説明

制振システム

【課題】 制振システムの振子運動の周期を所定の周期としつつ、質量体の吊長さが短くすることができる。
【解決手段】 制振対象物の振動を制御する制振システム1であって、制振対象物に固定された上部構造部10と、上部構造部10から吊られた第1質量体12と、制振対象物に固定された下部構造部20と、下部構造部20に対して回動可能に連結する支持部材24と、支持部材24に支持され、下部構造部20の上方に位置する、第1質量体12よりも軽い第2質量体22と、鉛直方向と交差する方向に配置された回転軸31を有することにより、第1質量体12と第2質量体22とを鉛直方向に相対移動可能に連結する蝶番機構30と、第1質量体12又は第2質量体22の制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパー40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振対象物の振動を制御する制振システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、制振対象物の振動を制御する制振システムであって、前記制振対象物に固定された上部構造部と、前記上部構造部から吊られた質量体と、前記質量体の前記制振対象物に対する相対移動を減速させるダンパーと、を備えることを特徴とする制振システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−58012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制振対象物の振動を制振させるためには、質量体の振子運動の周期が、制振対象物の固有周期に同調するように設計する必要がある。ここで、制振対象物の固有周期が長い場合には、質量体の吊長さは長くする必要がある。しかし、質量体の吊長さが長いと、制振システムのためのスペースを確保することが困難な場合があるとの課題がある。
【0005】
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、制振システムの振子運動の周期を所定の周期としつつ、質量体の吊長さが短い制振システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための主たる発明は、
制振対象物の振動を制御する制振システムであって、
前記制振対象物に固定された上部構造部と、
前記上部構造部から吊られた第1質量体と、
前記制振対象物に固定された下部構造部と、
前記下部構造部に対して回動可能に連結する支持部材と、
前記支持部材に支持され、前記下部構造部の上方に位置する、前記第1質量体よりも軽い第2質量体と、
鉛直方向と交差する方向に配置された回転軸を有することにより、前記第1質量体と第2質量体とを鉛直方向に相対移動可能に連結する蝶番機構と、
前記第1質量体又は前記第2質量体の前記制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパーと、
を備えることを特徴とする制振システムである。
このような制振システムによれば、制振システムが対応できる周期を所定の周期としつつ、質量体の吊長さを短くすることができる。
【0007】
また、かかる制振システムであって、前記蝶番機構を複数有し、第1の前記蝶番機構が備える前記回転軸の向く方向と第2の前記蝶番機構が備える前記回転軸の向く方向とが異なることを特徴とする制振システムであってもよい。
このような制振システムによれば、制振システムが振動する際に、第1質量体と第2質量体とのあらゆる水平方向への相対移動を抑制することができる。
【0008】
また、かかる制振システムであって、前記第1質量体及び前記第2質量体の重心に対して点対称となるように、複数の前記蝶番機構が配置されることを特徴とする制振システムであってもよい。
このような制振システムによれば、蝶番機構へのねじれ方向の荷重を抑制できる。
【0009】
また、かかる制振システムであって、前記第1質量体又は前記第2質量体の前記制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパーと、
剛性を有し、前記上部構造部から前記第1質量体を吊る吊部材を備え、
少なくとも1つの前記ダンパーの一方の端部は、前記第1質量体が振動運動する際の前記吊部材の移動距離が前記第1質量体の移動距離よりも小さい、前記吊部材の一部分に連結し、
前記一方の端部において前記第1質量体に連結した前記ダンパーの他方の端部は、前記上部構造部又は前記下部構造部と連結することを特徴とする制振システムであってもよい。
【0010】
このような制振システムによれば、ストロークの小さいダンパーで振動を減衰させることができる。
【0011】
また、かかる制振システムであって、前記第1質量体又は前記第2質量体の前記制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパーを備え、
少なくとも1つの前記ダンパーの一方の端部は、前記第2質量体が振動運動する際の前記支持部材の移動距離が前記第2質量体の移動距離よりも小さい、前記支持部材の一部分に連結し、
前記一方の端部において前記第2質量体に連結した前記ダンパーの他方の端部は、前記上部構造部又は前記下部構造部と連結することを特徴とする制振システムであってもよい。
このような制振システムによれば、ストロークの小さいダンパーで振動を減衰させることができる。
【0012】
また、かかる制振システムであって、前記第1質量体又は前記第2質量体の前記制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパーと、
剛性を有し、前記上部構造部から前記第1質量体を吊る吊部材と、
を備え、
前記第2質量体は、水平方向に四方に延びた形状を有し、前記第2質量体の四方に延びた各端部において前記支持部材に連結することを特徴とする制振システムであってもよい。
このような制振システムによれば、ダンパーへのねじれ方向の負荷を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、制振システムの振子運動の周期を所定の周期としつつ、質量体の吊長さが短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態の制振システム1の構成を側面から模式的に示す概念図である。
【図2】制振システム1の構成を上面から模式的に示す概念図である。
【図3】蝶番機構30の構成を斜視的に示す説明図である。
【図4】制振対象物が外力を受けて振動することにより、制振システム1が振動している状態を側面から模式的に示す図である。
【図5】制振システム1の振動周期T[s]について説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
===第1実施形態===
図1は、第1の実施形態の制振システム1の構成を側面から模式的に示す概念図である(図面を見やすくするために、省略している部分がある)。図2は、制振システム1の構成を上面から模式的に示す概念図である。図1及び図2に示すように、制振システム1は、上部構造部10、第1質量体12、吊部材14、下部構造部20、第2質量体22、支持部材24、複数の蝶番機構30、複数のダンパー40を備える。
【0016】
上部構造部10は、後述する第1質量体の荷重を負担可能な強度を有する構造物であって、制振対象である制振対象物(不図示)に固定される。
【0017】
第1質量体12は、質量を有する質量体である。第1質量体12の一部は着脱可能な錘であり、第1質量体12の質量は錘の一部を取付け又は取外すことにより調整することができる。
【0018】
吊部材14は、上部構造部10から第1質量体12を吊る棒材である。吊部材14は、上部構造部10に連結する箇所の近傍と第1質量体12に連結する箇所の近傍とにおいてそれぞれジョイント部材14aを有し、これにより第1質量体12の振子運動を可能とする。
【0019】
下部構造部20は、後述する第2質量体の荷重を負担可能な強度を有する構造物であって、制振対象である制振対象物(不図示)に固定される。
【0020】
第2質量体22は、第1質量体12よりも軽い質量を有する質量体である。第2質量体22の一部は着脱可能な錘であり、第2質量体22の質量は錘の一部を取付け又は取外すことにより調整することができる。第2質量体22は、図2に示すように、四方に延びる腕部を有し、各腕部の先端部下面においてそれぞれ支持部材24に連結して支持される。
【0021】
支持部材24は、第2質量体22が下部構造部20の上方に位置するように、第2質量体22を支持する棒材である。支持部材24は、下部構造部20に連結する箇所の近傍と第2質量体22に連結する箇所の近傍とにおいてそれぞれジョイント部材24aを有し、これにより第2質量体22の振子運動を可能とする。
【0022】
蝶番機構30は、第1質量体12と第2質量体22とを鉛直方向に相対移動可能に連結する。図3は、蝶番機構30の構成を斜視的に示す説明図である。同図に示すように、蝶番機構30は、主回転軸31(回転軸に相当)と第1回転部材32と第1回転軸33と第1取付部材34と第1ナット35と第2回転部材36と第2回転軸37と第2取付部材38と第2ナット39とを備える。
【0023】
第1回転部材32は、四角形状の板部材であって、一辺に主回転軸31が取り付けられ、主回転軸31が取り付けられた辺に対向する辺(平行である辺)に第1回転軸33が取り付けられている。すなわち、主回転軸31と第1回転軸33は互いに平行となるように配置されている。第1回転部材32は、主回転軸31を中心に回転可能であるとともに、第1回転軸33を中心に回転可能である。第1回転軸33には、第1回転部材32に加えて、第1取付部材34が回転可能となるように取り付けられている。第1取付部材34は、第1ナット35で第1質量体12に固定されている。
【0024】
同様に、第2回転部材36は、四角形状の板部材であって、一辺に主回転軸31が取り付けられ、主回転軸31が取り付けられた辺に対向する辺(平行である辺)に第2回転軸37が取り付けられている。すなわち、主回転軸31と第2回転軸37は互いに平行となるように配置されている。第2回転部材36は、主回転軸31を中心に回転可能であるとともに、第2回転軸37を中心に回転可能である。第2回転軸37には、第2回転部材36に加えて、第2取付部材38が回転可能となるように取り付けられている。第2取付部材38は、第2ナット39で第2質量体22に固定されている。
【0025】
蝶番機構30は、図2に示すように、4つ設けられる。すなわち、蝶番機構30は、第1取付部材34において、第1質量体12における上面の四辺の中央部にそれぞれ連結される。また、蝶番機構30は、四方に延びた第2質量体22の腕部の下面にそれぞれ連結される。つまり、制振システム1の上方から見たときに、4つの蝶番機構30は、第1質量体12と第2質量体22との重心に対して点対称となるように配置されている。
【0026】
ダンパー40は、シリンダーとピストンロッドを備える。第1ダンパー40aのシリンダーは、上部構造部10に固定される。第1ダンパー40aのピストンロッドの端部は、吊部材14の上部構造部10に近い一部分に連結される。第1ダンパー40aの吊部材14への連結部分には、吊部材14の振子運動面において回動可能なジョイントを備え、第1ダンパー40aと吊部材14とはこのジョイントを介して連結する。
【0027】
また、第2ダンパー40bのシリンダーは、下部構造部20に固定される。第2ダンパー40bのピストンロッドの端部は、支持部材24の下部構造部20に近い一部分に連結される。第2ダンパー40bの支持部材24への連結部分には、支持部材24の振子運動面において回動可能なジョイントを備え、第2ダンパー40bと支持部材24とはこのジョイントを介して連結する。
【0028】
また、第3ダンパー40cのシリンダーは、第2質量体22の上面に固定される。第3ダンパー40cのピストンロッドの端部は、第1質量体12の下面に連結する。
【0029】
次に、制振対象物が外力を受けて振動するときの制振システム1の動作について説明する。
【0030】
図4は、制振対象物が外力を受けて振動することにより、制振システム1が振動(振子運動)している状態を側面から模式的に示す図である。同図に示すように、第1質量体12及び第2質量体22が振子運動することにより左右方向に移動すると、吊部材14及び支持部材24が傾き、蝶番機構30が鉛直方向に折り畳まれ、第1質量体12及び第2質量体22が鉛直方向に相対移動する。吊部材14に連結する第1ダンパー40aは吊部材14を介して第1質量体12の振動を減衰させ、支持部材24に連結する第2ダンパー40bは支持部材24を介して第2質量体22の振動を減衰させる。
【0031】
図5は、制振システム1の振動周期T[s]について説明するための概念図である。ここで、吊部材14及び支持部材24の長さL[m]と第1質量体12の質量m[kg]と第2質量体22の質量m[kg](m<m)とし、これらと制振システム1の振動周期T[s]との関係を説明する。なお、説明を簡略化するため、吊部材14及び支持部材24の質量はないものとする。また、第1質量体12と第2質量体22とを連結する機構として、摩擦力が無視できるようなスライド機構50を蝶番機構30に代えて用いる。
【0032】
同図において、第1質量体12の質点に作用する水平外力Fは、第1質量体12及び第2質量体22の質点を一体としたときに相互の系にスライド機構50を介して作用する水平力Fとすると、下式1により求められる。

また、同様にして、第2質量体22の質点に作用する水平外力Fは、下式2により求められる。

さて、第1質量体12及び第2質量体22の質点は、水平方向に一体として動くので、これらを一体とした系に作用する復元力Fは、下式3により求められる。
【0033】

【0034】
式1と式2は、第1質量体12の質点と第2質量体22の質点とを個別に見た時のそれらの質点に作用する復元力F、Fであり、式3はそれらを一体として見た時の復元力Fを表す。これら3つの系は全て同じ動きであるので、それらの慣性力に対する復元力の比率が同じである必要がある。この条件は、下式4で表される。

ここで、水平力Fは、式4を式1及び式2に代入すると、下式5で表される。

【0035】
次に、図4に示される第1質量体12の質点の水平方向の変位xとすると、変位xと吊部材14の長さLとの関係は、下式6で表される。

第1質量体12の質点が周期Tで振動する場合、その加速度aは、下式7で表される。

これに、第1質量体12及び第2質量体22の質量を乗じて得られる慣性力は、式3の復元力と釣合う条件より、周期Tは、振れ角θとすると、下式8で求められる。

なお、第1質量体12又は第2質量体22の質点の水平変位xが大きいと、周期Tの値は大きく変動するが、振れ角θが30度以下となるような範囲の水平変位xであれば、その周期変動が少なく、実用的に問題とはならない。
【0036】
以上、第1実施形態の制振システム1によれば、振子運動の周期を所定の周期としつつ、質量体の吊長さを短くすることができる。
一般的に、吊振子の周期Tは、吊長さL[m]とすると、下式9で表わされる。

すなわち、吊振子の周期Tは吊長さLのみに依存する。したがって、吊振子の周期Tを長くするためには、吊長さLを長くする必要があった。例えば、高層マンションの固有周期は5〜10秒の長い周期となるが、このような長い周期となるような吊振子の吊長さは10m以上となる。そうすると、マンションの1つの階(通常3m程度)ではとても納まらない。
【0037】
しかし、制振システム1によれば、式8に示すように、周期Tは、吊部材14の長さL、第1質量体12の質量m、第2質量体22の質量mの関数であり、第1質量体12の質量に対する第2質量体22の質量を、第1質量体12の質量以上とならない範囲で大きくすれば、吊部材14の長さLが所定の値であっても制振システム1の周期を長くすることができる。すなわち、制振システム1の高さを設計の都合上、所定の長さ(例えば3m程度)に収める必要があるとすると、第1質量体12の質量m及び第2質量体22の質量mの比率を調整することにより、制振システム1を取付ける構造物の固有周期に合わせることができる。
【0038】
例えば、式8によれば、制振対象物である高層マンションの固有周期が8秒であるとすると、制振システム1の周期もこれにあわせて8秒としなければならない。ここで、質量mと質量mの比率を8:7、吊部材14の長さLを1[m]にすれば、制振システム1の周期を約8秒とすることができる。この場合、支持部材24の長さも1[m]であり、吊部材14と支持部材24との長さの合計は約2[m]となり、制振システム1を1つの階に収納することができる。一方で、式9のような一般的な振子で周期を8秒とするには、振子の腕の長さが約16[m]である必要があり、これを収納できるようなスペースを確保することは困難である。
【0039】
さらに、第1実施形態の制振システム1によれば、第1質量体12と第2質量体22とが蝶番機構30により連結されているので、第1質量体12と第2質量体22との相対移動に際の摩擦をより小さくすることができ、もって、制振システム1の制振性能をより的確なものとすることができる。すなわち、ダンパー40以外に制振システム1の振動を減衰させる減衰力が生じると、その減衰力も考慮して制振システム1を設計しなければならなくなる。つまり、制振システム1の設計が複雑になり、的確な制振性能を確保することが難しくなる。しかし、第1実施形態の制振システム1によれば、第1質量体12と第2質量体22との相対移動に際の摩擦をより小さくすることができ、したがってダンパー40以外に制振システム1の振動を減衰させる減衰力の発生を抑制することができる。よって、制振システム1の設計が簡潔になり、的確な制振性能を確保しやすくなる。
【0040】
また、第1実施形態の制振システム1によれば、蝶番機構30を複数有し、ある蝶番機構30が備える主回転軸31の向く方向と、別の蝶番機構30が備える主回転軸31の向く方向とが異なることにより、第1質量体12と第2質量体22とのあらゆる水平方向への相対移動を抑制することができる。
【0041】
また、第1実施形態の制振システム1によれば、制振システム1を上方から見たときに、第1質量体12及び第2質量体22の重心に対して点対称となるように、複数の蝶番機構30が配置されることにより、蝶番機構30へのねじれ方向の荷重を抑制できる。
【0042】
なお、図1に示すように、第1質量体12と第2質量体22とは上下方向に離れた位置に位置し、蝶番機構30を介して連結するので、制振システム1の高さは吊部材14と支持部材24との長さの合計よりも短くすることができる。すなわち、制振システム1の高さは、概ね吊部材14と支持部材24の長さの合計から、蝶番機構30が第1質量体12と連結する箇所と蝶番機構30が第2質量体22と連結する箇所との間の距離を差し引いたものとすることができる。
【0043】
また、制振システム1によれば、制振システム1を据え付ける工事現場において、第1質量体12と第2質量体22の少なくとも一方の質量を加減して、質量mに対する質量mの比率を変えることにより、制振システム1の周期Tを簡易に調整することができる。
【0044】
また、制振システム1によれば、吊部材14や支持部材24等の振幅の小さい個所にダンパーを設けるので、可動範囲の短いダンパーを用いることができる。一般に、ダンパーのコストは、ダンパーのストローク長さが長ければ長いほど高くなる。制振システム1では、ストロークの短いダンパーを利用することができるので、コストを低く抑えることができる。
【0045】
また、制振システム1によれば、吊部材14の長さと支持部材24の長さを等しくすることで、第1質量体12及び第2質量体22の振幅を大きくとることができ、もって大きな制振性能を得ることができる。すなわち、吊部材14及び支持部材24の振れ角が30度を上回ると、制振システム1の周期が大きく変動する。そこで、吊部材14及び支持部材24の合計の長さが所定であるとすれば、吊部材14及び支持部材24の長さが等しければ、吊部材14及び支持部材24の振れ角が30度以内としつつ、水平変位xを最大限とすることができ、大きな制振性能を得ることができる。
【0046】
また、第1質量体12又は第2質量体22の制振対象物に対する相対移動の速度を減速させる第3ダンパー40cと、剛性を有し、上部構造部10から第1質量体12を吊る吊部材14と、を備え、第2質量体22は、水平方向に四方に延びた形状を有し、第2質量体22の四方に延びた各端部において支持部材24に連結することにより、第3ダンパー40cへのねじれ方向の負荷を抑制できる。
【0047】
===第2実施形態===
第1実施形態においては、吊部材と支持部材の長さが等しいとしたが、第2実施形態の制振システムにおいては、支持部材Lの長さは、吊部材Lの長さよりも短い。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0048】
第2実施形態の制振システムでは、第1質量体12及び第2質量体22の質量並びに吊部材14の長さを一定としつつ、支持部材24の長さ吊部材14の長さよりも短くすると、第1質量体12及び第2質量体22の質点の水平変位xはそれぞれ等しいので、支持部材24の振り角は大きくなる。そうすると、第2質量体22の質点に作用する水平外力Fは、式2によって求められる通り大きくなる。水平外力Fが大きくなると、第1質量体12の質点の復元力を減殺することになるので、制振システム1の周期を長くすることができる。
【0049】
以上、第2実施形態の制振システムによれば、支持部材24の長さを吊部材14の長さよりも短くすることによって、制振システムが対応できる周期を所定の周期としつつ、制振システム全体の長さを短くすることができる。
【0050】
また、このような制振システムによれば、制振システム1の周期を一定とした場合、支持部材24の長さを短くしつつ、第2質量体の重量を小さくすることができ、したがって制振システム1全体の重量を小さくすることができる。
【0051】
===第3実施形態===
第1実施形態及び第2実施形態の制振システムは、パッシブ方式であるが、第2実施形態の制振システムは、更に加振装置を第1質量体12に連結して備えるハイブリッド方式である。
【0052】
ここで、パッシブ方式とは、制振対象物に対して積極的な働きかけを行わないものであり、振子等のパッシブ制振手段を備え、その振子の振動によって制振対象物の振動を吸収するものである。これに対して、アクティブ方式は、制振対象物に付加質量体を置き、これを制振対象物の振動状態に応じて変位させて制振するものである。さらに、ハイブリッド方式は、パッシブ方式とアクティブ方式を併用したものである。
【0053】
制振システム1によれば、加振装置を備えることで、第1質量体及び第2質量体の質量を一定にしつつ、制振性能を向上させることができる。
【0054】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 制振システム
10 上部構造部
12 第1質量体
14 吊部材
14a ジョイント部材
20 下部構造部
22 第2質量体
24 支持部材
24a ジョイント部材
30 蝶番機構
31 主回転軸
32 第1回転部材
33 第1回転軸
34 第1取付部材
35 第1ナット
36 第2回転部材
37 第2回転軸
38 第2取付部材
39 第2ナット
40 ダンパー
40a 第1ダンパー
40b 第2ダンパー
40c 第3ダンパー
50 スライド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象物の振動を制御する制振システムであって、
前記制振対象物に固定された上部構造部と、
前記上部構造部から吊られた第1質量体と、
前記制振対象物に固定された下部構造部と、
前記下部構造部に対して回動可能に連結する支持部材と、
前記支持部材に支持され、前記下部構造部の上方に位置する、前記第1質量体よりも軽い第2質量体と、
鉛直方向と交差する方向に配置された回転軸を有することにより、前記第1質量体と第2質量体とを鉛直方向に相対移動可能に連結する蝶番機構と、
前記第1質量体又は前記第2質量体の前記制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパーと、
を備えることを特徴とする制振システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制振システムであって、
前記蝶番機構を複数有し、第1の前記蝶番機構が備える前記回転軸の向く方向と第2の前記蝶番機構が備える前記回転軸の向く方向とが異なることを特徴とする制振システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制振システムであって、
前記第1質量体及び前記第2質量体の重心に対して点対称となるように、複数の前記蝶番機構が配置されることを特徴とする制振システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の制振システムであって、
前記第1質量体又は前記第2質量体の前記制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパーと、
剛性を有し、前記上部構造部から前記第1質量体を吊る吊部材を備え、
少なくとも1つの前記ダンパーの一方の端部は、前記第1質量体が振動運動する際の前記吊部材の移動距離が前記第1質量体の移動距離よりも小さい、前記吊部材の一部分に連結し、
前記一方の端部において前記第1質量体に連結した前記ダンパーの他方の端部は、前記上部構造部又は前記下部構造部と連結することを特徴とする制振システム。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の制振システムであって、
前記第1質量体又は前記第2質量体の前記制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパーを備え、
少なくとも1つの前記ダンパーの一方の端部は、前記第2質量体が振動運動する際の前記支持部材の移動距離が前記第2質量体の移動距離よりも小さい、前記支持部材の一部分に連結し、
前記一方の端部において前記第2質量体に連結した前記ダンパーの他方の端部は、前記上部構造部又は前記下部構造部と連結することを特徴とする制振システム。
【請求項6】
請求項1〜3の何れかに記載の制振システムであって、
前記第1質量体又は前記第2質量体の前記制振対象物に対する相対移動の速度を減速させるダンパーと、
剛性を有し、前記上部構造部から前記第1質量体を吊る吊部材と、
を備え、
前記第2質量体は、水平方向に四方に延びた形状を有し、前記第2質量体の四方に延びた各端部において前記支持部材に連結することを特徴とする制振システム。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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