説明

削岩及び補強材挿入装置

【課題】 削岩と補強材の挿入を一連の作業で行える走行台車に装着する削岩及び補強材挿入装置を提供せんとする。
【解決手段】 走行台車への取り付け手段を後面に有する架台1に、左右方向へ移動可能にスライド台2が載置され、スライド台2の左右一方側に前後方向へ移動可能に削岩機3を設け、他方側に補強材挿入機4を設置した。削岩機3の削岩機移動シリンダー13、穿孔ドリルの作動、スライド台2のスライド用シリンダー7、及び補強材14の挿入用シリンダー18の各々の作動源の油圧又は空圧を、走行台車の動力源と配管で連通し、無線操作により制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーショベル等の走行台車へ取り付ける削岩及び補強材挿入装置に関するものであり、詳しくは危険な現場において、走行台車の油圧や空圧を動力源として、補強用の補強材挿入用の削孔と挿入の作業を無線操作により可能とする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種機械は、削岩と補強材の挿入又は薬剤の注入に夫々専用に特化した作業機械が開発の主眼であり、中にはショベ系掘削機に取り付けて使用するものもある。
【特許文献1】特開平05−295978
【特許文献2】特開平07−076938
【特許文献3】特開2004−332247
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本装置は作業の性質上、落石や地すべりの危険がある場所も少なくなく、作業員の安全を護り、危険地帯へ直接踏み込んでの作業を回避するため、無線等を利用しての遠隔操作による工法が工夫されている。
しかし、複雑で複合した作業はまだ困難であり、更なる工夫が望まれている。
【0004】
また、危険な場所の工事現場は狭かったり、急な傾斜であったりして複数の機械での作業が難渋であったり、無線での自動操縦を行う専門化した機械装置は高価で、まだ一般的に普及していないのが現状である。
【0005】
そこで、本発明は削岩と補強材の挿入を一連の作業で行える走行台車に装着する削岩及び補強材挿入装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の削岩及び補強材挿入装置は、走行台車への取り付け手段を後面に有する架台に、左右方向へ移動可能にスライド台が載置され、スライド台の左右一方側に前後方向へ移動可能に削岩機を設け、他方側に補強材挿入機を設置したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、削岩機の穿孔ドリルと補強材挿入機の挿入位置の補強材とが同一水平面に配置されていることを特徴とするものであり、さらに請求項3に記載の発明は、スライド台の左右移動の距離が、削岩機の穿孔ドリルと補強材挿入機の挿入位置の補強材との間隔と同一であることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、補強材挿入機が、補強材が積層された保持部、積層された最下部の補強材を受け止め保持する凹部と落下抑止部を有する回動可能な供給ブラケット、回動した供給ブラケットから補強材を受けて挿入位置となる挿入部と、挿入部の後方に配置した押し出し手段から成ることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、請求項5に記載の発明は、架台と供給ブラケット間に連結リンクを渡設し、スライド台の左右移動に従って供給ブラケットを回動させ、補強材の挿入位置への受け渡しを行うことを特徴とするものである。
【0010】
そして、請求項6に記載の発明は、スライド台の左右移動の駆動手段及び削岩機の前後移動の駆動手段をシリンダーとし、これ等のシリンダー及び削岩機を、取り付ける走行台車の油圧又は空圧を利用して作動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の削岩及び補強材挿入装置は、取り付け手段を架台の後面に有するため、走行台車へ取り付けて移動可能となる、専用機に比べ安価で、維持、運搬も容易となる効果を有する。
そして、架台に、左右方向へ移動可能にスライド台を載置し、スライド台の左右一方側に前後方向へ移動可能に削岩機を設け、他方側に補強材挿入機を設置したため、削岩機の前後進とスライド台を移動させて削岩機の削岩位置と補強材挿入機の挿入位置を合わすことができ、目的の作業を容易に行える効果を有するのである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、削岩機の穿孔ドリルと補強材挿入機の挿入位置の補強材とが同一水平面に配置されているため、左右方向に移動するのみで、削岩機の削岩位置と補強材挿入機の挿入位置を合わすことができる効果がある。
【0013】
請求項3に記載の発明は、スライド台の左右移動の距離が、削岩機の穿孔ドリルと補強材挿入機の挿入位置の補強材との間隔と同一としてあるから、移動距離を予め設定しておけば逐一調整する必要が無く、容易に削岩機の削岩位置と補強材挿入機の挿入位置を合わすことができる効果がある。
【0014】
請求項4に記載の発明は、補強材挿入機が、補強材が積層された保持部、積層された最下部の補強材を受け止め保持する凹部と落下抑止部を有する回動可能な供給ブラケット、回動した供給ブラケットから補強材を受けて挿入位置となる挿入部と、挿入部の後方に配置した押し出し手段から成るものであるから、複数の補強材を保持して順次挿入位置へ供給して削岩孔への挿入を連続して行える効果を発揮するものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、架台と供給ブラケット間に連結リンクを渡設し、スライド台の左右移動に従って供給ブラケットを回動させ、補強材の挿入位置への受け渡しを行うものであるから、挿入工程のためのスライド台の移動を利用して、補強材を挿入位置へタイミング良く、かつ個別の動力源を用いることなくセットできる効果を有するものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、スライド台の左右移動の駆動手段及び削岩機の前後移動の駆動手段をシリンダーとし、これ等のシリンダー及び削岩機を、取り付ける走行台車の油圧又は空圧を利用して作動させるものであるから、走行台車の作動源を有効に共用利用し、機器の重複を省き経済性に資する効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は一実施の形態を示す簡略化した斜視図であり、本発明の削岩及び補強材挿入装置は、架台1、スライド台2、削岩機3及び補強材挿入機4より構成されている。
【0018】
架台1は後面に走行台車(図示せず)への取り付けブラケット5、前面に固定用角状突起6を有する。
削岩及び補強材挿入作業が必要となれば、パワーショベル等の走行台車への着脱が可能で自走車両とする必要が無く、固定用角状突起6を作業法面等へ突き刺して架台1を安定させ、作業の正確性を図るものである。
【0019】
スライド台2は架台1に載置され、且つ、左右方向への移動が可能となっている。
架台1とスライド台2間に左右横方向へのスライド用シリンダー7を配置し、本体又は伸縮ロッドを選択して渡設し原動としている。
スライド台2や載置物に重量があり浮き上がりの虞はないけれど、スライドの方向規制や滑らかな動きとするためのガイドや転動手段を適宜設けても良い。
【0020】
そして、スライド台2の左右一方側に前後方向への移動が可能に削岩機3を設け、他方側に補強材挿入機4が設置され、左右方向へスライドして移動することにより、架台1に対して削岩機3と補強材挿入機4が同位置に位置決めできるように、スライド台2の左右移動の距離が、削岩機3の穿孔ドリルと補強材挿入機4の挿入部17(後述)の補強材14との間隔と同一とし、且つ削岩機3の穿孔ドリルと補強材挿入機4の挿入部17に載置した補強材14とが同一水平面に配置し、削岩機3で空けた穿孔に補強材14を挿入できるようにしてある。
【0021】
削岩機3は、スライド台2の前後方向に載置した筒台8の支持ブラケット9に前後方向に固定され、支持ブラケット9は筒台8に跨接し、筒台8の前後方向に穿設した長孔10に挿通する従動ロッド11と連結ロッド12で繋がり、従動ロッド11はスライド台2(又は筒台8)に設置した削岩機移動シリンダー13の伸縮ロッドと連結している。
したがって、削岩機移動シリンダー13の作動によって、削岩機3が筒台8上を架台1(及びスライド台2)の前後方向に移動することになる。
【0022】
補強材挿入機4は、補強材14を収容保持し供給する保持部15、削岩機3側に位置する挿入部17へ補強材14を渡す供給ブラケット16、及び挿入部17の後方に配置した挿入用シリンダー18で構成されている。
【0023】
保持部15は、コ字型の保持枠15Aを対向して設け、保持枠15A、15A間に架設し補強材14を積層して把持する。
そして、各保持枠15Aは挿入部17に対して反り返った格好で傾斜し、積層した補強材14が順次下方へ流れて供給できるものとしてあり、傾斜は左右方向と同時に前後方向へも角度を設けて下方への重圧を緩和するのもとなっている。
【0024】
保持部15に積層された最下部の補強材14Aは、併設した複数の供給ブラケット16の凹部16Aに受け止め保持され、回動して補強材14Aを挿入部17へ落下して供給する。
回動する供給ブラケット16は凹部16Aに連続する弧状の落下抑止部16Bを有し、落下抑止部16Bが積層した直上の補強材14Bを受け止め、補強材14Bの落下を防止している。
そして、供給ブラケット16が戻って元位置に復帰すれば、最下部となった補強材14Bを凹部16Aに受け止め保持することとなる。
【0025】
供給ブラケット16の回動は、回動軸19と架台1間に連結リンク20が設けられ、スライド台2の左右移動に連動して回動するものとしてあり、架台1に対して削岩機3と補強材挿入機4が同位置にスライドした時に、補強材14Aが挿入部17へ落下するタイミングとしてある。
【0026】
挿入位置となる挿入部17は、半筒状のV状、U状などの条体で形成し、前述のように削岩機3の穿孔ドリルと補強材挿入機4の挿入部17に載置した補強材14とが同一水平面に成るように配置し、挿入部17の後方には補強材14を削岩機3で空けた穿孔に押し出す手段である挿入用シリンダー18が配置してある。
【0027】
また、削岩機3の削岩機移動シリンダー13、穿孔ドリルの作動、スライド台2のスライド用シリンダー7、及び補強材14の挿入用シリンダー18の各々の作動源の油圧又は空圧を、パワーショベル等の走行台車22の動力源と配管で連通し、無線操作により制御を行うものとしてある。
【0028】
そして、図5に示すように、削岩機3の削岩機移動シリンダー13と穿孔ドリルの作動を接触式切り替えバルブ21で行うものとれば、無線発信機の操作で走行台車を削孔面へ操縦し、(1)削岩機3の前後進指示、(2)スライド台2の横移動指示、(3)挿入用シリンダー18の伸縮指示、を順次行うことで安全に作業を遂行できるものとなる。
【0029】
図6は、架台1上のスライド台2に、削岩機3と補強材挿入機4の組み合わせを複数並設したものであり、順次穿孔と挿入を可能とし連続した作業が行え、安全で大幅な効率向上が期待できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態を示す簡略化した斜視図である。
【図2】図1の一部斜視図である。
【図3】本発明の補強材挿入機の作用を示す正面図である。
【図4】本発明の補強材挿入機の作用を示す正面図である。
【図5】削岩機と削岩機移動シリンダーの配管例を示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す簡略化した平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 架台
2 スライド台
3 削岩機
4 補強材挿入機
5 取り付けブラケット
6 固定用角状突起
7 スライド用シリンダー
8 筒台
9 支持ブラケット
10 長孔
11 従動ロッド
12 連結ロッド
13 削岩機移動シリンダー
14、14A、14B 補強材
15 保持部
15A 保持枠
16 供給ブラケット
16A 凹部
16B 落下抑止部
17 挿入部
18 挿入用シリンダー
19 回転軸
20 連結リンク
21 切り替えバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車への取り付け手段を後面に有する架台に、左右方向へ移動可能にスライド台が載置され、スライド台の左右一方側に前後方向へ移動可能に削岩機を設け、他方側に補強材挿入機を設置しことを特徴とする削岩及び補強材挿入装置。
【請求項2】
削岩機の穿孔ドリルと補強材挿入機の挿入位置の補強材とが同一水平面に配置されていることを特徴とする請求項1記載の削岩及び補強材挿入装置。
【請求項3】
スライド台の左右移動の距離が、削岩機の穿孔ドリルと補強材挿入機の挿入位置の補強材との間隔と同一であることを特徴とする請求項2記載の削岩及び補強材挿入装置。
【請求項4】
補強材挿入機は、補強材が積層される保持部、積層された最下部の補強材を受け止め保持する凹部と落下抑止部を有する回動可能な供給ブラケット、回動した供給ブラケットから補強材を受けて挿入位置となる挿入部と、挿入部の後方に配置した押し出し手段から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の削岩及び補強材挿入装置。
【請求項5】
架台と供給ブラケット間に連結リンクを渡設し、スライド台の左右移動に従って供給ブラケットを回動させ、補強材の挿入位置への受け渡しを行うことを特徴とする請求項4記載の削岩及び補強材挿入装置。
【請求項6】
スライド台の左右移動の駆動手段及び削岩機の前後移動の駆動手段をシリンダーとし、これ等のシリンダー及び削岩機を、取り付ける走行台車の油圧又は空圧を利用して作動させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の削岩及び補強材挿入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−169551(P2008−169551A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1252(P2007−1252)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(502301540)株式会社ヨシカワ (3)
【Fターム(参考)】