説明

券種判別装置

【課題】現在主流となっている紙幣について視覚障害者が券種を容易に判別でき、携帯に便利でコストの低廉な券種判別装置を提供する。
【解決手段】1〜3本の棒線状透かしが並列した券種表示部51,61,71が一方の短辺寄りに配設された最新の三種類の紙幣50,60,70について、発光部30を備えた側の面と受光部31を備えた側の面とが所定間隔で対向して形成してなる紙幣挿入スリット21に、券種表示部51,61,71のある紙幣短辺側を挿入することにより判別手段としてのマイコン10で券種を判別する視覚障害者用の券種判別装置1Aであって、発光部30による光が受光部31に到達する際の棒線状透かしと他の部分との透光率の違いを利用して、マイコン10が3種類の紙幣のうちいずれの券種であるか又はいずれの券種でもないかについて判別し、判別結果を通知手段であるブザー22で使用者に通知するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の種類を判別するための券種判別装置に関し、殊に、視覚障害者が外出先でも容易に券種を判別できるようにする券種判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の流通紙幣は、千円券、五千円券、一万円券の3種類の各サイズが互いに数ミリ程度しか異なっていないことから、視覚障害者がその大きさだけで券種を判別することは困難である。そのため、紙幣角部にリング状の凹凸かならなる券種表示部を設けたり(2004年度変更以前の紙幣)、図8に示す最新の紙幣50,60,70のように表面左右下端側に突出印刷による券種表示部52,53,73を設けたりして、視覚障害者が指先の触覚を用いて券種を判別できるようにしている。
【0003】
しかし、指先の感覚による判別能力は視覚障害者間でバラツキがあり、また種々の理由により指先の感覚が一時的に減退して判別能力が低下することもあるため、紙幣表面の微小な凹凸を感知しながら券種を短時間で正確に判別することが困難になるケースも多い。また、斯かる紙幣表面の凹凸は、使用に伴う表面の摩耗や皺の発生により周囲との判別が一層難しくなりやすい。
【0004】
これに対し、特開平7−175955号公報や特開2002−150351号公報等に記載されているように、紙幣挿入口から紙幣を挿入することにより内部に設けたスキャナ等の読み取り手段で紙幣の画像データ等を読み取って判別手段により紙幣の真贋及び券種を判別し、その判別した券種を音声出力部で出力して視覚障害者に知らせる方式の券種判別装置も提案されている。
【0005】
しかし、このようにスキャナ等の比較的高性能な画像データの読み取り手段と、読み取ったデータを予め記憶した比較用の基準データと比較して券種を判別する判別手段を備えて、紙幣を紙幣挿入口に挿入して送る動作により券種を判別する構成では、全体として体積及び重量が大きくなるため、券種の判別が特に必要となる外出時に視覚障害者が携帯するには不便なものとなる。また、紙幣の画像データを高精度で読み取るための電子部品や比較用のデータを格納した記憶部を有する判別手段は一般的に高価なものであり、装置全体としてコストが嵩むものとなる。
【0006】
一方、特開平6−28545号公報には、紙幣角部のリング状の凹凸からなる券種表示部の配置パターンを検出する複数のセンサ手段及び電子制御装置を備えて紙幣よりも小型の平板状の装置とされ、上述した券種判別装置よりもコンパクトな構成で携帯に便利なものとした券種判別装置が提案されている。この券種判別装置では、紙幣角部に設けられた券種表示部のリング状凹凸部分を透過した光量を光センサで検出し、その配置状況を検知することで3種類の券種を判別する方式であり、比較的簡易な構成としてコンパクト化と低コスト化を達成している。
【0007】
しかしながら、この券種判別装置はリング状の凹凸の配置パターンを検出することで券種を判別するものであるところ、リング状の凹凸による券種表示部が廃止された図8に示す最新の紙幣では券種を判別することができない。また、この判別方式では、光センサの配置やセンサ感度の設定を多少変更したとしても、最新の紙幣に採用されている突出印刷による券種表示部52,53,73や、すき入れバーパターンによる券種表示部51,61,71で券種を判別することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−175955号公報
【特許文献2】特開2002−150351号公報
【特許文献3】特開平6−28545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、現在主流となっている紙幣について視覚障害者が券種を容易に判別でき、携帯に便利でコストの低廉な券種判別装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、1〜3本の棒線状透かしが並列したすき入れバーパターンによる券種表示部が一方の短辺寄りに配設された千円券、五千円券、一万円券の三種類の紙幣について、発光部を備えた側の面と受光部を備えた側の面とが所定間隔で対向して形成してなる紙幣挿入スリットに、券種表示部のある紙幣の短辺側を挿入することにより判別手段で紙幣の券種を判別する視覚障害者用の券種判別装置であって、発光部による光が券種表示部を透過し受光部に到達する際の棒線状透かしと他の部分との透光率の違いを利用して、判別手段が前記3種類の紙幣のうちいずれの券種であるか又はいずれの券種でもないかについて判別し、判別結果を所定の通知手段で使用者に通知する、ことを特徴とする券種判別装置とした。
【0011】
即ち、現在の紙幣に設けられたすき入れバーパターンの棒線状透かしは他の部分と透光率が違うことから、この券種表示部を透過させた光量をスキャナよりも小さくて簡易な光センサ等による受光部で検出することにより、所定範囲における光量の分布状況等の検出データを基に比較的簡易なマイコン等の判別手段で棒線状透かしの有無や本数・配置を検知することができるため、安価且つコンパクトな構成にて券種を容易に判別することが可能となる。
【0012】
この場合、紙幣の挿入時に紙幣長辺の所定位置に当接して紙幣の縦方向位置を位置決めさせる縦ガイド部及び紙幣短辺の所定位置に当接して紙幣の横方向位置を位置決めさせる横ガイド部からなる位置決め手段が紙幣挿入スリットに付設されており、この位置決め手段を、券種表示部の発光部・受光部に対する位置関係が三種類の紙幣に共通して判別可能な位置に紙幣を位置決めさせる配置としたものが好ましい。
【0013】
即ち、券種表示部には紙幣の印刷模様が載っている部分があるために、検出位置によっては透かし部分であっても透過する光量が少なくなる部分もあり、且つ、その印刷模様は券種により異なるために、3種類の券種に共通して正確な判定を行うことが困難となりやすい。そこで、3種類の券種に共通して券種表示部の情報を確実に検出して判定できる縦・横位置を実験等により求めておき、その位置に紙幣の挿入位置を確実にガイドさせるように位置決め手段を紙幣挿入スリット内に配置することで、券種の判別を容易且つ確実に行えるものとなる。
【0014】
また、上述した券種判別装置において、その受光部は、挿入された紙幣の棒線状透かしの長手方向に対し直角方向に所定範囲で直線的に連設された複数の光センサからなり、隣接する光センサによる検出電圧値の差の状況を、判別手段が予め記憶しておいた基準データと比較することにより券種を判別することを特徴としたものとすれば、高度なデータ処理能力を備えた判別手段を要することなく比較的簡易なマイコン等でも判別処理を充分に行えるものとなる。
【0015】
この場合、その判別手段は、すき入れバーパターンが紙幣の長手方向にずれて配置されていることを原因として判別不能またはいずれの券種でもないと判別した場合に、連設した光センサ中の位置と検出した電圧値の対応関係を紙幣のずれ幅に応じた所定数だけ全体的にシフトさせて再度判別を行うことを特徴としたものとすれば、配置位置が必ずしも正確ではなくずれることもあるすき入れバーパターンの読み取りミスや判別不能によるトラブルを回避しやすいものとなる。
【0016】
さらに、上述した券種判別装置において、その判別手段は検出電圧値のうちいずれかが所定のしきい値を超えていない場合には、判別不能またはいずれの券種でもないと判別することを特徴としたものとすれば、印刷模様部分とそれ以外の部分の透光率の差により誤判別を起こす心配を解消できるものとなる。
【0017】
さらにまた、上述した券種判別装置において、その紙幣挿入スリット内の所定位置に、券種の判別が可能な正しい位置に紙幣が挿入されることでONとなるスイッチ手段または券種の判別が可能な正しい位置に紙幣が挿入されることで検出信号を出力するセンサ手段が設けられており、そのスイッチ手段がONまたはセンサ手段が検出信号を出力することにより、主電源がONまたは判別処理が開始となることを特徴としたものとすれば、極めて簡易な操作手順により短時間で紙幣を判別できるものとなる。
【0018】
この場合、突出・没入動作を行う押圧体の先端側を紙幣挿入スリット側に露出して配置された紙幣固定手段が、スイッチ手段がONまたはセンサ手段が検出信号を出力することに連動して、押圧体の先端側を突出させて挿入された紙幣を対向側の面に押圧することにより紙幣挿入スリット内における挿入位置を固定し、判別の完了により押圧体の先端側を没入して固定を解除するものとすれば、検出時の紙幣のズレを回避しながら正確な判別を行いやすいものとなる。
【0019】
加えて、上述した券種判別装置において、紙幣挿入スリットの入口側には開口端に近くなるに従って間隔を幅広にする対の傾斜面からなる挿入ガイド部が設けられており、紙幣挿入スリットへの紙幣の挿入を案内することを特徴としたものとすれば、視覚障害者による紙幣挿入スリットへの紙幣の挿入作業を一層容易化することができる。
【0020】
また加えて、上述した券種判別装置において、その通知手段は電子音発生部品を有して判別した券種に応じて異なるパターンの電子音を発することを特徴としたものとすれば、判別した券種を視覚障害者が確実かつ容易に認識できるものとなり、さらに加えて、上述した券種判別装置は所定の厚さを有した略平板状とされ、平面視面積が判別対象の紙幣の面積よりも小さく携帯可能なサイズとされたものとすれば、視覚障害者が手軽に携行して外出先で使用しやすいものとなる。
【発明の効果】
【0021】
棒線状透かしの透光率の違いから券種を判別するものとした本発明によると、現在主流となっている紙幣の券種を視覚障害者が簡易な手順で容易に判別することができ、また本発明による券種判別装置は携帯に便利なコンパクトなものとして実施できるとともに製造コストも低廉に抑えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における実施の形態である券種判別装置の斜視図。
【図2】図1の券種判別装置の右側面図。
【図3】図1の券種判別装置の平面図(一部断面図)。
【図4】図1の券種判別装置の機能ブロック図。
【図5】図2の受光部の拡大部分図。
【図6】図1の券種判別装置の応用例を示す平面図(一部断面図)。
【図7】図6の券種判別装置の側面図。
【図8】現在主として流通している紙幣の券種表示部の配置を説明するための正面図であって、(A)は一万円券、(B)は五千円券、(C)は千円券。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明における実施の形態としての券種判別装置1Aの斜視図を示しているが、この券種判別装置1Aは、略平板状で平面視面積が判別対象である紙幣の面積よりも小さく抑えられており、装置全体としてシガレットケース状の本体ケーシング2に納められ、携帯に適したサイズ及び重量とした点を特徴としている視覚障害者用の券種判別装置である。
【0025】
この券種判別装置1Aは、その略平板状の本体ケーシング2の一方の短辺側の側面(右側面)から長辺側の側面(背面)に亘って開口し紙幣を挿入して券種表示部の情報を検出するための紙幣挿入スリット21が設けられている。また、その本体ケーシング2の上面には電子音発生部品であるブザー22を内側に備えた開口窓22bが設けてあり、さらに、紙幣挿入スリット21の開口部のない長辺側の側面(正面)には、判別処理を開始させるための手動式の判別開始スイッチ23が先端側を突出して配置されている。
【0026】
図2は、図1に示した券種判別装置1Aの右側面図を示しており、前述の紙幣挿入スリット21は、内部に発光部30を備えた下向きの面と内部に受光部31を備えた上向きの面とが、挿入する紙幣の厚さよりもやや大きな隙間を形成するように対向してなるものであり、この紙幣の厚さよりもやや大きな隙間の紙幣挟み部21a端縁側から続き、紙幣を挿入する開口端に近くなるに従い間隔を拡大させる傾斜面21b,21bで挿入ガイド部を形成しており、視覚障害者が紙幣の挿入を容易に行えるようになっている。
【0027】
そして、本発明による券種判別装置1Aは、図8に示した現在主流となっている紙幣の券種を判別するためのものであるが、すき入れバーパターンからなる券種表示部51,61,71の棒線状透かしと他の部分との透光率の違いを利用して券種を判別する点を特徴としたものであり、判別結果をブザー22の電子音により視覚障害者に認識させる構成となっている。
【0028】
図3は、図1の券種判別装置1Aの平面図であって、その本体ケーシング2の一部を紙幣挿入スリット21の高さ位置で切り欠いた状態を示している。紙幣挿入スリット21の上向きの面には、一点鎖線で示す紙幣50を挿入したときに、その券種表示部51が受光部31に一致するようになっているが、これは、挿入した紙幣50の下側の長辺が当接して縦方向位置を位置決めさせる縦ガイド部である当接面21dと、紙幣50の左側の短辺が当接して横方向位置を位置決めさせる横ガイド部となる当接面21cが、3種類の紙幣50,60,70の紙幣に共通して券種表示部51,61,71を発光部30・受光部31との位置関係で判別可能な位置に位置決めするように配置されたことによるものである。
【0029】
即ち、図8に示した現在主流となっている紙幣50,60,70の券種表示部51,61,71には紙幣の模様印刷が載っている部分があるため、棒線状透かしにおける位置によっては透光率が他の部分と変わらなくなることもあるため、3種類の紙幣に共通して確実に券種を判別できる位置はある程度限定されており、さらに紙幣の裏と表に共通して判別できる位置の範囲はさらに限定されている。そこで、実験により券種表示部51,61,71と発光部30・受光部31の位置関係においてその条件を満たす紙幣の位置(下側長辺と左短辺の位置)を求め、この位置にガイドする当接面21c、21dの配置としたものである。
【0030】
この券種判別装置1Aは、電源手段としてバッテリ25を備えており、主電源用のメインスイッチ27を入れてから紙幣を紙幣挿入スリット21内の両当接面21c、21dに当接するまで挿入し、判別開始スイッチ23を押すことにより判別処理を開始するようになっている。尚、発光部30と受光部31とは所定の距離を有して配置されているが、その間には透明板32,32が紙幣挿入スリット21を形成する上下面と面一になるように配置されており、スムースな紙幣の挿入が行えるようになっている。
【0031】
次に、図4の券種判別装置1Aにおける機能ブロック図を用いながらその動作手順を説明する。先ず、メインスイッチ27をONにすることで、バッテリ25から電力の供給が行われるようになり、紙幣を正しい位置に挿入した後に判別開始スイッチ23を押すことにより、発光部30が発光して券種表示部を透過した光が受光部31で受光される。
【0032】
そして、受光部31が受光することによる電圧データが判別手段であるマイコン10に入力されると、3種類の券種毎に記憶してある基準データと比較していずれかに近似するか、或いは基準データ中の所定の値を超えているか等の条件により券種を判別して(いずれの条件にも当てはまらない場合は3種類のいずれの券種でもない)、判別結果をブザー22による券種別に異なるパターンの電子音で通知する。例えば、いずれの券種でもない場合0回、千円券で1回、五千円券で2回、一万円券で3回、ブザー音を発するようにすれば分かりやすい。尚、以上の判別に加え、検出電圧値のいずれかが予め定めたしきい値を超えていなければ判定不能またはいずれの券種でもないと判別するようにすれば、一層判別ミスの少ない信頼性の高いものとなる。
【0033】
図5は、図3に示した一例としての受光部31を詳細に示した拡大部分図であり、一例として券種表示部51の3本の棒線状透かし51a,51b,51cが並列した一万円券(一点鎖線で示す)を挿入した場合を示しており、受光部31はその棒線状透かし51a,51b,51cの長手方向に対し、直角方向にこれらの総てに亘る幅で複数の光センサ31a,31b,31c,31d,31e,31f,31gを直線的に連設してなるものとしている。
【0034】
このような構成としたことで、棒線状透かし51a,51b,51cの部分は他の部分よりも透光率が高いためこの部分に一致する光センサは高い電圧値を出力することになり、これらの間隔部分及び左右側は透光率が低いためこの部分に一致する光センサは低い電圧値を出力することになり、例えば隣接する光センサが出力した電圧値の差が予め記憶した基準値よりも高い場合には棒線状透かしの存在が検知できるものとなる。
【0035】
尚、紙幣における好き入れバーパターンの位置は必ずしも正確ではなく、その長手方向に僅かにずれて配置される場合もあり、棒線状透かしと光センサの対応位置が1個分以上ずれることがある。そこで、このずれにより判別不能またはいずれの券種でもないと判別した場合に、連設した光センサ中の位置と検出した電圧値の対応関係を紙幣のずれ幅に応じた所定数(例えばセンサ1個分)だけ全体的にシフトさせて判別することにより、さらに読み取りミス・読み取り不能の少ないものとなる。
【0036】
また、発光部30の詳細は省略したが、これも受光部31と同様に複数の微小なLEDライトを棒線状透かし51a,51b,51cの長手方向に対し直交するように直線的に所定幅で連設して受光部31に対向するように配置すれば、少ない消費電力でも確実な判別が行いやすいものとなる。
【0037】
このように、本実施の形態の券種判別装置1Aでは、紙幣を挿入して停止した位置ですき入れバーパターンを読み取る方式を採用したことにより、極めて簡易な構成で確実な判別が行えるものとなり、また、簡易な構成により装置が低コストに抑えられることに加え、装置のコンパクト化も容易であるために携帯に便利なサイズにすることができる。さらに、目視を必要としない簡易な操作により短時間で確実に紙幣の券種を判別できるため、視覚障害者が外出先で使用するものとして極めて好適なものである。
【0038】
図6は、図1に示した券種判別装置1Aの応用例としての券種判別装置1Bを示している。この券種判別装置1Bも、基本的な構成は券種判別装置1Aと同様であるが、メインスイッチ27の代わりに検出用スリット21内に配設したスイッチ手段としてのマイクロスイッチ24a,24bを備えており、紙幣が正しい位置に挿入された場合にのみ、マイクロスイッチ24a,24bの両方がONとなって主電源が入る点を特徴としている。
【0039】
即ち、マイクロスイッチ24aは当接面21cに配設され、マイクロスイッチ24bは当接面21dに配設されており、挿入した紙幣が両当接面21c,21dに当接した状態で各々ONとなるように配置してあり、紙幣が正しい位置に挿入されていないと判別開始スイッチ23を押しても判別処理を開始できないようになっている。
【0040】
また、このように判別作業を行うための一連の動作に連動して主電源が入るようにしたことで、主電源を入れる手間が省けるとともに無駄な電力消費を抑えてバッテリ25の寿命を保ちやすいというメリットもある。尚、これとは逆に、判別開始スイッチ23をメインスイッチとし、マイクロスイッチ24a,24bを判別開始スイッチとしても前記同様に操作が容易なものとなる。
【0041】
これに加え、この券種判別装置1Bには紙幣固定手段としての電動式のアクチュエータ26が設けられており、紙幣が正しい位置に挿入された状態を固定しながら判別を行えるようにした点を特徴としている。即ち、前述のマイクロスイッチ24a,24bの両方がONとなることに連動して、アクチュエータ26から突設され紙幣挿入スリット21側に先端側を露出した円柱状の押圧体26aが突出動作を行い、挿入した紙幣を対向側の面に押圧して紙幣挿入スリット21内での紙幣挿入位置を固定し、判別処理の完了により押圧体26aが先端側を没入して固定を解除するようになっており、券種表示部の情報検出の際にズレが生じることを回避できるようになっている。
【0042】
尚、上述したマイクロスイッチ24a,24bをメインスイッチとしてではなく判別開始スイッチ23を押した時点でこれらがON状態になっている場合にのみ、判別を開始させるものとしてもよい。また、マイクロスイッチ24a,24bの代わりに、紙幣挿入スリット21のうち当接面21c,21cで挟まれた角部に発光部と受光部からなるセンサ手段を設け、紙幣の角部が発光部と受光部の間に入って受光部による受光量が減ることにより検出信号を出力するようにして、紙幣が正しい位置に挿入されたことを判定するようにしてもよい。
【0043】
以上、述べたように、現在主流となっている紙幣について、本発明により視覚障害者が券種を容易に判別できるようになり、また本発明による券種判別装置は携帯に便利でコストの低廉なものとなった。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B 券種判別装置、10 マイコン、21 紙幣挿入スリット、21a 紙幣挟み部、21b 傾斜面、21c,21d 当接面、22 ブザー、23 判別開始スイッチ、24a,24b マイクロスイッチ、26 アクチュエータ、26a 押圧体、27 メインスイッチ、30 発光部、31 受光部、 50,60,70 紙幣、51,52,53,61,71,73 券種表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜3本の棒線状透かしが並列したすき入れバーパターンによる券種表示部が一方の短辺寄りに配設された千円券、五千円券、一万円券の三種類の紙幣について、発光部を備えた側の面と受光部を備えた側の面とが所定間隔で対向して形成してなる紙幣挿入スリットに、前記券種表示部のある紙幣の短辺側を挿入することにより判別手段で前記紙幣の券種を判別する視覚障害者用の券種判別装置であって、前記発光部による光が前記券種表示部を透過し前記受光部に到達する際の前記棒線状透かしと他の部分との透光率の違いを利用して、前記判別手段が前記3種類の紙幣のうちいずれの券種であるか又はいずれの券種でもないかについて判別し、判別結果を所定の通知手段により使用者に通知する、ことを特徴とした券種判別装置。
【請求項2】
前記紙幣の挿入時に紙幣長辺の所定位置に当接して前記紙幣の縦方向位置を位置決めさせる縦ガイド部及び紙幣短辺の所定位置に当接して前記紙幣の横方向位置を位置決めさせる横ガイド部からなる位置決め手段が前記紙幣挿入スリットに付設されており、該位置決め手段は、前記券種表示部の前記発光部・受光部に対する位置関係が前記三種類の紙幣に共通して券種を判別可能な位置に位置決めさせる配置となっている、ことを特徴とする請求項1に記載した券種判別装置。
【請求項3】
前記受光部は、挿入された前記紙幣の棒線状透かしの長手方向に対し直角方向に所定範囲で直線的に連設された複数の光センサからなり、隣接する前記光センサによる検出電圧値の差の状況を、前記判別手段が予め記憶しておいた基準データと比較することにより前記券種を判別する、ことを特徴とする請求項1または2に記載した券種判別装置。
【請求項4】
前記判別手段は、前記すき入れバーパターンが前記紙幣の長手方向にずれて配置されていることを原因として判別不能またはいずれの券種でもないと判別した場合に、前記連設した光センサ中の位置と前記検出電圧値の対応関係を前記紙幣のずれ幅に応じた所定数だけ全体的にシフトさせて再度判別を開始する、ことを特徴とする請求項4に記載した券種判別装置。
【請求項5】
前記判別手段は、前記検出電圧値のうちいずれかが所定のしきい値を超えていない場合には、判別不能またはいずれの券種でもないと判別する、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した券種判別装置。
【請求項6】
前記紙幣挿入スリット内の所定位置に、券種の判別が可能な正しい位置に前記紙幣が挿入されることでONとなるスイッチ手段または前記正しい位置に前記紙幣が挿入されることで検出信号を出力するセンサ手段が設けられており、前記スイッチ手段がONまたは前記センサ手段が検出信号を出力することにより、主電源がONまたは判別処理が開始となる、ことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載した券種判別装置。
【請求項7】
突出・没入動作を行う押圧体の先端側を前記紙幣挿入スリット側に露出して配置されてなる紙幣固定手段が、前記スイッチ手段がONまたは前記センサ手段が検出信号を出力することに連動して、前記押圧体の先端側を突出させて挿入された前記紙幣を対向側の面に押圧することにより紙幣挿入スリット内における挿入位置を固定し、判別の完了により前記押圧体の先端側を没入して固定を解除する、ことを特徴とする請求項6に記載した券種判別装置。
【請求項8】
前記紙幣挿入スリットの入口側には、開口端に近くなるに従って間隔を幅広にする対の傾斜面からなる挿入ガイド部が設けられており、前記紙幣挿入スリットへの前記紙幣の挿入を案内する、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7に記載した券種判別装置。
【請求項9】
前記通知手段は、電子音発生部品を有して判別した前記券種に応じて異なるパターンの電子音を発する、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8に記載した券種判別装置。
【請求項10】
所定の厚さを有した略平板状とされ平面視面積が判別対象の紙幣の面積よりも小さく携帯可能なサイズとされている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9に記載した券種判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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