説明

制振ケーブルの据え付け方法及びケーブルドラム

【課題】 予めヘリカルロープが巻き付けられた制振ケーブルを施工現場に据え付けることができるようにする。
【解決手段】 主ケーブル35にヘリカルロープ37を螺旋状に巻き付けて制振ケーブル14を作成し、この制振ケーブル14にSUSバンド及びカバー部材55を装着してドラム12に巻き取り、このドラム12に巻き取られた制振ケーブル14を施工現場に搬送し、施工現場でSUSバンド及びカバー部材55を取り除いて制振ケーブル14を据え付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振ケーブルの据え付け方法及びケーブルドラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吊り橋等で橋梁を吊下げるケーブルが風雨によって振動するのを抑制するために、そのケーブルに制振対策を施すことが知られている。例えば下記特許文献1には、複数本のストランドを束ねて六角形断面のケーブルとし、そのケーブルに制振用のストランドを螺旋状に巻き付けることにより、渦励振の発生を抑制することが開示されている。
【0003】
また、下記非特許文献1には、明石海峡大橋のハンガーロープに施された制振対策事例が紹介されている。明石海峡大橋は、主塔間にメインケーブルを張り渡すとともに、このメインケーブルにハンガーロープを介して橋梁を吊下げる構成となっている。そして、この既設のハンガーロープに制振用のヘリカルロープを螺旋状に巻き付けることによってハンガーロープの振動が観測されなくなった、ということが記載されている。ヘリカルロープの具体的な巻き付け方法としては、ハンガーロープの上端にヘリカルロープの上端を固定し、このヘリカルロープを搭載した巻き付け機を自重によってハンガーロープに沿って旋回下降しながら、ヘリカルロープを巻き付けていき、ハンガーロープの下端にヘリカルロープを固定する、という巻き付け方法が開示されている。そして、この巻き付け方法によれば、ハンガーロープの中間部での作業員の作業が不要となり施工効率と安全性の向上が確保されると記載されている。
【特許文献1】特開平11−350421号公報
【非特許文献1】竹口昌弘著、「明石海峡大橋のハンガーロープ制振対策」、本四技報、2000年4月、vol.24、No.93
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、ケーブルの外周にストランドを螺旋状に巻き付けてなるケーブルの制振構造が開示されているだけであり、この文献1は、制振ケーブルを実際に据え付けるときの具体的な手段については何ら開示していない。
【0005】
一方、前記非特許文献1では、既設の明石海峡大橋のハンガーロープにヘリカルロープを巻き付けていくものであるために、現場でのヘリカルロープの巻き付け作業が必須となる。このため、専用の巻き付け装置を使用する必要がある等、現場での巻き付け作業ということに起因する種々の制約が課せられるのは避けられない。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、予めヘリカルロープが巻き付けられた制振ケーブルを施工現場に据え付けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、主ケーブルにヘリカルロープを螺旋状に巻き付けて制振ケーブルを作製する巻装工程と、前記制振ケーブルをドラムに巻き取る巻取工程と、前記ドラムに巻き取られた前記制振ケーブルを施工現場に搬送する搬送工程と、前記施工現場で前記制振ケーブルを前記ドラムから繰り出して、この制振ケーブルを据え付ける据え付け工程とを含む制振ケーブルの据え付け方法とした。
【0008】
この据え付け方法では、ヘリカルロープを主ケーブルに予め巻装しておき、それを一旦、ドラムに巻き取った後、施工現場へ搬送するので、施工現場においては、制振ケーブルをドラムから繰り出しながら据え付けていくことになる。このため、ヘリカルロープが巻装された制振ケーブルを通常のケーブルと同様の方法で据え付けることができ、施工現場でヘリカルロープを巻き付ける作業を行う必要がないので、現場での据え付けに要する施工期間を短縮することができる。
【0009】
この据え付け方法において、前記制振ケーブルを前記ドラムに巻き取る前に、前記ヘリカルロープを前記主ケーブルに止着する止着部材を前記制振ケーブルに装着する止着工程を含むのが好ましい。
【0010】
こうすれば、ドラムへの巻き取り時や施工現場への搬送時において、ヘリカルロープの巻装位置ずれ等が生じ難くなり、制振ケーブルを据え付けるときにヘリカルロープの調整作業等が煩雑になるのを防止することができる。この結果、制振ケーブルの据付作業時間の短縮を図ることができる。
【0011】
そして、前記施工現場に搬送された後、据え付けられる前の前記制振ケーブルから前記止着部材を取り除く除去工程を含むのが好ましい。
【0012】
また、前記止着部材は、前記制振ケーブルに所定ピッチで巻装される複数のSUSバンドによって構成され、前記SUSバンドの巻装部位にカバー部材を装着するカバー工程が含まれ、前記除去工程では、前記制振ケーブルから前記SUSバンドを取り除く前に前記カバー部材が取り除かれるのが好ましい。
【0013】
こうすれば、ヘリカルロープの位置ずれを防止できる止着力を容易に確保できる一方、ドラムへの巻き取り時や施工現場への搬送時において、SUSバンドによって制振ケーブルが傷付けられるのを防止しつつ、現場へ据え付けられた制振ケーブルの制振能力がカバー部材及びSUSバンドによって悪影響を受けるのを回避することができる。
【0014】
また、前記ヘリカルロープの少なくとも一端にこのヘリカルロープの長さを調整するための長さ調整用冶具を取り付ける冶具取付工程を含むのが好ましい。
【0015】
この場合、制振ケーブルの据え付け作業のときに、長さ調整用冶具によってヘリカルロープの長さを微調整することができるので、簡易な調整作業を行うだけでヘリカルロープが緩まないように据え付けることができる。
【0016】
さらに、前記巻装工程では、緩みが生じない程度に前記ヘリカルロープに張力を与えながら前記主ケーブルへ巻き付ければ、施工後においてもヘリカルロープがずれ難くなるので、メンテナンスの負担を低減することができる。
【0017】
また、前記ヘリカルロープが前記主ケーブルに巻き付られてから前記ドラムに巻き取られるように前記巻装工程と前記巻取工程とを並行して行うのが好ましい。
【0018】
こうすれば、制振ケーブルがドラムに巻き取られることによって走行するので、その走行に合わせてヘリカルロープを巻き付けていけば、主ケーブルにヘリカルロープを容易に螺旋状に巻き付けていくことができる。
【0019】
また、本発明は、ドラムと、主ケーブルにヘリカルロープを螺旋状に巻き付けてなる制振ケーブルとを備え、前記ドラムに前記制振ケーブルが巻き付けられているケーブルドラムとすることもできる。
【0020】
本発明によれば、ケーブルドラムを施工現場へ搬送すれば、予めヘリカルロープが巻装された制振ケーブルを繰り出しすだけで、制振ケーブルを据え付けていくことができる。このため、施工現場での制振ケーブルの据え付け作業を通常のケーブルの据え付け作業と同様に行うことができ、制振ケーブルを比較的楽な作業で短期間に据え付けることができる。また、制振ケーブルを施工現場へ据え付ける工事に先立って、工場等でヘリカルロープを予め主ケーブルに巻装しておくとしても、ケーブルドラムとして保管しておくことができるので、保管が煩わしくなることはない。
【0021】
ここで、前記制振ケーブルに、前記ヘリカルロープを前記主ケーブルに止着する止着部材が設けられていれば、保管時等にヘリカルロープの巻装位置ずれ等が生じ難くなるので、施工現場へ据え付けられる制振ケーブルによる制振効果を有効に発揮させることができる。
【0022】
この場合において、前記止着部材は、前記制振ケーブルに所定ピッチで巻装される複数のSUSバンドによって構成され、前記制振ケーブルにおける前記各SUSバンドの巻装部位には、これら各SUSバンドを覆うカバー部材がそれぞれ設けられているのが好ましい。
【0023】
こうすれば、ヘリカルロープの位置ずれが防止できる止着力を容易に確保できる一方、ドラムに巻装された制振ケーブルがSUSバンドによって傷付けられるのを防止することができる。
【0024】
前記ヘリカルロープの少なくとも一方の端部に、このヘリカルロープの長さを調整するための長さ調整用冶具が設けられていれば、制振ケーブルの施工に際し、長さ調整用冶具によってヘリカルロープの長さを調整できるので、ヘリカルロープが緩まないように制振ケーブルを据え付けることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、ヘリカルロープを主ケーブルに予め巻装してドラムに巻き取っておき、それを施工現場へ搬送するようにしたので、施工現場において制振ケーブルをドラムから繰り出すことにより、通常のケーブルと同様の方法で制振ケーブルを据え付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1及び図2は本発明の一実施形態としてのケーブルドラム10を示しており、同図に示すように、本実施形態に係るケーブルドラム10は、ドラム12と、このドラム12に巻き付けられた制振ケーブル14とを備えている。制振ケーブル14は、主ケーブル35とこの主ケーブル35に巻装されたヘリカルロープ37とを備えている。制振ケーブル14の詳細については後述する。
【0028】
ドラム12は、円筒状の胴部18と、この胴部18の両端部にそれぞれ設けられた鍔部20とを備えている。このドラム12として、例えば鍔径が2.5mで、横幅(軸方向長さ)が2.2mで、銅径Dが2mのものが使用されている。
【0029】
両鍔部20には、脚部22がそれぞれ設けられている。この脚部22は、ドラム12を保管するときに安定して縦置きできるようにするためのものである。この脚部22は、鍔部20にボルト締結されていて着脱可能となっている。
【0030】
胴部18の内側には、十字状に形成された支持部材24が胴部18の両端部にそれぞれ設けられており、この各支持部材24は、その中心部が支軸管25によって結合されている。この支軸管25は、制振ケーブル14を巻き取ったり、繰り出したりするためにドラム12を回転させるときに使用されるものである。
【0031】
胴部18には、軟質部材27が巻き付けられており、制振ケーブル14は、この軟質部材27の上から胴部18に巻装されている。軟質部材27は、例えばフェルト等によって構成されており、制振ケーブル14の傷つき防止等のために設けられている。
【0032】
胴部18には、主ケーブル35の一端部(巻き始め側端部)36aを固定するための架台29が設けられている。この架台29は、胴部18の軸方向一端部における外周面に配設されるものである。架台29は、アングル材29aを胴部18から断面三角形状に突出する形状になるように組んだものであり、この架台29の一方の面がケーブル端部36aを載置するための載置面となっている。主ケーブル35の巻き始め側端部36aは、カバー31が被せられた状態でワイヤ34等によって架台29に結合されている。
【0033】
主ケーブル35の他端部(巻き終わり側端部)36bは、カバー31が被せられた状態で、鍔部20に設けられた押え部材33によって保持されている。この押え部材33は、両鍔部20に架け渡されるように設けられるものであり、ケーブル端部36bは、この押え部材33と胴部18とに挟まれることで解けないようになっている。
【0034】
制振ケーブル14は、互いに重なり合わないように胴部18に一重に巻き付けられている。制振ケーブル14は、いわゆるアンカーケーブルとして構成されるものであり、例えば吊り橋のメインケーブルと橋桁(何れも図示省略)とを結合するハンガーロープ等として使用することができる。
【0035】
主ケーブル35の両端部36a,36bは、図3(a)に示すように、それぞれアンカー部41a,41bとして構成されている。巻き始め側端部36aを構成するアンカー部41aは、橋桁等に設けられた下側定着金具46に接続可能に構成されており、また巻き終わり側端部36bを構成するアンカー部41bは、前記吊り橋のメインケーブル等に設けられた上側定着金具44に接続可能に構成されている。このアンカー部41a,41bは、主ケーブル35に嵌め込まれたオーバーラップ管39,39の外端部に設けられている。
【0036】
主ケーブル35は、図4に示すように、ケーブル素線35aを束ねたケーブル本体部35bと、このケーブル本体部35bを被覆する被覆層35cとを備えている。被覆層35cとしては、ポリエチレンを素材としたポリエチレン被覆が例えば用いられている。
【0037】
主ケーブル35は、被覆層35cが露出しているところで外径dが例えば100mmに形成されている。この結果、ドラム12の胴径Dと主ケーブル35の外径dとの比(D/d)は20となっている。このようにD/dが20になるようにドラム12を選定することにより、ヘリカルロープ37が巻き付けられた制振ケーブル14をドラム12に巻き取る構成としても、主ケーブル35の被覆を傷めないようになっている。なお、外径dが130mmの主ケーブル35を用いるとともに、胴径Dが2.9mのドラム12を用いてもよい。この場合には、D/dが22.3となる。
【0038】
ヘリカルロープ37は、主ケーブル35に螺旋状に巻き付けられるものである。本実施形態では、ヘリカルロープ37を2本巻き付けている。ヘリカルロープ37は、図5に示すように、ワイヤロープ37aと、このワイヤロープ37aを被覆する被覆層37bとからなる。ワイヤロープ37aは、例えば6×19G/O 6.3mm G種のものが使用されている。被覆層37bとしては、ナイロンを素材としたナイロン被覆が例えば用いられている。
【0039】
制振ケーブル14の適所には、図6に示すように、止着部材の一例としてのSUSバンド51がゴム板53を介装した状態で巻装されている。ゴム板53は、SUSバンド51の装着部位に配設されるものであり、ヘリカルロープ37を巻き付けた上から制振ケーブル14に被せられ、その上からSUSバンド51が巻き付けられている。SUSバンド51は、ヘリカルロープ37の螺旋ピッチに応じて設けられており、例えば螺旋ピッチの0.5〜3倍程度の間隔をおいて配設されている。
【0040】
SUSバンド51は、ゴム板53を含めた外周長さよりも長いバンド部51aと、このバンド部51aの長さを調整するためのバックル部51bとからなる。このバックル部51bは、バンド部51aを挿通させる図略の孔と、この孔にねじ部が露出する雄ねじ51cとを有する。一方、バンド部51aには、雄ねじ51cのねじ部に噛合する図略の溝がバンド部51aの長さ方向に等ピッチに形成されている。そして、バックル部51bの雄ねじ51cを回転させることによって、バンド部51aを締め込んでいくことができるようになっている。
【0041】
SUSバンド51の装着部位には、このSUSバンド51を覆うようにカバー部材55が設けられている。カバー部材55は、例えばフェルトによって構成されており、ビニルテープ56(図2参照)によって固定されている。カバー部材55は、SUSバンド51によって制振ケーブル14が傷つくのを防止したり、制振ケーブル14の自重でSUSバンド51が変形するのを防止するために設けられている。
【0042】
ヘリカルロープ37の両端部には、図3(a)、図7(a)及び(b)に示すように、ヘリカルロープ37の長さを調整するための長さ調整用冶具57が設けられている。この長さ調整用冶具57は、オーバル59と、ジョーボルト60と、ターンバックル61とを備えている。
【0043】
オーバル59は、その基端部がヘリカルロープ37の端部を折り曲げて形成された環状部に結合される一方、先端部が雄ねじに形成されている。ヘリカルロープ37の環状部は、ヘリカルロープ37が所望の長さになるように端部を所定長さ分だけ折返し、この折返し部位をワイヤクリップ63によって締め付け加工することにより形成されるものである。前記環状部には、シンブル65が嵌め込まれている。なお、ワイヤクリップ63による締め付け加工は、工場内でのアッセンブリ時には、現場での据え付け時に微調整が可能なように、ヘリカルロープ37の被覆層37bを傷めない程度の仮止め加工となっている。
【0044】
ジョーボルト60は、基端部が定着金具44,46に結合可能に構成される一方、先端部が雄ねじに形成されている。定着金具44,46には、その金具本体にU字状をなす固定部44a,46aが固定された構成とされている。そして、ジョーボルト60の基端部は、この固定部44a,46aに結合可能となっている。
【0045】
ターンバックル61は、両端部にオーバル59又はジョーボルト60の雄ねじに螺合可能な雌ねじが切られている。そして、ターンバックル61を回転させることにより、オーバル59及びジョーボルト60間の間隔を変えることができるようになっている。
【0046】
ここで、本実施形態に係るケーブルドラム10の製法及び制振ケーブル14の据え付け方法について説明する。
【0047】
ケーブルドラム10を作製するには、まず、制振ケーブル14を構成する所定長さの主ケーブル35を用意するとともに、ヘリカルロープ37を用意する。このとき、主ケーブル35の両端部36a,36bにはそれぞれカバー31,31を被せておく。一方、ヘリカルロープ37の両端部は、折返し処理が施されていて、この状態でワイヤクリップ63によって仮止めされている。そして、このヘリカルロープ37の折返し部位にはオーバル59が取り付けられるとともに、このオーバル59にターンバックル61を介してジョーボルト60が装着されている。すなわち、本実施形態では、制振ケーブル14をドラム12に巻き取る前にヘリカルロープ37の両端部に長さ調整用冶具57を取り付けるようにしている(冶具取付工程)。なお、このときヘリカルロープ37の折返し部位には、オーバル59のみを装着しておいて、ターンバックル61及びジョーボルト60は現場施工時に取り付けるようにしてもよい。また、長さ調整用冶具57は、制振ケーブル14をドラム12に巻き取った後、現場施工時にヘリカルロープ37に取り付けるようにすることも可能である。
【0048】
次に、主ケーブル35の巻き始め側端部36aをドラム12胴部18の架台29に結合するとともに、ヘリカルロープ37の一端部(巻き始め側端部)を架台29のアングル材29aに結合する。これらの結合は、施工現場へ据え付けるときには外すことができるように例えばワイヤ34,70等で行う。
【0049】
そして、図8に示すように、主ケーブル35の適所を台車72で支持し、主ケーブル35の巻き終わり側端部36bを図外のウインチに固定する。このウインチは、巻き取り時の反力を取るためのものである。
【0050】
この状態で、ヘリカルロープ37を巻き始め側端部から主ケーブル35に螺旋状に巻き付けていくが(巻装工程)、このとき、ドラム12を図示省略したモータによって回転して制振ケーブル14をドラム12に巻き取りながらヘリカルロープ37の巻き付けを行う(巻取工程)。すなわち、本実施形態では、巻装工程と巻取工程とを並行して行っている。
【0051】
この工程において、ドラム12の回転によって主ケーブル35が一定のスピードで巻き取られていくが、このとき例えば所定長さ(例えば800mm)の棒部材(図示省略)を使用し、この棒部材を巻き付けピッチの目安にしながら所定のピッチ(例えば800mm)でヘリカルロープ37を巻き付けていく。
【0052】
また、このヘリカルロープ37の巻き付け作業においては、ヘリカルロープ37に緩みが生じない程度にヘリカルロープ37に所定の張力を与えながら巻き付けを行う。この張力は、例えば98N(10kgf)程度である。
【0053】
そして、ヘリカルロープ37の巻き付けを行う場所よりも下流側で、制振ケーブル14にSUSバンド51を装着していく(止着工程)。このSUSバンド51は、所定間隔をおいて装着していくが、SUSバンド51を装着するときには、ドラム12の回転を停止させて制振ケーブル14を静止させる。そして、この状態で制振ケーブル14にゴム板53を被せてそこにSUSバンド51を装着し、バックル部51bの雄ねじ51cを回してバンド部51aを締め込むことにより、SUSバンド51によってゴム板53を締め付ける。
【0054】
そして、その上からカバー部材55を被せ(カバー工程)、このカバー部材55をビニルテープ56等によって止める。このカバー部材55の装着が終わると、再びドラム12を回転させて制振ケーブル14を走行させる。これを繰り返し、ヘリカルロープ37の巻き付け、SUSバンド51及びカバー部材55の装着を行いながら、制振ケーブル14をドラム12に巻き取っていく。
【0055】
そして最後に、主ケーブル35の巻き終わり側端部36bを押え部材33によってドラム12の胴部18との間に挟み込んで、この押え部材33を鍔部20に締結固定する。そして、ヘリカルロープ37の端部をワイヤ74等によって鍔部20に結合する。このようにしてケーブルドラム10が出来上がる。
【0056】
そして、前記のように作成されたケーブルドラム10は、倉庫等に保管された後、施工時期に合わせて施工現場へ搬送される(搬送工程)。
【0057】
施工現場では、ドラム12の脚部22及び押え部材33を取り外した後、ドラム12を回転しながら制振ケーブル14を巻き終わり側端部36bから繰り出していく。このとき、カバー部材55及びSUSバンド51を取り外しながら、制振ケーブル14の繰り出しを行う(除去工程)。
【0058】
そして、図3(a)(b)は制振ケーブル14の施工完了例を示しているが、同図から理解されるように、主ケーブル35の巻き終わり側端部36bを上側定着金具44に固定するとともに、ヘリカルロープ37の巻き終わり側端部に設けられたジョーボルト60を上側定着金具44の固定部44aに結合する。一方、主ケーブル35の巻き始め側端部36aを下側定着金具46に固定するとともに、ヘリカルロープ37の巻き始め側端部に設けられたジョーボルト60を下側定着金具46の固定部46aに結合する(据え付け工程)。このとき、ヘリカルロープ37端部の折返し部位の長さを必要に応じて調整するとともに、ターンバックル61によってヘリカルロープ37の長さを調整し、ワイヤクリップ63による締め付けを行い、折返し部位をさらにしっかりかしめる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態による制振ケーブル14の据え付け方法では、工場内でヘリカルロープ37を主ケーブル35に予め巻装しておき、それを一旦、ドラム12に巻き取った後、施工現場へ搬送するので、施工現場においては、ヘリカルロープ37が巻装された制振ケーブル14をケーブルドラム12から繰り出しながら据え付けていくことができる。このため、制振ケーブル14を通常のケーブルと同様の方法で据え付けることができ、しかも施工現場でヘリカルロープ37を巻き付ける作業を行う必要がないので、制振ケーブル14を比較的楽な作業で短期間に据え付けることができる。
【0060】
また、制振ケーブル14を施工現場へ据え付ける工事に先立って、工場等でヘリカルロープ37を予め主ケーブル35に巻装しておくとしても、ケーブルドラム10として保管しておくことができるので、保管が煩わしくなることはない。
【0061】
さらに本実施形態では、制振ケーブル14をドラム12に巻き取る前にSUSバンド51でヘリカルロープ37を主ケーブル35に止着するようにしたので、ヘリカルロープ37の位置ずれを防止できる止着力を容易に確保することができる。したがって、ドラム12への巻き取り時、保管時、施工現場への搬送時等において、ヘリカルロープ37の巻装位置ずれ等を生じ難くでき、工場内でのヘリカルロープ37の巻き付け状態を据え付け時まで維持することができる。この結果、施工現場へ据え付けられる制振ケーブル14による制振効果を有効に発揮させることができるようになる。しかも、制振ケーブル14を据え付けるときにヘリカルロープ37の調整作業等を容易にできるので、制振ケーブル14の据付作業時間が長くなるのを回避することができる。
【0062】
また、本実施形態では、SUSバンド51にカバー部材55を被せる一方、施工現場で据え付ける際に、SUSバンド51及びカバー部材55を取り除くようにしたので、ドラム12への巻き取り時や施工現場への搬送時に制振ケーブル14がSUSバンド51によって傷付けられるのを防止しつつ、現場へ据え付けられた制振ケーブル14の制振能力がカバー部材55及びSUSバンド51によって悪影響を受けるのを回避することができる。
【0063】
また、巻装工程においてヘリカルロープ37に緩みが生じない程度に張力を与えながら巻き付けるようにしているので、施工後においてもヘリカルロープ37がずれ難くなり、メンテナンスの負担を低減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、巻装工程と巻取工程とを並行して行うようにしたので、ドラム12を回転させて制振ケーブル14を巻き取る際の主ケーブル35の走行に合わせてヘリカルロープ37を巻き付けることができ、ヘリカルロープ37を主ケーブル35に容易に螺旋状に巻き付けていくことができる。
【0065】
また、本実施形態では、ヘリカルロープ37の端部に長さ調整用冶具57を設けるようにしたので、制振ケーブル14の据え付け施工に際し、長さ調整用冶具57によってヘリカルロープ37の長さを調整できるので、巻き直し等を行うことなく簡単な調整作業を行うだけでヘリカルロープ37が緩まないように制振ケーブル14を据え付けることができる。しかも、本実施形態では長さ調整用冶具57を工場内で取り付けておくようにしているので、ケーブルドラム10の搬送時等にはこの長さ調整用冶具57を利用してヘリカルロープ37の端部をドラム12に仮止めすることができる。さらに、施工現場における据え付け作業時には、長さ調整用冶具57の取り付け作業が不要となるので、施工工期を短縮することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、ヘリカルロープ37の端部に設けられた長さ調整用冶具57は、両端部ともにターンバックル61によるものとしたが、これに代え、図9及び図10に示すように、少なくとも一方の長さ調整用冶具57は、オーバーラップ管39に設けられたフランジ部81と、このフランジ部81に結合可能なエンドクランプ83と、このエンドクランプ83に螺合するナット85とを備える構成としてもよい。すなわち、オーバーラップ管39には、軸方向に間隔をおいて配置される複数のフランジ部81が設けられ、このフランジ部81には、エンドクランプ83を挿通可能な貫通孔が設けられている。エンドクランプ83の基端部は、ヘリカルロープ37の一端部にかしめられており、先端部は雄ねじに構成されている。そして、エンドクランプ83の先端部にナット85を螺合させることにより、何れかのフランジ部81においてナット85が係合してヘリカルロープ37の長さ調整を行いつつ、エンドクランプ83の抜け止めにすることができる。この構成では、工場内においてヘリカルロープ37の端部にエンドクランプ83を装着しておき、このエンドクランプ83を施工現場でフランジ部81に結合するようにすればよい。その他、ケーブルドラム10の製法及び制振ケーブル14の据え付け方法は前記実施形態と同様である。
【0067】
なお、図9及び図10では、オーバーラップ管39として、制振ダンパー88が取り付けられる構成のものを示しているが、オーバーラップ管39はこのような構成に限られるものではない。
【0068】
また、本実施形態では、長さ調整用冶具57をヘリカルロープ37の両端部に設けた例について説明したが、何れの実施形態においても、長さ調整用冶具57をヘリカルロープ37の一方の端部のみに設ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係るケーブルドラムの全体構成を示す正面図である。
【図2】前記ケーブルドラムの側面図である。
【図3】(a)前記ケーブルドラムに巻き付けられた制振ケーブルを定着金具に固定した状態で示す正面図である。(b)定着金具の側面図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】ヘリカルロープの断面図である。
【図6】SUSバンドを装着した部位での制振ケーブルの断面を示す図である。
【図7】ヘリカルロープの端部に取り付けられた長さ調整用冶具を示しており、(a)は正面図で、(b)は側面図である。
【図8】ドラムに制振ケーブルを巻き付ける工程を説明するための説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る制振ケーブルを定着金具に固定した状態で示す正面図である。
【図10】本発明の他の実施形態における長さ調整用冶具を示しており、(a)はその全体構成を示す図であり、(b)は長さ調整方法を説明するための説明図であり、(c)はエンドクランプ及びナットの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
12 ドラム
14 制振ケーブル
27 軟質部材
35 主ケーブル
37 ヘリカルロープ
51 SUSバンド(止着部材の一例)
55 カバー部材
57 長さ調整用冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ケーブルにヘリカルロープを螺旋状に巻き付けて制振ケーブルを作製する巻装工程と、
前記制振ケーブルをドラムに巻き取る巻取工程と、
前記ドラムに巻き取られた前記制振ケーブルを施工現場に搬送する搬送工程と、
前記施工現場で前記制振ケーブルを前記ドラムから繰り出して、この制振ケーブルを据え付ける据え付け工程とを含む制振ケーブルの据え付け方法。
【請求項2】
前記制振ケーブルを前記ドラムに巻き取る前に、前記ヘリカルロープを前記主ケーブルに止着する止着部材を前記制振ケーブルに装着する止着工程を含む請求項1に記載の制振ケーブルの据え付け方法。
【請求項3】
前記施工現場に搬送された後、据え付けられる前の前記制振ケーブルから前記止着部材を取り除く除去工程を含む請求項2に記載の制振ケーブルの据え付け方法。
【請求項4】
前記止着部材は、前記制振ケーブルに所定ピッチで巻装される複数のSUSバンドによって構成され、
前記SUSバンドの巻装部位にカバー部材を装着するカバー工程が含まれ、
前記除去工程では、前記制振ケーブルから前記SUSバンドを取り除く前に前記カバー部材が取り除かれる請求項3に記載の制振ケーブルの据え付け方法。
【請求項5】
前記ヘリカルロープの少なくとも一端にこのヘリカルロープの長さを調整するための長さ調整用冶具を取り付ける冶具取付工程を含む請求項1から4の何れか1項に記載の制振ケーブルの据え付け方法。
【請求項6】
前記巻装工程では、緩みが生じない程度に前記ヘリカルロープに張力を与えながら前記主ケーブルへ巻き付ける請求項1から5の何れか1項に記載の制振ケーブルの据え付け方法。
【請求項7】
前記ヘリカルロープが前記主ケーブルに巻き付られてから前記ドラムに巻き取られるように前記巻装工程と前記巻取工程とを並行して行う請求項1から6の何れか1項に記載の制振ケーブルの据え付け方法。
【請求項8】
ドラムと、
主ケーブルにヘリカルロープを螺旋状に巻き付けてなる制振ケーブルとを備え、
前記ドラムに前記制振ケーブルが巻き付けられているケーブルドラム。
【請求項9】
前記制振ケーブルには、前記ヘリカルロープを前記主ケーブルに止着する止着部材が設けられている請求項8に記載のケーブルドラム。
【請求項10】
前記止着部材は、前記制振ケーブルに所定ピッチで巻装される複数のSUSバンドによって構成され、
前記制振ケーブルにおける前記各SUSバンドの巻装部位には、これら各SUSバンドを覆うカバー部材がそれぞれ設けられている請求項9に記載のケーブルドラム。
【請求項11】
前記ドラムの胴部は、軟質部材で覆われており、
前記制振ケーブルは、前記軟質部材の外側から前記ドラムの胴部に巻き付けられている請求項10に記載のケーブルドラム。
【請求項12】
前記ヘリカルロープの少なくとも一方の端部には、このヘリカルロープの長さを調整するための長さ調整用冶具が設けられている請求項8から11の何れか1項に記載のケーブルドラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−144361(P2006−144361A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334710(P2004−334710)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000192626)神鋼鋼線工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】