制振装置
【課題】抑制可能な振動の範囲を拡大し、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されていても、不定性3次元振動を抑制できるようにする。
【解決手段】制振装置50は、湾曲索部材13と、振動伝達部材に固定される第1の固定部2を備えた第1のベース体1と、制振対象物が固定される第2の固定部22を備えた第2のベース体21とを有している。第1の固定部2よりも第2の固定部22が鉛直方向の下側に位置するように配置されている。第1のベース体1は第1の内固定部5を有し、第2のベース体21は第2の内固定部25を有し、湾曲索部材13が第1の内固定部5と第2の内固定部25とに固定されている。
【解決手段】制振装置50は、湾曲索部材13と、振動伝達部材に固定される第1の固定部2を備えた第1のベース体1と、制振対象物が固定される第2の固定部22を備えた第2のベース体21とを有している。第1の固定部2よりも第2の固定部22が鉛直方向の下側に位置するように配置されている。第1のベース体1は第1の内固定部5を有し、第2のベース体21は第2の内固定部25を有し、湾曲索部材13が第1の内固定部5と第2の内固定部25とに固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の振動を抑制する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物、高層建築物、産業機械、橋梁、高架式の道路や線路といった固定構造物や、車両、航空機、船舶といった移動構造物は地震や強風、車両の走行等による外力を受けるとその外力に応じて振動する。また、移動構造物や産業機械は移動中または運転中も種々の要因によって振動する。
【0003】
従来、こうした構造物に発生する振動を抑制することを目的とした技術が知られている。例えば、木造建築物や高層建築物の地震や強風等による振動を抑制する装置としてTMD(Tuned Mass Damper)と呼ばれる装置が知られている。この装置は錘とその錘を振動自在に支持する弾性支持部材とから構成され、錘の振動周期が構造物の固有振動周期とほぼ同一となるように、錘の質量および弾性支持部材のばね定数が調整されている。このようなTMDに関して例えば特許文献1には、複数の錘のそれぞれが構造物の複数次の固有振動周期と同一の振動周期で振動するように構成された装置が開示されている。
【0004】
その他、構造物に発生する振動を抑制することを目的とした技術として、特許文献2,3,4に開示されている技術があった。特許文献2には、振り子とその振り子の錘を支える斜面を対称に配設した振り子式制御装置が開示されている。また、特許文献3には制震装置を屋根の棟構造にあわせて対として設置した制震構造が開示されている。特許文献4には竹の子ばね状の振動減衰装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−49387号公報
【特許文献2】特開平7−324518号公報
【特許文献3】特許第3483535号公報
【特許文献4】特開2000−283227号公報
【特許文献5】特開2011−27165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術によれば、地震や強風等によって固定構造物に発生する振動や移動構造物に発生する振動を抑制することが可能になる。
【0007】
しかし、特許文献1,2,3に開示されている装置では、振動を減衰させるための部材の構造上、構造物が水平面に沿って動く2次元的な水平方向の振動(以下「水平振動」という)を抑制できるに留まり、構造物が高さ方向に動く垂直方向の振動(以下「垂直振動」という)は抑制することが極めて困難であった。
【0008】
また、特許文献4に開示されている装置は、振動を減衰させるための竹の子ばねが軸方向に沿って伸縮するように構成されているため、軸方向に沿っている振動しか抑制することができなかった。
【0009】
つまり、上述した従来技術では、振動の方向が限られ、しかも装置の構造がその振動に対応しているときは、期待した振動抑制効果が得られるが、そうでなければ期待した振動抑制効果が得られないという課題があった。
【0010】
ところが、地震によって固定構造物や移動構造物に発生する振動、移動中の車両等に発生する振動、車両の走行に伴い橋梁等に発生する振動は水平振動と垂直振動とが組み合わさった3次元的な振動であり、しかも構造物の動く方向が定まっていない振動(以下「不定性3次元振動」という)であることがある。特に地震によって固定構造物や移動構造物に発生する振動は不定性3次元振動であることが多いため、振動を抑制する装置の構造を地震による振動に正確に適合させることは困難である。
【0011】
一方、不定性3次元振動を抑制し得る装置として、従来、特許文献5に開示されている制振装置が知られていた。
【0012】
しかし、この制振装置は、制振対象物にかかる重力や錘にかかる重力を鉛直方向の上側から作用させることにより螺旋構造体を撓ませる構造を有していた。制振装置を作動させるときは、主に木造家屋の床等に固定する場合や、水平な台上に制振装置を設置してその上側から精密機械等の制振対象物を載置することが想定されているに過ぎなかった。従来の制振装置は、不定性3次元振動の伝達源となる部材(「振動伝達部材」ともいう)が制振対象物と同じ場合(例えば、木造家屋等の建物自体が制振対象物の場合)か、振動伝達部材が制振対象物よりも鉛直方向の下側に配置されている場合(例えば、振動伝達部材である建物の床に制振対象物としてのサーバが設置されている場合)を想定した構造になっていた。
【0013】
そのため、例えば、車両や建物の天井、壁面等に固定されている防犯カメラ、監視カメラ等の精密機械や、天井や壁面等に固定されているダクトや空調装置といった構造物については、従来の制振装置によって不定性3次元振動を抑制することはできなかった。例えば、防犯カメラや監視カメラの場合、車両や建物の天井、壁面等が振動伝達部材になることが多く、振動伝達部材が制振対象物たる防犯カメラや監視カメラよりも鉛直方向の下側に配置されることは少ない。
【0014】
このように従来技術では、抑制できる振動の範囲が限られ、固定構造物についても移動構造物についても、不定性3次元振動を抑制することが極めて困難であるという課題があった。
【0015】
また、従来技術では、制振対象物の不定性3次元振動を抑制し得る設置形態が限られ、振動伝達部材が制振対象物よりも鉛直方向の上側に配置されているときは、不定性3次元振動を抑制することができなかった。
【0016】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大するとともに、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の線状部材をより合わせた索部材を湾曲させた湾曲部を有する湾曲索部材と、振動の伝達源となる振動伝達部材に固定される第1の固定部を備えた第1のベース体と、制振対象物が固定される第2の固定部を備えた第2のベース体とを有し、第1のベース体と第2のベース体とは、第1の固定部よりも第2の固定部が鉛直方向の下側に位置するように配置され、第1のベース体は、第1の固定部よりも鉛直方向の下側に位置するように配置された第1の内固定部を有し、第2のベース体は、第2の固定部よりも鉛直方向の上側に位置するように配置された第2の内固定部を有し、第1の内固定部と第2の内固定部とによって挟まれる格納スペースに湾曲索部材が納められ、かつ湾曲部が起立するようにして湾曲索部材が第1の内固定部と第2の内固定部とに固定されている制振装置を特徴とする。
【0018】
この制振装置では、湾曲索部材が格納スペースに納められ、第1の内固定部と第2の内固定部とに固定されている。第1の内固定部よりも鉛直方向の上側に配置されている第1の固定部が振動伝達部材に固定され、第2の内固定部よりも鉛直方向の下側に配置されている第2の固定部に制振対象物が固定されるから、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置される。
【0019】
上記制振装置の場合は、第1の内固定部と第2の内固定部とに係合され、かつ第1の内固定部と第2の内固定部との間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制する間隔規制部材を更に有することが好ましい。
【0020】
この制振装置では、間隔規制部材が第1の内固定部と第2の内固定部との間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制するため、湾曲索部材における湾曲部の変形具合が一定程度よりも小さくなる。
【0021】
また、上記制振装置において、一端部と他端部の双方が第2の固定部に固定され、かつその一端部と他端部の中間に位置する中間部が第1の固定部を横断するようにして第1のベース体および第2のベース体に装着された弾性部材からなる弾性バンドを更に有することが好ましい。
【0022】
この制振装置では、弾性バンドが元の形状を戻ろうとする復元力を発揮するため、第1のベース体が振動伝達部材とともに動いても、第1のベース体が弾性バンドによって元の位置に引き戻される。
【0023】
さらに、上記制振装置において、弾性バンドを2本有し、そのそれぞれの弾性バンドが直交するようにして第1のベース体および第2のベース体に装着されていることが好ましい。
【0024】
この制振装置では、第1のベース体が振動伝達部材とともにどの方向に動いても、第1のベース体が2本の弾性バンドによってほぼ同じようにして元の位置に引き戻される。
【0025】
さらに、上記制振装置では、第1の固定部の表面に弾性バンドの形状に応じた溝部が形成され、その溝部に弾性バンドが納められているようにすることができる。
【0026】
さらに、第1のベース体および第2のベース体は、第1の内固定部および第2の内固定部を取り囲み、かつ互いに対向するように形成された第1の周側部および第2の周側部をそれぞれ有することが好ましい。
【0027】
また、間隔規制部材は、第1の固定部を振動部材に固定したときの鉛直方向に沿って伸縮自在に構成されているようにすることができる。
【0028】
上記いずれの制振装置も、間隔規制部材は、複数の金属製リング部材が連鎖状に接続された連鎖構造を有するようにすることができる。
【0029】
そして、上記制振装置の場合、第1の内固定部は、中央に開口部を有し、かつ第1の固定部に対向するように配置され、第1のベース体は、第1の内固定部を取り囲み、かつ第1の固定部と第1の内固定部とをつなぐように形成された第1の周側部を有し、第2の内固定部は、第1の内固定部よりも鉛直方向の上側に位置するように配置され、第2のベース体は、第1の内固定部の開口部に挿通されて第2の内固定部と第2の固定部とを連結する連結部を有するようにすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上詳述したように、本発明によれば、構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大するとともに、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を抑制できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の構成を示す斜視図である。
【図2】同じく制振装置の構成を示す平面図である。
【図3】図1の制振装置の図2の3−3線断面図である。
【図4】ベース体の一例を示す斜視図である。
【図5】図1の制振装置の側面図である。
【図6】同じく裏面図である。
【図7】ベース体とバネ構造体とを示す一部省略した斜視図である。
【図8】2つのベース体および連鎖リング部材を示す一部省略した斜視図である。
【図9】図1の制振装置の使用状態の一例を示す図3と同様の断面図である。
【図10】図9において、振動伝達部材が上方向に移動した状態を示す図3と同様の断面図である。
【図11】同じく、振動伝達部材が左方向に移動した状態を示す図3と同様の断面図である。
【図12】バネ構造体における長さの変化を示し、(a)はワイヤーバネが伸びきった場合を示す図、(b)はワイヤーバネが伸びきる直前を示す図である。
【図13】変形例に係るベース体とバネ構造体とを示す一部省略した斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る制振装置の構成を示す断面図である。
【図15】図14の制振装置を構成するベース体と、螺旋構造体を示す平面図である。
【図16】(a)は螺旋構造体の一例を示す側面図、(b)は同じく正面図である。
【図17】索部材の一例を示す断面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る制振装置の使用状態の一例を示す断面図である。
【図19】別のワイヤーバネを示す平面図である。
【図20】鉄道車両内部の要部を示す一部省略した正面図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態に係る制振装置の設置状態の一例を示す断面図である。
【図22】(a)は変形例に係る連鎖リング部材を示す斜視図、(b)は伸縮ユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0033】
第1の実施の形態
(制振装置の構成)
まず、図1〜図8を参照して本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の構成について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る制振装置50の構成を示す斜視図、図2は同じく制振装置50の構成を示す平面図である。図3は図2の3−3線断面図で、図4はベース体1の斜視図である。また、図5は制振装置50の側面図、図6は裏面図である。そして、図7はベース体21とバネ構造体10とを示す一部省略した斜視図、図8はベース体1、ベース体21および連鎖リング部材40を示す一部省略した斜視図である。
【0034】
図1〜図8に示すとおり、制振装置50はベース体1と、ベース体21と、4つのバネ構造体10と、ゴムバンド31,32と、連鎖リング部材40とを有している。制振装置50は、鉄道車両の天井等につりさげられた状態で固定される防犯カメラ等の構造物や、ダクト、空調装置といったの建物の天井や壁面等に固定される構造物を制振対象物とする場合に使用される。そして、制振装置50では、ベース体1とベース体21とは、固定部2よりも固定部22が鉛直方向の下側に位置するように配置されている。
【0035】
ベース体1は本発明における第1のベース体に対応していて、鋼等の金属やアクリル樹脂、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics, FRP)といった樹脂材料等を用いて構成されている。ベース体1は高さの低い有底円筒状の構造を有し、固定部2と、周側部3と、内固定部5とを有している。
【0036】
固定部2は、本発明における第1の固定部に対応していて、図1、図2、図4等に詳しく示すように、制振対象物に応じた大きさを有する厚肉円板状部材の外表面部分に対応している。固定部2は、後述する溝部4の形成されている部分を除いて平坦に形成されている。この固定部2は、振動の伝達源となる振動伝達部材、例えば鉄道車両の天井等に固定される部分である。
【0037】
固定部2の表面には2本の溝部4が形成されている。各溝部4は、固定部2の中央をとおって固定部2を横断するように形成され、中央部分で十字状に交差している。各溝部4は、それぞれゴムバンド31,32の形状に応じた大きさに形成されている。また、各溝部4にゴムバンド31,32が納められた際、固定部2の表面よりもゴムバンド31,32が外に突出しないようにするため、各溝部4の深さが、ゴムバンド31の厚さとゴムバンド32の厚さとを加えた厚さに応じた深さに設定されている。
【0038】
周側部3は固定部2の裏面側において、固定部2および内固定部5に対して直交し、かつ内固定部5を取り囲むように形成されている。周側部3はベース体21の後述する周側部23と互いに対向するように形成されている。
【0039】
内固定部5は本発明における第1の内固定部に対応している。内固定部5は固定部2の裏面部分、すなわち前述した厚肉円板状部材の、周側部3よりも内側の表面部分であって、ベース体1において、固定部2よりも鉛直方向の下側に位置するように配置された部分である。
【0040】
内固定部5のほぼ全体が平坦に形成されている。内固定部5には、図7に詳しく示すような4つのバネ構造体10が固定され、さらに図8に詳しく示すような連鎖リング部材40が係合されている。また、図8に示すように、内固定部5には挿通孔5aが形成されている。挿通孔5aは、後述する金属リング41の環状部分に応じた形状に形成されている。ここに金属リング41が挿通されて、内固定部5に金属リング41が係合している。
【0041】
次に、ベース体21について説明する。ベース体21は、本発明における第2のベース体に対応していて、ベース体1と同様に、鋼等の金属や、アクリル樹脂、FRPといった樹脂材料等を用いて構成されている。ベース体21はベース体1と同様の高さの低い有底円筒状の構造を有し、固定部22と、周側部23と、内固定部25とを有している。
【0042】
固定部22は、本発明における第2の固定部に対応していて、図1、図3、図6等に詳しく示すように、厚肉円板状部材の外表面部分に対応している。固定部22の全体が平坦に形成されている。この固定部22は、制振の対象となる制振対象物、例えば鉄道車両に取り付けられる防犯カメラや、ダクト等が固定される部分である。
【0043】
固定部22は、ゴムバンド31の一端部31aおよび他端部31aと、ゴムバンド32の一端部32aおよび他端部32aとが螺子33を用いて固定されている。そして、一端部31a、他端部31a等が固定されている部分の内側に円形の固定ゾーン24が配置されている。固定ゾーン24は制振対象物の大きさに対応した大きさに形成されている。この固定ゾーン24に後述する防犯カメラ200が固定される。
【0044】
周側部23は固定部22の裏面側において、固定部22および内固定部25に対して直交し、かつ内固定部25を取り囲むように形成されている。周側部23は前述したベース体1の周側部3と互いに対向するように形成されている。
【0045】
内固定部25は本発明における第2の内固定部に対応している。内固定部25は固定部22の裏面部分、すなわち、厚肉円板状部材の周側部23よりも内側の表面部分であって、ベース体21において、固定部22よりも鉛直方向の上側に位置するように配置された部分である。
【0046】
内固定部25は内固定部5と同様にほぼ全体が平坦に形成されている。内固定部25には、内固定部5と同様、4つのバネ構造体10が固定され、連鎖リング部材40が係合されている。また、図8に示したように、内固定部25には挿通孔25aが形成されている。挿通孔25aは金属リング41の環状部分に応じた形状に形成されている。ここに内固定部5とは別の金属リング41が挿通されて、内固定部25に金属リング41が係合している。そして、挿通孔25aと前述した挿通孔5aとは互いに上下に重なる位置に形成され、ベース体1の固定部2が振動伝達部材に固定されたとき、互いに鉛直方向に沿って並び得る位置に形成されている。
【0047】
次に、バネ構造体10について説明する。バネ構造体10は、図3、図7に示すように、バネ装着部材11,12と、ワイヤーバネ13とを有している。バネ構造体10は、ベース体1とベース体21とによって形成される格納スペース19に納められている。格納スペース19は内固定部5と内固定部25とが向かい合わせになって形成され、内固定部5、内固定部25、周側部3および周側部23によって囲まれる円柱状の空間である。
【0048】
バネ装着部材11は矩形状の板材であり、図7に示すように、長手方向一端部に挿通孔が形成されている。挿通孔はワイヤーバネ13の太さに応じた大きさで、バネ装着部材11を短手方向に沿って貫通するように形成されている。また、この挿通孔の反対側に2つの固定穴が形成されている。各固定穴にはそれぞれワイヤーバネ13の一端部と他端部とが挿入されて固定されている。バネ装着部材11はボルト14を用いて内固定部25に固定されている。
【0049】
バネ装着部材12は矩形状の板材であり、その短手方向両端部に挿通孔が形成されている。各挿通孔はワイヤーバネ13の太さに応じた大きさで、バネ装着部材12を長手方向に沿って貫通するように形成されている。バネ装着部材12はボルト15を用いて内固定部5に固定されている。
【0050】
ワイヤーバネ13は本発明における湾曲索部材であって、湾曲部13aを2つ有している。湾曲部13aは、後述する索部材16を適度に湾曲させて概ね環状に形成された部分であり、図3、図7に示すように、内固定部25および内固定部5に対して起立している。
【0051】
そして、バネ構造体10では、索部材16の一端部と他端部とがバネ装着部材11の固定穴に挿入されて固定されている、また、その固定されている部分の中間部分が、バネ装着部材12の挿通孔に挿通され、さらにバネ装着部材11の挿通孔にも挿通されることで索部材16の中間部分にバネ装着部材11、12が装着され、これにより、図7に示すような湾曲部13aが2つ形成されている。
【0052】
また、バネ装着部材11,12がそれぞれ内固定部25、内固定部5に固定されており、これにより、2つの湾曲部13aが起立するように、内固定部25と内固定部5とにワイヤーバネ13が固定されている。
【0053】
ワイヤーバネ13では、索部材16が強固な弾力性を有する弾性部材であり、そのような索部材16を用いて湾曲部13aが形成されている。そして、湾曲部13aは、形状の変化がおきたときに元の形状に戻ろうとする復元力を発揮する。
【0054】
索部材16は図17に示すように、断面円形状の線状部材64を複数(図8では19本)より合わせて単位索部材65とし、この単位索部材65をさらに複数本(図17では7本)より合わせ、かつ捩り込んで形成されている。本実施の形態に係る索部材16は鋼索であり、強固な弾力性を有している。なお、図17に示した索部材16は合計133本の線状部材64がより合わされている。
【0055】
続いて、ゴムバンド31,32について説明する。ゴムバンド31,32はともに本発明における弾性バンドに対応している。ゴムバンド31,32は洋裁や手芸等で使用されるいわゆるゴム紐であって、ゴムを糸でコーティングした部材であり、幅方向の断面が概ね矩形状に形成されている。本実施の形態では、ゴムバンド31,32として、ゴム紐を用いることを想定しているが、糸でコーティングされていない断面矩形状の平ゴムを用いてもよい。また、ゴムバンド31,32として、ゴムをチューブ状に成形したゴムチューブを用いてもよいし、断面円形状に成形したゴムロープを用いてもよい。
【0056】
そして、ゴムバンド31,32は、図1、2、5等に示すようにベース体1、ベース体21に装着されている。この場合、ゴムバンド31,32は、それぞれの一端部31a,32aと他端部31a,32aとが螺子33を用いて固定部22に固定され、その中間に位置する中間部31b、32bが固定部2を横断している。また、中間部31b、32bが固定部2の溝部4に納められ、かつ互いに直交している。
【0057】
さらに、連鎖リング部材40について説明する。連鎖リング部材40は本発明に係る間隔規制部材に対応していて、内固定部5と内固定部25との間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制する機能を有している。連鎖リング部材40は、図3、図8に示すように、3つの金属リング41を用いて構成されている。各金属リング41は互いの環状部分が1つずつ係合することで連鎖状に接続されている。
【0058】
そして、連鎖リング部材40では、中間を除く両側2つの金属リング41がそれぞれ内固定部5、内固定部25に係合されている。内固定部5の挿通孔5aと、内固定部25の挿通孔25aにそれぞれ金属リング41が挿通されて、各金属リング41が内固定部5と、内固定部25とにそれぞれ係合されている。
【0059】
前述したとおり、挿通孔5a,25aが鉛直方向に沿って並ぶような位置に形成されており、各金属リング41の環状部分がそれぞれ係合している。連鎖リング部材40は、金属リング41同士の係合状態が変わることで鉛直方向に沿って伸縮自在であり、しかも内固定部5と内固定部25に対する係合状態が変わることで鉛直方向以外の斜め方向に沿っても動き得る構造を有している。
【0060】
このような連鎖リング部材40について図12を参照しながらさらに説明すると次のとおりである。まず、振動伝達部材に振動が発生したことに伴いベース体1が上方向に移動したとする。この場合、バネ構造体10がベース体1の内固定部5に固定されているので、ベース体1の移動に伴い、バネ構造体10のワイヤーバネ13が上方向に引っ張られる。そして、バネ構造体10は図12(a)に示すように上方向に伸びきってしまうと、それ以上伸びる余地がなくなる。それからさらにベース体1が上方向に移動すると、のびきったバネ構造体10に対して、ベース体21にかかる重力と制振対象物にかかる重力とが作用するため、制振装置50が破損するおそれがある。そのため、制振装置50では、バネ構造体10のワイヤーバネ13が伸びきってしまわないようにすることが好ましい。制振装置50では、そのようにならないよう、連鎖リング部材40によって内固定部5と内固定部25の間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制している。
【0061】
ここで、図12(a)に示すように、周側部3の内固定部5から最も離れた端部3aと、周側部23の内固定部25から最も離れた端部23aとのワイヤーバネ13が伸びきった時点での上下間隔をh1とする。そして、図12(b)に示すように、端部3aと端部23aとの上下間隔が、ワイヤーバネ13が伸びきる直前の上下間隔h2(h2はh1よりも小さいので、h2<h1)になったときに、長さが最長となるように連鎖リング部材40の長さが設定されている。すなわち、制振装置50では、端部3aと端部23aとの上下間隔がh2になったときの内固定部5と内固定部25との上下間隔をSとし、連鎖リング部材40の最も長い長さがそのSになるように、金属リング41の直径が設定されている。
【0062】
(制振装置の動作内容)
続いて以上の構成を有する制振装置50の動作内容について、図9〜図11を参照して説明する。制振装置50は、ベース体21がベース体1よりも鉛直方向の下側に位置するように配置した状態で使用する。
【0063】
そして、例えば、図9に示すように、ベース体1の固定部2を鉄道車両の天井199に固定する。固定部2には、溝部4が形成されていて、その溝部4の深さがゴムバンド31の厚さと、ゴムバンド32の厚さとを加えた厚さに応じた深さであり、その溝部4の中にゴムバンド31,32が納まっている。そのため、ゴムバンド31,32がベース体1およびベース体21に装着されていても固定部2が平坦になっているから、制振装置50を天井199にしっかりと固定できる。
【0064】
一方、制振対象物としての防犯カメラ200がベース体21の固定部22に固定される。この場合、図9に示すように、防犯カメラ200の装着部201が螺子202を用いて固定部22の固定ゾーン24に固定される。
【0065】
天井199は鉄道車両の天井である。鉄道車両は走行中に横揺れや縦揺れを発生し、振動の向きが定まっていないため、不定性3次元振動を発生する。そのような鉄道車両の天井199に防犯カメラ200を直に固定すると、その不定性3次元振動が天井199から防犯カメラ200に伝達される。防犯カメラ200は、不定性3次元振動を受け続けると破損や故障の恐れがある。しかも、撮影された映像に不規則な揺れによる乱れが発生することで映像が見苦しいものとなる等、画質の劣化が避けられない。
【0066】
そのため、防犯カメラ200について、不定性3次元振動を抑制することが望ましい。天井199が振動の伝達源となる振動伝達部材に相当し、防犯カメラ200が制振対象物に相当する。
【0067】
そして、バネ構造体10が内固定部5と内固定部25に固定されているため制振装置50に防犯カメラ200を固定すると、防犯カメラ200にかかる重力とベース体21にかかる重力とがバネ構造体10に作用してバネ構造体10を引き延ばし、端部3aと端部23aとが離れて両者の間に隙間ができる。以下の説明ではこの状態を振動のない基準状態としている。
【0068】
一方、端部3aと端部23aとの間隔が前述したh2になってしまうと、連鎖リング部材40の長さが最長となり、それ以上、バネ構造体10を上下に引き延ばすことができなくなる。すると、バネ構造体10の長さを縮める(バネ構造体10をつぶす)ことはできても引き延ばすことはできなくなり、バネ構造体10の変形許容度が減少する。バネ構造体10は、ワイヤーバネ13の変形によって振動吸収作用を発揮するため、バネ構造体10による振動吸収作用が減殺されてしまう。そのため、端部3aと端部23aとの間隔は、基準状態において、0よりも大きく、かつh2よりも小さい大きさに設定されるよう、防犯カメラ200の重量に応じて、索部材16の太さや強度、ベース体21のサイズや重量を設定する。このようにすることで、バネ構造体10について、長さを縮めることも伸ばすこともできるから、バネ構造体10による振動吸収作用が効果的に発揮されるようになる。
【0069】
そして、走行中の鉄道車両に上方向に移動する縦方向の振動が発生したとする。すると、図10に示すように、その振動に伴って天井199が上方向に移動する。天井199には、ベース体1の固定部2が固定されているから、天井199が上方向に移動するのに伴いベース体1の固定部2も上方向に移動する。また、固定部2と内固定部5とが一体となってベース体1を構成しているから、固定部2に伴い内固定部5も上方向に移動する。この内固定部5にバネ構造体10が固定されているから、バネ構造体10が上方向に引き伸ばされ、端部3aと端部23aとの間隔が基準状態よりも大きいd1になる。
【0070】
しかしながら、バネ構造体10はワイヤーバネ13を有し、ワイヤーバネ13は、湾曲部13aが起立するようにして内固定部5に固定されているから、固定部2の移動の原因となった外力がバネ装着部材12を介してワイヤーバネ13の2つの湾曲部13aに加わる。
【0071】
このとき、ワイヤーバネ13は湾曲部13aを有しているから弾力性を有し、外力により変形したときは元の形状に戻ろうとする復元力を発揮する。各湾曲部13aは加わった外力の向きと大きさに応じて傾斜したり撓む等して変形するが、それと同時並行的に復元力を発生してその変化を打ち消すように動く。
【0072】
一方、ワイヤーバネ13は索部材16を用いて構成されている。索部材16は多数の線状部材64をより合わせて形成されている。そのため、湾曲部13aが前述のような動きをすると各線状部材64が隣接するもの同士で激しくこすれ合い、熱を発生させる。すなわち、ワイヤーバネ13は加えられた外力を熱に変換する熱変換機能を有している。湾曲部13aが加わった外力の向きと大きさに応じて変形し、それに伴い熱を発生することにより、ワイヤーバネ13が加わった外力を吸収することになる。
【0073】
そして、線状部材64は断面円形状であるため、隣接しているもの同士は接触しつつそれぞれの間に多数の隙間が形成されている。そのため、線状部材64が発生する熱は空気中に拡散され、バネ構造体10の内部にとどめられることなく空気中に放出される。
【0074】
加えて制振装置50では、ベース体1とベース体21にゴムバンド31、32が装着されている。このゴムバンド31、32は、一端部31a,32aと他端部31a,32aとが固定部22に固定される一方、中間部31b、32bが固定部2を横断するようにしてベース体1、ベース体21に装着されている。そのため、前述のような固定部2の移動に伴いゴムバンド31、32が伸びて双方の長さが長くなる。そして、ゴムバンド31、32は弾性部材を用いて形成されているから、元の長さに戻ろうとする復元力を発揮する。そうすると、上方向に移動したベース体1を元の位置に引きもどそうとする力をゴムバンド31、32が発揮し、その結果、ベース体1が下向きに引きもどされる。すると、ベース体1に作用する上向きの外力がゴムバンド31、32の復元力によって相殺されることになるため、防犯カメラ200に伝わる上向きの外力が軽減され、振動吸収効果が得られる。
【0075】
また、ゴムバンド31、32が直交するようにしてベース体1、ベース体21に装着されているから、ベース体1が天井199とともにどの方向に動いても、ゴムバンド31、32の復元力がほぼ同じように発揮されるので、ベース体1がほぼ同じようにして元の位置に引き戻される。
【0076】
ところで、防犯カメラ200はベース体21の固定部22に固定されているが、ベース体21は、バネ構造体10、ゴムバンド31、32および連鎖リング部材40を介してベース体1に接続されている。そのため、ベース体1が上方向に移動しても、その移動の原因となった外力はバネ構造体10、ゴムバンド31、32および連鎖リング部材40を介してベース体21に伝達される格好になり、決して直接は伝達されない。
【0077】
そして、そのバネ構造体10が前述のような熱変換機能による振動吸収作用を有し、加えてゴムバンド31、32が復元力による振動吸収作用を発揮することによって、ベース体1の上方向への移動の原因となった外力が、バネ構造体10およびゴムバンド31、32によって吸収される。そのため、外力がバネ構造体10およびゴムバンド31、32によって減衰された後に防犯カメラ200に伝達される。こうして、上向きの振動を吸収する効果が得られ、防犯カメラ200に伝達される上向きの外力が制振装置50によって抑制されることになる。
【0078】
また、端部3aと端部23aとの上下間隔が基準状態において0よりも大きく設定されているから、ベース体1を下向きに移動させる振動が発生した場合もバネ構造体10が変形する。そのため、この場合も、制振装置50による振動吸収効果が確実に得られる。
【0079】
このように、防犯カメラ200の装着された車両に上方向または下方向の振動が発生しても、その振動は減衰(概ね80%程度、減衰)された後に防犯カメラ200に伝達されるから、防犯カメラ200の故障や破損の恐れが著しく低減される。また、減衰された後に振動が伝達されることにより、防犯カメラ200によって撮影される映像の乱れも著しく低減され、したがって映像の画質や正確性を著しく向上させる効果が得られる。また、振動が減衰されることによって防犯カメラ200がピントを合わせやすくなり、この点でも、撮影される映像の画質向上が期待できる。
【0080】
一方、制振装置50は、連鎖リング部材40を有している。連鎖リング部材40は、ワイヤーバネ13が伸びきってしまう直前に長さが最長となるように構成されている。連鎖リング部材40の長さが最長になれば、それ以上、ワイヤーバネ13の長さが長くならない。そのため、ワイヤーバネ13が伸びきってしまうおそれが皆無であり、ワイヤーバネ13が伸びきってしまうことによる破損のおそれが皆無である。
【0081】
そして、図11に示すように、走行中の鉄道車両に左方向に移動する横方向の振動が発生して天井199が左方向に移動し、端部3aと端部23aとの横間隔がd2になったとする。すると、天井199とともに固定部2も左方向に移動し、内固定部5も左方向に移動する。この内固定部5にバネ構造体10が固定されているから、バネ構造体10の上側部分が左方向に引っ張られる。
【0082】
しかしながら、湾曲部13aが起立するようにして内固定部5に固定されているから、固定部2の移動の原因となった外力がバネ装着部材12を介して2つの湾曲部13aに加わる。
【0083】
このとき、ワイヤーバネ13は元の形状に戻ろうとする復元力を発揮する。また、各湾曲部13aは加わった外力の向きと大きさに応じて変形するが、それと同時並行的に復元力を発生してその変化を打ち消すように動く。前述のとおりワイヤーバネ13は熱変換機能を有しているから、加わった外力の向きと大きさに応じて変形し、それに伴い熱を発生することで加わった外力を吸収する。
【0084】
また、前述のような固定部2の移動に伴いゴムバンド31、32が復元力を発揮するから、左向きに移動したベース体1がゴムバンド31、32によって右向きに引き戻される。すると、ベース体1に作用する左向きの外力がゴムバンド31、32の復元力によって相殺される形にため、防犯カメラ200に伝わる左向きの外力が軽減され、振動吸収効果が得られる。
【0085】
ベース体1が左方向に移動しても、その移動の原因となった外力はバネ構造体10、ゴムバンド31、32および連鎖リング部材40を介してベース体21に伝達される格好になり、決して直接は伝達されない。
【0086】
そして、ベース体1の左方向への移動の原因となった外力がバネ構造体10の振動吸収作用と、ゴムバンド31、32の復元力によって減衰された後に防犯カメラ200に伝達される。そのため、左向きの振動を吸収する効果が得られ、防犯カメラ200に伝達される左向きの外力が制振装置50によって抑制されることになる。
【0087】
また、バネ構造体10は、ワイヤーバネ13を主体として構成されているから、バネ装着部材11,12の相対的な位置がどの方向にずれても同じような熱変換機能を発揮する。そのため、ベース体1が左方向に移動した場合はもちろん、水平方向のどの方向に移動しても外力を抑制する効果が得られる。発生する振動の方向が定まっていなくても、防犯カメラ200に対する振動抑制効果が得られる。
【0088】
さらに、ゴムバンド31、32が直交するように装着されているから、ベース体1と、ベース体21の相対的な位置関係が水平方向にそってどの方向にずれても、ゴムバンド31、32によってベース体1を元の位置に引きもどす作用が同じように発揮される。
【0089】
加えて、制振装置50は4つのバネ構造体10を有しているから、外力を4つに分散させて効果的に吸収することができる。しかも、4つのバネ構造体10は、内固定部21に対し、周回方向に沿って均等な間隔をあけて配置されているから、外力が4つのバネ構造体10に対してほぼ均等に分散される。いずれかのバネ構造体10に対して外力が集中すると、吸収しきれないおそれがあるが、制振装置50ではそのようなおそれが発生しにくい。
【0090】
走行中の車両には水平振動と垂直振動のいずれか一方だけが発生することよりも、両者が組み合わさった3次元的な振動が発生することが多い。その上、振動の方向がまちまちで定まっていないことが多い。
【0091】
しかしながら、制振装置50は前述した構成を採用することによって、ワイヤーバネ13による水平振動に対する熱変換機能と垂直振動に対する熱変換機能とを同時並行的に発揮することができる。不定性3次元振動が構造物に発生した場合、そのうちの水平方向成分、垂直方向成分ともに4つのバネ構造体10が抑制する。バネ構造体10はそれぞれのワイヤーバネ13が加えられた外力の向きと大きさに応じて熱変換機能を発揮することで振動を吸収する。
【0092】
そのため、制振装置50は3次元的などのような振動でも抑制することができる。したがって、制振装置50は、抑制できる振動の範囲が従来技術よりも大幅に拡大されており、不定性3次元振動を十分に抑制できるようになっている。
【0093】
制振装置50は使用する際、ベース体1とベース体21は、固定部2よりも固定部22が鉛直方向の下側に配置され、天井199等の振動伝達部材が防犯カメラ200等の制振対象物よりも上側に配置された状態で使用される。そのため、制振装置50は、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を抑制することができる。
【0094】
(変形例1)
続いて制振装置50の変形例について図13を参照して説明する。図13は変形例に係る制振装置におけるベース体21とバネ構造体10とを示す図7と同様の斜視図である。
【0095】
前述した制振装置50は、バネ構造体10を4つ有していたが、図13に示すように、バネ構造体10は3つでもよい。この場合も、3つのバネ構造体10の周方向に沿った間隔が均等に設定されている。バネ構造体10の個数が少なくなった分、個々のバネ構造体10にかかる外力の大きさが増加する可能性があるが、このような場合でも、前述した制振装置50と同様に、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を抑制することができる。
【0096】
(変形例2)
また、前述した制振装置50において、連鎖リング部材40の代わりに図22(a)に示すような連鎖リング部材47を用いることもできる。連鎖リング部材47は3つの金属リング46を有している。金属リング46は、環状部分の一部が欠落している。その欠落している部分が重ならないように、3つの金属リング46が係合している。
【0097】
また、連鎖リング部材40の代わりに図22(b)に示すような伸縮ユニット140を用いることもできる。伸縮ユニット140は、シリンダ141と、ピストン142とを有している。シリンダ141は、内側に空洞部141aが形成された中空円筒状の部材であり、一端部が内固定部5に固定されている。他端部は、ピストン142が挿通し得る孔部が形成され、内固定部25から離されている。ピストン142は一端部に往復ヘッド142aが形成され、他端部に回動部142bが形成されている。往復ヘッド142aは、ゴムや樹脂等の変形し得る部材を用いて空洞部141aに納まる形状で形成されている。回動部142bは、概ね球状の部材であり、内固定部25の穴部25bに応じた大きさに形成されている。穴部25bは概ね球状に形成されている。
【0098】
伸縮ユニット140の場合、内固定部5と内固定部25との間隔に応じて往復ヘッド142aが空洞部141a内を移動して長さが変化する。そして、往復ヘッド142aが空洞部141a内を最も内固定部25に近い位置まで移動すると、往復ヘッド142aが空洞部141aの下端部に接触して、それ以上移動できなくなり、この時点で伸縮ユニット140の長さが最大になる。そのため、伸縮ユニット140は、内固定部5と内固定部25の間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制する規制機能を有している。また、ベース体1とベース体21に水平方向の位置ずれが発生した場合は、往復ヘッド142aが変形し、その上、回動部142bが穴部25b内で回動するため、伸縮ユニット140は、水平方向の位置ずれにも対応できる。
【0099】
第2の実施の形態
次に、図14〜図16を参照して本発明の第2の実施の形態に係る制振装置70の構成について説明する。ここで、図14は制振装置70の構成を示す一部省略した断面図である。図15は、ベース体61と螺旋構造体75を示す平面図である。図16の(a)は螺旋構造体75を示す側面図、(b)は同じく正面図である。
【0100】
制振装置70はベース体51と、ベース体61と、2つの螺旋構造体55と、連鎖リング部材40とを有している。ベース体61は本発明における第1のベース体であって、鋼等の金属や、アクリル樹脂、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics, FRP)といった樹脂材料等を用いて構成されている。ベース体51は高さの低い有底筒状の構造を有し、固定部52と、周側部53と、内固定部55とを有している。
【0101】
固定部52は、厚さの厚い矩形板状部材の外表面部分に対応している。固定部52の全体が平坦に形成されている。固定部52は、固定部2と同様に振動伝達部材に固定される部分である。
【0102】
周側部53は固定部52の裏面側において、固定部52および内固定部55に対して直交し、かつ内固定部55を取り囲むように形成されている。周側部53はベース体61の後述する周側部63と互いに対向するように形成されている。
【0103】
内固定部55は固定部2の裏面部分、すなわち前述した厚肉矩形板状部材の、周側部53よりも内側の表面部分であって、ベース体51において、固定部52よりも鉛直方向の下側に位置するように配置された部分である。
【0104】
内固定部55は平坦に形成されている。内固定部55には、2つの螺旋構造体75と、連鎖リング部材40とが固定されている。また、挿通孔が形成されている。
【0105】
次に、ベース体61は、ベース体1と同様に、鋼等の金属や、アクリル樹脂、FRPといった樹脂材料等を用いて構成されている。ベース体61はベース体51と同様の高さの低い有底筒状の構造を有し、固定部62と、周側部63と、内固定部65とを有している。
【0106】
固定部62は、矩形板状部材の外表面部分に対応している。固定部62は、全体が平坦に形成されている。この固定部62は、制振対象物が固定される部分である。
【0107】
周側部63は固定部62の裏面側において、固定部62および内固定部65に対して直交し、かつ内固定部65を取り囲むように形成されている。周側部63は前述した周側部53と互いに対向するように形成されている。
【0108】
内固定部65は固定部62の裏面部分、厚肉矩形板状部材の、周側部63よりも内側の表面部分であって、ベース体61において、固定部62よりも鉛直方向の上側に位置するように配置された部分である。
【0109】
内固定部65は平坦に形成されている。内固定部65には、2つの螺旋構造体75と、連鎖リング部材40とが固定されている。また、内固定部65に内固定部25と同様の挿通孔が形成されている。
【0110】
螺旋構造体75は図16(a),(b)に詳しく示すようにワイヤーバネ76と、棒状部材77a,77bとを有している。ワイヤーバネ76は環状索部材であって環状部76aを複数備え、全体が螺旋状に形成されている。環状部76aは前述した索部材16を概ね円環状に形成したものである。湾曲部13aと同様に環状部76aは例えば円形から楕円形に変化する等の形状の変化がおきた場合に復元力を発揮し、元の形状に戻ろうとする。
【0111】
棒状部材77a,77bは、断面角型の外側が平坦な部材である。棒状部材77a,77bは、長さ方向に沿って複数の貫通孔が等間隔に形成されている。棒状部材77a,77bはそれぞれの貫通孔にワイヤーバネ76の環状部76aが挿通されることでワイヤーバネ76と一体化されている。環状部76aは、中心76pを挟んで対向している一部分(この部分を対向部ともいう)だけが棒状部材77a,77bに挿通されている。また、棒状部材77a,77bは各環状部76aの中心76pを挟んで対向する位置に配置され、ワイヤーバネ76の中心軸CL(図16(b)参照)と平行になっている。
【0112】
螺旋構造体75は内固定部55と、内固定部65とによって挟まれている。しかも、それぞれの棒状部材77aが内固定部55に固定されるとともに、棒状部材77bが内固定部65に固定されている。棒状部材77a,77bは図示しないボルトを用いて内固定部55、内固定部65に固定されている。
【0113】
こうすることにより、ワイヤーバネ76がそれぞれ環状部76aを起立させて、内固定部55と、内固定部65の双方に固定されている。
【0114】
制振装置70の場合、制振装置50と同様に固定部52を天井等の振動伝達部材に固定し、固定部62に防犯カメラ等の制振対象物を固定して使用する。制振対象物を固定部62に固定すると、制振対象物にかかる重力と、ベース体61にかかる重力によって螺旋構造体75のワイヤーバネ76が下方に引き伸ばされる。この状態で振動伝達部材が上方向に移動すると、ワイヤーバネ76がワイヤーバネ13と同様の熱変換機能を発揮して、振動の原因となった外力が吸収される。また、振動伝達部材が水平方向に移動した場合も、ワイヤーバネ76がワイヤーバネ13と同様の熱変換機能を発揮して、振動の原因となった外力が吸収される。制振装置70も制振装置50と同様、防犯カメラ等の制振対象物に外力が直接伝達されることはなく、螺旋構造体75を介して伝達される。その螺旋構造体75において、振動の原因となった外力が吸収されるので、制振装置70によっても、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を十分に抑制できるようになっている。
【0115】
第3の実施の形態
次に、図18を参照して本発明の第3の実施の形態に係る制振装置100の構成について説明する。図18は制振装置100の構成を示す断面図である。
【0116】
制振装置100は、ベース体110と、ベース体120と、2つのバネ構造体10とを有している。
【0117】
ベース体110は、固定部111と、内固定部113と、周側部112とを有している。ベース体110は、有底円筒状の部材の開口部分を内固定部113により閉鎖したような構造を有している。
【0118】
固定部111は本発明における第1の固定部に対応し、厚肉円板状の部材である。内固定部113は本発明における第1の内固定部に対応し、厚肉円板状の部材であるが、中央に開口部113aを有している。また、内固定部113は、周側部112の高さに応じた間隔を隔てて固定部111と平行かつ対向するように配置されている。周側部112は円筒状部材の側面部分に相当している。周側部112は、内固定部113を取り囲み、かつ固定部111と内固定部113とをつなぐように形成されている。
【0119】
ベース体120は、固定部122と、内固定部121と、連結部123とを有している。ベース体120は、2枚の厚肉円板状部材を板状または棒状部材で連結したような構造を有している。
【0120】
固定部122は、固定部111よりも大きさの小さい厚肉円板状の部材である。内固定部121も、固定部111より大きさの小さい厚肉円板状の部材である。固定部122は、ベース体110の外側で、内固定部113よりも下側に配置されている。
【0121】
内固定部121は、固定部111と内固定部113との間に納められ、内固定部113よりも鉛直方向の上側に位置するように配置されている。また、内固定部121は、連結部123の高さに応じた間隔を隔てて固定部122と互いに平行かつ対向するように配置されている。連結部123は、板状または棒状部材であって、内固定部113の開口部113aに挿通され、固定部122と内固定部121とに接続されて両者を連結している。
【0122】
2つのバネ構造体10は、内固定部113、内固定部121および周側部112によって囲まれる格納スペース130に納められ、内固定部113と内固定部121に固定されている。
【0123】
制振装置100は、固定部111を天井199などの振動伝達部材に固定し、かつ固定部122に防犯カメラ200等の制振対象物を固定して使用する。すると、防犯カメラ200にかかる重力とベース体120にかかる重力が2つのバネ構造体10に作用することによって、2つのバネ構造体10が撓む。この状態で上方向の振動が発生し、天井199が上方向に移動すると、ベース体110が上方向に移動して内固定部113と内固定部121の間隔が狭まり、バネ構造体10がつぶれるように変形する。すると、2つのバネ構造体10が熱変換機能を発揮して、振動の原因となった外力が吸収される。
【0124】
また、水平方向の振動が発生すると、天井199が水平方向に移動して内固定部113と内固定部121に水平方向の位置ずれが発生し、バネ構造体10が変形する。この場合も2つのバネ構造体10が熱変換機能を発揮して、振動の原因となった外力が吸収される。
【0125】
制振装置100の場合も制振装置50と同様、外力が防犯カメラ等の制振対象物に直接伝達されることはなく、バネ構造体10を介して伝達される。そのバネ構造体10において、振動の原因となった外力が吸収されるので、制振装置100によっても、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を十分に抑制することができる。
【0126】
前述の制振装置50では、防犯カメラ200にかかる重力とベース体21にかかる重力によって、バネ構造体10が引き延ばされていた。そのため、バネ構造体10のワイヤーバネ13が伸びきってしまうおそれがあり、これを連鎖リング部材40によって解消していた。しかしながら、制振装置100の場合は、防犯カメラ200にかかる重力とベース体120にかかる重力により、2つのバネ構造体10がつぶれるように変形しているため、ワイヤーバネ13が伸びきってしまうおそれがない。また、2つのバネ構造体10が撓んでいることで、振動吸収作用がより発揮されやすくなっている。
【0127】
さらに、制振装置100では、2つのバネ構造体10の代わりに図19に示すワイヤーバネ80を用いてもよい。ワイヤーバネ80は開口部113aの全体を取り囲める長さを有し、かつワイヤーバネ76と同様の環状部76aを多数有している。前述したワイヤーバネ76では、複数の環状部76が直線状に配列されていたが、ワイヤーバネ80では、複数の環状部76が円周状に配列されて一つにつながっている。このようなワイヤーバネ80を格納スペース130に納め、内固定部113と内固定部121とに固定してもよい。そうすると、ワイヤーバネ80が振動吸収作用を発揮し、制振装置100による振動を吸収効果が得られる。
【0128】
第4の実施の形態
次に、図20〜図21を参照して本発明の第4の実施の形態に係る制振装置150について説明する。図20は、鉄道車両300内部の要部を示す一部省略した正面図である。鉄道車両300は、床301と、側壁302と、妻部303と、天井304と、つなぎ部305とを有している。
【0129】
この鉄道車両300に防犯カメラを取り付ける場合、防犯カメラ200のように、天井304につりさげ状に固定される場合がある。この場合、防犯カメラ200に鉛直方向の重力が作用するので、前述した制振装置50、70、100を天井304に固定し、その制振装置50、70、100に防犯カメラ200を固定すればよい。
【0130】
しかしながら、防犯カメラ210のように、天井304と側壁302との間に配置されたつなぎ部305に固定される場合も考えられる。つなぎ部305は、床301と平行ではなく、天井304に対して傾斜している。そのため、つなぎ部305に制振装置50を固定すると、連鎖リング部材40における金属リング41の配列方向が鉛直方向にならない。そのため、天井304に対して傾斜している、例えばつなぎ部305のような部分に固定される防犯カメラ210を制振対象物とする場合、制振装置50、70、100を用いることは好ましくない。
【0131】
防犯カメラ210のように、水平でなく垂直でもない部分に固定される構造物が制振対象物であるときは、図21に示す制振装置150を使用することが好ましい。制振装置150は、制振装置100と比較して、連鎖リング部材40の代わりに連鎖リング部材45を有する点で相違している。連鎖リング部材45は、連鎖リング部材40と同様に3つの金属リング41を有するが、3つの金属リング41の配列方向が、制振装置150をつなぎ部305に固定したときの鉛直方向gに一致するように構成されている。そのため、連鎖リング部材45によって、ワイヤーバネ13の伸びきりを防止できる。
【0132】
この制振装置150に防犯カメラ210を固定した場合、ベース体21および防犯カメラ210の重力は鉛直方向gと一致している。鉛直方向gは、ベース体1からベース体21に向かう方向の成分g1と、ベース体1およびベース体21に沿った方向の成分g2とに分解することができる。また、つなぎ部305による外力の成分も成分g1と、成分g2とに分解することができる。そのため、防犯カメラ210に対する振動を制振装置150によって吸収することができる。
【0133】
一方、妻部303に固定される防犯カメラ220については、連鎖リング部材45における3つの金属リング41の配列方向を図21よりも鋭角にした上で、制振装置150を図示しない受け金具を介して妻部303に固定し、その制振装置150に防犯カメラ220を固定すればよい。妻部303は垂直方向に設置されているから制振装置150を妻部303に直に固定すると、3つの金属リング41の配列方向を鉛直方向に一致させることができない。そのため、連鎖リング部材40による間隔規制機能が発揮されない恐れがあり、好ましくない。そこで、受け金具を使用する。受け金具は、下側よりも上側の厚みが厚く形成されている。そのため、制振装置150を受け金具を介して妻部303に固定すると、制振装置150の下側よりも上側が手前に張り出すため、3つの金属リング41の配列方向を鉛直方向に一致させることができる。
【0134】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【0135】
以上の実施の形態では、制振対象物として主に防犯カメラを取り上げ、振動伝達部材として鉄道車両を取り上げているが、本発明は制振対象物と、振動伝達部材が上記以外の場合についても適用することができる。例えば制振対象物がビル内のダクトであり、振動伝達部材がビルの天井である場合も適用することができる。
【0136】
制振装置50では、周側部3と周側部23とが互いに対向するように形成されているため、格納スペース19内へのゴミ等の異物の進入を防止し得るが、周側部3と周側部23とが互いに対向するように形成されていなくてもよい。また、制振装置50は2本のゴムバンド31、32を有しているが、いずれか1本だけでもよい。連鎖リング部材40は、3つの金属リング41を有しているが、金属リング41は2本でもよいし、4本以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明を適用することにより、構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大するとともに、振源が制振対象物よりも下側に配置されない形態で制振対象物が設置される場合について、不定性3次元振動を抑制できるようにすることができる。本発明は、構造物の振動を抑制する制振装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0138】
1,21,51,61,110,120…ベース体、2,22,52,62,111,122…固定部、3,23,53,63,112…周側部、5,25,55,65,113,121…内固定部、10…バネ構造体、13,76,80…ワイヤーバネ、13a…湾曲部、16…索部材、19,130…格納スペース、31,32…ゴムバンド、40,47…連鎖リング部材、41,46…金属リング、64…線状部材、65…単位索部材、75…螺旋構造体、50,70,100,150…制振装置、140…伸縮ユニット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の振動を抑制する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物、高層建築物、産業機械、橋梁、高架式の道路や線路といった固定構造物や、車両、航空機、船舶といった移動構造物は地震や強風、車両の走行等による外力を受けるとその外力に応じて振動する。また、移動構造物や産業機械は移動中または運転中も種々の要因によって振動する。
【0003】
従来、こうした構造物に発生する振動を抑制することを目的とした技術が知られている。例えば、木造建築物や高層建築物の地震や強風等による振動を抑制する装置としてTMD(Tuned Mass Damper)と呼ばれる装置が知られている。この装置は錘とその錘を振動自在に支持する弾性支持部材とから構成され、錘の振動周期が構造物の固有振動周期とほぼ同一となるように、錘の質量および弾性支持部材のばね定数が調整されている。このようなTMDに関して例えば特許文献1には、複数の錘のそれぞれが構造物の複数次の固有振動周期と同一の振動周期で振動するように構成された装置が開示されている。
【0004】
その他、構造物に発生する振動を抑制することを目的とした技術として、特許文献2,3,4に開示されている技術があった。特許文献2には、振り子とその振り子の錘を支える斜面を対称に配設した振り子式制御装置が開示されている。また、特許文献3には制震装置を屋根の棟構造にあわせて対として設置した制震構造が開示されている。特許文献4には竹の子ばね状の振動減衰装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−49387号公報
【特許文献2】特開平7−324518号公報
【特許文献3】特許第3483535号公報
【特許文献4】特開2000−283227号公報
【特許文献5】特開2011−27165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術によれば、地震や強風等によって固定構造物に発生する振動や移動構造物に発生する振動を抑制することが可能になる。
【0007】
しかし、特許文献1,2,3に開示されている装置では、振動を減衰させるための部材の構造上、構造物が水平面に沿って動く2次元的な水平方向の振動(以下「水平振動」という)を抑制できるに留まり、構造物が高さ方向に動く垂直方向の振動(以下「垂直振動」という)は抑制することが極めて困難であった。
【0008】
また、特許文献4に開示されている装置は、振動を減衰させるための竹の子ばねが軸方向に沿って伸縮するように構成されているため、軸方向に沿っている振動しか抑制することができなかった。
【0009】
つまり、上述した従来技術では、振動の方向が限られ、しかも装置の構造がその振動に対応しているときは、期待した振動抑制効果が得られるが、そうでなければ期待した振動抑制効果が得られないという課題があった。
【0010】
ところが、地震によって固定構造物や移動構造物に発生する振動、移動中の車両等に発生する振動、車両の走行に伴い橋梁等に発生する振動は水平振動と垂直振動とが組み合わさった3次元的な振動であり、しかも構造物の動く方向が定まっていない振動(以下「不定性3次元振動」という)であることがある。特に地震によって固定構造物や移動構造物に発生する振動は不定性3次元振動であることが多いため、振動を抑制する装置の構造を地震による振動に正確に適合させることは困難である。
【0011】
一方、不定性3次元振動を抑制し得る装置として、従来、特許文献5に開示されている制振装置が知られていた。
【0012】
しかし、この制振装置は、制振対象物にかかる重力や錘にかかる重力を鉛直方向の上側から作用させることにより螺旋構造体を撓ませる構造を有していた。制振装置を作動させるときは、主に木造家屋の床等に固定する場合や、水平な台上に制振装置を設置してその上側から精密機械等の制振対象物を載置することが想定されているに過ぎなかった。従来の制振装置は、不定性3次元振動の伝達源となる部材(「振動伝達部材」ともいう)が制振対象物と同じ場合(例えば、木造家屋等の建物自体が制振対象物の場合)か、振動伝達部材が制振対象物よりも鉛直方向の下側に配置されている場合(例えば、振動伝達部材である建物の床に制振対象物としてのサーバが設置されている場合)を想定した構造になっていた。
【0013】
そのため、例えば、車両や建物の天井、壁面等に固定されている防犯カメラ、監視カメラ等の精密機械や、天井や壁面等に固定されているダクトや空調装置といった構造物については、従来の制振装置によって不定性3次元振動を抑制することはできなかった。例えば、防犯カメラや監視カメラの場合、車両や建物の天井、壁面等が振動伝達部材になることが多く、振動伝達部材が制振対象物たる防犯カメラや監視カメラよりも鉛直方向の下側に配置されることは少ない。
【0014】
このように従来技術では、抑制できる振動の範囲が限られ、固定構造物についても移動構造物についても、不定性3次元振動を抑制することが極めて困難であるという課題があった。
【0015】
また、従来技術では、制振対象物の不定性3次元振動を抑制し得る設置形態が限られ、振動伝達部材が制振対象物よりも鉛直方向の上側に配置されているときは、不定性3次元振動を抑制することができなかった。
【0016】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大するとともに、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の線状部材をより合わせた索部材を湾曲させた湾曲部を有する湾曲索部材と、振動の伝達源となる振動伝達部材に固定される第1の固定部を備えた第1のベース体と、制振対象物が固定される第2の固定部を備えた第2のベース体とを有し、第1のベース体と第2のベース体とは、第1の固定部よりも第2の固定部が鉛直方向の下側に位置するように配置され、第1のベース体は、第1の固定部よりも鉛直方向の下側に位置するように配置された第1の内固定部を有し、第2のベース体は、第2の固定部よりも鉛直方向の上側に位置するように配置された第2の内固定部を有し、第1の内固定部と第2の内固定部とによって挟まれる格納スペースに湾曲索部材が納められ、かつ湾曲部が起立するようにして湾曲索部材が第1の内固定部と第2の内固定部とに固定されている制振装置を特徴とする。
【0018】
この制振装置では、湾曲索部材が格納スペースに納められ、第1の内固定部と第2の内固定部とに固定されている。第1の内固定部よりも鉛直方向の上側に配置されている第1の固定部が振動伝達部材に固定され、第2の内固定部よりも鉛直方向の下側に配置されている第2の固定部に制振対象物が固定されるから、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置される。
【0019】
上記制振装置の場合は、第1の内固定部と第2の内固定部とに係合され、かつ第1の内固定部と第2の内固定部との間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制する間隔規制部材を更に有することが好ましい。
【0020】
この制振装置では、間隔規制部材が第1の内固定部と第2の内固定部との間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制するため、湾曲索部材における湾曲部の変形具合が一定程度よりも小さくなる。
【0021】
また、上記制振装置において、一端部と他端部の双方が第2の固定部に固定され、かつその一端部と他端部の中間に位置する中間部が第1の固定部を横断するようにして第1のベース体および第2のベース体に装着された弾性部材からなる弾性バンドを更に有することが好ましい。
【0022】
この制振装置では、弾性バンドが元の形状を戻ろうとする復元力を発揮するため、第1のベース体が振動伝達部材とともに動いても、第1のベース体が弾性バンドによって元の位置に引き戻される。
【0023】
さらに、上記制振装置において、弾性バンドを2本有し、そのそれぞれの弾性バンドが直交するようにして第1のベース体および第2のベース体に装着されていることが好ましい。
【0024】
この制振装置では、第1のベース体が振動伝達部材とともにどの方向に動いても、第1のベース体が2本の弾性バンドによってほぼ同じようにして元の位置に引き戻される。
【0025】
さらに、上記制振装置では、第1の固定部の表面に弾性バンドの形状に応じた溝部が形成され、その溝部に弾性バンドが納められているようにすることができる。
【0026】
さらに、第1のベース体および第2のベース体は、第1の内固定部および第2の内固定部を取り囲み、かつ互いに対向するように形成された第1の周側部および第2の周側部をそれぞれ有することが好ましい。
【0027】
また、間隔規制部材は、第1の固定部を振動部材に固定したときの鉛直方向に沿って伸縮自在に構成されているようにすることができる。
【0028】
上記いずれの制振装置も、間隔規制部材は、複数の金属製リング部材が連鎖状に接続された連鎖構造を有するようにすることができる。
【0029】
そして、上記制振装置の場合、第1の内固定部は、中央に開口部を有し、かつ第1の固定部に対向するように配置され、第1のベース体は、第1の内固定部を取り囲み、かつ第1の固定部と第1の内固定部とをつなぐように形成された第1の周側部を有し、第2の内固定部は、第1の内固定部よりも鉛直方向の上側に位置するように配置され、第2のベース体は、第1の内固定部の開口部に挿通されて第2の内固定部と第2の固定部とを連結する連結部を有するようにすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上詳述したように、本発明によれば、構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大するとともに、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を抑制できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の構成を示す斜視図である。
【図2】同じく制振装置の構成を示す平面図である。
【図3】図1の制振装置の図2の3−3線断面図である。
【図4】ベース体の一例を示す斜視図である。
【図5】図1の制振装置の側面図である。
【図6】同じく裏面図である。
【図7】ベース体とバネ構造体とを示す一部省略した斜視図である。
【図8】2つのベース体および連鎖リング部材を示す一部省略した斜視図である。
【図9】図1の制振装置の使用状態の一例を示す図3と同様の断面図である。
【図10】図9において、振動伝達部材が上方向に移動した状態を示す図3と同様の断面図である。
【図11】同じく、振動伝達部材が左方向に移動した状態を示す図3と同様の断面図である。
【図12】バネ構造体における長さの変化を示し、(a)はワイヤーバネが伸びきった場合を示す図、(b)はワイヤーバネが伸びきる直前を示す図である。
【図13】変形例に係るベース体とバネ構造体とを示す一部省略した斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る制振装置の構成を示す断面図である。
【図15】図14の制振装置を構成するベース体と、螺旋構造体を示す平面図である。
【図16】(a)は螺旋構造体の一例を示す側面図、(b)は同じく正面図である。
【図17】索部材の一例を示す断面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る制振装置の使用状態の一例を示す断面図である。
【図19】別のワイヤーバネを示す平面図である。
【図20】鉄道車両内部の要部を示す一部省略した正面図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態に係る制振装置の設置状態の一例を示す断面図である。
【図22】(a)は変形例に係る連鎖リング部材を示す斜視図、(b)は伸縮ユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0033】
第1の実施の形態
(制振装置の構成)
まず、図1〜図8を参照して本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の構成について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る制振装置50の構成を示す斜視図、図2は同じく制振装置50の構成を示す平面図である。図3は図2の3−3線断面図で、図4はベース体1の斜視図である。また、図5は制振装置50の側面図、図6は裏面図である。そして、図7はベース体21とバネ構造体10とを示す一部省略した斜視図、図8はベース体1、ベース体21および連鎖リング部材40を示す一部省略した斜視図である。
【0034】
図1〜図8に示すとおり、制振装置50はベース体1と、ベース体21と、4つのバネ構造体10と、ゴムバンド31,32と、連鎖リング部材40とを有している。制振装置50は、鉄道車両の天井等につりさげられた状態で固定される防犯カメラ等の構造物や、ダクト、空調装置といったの建物の天井や壁面等に固定される構造物を制振対象物とする場合に使用される。そして、制振装置50では、ベース体1とベース体21とは、固定部2よりも固定部22が鉛直方向の下側に位置するように配置されている。
【0035】
ベース体1は本発明における第1のベース体に対応していて、鋼等の金属やアクリル樹脂、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics, FRP)といった樹脂材料等を用いて構成されている。ベース体1は高さの低い有底円筒状の構造を有し、固定部2と、周側部3と、内固定部5とを有している。
【0036】
固定部2は、本発明における第1の固定部に対応していて、図1、図2、図4等に詳しく示すように、制振対象物に応じた大きさを有する厚肉円板状部材の外表面部分に対応している。固定部2は、後述する溝部4の形成されている部分を除いて平坦に形成されている。この固定部2は、振動の伝達源となる振動伝達部材、例えば鉄道車両の天井等に固定される部分である。
【0037】
固定部2の表面には2本の溝部4が形成されている。各溝部4は、固定部2の中央をとおって固定部2を横断するように形成され、中央部分で十字状に交差している。各溝部4は、それぞれゴムバンド31,32の形状に応じた大きさに形成されている。また、各溝部4にゴムバンド31,32が納められた際、固定部2の表面よりもゴムバンド31,32が外に突出しないようにするため、各溝部4の深さが、ゴムバンド31の厚さとゴムバンド32の厚さとを加えた厚さに応じた深さに設定されている。
【0038】
周側部3は固定部2の裏面側において、固定部2および内固定部5に対して直交し、かつ内固定部5を取り囲むように形成されている。周側部3はベース体21の後述する周側部23と互いに対向するように形成されている。
【0039】
内固定部5は本発明における第1の内固定部に対応している。内固定部5は固定部2の裏面部分、すなわち前述した厚肉円板状部材の、周側部3よりも内側の表面部分であって、ベース体1において、固定部2よりも鉛直方向の下側に位置するように配置された部分である。
【0040】
内固定部5のほぼ全体が平坦に形成されている。内固定部5には、図7に詳しく示すような4つのバネ構造体10が固定され、さらに図8に詳しく示すような連鎖リング部材40が係合されている。また、図8に示すように、内固定部5には挿通孔5aが形成されている。挿通孔5aは、後述する金属リング41の環状部分に応じた形状に形成されている。ここに金属リング41が挿通されて、内固定部5に金属リング41が係合している。
【0041】
次に、ベース体21について説明する。ベース体21は、本発明における第2のベース体に対応していて、ベース体1と同様に、鋼等の金属や、アクリル樹脂、FRPといった樹脂材料等を用いて構成されている。ベース体21はベース体1と同様の高さの低い有底円筒状の構造を有し、固定部22と、周側部23と、内固定部25とを有している。
【0042】
固定部22は、本発明における第2の固定部に対応していて、図1、図3、図6等に詳しく示すように、厚肉円板状部材の外表面部分に対応している。固定部22の全体が平坦に形成されている。この固定部22は、制振の対象となる制振対象物、例えば鉄道車両に取り付けられる防犯カメラや、ダクト等が固定される部分である。
【0043】
固定部22は、ゴムバンド31の一端部31aおよび他端部31aと、ゴムバンド32の一端部32aおよび他端部32aとが螺子33を用いて固定されている。そして、一端部31a、他端部31a等が固定されている部分の内側に円形の固定ゾーン24が配置されている。固定ゾーン24は制振対象物の大きさに対応した大きさに形成されている。この固定ゾーン24に後述する防犯カメラ200が固定される。
【0044】
周側部23は固定部22の裏面側において、固定部22および内固定部25に対して直交し、かつ内固定部25を取り囲むように形成されている。周側部23は前述したベース体1の周側部3と互いに対向するように形成されている。
【0045】
内固定部25は本発明における第2の内固定部に対応している。内固定部25は固定部22の裏面部分、すなわち、厚肉円板状部材の周側部23よりも内側の表面部分であって、ベース体21において、固定部22よりも鉛直方向の上側に位置するように配置された部分である。
【0046】
内固定部25は内固定部5と同様にほぼ全体が平坦に形成されている。内固定部25には、内固定部5と同様、4つのバネ構造体10が固定され、連鎖リング部材40が係合されている。また、図8に示したように、内固定部25には挿通孔25aが形成されている。挿通孔25aは金属リング41の環状部分に応じた形状に形成されている。ここに内固定部5とは別の金属リング41が挿通されて、内固定部25に金属リング41が係合している。そして、挿通孔25aと前述した挿通孔5aとは互いに上下に重なる位置に形成され、ベース体1の固定部2が振動伝達部材に固定されたとき、互いに鉛直方向に沿って並び得る位置に形成されている。
【0047】
次に、バネ構造体10について説明する。バネ構造体10は、図3、図7に示すように、バネ装着部材11,12と、ワイヤーバネ13とを有している。バネ構造体10は、ベース体1とベース体21とによって形成される格納スペース19に納められている。格納スペース19は内固定部5と内固定部25とが向かい合わせになって形成され、内固定部5、内固定部25、周側部3および周側部23によって囲まれる円柱状の空間である。
【0048】
バネ装着部材11は矩形状の板材であり、図7に示すように、長手方向一端部に挿通孔が形成されている。挿通孔はワイヤーバネ13の太さに応じた大きさで、バネ装着部材11を短手方向に沿って貫通するように形成されている。また、この挿通孔の反対側に2つの固定穴が形成されている。各固定穴にはそれぞれワイヤーバネ13の一端部と他端部とが挿入されて固定されている。バネ装着部材11はボルト14を用いて内固定部25に固定されている。
【0049】
バネ装着部材12は矩形状の板材であり、その短手方向両端部に挿通孔が形成されている。各挿通孔はワイヤーバネ13の太さに応じた大きさで、バネ装着部材12を長手方向に沿って貫通するように形成されている。バネ装着部材12はボルト15を用いて内固定部5に固定されている。
【0050】
ワイヤーバネ13は本発明における湾曲索部材であって、湾曲部13aを2つ有している。湾曲部13aは、後述する索部材16を適度に湾曲させて概ね環状に形成された部分であり、図3、図7に示すように、内固定部25および内固定部5に対して起立している。
【0051】
そして、バネ構造体10では、索部材16の一端部と他端部とがバネ装着部材11の固定穴に挿入されて固定されている、また、その固定されている部分の中間部分が、バネ装着部材12の挿通孔に挿通され、さらにバネ装着部材11の挿通孔にも挿通されることで索部材16の中間部分にバネ装着部材11、12が装着され、これにより、図7に示すような湾曲部13aが2つ形成されている。
【0052】
また、バネ装着部材11,12がそれぞれ内固定部25、内固定部5に固定されており、これにより、2つの湾曲部13aが起立するように、内固定部25と内固定部5とにワイヤーバネ13が固定されている。
【0053】
ワイヤーバネ13では、索部材16が強固な弾力性を有する弾性部材であり、そのような索部材16を用いて湾曲部13aが形成されている。そして、湾曲部13aは、形状の変化がおきたときに元の形状に戻ろうとする復元力を発揮する。
【0054】
索部材16は図17に示すように、断面円形状の線状部材64を複数(図8では19本)より合わせて単位索部材65とし、この単位索部材65をさらに複数本(図17では7本)より合わせ、かつ捩り込んで形成されている。本実施の形態に係る索部材16は鋼索であり、強固な弾力性を有している。なお、図17に示した索部材16は合計133本の線状部材64がより合わされている。
【0055】
続いて、ゴムバンド31,32について説明する。ゴムバンド31,32はともに本発明における弾性バンドに対応している。ゴムバンド31,32は洋裁や手芸等で使用されるいわゆるゴム紐であって、ゴムを糸でコーティングした部材であり、幅方向の断面が概ね矩形状に形成されている。本実施の形態では、ゴムバンド31,32として、ゴム紐を用いることを想定しているが、糸でコーティングされていない断面矩形状の平ゴムを用いてもよい。また、ゴムバンド31,32として、ゴムをチューブ状に成形したゴムチューブを用いてもよいし、断面円形状に成形したゴムロープを用いてもよい。
【0056】
そして、ゴムバンド31,32は、図1、2、5等に示すようにベース体1、ベース体21に装着されている。この場合、ゴムバンド31,32は、それぞれの一端部31a,32aと他端部31a,32aとが螺子33を用いて固定部22に固定され、その中間に位置する中間部31b、32bが固定部2を横断している。また、中間部31b、32bが固定部2の溝部4に納められ、かつ互いに直交している。
【0057】
さらに、連鎖リング部材40について説明する。連鎖リング部材40は本発明に係る間隔規制部材に対応していて、内固定部5と内固定部25との間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制する機能を有している。連鎖リング部材40は、図3、図8に示すように、3つの金属リング41を用いて構成されている。各金属リング41は互いの環状部分が1つずつ係合することで連鎖状に接続されている。
【0058】
そして、連鎖リング部材40では、中間を除く両側2つの金属リング41がそれぞれ内固定部5、内固定部25に係合されている。内固定部5の挿通孔5aと、内固定部25の挿通孔25aにそれぞれ金属リング41が挿通されて、各金属リング41が内固定部5と、内固定部25とにそれぞれ係合されている。
【0059】
前述したとおり、挿通孔5a,25aが鉛直方向に沿って並ぶような位置に形成されており、各金属リング41の環状部分がそれぞれ係合している。連鎖リング部材40は、金属リング41同士の係合状態が変わることで鉛直方向に沿って伸縮自在であり、しかも内固定部5と内固定部25に対する係合状態が変わることで鉛直方向以外の斜め方向に沿っても動き得る構造を有している。
【0060】
このような連鎖リング部材40について図12を参照しながらさらに説明すると次のとおりである。まず、振動伝達部材に振動が発生したことに伴いベース体1が上方向に移動したとする。この場合、バネ構造体10がベース体1の内固定部5に固定されているので、ベース体1の移動に伴い、バネ構造体10のワイヤーバネ13が上方向に引っ張られる。そして、バネ構造体10は図12(a)に示すように上方向に伸びきってしまうと、それ以上伸びる余地がなくなる。それからさらにベース体1が上方向に移動すると、のびきったバネ構造体10に対して、ベース体21にかかる重力と制振対象物にかかる重力とが作用するため、制振装置50が破損するおそれがある。そのため、制振装置50では、バネ構造体10のワイヤーバネ13が伸びきってしまわないようにすることが好ましい。制振装置50では、そのようにならないよう、連鎖リング部材40によって内固定部5と内固定部25の間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制している。
【0061】
ここで、図12(a)に示すように、周側部3の内固定部5から最も離れた端部3aと、周側部23の内固定部25から最も離れた端部23aとのワイヤーバネ13が伸びきった時点での上下間隔をh1とする。そして、図12(b)に示すように、端部3aと端部23aとの上下間隔が、ワイヤーバネ13が伸びきる直前の上下間隔h2(h2はh1よりも小さいので、h2<h1)になったときに、長さが最長となるように連鎖リング部材40の長さが設定されている。すなわち、制振装置50では、端部3aと端部23aとの上下間隔がh2になったときの内固定部5と内固定部25との上下間隔をSとし、連鎖リング部材40の最も長い長さがそのSになるように、金属リング41の直径が設定されている。
【0062】
(制振装置の動作内容)
続いて以上の構成を有する制振装置50の動作内容について、図9〜図11を参照して説明する。制振装置50は、ベース体21がベース体1よりも鉛直方向の下側に位置するように配置した状態で使用する。
【0063】
そして、例えば、図9に示すように、ベース体1の固定部2を鉄道車両の天井199に固定する。固定部2には、溝部4が形成されていて、その溝部4の深さがゴムバンド31の厚さと、ゴムバンド32の厚さとを加えた厚さに応じた深さであり、その溝部4の中にゴムバンド31,32が納まっている。そのため、ゴムバンド31,32がベース体1およびベース体21に装着されていても固定部2が平坦になっているから、制振装置50を天井199にしっかりと固定できる。
【0064】
一方、制振対象物としての防犯カメラ200がベース体21の固定部22に固定される。この場合、図9に示すように、防犯カメラ200の装着部201が螺子202を用いて固定部22の固定ゾーン24に固定される。
【0065】
天井199は鉄道車両の天井である。鉄道車両は走行中に横揺れや縦揺れを発生し、振動の向きが定まっていないため、不定性3次元振動を発生する。そのような鉄道車両の天井199に防犯カメラ200を直に固定すると、その不定性3次元振動が天井199から防犯カメラ200に伝達される。防犯カメラ200は、不定性3次元振動を受け続けると破損や故障の恐れがある。しかも、撮影された映像に不規則な揺れによる乱れが発生することで映像が見苦しいものとなる等、画質の劣化が避けられない。
【0066】
そのため、防犯カメラ200について、不定性3次元振動を抑制することが望ましい。天井199が振動の伝達源となる振動伝達部材に相当し、防犯カメラ200が制振対象物に相当する。
【0067】
そして、バネ構造体10が内固定部5と内固定部25に固定されているため制振装置50に防犯カメラ200を固定すると、防犯カメラ200にかかる重力とベース体21にかかる重力とがバネ構造体10に作用してバネ構造体10を引き延ばし、端部3aと端部23aとが離れて両者の間に隙間ができる。以下の説明ではこの状態を振動のない基準状態としている。
【0068】
一方、端部3aと端部23aとの間隔が前述したh2になってしまうと、連鎖リング部材40の長さが最長となり、それ以上、バネ構造体10を上下に引き延ばすことができなくなる。すると、バネ構造体10の長さを縮める(バネ構造体10をつぶす)ことはできても引き延ばすことはできなくなり、バネ構造体10の変形許容度が減少する。バネ構造体10は、ワイヤーバネ13の変形によって振動吸収作用を発揮するため、バネ構造体10による振動吸収作用が減殺されてしまう。そのため、端部3aと端部23aとの間隔は、基準状態において、0よりも大きく、かつh2よりも小さい大きさに設定されるよう、防犯カメラ200の重量に応じて、索部材16の太さや強度、ベース体21のサイズや重量を設定する。このようにすることで、バネ構造体10について、長さを縮めることも伸ばすこともできるから、バネ構造体10による振動吸収作用が効果的に発揮されるようになる。
【0069】
そして、走行中の鉄道車両に上方向に移動する縦方向の振動が発生したとする。すると、図10に示すように、その振動に伴って天井199が上方向に移動する。天井199には、ベース体1の固定部2が固定されているから、天井199が上方向に移動するのに伴いベース体1の固定部2も上方向に移動する。また、固定部2と内固定部5とが一体となってベース体1を構成しているから、固定部2に伴い内固定部5も上方向に移動する。この内固定部5にバネ構造体10が固定されているから、バネ構造体10が上方向に引き伸ばされ、端部3aと端部23aとの間隔が基準状態よりも大きいd1になる。
【0070】
しかしながら、バネ構造体10はワイヤーバネ13を有し、ワイヤーバネ13は、湾曲部13aが起立するようにして内固定部5に固定されているから、固定部2の移動の原因となった外力がバネ装着部材12を介してワイヤーバネ13の2つの湾曲部13aに加わる。
【0071】
このとき、ワイヤーバネ13は湾曲部13aを有しているから弾力性を有し、外力により変形したときは元の形状に戻ろうとする復元力を発揮する。各湾曲部13aは加わった外力の向きと大きさに応じて傾斜したり撓む等して変形するが、それと同時並行的に復元力を発生してその変化を打ち消すように動く。
【0072】
一方、ワイヤーバネ13は索部材16を用いて構成されている。索部材16は多数の線状部材64をより合わせて形成されている。そのため、湾曲部13aが前述のような動きをすると各線状部材64が隣接するもの同士で激しくこすれ合い、熱を発生させる。すなわち、ワイヤーバネ13は加えられた外力を熱に変換する熱変換機能を有している。湾曲部13aが加わった外力の向きと大きさに応じて変形し、それに伴い熱を発生することにより、ワイヤーバネ13が加わった外力を吸収することになる。
【0073】
そして、線状部材64は断面円形状であるため、隣接しているもの同士は接触しつつそれぞれの間に多数の隙間が形成されている。そのため、線状部材64が発生する熱は空気中に拡散され、バネ構造体10の内部にとどめられることなく空気中に放出される。
【0074】
加えて制振装置50では、ベース体1とベース体21にゴムバンド31、32が装着されている。このゴムバンド31、32は、一端部31a,32aと他端部31a,32aとが固定部22に固定される一方、中間部31b、32bが固定部2を横断するようにしてベース体1、ベース体21に装着されている。そのため、前述のような固定部2の移動に伴いゴムバンド31、32が伸びて双方の長さが長くなる。そして、ゴムバンド31、32は弾性部材を用いて形成されているから、元の長さに戻ろうとする復元力を発揮する。そうすると、上方向に移動したベース体1を元の位置に引きもどそうとする力をゴムバンド31、32が発揮し、その結果、ベース体1が下向きに引きもどされる。すると、ベース体1に作用する上向きの外力がゴムバンド31、32の復元力によって相殺されることになるため、防犯カメラ200に伝わる上向きの外力が軽減され、振動吸収効果が得られる。
【0075】
また、ゴムバンド31、32が直交するようにしてベース体1、ベース体21に装着されているから、ベース体1が天井199とともにどの方向に動いても、ゴムバンド31、32の復元力がほぼ同じように発揮されるので、ベース体1がほぼ同じようにして元の位置に引き戻される。
【0076】
ところで、防犯カメラ200はベース体21の固定部22に固定されているが、ベース体21は、バネ構造体10、ゴムバンド31、32および連鎖リング部材40を介してベース体1に接続されている。そのため、ベース体1が上方向に移動しても、その移動の原因となった外力はバネ構造体10、ゴムバンド31、32および連鎖リング部材40を介してベース体21に伝達される格好になり、決して直接は伝達されない。
【0077】
そして、そのバネ構造体10が前述のような熱変換機能による振動吸収作用を有し、加えてゴムバンド31、32が復元力による振動吸収作用を発揮することによって、ベース体1の上方向への移動の原因となった外力が、バネ構造体10およびゴムバンド31、32によって吸収される。そのため、外力がバネ構造体10およびゴムバンド31、32によって減衰された後に防犯カメラ200に伝達される。こうして、上向きの振動を吸収する効果が得られ、防犯カメラ200に伝達される上向きの外力が制振装置50によって抑制されることになる。
【0078】
また、端部3aと端部23aとの上下間隔が基準状態において0よりも大きく設定されているから、ベース体1を下向きに移動させる振動が発生した場合もバネ構造体10が変形する。そのため、この場合も、制振装置50による振動吸収効果が確実に得られる。
【0079】
このように、防犯カメラ200の装着された車両に上方向または下方向の振動が発生しても、その振動は減衰(概ね80%程度、減衰)された後に防犯カメラ200に伝達されるから、防犯カメラ200の故障や破損の恐れが著しく低減される。また、減衰された後に振動が伝達されることにより、防犯カメラ200によって撮影される映像の乱れも著しく低減され、したがって映像の画質や正確性を著しく向上させる効果が得られる。また、振動が減衰されることによって防犯カメラ200がピントを合わせやすくなり、この点でも、撮影される映像の画質向上が期待できる。
【0080】
一方、制振装置50は、連鎖リング部材40を有している。連鎖リング部材40は、ワイヤーバネ13が伸びきってしまう直前に長さが最長となるように構成されている。連鎖リング部材40の長さが最長になれば、それ以上、ワイヤーバネ13の長さが長くならない。そのため、ワイヤーバネ13が伸びきってしまうおそれが皆無であり、ワイヤーバネ13が伸びきってしまうことによる破損のおそれが皆無である。
【0081】
そして、図11に示すように、走行中の鉄道車両に左方向に移動する横方向の振動が発生して天井199が左方向に移動し、端部3aと端部23aとの横間隔がd2になったとする。すると、天井199とともに固定部2も左方向に移動し、内固定部5も左方向に移動する。この内固定部5にバネ構造体10が固定されているから、バネ構造体10の上側部分が左方向に引っ張られる。
【0082】
しかしながら、湾曲部13aが起立するようにして内固定部5に固定されているから、固定部2の移動の原因となった外力がバネ装着部材12を介して2つの湾曲部13aに加わる。
【0083】
このとき、ワイヤーバネ13は元の形状に戻ろうとする復元力を発揮する。また、各湾曲部13aは加わった外力の向きと大きさに応じて変形するが、それと同時並行的に復元力を発生してその変化を打ち消すように動く。前述のとおりワイヤーバネ13は熱変換機能を有しているから、加わった外力の向きと大きさに応じて変形し、それに伴い熱を発生することで加わった外力を吸収する。
【0084】
また、前述のような固定部2の移動に伴いゴムバンド31、32が復元力を発揮するから、左向きに移動したベース体1がゴムバンド31、32によって右向きに引き戻される。すると、ベース体1に作用する左向きの外力がゴムバンド31、32の復元力によって相殺される形にため、防犯カメラ200に伝わる左向きの外力が軽減され、振動吸収効果が得られる。
【0085】
ベース体1が左方向に移動しても、その移動の原因となった外力はバネ構造体10、ゴムバンド31、32および連鎖リング部材40を介してベース体21に伝達される格好になり、決して直接は伝達されない。
【0086】
そして、ベース体1の左方向への移動の原因となった外力がバネ構造体10の振動吸収作用と、ゴムバンド31、32の復元力によって減衰された後に防犯カメラ200に伝達される。そのため、左向きの振動を吸収する効果が得られ、防犯カメラ200に伝達される左向きの外力が制振装置50によって抑制されることになる。
【0087】
また、バネ構造体10は、ワイヤーバネ13を主体として構成されているから、バネ装着部材11,12の相対的な位置がどの方向にずれても同じような熱変換機能を発揮する。そのため、ベース体1が左方向に移動した場合はもちろん、水平方向のどの方向に移動しても外力を抑制する効果が得られる。発生する振動の方向が定まっていなくても、防犯カメラ200に対する振動抑制効果が得られる。
【0088】
さらに、ゴムバンド31、32が直交するように装着されているから、ベース体1と、ベース体21の相対的な位置関係が水平方向にそってどの方向にずれても、ゴムバンド31、32によってベース体1を元の位置に引きもどす作用が同じように発揮される。
【0089】
加えて、制振装置50は4つのバネ構造体10を有しているから、外力を4つに分散させて効果的に吸収することができる。しかも、4つのバネ構造体10は、内固定部21に対し、周回方向に沿って均等な間隔をあけて配置されているから、外力が4つのバネ構造体10に対してほぼ均等に分散される。いずれかのバネ構造体10に対して外力が集中すると、吸収しきれないおそれがあるが、制振装置50ではそのようなおそれが発生しにくい。
【0090】
走行中の車両には水平振動と垂直振動のいずれか一方だけが発生することよりも、両者が組み合わさった3次元的な振動が発生することが多い。その上、振動の方向がまちまちで定まっていないことが多い。
【0091】
しかしながら、制振装置50は前述した構成を採用することによって、ワイヤーバネ13による水平振動に対する熱変換機能と垂直振動に対する熱変換機能とを同時並行的に発揮することができる。不定性3次元振動が構造物に発生した場合、そのうちの水平方向成分、垂直方向成分ともに4つのバネ構造体10が抑制する。バネ構造体10はそれぞれのワイヤーバネ13が加えられた外力の向きと大きさに応じて熱変換機能を発揮することで振動を吸収する。
【0092】
そのため、制振装置50は3次元的などのような振動でも抑制することができる。したがって、制振装置50は、抑制できる振動の範囲が従来技術よりも大幅に拡大されており、不定性3次元振動を十分に抑制できるようになっている。
【0093】
制振装置50は使用する際、ベース体1とベース体21は、固定部2よりも固定部22が鉛直方向の下側に配置され、天井199等の振動伝達部材が防犯カメラ200等の制振対象物よりも上側に配置された状態で使用される。そのため、制振装置50は、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を抑制することができる。
【0094】
(変形例1)
続いて制振装置50の変形例について図13を参照して説明する。図13は変形例に係る制振装置におけるベース体21とバネ構造体10とを示す図7と同様の斜視図である。
【0095】
前述した制振装置50は、バネ構造体10を4つ有していたが、図13に示すように、バネ構造体10は3つでもよい。この場合も、3つのバネ構造体10の周方向に沿った間隔が均等に設定されている。バネ構造体10の個数が少なくなった分、個々のバネ構造体10にかかる外力の大きさが増加する可能性があるが、このような場合でも、前述した制振装置50と同様に、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を抑制することができる。
【0096】
(変形例2)
また、前述した制振装置50において、連鎖リング部材40の代わりに図22(a)に示すような連鎖リング部材47を用いることもできる。連鎖リング部材47は3つの金属リング46を有している。金属リング46は、環状部分の一部が欠落している。その欠落している部分が重ならないように、3つの金属リング46が係合している。
【0097】
また、連鎖リング部材40の代わりに図22(b)に示すような伸縮ユニット140を用いることもできる。伸縮ユニット140は、シリンダ141と、ピストン142とを有している。シリンダ141は、内側に空洞部141aが形成された中空円筒状の部材であり、一端部が内固定部5に固定されている。他端部は、ピストン142が挿通し得る孔部が形成され、内固定部25から離されている。ピストン142は一端部に往復ヘッド142aが形成され、他端部に回動部142bが形成されている。往復ヘッド142aは、ゴムや樹脂等の変形し得る部材を用いて空洞部141aに納まる形状で形成されている。回動部142bは、概ね球状の部材であり、内固定部25の穴部25bに応じた大きさに形成されている。穴部25bは概ね球状に形成されている。
【0098】
伸縮ユニット140の場合、内固定部5と内固定部25との間隔に応じて往復ヘッド142aが空洞部141a内を移動して長さが変化する。そして、往復ヘッド142aが空洞部141a内を最も内固定部25に近い位置まで移動すると、往復ヘッド142aが空洞部141aの下端部に接触して、それ以上移動できなくなり、この時点で伸縮ユニット140の長さが最大になる。そのため、伸縮ユニット140は、内固定部5と内固定部25の間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制する規制機能を有している。また、ベース体1とベース体21に水平方向の位置ずれが発生した場合は、往復ヘッド142aが変形し、その上、回動部142bが穴部25b内で回動するため、伸縮ユニット140は、水平方向の位置ずれにも対応できる。
【0099】
第2の実施の形態
次に、図14〜図16を参照して本発明の第2の実施の形態に係る制振装置70の構成について説明する。ここで、図14は制振装置70の構成を示す一部省略した断面図である。図15は、ベース体61と螺旋構造体75を示す平面図である。図16の(a)は螺旋構造体75を示す側面図、(b)は同じく正面図である。
【0100】
制振装置70はベース体51と、ベース体61と、2つの螺旋構造体55と、連鎖リング部材40とを有している。ベース体61は本発明における第1のベース体であって、鋼等の金属や、アクリル樹脂、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics, FRP)といった樹脂材料等を用いて構成されている。ベース体51は高さの低い有底筒状の構造を有し、固定部52と、周側部53と、内固定部55とを有している。
【0101】
固定部52は、厚さの厚い矩形板状部材の外表面部分に対応している。固定部52の全体が平坦に形成されている。固定部52は、固定部2と同様に振動伝達部材に固定される部分である。
【0102】
周側部53は固定部52の裏面側において、固定部52および内固定部55に対して直交し、かつ内固定部55を取り囲むように形成されている。周側部53はベース体61の後述する周側部63と互いに対向するように形成されている。
【0103】
内固定部55は固定部2の裏面部分、すなわち前述した厚肉矩形板状部材の、周側部53よりも内側の表面部分であって、ベース体51において、固定部52よりも鉛直方向の下側に位置するように配置された部分である。
【0104】
内固定部55は平坦に形成されている。内固定部55には、2つの螺旋構造体75と、連鎖リング部材40とが固定されている。また、挿通孔が形成されている。
【0105】
次に、ベース体61は、ベース体1と同様に、鋼等の金属や、アクリル樹脂、FRPといった樹脂材料等を用いて構成されている。ベース体61はベース体51と同様の高さの低い有底筒状の構造を有し、固定部62と、周側部63と、内固定部65とを有している。
【0106】
固定部62は、矩形板状部材の外表面部分に対応している。固定部62は、全体が平坦に形成されている。この固定部62は、制振対象物が固定される部分である。
【0107】
周側部63は固定部62の裏面側において、固定部62および内固定部65に対して直交し、かつ内固定部65を取り囲むように形成されている。周側部63は前述した周側部53と互いに対向するように形成されている。
【0108】
内固定部65は固定部62の裏面部分、厚肉矩形板状部材の、周側部63よりも内側の表面部分であって、ベース体61において、固定部62よりも鉛直方向の上側に位置するように配置された部分である。
【0109】
内固定部65は平坦に形成されている。内固定部65には、2つの螺旋構造体75と、連鎖リング部材40とが固定されている。また、内固定部65に内固定部25と同様の挿通孔が形成されている。
【0110】
螺旋構造体75は図16(a),(b)に詳しく示すようにワイヤーバネ76と、棒状部材77a,77bとを有している。ワイヤーバネ76は環状索部材であって環状部76aを複数備え、全体が螺旋状に形成されている。環状部76aは前述した索部材16を概ね円環状に形成したものである。湾曲部13aと同様に環状部76aは例えば円形から楕円形に変化する等の形状の変化がおきた場合に復元力を発揮し、元の形状に戻ろうとする。
【0111】
棒状部材77a,77bは、断面角型の外側が平坦な部材である。棒状部材77a,77bは、長さ方向に沿って複数の貫通孔が等間隔に形成されている。棒状部材77a,77bはそれぞれの貫通孔にワイヤーバネ76の環状部76aが挿通されることでワイヤーバネ76と一体化されている。環状部76aは、中心76pを挟んで対向している一部分(この部分を対向部ともいう)だけが棒状部材77a,77bに挿通されている。また、棒状部材77a,77bは各環状部76aの中心76pを挟んで対向する位置に配置され、ワイヤーバネ76の中心軸CL(図16(b)参照)と平行になっている。
【0112】
螺旋構造体75は内固定部55と、内固定部65とによって挟まれている。しかも、それぞれの棒状部材77aが内固定部55に固定されるとともに、棒状部材77bが内固定部65に固定されている。棒状部材77a,77bは図示しないボルトを用いて内固定部55、内固定部65に固定されている。
【0113】
こうすることにより、ワイヤーバネ76がそれぞれ環状部76aを起立させて、内固定部55と、内固定部65の双方に固定されている。
【0114】
制振装置70の場合、制振装置50と同様に固定部52を天井等の振動伝達部材に固定し、固定部62に防犯カメラ等の制振対象物を固定して使用する。制振対象物を固定部62に固定すると、制振対象物にかかる重力と、ベース体61にかかる重力によって螺旋構造体75のワイヤーバネ76が下方に引き伸ばされる。この状態で振動伝達部材が上方向に移動すると、ワイヤーバネ76がワイヤーバネ13と同様の熱変換機能を発揮して、振動の原因となった外力が吸収される。また、振動伝達部材が水平方向に移動した場合も、ワイヤーバネ76がワイヤーバネ13と同様の熱変換機能を発揮して、振動の原因となった外力が吸収される。制振装置70も制振装置50と同様、防犯カメラ等の制振対象物に外力が直接伝達されることはなく、螺旋構造体75を介して伝達される。その螺旋構造体75において、振動の原因となった外力が吸収されるので、制振装置70によっても、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を十分に抑制できるようになっている。
【0115】
第3の実施の形態
次に、図18を参照して本発明の第3の実施の形態に係る制振装置100の構成について説明する。図18は制振装置100の構成を示す断面図である。
【0116】
制振装置100は、ベース体110と、ベース体120と、2つのバネ構造体10とを有している。
【0117】
ベース体110は、固定部111と、内固定部113と、周側部112とを有している。ベース体110は、有底円筒状の部材の開口部分を内固定部113により閉鎖したような構造を有している。
【0118】
固定部111は本発明における第1の固定部に対応し、厚肉円板状の部材である。内固定部113は本発明における第1の内固定部に対応し、厚肉円板状の部材であるが、中央に開口部113aを有している。また、内固定部113は、周側部112の高さに応じた間隔を隔てて固定部111と平行かつ対向するように配置されている。周側部112は円筒状部材の側面部分に相当している。周側部112は、内固定部113を取り囲み、かつ固定部111と内固定部113とをつなぐように形成されている。
【0119】
ベース体120は、固定部122と、内固定部121と、連結部123とを有している。ベース体120は、2枚の厚肉円板状部材を板状または棒状部材で連結したような構造を有している。
【0120】
固定部122は、固定部111よりも大きさの小さい厚肉円板状の部材である。内固定部121も、固定部111より大きさの小さい厚肉円板状の部材である。固定部122は、ベース体110の外側で、内固定部113よりも下側に配置されている。
【0121】
内固定部121は、固定部111と内固定部113との間に納められ、内固定部113よりも鉛直方向の上側に位置するように配置されている。また、内固定部121は、連結部123の高さに応じた間隔を隔てて固定部122と互いに平行かつ対向するように配置されている。連結部123は、板状または棒状部材であって、内固定部113の開口部113aに挿通され、固定部122と内固定部121とに接続されて両者を連結している。
【0122】
2つのバネ構造体10は、内固定部113、内固定部121および周側部112によって囲まれる格納スペース130に納められ、内固定部113と内固定部121に固定されている。
【0123】
制振装置100は、固定部111を天井199などの振動伝達部材に固定し、かつ固定部122に防犯カメラ200等の制振対象物を固定して使用する。すると、防犯カメラ200にかかる重力とベース体120にかかる重力が2つのバネ構造体10に作用することによって、2つのバネ構造体10が撓む。この状態で上方向の振動が発生し、天井199が上方向に移動すると、ベース体110が上方向に移動して内固定部113と内固定部121の間隔が狭まり、バネ構造体10がつぶれるように変形する。すると、2つのバネ構造体10が熱変換機能を発揮して、振動の原因となった外力が吸収される。
【0124】
また、水平方向の振動が発生すると、天井199が水平方向に移動して内固定部113と内固定部121に水平方向の位置ずれが発生し、バネ構造体10が変形する。この場合も2つのバネ構造体10が熱変換機能を発揮して、振動の原因となった外力が吸収される。
【0125】
制振装置100の場合も制振装置50と同様、外力が防犯カメラ等の制振対象物に直接伝達されることはなく、バネ構造体10を介して伝達される。そのバネ構造体10において、振動の原因となった外力が吸収されるので、制振装置100によっても、振動伝達部材が制振対象物より鉛直方向の上側に配置されている場合について、不定性3次元振動を十分に抑制することができる。
【0126】
前述の制振装置50では、防犯カメラ200にかかる重力とベース体21にかかる重力によって、バネ構造体10が引き延ばされていた。そのため、バネ構造体10のワイヤーバネ13が伸びきってしまうおそれがあり、これを連鎖リング部材40によって解消していた。しかしながら、制振装置100の場合は、防犯カメラ200にかかる重力とベース体120にかかる重力により、2つのバネ構造体10がつぶれるように変形しているため、ワイヤーバネ13が伸びきってしまうおそれがない。また、2つのバネ構造体10が撓んでいることで、振動吸収作用がより発揮されやすくなっている。
【0127】
さらに、制振装置100では、2つのバネ構造体10の代わりに図19に示すワイヤーバネ80を用いてもよい。ワイヤーバネ80は開口部113aの全体を取り囲める長さを有し、かつワイヤーバネ76と同様の環状部76aを多数有している。前述したワイヤーバネ76では、複数の環状部76が直線状に配列されていたが、ワイヤーバネ80では、複数の環状部76が円周状に配列されて一つにつながっている。このようなワイヤーバネ80を格納スペース130に納め、内固定部113と内固定部121とに固定してもよい。そうすると、ワイヤーバネ80が振動吸収作用を発揮し、制振装置100による振動を吸収効果が得られる。
【0128】
第4の実施の形態
次に、図20〜図21を参照して本発明の第4の実施の形態に係る制振装置150について説明する。図20は、鉄道車両300内部の要部を示す一部省略した正面図である。鉄道車両300は、床301と、側壁302と、妻部303と、天井304と、つなぎ部305とを有している。
【0129】
この鉄道車両300に防犯カメラを取り付ける場合、防犯カメラ200のように、天井304につりさげ状に固定される場合がある。この場合、防犯カメラ200に鉛直方向の重力が作用するので、前述した制振装置50、70、100を天井304に固定し、その制振装置50、70、100に防犯カメラ200を固定すればよい。
【0130】
しかしながら、防犯カメラ210のように、天井304と側壁302との間に配置されたつなぎ部305に固定される場合も考えられる。つなぎ部305は、床301と平行ではなく、天井304に対して傾斜している。そのため、つなぎ部305に制振装置50を固定すると、連鎖リング部材40における金属リング41の配列方向が鉛直方向にならない。そのため、天井304に対して傾斜している、例えばつなぎ部305のような部分に固定される防犯カメラ210を制振対象物とする場合、制振装置50、70、100を用いることは好ましくない。
【0131】
防犯カメラ210のように、水平でなく垂直でもない部分に固定される構造物が制振対象物であるときは、図21に示す制振装置150を使用することが好ましい。制振装置150は、制振装置100と比較して、連鎖リング部材40の代わりに連鎖リング部材45を有する点で相違している。連鎖リング部材45は、連鎖リング部材40と同様に3つの金属リング41を有するが、3つの金属リング41の配列方向が、制振装置150をつなぎ部305に固定したときの鉛直方向gに一致するように構成されている。そのため、連鎖リング部材45によって、ワイヤーバネ13の伸びきりを防止できる。
【0132】
この制振装置150に防犯カメラ210を固定した場合、ベース体21および防犯カメラ210の重力は鉛直方向gと一致している。鉛直方向gは、ベース体1からベース体21に向かう方向の成分g1と、ベース体1およびベース体21に沿った方向の成分g2とに分解することができる。また、つなぎ部305による外力の成分も成分g1と、成分g2とに分解することができる。そのため、防犯カメラ210に対する振動を制振装置150によって吸収することができる。
【0133】
一方、妻部303に固定される防犯カメラ220については、連鎖リング部材45における3つの金属リング41の配列方向を図21よりも鋭角にした上で、制振装置150を図示しない受け金具を介して妻部303に固定し、その制振装置150に防犯カメラ220を固定すればよい。妻部303は垂直方向に設置されているから制振装置150を妻部303に直に固定すると、3つの金属リング41の配列方向を鉛直方向に一致させることができない。そのため、連鎖リング部材40による間隔規制機能が発揮されない恐れがあり、好ましくない。そこで、受け金具を使用する。受け金具は、下側よりも上側の厚みが厚く形成されている。そのため、制振装置150を受け金具を介して妻部303に固定すると、制振装置150の下側よりも上側が手前に張り出すため、3つの金属リング41の配列方向を鉛直方向に一致させることができる。
【0134】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【0135】
以上の実施の形態では、制振対象物として主に防犯カメラを取り上げ、振動伝達部材として鉄道車両を取り上げているが、本発明は制振対象物と、振動伝達部材が上記以外の場合についても適用することができる。例えば制振対象物がビル内のダクトであり、振動伝達部材がビルの天井である場合も適用することができる。
【0136】
制振装置50では、周側部3と周側部23とが互いに対向するように形成されているため、格納スペース19内へのゴミ等の異物の進入を防止し得るが、周側部3と周側部23とが互いに対向するように形成されていなくてもよい。また、制振装置50は2本のゴムバンド31、32を有しているが、いずれか1本だけでもよい。連鎖リング部材40は、3つの金属リング41を有しているが、金属リング41は2本でもよいし、4本以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明を適用することにより、構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大するとともに、振源が制振対象物よりも下側に配置されない形態で制振対象物が設置される場合について、不定性3次元振動を抑制できるようにすることができる。本発明は、構造物の振動を抑制する制振装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0138】
1,21,51,61,110,120…ベース体、2,22,52,62,111,122…固定部、3,23,53,63,112…周側部、5,25,55,65,113,121…内固定部、10…バネ構造体、13,76,80…ワイヤーバネ、13a…湾曲部、16…索部材、19,130…格納スペース、31,32…ゴムバンド、40,47…連鎖リング部材、41,46…金属リング、64…線状部材、65…単位索部材、75…螺旋構造体、50,70,100,150…制振装置、140…伸縮ユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状部材をより合わせた索部材を湾曲させた湾曲部を有する湾曲索部材と、
振動の伝達源となる振動伝達部材に固定される第1の固定部を備えた第1のベース体と、
制振対象物が固定される第2の固定部を備えた第2のベース体とを有し、
前記第1のベース体と第2のベース体とは、前記第1の固定部よりも前記第2の固定部が鉛直方向の下側に位置するように配置され、
前記第1のベース体は、前記第1の固定部よりも鉛直方向の下側に位置するように配置された第1の内固定部を有し、
前記第2のベース体は、前記第2の固定部よりも鉛直方向の上側に位置するように配置された第2の内固定部を有し、
前記第1の内固定部と前記第2の内固定部とによって挟まれる格納スペースに前記湾曲索部材が納められ、かつ前記湾曲部が起立するようにして前記湾曲索部材が前記第1の内固定部と前記第2の内固定部とに固定されている制振装置。
【請求項2】
前記第1の内固定部と前記第2の内固定部とに係合され、かつ前記第1の内固定部と前記第2の内固定部との間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制する間隔規制部材を更に有する請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
一端部と他端部の双方が前記第2の固定部に固定され、かつ該一端部と他端部の中間に位置する中間部が前記第1の固定部を横断するようにして前記第1のベース体および前記第2のベース体に装着された弾性部材からなる弾性バンドを更に有する請求項1または2記載の制振装置。
【請求項4】
前記弾性バンドを2本有し、そのそれぞれの前記弾性バンドが直交するようにして前記第1のベース体および前記第2のベース体に装着されている請求項3記載の制振装置。
【請求項5】
前記第1の固定部の表面に前記弾性バンドの形状に応じた溝部が形成され、該溝部に前記弾性バンドが納められている請求項3または4記載の制振装置。
【請求項6】
前記第1のベース体および前記第2のベース体は、前記第1の内固定部および前記第2の内固定部を取り囲み、かつ互いに対向するように形成された第1の周側部および第2の周側部をそれぞれ有する請求項1〜5のいずれか一項記載の制振装置。
【請求項7】
前記間隔規制部材は、前記第1の固定部を前記振動部材に固定したときの鉛直方向に沿って伸縮自在に構成されている請求項2〜6のいずれか一項記載の制振装置。
【請求項8】
前記間隔規制部材は、複数の金属製リング部材が連鎖状に接続された連鎖構造を有する請求項2〜7のいずれか一項記載の制振装置。
【請求項9】
前記第1の内固定部は、中央に開口部を有し、かつ前記第1の固定部に対向するように配置され、
前記第1のベース体は、前記第1の内固定部を取り囲み、かつ前記第1の固定部と前記第1の内固定部とをつなぐように形成された第1の周側部を有し、
前記第2の内固定部は、前記第1の内固定部よりも鉛直方向の上側に位置するように配置され、
前記第2のベース体は、前記第1の内固定部の前記開口部に挿通されて前記第2の内固定部と前記第2の固定部とを連結する連結部を有する請求項1記載の制振装置。
【請求項1】
複数の線状部材をより合わせた索部材を湾曲させた湾曲部を有する湾曲索部材と、
振動の伝達源となる振動伝達部材に固定される第1の固定部を備えた第1のベース体と、
制振対象物が固定される第2の固定部を備えた第2のベース体とを有し、
前記第1のベース体と第2のベース体とは、前記第1の固定部よりも前記第2の固定部が鉛直方向の下側に位置するように配置され、
前記第1のベース体は、前記第1の固定部よりも鉛直方向の下側に位置するように配置された第1の内固定部を有し、
前記第2のベース体は、前記第2の固定部よりも鉛直方向の上側に位置するように配置された第2の内固定部を有し、
前記第1の内固定部と前記第2の内固定部とによって挟まれる格納スペースに前記湾曲索部材が納められ、かつ前記湾曲部が起立するようにして前記湾曲索部材が前記第1の内固定部と前記第2の内固定部とに固定されている制振装置。
【請求項2】
前記第1の内固定部と前記第2の内固定部とに係合され、かつ前記第1の内固定部と前記第2の内固定部との間隔を決められた大きさよりも小さい大きさに規制する間隔規制部材を更に有する請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
一端部と他端部の双方が前記第2の固定部に固定され、かつ該一端部と他端部の中間に位置する中間部が前記第1の固定部を横断するようにして前記第1のベース体および前記第2のベース体に装着された弾性部材からなる弾性バンドを更に有する請求項1または2記載の制振装置。
【請求項4】
前記弾性バンドを2本有し、そのそれぞれの前記弾性バンドが直交するようにして前記第1のベース体および前記第2のベース体に装着されている請求項3記載の制振装置。
【請求項5】
前記第1の固定部の表面に前記弾性バンドの形状に応じた溝部が形成され、該溝部に前記弾性バンドが納められている請求項3または4記載の制振装置。
【請求項6】
前記第1のベース体および前記第2のベース体は、前記第1の内固定部および前記第2の内固定部を取り囲み、かつ互いに対向するように形成された第1の周側部および第2の周側部をそれぞれ有する請求項1〜5のいずれか一項記載の制振装置。
【請求項7】
前記間隔規制部材は、前記第1の固定部を前記振動部材に固定したときの鉛直方向に沿って伸縮自在に構成されている請求項2〜6のいずれか一項記載の制振装置。
【請求項8】
前記間隔規制部材は、複数の金属製リング部材が連鎖状に接続された連鎖構造を有する請求項2〜7のいずれか一項記載の制振装置。
【請求項9】
前記第1の内固定部は、中央に開口部を有し、かつ前記第1の固定部に対向するように配置され、
前記第1のベース体は、前記第1の内固定部を取り囲み、かつ前記第1の固定部と前記第1の内固定部とをつなぐように形成された第1の周側部を有し、
前記第2の内固定部は、前記第1の内固定部よりも鉛直方向の上側に位置するように配置され、
前記第2のベース体は、前記第1の内固定部の前記開口部に挿通されて前記第2の内固定部と前記第2の固定部とを連結する連結部を有する請求項1記載の制振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−246998(P2012−246998A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118881(P2011−118881)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(501055075)株式会社田中制震構造研究所 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(501055075)株式会社田中制震構造研究所 (3)
【Fターム(参考)】
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