説明

前眼部薬物供給

治療システムは、眼の光学部の外側領域に設置される眼科用挿入物を含む。眼科用挿入物は、2つの構造物、すなわち第1の骨格構造物及び第2の緩衝構造物を含む。第1の構造物は、眼の前側部分に沿って埋込物の位置を維持し、第2の緩衝構造の担持をもたらす骨格枠として機能する。この第1の構造物は、治療システムが眼の前側部分に付着した状態を少なくとも30日間維持する。幾つかの実施形態では、第1の構造物は、涙液内に及び/又は眼の組織に対して埋込物を保持するように下結膜円蓋及び上結膜円蓋に固定されるあるいは固定的に係合する一定のサイズ及び形状、例えば環状、触覚を有する環、及び曲線的環の形態をしている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月3日に出願された米国仮出願第61/183,839号の優先権の利益を主張するものであり、その全面的な開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、眼を治療するための構造物、システム、及び方法に関する。例示的な実施形態は、薬物供給に使用する眼科用挿入物を、眼の前側部分に又はその付近に設置される眼科用挿入物を使用するための方法と共に提供する。例示的な挿入物は、光学部外側の眼の前側表面に沿って装着され、1つ又は複数の薬物を安全で治療上有効なレベルにて少なくとも30日間供給することができる。
【背景技術】
【0003】
種々の薬物を眼に投与することが必要な場合がある。点眼薬及びゲル剤は、効果的な薬物供給媒体であり得るが、著しい欠点を有する場合もある。特に、点眼薬は涙液層の液体と混合するが、涙液層中での滞留時間はわずか2〜5分に過ぎない場合がある。わずか5%の薬物が局所的に吸収されるに過ぎない場合があり、残りの一部又は全部は、涙嚢から涙管に送られ、最終的には血流へと吸収される。血流への吸収は、少なくとも2つの有害効果を示す場合があり、第1には、ほとんどの薬物が浪費され、第2には、血流に薬物が存在することにより体内の他の部分に有害な副作用が生じる場合がある。ゲル剤は、より効果的に眼に付着することができるが、患者の視覚を長期間不鮮明にする場合もある。幾つかの療法の場合、点眼薬及びゲル剤を両方とも頻繁に再適用する必要がある。したがって、その標的部位から排除されず、頻繁に再適用する必要もない、眼への薬物供給法を向上させる必要性が依然として存在する。
【0004】
点眼薬の欠点を考慮すると、様々な代替案が提唱されていることは理解できることである。滴剤に代わる公知の代替案には、薬物を含有する又は含浸させた構造物を眼瞼下に設置する治療が含まれる。
【0005】
そのような固体眼用剤形は、眼の滴剤投与薬物治療と比べて際立った潜在的利点を示すと考えられる。特に、眼薬物供給埋込物は、患者の薬剤服用遵守が低いこと、従来の点眼薬及び他の剤形の適用が困難であり誤適用が頻繁に起こること、及び点眼薬には効果的な薬物吸収に制限があることの克服を支援することができ、ポリマー化学の進歩を有利に応用すること、及び他の公知の薬物供給システムから持続的薬物放出又は薬物放出制御の概念を導入することを潜在的に容易にする。
【0006】
薬物供給埋込物には多大な潜在的利点があるにも関わらず、眼前面への薬物適用は、点眼薬が依然として主流である。従来の眼科用挿入物の受容の制限をもたらす可能性がある要因には、以下が含まれる:快適さの欠如、眼周辺でずれる又は移動する傾向があること、睡眠中又は眼を擦った際に偶発的な薬物排出が過剰に起こること、視界が妨げられること、及び/又は公知の薬物供給挿入物は設置及び取り外しが困難であること。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮すると、特に治療用化合物を眼の前側部分に供給するための新しい薬物供給デバイス、システム、及び方法は有益であろう。理想的には、挿入及び取り外しが容易であり、患者に快適さを提供し、無毒であり、視覚又は酸素透過を妨げず、再現可能な放出動態を可能にし、及び/又は適正な価格で容易に製造される、医師及び使用者による受容を両方とも獲得するように改善された眼科用挿入物を提供することは特に有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも1つの薬物を供給するための治療システム及び方法を提供する。例示的な実施形態では、挿入物を用いて、1つ又は複数の薬物が、眼科用挿入物から眼の前側部分へと供給される。
【0009】
第1の態様では、本発明の実施形態は、治療システムを提供する。治療システムは、眼科用挿入物を含む。眼科用挿入物は、眼の光学部の外側領域に設置される。眼科用挿入物は、2つの構造物から構成される。詳細に言うならば、第1の構造物すなわち骨格構造物と第2の構造物すなわち緩衝構造物である。
【0010】
前記の骨格構造物は、眼の前側部分に沿って埋込物の位置を維持し、第2の構造物の担持をもたらす骨格枠として機能する。この第1の構造物は、治療システムが眼の前側部分に付着した状態を少なくとも30日間維持する。幾つかの実施形態では、第1の構造物は、涙液内に及び/又は眼の組織に対して埋込物を保持するように下結膜嚢及び上結膜嚢に固定され、固定的に係合する一定のサイズ及び形状(例えば環状、触覚を有する環、及び曲線状の環)を維持する。
【0011】
多くの実施形態では、第1の構造物は、眼の前部構造への付着が最大になるように伸張又は形状が変化する。薬物は、第1の構造物中に若しくは構造物上に、第2の構造物中に若しくは構造物上に、又はその両方中に若しくはその両方上に分散させることができる。
【0012】
本発明の例示的な実施形態では、治療システムは、患者の眼に容易に挿入したり容易に取り外せるように設計されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】眼科用挿入物による治療に好適な眼2の解剖学的組織構造を示す図である。
【図1−2】眼科用挿入物による治療に好適な眼2の解剖学的組織構造を示す図である。
【図2−1】挿入デバイス、又は溶解して(又は膨潤するか、緩めるか、引き締めるか、若しくは幾つかの他の活性化機序を達成して)埋込物を挿入形状から展開形状に再構成する形状変更物質等を含むことができる眼科用挿入物を含む治療システムの例示的な実施形態を示す図である。
【図2−2】図2−1に示されている治療システムの平面図を示す図である。
【図2−3】図2−1に示されている治療システムの断面図を示す図である。
【図2−4】環が、その表面の対向部分に、2つの半径方向外向きに及び/又は前側に伸長する突起又は隆起を含む治療システムの実施形態を示す図である。
【図2−5】環状治療デバイスシステムの代替的な実施形態を示す図である。この実施形態では、三日月状又はバナナ状のタンクを、眼科用挿入物の下部に取り付ける。
【図3−1】角膜の光学部の外側に適合するサイズであり、2つ以上の触覚も有する、少なくとも8mmの直径を有する環状構造物を含む治療システムの別の実施形態を示す図である。
【図3−2】角膜の光学部の外側に適合するサイズであり、2つ以上の触覚も有する、少なくとも8mmの直径を有する環状構造物を含む治療システムの別の実施形態を示す図である。
【図3−3】角膜の光学部の外側に適合するサイズであり、2つ以上の触覚も有する、少なくとも8mmの直径を有する環状構造物を含む治療システムの別の実施形態を示す図である。
【図4−1】2つ以上の同心円状環状構造物が4つ以上の触覚により結合されている治療システムの代替的な実施形態を示す図である。
【図4−2】2つ以上の同心円状環状構造物が4つ以上の触覚により結合されている治療システムの代替的な実施形態を示す図である。
【図4−3】盲嚢のような、涙がより容易に貯溜され得る眼の区域に標的供給するために、1つ又は複数の環状部分又は弧切片が環の下部区域に存在するような偏心的な設計が使用される実施形態を示す図である。
【図5−1】拡張可能な眼科用挿入物を示す治療システムの蛇行状の実施形態を示す図である。
【図5−2】拡張可能な眼科用挿入物を示す治療システムの蛇行状の実施形態を示す図である。
【図5−3】拡張可能な眼科用挿入物を示す治療システムの蛇行状の実施形態を示す図である。
【図6−1】第2の緩衝構造物が、それらの間に第1の剛性構造物を挟むように互いに取り付けられる2つのヒドロゲル強膜コンタクトレンズを含む、別の実施形態を示す図である。
【図6−2】第2の緩衝構造物が、それらの間に第1の剛性構造物を挟むように互いに取り付けられる2つのヒドロゲル強膜コンタクトレンズを含む、別の実施形態を示す図である。
【図7−1】第2の構造物が、第1の構造物の周囲の長さ全体にわたって設置されている、治療デバイスシステムの例示的な眼科用挿入物の拡大図である。
【図7−2】テーパー状の外縁及び/又は内縁を有する第2の構造物を含む治療デバイスシステムの断面図である。
【図7−3】面取りを施した縁部を有する第2の構造物を含む治療デバイスシステムの断面図である。
【図7−4】丸みを帯びた縁部を有する第2の構造物を含む治療デバイスシステムの断面図である。
【図8−1】眼の曲率半径にあった形状にすることもできる前側及び/又は後側表面を有していてもよい、第2の構造物を有する治療デバイスシステムを示す図である。
【図9−1】第1の担持構造物の長さの別々の部分に設置された第2の緩衝構造物を示す図である。
【図10−1】ある区域において第2の構造物の優先的拡張を可能にするように、第2の構造物周辺にコーティングを部分的に分散させる実施形態を示す図である。
【図10−2】ある区域において第2の構造物の優先的拡張を可能にするように、第2の構造物周辺にコーティングを部分的に分散させる実施形態を示す図である。
【図11−1】別々の及び/又は対向する部分を中心に向かって接近させるか又は摘んで非平面状のタコス形状を形成する環状眼科用挿入物を示す図である。
【図11−2】溶解可能な材料が形状をゆっくりと解放して環形に戻ることを可能にする前の、眼の表面に挿入した際の環状眼科用挿入物を示す図である。
【図11−3】半径方向外向き部分又は突起が半径方向内向き部分の間に存在するように、環帯状形状が蛇行形状又は一連の屈曲を含む実施形態を示す図である。
【図11−4】半径方向外向き部分又は突起が半径方向内向き部分の間に存在するように、環帯状形状が蛇行形状又は一連の屈曲を含む実施形態を示す図である。
【図11−5】三つ葉のクローバー形状が形成される代替的な実施形態88を示す図である。
【図11−6】三つ葉のクローバー形状が形成される代替的な実施形態88を示す図である。
【図11−7】眼の表面に設置された完全に拡張した眼科用挿入物を示す図である。
【図12−1】デバイスの把持を容易するために切込又は溝を端部に有する改変型把持ツールの代替物を示す図である。
【図12−2】デバイスの把持を容易するために切込又は溝を端部に有する改変型把持ツールの代替物を示す図である。
【図12−3】デバイスを眼の形状と一致する形状に保持することを支援するために、切込に特定の形状を有するように改変された把持ツールのかみ合い部の様々な実施形態及びその使用方法を示す図である。
【図12−4】デバイスを眼の形状と一致する形状に保持することを支援するために、切込に特定の形状を有するように改変された把持ツールのかみ合い部の様々な実施形態及びその使用方法を示す図である。
【図12−5】デバイスを眼の形状と一致する形状に保持することを支援するために、切込に特定の形状を有するように改変された把持ツールのかみ合い部の様々な実施形態及びその使用方法を示す図である。
【図12−6】デバイスを眼の形状と一致する形状に保持することを支援するために、切込に特定の形状を有するように改変された把持ツールのかみ合い部の様々な実施形態及びその使用方法を示す図である。
【図13−1】把持ツールから環を解放する代替的な様式を示す図である。
【図13−2】把持ツールから環を解放する代替的な様式を示す図である。
【図13−3】把持ツールから環を解放する代替的な様式を示す図である。
【図13−4】把持ツールから環を解放する代替的な様式を示す図である。
【図14−1】代替的な注射器型挿入デバイスを、環状眼科用挿入物を挿入するための方法と共に示す図である。
【図14−2】代替的な注射器型挿入デバイスを、環状眼科用挿入物を挿入するための方法と共に示す図である。
【図14−3】代替的な注射器型挿入デバイスを、環状眼科用挿入物を挿入するための方法と共に示す図である。
【図14−4】代替的な注射器型挿入デバイスを、環状眼科用挿入物を挿入するための方法と共に示す図である。
【図14−5】代替的な注射器型挿入デバイスを、環状眼科用挿入物を挿入するための方法と共に示す図である。
【図15−1】古典的なバイクホーンに似た別の代替的な眼科用挿入物挿入デバイスを示す図である。
【図15−2】古典的なバイクホーンに似た別の代替的な眼科用挿入物挿入デバイスを示す図である。
【図15−3】古典的なバイクホーンに似た別の代替的な眼科用挿入物挿入デバイスを示す図である。
【図16−1】その外縁に沿って環状デバイスを担持する柔軟な可撓性円錐を含む代替的挿入デバイス、及びそれを使用して眼の強膜に眼科用挿入物を設置するための方法を示す図である。
【図16−2】その外縁に沿って環状デバイスを担持する柔軟な可撓性円錐を含む代替的挿入デバイス、及びそれを使用して眼の強膜に眼科用挿入物を設置するための方法を示す図である。
【図16−3】その外縁に沿って環状デバイスを担持する柔軟な可撓性円錐を含む代替的挿入デバイス、及びそれを使用して眼の強膜に眼科用挿入物を設置するための方法を示す図である。
【図16−4】その外縁に沿って環状デバイスを担持する柔軟な可撓性円錐を含む代替的挿入デバイス、及びそれを使用して眼の強膜に眼科用挿入物を設置するための方法を示す図である。
【図16−5】その外縁に沿って環状デバイスを担持する柔軟な可撓性円錐を含む代替的挿入デバイス、及びそれを使用して眼の強膜に眼科用挿入物を設置するための方法を示す図である。
【図16−6】その外縁に沿って環状デバイスを担持する柔軟な可撓性円錐を含む代替的挿入デバイス、及びそれを使用して眼の強膜に眼科用挿入物を設置するための方法を示す図である。
【図17−1】可撓性の曲線状バンドを含む代替的な挿入デバイスを示す図である。
【図17−2】可撓性の曲線状バンドを含む代替的な挿入デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1−1及び1−2は、眼科用挿入物による治療に好適な眼2の解剖学的組織構造を示す。眼2は、角膜4、虹彩6、及び白色の強膜8を含む。実質的に透明な結膜層10は、強膜8を覆っている。角膜4の後側には、水晶体12がある。光に反応する網膜14は、眼の後側部分に位置する。窩16は、鮮明に焦点の合った視覚を提供する網膜の一部である。角膜4及び水晶体12は、光を屈折させて窩16及び網膜14に画像を形成させる。
【0015】
図1−2は、涙液の生成及び排出に関与する涙器系18を示す。涙器系は、2つの基本区域:第1には、涙液を分泌する涙腺20及び眼の表面に液を輸送するその排出管22、第2には、涙液を鼻腔に運搬する涙小管24、涙嚢26、及び鼻涙管28で構成される。
【0016】
図2−1は、治療システム30の例示的な実施形態を示す。治療システム30は、眼科用挿入物31を含み、挿入デバイス、又は溶解して(又は膨潤するか、緩めるか、引き締めるか、若しくは幾つかの他の活性化機序を達成して)埋込物を挿入形状から展開形状に再構成する形状変更物質等を含むこともできる。また、代替的な実施形態では、挿入デバイス(又は幾つかの他のツール)を活性化することにより、挿入物を挿入形状から展開形状に再構成することができるか、又は挿入を支援するような様式で挿入物を単に解放可能に保持することができる。また更なる実施形態では、眼科用挿入物は、展開前、展開中、又は展開後に、形状又は他の特性の著しい変化を起こさなくともよい。にもかかわらず、眼科用挿入物は、最終的には眼の光学部の外側領域に設置される。眼科用挿入物は、2つの構造物:第1の構造物32及び第2の構造物34を含む。図2−1は、眼の光学部の外側に設置された例示的な治療システム30を示す。
【0017】
第1の構造物
第1の構造物は、埋込物を眼の構造に対して適所におおむね保持する骨格として機能し、それにより埋込物を眼に付着させ、したがって眼の前側部分に対する緩衝構造物の担持を提供する。この第1の構造物すなわち骨格構造物は、好ましくは治療システムが眼の前側部分に付着した状態を少なくとも30日間維持する。医学的にそれが望ましくなった場合、又は患者がそう望む場合、治療システムは、30日間が過ぎる前に取り外すことができるが、物理的な見地からは、眼科用挿入物を、眼の前側表面に少なくとも30日間維持することができる。幾つかの実施形態では、第1の構造物は、60日間以上、90日間以上、又は180日間以上も、眼中での埋込物全体の維持を支援し続けることができ、理想的にはそのような埋込期間全体にわたって治療剤の安全で有効な供給が継続される。代替的な治療デバイス及び方法は、より短期間の埋込期間、任意に1日又は数日間、少なくとも複数日間、1週間以上、又は2週間以上の期間、有益であり得る。
【0018】
治療システム30の挿入物31は骨格としての役割を果たすため、第1の構造物は、眼科用挿入物の全体的な形状を決定する場合がある。第1の構造物は、典型的には薄い金属線、ナイロン、PMMA、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、及び/又は別のポリマー等の硬質プラスチック、ポリプロピレン、又は眼に取り付けられた治療システムを維持するための構造担体を提供することが可能な他の合成縫合材料を含む。第1の構造物は、コーティングされたプラスチック又は金属を含むこともでき、コーティングは、治療薬を含有するか又は第2の緩衝用部品の骨格部材への容易な取り付けを提供する。第1の構造物は、骨格部材への第2の構造物の好適な取り付けを可能にするために、プラズマエッチング等の表面処理を有してもよい。
【0019】
図2−1は、第1の構造物の基本的な実施形態を示す。この図では、第1の構造物32は、環帯状又は環状であり、少なくとも8mmの直径を有し、患者の視覚を妨げないように角膜の光学部の外側に適合するサイズである。第1の構造物32の環帯は、好ましくは完全な環状又は大略環状に形成されるが、その周囲に沿って幾つかの間隙を有していてもよい。そのような実施形態における環帯の弧角度は、180°を超えるだろう。図2−2及び2−3は、図2−1に示されている治療システムの平面図及び断面図を示す。図2−1〜2−3に示されている治療システムは、構造物の縁部が眼の盲嚢内に位置することになるように、はるかにより大きなサイズにすることができる。治療システムを眼の盲嚢内に位置させることが意図される場合、望ましくは少なくとも2つのサイズの治療システムを生産して、様々なサイズの眼(例えば、小児の及び成人の、並びに随意に様々な成人の眼サイズ)に対応する。第1の構造物の代替的形状には、その開示が参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第3,995,635号に表示及び記載の挿入物の形状が含まれていてもよい。
【0020】
図2−4は、環が、2つの半径方向外向きに及び/又は前側に伸長する突起又は隆起42を、その表面の対向部分に含む治療システム30の実施形態36を示す。眼を瞬きすると、眼瞼は、2つの隆起を眼瞼間に「閉じ込め」、眼埋込物(そうでなければ眼の表面を自由に滑らかに動くことができる)を、角膜の光学部の外側のその治療上有効な位置へと押し戻す。
【0021】
図2−5は、環状治療デバイスシステム30の代替的な実施形態40を示す。この実施形態では、三日月状又はバナナ状のタンク42を、眼科用挿入物の下部に取り付ける。
【0022】
図3−1乃至図3−3は、この場合も、角膜の領域(眼の光学部)の外側に適合するサイズであり、少なくとも8mmの直径を有する環状構造物を含み、2つ以上の触覚46も有し、その各々が環状構造物から眼の盲嚢に放射状に伸び、したがって治療システムの追加的な担持点を提供する治療システム30の別の実施形態44を示す。図3−1は、眼の前側構造に設置された触覚を有する環状治療システムを示す。図3−2及び3−3は、それぞれ眼科用挿入物44の平面図及び断面図を示す。
【0023】
図4−1および図4−2は、2つ以上の同心円状環状構造物52が、4つ以上の触覚50により共に保持されている治療システム30の代替的な実施形態48を示す。内側環状構造物は、少なくとも8mmの直径を有し、角膜の光学部の外側に適合するサイズである。次の(及びそれに続く)外側環状構造物は、次第により大きな直径を有し、最も外側の環状構造物は、任意に少なくとも12mmの直径を有し、眼の強膜、結膜嚢、又は盲嚢に適合するサイズである。図4−1は、眼に設置された治療システムの実施形態48を示す。図4−2は、眼に挿入する前の治療システムの実施形態48を示す。実施形態48は、2つ以上の環及び4つ以上の触覚が存在するため、薬物供給用により大きな表面積を提供するという長所を有する。増加した表面積を有する追加的な挿入物形状は、その開示が参照により組み込まれる米国特許第4,540,417号に見ることができる。図4−3は、盲嚢のような、涙がより容易に貯溜され得る眼の区域に薬剤を供給するために、1つ又は複数の環状部分又は弧切片54が環の下部区域に存在するような偏心的な設計が使用される関連実施形態49を示す。この偏心的な設計はまた、より固定された位置にデバイスを安定させ、適所をはずれて回転する又は眼の光学部へと移動する可能性をより少なくすることができる。加えて、鼻アレルギー薬剤の場合等、盲嚢へと標的供給することにより、眼表面に加えて鼻涙系に幾つかの薬剤をより効果的に供給することが可能になる。
【0024】
上述の実施形態では、第1の構造物は、典型的には、一定のサイズ及び形状(例えば、環状、又は眼の強膜、結膜嚢、若しくは盲嚢に係留/付着する触覚を有する環)を維持する。
【0025】
他の実施形態では、第1の構造物は、眼の前部構造への付着を増強するように拡張又は形状を変化させることができる。図5−1乃至図5−3は、拡張可能な眼科用挿入物を示す治療システム30の蛇行状の実施形態56を示す。図5−1は、第1の構造物が眼の表面に挿入された実施形態56を示し、図5−2は、挿入前の実施形態56を示し、図5−3は、その拡張状態の実施形態を示す。その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,540,417号の技術を含む、本明細書に記載の緩衝技術及び/又は形状変更技術を利用して、様々な代替的蛇行形状を開発又は改変することができる。
【0026】
既述の実施形態に関して、骨格部材は、眼の曲率半径と一致するように形作ることができる。
【0027】
第1の構造物は、眼の中で涙液から液体を吸収すると共に拡張することができるか、又はバネの作用で伸張することができる。眼に挿入した際に膨潤することができる物質の例には、PVPE、PVA、及びポリウレタンゲルが含まれる。バネ作用により伸張することができる物質の例には、白金合金、チタン合金、全ステンレス鋼合金及び焼戻物、種々のクラッド金属、及び絶縁線が含まれる。第1の構造物は、マルテンサイト状態からオーステナイト状態への熱的、磁気的、又は電磁気的な活性化を使用して、所望の形状に変化させることが可能になるはずであるニチノール等の形状記憶材料を含んでいてもよい。形状記憶材料の他の例には、形状記憶ポリウレタン、架橋trans−ポリオクチレンゴム、ポリノルボルネンポリマー、ニチノール、ポリエチレン、PMMA、ポリウレタン、架橋ポリエチレン、架橋ポリイソプレン、ポリシクロオクテン、ポリカプロラクトン、(オリゴ)カプロラクトンのコポリマー、PLLA、PL/DLAコポリマー、PLLA PGAコポリマー、及び当業者に周知の他の形状記憶材料が含まれる。
【0028】
第1の構造物の追加的な形状
図6−1及び図6−2は、第2の緩衝構造物が、それらの間に第1の剛性構造物を挟むように互いに取り付けられる2つのヒドロゲル強膜コンタクトレンズ60を含む、別の実施形態58を示す。図6−1は、眼の表面に設置された実施形態58を示し、図6−2は、設置前の実施形態58を示す。実施形態58では、第1の構造物62は、眼科用挿入物の骨格として機能し、薬物供給材料としての役割を果たす。涙液は、ヒドロゲルレンズを透過すると、第1の構造物と接触し、涙液への薬物の溶出が引き起こされる。別の実施形態(図示せず)は、コンタクトレンズの前部側に取り付けられた、薬物供給物質を含む外骨格の第1の構造物を含む。別の実施形態(これも図示せず)は、眼に設置され、快適な眼瞼運動を提供するために通常の非薬物供給コンタクトレンズにより覆われた薬物供給材料を有する第1の構造物を含む。
【0029】
第2の構造物
図7−1は、第2の構造物34が、第1の構造物32の周囲の長さ全体にわたって配置される、治療デバイスシステム30の例示的な眼科用挿入物31の拡大図を示す。第2の構造物34は、長期間のデバイス埋込又は装着を容易にするための緩衝性、任意に治療システムを少なくとも30日間装着することを患者に促すのに十分な眼への刺激抑制を提供する。緩衝効果は、少なくとも部分的には、第2の構造物に使用される材料により、並びに第2の構造物の表面及び/又は縁部の形状により達成することができる。幾つかの実施形態では、第2の構造物はコーティングを含んでいてもよい。
【0030】
望ましくは、第2の構造物の材料は、軟質、生体適合性、及び非刺激性である。そのような材料の例には、ヒドロゲル又はシリコーン等のポリマーが含まれる。
【0031】
その全体的な形状及び配置に関わらず、第2の構造物の縁部は、それらと眼瞼の内側部分との摩擦を抑制するように成形されることが多い。図7−2は、テーパー状の外縁及び/又は内縁64を有する第2の構造物34を含む治療デバイスシステムの断面図を示す。図7−3は、面取りを施した縁部66を有する第2の構造物34を含む治療デバイスシステムの断面図を示す。図7−4は、丸みを帯びた縁部68を有する第2の構造物34を含む治療デバイスシステムの断面図を示す。図8−1は、眼の曲率半径にあった形状70にすることもできる前側及び/又は後側表面70を有していてもよい第2の構造物34を有する治療デバイスシステム30を示す。
【0032】
幾つかの実施形態72では、第2の緩衝構造物74は、第1の構造物の長さに沿って、ある別々の部分にのみに、望ましくは、より鋭い縁部又は屈曲が眼への刺激を誘発する可能性がある位置に配置される。図9−1は、第1の担持構造物32の長さの別々の部分に配置された第2の緩衝構造物74を示す。
【0033】
第2の構造物は、第2の構造物に部分的に設置されたコーティングを含むこともでき、このコーティングは、そうでなければ拡張可能で望ましくは水和可能な第2の構造物の拡張を防止する。図10−1及び図10−2は、コーティング78が、ある区域における第2の構造物の優先的拡張を可能にするように、第2の構造物周辺に部分的に分散されている実施形態76を示す。図10−1は、コーティングが第2の構造物80周辺に部分的に分散されており、且つ第1の構造物32が非水和状態である実施形態を示す。図10−2は、図10−1の第2の構造物80が、水和された、したがって拡張した状態76’である実施形態を示す。
【0034】
1つの実施形態では、第1及び第2の構造物は、異なるデュロメーター及び/又は他の特徴を有する類似の組成物又は材料を含んでいてもよく、特に材料は、第1及び第2の両構造物が所望の特性を示すように加工されていてもよい。
【0035】
薬物供給マトリックス
治療システムに使用される薬物は、供給マトリックスに設置、埋込、封入、又はそうでなければ組み込まれることが多いだろう。供給マトリックスは、第1の骨格構造物又は第2の緩衝構造物のいずれか、並びにその両方中に又は両方上に含有されていてもよい。さらに、供給マトリックスは、生分解性材料又は非生物分解性材料のいずれかで構成される。供給マトリックスにはポリマーが含まれるが、それに限定されない。生分解性ポリマーの例には、タンパク質、ヒドロゲル、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(L−グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコリド、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコナート、ポリ乳酸−ポリエチレン酸化物コポリマー、修飾セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチラート、ポリ酸無水物、ポリリン酸エステル、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)、及びそれらの組合せが含まれる。非生物分解性ポリマーには、シリコーン、アクリラート、ポリエチレン、ポリウレタン、ヒドロゲル、ポリエステル(例えば、米国デラウェア州在住のE.I.Du Pont de Nemours and Company社製のDACRON(登録商標))、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、伸縮性PTFE(ePTFE、expanded PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、押出しコラーゲン、ポリマー発泡体、シリコーンゴム、ポリエチレンテレフタラート、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリイミド、ステンレス鋼、ニッケル‐チタン合金(例えば、ニチノール)、チタン、ステンレス鋼、コバルト−クロム合金(例えば、Elgin Specialty Metals社製のELGILOY(登録商標);Carpenter Metals Corp.社製のCONICHROME(登録商標)が含まれる。
【0036】
眼科用挿入物に対する患者の潜在的なアレルギー反応を予防するために、眼科用挿入物は、望ましくは低アレルギー性材料で構成されるだろう。望ましくは、第1及び/若しくは第2の構造物いずれか又は両方は、タンパク質の付着を防止し、したがってアレルギー反応の発生可能性を最小限に抑えるヒドロゲル、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリエチレンオキシド(PEO)等の材料で構成されていてもよい。或いは、眼科用挿入物の薬物供給マトリックスは、眼科用挿入物に対するアレルギー反応を予防するために、抗アレルゲン性及び/又は抗ヒスタミン性化合物を含んでいてもよい。ある実施形態では、供給マトリックスは、当技術分野で公知の他の物質を含むこともできる。
【0037】
治療システムに使用する薬物
治療システムを使用して、様々な薬物を眼に供給することができる。望ましくは、これら薬物には、眼の長期治療に必要な薬物が含まれるだろう。長期治療を必要とする状態の例には、以下のものが含まれる:ドライアイ、緑内障、アレルギー、感染症、細菌感染症、ウイルス感染症、及び他の感染症、酒さ性角膜炎、毛様体炎、及び眼瞼炎等の慢性炎症状態、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、及び他の網膜状態等の選択された網膜状態、術後、弱視等。
【0038】
前述の状態の治療に使用される薬物ファミリーには、以下のものが含まれる:ステロイド、抗炎症剤、抗生物質、緑内障治療用化合物、抗ヒスタミン剤、ドライアイ治療薬、神経保護剤、レチノイド、抗新生血管剤、酸化防止剤、及び生物製剤。
【0039】
ステロイドの例には、グルココルチコイド、アプロゲスチン(aprogestin)、アミネラロコルチコイド(amineralocorticoid)、又はコルチコステロイドが含まれる。例示的なコルチコステロイドには、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ベタメタゾン、ロテプレドノール、フルオシノロン、フルメタゾン、リメキソロン、又はモメタゾンが含まれる。ステロイドの他の例には、テストステロン、メチルテストステロン、又はダナゾール等のアンドロゲンが含まれる。
【0040】
抗炎症剤の例には、ピロキシカム、アスピリン、サルサレート(Amigesic)、ジフルニサル(Dolobid)、イブプロフェン(Motrin)、ケトプロフェン(Orudis)、ナブメトン(Relafen)、ピロキシカム(Feldene)、ナプロキセン(Aleve、Naprosyn)、ジクロフェナク(Voltaren)、インドメタシン(Indocin)、スリンダク(Clinoril)、トルメチン(Tolectin)、エトドラク(Lodine)、ケトロラク(Toradol)、オキサプロジン(Daypro)、及びセレコキシブ(Celebrex)等のNSAIDが含まれる。
【0041】
抗生物質の例には、アモキシシリン、ペニシリン、サルファ剤、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、クラリスロマイシン、テルコナゾール、アジスロマイシン、バシトラシン、シプロフロキサシン、エボフロキサシン(evofloxacin)、オフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、アミノグリコシド、トブラマイシン、ゲンタマイシン、及びポリミキシンB/トリメトプリム、ポリミキシンB/バシトラシン、ポリミキシンB/ネオマイシン/グラミシジンを含むポリミキシンBの組合せが含まれる。
【0042】
緑内障治療薬には、チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、及びカルテオロール等のベータ遮断薬;ピロカルピン等の縮瞳薬;ブリンゾラミド及びドルゾラミド等の炭酸脱水酵素阻害薬;トラボプロスト、ビマトプロスト、及びラタノプロスト等のプロスタグランジン;セレトニン剤(seretonergics);ムスカリン剤(muscarinics);ドーパミンアゴニスト;並びにアプラクロニジン及びブリモニジン等のアドレナリンアゴニスト、並びにラタノプロスト、ビマトプロスト、もしくはトラボプロスト等のプロスタグランジン又はプロスタグランジン類似体が含まれる。
【0043】
抗ヒスタミン剤及び肥満細胞安定化剤には、オロパタジン及びエピナスチン、急性期治療用抗アレルゲン製品ケトロラクトロメタミン、フマル酸ケトチフェン、ロテプレドノール、エピナスチンHCl、フマル酸エメダスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸オロパタジン、フマル酸ケトチフェンが含まれ、慢性期治療用抗アレルゲン製品には、ペミロラストカリウム、ネドクロミルナトリウム、ロドキサミドトロメタミン、クロモリンナトリウムが含まれる。
【0044】
抗新生血管剤には、生物製剤、ラニビズマブ(Lucentis)及びベバシズマブ(Avastin)が含まれる。弱視用薬には、麻酔薬、及びアトロピン等の毛様体筋麻痺薬が含まれる。ドライアイ治療薬には、シクロスポリンが含まれる。
【0045】
薬物溶出プロセスの制御
薬物溶出は、充填される薬物の濃度によるか、又は薬物を種々の他の化合物に埋込むか、もしくは薬物を種々の他の化合物と共に混合することによるかのどちらかで制御することができる。薬物の特定の溶解性特徴は、疎水性か又は親水性かに関わらず、その特定の薬物の溶出速度を制御する手段を決定することになる。薬物が疎水性である幾つかの実施形態では、薬物を微細に粉砕し、シリコーン、又は高度に親水性のヒドロゲル等のポリマーを含む第2の緩衝構造物に分散することができる。親水性薬物は、第1の構造物、例えばプラスチック、又はヒドロゲル等の第2の構造物のいずれかに固定化することができる。固定化に使用するポリマーの特定の選択は、薬物及びその特徴、所望の溶出速度、並びに溶出速度を変更することもできる薬物を含有するコーティングの壁厚に依存する。例えば、薬物が、第1のポリマーに埋込まれている場合、第2のポリマーの壁厚は、薬物の通過速度を少なくとも部分的に制御することができる。逆に、薬物が骨格部品に埋込まれる場合、コーティングの壁厚を使用して薬物放出を制御することができる。
【0046】
他の考慮すべきことには、骨格用の基材材料の選択、及び、薬物を骨格に組み込み、その後特定の骨格形状を形成し、その後ヒドロゲル又は他のポリマーでコーティングすることができるかどうかが含まれていてもよい。
【0047】
疎水性薬物の場合、胆汁酸塩を含む界面活性剤(例えば、デオキシコラート、タウロデオキシコラート、及びグリココラート)、又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のカルシウムキレート剤を添加して、それらの溶解度を増加させることができる。
【0048】
逆に、溶出速度を減少させるために、薬物がデバイスを出るのに移動する距離又は薬物の通過に対する材料の抵抗が、デバイスからの薬物の流出を制限するように、薬物粒子をコーティングしてもよく、薬物のより可溶性でない塩形態を生成してもよく、又は速度を制限するコーティング、ポリマー、若しくは他の材料を供給マトリックス中に及び/又はマトリックス上に組み込んでもよい。
【0049】
他の変数には、ポリマーが、スポンジ様又は天然多孔性材料、又は人工的に生成された細孔を有する材料、又は浸透圧ポンプ効果が生じるよう飽和する他の材料等のマトリックスから薬物を溶出させるのに十分な水溶液/涙液を吸収するか否かが含まれる。
【0050】
治療システムの表面積及び幾何学的形状を利用して、薬物の溶出速度を制御することもできる。したがって、治療デバイスの幾何学的形状は、特定の必要性に応じて、治療システムを覆う涙液の流れを最大限又は最小限にするように設計することができる。例えば、表面積の増加は、薬物と涙液との接触面積を増加させるだろう。標的供給が望ましいかどうかに応じて、デバイスが下部又は上部結膜嚢においてより広い供給面積/表面積を有するように、デバイスを構築することもできる。逆に、薬物の溶出速度を低下させるためには、眼と薬物粒子との接触面積を減少させるべきである。
【0051】
治療システムコーティング
幾つかの実施形態では、第2の構造物は、患者の眼を更に潤滑させるためのコーティングも含む。コーティングは、潤滑剤、例えばBiocoat社製のHydak(登録商標)であるヒアルロナン系コーティングを含んでいてもよい。Hydakの利点には、湿潤時に潤滑性であること、生体適合性であること、高度に親水性であること、薄い可撓性コーティングを使用して適用することができること、及び生理活性物質用の担体であることが含まれる。また、他のコーティングには、SurModics社製(親水性又は薬物供給)及びHydromer社製の親水性コーティング又は薬物供給コーティングのいずれかが含まれていてもよい。
【0052】
挿入プロセスを容易にするために、幾つかの実施形態はコーティングされることになり、そのため眼科用挿入物は挿入中に堅い触感を有するだろう。そのような眼科用挿入物が設置されると、コーティングは溶解して、眼科用挿入物を日常的使用のためにより快適にするだろう。
【0053】
治療システムの挿入及び取り外し
治療システムは、最初に医師により眼に設置され、その後所望の薬物供給期間が終了すると、その後は同じ又は異なる医師により眼の前側表面から取り外される。その後医師は、任意に、眼科用埋込物を自分で挿入しその後取り外す方法を患者に教えてもよい。
【0054】
デバイスの挿入及び取り外しに対する課題は、剛性及び可撓性の微妙なバランスを維持することに由来する。可撓性が高過ぎるデバイスは挿入が非常に難しくなり、剛性が高過ぎるデバイスは長期間の装着が不快になるだろう。
【0055】
剛性及び可撓性の微妙なバランスを維持する1つの方法は、デバイスを折り畳むか又は摘んで種々の形状にすることによる。デバイスの折り畳みは、挿入中にその形状をより効果的に維持し、したがってより容易に変形する環状構造よりも「押し易い(pushable)」構造を形成する。
【0056】
挿入目的用のデバイスの折り畳みを維持するための1つの代替案は、デバイスが眼に設置されるまで、溶解可能な材料で折り畳みを繋ぎ止めておくことである。溶解可能な材料は、形状をゆっくりと解放して環形に戻すことを可能にする。
【0057】
図11−1は、別々の及び/又は対向する部分を中心に向かって接近させるか又は摘んで非平面状のタコス形状82を形成する環状眼科用挿入物31を示す。摘んだ環状デバイスは、1つの端が下眼瞼又は上眼瞼の下に滑り込み、その後他方の端が他方の眼瞼の下に位置することができるように配置することができる。図11−2は、溶解可能な材料が形状をゆっくりと解放して環形に戻すことを可能にする前の、眼の表面に挿入した際の前記眼科用挿入物31を示す。図11−7は、眼の表面の完全に拡張した状態94の前記デバイスを示す。
【0058】
図11−3は、半径方向外向き部分又は突起が、半径方向内向き部分の間に存在するように、環帯状形状が、蛇行形状又は一連の屈曲を含む1つの実施形態84を示す。この実施形態は4つの突起を有し、クローバー葉形状が形成され、そのため4つの突起86の各々を、下眼瞼又は上眼瞼並びに眼の鼻側面及び耳側側面に設置することが容易になるだろう。この形状の内向き部分は、溶解可能な材料を用いて一緒に(又は互いの近くに)保持することができるが、良好な初期配置を達成することができるため、それは必要ではない場合がある。図11−4は、眼の表面に挿入した際の前記実施形態84を示し、図11−7は、眼の表面の完全に拡張した状態94の前記デバイスを示す。
【0059】
図11−5は、三つ葉のクローバー形状90が形成される代替的な実施形態88を示す。この場合、上部の突起92を、上眼瞼の後ろに最初に挿入し、その後底部の2つの突起を下眼瞼の後ろに挿入することになる。上記の実施形態のように、この形状は、溶解可能な材料を用いて適所に保持することもできるが、良好な初期配置を達成することができるため、それは必要ではない場合がある。図11−6は、眼の表面に挿入した際の前記デバイスを示し、図11−7は、眼の表面の完全に拡張した状態94の前記デバイスを示す。
【0060】
供給器具の使用により、デバイスの挿入を容易にすることもできる。図12−1及び図12−2は、デバイスの把持を容易するために切込又は溝を端部に有する改変型把持ツール150及び160の2つの代替物を示す。望ましくは、かみ合い部は、例えば、眼の表面に接触する場合に眼を引掻くことがないように、シリコーン又はテフロン(登録商標)を含む最上層を有するアントラマチック(antramatic)な遠位表面を有する。図12−2には、2つ以上かみ合い部を提供することができる供給器具の実施形態が示されており、デバイス160を環にクランプする場合、好ましくは、三つ葉又は四つ葉のクローバー形状を形成する3つ又は4つのかみ合い部162が存在する(図面では、簡潔さのために2つのかみ合い部が示されている)。3つ又は4つのかみ合い部162は、かみ合い部の尖叉がそれらのより緩和された外向き位置から圧縮することを強いる外側チューブを介して、同時に一緒になる。
【0061】
図12−3乃至図12−5は、デバイスを眼の形状と一致する形状に保持することを支援するために、切込に特定の形状を有するように改変された把持ツールのかみ合い部の様々な実施形態を示す。図12−3は、かみ合い部を水平に走る溝172を有するかみ合い部を示す。図12−4は、眼の形状により容易に一致する形状に環を屈曲させるように曲線状の溝175を有するかみ合い部を示す。
【0062】
図12−5は、曲線状の溝176を有するかみ合い部の代替的アントラマチックな実施形態を示す。この実施形態では、かみ合い部は、水平溝を有する3つの隣接したスラブで構成される。図12−5に示されているように、環状眼科用挿入物31を把持するために、中央スラブ178は、わずかに高くなっており、環材料用の曲線状の溝形成を可能にする。図12−6に示されているように、眼科用挿入物31を解放するために、環の突起保持部が眼の表面に触れると、中央スラブが押下げられてその結果スラブが全て互いに同じ高さになり、3つのスラブの側面に走る溝は今や水平であり、環は、今や把持ツールから容易に放出されることになる。
【0063】
図13−1乃至図13−4は、把持ツールから環を放出する代替的な方法を示す。図13−1は、4つのかみ合い部162を含み、各かみ合い部が、各かみ合い部の前側端部に配置され把持ツールの中心に面する溝170を含む、改変型把持ツール160を示す。図13−2は、眼科用挿入物31を溝170で把持し、かみ合い部162を挿入物に締め付けて4つの突起を形成して、患者の眼瞼の後ろに眼科用挿入物を挿入することを容易にする改変型把持ツール160を示す。環状デバイスの突起保持部が眼に設置されると、把持ツールの外部周囲に沿って溝が配置されないように、かみ合い部を有する腕部を各々180°回転させ、折り畳まれた環はもはや溝に維持されていないため、今や容易に外れてスライドする。図13−3は、各溝170が今や把持ツールの中心から外側に向くように、各かみ合い部をおよそ180°回転させた、改変型把持ツール160を示す。溝を180°回転させることにより、眼科用挿入物31の放出がもたらされる。図13−4は、改変型把持ツール160から放出された眼科用挿入物31を示す。
【0064】
図14−1乃至図14−5は、代替的なデバイスを、環状デバイスを挿入するための方法と共に示す。図14−1は、眼科用挿入物31を押し出すことができる平面先端部184を有する注射器外筒182及びプランジャー186を含む注射器型デバイス180を示す。環状デバイスを注射器に挿入するために、注射器のプランジャーを取り出し、環状デバイスを平面状に折り畳み、注射器の本体に挿入し、プランジャーを注射器に戻して設置する。図14−2は、眼科用挿入物31を平面状に折り畳み、注射器外筒182に挿入した注射器型デバイス180を示す。プランジャー186を注射器外筒に挿入し、注射器外筒は管腔を含んでおり、開口先端部は、挿入物31を押し出すことができるポートを含む。環状デバイスを眼に挿入するために、環状デバイスが注射器の平面先端部を通って穏やかに押し出されることを可能にするように、プランジャーを注射器本体に押込む。図14−3は、注射器型デバイス180の先端部184から実質的に押し出され、眼の強膜へ設置する準備ができている眼科用挿入物31のループを示す。図14−4は、眼の強膜に部分的に設置された眼科用挿入物31のループを示し、眼科用挿入物の残り部分は、注射器型デバイス180の先端部184を通って押し出され、眼に解放されることになる。図14−5は、眼の強膜に設置された眼科用挿入物31を示す。
【0065】
図15−1乃至図15−3は、古典的なバイクホーンに似た別の代替的眼科用挿入物挿入デバイスを示す。図15−1は、トランペット182及び圧搾球184を含むバイクホーン型挿入デバイス180を示す。図15−2は、トランペットl82の拡大図を示す。トランペットは、挿入デバイスの外縁に圧搾球を接続するチャネル188を有する軟質材料182を含む。トランペットの外縁は、環状デバイスに適合するサイズの溝186を含む。図15−3は、トランペット及び圧搾球を含むバイクホーン型挿入デバイスの断面を示す。圧搾球は、真空源、及び液体190、望ましくは生理食塩水用のタンクを含む。圧搾球は、トランペットに取り付けられている。
【0066】
眼の表面に挿入するための環状デバイスを取り上げるために、圧搾球を圧搾し、それによりトランペットの外縁の溝に環状デバイスを取り上げて保持する真空密閉を生成する。眼の前側表面に環状デバイスを設置するために、トランペットを眼の両眼瞼の下に穏やかに挿入し、圧搾球を穏やかに圧搾して、圧搾した球のタンクからトランペットのチャネルに液体を流動させ、環状デバイスとトランペットの外縁との真空密閉を壊す。その後、トランペットを、眼瞼の下から穏やかに引き出す。
【0067】
図16−1乃至図16−6は、代替的な挿入デバイス192を示す。図16−1は、その外縁196に沿って環状デバイスを担持する柔軟な可撓性円錐194を含む代替的挿入デバイス192、及びそれを使用して眼2の強膜8に眼科用挿入物を設置するための方法を示す。図16−2は、供給デバイスの外縁196の拡大図を示す。外縁は、環状眼科用挿入物31に適合するように設計された溝198を含む。図16−3は、柔軟な可撓性円錐を含む挿入デバイス192の正面図を示す。柔軟な可撓性円錐は、円錐の直径を変更可能にするための2つのスリット198を含む。図16−4乃至図16−6は、眼科用挿入物31を挿入するために、挿入デバイス192を使用するための方法を示す。図16−4は、環状眼科用挿入物31を負荷した挿入デバイス192が、上眼瞼202及び下眼瞼204の下に穏やかに差込まれていること示す。図16−5は、柔軟な可撓性円錐形194を摘むか又は引き出して、円錐の周囲を減少させ、円錐の外縁196から環状眼科用挿入物31を放出させることを示す。図16−6は、環状眼科用挿入物31が眼に残り、円錐194が眼瞼の下から引き離されることを示す。
【0068】
図17−1と図17−2は、代替的な挿入デバイスを示す。図17−1は、可撓性の曲線状バンド208を含む挿入デバイス206を示す。図17−2に示されているように、曲線状バンドは、眼科用挿入物31を担持することができる曲線状の溝を含んでおり、眼科用挿入物は、眼瞼の少なくとも1つの後ろに穏やかにスライドする。
【実施例】
【0069】
実施例1:眼科用挿入物用の薬物の治療上有効用量の計算−−オロパタジン
アレルギー状態治療用の薬物オロパタジンを用いて、その薬物の液滴投与による治療計画に基づき、薬物の治療上有効なプラント供給用量を計算するために使用することができる方法を実証することにする。計算方法は以下のステップを含む:1.)1回の適用当たりの所望の液滴数を決定するステップ;2.)液滴数と30μL(1滴の液滴の容積)を掛け算するステップ;3.)1μL当たりの固形薬物の量を決定するステップ;4.)ステップ2の結果とステップ3の結果を掛け算して、1日単位で眼に適用される固形薬物の量を見出すステップ;5.)ステップ4の結果と、特定の薬物の望ましい治療日数を掛け算するステップ;及び6)薬物供給の効率を掛け算するステップ。この最終量が、好ましくは、眼科用挿入物から分散することになる。
【0070】
オロパタジンは、眼科用の抗ヒスタミン剤(H1−受容体)及び肥満細胞安定化剤である。オロパタジンの通常成人用量は、例えば、0.1%溶液を使用する場合は、各罹患した眼に1日2回1滴であり、0.2%溶液を使用する場合、各罹患した眼に1日当たり1滴であってもよい。
【0071】
0.1%オロパタジン溶液の使用を推定すると、1mLの薬物は、lmgの薬物に相当する。1滴は30μLであり、それは0.03mLの溶液及び30μgのオロパタジンに相当する。0.1%溶液は1日2回適用されるため、オロパタジンの1日当たり用量は60μgである。点眼薬の薬物供給は非能率的であるため、眼に適用されたオロパタジンの90〜95%は洗い流される。これは、わずか3〜6μgのオロパタジンしか眼に残らないことになる。1日当たり3〜6μgで30日間だとすると、1か月の期間内に1つの眼に供給することができるオロパタジンの量は90〜180μgである。
【0072】
実施例2:親水性薬物の薬物供給手順及び溶出速度制御−−塩酸オロパタジン
眼科適用のオロパタジンHCl(OH)は、0.2%(2mg/mL)溶液として製剤化することができる。100μgのOHを含有する単一の50μL液滴は、1日1回で2週間眼に滴下することができる。有効性が5%であると推定すると、これは、5μg/日用量の角膜供給をもたらし、2週間の治療経過全体では合計70μgである。乾燥形態で少なくとも70μgを埋込物に負荷し、薬物タンクを膜(例えば、HEMA、PVA、PVP、GMA、セルロースの透析チューブ等)で分割するか又は埋込物内に薬物を埋込むことにより、涙膜に放出することができる。放出速度は、涙膜に接触する表面積を変更して所望の5μg/日(0.21μg/時間)に調節するか、又は薬物放出を制御する膜等を変更することにより制御することができる。標的用量の100%が、涙膜で洗い流されることなく、その標的位置に至るということがこの計算の場合でも仮定されており、より正確な計算は、洗い流しのデータを使用して実施することができる。
【0073】
両方の例の場合、いずれの例でも、水和プロセス中に直ちに投薬するために薬物のボーラスで埋込物の外部をコーティングすることができ、したがって膜を越える又はタンクを通る薬物のフラックスを生じさせることができる。これらコーティングは、埋込物の外側への固形薬物の設置を維持するために容易に溶解可能な層(例えば、デンプン、糖)を有する固形薬物形態であってもよい。
【0074】
実施例3:疎水性薬物の薬物供給手順及び溶出速度制御−−酢酸プレドニゾロン
一般的には、1%酢酸プレドニゾロン懸濁剤(10mg/mL)は、1日4回1週間2滴(合計でおよそ100μL容積)で投与される。実際には用量の5%が角膜への吸収に利用可能であるという推定で計算すると、これは、20μg/日の酢酸プレドニゾロン量になる。そうすると、1週間の有効用量は、140μgである。水溶液中の酢酸プレドニゾロンの溶解度は、およそ240μg/mLである。少なくとも140μgの固形酢酸プレドニゾロンを埋込物に負荷することができ、酢酸プレドニゾロンを約0.83μg/時間の速度で涙液層に溶解させることが可能である。埋込物の多孔度及び涙膜に接触する表面積により、速度を制御することができる。
【0075】
このように単純化された計算の場合、用量の100%が標的(角膜)に到達し、完全に吸収され、涙液層の流動により角膜から失われないことが仮定されている。試験データ又はモデリング等に基づいて調整を行うことができる。
【0076】
例示的な実施形態を、ある程度詳細に、例として、及び明瞭な理解のために記述したが、当業者であれば、様々な改変、応用、及び変化を使用できることを認識するだろう。したがって、本発明の範囲は、もっぱら添付の特許請求の範囲により制限されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の薬物を少なくとも30日間眼に持続放出することが可能な前記眼の光学部の外側に設置される非角膜治療システムであって、
前記治療システムを前記眼の前側部分に付着させ、担持を提供し、付着を維持するための第1の骨格構造物と、
少なくとも部分的に前記第1の構造物の長さに沿って配置される第2の構造物と
を含み、前記第2の構造物が、前記2つの構造物の少なくとも1つにおいて、緩衝性及び少なくとも1つの薬物を供給する手段を前記眼に提供する治療システム。
【請求項2】
眼に使用される眼科用挿入物であって、前記眼が、その間に光学部を有する前側眼表面に沿って伸縮可能な上眼瞼及び下眼瞼を有し、前記挿入物が、
前記光学部の外側の患者の前記眼の前記前側表面に沿って設置可能な第1の構造物と、
前記第1の構造物が前記挿入物と前記眼との接触を複数日間維持するのを支援する際に、前記眼の刺激を抑制するために前記挿入物と前記眼との間に緩衝的に係合される、前記第1の構造物により担持される第2の構造物と、
前記複数日の各々の間、安全で治療上有効な量の薬物が前記眼に放出されるように前記第1の構造物により担持される少なくとも1つの前記薬物と
を含む、眼科用挿入物。
【請求項3】
前記挿入物が、前記眼の前側表面と係合するための後側表面、前側表面、並びにその間に伸長する半径方向内縁及び外縁を有する環帯状の排出抑制的形状を有し、前記第1の構造物が、前記眼の前記上眼瞼と前記前側表面との間に及び前記眼の前記下眼瞼と前記前側表面との間に前記挿入物を捕捉するのに十分な程度に前記環帯の形状を維持するように、前記環帯状形状の周囲に沿って伸長し、
前記第2の構造物が、前記第1の構造物と眼組織との間に設置され、
前記眼組織が、強膜及び/又は少なくとも1つの前記眼瞼を含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項4】
前記薬物が、前記第1の構造物上に又は前記第1の構造物中に配置される、請求項3に記載の眼科用挿入物。
【請求項5】
前記薬物が、前記第2の構造物上に又は前記第2の構造物中に配置される、請求項3に記載の眼科用挿入物。
【請求項6】
前記複数日が、少なくとも30日を含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項7】
前記薬物が、
ステロイド、抗炎症剤、抗生物質、緑内障治療用化合物、抗ヒスタミン剤、及び/又はドライアイ治療薬からなる群から選択される1つ又は複数のメンバーを含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項8】
前記薬物が、
グルココルチコイド、アプロゲスチン、アミネラロコルチコイド、コルチコステロイド、コルチコステロイド、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、チルプレドニゾン、トリアムシノロン、フルオロメタロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ベタメタゾン、ロテプレドノール、フルオシノロン、フルメタゾン、リメキソロン、モメタゾン、アンドロゲン、テストステロン、メチルテストステロン、及び/もしくはダナゾールを含むステロイド、
ピロキシカム、アスピリン、サルサレート(Amigesic)、ジフルニサル(Dolobid)、イブプロフェン(Motrin)、ケトプロフェン(Orudis)、ナブメトン(Relafen)、ピロキシカム(Feldene)、ナプロキセン(Aleve、Naprosyn)、ジクロフェナク(Voltaren)、インドメタシン(Indocin)、スリンダク(Clinoril)、トルメチン(Tolectin)、エトドラク(Lodine)、ケトロラク(Toradol)、オキサプロジン(Daypro)、及び/もしくはセレコキシブ(Celebrex)を含むNSAID、
アモキシシリン、ペニシリン、サルファ剤、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、クラリスロマイシン、テルコナゾール、アジスロマイシン、バシトラシン、シプロフロキサシン、エボフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、アミノグリコシド、トブラマイシン、ゲンタマイシン、ポリミキシンBの組合せ、ポリミキシンB/トリメトプリム、ポリミキシンB/バシトラシン、及び/もしくはポリミキシンB/ネオマイシン/グラミシジンを含む抗生物質、
ベータ遮断薬、チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、カルテオロール、縮瞳薬、ピロカルピン;炭酸脱水酵素阻害薬、ブリンゾラミド、ドルゾラミド;プロスタグランジン、トラボプロスト、ビマトプロスト、ラタノプロスト;セレトニン剤;ムスカリン剤;ドーパミンアゴニスト;アドレナリンアゴニスト、アプラクロニジン、ブリモニジン、プロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、ラタノプロスト、ビマトプロスト、及び/もしくはトラボプロストを含む緑内障治療薬、
オロパタジン及びエピナスチン、急性期治療用抗アレルゲン製品、ケトロラクトロメタミン、フマル酸ケトチフェン、ロテプレドノール、エピナスチンHCl、フマル酸エメダスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸オロパタジン、フマル酸ケトチフェン;慢性期治療用抗アレルゲン製品、ペミロラストカリウム、ネドクロミルナトリウム、ロドキサミドトロメタミン、クロモリンナトリウムを含む抗ヒスタミン剤及び肥満細胞安定化剤、並びに/又は シクロスポリンを含むドライアイ治療薬からなる群から選択される1つ又は複数のメンバーを含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項9】
前記薬物が親水性であり、前記薬物が親水性ポリマーに分散される、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項10】
前記薬物が疎水性であり、前記挿入物が、薬物溶解度を増加させるために界面活性剤を含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項11】
前記薬物が疎水性であり、前記挿入物が、溶出速度低減材料を含み、前記溶出速度低減材料が、前記薬物を覆うコーティング、供給マトリックスの成分、及び/又は前記供給マトリックスを覆うコーティングを含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項12】
前記第1の構造物が環帯を含み、前記環帯が、前記眼瞼に係合し、前記眼の瞬きの際に前記挿入物を前記光学部周辺に位置決めするように、前記環帯から半径方向外向きに伸長する2つの放射状突起を有する、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項13】
前記第1の構造物が環帯を含み、前記環帯が、前記環帯の少なくとも1つの部分に沿って局所的肥厚を有する、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項14】
前記第1の構造物が環帯及び前記環帯から半径方向に伸長する複数の触覚を含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項15】
前記第1の構造物が、環帯、前記環帯から半径方向にオフセットする少なくとも1つの弧、及び前記少なくとも1つの弧と前記環帯との間に伸長する複数の放射状部材を含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項16】
前記第1の構造物が、半径方向内向き部分が半径方向外向き部分の間に存在する蛇行状環帯を含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項17】
前記第1の構造物が、内縁及び外縁を有する環帯を含み、前記縁部の少なくとも1つが、前記眼の鋭縁部刺激を回避するように非外傷性に形作られている、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項18】
前記第1の構造物が、非平面状眼係合表面を有する環帯を含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項19】
前記第1の構造物が環帯を含み、前記第2の構造物が水和時に膨潤し、前記第1及び第2の構造物に設置されている別々の一連の膨潤抑制バンドを更に含む、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項20】
展開前の挿入形状を提供するために前記第1の構造物と結合された形状変更材料を更に含み、前記挿入物が前記眼において展開することにより、前記形状変更材料が変化し、その結果前記挿入物が、眼において展開形状を呈し、前記挿入形状が、前記展開形状より大きな押し易さを有する、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項21】
前記挿入物の位置決め中に前記挿入物を担持するように脱着可能に前記挿入物を受容する受容部を有する作働可能な供給器具を更に含み、前記挿入物の少なくとも一部分が強膜と眼瞼との間で非外傷性に前記眼に係合する際に前記供給器具の作働により、前記受容部から前記挿入物が放出される、請求項2に記載の眼科用挿入物。
【請求項22】
眼を治療するための眼科用挿入システムであって、前記眼が、その間に光学部を有する前側眼表面に沿って伸長可能な上眼瞼及び下眼瞼を有し、前記システムが、
前記眼瞼の少なくとも1つの下で前記眼の前側表面に対して係合可能な挿入物と、
前記挿入物に結合された再構成材料又はツールであり、前記再構成材料又はツールの活性化が、前記挿入物を、前記眼の前側表面と前記眼瞼との間で前記光学部の外側に設置可能な環帯を含む展開形状に再構成する材料又はツールと、及び
そこでの展開時に前記複数日の各々の間、安全で治療上有効な量の前記薬物を前記眼に放出するように、前記環帯により担持された少なくとも1つの薬物と
を含む眼科用挿入物。
【請求項23】
眼を治療する方法であって、前記眼の光学部の外側の眼の前側部分に第1の骨格構造を設置することを含み、第2の構造物が、前記2つの構造物の少なくとも1つにおいて、前記眼に対する緩衝性及び少なくとも1つの薬物の供給を提供するように、少なくとも部分的に前記第1の構造物の長さに沿って設置される、方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8−1】
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【図9−1】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図11−5】
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【図11−6】
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【図11−7】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図13−4】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図14−4】
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【図14−5】
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【図15−1.15−2】
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【図15−3】
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【図16−1.16−2】
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【図16−3】
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【図16−4】
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【図16−5】
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【図16−6】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【公表番号】特表2012−528695(P2012−528695A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514133(P2012−514133)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037268
【国際公開番号】WO2010/141729
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511295368)フォーサイト・ラブス・エルエルシイ (1)
【Fターム(参考)】