説明

前照灯制御システム

【課題】比較的低コストで車両の前照灯を走行場所に応じて制御することができる前照灯制御システムを提供する。
【解決手段】車両20の走行路に設置された表示手段30に表示された表示情報31を撮影可能な撮影手段40と、撮影手段40によって撮影された表示情報31に基づいて、車両20の前照灯21による照射条件を変更する照射条件変更手段54と、照射条件変更手段54によって変更された照射条件に基づいて前照灯21の照射状態を制御する前照灯制御手段55と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する走行路の場所(走行場所)に応じて前照灯を制御する前照灯制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の前照灯(ヘッドランプ)は、車両前方遠方を照射するハイビーム(走行用ビーム)と、車両前方近傍を照射するロービーム(すれ違いビーム)と、に切換可能に構成されている。
【0003】
前照灯のハイビームとロービームとの切り替えは、例えば、対向車の有無等を含む走行路の状態を考慮して運転者によって行われるのが一般的であるが、近年は、車両の走行路の状態に応じて、前照灯のハイビームとロービームとが自動的に切り換えられるものが開発されている。例えば、車両が屈曲した道路を走行している際に、他の車両が確認され前照灯がハイビームである場合には前照灯をロービームに切り替え、他の車両が確認されず前照灯がロービームである場合には前照灯をハイビームに切り換えるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−296759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように前照灯を自動的に制御することで車両の安全性を向上することができるが、前照灯は走行場所によってより細かく制御することが好ましい。例えば、GPS情報、地図情報、路車間通信等を利用することにより、前照灯を走行場所に応じてより細かく制御することはできる。しかしながら、これらの情報を利用するためには、高価な装備が必要となってしまう。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、比較的低コストで車両の前照灯を走行場所に応じて制御することができる前照灯制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車両の走行路に設置された表示手段に表示された表示情報を撮影可能な撮影手段と、該撮影手段によって撮影された前記表示情報に基づいて、前記車両の前照灯による照射条件を変更する照射条件変更手段と、該照射条件変更手段によって変更された照射条件に基づいて前記前照灯の照射状態を制御する前照灯制御手段と、を有することを特徴とする前照灯制御システムにある。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様の前照灯制御システムにおいて、前記表示手段には、前記表示情報がパターン化されて表示されていることを特徴とする前照灯制御システムにある。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様の前照灯制御システムにおいて、前記照射条件には、前記前照灯による照射範囲が含まれていることを特徴とする前照灯制御システムにある。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れか一つの態様の前照灯制御システムにおいて、前記走行路の状態を検出する走行路状態検出手段を有し、前記前照灯制御手段は、前記走行路状態検出手段の検出結果に応じて前記前照灯のロービームとハイビームとの切り換えを制御することを特徴とする前照灯制御システムにある。
【0011】
本発明の第5の態様は、第4の態様の前照灯制御システムにおいて、前記照射条件には、前記前照灯制御手段による前記前照灯のハイビームとロービームとの切り替えのタイミングが含まれていることを特徴とする前照灯制御システムにある。
【0012】
本発明の第6の態様は、第4又は5の態様の前照灯制御システムにおいて、前記前照灯制御手段は、前記前照灯がハイビームである際に前記走行路状態検出手段によって前記走行路の状態として前記車両の前方に対向車が存在することが検出されると、前記対向車の検出から所定時間の経過後にロービームへの切り換えを実行し、前記照射条件には、前記対向車の検出からの所定時間が含まれていることを特徴とする前照灯制御システムにある。
【発明の効果】
【0013】
かかる本発明では、車両が走行する走行場所に応じて、例えば、走行場所が高速道路であるか一般道であるかに応じて、前照灯による照射条件が変更される。これにより車両の前照灯は、常に走行場所に適した照射条件で制御される。したがって、夜間走行中であっても運転者の視界を良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る前照灯制御システムの概要を説明する概略図である。
【図2】本発明に係る前照灯制御システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る前照灯制御システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本発明に係る前照灯制御システムは、車両の走行場所に応じて車両の前照灯の照射条件を変更することで、車両の走行場所に適した照射条件で前照灯を制御するものである。本実施形態の前照灯制御システムにおいては、図1及び図2に示すように、車両20が走行する高速道路(自動車専用道路を含む)100の入口110及び出口120に設置された表示手段30の表示情報31から、車両20の走行場所が高速道路100であるか否かを判断し、その判断結果に応じて車両20の前照灯(ヘッドライト)21の照射条件を変更する。これにより、走行場所に適した照射条件で、車両20のヘッドライト21の制御を行うことができる。つまり本実施形態の前照灯制御システムでは、車両20が高速道路100を走行している際に、高速道路100に適した照射条件でヘッドライト21を制御することができる。これにより、運転者の視界を良好に確保して安全性を向上することができる。
【0017】
図2に示すように、本実施形態に係る前照灯制御システムにおいて、車両20は、撮像手段である撮像素子を備えた車載カメラ40と、ECU(電子コントロールユニット)50と、を備えている。
【0018】
車載カメラ40は、車両20の前方に向けて設置され、走行路に設置された表示手段30に表示されている表示情報31を撮影するためのものであり、例えば、CCDカメラ等が好適に用いられる。勿論、車載カメラ40は、表示情報31を撮影可能なものであれば、その構成は特に限定されるものではない。
【0019】
ところで、車載カメラ40で撮影される表示情報31は、車両20の走行場所を特定する情報が含まれている。具体的には、高速道路100の入口110に表示される表示情報31Aには、車両20が高速道路100に進入する旨の情報が含まれる。一方、高速道路100の出口120に表示される表示情報31Bには、車両20が高速道路100から退出する旨の情報、すなわち車両20が一般道に進入する旨の情報が含まれる。表示情報31の表示方法は、特に限定されないが、例えば、バーコード(一次元コード)や、QRコード(登録商標)等の二次元コードのようにコード化されて表示手段30に表示されていることが好ましい。
【0020】
また表示手段30は、例えば、高速道路100の入口110及び出口120に設置されている料金ゲート111,121に設けられて表示情報31が表示された表示板32であり、比較的安価に製造することができるものである。勿論、表示手段30は、車載カメラ40によって撮影して認識できる程度に表示情報31を表示できるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。
【0021】
また車両20に設けられているECU50は、入力装置、記憶装置、中央処理装置、タイマ、カウンタ類等で構成され、車両20の各種制御を行う制御部を備える。本実施形態では、ECU50は、制御部の一つとして、前照灯(ヘッドライト)21の制御を行う前照灯制御部(前照灯制御手段)51を備えている。この前照灯制御部51は、車両20の走行場所に応じた照射条件に基づいてヘッドライト21の照射状態を制御する。例えば、本実施形態では、前照灯制御部51は、車両20が高速道路100に進入した際に、高速道路100に適した照射条件でヘッドライト21を制御する。
【0022】
この前照灯制御部51は、本実施形態では、パターン認識手段52と、パターン内容判断手段53と、照射条件変更手段54と、ヘッドライト制御手段55と、走行路状態検出手段56と、記憶部57と、を備えている。
【0023】
パターン認識手段52は、車載カメラ40によって撮影された撮影データからバーコードで表された表示情報31のパターンを認識する。パターン内容判断手段53は、パターン認識手段52によって認識されたパターンから表示情報31の内容を判断する。本実施形態では、パターン内容判断手段53は、表示情報31の内容が、車両20が高速道路100に進入する旨の情報であるか、或いは一般道に進入する旨の情報であるかの判断を行う。なお表示情報31の内容の判断方法は、既存の技術を採用すればよいため、ここでの説明は省略する。
【0024】
照射条件変更手段54は、パターン内容判断手段53によって判断された表示情報31の内容に応じて、つまり車両20が高速道路100に進入するか又は一般道に進入するかに応じて、ヘッドライト21の照射条件を変更する。
【0025】
ここで記憶部57には、車両20の走行場所に応じたヘッドライト21の照射条件の情報である照射条件データ60が複数記憶されている。例えば、本実施形態では、高速道路用照射条件データ60aと、一般道用照射条件データ60bとが記憶部57に記憶されている。高速道路用照射条件データ60aは、車両20が高速道路を走行している際に適したヘッドライト21の照射条件の情報である。一般道用照射条件データ60bは、車両20が高速道路以外、つまり一般道を走行している際に適したヘッドライト21の照射条件の情報である。
【0026】
そして本実施形態では、照射条件変更手段54が、車両20が高速道路100に進入する場合には記憶部57から高速道路用照射条件データ60aを取得し、車両20が一般道に進入する場合には記憶部57から一般道用照射条件データ60bを取得する。つまり照射条件変更手段54は、パターン内容判断手段53の判断結果に応じて、記憶部57から所定の照射条件データを取得することで、ヘッドライト21の照射条件を変更する。
【0027】
ヘッドライト制御手段55は、照射条件変更手段54によって変更(取得)された照射条件データ60に基づいてヘッドライト21の照射状態を制御する。
【0028】
ここで、照射条件データ60に含まれる照射条件としては、例えば、ヘッドライト21の照射範囲が挙げられる。車両20の走行速度は、通常、一般道を走行中よりも高速道路を走行中の方が速い。このため高速道路を走行中の車両20におけるヘッドライト21の照射範囲は、一般道を走行中の場合よりも遠方まで照らすことができるように設定されている。
【0029】
そしてヘッドライト制御手段55は、このように照射条件変更手段54によってヘッドライト21の照射範囲等の照射条件が変更された場合には、変更された照射条件に応じてヘッドライト21を制御し、照射範囲等の変更を行う。これにより、車両20が走行している走行路に最適なヘッドライト21の制御を実行することができ、安全性が高まる。
【0030】
なお本実施形態では、ヘッドライト制御手段55は、上述のように照射条件データ60に基づいてヘッドライト21による照射状態を制御すると共に、走行路状態検出手段56の検出結果に基づいて、ヘッドライト21のハイビーム又はロービームへの切換制御を実行する。
【0031】
走行路状態検出手段56は、車載カメラ40によって撮影された撮影データから走行路の状態、例えば、前方に他車両や歩行者等が存在するか否か等の検出を行う。
【0032】
例えば、ヘッドライト21がハイビームである状態で、走行路状態検出手段56によって対向車の存在が確認されると、ヘッドライト制御手段55は、対向車の存在が確認されてから所定時間Tが経過した後に、ヘッドライト21のハイビームからロービームへの切り換えを実行する。これにより、適切なタイミングでヘッドライト21が切り換えられるため、対向車の運転者を眩惑させることを効果的に抑制することができる。
【0033】
そして本実施形態では、このようなヘッドライト21の切り換えのタイミング、例えば、走行路状態検出手段56によって対向車の存在が確認されてからの所定時間Tも、ヘッドライト21の照射条件の一つとして照射条件データ60に含まれている。車両20が高速道路を走行している場合の所定時間T1は、車両20が一般道を走行している場合の所定時間T2よりも短くなるように設定されている。これにより、走行路に最適なタイミングでヘッドライト21を切り換えることができ、車両20の運転者の視界を確保しつつ、対向車の運転者を眩惑させることも効果的に抑制できる。
【0034】
なお照射条件データ60に含まれる照射条件は、例示したヘッドライト21の照射範囲等に限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定されればよい。
【0035】
このような前照灯制御システムの基本的な動作について図3のフローチャートを参照してさらに説明する。
【0036】
車両20が高速道路100の入口110の料金ゲート111を通過する際に(図1参照)、料金ゲート111に設けられている表示手段30Aの表示情報31Aが車載カメラ40によって撮影されると、図3に示すように、まずステップS1でパターン認識手段52によって表示情報31Aのパターンが認識される。次いでステップS2で、パターン内容判断手段53がパターン認識手段52によって認識されたパターンから表示情報31Aの内容を判断する。
【0037】
そして、この表示情報31Aの内容に、車両20が高速道路100に進入する旨の情報が含まれている場合には(ステップS3:Yes)、照射条件変更手段54によってヘッドライト21の照射条件が変更される(ステップS4)。上述したように照射条件変更手段54は、パターン内容判断手段53の判断結果に応じて、記憶部57から高速道路用照射条件データ60aを取得することで、照射条件の変更を行う。言い換えれば、照射条件変更手段54は、ヘッドライト21の制御ロジックを一般道用から高速道路用に切り換えている。
【0038】
その後、車両20が高速道路100を走行している間は、ヘッドライト制御手段55によって、高速道路用照射条件データ60aに基づいてヘッドライト21の照射状態が制御される(ステップS5)。
【0039】
車両20が高速道路100の出口120の料金ゲート121を通過する際に(図1参照)、料金ゲート111に設けられている表示手段30Bの表示情報31Bが車載カメラ40によって撮影されると、ステップS6でパターン認識手段52によって表示情報31Bのパターンが認識される。次いでステップS7で、パターン内容判断手段53によって表示情報31Bの内容が判断される。
【0040】
そして、この表示情報31Bの内容に、車両20が高速道路100から退出する旨の情報、つまり車両20が一般道へ進入する旨の情報が含まれている場合には(ステップS8:Yes)、照射条件変更手段54が記憶部57から一般道用照射条件データ60bを取得することで、照射条件の変更を行う。言い換えれば、ステップS9で照射条件変更手段54は、ヘッドライト21の制御ロジックを高速道路用から一般道用に戻している(ステップS9)。これにより、一連の処理が終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る前照灯制御システムでは、例えば、一般道、高速道路といった走行場所の変化に応じて、ヘッドライト21の照射条件が自動的に変更される。これにより、常に車両の走行場所に適したヘッドライト21の制御を行うことができる。したがって、夜間走行中であっても運転者の視界を良好に確保することができ、安全性を向上することができる。
【0042】
また本発明では、車載カメラ40によって撮影された表示情報31に基づいてヘッドライト21の照射条件を自動的に変更するようにしているため、大幅なコストアップを抑制することができる。例えば、GPS情報や地図情報、或いは路車間情報等を利用しても、走行場所に応じたヘッドライト21の照射条件の変更を行うことはできるが、大幅なコストアップは避けられない。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0044】
また上述の実施形態では、コード化された表示情報31が表示手段30に表示された例を説明したが、表示情報31は、車両20の走行場所を認識することができるものであれば、勿論、コード化されていなくてもよい。
【0045】
また上述の本実施形態では、記憶部57に記憶されている照射条件データ60に基づいてヘッドライト21の照射条件の変更を行う例を説明したが、あくまで一例であり、ヘッドライト21の照射条件の変更方法は、特に限定されるものではない。
【0046】
さらに上述の実施形態では、走行路が一般道であるか、或いは高速道路であるかによって、前照灯の照射条件を変更するようにしたが、勿論、前照灯の照射条件を変更する走行場所は特に限定されるものではない。例えば、カーブが連続する山道等の所定の走行場所においても、前照灯の制御条件を変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
20 車両
21 前照灯(ヘッドライト)
30 表示手段
31 表示情報
32 表示板
40 車載カメラ
50 ECU
51 前照灯制御部
52 パターン認識手段
53 パターン内容判断手段
54 照射条件変更手段
55 ヘッドライト制御手段
56 走行路状態検出手段
57 記憶部
100 高速道路
110 入口
111 料金ゲート
120 出口
121 料金ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行路に設置された表示手段に表示された表示情報を撮影可能な撮影手段と、
該撮影手段によって撮影された前記表示情報に基づいて、前記車両の前照灯による照射条件を変更する照射条件変更手段と、
該照射条件変更手段によって変更された照射条件に基づいて前記前照灯の照射状態を制御する前照灯制御手段と、
を有することを特徴とする前照灯制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の前照灯制御システムにおいて、
前記表示手段には、前記表示情報がパターン化されて表示されていることを特徴とする前照灯制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前照灯制御システムにおいて、
前記照射条件には、前記前照灯による照射範囲が含まれていることを特徴とする前照灯制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の前照灯制御システムにおいて、
前記走行路の状態を検出する走行路状態検出手段を有し、
前記前照灯制御手段は、前記走行路状態検出手段の検出結果に応じて前記前照灯のロービームとハイビームとの切り換えを制御することを特徴とする前照灯制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の前照灯制御システムにおいて、
前記照射条件には、前記前照灯制御手段による前記前照灯のハイビームとロービームとの切り替えのタイミングが含まれていることを特徴とする前照灯制御システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の前照灯制御システムにおいて、
前記前照灯制御手段は、前記前照灯がハイビームである際に前記走行路状態検出手段によって前記走行路の状態として前記車両の前方に対向車が存在することが検出されると、前記対向車の検出から所定時間の経過後にロービームへの切り換えを実行し、
前記照射条件には、前記対向車の検出からの所定時間が含まれていることを特徴とする前照灯制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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