説明

削孔装置

【課題】 法面に順次削孔を施す削孔機を、法面上で容易に、速やかに安定して移動、設置させることができると共に、作業や操作が容易で、少ない作業員で作業ができる削孔装置の提供を課題とする。
【解決手段】 削孔機10を法面S上で順次移動させて設置して削孔を施す削孔装置で、法面上部に離間して一対の支柱21、22を設けると共に下部にも一対の支柱23、24を離間して若しくは1本の支柱を設け、支柱には滑車31〜34を取り付け、支柱の数と同数の巻取器41〜44を設備し、各巻取器から繰り出されるワイヤー51〜54を各支柱に取り付けた滑車を介して削孔機の上部のワイヤー取付部16まで延長して配線し、各巻取器によりワイヤーを繰り出し或いは巻き取ることで、ワイヤーの長さを調節して削孔機を上下左右方向に移動させると共に法面に対して立設状態に設置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面に削孔を施す削孔機を、法面上で順次移動させて設置していく削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の岩盤等の法面に孔を開ける削孔装置として、本願出願人は特開2000−136691号公報に記載の削岩装置を提供した。この削岩装置では、スライドタワー1の上部ユニット2に連結したワイヤーを擁壁の上部と下部に設置した各巻取り機24、25、26、27で直接に巻取り或いは繰り出すことによって、削岩装置の移動を補助し、また設置を補助して、小数人数の作業員により比較的容易に削岩装置を順次移動させながら設置し、岩盤に孔開け作業をして行くことができた。
【特許文献1】特開2000−136691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが上記特開2000−136691号公報に記載の削岩装置は、スライドタワー1からの各ワイヤーを各巻取り機24〜27で直接連結して巻取り或いは繰り出すようにしていたため、巻取り機が容易に動かないように重量の重い巻取り機を必要とする問題があった。また巻取り機でワイヤーを巻取り或いは繰り出すのに伴って、ワイヤーの位置が少しずつずれることから、削岩装置の設置の際の立設姿勢が安定しない問題があった。
【0004】
そこで本発明は上記従来技術の問題を解決し、法面に順次削孔を施す削孔機を、法面上で容易に、速やかに安定して移動、設置させることができると共に、作業や操作が容易で、少ない作業員で作業ができる削孔装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため本発明の削孔装置は、削孔機を法面上で順次移動させて設置し、法面に削孔を施す削孔装置であって、削孔機が移動設置されるべき法面の上部に離間して一対の支柱を設けると共に、法面の下部にも一対の支柱を離間して若しくは1本の支柱を設け、支柱には滑車を取り付け、また支柱の数と同数の巻取器を設備し、各巻取器から繰り出されるワイヤーをそれぞれ前記支柱に取り付けた滑車を介して削孔機の上部のワイヤー取付部まで延長して配線し、各巻取器によりワイヤーを繰り出し或いは巻き取ることで、ワイヤーの長さを調節して削孔機を上下左右の方向に移動させると共に法面に対して立設状態に設置するようにしたことを第1の特徴としている。
また本発明の削孔装置は、上記第1の特徴に加えて、各支柱の滑車を介してワイヤーを繰り出し或いは巻き取る各巻取器を集合させて配置し、操作することを第2の特徴としている。
また本発明の削孔装置は、上記第1又は第2の特徴に加えて、支柱は自然木の中から選択して用い、適当な自然木が無い場合は人工の支柱を立設して用いることを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の削孔装置によれば、削孔機の上部位置からの4本若しくは3本のワイヤーは、その2本がワイヤー取付部からそれぞれ法面の上部に離間して設けられた一対の支柱に取り付けられた滑車を経て各巻取器に配線される。残る2本若しくは1本のワイヤーは、法面の下部に離間して設けられた一対の支柱若しくは1本の支柱に取り付けられた滑車を経て各巻取器に配線される。4本若しくは3本のワイヤーの繰り出し及び巻き取りを巻取器で調節することで、削孔機を法面上で上下左右方向へ移動させることができ、作業者が削孔機を法面上で移動させる際の運搬重量を軽減させることができる。また全ワイヤーの緊張状態を調節することで、法面に対する削孔機の立設姿勢を制御しながら保持することができる。従って作業者が削孔機により法面の削孔作業を行う際の作業労力の軽減が図れる。
特に本発明では、削孔機からのワイヤーを巻取器に直接配線するのではなく、支柱に取り付けられた滑車を介して巻取器に配線することにより、各ワイヤーの方向が常に一定方向(支柱の滑車の位置)に安定するので、削孔機の位置、姿勢がワイヤーの巻き取り或いは繰り出しに伴ってずれることがない。また巻取器は滑車を経由して削孔機からの引張り力を受けるので、削孔機とワイヤーが直接接続されている場合に比べて巻取器の受ける力が軽減され、よって従来のように巻取器自体が動かないように重量を増したり或いは不動の基台に固定する必要がない。
また従来は巻取器と削孔機とがワイヤーで直接に接続されていたので、巻取器を何処に設置するかは削孔機との関係において重要であり、各巻取器は必ず四方に分散した状態で設置する必要があったが、本発明では巻取器は支柱の滑車を介して削孔機と接続される構成になっているので、巻取器自体の設置位置の自由度が大きく、複数の巻取器を1箇所に集めて、取り扱いを容易にすることが可能となった。
【0007】
請求項2に記載の削孔装置によれば、上記請求項1の構成による効果に加えて、ワイヤーを繰り出し或いは巻き取る巻取器を集合させて配置することで、各巻取器を操作する際に、巻取器毎に作業員がついて繰り出し作業や巻き取り作業をする必要がなくなり、1人の作業員がその場で自由に複数の巻取器を操作して、所望の繰り出し或いは巻き取り制御を行うことができる。よって作業が速く、確実で且つ省力、省人である。
請求項3に記載の削孔装置によれば、上記請求項1又は2に記載の構成による効果に加えて、支柱は法面の上部や下部に生えている自然木を利用することができる。これによって作業者は適当な自然木が無い場所だけに人工の支柱を立設すればよくなり、省エネ、省作業を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の図面を参照して、本発明の削孔装置の実施形態を説明する。
図1は削孔装置の全体を説明する正面図、図2は削孔装置の全体を説明する斜視図、図3は削孔機の全体を示す正面図、図4は他の実施形態を説明する削孔装置の全体図である。
【0009】
図1〜3を参照して、本発明の実施形態に係る削孔装置は、削孔機10と、支柱21、22、23、24と、滑車31、32、33、34と、巻取器41、42、43、44と、ワイヤー51、52、53、54とからなる。
【0010】
前記削孔機10は、ガイドタワー部11と、該ガイドタワー部11をその長手方向にスライドすることができるスライド台12と、該スライド台12に取り付けられた削孔機本体13と、該削孔機本体13から垂下して取り付けられた削孔ロッド14及び先端の削孔ビット15を有する。また削孔機10の上端部(ガイドタワー部11の上端部)にはワイヤー取付部16が設けられている。
前記ガイドタワー部11は一対の平行なガイド柱11a、11aが相互に連結されてなり、その先端には接地バー11bが設けられている。11c、11dはそれぞれ持ち手であり、作業員が削孔機10を移動させたりするときに持ったりする部分である。
【0011】
前記スライド台12は、削孔機本体13を搭載した状態でガイドタワー部11を長手方向に移動することができる台であり、チェーン12aに取り付けられて、そのスライド位置が制御される。
前記削孔機本体13には、油圧モータ13aが設けられ、該油圧モータ13aにより前記スライド台12が前記チェーン12aと共に或いはチェーン12aと係合しつつ、移動ができるようになされている。このスライド台12の移動に伴って前記削孔機本体13がガイドタワー部11上を移動することが可能とされている。
前記削孔機本体13には外部からの圧搾空気が導入されることで、前記削孔ロッド14が回転されると共に、削孔方向に振動がなされる。
【0012】
前記ワイヤー取付部16は水平な平板からなり、本実施形態ではその平板の四隅にワイヤー取付穴16aを設けて、4本のワイヤー51〜54を取り付けられるようにしている。
前記支柱21〜24は、本実施形態では4本とし、削孔機10が移動・設置される法面Sの上部に離間して一対の支柱21、22と、法面Sの下部に離間して一対の支柱23、24を設備している。これらの各支柱21〜34は、本実施形態では自然木の中から選んでいる。なお法面Sが山、丘陵、森林等の自然木の生えた所にあっては、支柱はそれらの自然木のから選ぶことができる。また立木の少ない所では、人工の支柱を立設して設備する。
削孔機10は前記4本の支柱21〜24で囲まれた領域を容易に移動され、設置されることになる。
【0013】
前記各支柱21〜24には、それぞれ滑車31〜34が設備される。この滑車31〜34は通常は定滑車を用いる。この滑車31〜34を介して、前記削孔機10のワイヤー取付部16からのワイヤー51〜54が各巻取器41〜44に配線されている。
各巻取器41〜44は、各支柱21〜24毎に設備されている。巻取器41〜44としては、ウインチ、チルフォール、その他、手動或いは電動にてワイヤーを繰り出し或いは巻き取ることができる巻取器であればよい。
本発明では、削孔機10からの各ワイヤー51〜54が各支柱21〜24の滑車31〜34を介して巻取器41〜44に配線されることで、削孔機10に対するワイヤーの張設方向が巻取器41〜44の位置とは関係なく、一定状態に安定される。従って各巻取器41〜44の配置の自由度は制限されず、よって各巻取器41〜44を相互に近くに集めて配置することが可能となる。図1、2に示す実施形態では、法面Sの上部の支柱21、22に対応する2つの巻取器41、42が法面S上部で一緒に集められて配置され、また法面Sの下部の支柱23、24に対応する巻取器43、44が法面S下部で一緒に集められて配置されている。複数の巻取器41〜44を集めて配置することで、作業員によるワイヤー51〜54の操作が容易で簡単となり、小人数の作業員によっても省エネルギーで作業を行うことができる。
また巻取器41〜44には削孔機10からのワイヤー51〜54が直接に配線されることなく、支柱21〜24の滑車31〜34を経て配線されるので、巻取器41〜44自身は決められた一定の不動の位置にある必要はなく、従って重量を重くしたり或いは不動状態の基台に固定させる必要もない。
また削孔機10からのワイヤー51〜54が巻取器41〜44に直接配線されている場合には、その巻取器41〜44でのワイヤーの繰り出し或いは巻き取りに伴って、そのワイヤーの位置が少しずつシフトしてずれる。しかし本発明の場合は、支柱21〜24の滑車31〜34を介してワイヤー51〜54が張設されるので、巻取器41〜44の繰り出し動作や巻き取り動作によっては削孔機10から張設されるワイヤー51〜54の方向がずれることがない。
【0014】
削孔機10の移動・設置を補助する前記ワイヤー51〜54は、本実施形態では4本用いられ、各ワイヤー51〜54はそれぞれ巻取器41〜44から繰り出し及び巻き取りが自在とされると共に、支柱21〜24の滑車31〜34を経て、その先端が削孔機20の上端部のワイヤー取付部16にそれぞれ取り付けられている。
【0015】
なお、削孔機10から法面S上部の一対の支柱21、22に向けて張設される一対のワイヤー51、52は、削孔機10に対して仰角を持って張設されるように支柱21、22及び滑車31、32を設備することで、削孔機10を移動させる際に削孔機10を法面S上に適当に浮かせて移動させることが容易となり、好ましい。
【0016】
法面S上の所定位置での削孔機10の設置は、2名等の作業者が削孔機10を起こした状態に保持し、法面S上部からの一対のワイヤー51、52を徐々に繰り出しながら、法面S下部からの一対のワイヤー53、54を微調整して、削孔機10を法面Sに起立させる。更に前記上部の一対のワイヤー51、52の張り具合と下部の一対のワイヤー53、54の張り具合を微調整して、削孔機10を法面Sに垂直近くまで起立させる。そして削孔機10を削孔位置にセットし、各巻取器41〜44を微調整しながら角度計を用いて設定角度にセットする。
セットが完了したところで、削孔機10による所定深さの削孔を開始する。削孔が終了すると、次の削孔位置へ削孔機10を移動させる。
削孔機10の移動は、先ず、作業員が法面S上部の一対のワイヤー51、52を多少緩め、また法面Sの下部の一対のワイヤー53、54を多少緩める。そして2名等の作業員で、削孔機10を若干持ち上げた状態で、法面Sを所定の方向へ上下左右に移動させ、それに合わせて各ワイヤー51〜54の張り具合を調整してゆき、所定の削孔位置まで移動させる。そして各巻取器41〜44を微調整しながら角度計を用いて設定角度にセットする。セットが完了したところで、削孔機10による所定深さの削孔を開始する。削孔が終了すると、次の削孔位置へ削孔機10を移動させる。
【0017】
図4は、本発明の他の実施形態を説明する削孔装置の全体図である。この実施形態では、各巻取器41〜44を一箇所に集合して配置して、作業員による作業を一箇所で容易に行えるようにしている。既述した実施形態の場合と同様の機能を果たす部材については同様の符号を付して図面に示し、説明を省略する。
【0018】
なお以上の実施形態においては、ワイヤー51〜54を4本用いたが、3本とすることも可能である。即ち、上記図1〜3に示す削孔装置において、法面Sの下部方向へ張設する2本のワイヤー53、54を1本とし、その1本のワイヤーを削孔機10の前記2本のワイヤー53、54の取付位置の中間の位置に取り付けると共に、法面S下部の一対の支柱23、24の代りに、その中間付近に支柱を設備することで、全体として3本のワイヤーにて削孔機10を移動・設置することが可能となる。この場合、削孔機10の法面Sでの左右方向への移動は、削孔機10から法面S上部方向へ張設される一対のワイヤー51、52の張り具合を調整することで行うことができる。また削孔機10の法面Sでの上下方向への移動は、前記一対のワイヤー51、52の他、削孔機10から法面Sの下部に向けて張設された残る1本のワイヤーの張り具合を調整することで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示す削孔装置の全体を説明する正面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す削孔装置の全体を説明する斜視図である。
【図3】本発明の実施形態を示す削孔装置に用いる削孔機の全体を示す正面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を説明する削孔装置の全体図である。
【符号の説明】
【0020】
10 削孔機
11 ガイドタワー部
11a ガイド柱
11b 接地バー
11c 持ち手
11d 持ち手
12 スライド台
12a チェーン
13 削孔機本体
13a 油圧モータ
14 削孔ロッド
15 削孔ビット
16 ワイヤー取付部
16a ワイヤー取付穴
21〜24 支柱
31〜34 滑車
41〜44 巻取器
51〜54 ワイヤー
S 法面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔機を法面上で順次移動させて設置し、法面に削孔を施す削孔装置であって、削孔機が移動設置されるべき法面の上部に離間して一対の支柱を設けると共に、法面の下部にも一対の支柱を離間して若しくは1本の支柱を設け、支柱には滑車を取り付け、また支柱の数と同数の巻取器を設備し、各巻取器から繰り出されるワイヤーをそれぞれ前記支柱に取り付けた滑車を介して削孔機の上部のワイヤー取付部まで延長して配線し、各巻取器によりワイヤーを繰り出し或いは巻き取ることで、ワイヤーの長さを調節して削孔機を上下左右の方向に移動させると共に法面に対して立設状態に設置するようにしたことを特徴とする削孔装置。
【請求項2】
各支柱の滑車を介してワイヤーを繰り出し或いは巻き取る各巻取器を集合させて配置し、操作することを特徴とする請求項1に記載の削孔装置。
【請求項3】
支柱は自然木の中から選択して用い、適当な自然木が無い場合は人工の支柱を立設して用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の削孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−89934(P2006−89934A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273470(P2004−273470)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(398065483)
【出願人】(504356351)
【出願人】(504356487)
【Fターム(参考)】