易に行えるため、大幅な作業時間の短縮となる。また、クリートが回転せず、強度も保てることから、品質を維持したまま工数低減が可能となる。又、強度を維持しつつ板厚に左右されない押し込み式構造のクリートにすることで、制御盤の組立配線の作業性が向上できる。
【符号の説明】
【0026】
1 本体筐体
2a,2b,2c,2d 制御装置ユニット
3 中央仕切り板
4a,4b,4c 端子台
5 取り付け金具
6 電線束
7a,7b,7c,7d 結束バンド
8a,8b,8c,8d クリート
9 被固定部材
10 爪部
11 回転防止壁
12 結束バンド穴
13 スリット
14 角穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリートに被固定部材の角穴に合う回転防止壁を設け、回転を防止するようにし、クリートを被固定部材に押し込むことにより開いて固定される爪部を設けて固定し、結束バンド穴へ結束バンドを通して配線を固定する制御盤。
【請求項2】
本体筐体内に固定された複数の制御装置ユニットと、複数の外部入出力用の端子台と、前記複数の制御装置ユニットと複数の外部入出力用の端子台のそれぞれを配線する電線を束ねる結束バンドと、該結束バンドを被固定部材に固定するクリートを備え、該クリートが前記被固定部材の角穴に合う回転防止壁が設けられ、クリートを被固定部材に押し込むことにより開いて固定される爪部が設けられている制御盤。
【請求項3】
前記クリートに設けられた結束バンド穴内に複数のスリットが形成されている請求項1又は2に記載の制御盤。
【請求項4】
前記爪部は、前記回転防止壁の外側であって、回転防止壁より下部側に2つのU字形状で形成されている請求項1又は2に記載の制御盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−24318(P2011−24318A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166268(P2009−166268)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】