説明

制震構造

【課題】制震部材が設けられた制震構造において、建築物の設計に対しての自由度を高める。
【解決手段】制震構造10は、間隔をおいて対向するように設けられた第1及び第2面材151,152と、第1面材151と第2面材152との間に配置されるように設けられた軸材11と、第1面材151及び第2面材152のそれぞれと軸材11との間に共通に介設された制震部材17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの小型の建物に適用可能な制震構造として、特許文献1には、制震部材の軸材取付部が軸材の面材に直交する面に取り付けられていると共に、面材取付部が面材の裏面側に釘等の部材固定具で固定された受材に取り付けられたものが開示されている。
【特許文献1】特開2007−308940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示された制震構造では、壁の一方側の面材に制震部材が接合されているだけであるので、制震部材のゴムダンパーが高剛性であると、面材の方が早期に破壊する虞がある。そして、そのため、適度な剛性のゴムダンパーを有する多数の制震部材を多数の壁のそれぞれに設置する必要があり、それによって建築物の設計の自由度が制限されるという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、制震部材が設けられた制震構造において、建築物の設計に対しての自由度を高める。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の制震構造は、
間隔をおいて対向するように設けられた第1及び第2面材と、
上記第1面材と上記第2面材との間に配置されるように設けられた軸材と、
上記第1面材及び上記第2面材のそれぞれと上記軸材との間に共通に介設された制震部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一つの制震部材が第1及び第2面材の両方に共通で設けられているので、制震部材の数が少なくても高い制震性能を発揮し易く、建築物の設計に対しての高い自由度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(実施形態1)
図1〜4は、本発明の実施形態1に係る建物の制震構造10を示す。
【0008】
この制震構造10は、3本の柱11(軸材)並びに梁12及び土台13の一部分からなる「日」の文字を横にしたような枠状の躯体14と、内装下地材等を構成する第1面材151と、外装下地材等を構成する第2面材152と、を有する縦長長方形の壁構造に構成されたものである。なお、この制震構造10は、全ての壁構造に構成されていても、また、一部の壁構造に構成されていてもいずれでもよい。
【0009】
柱11は、左右に間隔をおいて並行に延びるように設けられ、各々が梁12と土台13との間を連結するように立設されている。柱11は、例えば、木製の長さ1000〜7000mm、幅25〜150mm、及び厚さ90〜150mmの角材により構成され、耐震強度等が考慮されて、形状や断面積、材質が適宜選択される。柱11の間隔は例えば300〜2000mmである。
【0010】
梁12及び土台13は、上下に間隔をおいて並行に延びるように設けられている。梁12及び土台13のそれぞれは、例えば、木製の長さ1000〜7000mm、幅90〜150mm、及び厚さ90〜400mmの角材により構成され、耐震強度等が考慮されて、形状や断面積、材質が適宜選択される。梁12と土台13との間隔は例えば1000〜4000mmである。
【0011】
柱11と梁12とは、前者の上端に形成された凸部が後者の下面側に形成された凹部に嵌合して結合している。また、柱11と土台13とは、前者の下端に形成された凸部が後者の上面側に形成された凹部に嵌合して結合している。
【0012】
第1及び第2面材151,152は、各々が矩形平板状に形成されており、前者が躯体14の内側を及び後者が躯体14の外側をそれぞれ覆うように設けられている。第1及び第2面材151,152のそれぞれは、合板材料、OSBなどの木質材料、火山性ガラス質複層材料、石膏ボード、珪酸カルシウム板など、壁を構成したときに耐力要素となる程度の高い剪断剛性を有する材料により、例えば、長さ900〜3000mm、幅900〜1820mm、及び厚さ6〜24mmに形成されている。建物が地震や風圧によって大きな水平力を受けたとき、この面材15の持つ剪断剛性が主要な抵抗要素として作用する。
【0013】
第1面材151と第2面材152との間には、それらによって挟まれると共に、柱11から間隔をおいて上下方向に延びる受材16が両側に設けられている。
【0014】
受材16は、金属材料や木質材料等の剛性を有する材料により、例えば、長さ100〜3500mm、幅40〜160mm、及び厚さ40〜100mmに形成されている。受材16は、第1及び第2面材151,152のそれぞれの表側から打ち付けられた釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の剛性を有する材料で形成された受材固定具21によって第1及び第2面材151,152のそれぞれの裏面側に固定されている。
【0015】
柱11と第1及び第2面材151、152の裏面側に固定された受材16との間には、上下一対の制震部材17が介設されている。
【0016】
図5(a)〜(c)は制震部材17を示す。
【0017】
この制震部材17は、シート状乃至板状のゴムダンパー18とそれを挟むように設けられた軸材取付部19及び面材取付部20とを有する。
【0018】
ゴムダンパー18は、例えば、縦30〜400mm、横30〜100mm、及び厚さ3〜30mmに形成されている(図5では、縦長長方形)。
【0019】
ゴムダンパー18は、減衰性(特に0.1〜10Hzの周波数域)を有する材料で形成されている。具体的には、ゴムダンパー18は、シリコン系粘弾性体、ジエン系粘弾性体、イソプレンゴム(IR)系粘弾性体、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)等をベースとした高減衰性のゴム組成物粘弾性体等により構成されている。ゴムダンパー18の性能としては、5〜30℃の温度範囲において、損失係数(tanδ)が0.4以上で且つ貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であることが好ましい。
【0020】
軸材取付部19は、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板などの金属材料やABS樹脂板、アクリル樹脂板などの樹脂材料、木質材料、火山性ガラス質複層板などの無機質材料等の剛性を有する材料により板状に形成されている(好ましくは厚さ5mm以上)。軸材取付部19には複数の留具孔が形成されている。軸材取付部19は、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などにより、或いは、加硫接着によりゴムダンパー18に接着している。
【0021】
面材取付部20は、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板などの金属材料やABS樹脂板、アクリル樹脂板などの樹脂材料、木質材料、火山性ガラス質複層板などの無機質材料等の剛性を有する材料により、一対の板状の面材取付面部20aとそれらを連結するダンパー取付面部20bとを有する断面コの字状に形成されている。各面材取付面部20aには複数の留具孔が形成されている。ダンパー取付面部20bは、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などにより、或いは、加硫接着によりゴムダンパー18に接着している。
【0022】
制震部材17は、軸材取付部19が柱11の第1及び第2面材151,152に直交する躯体14内側面に当接し、軸材取付部19に形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具が通されて固定され、それによって柱11に取り付けられている。また、制震部材17は、面材取付部20の面材取付面部20aが受材16に形成された欠損部16aにより第1及び第2面材151,152との間に構成された縦長の隙間に嵌め込まれ、面材取付面部20aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具が通されて受材16に固定され、それによって受材16を介して第1及び第2面材151,152に取り付けられている。従って、シート状乃至板状のゴムダンパー18は、その厚さ方向が第1及び第2面材151,152に平行になるように設けられている。
【0023】
第1及び第2面材151,152のそれぞれは、周縁に沿って、また、中央を上下方向に沿って、間隔をおいて第1面材151或いは第2面材152の表面側から釘等の剛性を有する材料で形成された面材固定具22が打ち付けられて柱11並びに梁12及び土台13のそれぞれに固定されている。
【0024】
この制震構造10では、第1及び第2面材151,152に平行な面内で水平力が作用すると、小さい地震で揺れが小さい場合には、面材固定具22での柱11への固定による高い初期剛性により優れた制震性能を得ることができる一方、大きい地震で揺れが大きい場合には、面材固定具22が塑性変形するものの制震部材17によるエネルギー吸収により優れた制震性能を得ることができる。具体的には、図1に矢印で示すように梁12に沿って荷重が作用すると、図1の左上の制震部材17には右斜め上方、左下の制震部材17には左斜め上方、右上の制震部材17には右斜め下方、及び右下の制震部材17には左斜め下方の力がそれぞれ作用し、それぞれ制震部材17のゴムダンパー18によりエネルギー吸収するように構成されている。
【0025】
ところで、特許文献1に開示された制震構造では、片方からのみゴムダンパーに面材が接合されているため、高剛性のゴムダンパーを使用すると接合された面材の方が早期に破壊する傾向にあった。したがって、適度な剛性を有するゴムダンパーを多数個、多数の壁に設置する必要があった。
【0026】
しかしながら、本実施形態1に係る制震構造10によれば、一つの制震部材17が第1及び第2面材151,152の両方に共通で設けられており、壁両側の第1及び第2面材151,152にゴムダンパー18を接合しているため、比較的大きな剛性のゴムダンパー18を使用しても、第1及び第2面材151,152の早期破壊が発生し難いため、少ない数のゴムダンパー18を少数の壁に使用しても性能を発揮し易く、建築物の設計に対しての自由度の高い壁を構成することができる。
【0027】
また、柱11や梁12や土台13と第1及び第2面材151,152との間の変形量は各部位で異なり(端部が大きく、中央部が小さい)、制震部材がばらばらに取り付けられていたのでは、各制震部材に加わる変形量が取付位置によって異なるものとなる。
【0028】
しかしながら、本実施形態1に係る制震構造10によれば、一対の制震部材17が単一の受材16を介して面材15に取り付けられており、一対の制震部材17が一体となって個々の変形量が均等化するので、エネルギー吸収を効率的に行うことができる。
【0029】
なお、本実施形態1では、受材16に上下一対の制震部材17を取り付けた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、図6(a)に示すように、左右の受材16のそれぞれの中央に単一の制震部材17を取り付けると共に、梁12及び土台13のそれぞれに沿って受材16を設け、その中央にも制震部材17を取り付けた構成、或いは、図6(b)に示すように、左右の受材16のそれぞれの中央に単一の制震部材17を取り付けた構成であってもよい。前者の場合、矢印で示すように梁12に沿って荷重が作用すると、左の制震部材17には上方、右の制震部材17には下方、上の制震部材17には右向き、及び下の制震部材17には左向きの力がそれぞれ作用し、それぞれ制震部材17のゴムダンパー18によりエネルギー吸収する。後者の場合、矢印で示すように梁12に沿って荷重が作用すると、左の制震部材17には上方、及び右の制震部材17には下方の力がそれぞれ作用し、それぞれ制震部材17のゴムダンパー18によりエネルギー吸収する。
【0030】
また、上記実施形態1では、断面コの字状に形成された面材取付部20を有する制震部材17を用いたものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、図7に示すように、面材取付部20がプレート状に形成され、受材16に貫通状態に設けられたボルトBによりボルト留めされたものであってもよい。
【0031】
(実施形態2)
図8及び9は、本発明の実施形態2に係る建物の制震構造10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は実施形態1と同一符号で示す。
【0032】
この制震部材17では、第1面材151の裏面側には、上下方向に延びる第1受材161が両側に設けられている。同様に、第2面材152の裏面側には、上下方向に延びる第2受材162が両側に設けられている。第1受材161と第2受材162とは、第1及び第2面材151,152の配設方向に間隔をおいて設けられている。
【0033】
第1及び第2受材161,162のそれぞれは、金属材料や木質材料等の剛性を有する材料により、例えば、長さ1000〜3500mm、幅40〜160mm、及び厚さ40〜80mmに形成されている。第1受材161は、第1面材151の表側から打ち付けられた釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の剛性を有する材料で形成された受材固定具21によって第1面材151の裏面側に固定されている。同様に、第2受材162は、第2面材152の表側から打ち付けられた釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の剛性を有する材料で形成された受材固定具21によって第2面材152の裏面側に固定されている。
【0034】
柱11と第1及び第2面材151,152の裏面側にそれぞれ固定された第1及び第2受材161,162との間には、上下一対の制震部材17が介設されている。
【0035】
図10(a)〜(c)は制震部材17を示す。
【0036】
この制震部材17の面材取付部20は、各々、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板などの金属材料やABS樹脂板、アクリル樹脂板などの樹脂材料、木質材料、火山性ガラス質複層板などの無機質材料等の剛性を有する材料により形成された、縦長矩形の本体プレート20c、一対の断面L字状のL字材20d、及び一対の横長矩形の固定プレート20eで構成されている。なお、この制震部材17のゴムダンパー18は、複数のシート状乃至板状の小片で構成されているが、それぞれの小片の構成は実施形態1のものと同一構成である。また、軸材取付部19の構成は実施形態1の制震部材17のものと同一構成である。
【0037】
本体プレート20cは、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などにより、或いは、加硫接着により、長さ方向に間隔をおいて設けられたゴムダンパー18の複数の小片のそれぞれに接着している。本体プレート20cは、ゴムダンパー18との接着部を挟むように両側に貫通孔が上下2箇所に形成されている。
【0038】
一対のL字材20dは、それぞれの一方の面が本体プレート20cの裏側に重なると共に角部が側辺に沿うように設けられ、断面コの字を構成するように左右に配置されている。一対のL字材20dのそれぞれには、本体プレート20cの貫通孔と位置合わせされると共に、本体プレート20cのものよりも大きい貫通孔が形成されている。一対のL字材20dのそれぞれには、本体プレート20cに垂直な他方の面に複数の留具孔が形成されている。
【0039】
一対の固定プレート20eは、それぞれ本体プレート20cとの間でL字材20dを挟むように設けられ、間隔をおいて上下に配置されている。各固定プレート20eは、プレート本体の両側のそれぞれに連続して本体プレート20c側に向かい、先端が外向きに折れ曲げられた係合部20fが形成されており、この係合部20fがL字材20dの貫通孔を貫通して本体プレートの貫通孔の周縁に係合している。また、固定プレート20eは、その中央にボルトBが通されて本体プレート20cの中央にボルト留めされ、それによって本体プレート20cとの間で一対のL字材20dを狭持して固定している。
【0040】
この制震部材17では、上記構成よって、本体プレート20c、一対のL字材20d、及び一対の固定プレート20eが一体となっているが、一対のL字材20dは、ボルトBが緩められると、それぞれの貫通孔が本体プレート20cのものよりも大きく形成されていることから幅方向に遊びを有して可動となり、そのためそれらの間隔の調節が可能となる一方、ボルトBが締められると、調節された間隔を保持したまま本体プレート20cと固定プレート20eとの間で狭持されて固定されるように構成されている。つまり、この制震部材17では、一対のL字材20dの取付幅の調節が可能に構成されている。
【0041】
制震部材17は、軸材取付部19が柱11の第1及び第2面材151,152に直交する躯体14内側面に当接し、軸材取付部19に形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具が通されて固定され、それによって柱11に取り付けられている。また、制震部材17は、面材取付部20のL字材20dが第1及び第2受材161,162に形成された欠損部16aにより構成された第1及び第2面材151,152との間の縦長の隙間に嵌め込まれ、L字材20dの本体プレート20cに垂直な他方の面に形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具が通されて受材161,162に固定され、それによって受材161,162を介して第1及び第2面材151,152に取り付けられている。従って、シート状乃至板状のゴムダンパー18は、その厚さ方向が第1及び第2面材151,152に平行になるように設けられている。
【0042】
その他の構成、作用及び効果は実施形態1と同一である。
【0043】
(実施形態3)
図11は、本発明の実施形態3に係る建物の制震構造10を示す。なお、実施形態1或いは2と同一名称の部分は実施形態1或いは2と同一符号で示す。
【0044】
この制震構造10では、第1面材151の裏面側には、上下方向に延びる第1受材161が両側に設けられている。同様に、第2面材152の裏面側には、上下方向に延びる第2受材162が両側に設けられている。第1受材161と第2受材162とは、第1及び第2面材151,152の配設方向に間隔をおいて設けられている。
【0045】
第1及び第2受材161,162のそれぞれは、金属材料や木質材料等の剛性を有する材料により、例えば、長さ1000〜3500mm、幅40〜160mm、及び厚さ20〜60mmに形成されている。第1受材161は、第1面材151の表側から打ち付けられた釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の剛性を有する材料で形成された受材固定具21によって第1面材151の裏面側に固定されている。同様に、第2受材162は、第2面材152の表側から打ち付けられた釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の剛性を有する材料で形成された受材固定具21によって第2面材152の裏面側に固定されている。
【0046】
柱11と第1及び第2面材151,152の裏面側にそれぞれ固定された第1及び第2受材161,162との間には、上下一対の制震部材17が介設されている。
【0047】
図12(a)〜(c)は制震部材17を示す
この制震部材17は、第1及び第2ゴムダンパー181,182、軸材取付部19、並びに軸材取付部19との間で第1ゴムダンパー181を挟むように設けられた第1面材取付部201、及び軸材取付部19との間で第2ゴムダンパー182を挟むように設けられた第1面材取付部202を有する。
【0048】
第1及び第2ゴムダンパー181,182は実施形態1の制震部材17のゴムダンパー18と同一構成である。
【0049】
軸材取付部19は、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板などの金属材料やABS樹脂板、アクリル樹脂板などの樹脂材料、木質材料、火山性ガラス質複層板などの無機質材料等の剛性を有する材料により、相互に対向する一対のダンパー取付面部19aとそれらを連結する軸材取付面部19bとを有する長尺の断面コの字状に形成されている。各軸材取付面部19aには複数の留具孔が形成されている。一対のダンパー取付面部19aの一方の外側は、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などにより、或いは、加硫接着により第1ゴムダンパー181に接着しており、他方の外側も、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などにより、或いは、加硫接着により第2ゴムダンパー182に接着している。
【0050】
第1及び第2面材取付部201,202のそれぞれは、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板などの金属材料やABS樹脂板、アクリル樹脂板などの樹脂材料、木質材料、火山性ガラス質複層板などの無機質材料等の剛性を有する材料により、一対の板状の面材取付面部20aとそれらを連結するダンパー取付面部20bとを有する断面コの字状に形成されている。各面材取付面部20aには複数の留具孔が形成されている。ダンパー取付面部20bは、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などにより、或いは、加硫接着により第1及び第2ゴムダンパー181,182に接着している。
【0051】
制震部材17は、軸材取付部19の軸材取付面部19aが柱11の第1及び第2面材151,152に直交する躯体14内側面に当接し、軸材取付面部19aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具が通されて固定され、それによって柱11に取り付けられている。また、制震部材17は、第1面材取付部201が第1受材161に外嵌めされ、面材取付面部20aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具が通されて受材161に固定され、それによって受材161を介して第1面材151に取り付けられ、また、第2面材取付部20が第2受材162に外嵌めされ、面材取付面部20aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具が通されて受材162に固定され、それによって受材162を介して第2面材152に取り付けられている。従って、シート状乃至板状の第1及び第2ゴムダンパー181,182は、その厚さ方向がそれぞれ第1及び第2面材151,152に垂直になるように設けられている。
【0052】
その他の構成は実施形態1と同一である。
【0053】
ところで、特許文献1に開示された制震構造では、ゴムダンパーとして高剛性の高減衰ゴムを用いるとゴムダンパーよりも面材の方が早期に破壊する虞があるため、適度な剛性のゴムダンパーを有する制震部材を設けるという方策を採ることとなる。この場合、多くの壁に設置が必要となり、設計の自由度が低くなってしまうという問題がある。
【0054】
しかしながら、本実施形態3に係る制震構造10によれば、制震部材17が第1面材151と軸材11との間に介設されると共に第2面材152と軸材11との間にも介設され、一つの制震部材17が第1及び第2面材151,152の両方に共通で設けられているので、一つの制震部材17によってゴムダンパー181,182の面積を倍にするなどのサイズの調整等により従来の二倍の制震効果が発現されることから、制震部材17の設置個数が少なくても優れた制震効果を得ることができ、また、比較的少ない壁に制震構造10を設けることでも同等の制震効果を得ることができるため、設計の自由度の高い壁構造を構成することができる。
【0055】
その他の作用及び効果は実施形態1と同一である。
【0056】
(その他の実施形態)
上記実施形態1〜3では、大壁構造を構成するものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、真壁構造を構成するものであってもよい。
【0057】
また、実施形態1〜3では、受材16を介して一対の制震部材17を第1及び第2面材151,152に取り付けた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、各制震部材17を個別に受材16を介して第1及び第2面材151,152に取り付けた構成であっても、各制震部材17を個別に直接第1及び第2面材151,152に取り付けた構成であってもよい。
【0058】
また、実施形態1〜3では、第1及び第2面材151,152が面材固定具22で柱11並びに梁12及び土台13のそれぞれに固定された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、第1及び/又は第2面材151,152が制震部材17のみを介して柱11並びに梁12及び土台13のそれぞれに取り付けられた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は制震構造に関する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態1に係る制震構造の正面図である。
【図2】図1におけるII-II断面図である。
【図3】実施形態1に係る制震構造の要部の横断面図である。
【図4】図3におけるIV-IV断面図である。
【図5】実施形態1の制震部材の(a)平面図、(b)正面図及び(c)側面図である。
【図6】実施形態1に係る制震構造の(a)変形例の正面図、及び(b)別の変形例の正面図である。
【図7】実施形態1に係る制震構造の別の他の変形例の要部の横断面図である。
【図8】実施形態2に係る制震構造の要部の横断面図である。
【図9】図8におけるIX-IX断面図である。
【図10】実施形態2の制震部材の(a)平面図、(b)正面図及び(c)側面図である。
【図11】実施形態3に係る制震構造の要部の横断面図である。
【図12】実施形態3の制震部材の(a)平面図及び(b)正面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 制震構造
11 柱(軸材)
151 第1面材
152 第2面材
17 制震部材
18 ゴムダンパー
181 第1ゴムダンパー
182 第2ゴムダンパー
19 軸材取付部
20 面材取付部
201 第1面材取付部
202 第2面材取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて対向するように設けられた第1及び第2面材と、
上記第1面材と上記第2面材との間に配置されるように設けられた軸材と、
上記第1面材及び上記第2面材のそれぞれと上記軸材との間に共通に介設された制震部材と、
を備えたことを特徴とする制震構造。
【請求項2】
請求項1に記載された制震構造において、
上記制震部材は、上記軸材に取り付けられた軸材取付部と、上記第1及び第2面材の両方に共通に取り付けられた面材取付部と、該軸材取付部と該面材取付部との間に、該第1及び第2面材に対して厚さ方向が平行になるように設けられたシート状乃至板状のゴムダンパーと、を有することを特徴とする制震構造。
【請求項3】
請求項1に記載された制震構造において、
上記制震部材は、上記軸材に取り付けられた軸材取付部と、上記第1面材に取り付けられた第1面材取付部と、上記第2面材に取り付けられた第2面材取付部と、該軸材取付部と該第1面材取付部との間に、該第1面材に対して厚さ方向が垂直になるように設けられたシート状乃至板状の第1ゴムダンパーと、該軸材取付部と該第2面材取付部との間に、該第2面材に対して厚さ方向が垂直になるように設けられたシート状乃至板状の第2ゴムダンパーと、を有することを特徴とする制震構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−263942(P2009−263942A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113225(P2008−113225)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】