説明

制御装置

【課題】圧縮機の容量制御を行うことで、蒸発器の出口空気温度及び高圧側冷媒圧力をそれぞれの目的に応じて的確に制御することが可能である車両用空調装置として好適な制御装置を提供する。
【解決手段】外部からの制御信号により任意に容量を可変として冷媒を圧送するべく作動する可変容量式圧縮機4と、この圧縮機4から吐出する高温高圧の冷媒を冷却する放熱器6と、冷媒の気化熱を利用して空気を冷却するエバポレータ10を具備した蒸気圧縮式冷凍サイクルと、この蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧縮機4の容量制御信号を演算する容量制御信号演算手段を複数備え、これらの容量制御信号演算手段41,51により演算された複数の容量制御信号の中で、圧縮機4からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により圧縮機4を制御して、蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に係り、とくに、車両用空調装置として用いるのに好適な制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した制御装置としては、例えば、外部制御信号により容量可変としたコンプレッサを有する蒸気圧縮式冷凍サイクルを備えた車両用空調装置がある。
この車両用空調装置では、制御対象をコンプレッサの容量制御としていて、容量制御信号演算手段によりコンプレッサの容量制御信号を演算し、この容量制御信号によりコンプレッサを制御して、制御目的、例えば、蒸気圧縮式冷凍サイクルを構成するエバポレータの出口空気温度を制御するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平3−63441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の車両用空調装置(制御装置)において、コンプレッサの容量制御を行うことでエバポレータの出口空気温度を制御することができるものの、すなわち、一つの制御対象を制御することで一つの目的に応じた制御を実現することができるものの、この制御系では、複数の目的に対応するような制御を行うことはできない。
この際、ある条件でのみ、複数の制御目的のうちの一つの制御目的を実現するように成すことは可能であるが、この手法では、目的を達成するうえで必要となる条件選定及び判定条件等を導き出すための工数が多大なものになってしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、制御系としては比較的簡略でありながら、複数の制御対象出力をフィードバックして、これらの出力により互いに異なる複数の制御対象出力を演算し、それぞれの制御目的を確実に実現することができ、車両用空調装置とした場合には、例えば、圧縮機の容量制御を行うことで、蒸発器の出口空気温度及び高圧側冷媒圧力をそれぞれの目的に応じて的確に制御することが可能である制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、制御対象の出力目標値を設定する制御対象出力目標値設定手段と、前記制御対象の出力値を検知又は推定する制御対象出力検知手段と、前記制御対象出力目標値設定手段で設定された前記制御対象の出力目標値と、前記制御対象出力検知手段で検知又は推定された前記制御対象の出力値とを参照して、該制御対象への制御入力を演算する制御入力演算手段と、この制御入力演算手段で演算された制御入力に基づいて前記制御対象を操作して、前記制御対象の出力値を目標値とするべく制御する制御対象制御手段を備えた制御装置において、前記制御対象を制御するのに必要な前記制御入力演算手段を複数設けると共に、これらの制御入力演算手段による各演算に必要な前記制御対象出力目標値設定手段及び前記制御対象出力検知手段を複数設け、前記複数の制御入力演算手段により演算されて得た複数の制御入力の中で最小のものを前記制御対象制御手段への制御入力として前記制御対象の出力値を制御する構成としたことを特徴としており、この制御装置の構成を前述の従来の課題を解決するための手段としている。
【0006】
本発明の請求項2に係る制御装置は、前記制御対象の出力値が出力目標値に到達するための過渡状態における目標応答を算出して指定する制御対象出力目標応答算出手段と、この制御対象出力目標応答算出手段により算出された制御対象出力目標応答値と、前記制御対象出力検知手段により検知又は推定された制御対象出力値との偏差を参照して、制御入力を演算する制御対象出力フィードバック制御入力演算手段と、前記制御対象出力目標応答算出手段により算出される目標応答における過渡特性を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を演算する制御対象フィードフォワード制御入力演算手段を備え、前記制御対象目標値設定手段により前記制御対象の出力目標値が設定されると共に、前記制御対象出力目標応答算出手段により制御対象出力目標応答値が算出され、前記制御対象出力目標応答値と、前記制御対象出力検知手段により検知又は推定される制御対象出力値とを参照して、前記制御対象出力フィードバック制御入力演算手段により、フィードバック制御入力が演算され、前記制御対象フィードフォワード制御入力演算手段により、フィードフォワード制御入力が演算され、前記制御入力演算手段において、前記フィードバック制御入力及びフィードフォワード制御入力との和を参照して、制御入力が演算される構成としている。
【0007】
一方、本発明の請求項3に係る発明は、外部からの制御信号により任意に容量を可変として冷媒を圧送するべく作動する外部可変容量圧縮機と、この外部可変容量圧縮機から吐出する高温高圧の冷媒を冷却する放熱器と、前記冷媒の気化熱を利用して車室内に吹出す空気を冷却する蒸発器を具備した蒸気圧縮式冷凍サイクルと、この蒸気圧縮式冷凍サイクルにおける前記外部可変容量圧縮機の容量制御信号を演算する容量制御信号演算手段を備え、この容量制御信号演算手段により演算された前記外部可変容量圧縮機の容量制御信号により該外部可変容量圧縮機を制御して、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御する車両用空調装置において、前記容量制御信号演算手段を複数設け、これらの容量制御信号演算手段により演算された複数の容量制御信号の中で、前記外部可変容量圧縮機からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により前記外部可変容量圧縮機を制御して、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御するものとした構成としたことを特徴としており、この車両用空調装置の構成を前述の従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
本発明の請求項4に係る車両用空調装置は、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの高圧側の冷媒圧力を検知する高圧側冷媒圧力検知手段を備え、前記容量制御信号演算手段における演算の制御入力として、少なくとも前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知される高圧側冷媒圧力を含んでいる構成とし、本発明の請求項5に係る車両用空調装置は、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの蒸発器の出口空気温度又は蒸発器の温度を検知する蒸発器温度検知手段を備え、前記容量制御信号演算手段における演算の制御入力として、少なくとも前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知される高圧側冷媒圧力及び前記蒸発器温度検知手段により検知される蒸発器の出口空気温度を含んでいる構成としている。
【0009】
本発明の請求項6に係る車両用空調装置は、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの蒸発器の目標温度を設定する蒸発器目標温度設定手段と、前記蒸発器の温度を目標温度に制御するのに必要となる容量制御信号を演算する蒸発器温度用容量制御信号演算手段と、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの高圧側冷媒圧力の目標値を設定する高圧側冷媒圧力目標値設定手段と、前記高圧側冷媒圧力を目標値に制御するのに必要となる容量制御信号を演算する高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段を備え、前記蒸発器温度用容量制御信号演算手段において、前記蒸発器目標温度設定手段により設定される蒸発器の目標温度と、前記蒸発器温度検知手段により検知される蒸発器の出口空気温度とを参照して、前記蒸発器の温度制御用容量制御信号が演算されると共に、前記高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段において、前記高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定される冷凍サイクルの高圧側冷媒圧力目標値と、前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知される高圧側冷媒圧力とを参照して、前記高圧側冷媒圧力の制御用容量制御信号が演算され、前記蒸発器の温度制御用容量制御信号と、前記高圧側冷媒圧力の制御用容量制御信号とを比較して、前記外部可変容量圧縮機からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により前記外部可変容量圧縮機を制御し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御するものとした構成としている。
【0010】
本発明の請求項7に係る車両用空調装置は、前記蒸発器温度検知手段により検知された蒸発器の出口空気温度又は蒸発器の温度が蒸発器目標温度に到達するための過渡状態における目標応答を算出し指定する蒸発器温度目標応答算出手段と、その目標応答における蒸発器温度目標応答値と前記蒸発器の出口空気温度又は蒸発器の温度との偏差を演算する蒸発器温度フィードバック制御入力演算手段と、前記蒸発温度目標応答算出手段により算出される目標応答における過渡特性を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を予測する蒸発器温度フィードフォワード制御入力予測手段と、前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知された高圧側冷媒圧力と、前記高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定された高圧側冷媒圧力目標値とを参照して演算する高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力演算手段と、前記高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定された高圧側冷媒圧力目標値を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を予測する高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力予測手段を備え、前記蒸発器温度フィードバック制御入力演算手段において、前記蒸発器温度目標応答算出手段により算出される蒸発器温度目標応答値と、前記蒸発器温度検知手段により検知される蒸発器出口空気温度との偏差を参照して、蒸発器温度フィードバック制御入力が演算されると共に、前記蒸発器温度フィードフォワード制御入力予測手段において、蒸発器温度フィードフォワード制御入力が演算され、前記蒸発器温度用容量制御信号演算手段において、前記蒸発器温度フィードバック制御入力と、蒸発器温度フィードフォワード制御入力との和を参照して、前記蒸発器温度の容量制御信号が演算され、一方、前記高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力演算手段において、前記高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定される高圧側冷媒圧力目標値と、前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知される高圧側冷媒圧力とを参照して、高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力が演算されると共に、前記高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力予測手段において、高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力が演算され、前記高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段において、前記高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力と、高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力との和を参照して、高圧側冷媒圧力の容量制御信号が演算され、前記蒸発器の温度制御用容量制御信号と、前記高圧側冷媒圧力の制御用容量制御信号とを比較して、前記外部可変容量圧縮機からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により前記外部可変容量圧縮機を制御し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御するものとした構成としている。
【0011】
本発明の請求項8に係る車両用空調装置は、前記外部可変容量圧縮機のトルクを推定又は検知するトルク推定手段と、前記外部可変容量圧縮機のトルクの目標値を設定するトルク目標値設定手段と、前記外部可変容量圧縮機のトルクを目標値に制御するのに必要となる容量制御信号を演算するトルク用容量制御信号演算手段を備え、前記トルク用容量制御信号演算手段において、前記トルク目標値設定手段により設定されるトルク目標値に基づいて、前記外部可変容量圧縮機のトルクを目標値に制御するのに必要なトルク用容量制御信号が演算され、前記蒸発器の温度制御用容量制御信号と、前記高圧側冷媒圧力の制御用容量制御信号と、前記トルク用容量制御信号とを比較して、前記外部可変容量圧縮機からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により前記外部可変容量圧縮機を制御し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御するものとした構成としている。
【0012】
本発明の請求項9に係る車両用空調装置において、前記トルク目標値設定手段は、車両からの圧縮機トルク指令値を参照して、前記外部可変容量圧縮機のトルクの目標値を設定する構成としている。
本発明の請求項10に係る車両用空調装置において、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルは、前記放熱器から吐出する高圧冷媒を断熱膨張させる膨張機構を具備し、前記高圧側冷媒圧力検知手段は、前記外部可変容量圧縮機から前記膨張機構までの冷媒内圧力を検知する構成としている。
【0013】
本発明の請求項11に係る車両用空調装置は、複数の各種容量制御信号演算手段において、外気温度に相関のある物理量、蒸発器への送風量に相関のある物理量、車両の速度に相関のある物理量、車両原動機の回転数に相関のある物理量の少なくとも一つを検知して、容量制御信号演算の入力とすることとした構成としている。
本発明の請求項12に係る車両用空調装置は、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒として二酸化炭素を用いた構成としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1及び2に係る制御装置は、上記した構成としているので、比較的簡略な制御系としつつ、複数の制御対象出力をフィードバックして、それぞれの制御目的を確実に実現することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
一方、本発明の請求項3〜7に係る車両用空調装置は、上記した構成としているので、外部可変容量圧縮機の容量制御を行うことで、蒸発器の出口空気温度及び高圧側冷媒圧力をそれぞれの目的に応じて的確に制御することが可能であり、その結果、快適性の向上及びサイクル保護の両立を実現できるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0015】
本発明の請求項8,9に係る車両用空調装置は、上記した構成としたから、外部可変容量圧縮機の容量制御を行うことで、蒸発器の出口空気温度,高圧側冷媒圧力及び圧縮機トルクをそれぞれの目的に応じて的確に制御することが可能であり、その結果、快適性の向上及びサイクル保護の両立を実現できるという非常に優れた効果がもたらされる。
本発明の請求項10に係る車両用空調装置は、上記した構成としたから、より正確な高圧側冷媒圧力を検出することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0016】
本発明の請求項11に係る車両用空調装置は、上記した構成としたから、蒸発器の出口空気温度,高圧側冷媒圧力及び圧縮機トルクの制御をより高精度に実現できるという非常に優れた効果がもたらされる。
本発明の請求項12に係る車両用空調装置は、上記した構成としたから、環境に好適な冷凍回路とすることができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本発明の一実施形態による制御装置を示しており、この実施形態では、本発明の制御装置が車両用空調装置である場合を例に挙げて説明する。
図1は、自然系冷媒である二酸化炭素を用いた蒸気圧縮式冷凍回路を有する車両用空調装置の機械的な構成部分を示している。
【0018】
この車両用空調装置の冷凍回路は、クラッチ制御により容量が可変制御可能な可変容量式圧縮機4と、この可変容量式圧縮機4から吐出する高圧冷媒の圧力を検出する高圧側冷媒圧力検出手段5と、可変容量式圧縮機4からの高圧冷媒及び外部空気の熱交換により冷媒を冷却する放熱器6と、放熱器冷却ファン7と、高温部8a及び低温部8bを具備して放熱器6から吐出する高圧冷媒が高温部8aを通過する内部熱交換器8と、この内部熱交換器8を通して送られてくる高圧冷媒を断熱膨張させる膨張機構9と、この膨張機構9から送られる冷媒により後述するように空調の空気を冷却するエバポレータ(蒸発器)10と、このエバポレータ10から吐出する冷媒を気液分離して液冷媒を貯留すると共に気冷媒を内部熱交換器8の低温部8bを通して可変容量式圧縮機4に戻す気液分離器11を備えており、可変容量式圧縮機4は、プーリ2,2及びベルト3を介して伝達される車両のエンジン1の出力によって作動するようになっている。
【0019】
なお、可変容量式圧縮機4の駆動源には、電動モータを用いることができる。また、膨張機構9として、電子式膨張弁や、温度式膨張弁や、差圧式膨張弁を用いることができる。
上記冷凍回路のエバポレータ10は、車室内へ空調の空気を送る通風ダクト14内に配置してあって、この通風ダクト14の入口側には、内気導入口15i側からの空気導入量と外気導入口15o側からの空気導入量との割合を制御する内外気切替ダンパ16が設けてあり、この内外気切替ダンパ16は、インテークダンパアクチュエータ13により作動が制御されるものとなっている。この通風ダクト14において、導入された空気は、ブロワファン17によって吸引され、下流側のエバポレータ10に向けて圧送される。
【0020】
また、エバポレータ10の出口近傍には、エバポレータ出口空気温度センサ(蒸発器温度検知手段)12が設けてあり、エバポレータ10の下流側(図示右側)には、加熱器としてのヒータコア19が設けてある。このヒータコア19の近傍には、エアミックスダンパアクチュエータ18により開度を制御可能なエアミックスダンパ20が設けてあり、ヒータコア19を通過する空気とバイパスする空気との割合を調節して、ダンパ21,22,23によりそれぞれ開度を制御可能な吹出口24,25,26から車室内に吹き出させるようにしている。
【0021】
車室内に配置される車両用空調装置のメインコントローラ31には、外気温度センサ32からの外気温度信号と、日射センサ33からの日射量信号と、車室内温度センサ34からの車内温度信号と、高圧側圧力検出手段5の高圧側冷媒圧力信号と、蒸発器出口空気温度センサ12からの蒸発器出口空気温度信号がそれぞれ入力され、このメインコントローラ31からは、可変容量式圧縮機4の駆動を制御するクラッチコントローラ35へのクラッチ制御信号39と、可変容量式圧縮機4への圧縮機容量制御信号36と、エアミックスダンパアクチュエータ18へのエアミックスダンパ制御信号37と、インテークダンパアクチュエータ13への内外気切替ダンパ制御信号38がそれぞれ出力されるようになっている。
【0022】
次に、上記した車両用空調装置のメインコントローラ31により実行される制御について説明する。
本実施形態の車両用空調装置のメインコントローラ31では、図2に示すように、エバポレータ出口空気温度用容量制御信号演算手段41及び高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段51により、エバポレータ出口空気温度用容量制御信号及び高圧側冷媒圧力用容量制御信号をそれぞれ算出し、これらのエバポレータ出口空気温度用容量制御信号及び高圧側冷媒圧力用容量制御信号をコンプレッサ容量制御信号演算手段61で比較して、可変容量式圧縮機4からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号によりこの可変容量式圧縮機4を制御するものとなっている。
【0023】
詳述すれば、図3に示すように、エバポレータ出口空気温度用容量制御信号演算手段41は、エバポレータ出口空気温度センサ12により検知されたエバポレータ10の出口空気温度がエバポレータ10目標温度に到達するための過渡状態における目標応答を算出し指定するエバポレータ温度目標応答算出手段(蒸発器温度目標応答算出手段)42と、その目標応答におけるエバポレータ温度目標応答値とエバポレータ10の出口空気温度との偏差を演算するエバポレータ出口空気温度フィードバック制御入力演算手段(蒸発器温度フィードバック制御入力演算手段)43と、このエバポレータ温度目標応答算出手段42により算出される目標応答における過渡特性を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を予測するエバポレータ出口空気温度フィードフォワード制御入力予測手段(蒸発器温度フィードフォワード制御入力予測手段)44を備えている。
【0024】
エバポレータ出口空気温度応答目標値制御手段42において、エバポレータ出口空気温度応答目標値(Tef)は、エバポレータ出口空気温度目標値(Tet)を参照して、以下の演算式(1)により算出される。
Tef=(TL1×Tet+Tc1×Tef(前回値))/(Tc1+TL1) 演算式(1)
但し、TL1は制御周期であり、Tc1はエバポレータ出口空気温度応答性指定値である。
【0025】
また、エバポレータ出口空気温度フィードフォワード制御入力予測手段44において、エバポレータ出口空気温度フィードフォワード目標値(Tetc)と、外気温度(Tamb)と、車速(VS)と、ブロワ電圧(BLV)と、エンジン回転数(Ne)とを参照して、以下の演算式(2)により、エバポレータ出口空気温度フィードフォワード制御入力(Icff_te)を予測する。
【0026】
Icffte=f(Tetc,Tamb,Ne,VS,BLV) 演算式(2)
ここで、エバポレータ出口空気温度フィードフォワード目標値(Tetc)は、エバポレータ出口空気温度目標値(Tet)を参照して、以下の演算式(3)により算出されるものとする。
Tetc=(TL2×Tet+Tcte×Tetc(前回値))/(Tcte+TL2) 演算式(3)
但し、TL2は制御周期であり、Tcteはエバポレータ出口空気温度フィードフォワード指定値である。
【0027】
さらに、エバポレータ出口空気温度フィードバック制御入力演算手段43において、エバポレータ出口空気温度フィードバック制御入力値(Icfb_te)は、エバポレータ出口空気温度応答目標値(Tef)と、エバポレータ出口空気温度(Teva)を参照して、以下のような比例演算及び積分演算を行う。
Icfb_te=Pte(比例演算値)+Ite(積分演算値) 演算式(4)
Pte=Kp1×(Teva−Tef) 演算式(5)
Ite=Ite_n-1+Kp1/Ti1×(Teva−Tef) 演算式(6)
但し、Kp1は比例ゲインであり、Ti1は積分時間であり、Ite_n-1はIteの前回演算値である。
【0028】
そして、このエバポレータ出口空気温度用容量制御信号演算手段41では、上記した演算結果に基づいて、以下の演算式(7)によりエバポレータ出口空気温度用容量制御信号(Ic_te)を算出する。
Ic_te=Icff_te+Icfb_te 演算式(7)
一方、高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段51は、高圧側冷媒圧力検知手段5により検知された高圧側冷媒圧力と、予め高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定された高圧側冷媒圧力目標値とを参照して演算する高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力演算手段53と、高圧側冷媒圧力目標値を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を予測する高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力予測手段52を備えている。
【0029】
この高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力予測手段52において、高圧側冷媒圧力目標値(Pdt)と、外気温度(Tamb)と、エンジン回転数(Ne)と、車速(VS)と、ブロワ電圧(BLV)を参照して、以下の演算式(8)により、フィードフォワード制御入力(Icff_pd)を予測する。
Icff_pd=f(Pdt,Tamb,Ne,VS,BLV) 演算式(8)
また、高圧側冷媒圧力用フィードバック制御入力演算手段53において、高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力値(Icfb_pd)は、高圧側冷媒圧力目標値(Pdt)と、高圧側冷媒圧力(Pd)とを参照して、以下のような比例演算及び積分演算を行う。
【0030】
Icfb_pd=比例演算値 (Ppd)+積分演算値 (Ipd) 演算式(9)
この場合、比例演算値(Ppd)及び積分演算値(Ipd)については、以下のような演算を行う。
Ppd=Kp2×(Pdt−Pd) 演算式(10)
Ipd=Ipd_n-1+Kp2/Ti2×(Pdt−Pd) 演算式(11)
但し、Kp2は比例ゲインであり、Ti2は積分時間であり、Ipd_n-1はIpd(積分演算値)の前回演算値である。
【0031】
そして、この高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段51では、上記した演算結果に基づいて、以下の演算式(12)により、高圧側冷媒圧力用容量制御信号(Ic_pd)を算出する。
Ic_pd=Icff_pd+Icfb_pd 演算式(12)
コンプレッサ容量制御信号演算手段61では、図4に示すように、上記のようにして算出されたエバポレータ出口空気温度用容量制御信号(Ic_te)と高圧側冷媒圧力用容量制御信号(Ic_pd)とを参照し、以下の要領により、コンプレッサ容量制御信号(Ict)を比較演算する。
【0032】
Ic_te<Ic_pdならば、Ict=Ic_teとし、一方、Ic_te>Ic_pdならば、Ict=Ic_pdとして、これで算出されたコンプレッサ容量制御信号(Ict)をメインコントローラ31の容量制御コントローラ部31aへの出力とする。
ここで、クラッチを含む場合において、上記コンプレッサ容量制御信号(Ict)を参照して、メインコントローラ31のクラッチコントローラ部31bへの出力を制御する。
【0033】
次に、上記した制御演算値に基づいて行うコンプレッサの容量制御要領を図5に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS1において、外気温度(Tamb)と、車速(VS)と、ブロワ電圧(BLV)と、エンジン回転数(Ne)と、エバポレータ出口空気温度(Teva)と、高圧側冷媒圧力(Pd)を読み込む。
【0034】
次いで、ステップS2及びステップS3において、エバポレータ出口空気温度目標値(Tet)及び高圧側冷媒圧力(Pdt)の設定をそれぞれ行った後、ステップS4において、
エバポレータ出口空気温度応答目標値制御手段42によるエバポレータ出口空気温度応答目標値(Tef)の算出を行う。
続いて、ステップS5において、エバポレータ出口空気温度フィードフォワード制御入力予測手段44によるエバポレータ出口空気温度フィードフォワード制御入力(Icff_te)の算出を行い、ステップS6において、エバポレータ出口空気温度フィードバック制御入力演算手段43によるエバポレータ出口空気温度フィードバック制御入力(Icfb_te)の算出を行う。
【0035】
そして、ステップS7において、エバポレータ出口空気温度を制御するための容量制御信号(Ic_te)の算出をエバポレータ出口空気温度用容量制御信号演算手段41において行う。
一方、ステップS8において、高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力予測手段52による高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力(Icff_pd)の算出を行い、ステップS9において、高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力演算手段53による高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力(Icfb_pd)の算出を行う。
【0036】
そして、ステップS10において、高圧側冷媒圧力を制御するための容量制御信号(Ic_pd)の算出を高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段51において行う。
上記したステップを実行した後、ステップS11において、容量制御信号判定手段によりエバポレータ出口空気温度用容量制御信号(Ic_te)と高圧側冷媒圧力用容量制御信号(Ic_pd)との比較演算を行い、Ic_te<Ic_pdならば、ステップS12において、エバポレータ出口空気温度用容量制御信号(Ic_te)をコンプレッサ容量制御信号(Ict)と設定してメインコントローラ31へ出力し、一方、Ic_te>Ic_pdならば、ステップS13において、高圧側冷媒圧力用容量制御信号(Ic_pd)をコンプレッサ容量制御信号(Ict)と設定してメインコントローラ31へ出力する。
【0037】
上記したように、この実施形態に係る車両用空調装置では、エバポレータ出口空気温度及び高圧側冷媒圧力のそれぞれ目標値に応じて、各々の容量制御信号を演算し、そして、出力して、可変容量式圧縮機4の容量を制御するようにしているので、エバポレータ出口空気温度及び高圧側冷媒圧力をそれぞれの目的に応じて、的確に制御することができ、すなわち、エバポレータ出口空気温度の安定性を確保することができるだけでなく、高圧側冷媒圧力を適切に制御して高圧側冷媒圧力の上昇を抑制することができ、その結果、快適性の向上及びサイクル保護の両立を実現し得ることとなる。
【0038】
図6〜図9は、本発明の他の実施態様に係る車両用空調装置のメインコントローラ31の制御内容を示している。
本実施形態の車両用空調装置のメインコントローラ31では、図6及び図7に示すように、エバポレータ出口空気温度用容量制御信号演算手段41及び高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段51により、エバポレータ出口空気温度用容量制御信号及び高圧側冷媒圧力用容量制御信号をそれぞれ算出するのに加えて、トルク用容量制御信号演算手段71によって、可変容量式圧縮機4のトルクを目標値に制御するのに必要なトルク用容量制御信号を算出し、これらのエバポレータ出口空気温度用容量制御信号,高圧側冷媒圧力用容量制御信号及びトルク用容量制御信号をコンプレッサ容量制御信号演算手段61で比較して、可変容量式圧縮機4からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号によりこの可変容量式圧縮機4を制御するものとなっている。
【0039】
トルク用容量制御信号演算手段71は、トルク推定手段により推定又は検知された可変容量式圧縮機4のトルクと、予めトルク目標値設定手段により設定された可変容量式圧縮機4のトルクの目標値とを参照して演算するコンプレッサトルクフィードバック制御入力演算手段73と、可変容量式圧縮機4のトルクの目標値を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を予測するコンプレッサトルクフィードフォワード制御入力予測手段72を備えている。
【0040】
このコンプレッサトルクフィードフォワード制御入力予測手段72において、コンプレッサトルク目標値(Trqt)と、外気温度(Tamb)と、エンジン回転数(Ne)と、車速(VS)と、ブロワ電圧(BLV)を参照して、以下の演算式(13)により、フィードフォワード制御入力(Icff_tr)を予測する。
Icff_tr=f(Trqt,Tamb,Ne,VS,BLV) 演算式(13)
また、コンプレッサトルクフィードバック制御入力演算手段73において、コンプレッサトルクフィードバック制御入力値(Icfb_tr)は、コンプレッサトルク目標値(Trqt)と、コンプレッサトルク推定値(Trq_E)とを参照して、以下のような比例演算及び積分演算を行う。
【0041】
Icfb_tr=比例演算値 (Ptr)+積分演算値 (Itr) 演算式(14)
この場合、比例演算値(Ptr)及び積分演算値(Itr)については、以下のような演算を行う。
Ptr=Kp3×(Trqt−Trq_E) 演算式(15)
Itr=Itr_n-1+Kp3/Ti3×(Trqt−Trq_E ) 演算式(16)
但し、Kp3は比例ゲインであり、Ti3は積分時間であり、Itr_n-1はItr(積分演算値)の前回演算値である。
【0042】
そして、このトルク用容量制御信号演算手段71は、上記した演算結果に基づいて、以下の演算式(17)により、トルク用容量制御信号(Ic_tr)を算出する。
Ic_tr=Icff_tr+Icfb_tr 演算式(17)
コンプレッサ容量制御信号演算手段61では、図7に示すように、上記のようにして算出されたエバポレータ出口空気温度用容量制御信号(Ic_te)と、高圧側冷媒圧力用容量制御信号(Ic_pd)と、トルク用容量制御信号(Ic_tr)とを参照し、以下の要領により、コンプレッサ容量制御信号(Ict)を比較演算する。
【0043】
Ic_te<Ic_pdで且つIc_te<Ic_trならば、Ict=Ic_teとし、
Ic_pd<Ic_teで且つIc_pd<Ic_trならば、Ict=Ic_pdとし、
Ic_tr<Ic_teで且つIc_tr<Ic_pdならば、Ict=Ic_trとして、これで算出されたコンプレッサ容量制御信号(Ict)をメインコントローラ31の容量制御コントローラ部31aへの出力とする。
【0044】
ここで、クラッチを含む場合において、上記コンプレッサ容量制御信号(Ict)を参照して、メインコントローラ31のクラッチコントローラ部31bへの出力を制御する。
次に、上記した制御演算値に基づいて行うコンプレッサの容量制御要領を図8及び図9に示すフローチャートを参照して説明する。なお、このフローチャートにおいて、ステップS1〜ステップS13では、先の実施形態と同じ制御を行うので、その説明は省略する。
【0045】
ステップS14において、コンプレッサトルク目標値(Trqt)の設定を行った後、ステップS15において、コンプレッサトルクフィードフォワード制御入力予測手段72によるコンプレッサトルクフィードフォワード制御入力(Icff_tr)の算出を行い、ステップS16において、コンプレッサトルクフィードバック制御入力演算手段73によるコンプレッサトルクフィードバック制御入力(Icfb_tr)の算出を行う。
【0046】
そして、ステップS17において、コンプレッサトルクを制御するための容量制御信号(Ic_tr)の算出をコンプレッサトルク用容量制御信号演算手段71において行う。
上記したステップを実行した後、ステップS11において、容量制御信号判定手段によりエバポレータ出口空気温度用容量制御信号(Ic_te)と、高圧側冷媒圧力用容量制御信号(Ic_pd)と、コンプレッサトルク用容量制御信号(Ic_tr)との比較演算を行い、Ic_te<Ic_pdで且つIc_te<Ic_trならば、ステップS12において、エバポレータ出口空気温度用容量制御信号(Ic_te)をコンプレッサ容量制御信号(Ict)と設定してメインコントローラ31へ出力する。
【0047】
このとき、ステップS11において、Ic_te>Ic_pd及び/又は Ic_tr<Ic_teならば、ステップS18に進み、このステップS18において、Ic_pd<Ic_teで且つIc_pd<Ic_trならば、ステップS13において、高圧側冷媒圧力用容量制御信号(Ic_pd)をコンプレッサ容量制御信号(Ict)と設定してメインコントローラ31へ出力する。
そして、ステップS18において、Ic_tr<Ic_pdならば、ステップS19において、コンプレッサトルク用容量制御信号(Ic_ tr )をコンプレッサ容量制御信号(Ict)と設定してメインコントローラ31へ出力する。
【0048】
上記したように、この実施形態に係る車両用空調装置では、エバポレータ出口空気温度,高圧側冷媒圧力及びコンプレッサトルクのそれぞれ目標値に応じて、各々の容量制御信号を演算し、そして、出力して、可変容量式圧縮機4の容量を制御するようにしているので、エバポレータ出口空気温度,高圧側冷媒圧力及びコンプレッサトルクをそれぞれの目的に応じて、的確に制御することができ、すなわち、エバポレータ出口空気温度の安定性を確保することができると共に、高圧側冷媒圧力を適切に制御して高圧側冷媒圧力の上昇を抑制することができ、加えて、コンプレッサトルクをも適切に制御し得ることとなり、その結果、快適性の向上及びサイクル保護の両立を実現し得ることとなる。
【0049】
上記した実施形態では、車両用空調装置の蒸気圧縮式冷凍回路における冷媒として二酸化炭素を用いた場合を示しているが、冷媒としてフロン系のものを採用してもよい。
また、上記した実施形態では、蒸気圧縮式冷凍回路が、クラッチ制御により容量可変とした可変容量式圧縮機4を装備している場合を示しているが、クラッチレスのものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の概略構成説明図である。
【図2】図1の車両用空調装置の制御における根幹を成す部分のブロック図である。
【図3】図1の車両用空調装置の制御における基本構成の前半側を示すブロック図である。
【図4】図1の車両用空調装置の制御における基本構成の後半側を示すブロック図である。
【図5】図1の車両用空調装置の制御要領を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態に係る車両用空調装置の制御における基本構成の前半側を示すブロック図である。
【図7】図6の車両用空調装置の制御における基本構成の後半側を示すブロック図である。
【図8】図6の車両用空調装置の制御要領の前半側を示すフローチャートである。
【図9】図6の車両用空調装置の制御要領の後半側を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
4 可変容量式圧縮機
5 高圧側冷媒圧力検知手段
6 放熱器
9 膨張機構
10 エバポレータ(蒸発器)
12 エバポレータ出口空気温度センサ(蒸発器温度検知手段)
41 エバポレータ出口空気温度用容量制御信号演算手段(蒸発器温度用容量制御信号演算手段)
42 エバポレータ温度目標応答算出手段(蒸発器温度目標応答算出手段)
43 エバポレータ出口空気温度フィードバック制御入力演算手段(蒸発器温度フィードバック制御入力演算手段)
44 エバポレータ出口空気温度フィードフォワード制御入力予測手段(蒸発器温度フィードフォワード制御入力予測手段)
51 高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段
52 高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力予測手段
53 高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力演算手段
61 コンプレッサ容量制御信号演算手段
71 トルク用容量制御信号演算手段
72 コンプレッサトルクフィードフォワード制御入力予測手段
73 コンプレッサトルクフィードバック制御入力演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の出力目標値を設定する制御対象出力目標値設定手段と、
前記制御対象の出力値を検知又は推定する制御対象出力検知手段と、
前記制御対象出力目標値設定手段で設定された前記制御対象の出力目標値と、前記制御対象出力検知手段で検知又は推定された前記制御対象の出力値とを参照して、該制御対象への制御入力を演算する制御入力演算手段と、
この制御入力演算手段で演算された制御入力に基づいて前記制御対象を操作して、前記制御対象の出力値を目標値とするべく制御する制御対象制御手段を備えた制御装置において、
前記制御対象を制御するのに必要な前記制御入力演算手段を複数設けると共に、これらの制御入力演算手段による各演算に必要な前記制御対象出力目標値設定手段及び前記制御対象出力検知手段を複数設け、
前記複数の制御入力演算手段により演算されて得た複数の制御入力の中で最小のものを前記制御対象制御手段への制御入力として前記制御対象の出力値を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御対象の出力値が出力目標値に到達するための過渡状態における目標応答を算出して指定する制御対象出力目標応答算出手段と、
この制御対象出力目標応答算出手段により算出された制御対象出力目標応答値と、前記制御対象出力検知手段により検知又は推定された制御対象出力値との偏差を参照して、制御入力を演算する制御対象出力フィードバック制御入力演算手段と、
前記制御対象出力目標応答算出手段により算出される目標応答における過渡特性を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を演算する制御対象フィードフォワード制御入力演算手段を備え、
前記制御対象目標値設定手段により前記制御対象の出力目標値が設定されると共に、前記制御対象出力目標応答算出手段により制御対象出力目標応答値が算出され、
前記制御対象出力目標応答値と、前記制御対象出力検知手段により検知又は推定される制御対象出力値とを参照して、前記制御対象出力フィードバック制御入力演算手段により、フィードバック制御入力が演算され、
前記制御対象フィードフォワード制御入力演算手段により、フィードフォワード制御入力が演算され、
前記制御入力演算手段において、前記フィードバック制御入力及びフィードフォワード制御入力との和を参照して、制御入力が演算される請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
外部からの制御信号により任意に容量を可変として冷媒を圧送するべく作動する外部可変容量圧縮機と、この外部可変容量圧縮機から吐出する高温高圧の冷媒を冷却する放熱器と、前記冷媒の気化熱を利用して車室内に吹出す空気を冷却する蒸発器を具備した蒸気圧縮式冷凍サイクルと、
この蒸気圧縮式冷凍サイクルにおける前記外部可変容量圧縮機の容量制御信号を演算する容量制御信号演算手段を備え、
この容量制御信号演算手段により演算された前記外部可変容量圧縮機の容量制御信号により該外部可変容量圧縮機を制御して、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御する車両用空調装置において、
前記容量制御信号演算手段を複数設け、
これらの容量制御信号演算手段により演算された複数の容量制御信号の中で、前記外部可変容量圧縮機からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により前記外部可変容量圧縮機を制御して、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御するものとしたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの高圧側の冷媒圧力を検知する高圧側冷媒圧力検知手段を備え、
前記容量制御信号演算手段における演算の制御入力として、少なくとも前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知される高圧側冷媒圧力を含んでいる請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの蒸発器の出口空気温度又は蒸発器の温度を検知する蒸発器温度検知手段を備え、
前記容量制御信号演算手段における演算の制御入力として、少なくとも前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知される高圧側冷媒圧力及び前記蒸発器温度検知手段により検知される蒸発器の出口空気温度を含んでいる請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの蒸発器の目標温度を設定する蒸発器目標温度設定手段と、
前記蒸発器の温度を目標温度に制御するのに必要となる容量制御信号を演算する蒸発器温度用容量制御信号演算手段と、
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの高圧側冷媒圧力の目標値を設定する高圧側冷媒圧力目標値設定手段と、
前記高圧側冷媒圧力を目標値に制御するのに必要となる容量制御信号を演算する高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段を備え、
前記蒸発器温度用容量制御信号演算手段において、前記蒸発器目標温度設定手段により設定される蒸発器の目標温度と、前記蒸発器温度検知手段により検知される蒸発器の出口空気温度とを参照して、前記蒸発器の温度制御用容量制御信号が演算されると共に、
前記高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段において、前記高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定される冷凍サイクルの高圧側冷媒圧力目標値と、前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知される高圧側冷媒圧力とを参照して、前記高圧側冷媒圧力の制御用容量制御信号が演算され、
前記蒸発器の温度制御用容量制御信号と、前記高圧側冷媒圧力の制御用容量制御信号とを比較して、前記外部可変容量圧縮機からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により前記外部可変容量圧縮機を制御し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御するものとした請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記蒸発器温度検知手段により検知された蒸発器の出口空気温度又は蒸発器の温度が蒸発器目標温度に到達するための過渡状態における目標応答を算出し指定する蒸発器温度目標応答算出手段と、
その目標応答における蒸発器温度目標応答値と前記蒸発器の出口空気温度又は蒸発器の温度との偏差を演算する蒸発器温度フィードバック制御入力演算手段と、
前記蒸発温度目標応答算出手段により算出される目標応答における過渡特性を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を予測する蒸発器温度フィードフォワード制御入力予測手段と、
前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知された高圧側冷媒圧力と、前記高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定された高圧側冷媒圧力目標値とを参照して演算する高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力演算手段と、
前記高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定された高圧側冷媒圧力目標値を実現するのに必要なフィードフォワード制御入力を予測する高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力予測手段を備え、
前記蒸発器温度フィードバック制御入力演算手段において、前記蒸発器温度目標応答算出手段により算出される蒸発器温度目標応答値と、前記蒸発器温度検知手段により検知される蒸発器出口空気温度との偏差を参照して、蒸発器温度フィードバック制御入力が演算されると共に、
前記蒸発器温度フィードフォワード制御入力予測手段において、蒸発器温度フィードフォワード制御入力が演算され、
前記蒸発器温度用容量制御信号演算手段において、前記蒸発器温度フィードバック制御入力と、蒸発器温度フィードフォワード制御入力との和を参照して、前記蒸発器温度の容量制御信号が演算され、
一方、前記高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力演算手段において、前記高圧側冷媒圧力目標値設定手段により設定される高圧側冷媒圧力目標値と、前記高圧側冷媒圧力検知手段により検知される高圧側冷媒圧力とを参照して、高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力が演算されると共に、
前記高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力予測手段において、高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力が演算され、
前記高圧側冷媒圧力用容量制御信号演算手段において、前記高圧側冷媒圧力フィードバック制御入力と、高圧側冷媒圧力フィードフォワード制御入力との和を参照して、高圧側冷媒圧力の容量制御信号が演算され、
前記蒸発器の温度制御用容量制御信号と、前記高圧側冷媒圧力の制御用容量制御信号とを比較して、前記外部可変容量圧縮機からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により前記外部可変容量圧縮機を制御し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御するものとした請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記外部可変容量圧縮機のトルクを推定又は検知するトルク推定手段と、
前記外部可変容量圧縮機のトルクの目標値を設定するトルク目標値設定手段と、
前記外部可変容量圧縮機のトルクを目標値に制御するのに必要となる容量制御信号を演算するトルク用容量制御信号演算手段を備え、
前記トルク用容量制御信号演算手段において、前記トルク目標値設定手段により設定されるトルク目標値に基づいて、前記外部可変容量圧縮機のトルクを目標値に制御するのに必要なトルク用容量制御信号が演算され、
前記蒸発器の温度制御用容量制御信号と、前記高圧側冷媒圧力の制御用容量制御信号と、前記トルク用容量制御信号とを比較して、前記外部可変容量圧縮機からの冷媒吐出量を最小にする容量制御信号により前記外部可変容量圧縮機を制御し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルを制御するものとした請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記トルク目標値設定手段は、車両からの圧縮機トルク指令値を参照して、前記外部可変容量圧縮機のトルクの目標値を設定する請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルは、前記放熱器から吐出する高圧冷媒を断熱膨張させる膨張機構を具備し、前記高圧側冷媒圧力検知手段は、前記外部可変容量圧縮機から前記膨張機構までの冷媒内圧力を検知する請求項3〜9のいずれか一つの項に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
複数の各種容量制御信号演算手段において、外気温度に相関のある物理量、蒸発器への送風量に相関のある物理量、車両の速度に相関のある物理量、車両原動機の回転数に相関のある物理量の少なくとも一つを検知して、容量制御信号演算の入力とすることとした請求項3〜10のいずれか一つの項に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒として二酸化炭素を用いた請求項3〜11のいずれか一つの項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−107605(P2009−107605A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285042(P2007−285042)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】