説明

制御装置

【課題】印刷システムにおけるセキュリティを向上するとともにユーザの利便性を向上する。
【解決手段】制御装置8は、複数のサブネットワークが接続された印刷システムに備えられ、印刷データの送信元の端末装置が、印刷データの宛先の印刷装置4と同じサブネットワークに属するか否かを判断する判断部811と、送信元の端末装置が宛先の印刷装置4と異なるサブネットワークに属する場合、送信元の端末装置に警告信号を送信する警告部812と、印刷データを管理する印刷データ管理部813とを備え、印刷データ管理部813は、警告信号を受信した送信元の端末装置からの指示に応じて、印刷データを宛先の印刷装置4とは別の印刷装置に転送可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに備えられる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC(パーソナルコンピュータ)と印刷装置とがネットワークで接続された印刷システムにおいて、1つのPCに複数の印刷装置のプリンタドライバがインストールされることがある。
【0003】
このようなPCから印刷データの送信を行う場合、ユーザは、宛先となる1つの印刷装置を指定する操作を行う。この際、ユーザが、誤操作により、宛先に指定する印刷装置を誤ることがある。その結果、ユーザの所在地とは異なる場所にある印刷装置に印刷物が出力されることがある。
【0004】
このように意図しない印刷装置に印刷物が出力された場合、ユーザが印刷物を回収できず、印刷物が放置されることがある。これは情報漏洩等の危険を招き、セキュリティ面の問題があった。
【0005】
これに対し、特許文献1には、PCから他のネットワークにある印刷装置への印刷データの送信が指示された場合、PCに警告を表示させる技術が提案されている。特許文献1の技術では、警告を発したPCにおいて、ユーザに、そのまま印刷データの送信先の印刷装置で印刷を実行させるか、印刷を中止させるかを選択させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−151618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、ユーザにとって、当初は意図しなかった印刷装置にそのまま印刷を実行させるか、印刷を中止するかしか選択肢がなく、不便であった。また、目的の印刷装置に印刷させるためには、ユーザは、印刷の中止を指示した後、再度印刷設定等の操作からやり直さなければならなかった。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷システムにおけるセキュリティを向上するとともにユーザの利便性を向上できる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る制御装置の第1の特徴は、複数のサブネットワークが接続された印刷システムに備えられる制御装置であって、印刷データの送信元の端末装置が、前記印刷データの宛先の印刷装置と同じサブネットワークに属するか否かを判断する判断部と、前記送信元の端末装置が前記宛先の印刷装置と異なるサブネットワークに属する場合、前記送信元の端末装置に警告信号を送信する警告部と、前記印刷データを管理する印刷データ管理部とを備え、前記印刷データ管理部は、前記警告信号を受信した前記送信元の端末装置からの指示に応じて、前記印刷データを前記宛先の印刷装置とは別の印刷装置に転送可能であることにある。
【0010】
本発明に係る制御装置の第2の特徴は、前記印刷データ管理部は、前記送信元の端末装置からの指示に応じて、前記宛先の印刷装置で前記印刷データに基づく印刷を実行させ、印刷を実行するタイミングを設定可能であることにある。
【0011】
本発明に係る制御装置の第3の特徴は、前記印刷データ管理部は、前記印刷データを受信してから所定時間経過しても前記送信元の端末装置からの指示がない場合、前記印刷データを削除することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る制御装置の第1の特徴によれば、受信した印刷データの送信元の端末装置が、宛先の印刷装置とは異なるサブネットワークに属する場合、印刷データを別の印刷装置に転送可能である。これにより、ユーザが印刷設定等の操作をやり直すことなく、本来意図した印刷装置に印刷させることが可能となる。このため、制御装置は、印刷システムにおけるセキュリティを向上するとともにユーザの利便性を向上できる。
【0013】
本発明に係る制御装置の第2の特徴によれば、指示に応じて印刷を実行する際のタイミングを設定可能であるので、ユーザの利便性を向上できる。
【0014】
本発明に係る制御装置の第3の特徴によれば、制御装置は、印刷データを受信してから所定時間経過しても送信元の端末装置からの指示がない場合、印刷データを削除するので、ユーザが意図しない印刷装置でそのまま印刷が実行されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る印刷システムの概略構成図である。
【図2】図1に示した印刷システムにおける印刷装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した印刷システムにおける端末装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示した印刷システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】図1に示した印刷システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した印刷システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】警告画面の一例を示す図である。
【図8】印刷実行確認画面の一例を示す図である。
【図9】転送先指定画面の一例を示す図である。
【図10】印刷中止確認画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷システムの概略構成図である。図1に示すように、印刷システム1は、複数のサブネットワーク2A,2B,…がネットワーク3を介して接続されて構成されている。
【0018】
複数のサブネットワーク2A,2B,…は、互いに異なる場所に設けられている。例えば、サブネットワーク2A,2B,…は、企業における異なる場所にある事業所にそれぞれ設けられている。ネットワーク3は、例えば、イントラネットである。
【0019】
サブネットワーク2A,2B,…は、それぞれ、印刷装置4A,4B,…と、端末装置5A,5B,…と、ルータ6A,6B,…とを備える。印刷装置4A,4B,…と、端末装置5A,5B,…と、ルータ6A,6B,…とは、LAN等からなるネットワーク7A,7B,…を介して接続されている。以下、個々のサブネットワーク、印刷装置等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0020】
なお、図1では、サブネットワーク2が印刷装置4と端末装置5とを1つずつ備えているが、サブネットワーク2が備える印刷装置4および端末装置5の数はこれに限らない。サブネットワーク2ごとに印刷装置4および端末装置5の数が異なっていてもよい。
【0021】
印刷装置4および端末装置5は、それぞれIPアドレスを有する。IPアドレスは、サブネットワーク2を特定するためのネットワークアドレス部と、サブネットワーク2内での印刷装置4、端末装置5を個別に識別するためのホストアドレス部とから構成される。例えば、「192.168.254.108」というIPアドレスでは、「192.168.254.」がネットワークアドレス部であり、それ以降の「108」がホストアドレス部である。IPアドレスのネットワークアドレス部が同じ装置は、同じサブネットワーク(同じセグメント)に属する。
【0022】
図2は、印刷装置4の構成を示すブロック図である。図2に示すように、印刷装置4は、制御装置8と、印刷部9とを備える。
【0023】
制御装置8は、印刷装置4全体の動作を制御するものである。制御装置8は、制御部81と、通信処理部82と、記憶部83と、計時部84とを備える。
【0024】
制御部81は、CPU、ROM、RAM等によって機能モジュールとして構成することができる。制御部81は、判断部811と、警告部812と、印刷データ管理部813とを備える。
【0025】
判断部811は、印刷データを受信した場合、その印刷データの送信元の端末装置5が、印刷データの宛先の印刷装置である自印刷装置4(自装置)と同じサブネットワーク2に属するか否かを判断する。具体的には、判断部811は、印刷データの送信元の端末装置5のIPアドレスのネットワークアドレス部が、自印刷装置4のIPアドレスのネットワークアドレス部と同じであるか否かにより、送信元の端末装置5と自印刷装置4とが同じサブネットワーク2に属するか否かを判断する。
【0026】
警告部812は、印刷データの送信元の端末装置5が自印刷装置4と異なるサブネットワーク2に属する場合、送信元の端末装置5に警告信号を送信する。
【0027】
印刷データ管理部813は、端末装置5から受信した印刷データを管理する。印刷データ管理部813は、印刷データの送信元の端末装置5が自印刷装置4と異なるサブネットワーク2に属する場合、印刷データを記憶部83に一旦記憶させる。その後、印刷データ管理部813は、警告信号を受信した端末装置5からの指示に応じて、印刷データによる印刷の実行指示、印刷データの削除、印刷データの他の印刷装置4への転送等を行う。また、印刷データ管理部813は、印刷部9の印刷動作を制御する。
【0028】
通信処理部82は、ネットワーク7を介して端末装置5等とのデータの送受信を行うための処理を行う。
【0029】
記憶部83は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置からなる。記憶部83は、印刷データ管理部813により管理される印刷データを記憶する。
【0030】
計時部84は、時刻を計時し、現在の時刻を示す時刻情報を出力する。
【0031】
印刷部9は、インクジェット方式等の印刷機構を有し、用紙等の印刷媒体に印刷を行う。
【0032】
図3は、端末装置5の構成を示すブロック図である。端末装置5は、PC等を備えて構成され、印刷データを印刷装置4に送信するものである。図3に示すように、端末装置5は、プリンタドライバ部51と、通信処理部52と、表示部53と、入力部54と、計時部55とを備える。
【0033】
プリンタドライバ部51は、第1プリンタドライバ511と、第2プリンタドライバ512とを備える。
【0034】
第1および第2プリンタドライバ511,512は、それぞれ異なる印刷装置4に対応して開発されたプリンタドライバプログラムを端末装置5のCPUが実行することにより形成される。第1および第2プリンタドライバ511,512は、ユーザ操作に基づいて、印刷対象となるドキュメント等に基づく印刷データを生成して、それぞれ自身に対応する印刷装置4に送信する処理を行う。
【0035】
図3では、1つの端末装置5に2つのプリンタドライバプログラムがインストールされて第1および第2プリンタドライバ511,512の2つのプリンタドライバ部が形成されている例を示しているが、1つの端末装置5にインストールされるプリンタドライバプログラムの数はこれに限らない。ただし、本実施の形態において、ユーザが印刷の実行を指示する端末装置5には、少なくとも2つのプリンタドライバプログラムがインストールされているものとする。
【0036】
通信処理部52は、ネットワーク7を介して端末装置5等とのデータの送受信を行うための処理を行う。
【0037】
表示部53は、液晶ディスプレイ等からなり、後述の警告画面等の各種画面等を表示する。
【0038】
入力部54は、キーボード、マウス等からなり、ユーザが各種の指示や情報を入力するためのものである。入力部54は、ユーザによる入力操作に応じた操作信号を出力する。
【0039】
計時部55は、時刻を計時し、現在の時刻を示す時刻情報を出力する。
【0040】
ルータ6は、サブネットワーク2をネットワーク3と接続してデータを中継する中継機器である。
【0041】
次に、印刷システム1における印刷装置4と端末装置5の動作について、図4〜図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0042】
本実施の形態では、端末装置5においてユーザ操作により第1プリンタドライバ511が指定され、第1プリンタドライバ511が印刷データを生成して、自身に対応する印刷装置4に送信するものとする。
【0043】
図4のステップS10において、第1プリンタドライバ511は、通信処理部52を介して、印刷データを、自身に対応する印刷装置4に送信する。この際、通信処理部52は、送信元である自端末装置5のIPアドレスを印刷データに付加する。
【0044】
次いで、ステップS20において、第1プリンタドライバ511に対応する印刷装置4の制御装置8の判断部811は、印刷データを受信すると、その送信元の端末装置5が、印刷データの宛先の印刷装置である自印刷装置4と同じサブネットワーク2に属するか否かを判断する。具体的には、判断部811は、印刷データの送信元の端末装置5のIPアドレスのネットワークアドレス部が、自印刷装置4のIPアドレスのネットワークアドレス部と同じであるか否かを判断する。両ネットワークアドレス部が同じである場合、判断部811は、印刷データの送信元の端末装置5が自印刷装置4と同じサブネットワーク2に属すると判断する。
【0045】
印刷データの送信元の端末装置5が自印刷装置4と同じサブネットワーク2に属すると判断した場合(ステップS20:YES)、ステップS30において、判断部811は、印刷データ管理部813に印刷データを渡す。そして、印刷データ管理部813は、印刷データに基づく印刷を印刷部9に実行させる。
【0046】
印刷データの送信元の端末装置5が自印刷装置4とは異なるサブネットワーク2に属すると判断した場合(ステップS20:NO)、判断部811は、ステップS40において、印刷データ管理部813により印刷データを記憶部83に記憶させる。この際、印刷データ管理部813は、記憶部83に記憶させた印刷データの受信時刻を記憶する。
【0047】
次いで、ステップS50において、判断部811は、警告部812により、印刷データの送信元の端末装置5に向けて警告信号を送信させる。この警告信号は、印刷データの受信時刻を示す情報を含む。
【0048】
次いで、ステップS60において、警告信号を受信すると、端末装置5の第1プリンタドライバ511は、表示部53に警告画面を表示させる。ここで表示される警告画面の一例を図7に示す。
【0049】
図7に示すように、警告画面100には、印刷データの送信先(宛先)が他のサブネットワークに属する印刷装置4である旨の警告メッセージが表示される。また、警告画面100には、印刷実行ボタン101と、転送ボタン102と、印刷中止ボタン103とが表示される。
【0050】
印刷実行ボタン101は、ユーザが、印刷データの送信先である他のネットワークの印刷装置4でそのまま印刷実行することを指示するためのボタンである。転送ボタン102は、ユーザが、印刷データの送信先の印刷装置4以外の他の印刷装置4への印刷データの転送を指示するためのボタンである。印刷中止ボタン103は、ユーザが印刷の中止を指示するためのボタンである。ユーザは、入力部54により、警告画面100の印刷実行ボタン101、転送ボタン102、印刷中止ボタン103のいずれかを選択する入力操作を行うことができる。
【0051】
ステップS70では、第1プリンタドライバ511は、入力部54からの操作信号に基づき、警告画面100に対する入力操作が行われたか否かを判断する。第1プリンタドライバ511は、入力操作が行われたと判断した場合(ステップS70:YES)、ステップS80に進み、入力操作が行われていないと判断した場合(ステップS70:NO)、ステップS200に進む。
【0052】
ステップS80では、第1プリンタドライバ511は、入力操作により警告画面100から印刷実行が指示(印刷実行ボタン101が選択)されたか否かを判断する。第1プリンタドライバ511は、印刷実行が指示されたと判断した場合(ステップS80:YES)、図5のステップS90に進み、印刷実行以外が指示されたと判断した場合(ステップS80:NO)、ステップS130に進む。
【0053】
ステップS90では、第1プリンタドライバ511は、表示部53に印刷実行確認画面を表示させる。ここで表示される印刷実行確認画面の一例を図8に示す。
【0054】
図8に示すように、印刷実行確認画面110には、ユーザがすぐに印刷実行することを選択するための印刷実行指示ボックス111と、後に印刷を開始するタイミングの指定を行うことを選択するための時間指定指示ボックス112とが表示される。また、印刷実行確認画面110には、ユーザが印刷を開始するタイミングの指定を行う場合の開始タイミングを入力するための指定時間入力欄113が表示される。ユーザは、入力部54を操作することにより、印刷実行指示ボックス111または時間指定指示ボックス112にチェックマークを付すことで、いずれかを選択指示することができる。また、時間指定指示ボックス112にチェックマークを付した場合、ユーザは、指定時間入力欄113に何分後に印刷を開始させるかを入力することができる。
【0055】
ステップS100では、第1プリンタドライバ511は、印刷実行確認画面110に対する入力操作により、すぐに印刷実行することが指示されたか否かを判断する。
【0056】
第1プリンタドライバ511は、すぐに印刷実行することが指示されたと判断した場合(ステップS100:YES)、ステップS120に進む。すぐには印刷実行せず後に印刷を開始するタイミングの指定が行なわれたと判断した場合(ステップS100:NO)、第1プリンタドライバ511は、ステップS110に進む。
【0057】
ステップS110では、第1プリンタドライバ511は、計時部55からの時刻情報を用いて、ユーザに指定された印刷開始タイミングなったか否かを判断する。第1プリンタドライバ511は、印刷開始タイミングなったと判断した場合(ステップS110:YES)、ステップS120に進み、印刷開始タイミングなっていないと判断した場合(ステップS110:NO)、ステップS110の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS120では、第1プリンタドライバ511は、ステップS10で印刷データを送信した、自身に対応する印刷装置4に、印刷指示信号を送信する。その後、ステップS30において、印刷指示信号を受信した印刷装置4の制御装置8の印刷データ管理部813は、印刷データを記憶部83から読み出し、この読み出した印刷データに基づく印刷を印刷部9に実行させる。
【0059】
ステップS80において、警告画面100から印刷実行以外が指示されたと判断した場合(ステップS80:NO)、第1プリンタドライバ511は、ステップS130において、ユーザの入力操作により転送が指示(転送ボタン102が選択)されたか否かを判断する。第1プリンタドライバ511は、転送が指示されたと判断した場合(ステップS130:YES)、ステップS140に進む。転送が指示されなかった、つまり印刷中止が指示(印刷中止ボタン103が選択)されたと判断した場合(ステップS130:NO)、第1プリンタドライバ511は、ステップS180に進む。
【0060】
ステップS140では、第1プリンタドライバ511は、表示部53に転送先指定画面を表示させる。ここで表示される転送先指定画面の一例を図9に示す。図9に示すように、転送先指定画面120には、印刷データの転送先の印刷装置4のIPアドレスをユーザが入力するための転送先指定欄121が表示される。
【0061】
前述のように、警告信号が送信される場合、印刷データを受信した印刷装置4は、印刷データの送信元の端末装置5とは異なるサブネットワーク2に属している。このような場合、ユーザが印刷データの送信先(宛先)の設定(プリンタドライバの選択)を誤った可能性が高い。複数のプリンタドライバがインストールされている端末装置5においては、ユーザによるこのような誤操作が起こり得る。ユーザは、転送先指定欄121に、本来意図していた送信先の印刷装置4のIPアドレスを入力すれば、意図どおりの印刷装置4に印刷データを転送させて印刷を行わせることが可能となる。
【0062】
ステップS150では、第1プリンタドライバ511は、転送先指定欄121に転送先のIPアドレスが入力されたか否かを判断する。転送先のIPアドレスが入力されていない場合(ステップS150:NO)、第1プリンタドライバ511は、ステップS150の処理を繰り返す。
【0063】
転送先のIPアドレスが入力された場合(ステップS150:YES)、第1プリンタドライバ511は、ステップS160において、転送先のIPアドレスを含む転送指示信号を生成し、これを自身に対応する印刷装置4に送信する。
【0064】
次いで、ステップS170において、転送指示信号を受信した印刷装置4の印刷データ管理部813は、ステップS40で記憶させた印刷データを記憶部83から読み出し、これを転送指示信号により指示されたIPアドレスの印刷装置4に転送する。転送先の印刷装置4では、印刷データを受信すると印刷が実行される。
【0065】
ステップS180では、第1プリンタドライバ511は、印刷データの削除を指示する削除指示信号を生成し、これを自身に対応する印刷装置4に送信する。削除指示信号を受信した印刷装置4の印刷データ管理部813は、ステップS190において、ステップS40で記憶させた印刷データを記憶部83から削除する。
【0066】
ステップS200では、第1プリンタドライバ511は、計時部55からの時刻情報を用いて、印刷装置4における印刷データの受信時刻から所定の保持時間が経過したか否かを判断する。印刷装置4における受信時刻は警告信号に含まれている。保持時間は、印刷装置4の制御装置8において、他のサブネットワークの端末装置5から受信した印刷データを記憶部83に保持しておく時間である。保持時間は、例えば、30分程度である。第1プリンタドライバ511は、保持時間が経過したと判断した場合(ステップS200:YES)、図6のステップS210に進む。保持時間が経過していないと判断した場合(ステップS200:NO)、第1プリンタドライバ511は、ステップS70に戻る。
【0067】
ステップS210では、第1プリンタドライバ511は、表示部53に印刷中止確認画面を表示させる。ここで表示される印刷中止確認画面の一例を図10に示す。
【0068】
図10に示すように、印刷中止確認画面130には、ユーザがすぐに印刷中止することを選択するための印刷中止指示ボックス131と、保持時間を延長することを選択するための時間延長指示ボックス132とが表示される。また、印刷中止確認画面130には、ユーザが保持時間を延長する場合の延長時間を入力するための延長時間入力欄133が表示される。ユーザは、入力部54を操作することにより、印刷中止指示ボックス131または時間延長指示ボックス132にチェックマークを付すことで、いずれかを選択指示することができる。また、時間延長指示ボックス132にチェックマークを付した場合、ユーザは、延長時間入力欄133に保持時間の延長時間を入力することができる。
【0069】
ステップS220では、第1プリンタドライバ511は、印刷中止確認画面130に対する入力操作により、すぐに印刷中止することが指示されたか否かを判断する。
【0070】
第1プリンタドライバ511は、すぐに印刷中止することが指示されたと判断した場合(ステップS220:YES)、ステップS10で印刷データを送信した、自身に対応する印刷装置4に対する処理は行わない。このため、第1プリンタドライバ511に対応する印刷装置4の制御装置8では、印刷データを受信してから所定の保持時間が経過しても、送信元の端末装置5からの指示がないことになる。この場合、ステップS190において、制御装置8の印刷データ管理部813は、ステップS40で記憶させた印刷データを記憶部83から削除する。
【0071】
すぐには印刷中止せず保持時間の延長時間の指定が行なわれたと判断した場合(ステップS220:NO)、第1プリンタドライバ511は、ステップS230において、保持時間延長指示信号を生成し、これを自身に対応する印刷装置4に送信する。保持時間延長指示信号は、印刷データの保持時間の延長を印刷装置4に指示するためのものであり、指定された延長時間を示す情報を含む。
【0072】
次いで、ステップS240において、保持時間延長指示信号を受信した印刷装置4の印刷データ管理部813は、ステップS40で記憶部83に記憶させた印刷データの保持時間を指定された延長時間だけ延長する。その後、端末装置5の第1プリンタドライバ511は、ステップS70に戻る。
【0073】
以上のように、本実施の形態の印刷装置4の制御装置8では、受信した印刷データの送信元の端末装置5が、宛先である自印刷装置4とは異なるサブネットワーク2に属する場合、ユーザの指示に応じて、そのまま印刷実行、印刷データの削除に加えて、印刷データの他の印刷装置4への転送が可能である。
【0074】
例えば、図1における端末装置5Aに、印刷装置4A,4Bに対応した2つのプリンタドライバプログラムがインストールされており、ユーザの誤操作により、端末装置5Aから、他のサブネットワーク2Bの印刷装置4Bに印刷データを送信したとする。そのまま印刷装置4Bで印刷物が出力されれば、印刷物が放置されるなどにより、セキュリティ面で問題となる。本実施の形態の制御装置8では、このような場合に、ユーザに警告を提示した上で、印刷装置4Bでそのまま印刷させるか、印刷を中止させるのに加えて、本来意図した印刷装置4Aに印刷データを転送して印刷させることができる。印刷データを転送させる場合、ユーザは、印刷設定等の操作をやり直すことなく、転送先の印刷装置4Aに印刷させることができる。このように本実施の形態の制御装置8によれば、印刷システム1におけるセキュリティを向上するとともにユーザの利便性を向上できる。
【0075】
また、本実施の形態では、警告画面100に基づくユーザの指示により、印刷データの送信元の端末装置5と異なるサブネットワーク2に属する印刷装置4でそのまま印刷を実行するよう指示された場合、図8に示した印刷実行確認画面110を端末装置5に表示させる。印刷装置4の制御装置8では、印刷実行確認画面110による設定内容に応じて、印刷を実行する際のタイミングを設定可能である。これにより、ユーザの望むタイミングで印刷を実行させることができ、ユーザの利便性が向上する。また、印刷実行確認画面110をユーザに提示することで、ユーザは印刷実行を指示したことを再確認でき、誤操作により意図しない印刷装置4でそのまま印刷が実行されることを防止できる。
【0076】
また、印刷データの送信元の端末装置5と異なるサブネットワーク2に属する印刷装置4の制御装置8において、印刷データを受信してから所定時間経過しても送信元の端末装置5からの指示がない場合、印刷データを削除する。これにより、ユーザが意図しない印刷装置4でそのまま印刷が実行されることを防止できる。
【0077】
なお、制御装置8の機能をルータ6で実現させることもできる。この場合、例えば、端末装置5Aが、他のサブネットワーク2Bの印刷装置4Bに向けて印刷データを送信した場合、ルータ6Aまたはルータ6Bが、印刷データの宛先の印刷装置4Bが端末装置5Aの属するサブネットワーク2Aとは異なるサブネットワーク2Bに属すると判断する。そして、ルータ6Aまたはルータ6Bは、印刷データを記憶するとともに、警告信号を端末装置5Aに送信する。以降、上述した印刷装置4の制御装置8と同様の処理が行われる。ここで、送信元の端末装置5Aから印刷指示信号を受信した場合、ルータ6Aまたはルータ6Bは、記憶した印刷データを宛先の印刷装置4Bに送信して印刷を実行させる。転送指示信号を受信した場合、ルータ6Aまたはルータ6Bは、記憶した印刷データを転送先の印刷装置4に送信して印刷を実行させる。削除指示信号を受信した場合、ルータ6Aまたはルータ6Bは、記憶した印刷データを削除する。印刷データを受信してから所定時間経過しても送信元の端末装置5Aからの指示がない場合、ルータ6Aまたはルータ6Bは、記憶した印刷データを削除する。
【符号の説明】
【0078】
1 印刷システム
2 サブネットワーク
3 ネットワーク
4 印刷装置
5 端末装置
51 プリンタドライバ部
511 第1プリンタドライバ
512 第2プリンタドライバ
52 通信処理部
53 表示部
54 入力部
55 計時部
8 制御装置
81 制御部
811 判断部
812 警告部
813 印刷データ管理部
82 通信処理部
83 記憶部
84 計時部
9 印刷部
100 警告画面
110 印刷実行確認画面
120 転送先指定画面
130 印刷中止確認画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブネットワークが接続された印刷システムに備えられる制御装置であって、
印刷データの送信元の端末装置が、前記印刷データの宛先の印刷装置と同じサブネットワークに属するか否かを判断する判断部と、
前記送信元の端末装置が前記宛先の印刷装置と異なるサブネットワークに属する場合、前記送信元の端末装置に警告信号を送信する警告部と、
前記印刷データを管理する印刷データ管理部とを備え、
前記印刷データ管理部は、前記警告信号を受信した前記送信元の端末装置からの指示に応じて、前記印刷データを前記宛先の印刷装置とは別の印刷装置に転送可能であることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記印刷データ管理部は、前記送信元の端末装置からの指示に応じて、前記宛先の印刷装置で前記印刷データに基づく印刷を実行させ、印刷を実行するタイミングを設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記印刷データ管理部は、前記印刷データを受信してから所定時間経過しても前記送信元の端末装置からの指示がない場合、前記印刷データを削除することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−91332(P2012−91332A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238433(P2010−238433)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】