説明

前立腺癌におけるGSTP1高メチル化の発見

前立腺癌を発見するためのアッセイは、1つの遺伝子、例えばGSTP1内からの、複数のメチル化マーカーを発見するための試薬を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、他の診察方法と連繋する、メチル化した遺伝子の調査、及びこれらの方法と共に使用するキットに関する。
【0002】
後成的な変化(DNAヌクレオチド配列における変化を伴わない、遺伝子発現の変化)は、主にDNAメチル化における修飾及びクロマチン再構築を含む。DNAメチル化における変化が、広範な腫瘍及び遺伝子において立証されてきた。Esteller et al.(2001)、Bastian et al.(2004)、及びEsteller(2005)。特定のCpG部位におけるメチル化の程度は、患者のサンプルによって様々であり得る。Jeronimo et al.(2001)、及びPao et al(2001)。
【0003】
最近では多くの潜在的なメチル化マーカーが開示されている。グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)は、それらを発現する遺伝子のメチル化状態が、前立腺癌のための重要な予後診断的及び診断的価値を有し得る、代表的なタンパク質である。タンパク質は細胞内の解毒反応を触媒し、解毒反応は化学的に反応性の求電子をグルタチオンに共役させることによって、求電子性発癌性物質を不活性化させることを含む(Pickett et al.(1989)、Coles et al.(1990)、及びRushmore et al.(1993))。異なる遺伝子座でいくつかの異なる遺伝子によってコードされるヒトGSTは、α、μ、π、及びβと称される4つのファミリーに分類されている。Mannervik et al.(1992)。後成的な変化から生じる低減したGSTP1発現は、多くの場合、前立腺癌及び肝臓癌に関連する。
【0004】
計算による手法(Das et al.(2006))、及び重亜硫酸塩シークエンシング(Chan et al.(2005))は、CpGアイランド内の多数の部位がメチル化され得ること、及びメチル化の程度がこれらの部位によって異なり得ることを示す。例えば、口腔癌においては、p16、E−カドヘリン、サイクリンA1、及びサイトグロビンに関して、個別のCpG部位のメチル化の程度における差異が認められる。Shaw et al.(2006)。前立腺及び膀胱腫瘍において、エンドセリン受容体Bは、メチル化のホットスポットを示した。(Pao et al.(2001))。結腸直腸癌及び胃癌では、死因となり得るプロテインキナーゼ遺伝子のCpGアイランドの縁部のメチル化が、より中央の領域と比較して、実質的に全てのサンプルから検出された。Satoh et al.(2002)。乳癌では、RASSF1A CpGアイランドにおいて、異なる分布のメチル化が検出され、メチル化は、第1エクソンから、プロモーター領域へと次第に広がっていく場合がある。Yan et al.(2003)、及びStrunnikova et al.(2005)。RASSF2は、CpGアイランドの5’及び3’縁部において、高頻度のメチル化を有し、転写開始部位の付近でより低い頻度のメチル化を有する。Endoh et al.(2005)。
【0005】
子宮内膜癌においては、4つのGSTP1の設計が14%〜24%の感度を示したが、サンプルの大きさが小さすぎたために、これらの差異が正しいかどうかは決定できなかった(Chan et al.2005)。2つのアッセイの設計が前立腺癌の発見の感度を増加させたが(Nakayama et al.(2003))、双方の設計が、同じリバースプライマーを共有していたために、調査された領域にかなりの重複があった。p16、E−カドヘリン、サイクリンA1、及びサイトグロビンに関する、異なるCpG配列において、パーセントメチル化に差異が生じる。Shaw et al.(2006)。乳癌では、CpG部位において異なるメチル化レベルが存在している。Yan et al.(2003)。
【0006】
腫瘍MLH1 RNA発現と、MLH1 DNAメチル化との間には、逆相関関係が存在する。Yu et al.(2006)。肺癌細胞株においては、メチル化陽性サンプルは、より低いレベルのDAPK遺伝子のRNA発現を呈した。Toyooka et al.(2003)。しかしながら、これらの研究はメチル化の一部位のみを調査していたために、CpGアイランドの複数の位置でのRNA発現に関する相関関係を決定できなかった。転写開始部位を囲むコア領域は、プロモーターメチル化に関する情報価値のある代替である。Eckhardt et al.(2006)。
【0007】
食道の扁平上皮細胞癌では、個別の遺伝子におけるメチル化の頻度は、正常から浸潤癌にかけて増加した(Guo et al.2006)。TMS1(p=0.002)、DcR1(p=−0.01)、DcR2(p=0.03)、及びCRBP1(p=0.03)のメチル化はグリーソンスコアと相関し、CRBP1のメチル化は、より高い段階(p=0.0002)と相関し、Reprimo(p=0.02)及びTMS1(p=0.006)のメチル化はより高い(>8ng/ml)PSAレベルと相関する。Suzuki et al.(2006)。メチル化状態は、子宮内膜癌における子宮筋層への浸潤の程度と相関した。患者の、腫瘍に隣接する正常な組織におけるASCメチル化の著しく(p=0.04)より高い頻度は、生化学的な再発と関連付けられ、侵攻性疾患との相関を示唆する。Chan et al.(2005)。RARb2、PTGS2、及びEDNRBは、前立腺全摘出術を受けている患者において、予後診断的な価値を有し得る。Bastian et al.(2007)。
【0008】
前立腺癌においてメチル化しているものとして既知の2つの遺伝子、GSTP1及びRARb2の複数の部位で、メチル化特異的PCR(MSP)アッセイが行われた。Lee et al.(1994)、Harden et al.(2003)、Jeronimo et al.(2004)、及びNakayama et al.(2001)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、GSTP1配列の塩基834〜1319に及ぶCpGアイランド(登録番号X08508)に基づくアッセイが提示される。これらの新しい設計は、先行技術(本明細書を通じてバージョン1と称される)のものと重複しない。新しいバージョンは、本明細書を通じてバージョン2及びバージョン3と称される。これらのアッセイは、臨床的感度及び分析的感度を大幅に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前立腺癌の存在の指標となり得る、いくつかの遺伝子のプロモーター配列における高メチル化の存在を発見する分子アッセイは、既知である。1つのこのような遺伝子はGSTP1であり、このアッセイは、例えば、本明細書においてその全体を組み込まれる米国特許公開第20080254455号に記載されている。このアッセイは、プロモーターのCpGアイランドのシトシンのメチル化による、遺伝子の後成的サイレンシングを焦点とし、これによって遺伝子発現は、著しく下方制御されるか、又は完全に排除される。メチル化特異的PCR(MSP)アッセイは、メチル化シトシンと非メチル化シトシンとを区別することによって、メチル化配列を発見するように設計されている。PCR反応で使用される前に、ゲノムDNAは重亜硫酸修飾に供され、重亜硫酸修飾は非メチル化DNAでは全てのシトシンをウラシルに変換するが、メチル化DNAでは、グアニンに先行しないシトシンのみがウラシルに変換される。(CpGジヌクレオチドにおいて)グアニンに先行する全てのシトシンは、シトシンのままである。
【0011】
GSTP1プロモーターの高メチル化、及びその前立腺癌との関連は、文献中に広範に記載されている。本発明のアッセイは、GSTP1のプロモーター配列におけるメチル化の発見のための、大幅に改善されたアッセイである。新しいアッセイはより感度が高く、特異的であり、その同じ遺伝子に対する2つ以上の単位複製配列の組み合わせの使用は、信頼性を向上する。本発明は、新しい設計、及びそれらの、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルでの既存の設計との比較について記載する。分子アッセイの高い感度及び高い特異性は、FFPE組織からの分解したDNA、尿中に流れた極僅かな前立腺細胞からのDNA、加えて前立腺癌の患者の血中の浮遊DNAで行うときに、より有益である。
【0012】
ゲノム内のタンパク質、ペプチド、又はmRNAを発現する可能性を有する核酸配列(「遺伝子」と称される配列)の修飾が単独で示され、タンパク質、ペプチド、又はmRNAが所与の細胞内で発現するかどうかを決定する。タンパク質、ペプチド、又はmRNAを発現することのできる所与の遺伝子が発現するかどうか、及び仮に発現したとして、このような発現がどの程度生じるかは、様々な複雑な要因によって決定される。これらの要因の理解及び評価の難しさには無関係に、遺伝子発現、又は修飾パターンの分析は、腫瘍形成、転移、アポトーシス、及び他の臨床的に関連する現象などの、重要な事象の発生に関する有用な情報を提供し得る。遺伝子の活性又は不活性の程度の相対的な目安は、遺伝子発現又は修飾特性に見出すことができる。
【0013】
サンプルは、メチル化発見のために好適なゲノムDNAを含有する、任意の生体液、細胞、組織、器官、又はその部分であり得る。試験サンプルは、腫瘍性細胞、例えば、結腸、直腸、乳房、卵巣、前立腺、腎臓、肺、血液、脳、又は腫瘍性細胞を含むか、若しくは含むものと推測される他の器官若しくは組織からの細胞を含むか、又は含むものと推測され得る。この用語は、個体に存在するサンプル、加えて、個体から得られるか、又は個体に由来するサンプルを含む。例えば、サンプルは、生検によって得られる非検査物の組織学的な区分であるか、又は組織培養に配置されるか若しくはこれに適合される細胞であり得る。サンプルは更に、細胞内区画、若しくは抽出物、又は粗核酸分子若しくは実質的に純粋な核酸分子、又はタンパク質標本であり得る。基準サンプルは、基準レベルを設定するために使用され得るので、したがって試験サンプルが比較される、特定の表現型特性を有することを満たす供給源組織から得ることができる。
【0014】
遺伝子修飾プロファイルを決定するためのサンプルは、当該技術分野において既知の任意の方法で得ることができる。サンプルは、DNA、細胞株、生検、体液、例えば、血液、唾液、糞便、尿、脳脊髄液、精液、パラフィンに包摂される組織、例えば、目、腸、腎臓、脳、心臓、前立腺、肺、乳房、又は肝臓からの組織、組織学的な対象のスライド、及びこれらの全ての可能な組み合わせが挙げられるがこれらに限定されないゲノムDNAの通常の供給源である、あらゆる種類の生物学的起源から、標準的な技術に従って得ることができる。好適な生物学的サンプルは、診断目的のマーカーの処方の後に調達及び獲得することができる。サンプルは、症状を有する、又は症状の表現型を有するものと予測される細胞の集合から、又は組織から得ることができる。ゲノムDNAは、サンプルは対象とする組織のみを、最小限の汚染及び最小限のDNA断片化で含むような、高品質の供給源から得ることができる。
【0015】
サンプル調製は、患者サンプルの収集を必要とする。本発明の方法で使用される患者サンプルは、異常細胞、例えば、結腸サンプルの原発腫瘍から、又は切除縁からとられる上皮細胞を含むと推測されるものである。レーザ捕捉顕微解剖(LCM)技術は、研究する細胞を選択する1つの方法であり、細胞型の不均一性によって生じるばらつきを最小化する。その結果、正常細胞と癌細胞との間の遺伝子の発現の、中程度の、又は僅かな変化を容易に発見することができる。サンプルはまた、末梢血から抽出される、循環上皮細胞を含む場合もある。これらは、多くの方法に従って得ることができるが、最も好ましい方法は、米国特許第6136182号に記載される磁気分離技術である。一度対象とする細胞を含むサンプルが得られると、適切なポートフォリオの遺伝子に関し、DNAが抽出され、増幅され、シトシンメチル化プロファイルが得られる。
【0016】
DNAメチル化、及びこれに関する方法は、例えば、米国特許公開番号第20020197639号、同第20030022215号、同第20030032026号、同第20030082600号、同第20030087258号、同第20030096289号、同第20030129620号、同第20030148290号、同第20030157510号、同第20030170684号、同第20030215842号、同第20030224040号、同第20030232351号、同第20040023279号、同第20040038245号、同第20040048275号、同第20040072197号、同第20040086944号、同第20040101843号、同第20040115663号、同第20040132048号、同第20040137474号、同第20040146866号、同第20040146868号、同第20040152080号、同第20040171118号、同第20040203048号、同第20040241704号、同第20040248090号、同第20040248120号、同第20040265814号、同第20050009059号、同第20050019762号、同第20050026183号、同第20050053937号、同第20050064428号、同第20050069879号、同第20050079527号、同第20050089870号、同第20050130172号、同第20050153296号、同第20050196792号、同第20050208491号、同第20050208538号、同第20050214812号、同第20050233340号、同第20050239101号、同第20050260630号、同第20050266458号、同第20050287553、並びに米国特許番号第5786146号、同第6214556号、同第6251594号、同第6331393号、及び同第6335165号に記載される。
【0017】
DNA修飾キットは市販されており、これらは非メチル化シトシンを有する精製ゲノムDNAを、非メチル化シトシンを有さず、追加のウラシルを有するゲノムへと変換する。この処理は、重亜硫酸塩により促進される脱アミノ反応、及び水酸化ナトリウムによって促進される脱スルホン工程からなる2工程の化学処理である。典型的には脱アミノ反応は、液体として行われ、氷上でインキュベートして、次にカラム結合緩衝液を加えることによって終了する。固相の結合及び洗浄に続きDNAが溶出されて、脱スルホン反応が液体で行われる。エタノールを加えることで反応は終了し、修飾DNAが沈殿によって洗浄される。しかしながら、双方の市販のキット(Zymo及びChemicon)が脱スルホン反応を行う一方で、DNAはカラム上に結合され、カラムを洗浄することによって反応は終了する。処理されたDNAはカラムから溶出されて、MSPアッセイのために準備される。
【0018】
DNAを単離する工程は、標準的なプロトコルに従って行うことができる。DNAは、任意の好適な本体サンプル、例えば、組織(採取したてのサンプル、又は固定サンプル)、血液(血清、及び血漿を含む)、精液、尿、リンパ液、又は骨髄からの細胞から単離されてもよい。いくつかの種類の本体サンプル、特に、血液、精液、尿、及びリンパ液などの流体サンプルでは、ある細胞型(例えば、前立腺細胞)の濃度を高めるために最初にサンプルを処理にかけることが好ましい場合がある。濃度を高めるための、1つの好適なプロセスは、磁気ビーズ及び磁気細胞分離装置と組み合わされた、細胞特異的な抗体の使用により、必要とされる細胞を分離することを含む。
【0019】
増幅工程の前に、単離されたDNAは、好ましくは、非メチル化シトシンがウラシルに、又はアデニンと塩基対を形成することができる別のヌクレオチドに変換される一方で、メチル化シトシンは変化しないか、又はグアニンと塩基対を形成することのできるヌクレオチドに変換されるように、処理される。
【0020】
好ましくは、単離されたDNAの処理及び増幅に続き、非メチル化シトシンが、ウラシルに、又はアデニンと塩基対を形成することができる別のヌクレオチドに有効に変換されたこと、及びメチル化シトシンが変更されないか、又はグアニンと塩基対を形成することができる別のヌクレオチドに有効に変換されたことを実証するために試験が行われる。
【0021】
好ましくは、単離されたDNAの処理は、標準的なプロトコルに従い、単離されたDNAを重亜硫酸塩と反応させることを含む。重亜硫酸塩処理では、非メチル化シトシンはウラシルに変換され、メチル化シトシンは変化しない。非メチル化シトシンがウラシルに変換され、メチル化シトシンは変化しないままであることの実証は、(i)処理され増幅されたDNAのアリコートを、重亜硫酸塩処理によって生成されるか、これに抵抗する制限部位を認識する、好適な制限酵素で制限する工程と、(ii)電気泳動によって制限酵素切断パターンを評価する工程とによって達成され得る。あるいは、実証は、非メチル化シトシンがウラシルに変換され、メチル化シトシンが変化しない、処理されたDNAの領域を標的とする特異的オリゴヌクレオチドを使用する、ディファレンシャルハイブリダイゼーションによって達成され得る。増幅工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、リガーゼ連鎖反応増幅などを含み得る。
【0022】
好ましくは、増幅工程は、PCR増幅のための標準的なプロトコルに従って行われ、この場合、反応物は、典型的には好適なプライマー、dNTP、及び熱安定性のDNAポリメラーゼであり、条件は様々な温度及び持続時間の周期であり、交互の二本鎖の変性の変化、プライマーのアニーリング(例えば、高いストリンジェンシーの条件下で)、及び続くDNA合成をもたらす。
【0023】
重亜硫酸塩処理されたDNAでの、選択的なPCR増幅を達成するために、プライマー及び条件を使用して、異常なシトシンメチル化の部位を含む標的領域と、異常なシトシンメチル化の部位が存在しない標的領域とを区別してもよい。異常なシトシンメチル化が生じる部位がメチル化される、標的領域のみの増幅のために、重亜硫酸塩処理されたDNAにアニールするために使用されるプライマー(即ち、リバースプライマー)は、メチル化シトシンと塩基対を形成する部位にグアニンヌクレオチドを含み得る。このようなプライマーは、単離されたDNAの標的領域が、異常なシトシンメチル化が生じる部位において非メチル化シトシンヌクレオチド(これは、重亜硫酸塩によってウラシルに変換されるはずである)を有する場合、ミスマッチを形成する。反対側の鎖にアニーリングするために使用されるプライマー(即ち、フォワードプライマー)は、重亜硫酸塩処理されたDNAのメチル化シトシンの部位に対応する任意の部位でシトシンヌクレオチドを含み得る。
【0024】
増幅の工程は、GST−Pi遺伝子及び/又はその調節隣接配列の内部の標的領域を増幅するために使用される。調節隣接配列は、GST−Pi遺伝子の隣接配列5’及び3’としてみなされることがあり、これは、単独又は別の同様の要素との組み合わせで、GST−Pi遺伝子の発現を調節する要素を含む。
【0025】
異常なシトシンメチル化の部位は、選択的な増幅を含まない方法によって、疾患又は状態の診断又は予後診断の目的で検出され得る。例えば、オリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチドプローブは、ハイブリダイゼーション研究での用途において(例えば、サザンブロッティング)重亜硫酸塩処理されたDNAとの使用のために設計されてよく、かかるプローブは適切なストリンジェンシーの条件下で、シトシンの異常なメチル化部位を含むDNAにのみ選択的にハイブリダイズする。あるいは、適切に選択された情報価値のある制限酵素が使用されて、シトシンの異常なメチル化部位を含むDNAと含まないDNAとを区別する、制限酵素切断パターンを生じ得る。
【0026】
本発明の方法はまた、核酸を含有する被検査物を非メチル化シトシンを修飾する剤と接触させる工程と、CpG特異的オリゴヌクレオチドプライマーの手段によって、被検査物中のCpG含有核酸を増幅させる工程と、メチル化核酸を発見する工程とを含み得る。好ましい修飾は、非メチル化シトシンの別のヌクレオチドへの15の変換であり、これは非メチル化シトシンをメチル化シトシンから区別する。好ましくは、剤は非メチル化シトシンをウラシルに修飾し、これは重亜硫酸ナトリウムであるが、非メチル化シトシンを修飾するがメチル化シトシンを修飾しない他の剤もまた使用され得る。重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)修飾が最も好ましく、シトシンの5,6−二重結合と容易に反応するが、メチル化シトシンとの反応は弱い。シトシンは重亜硫酸塩イオンと反応して脱アミノ化を受けやすいスルホン化シトシン反応中間体を形成し、スルホン化ウラシルを生じる。スルホン酸基は、アルカリ性条件下で取り除くことができ、ウラシルの形成を生じる。ウラシルは、Taqポリメラーゼによってチミンとして認識され、それによってPCRの際に、得られる産物は開始テンプレートの5−メチルシトシンが生じる位置のみにシトシンを含む。スコーピオンリポーター及び試薬、並びに他の発見システムが、同様に、この方法で処理された修飾された非検査物を、修飾されていない非検査物から区別する。
【0027】
修飾(例えば、重亜硫酸塩で)の後に、被検査物中のCpG含有核酸の増幅のために本発明で使用されるプライマーは、特に、未処理DNAと、メチル化DNAと、非メチル化DNAとを区別する。メチル化特異的PCR(MSPCR)では、非メチル化DNAのプライマー又はプライミング配列は、好ましくは3’CG対にTを有し、これをメチル化DNA内に保持されるCから区別し、アンチセンスプライマーのために相補体が設計される。非メチル化DNAのMSPプライマー又はプライミング配列は、通常、配列中に比較的少ないC又はGを含むが、これは、Cがセンスプライマー中に不在となり、Gがアンチセンスプライマー中に不在となるためである(CはU(ウラシル)へと修飾され、これは、増幅産物中でT(チミジン)として増幅される)。
【0028】
本発明のプライマーは、多型遺伝子座の多量の核酸に基づいて、特異的な重合開始を提供するために、十分な長さ及び適切な配列のオリゴヌクレオチドである。適切なプローブ又はレポーターに曝露されたとき、増幅された配列は、メチル化状態、ひいては診断情報を明らかにする。好ましいプライマーは、最も好ましくは、プライマー伸長産物の合成を開始することができる、8個以上のデオキシリボヌクレオチド、又はリボヌクレオチドであり、これは、多型遺伝子座鎖に対して実質的に相補的である。合成を行うことができる環境条件としては、ヌクレオシド三リン酸、及び重合のための試薬、例えば、DNAポリメラーゼの存在、並びに好適な温度及びpHが挙げられる。プライマー又はプライミング配列のプライミング区分は、好ましくは、増幅の最大限の効率性のために好ましくは1本鎖であるが、二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは、伸長産物を調製するために使用される前に、その鎖を単離するように最初に処理される。プライマーは、重合のための誘発剤の存在下において、伸長産物の合成を準備するために十分に長くなくてはならない。プライマーの正確な長さは、温度、バッファ、カチオン、及びヌクレオチド組成物などの要因によって異なる。オリゴヌクレオチドプライマーは、最も好ましくは約12〜20のヌクレオチドを含むが、これらは、好ましくは周知の設計ガイドライン又は規則に従って、より多い、又はより少ないヌクレオチドを含んでもよい。プライマーは、増幅されるゲノム遺伝子座の各鎖に対して実質的に相補的である様に設計され、上記のように適切なG又はCヌクレオチドを含む。これは、重合のための試薬が作用することを可能にする条件下において、プライマーが、これらの各鎖とハイブリダイズするために十分に相補的でなくてはならないことを意味する。換言すれば、プライマーは、ゲノム遺伝子座をハイブリダイズし、その増幅を可能にするために、5’及び3’隣接配列と十分な相補性を有するべきである。プライマーは、増幅プロセスにおいて利用される。即ち、反応(好ましくは、酵素連鎖反応)は、含まれる反応工程の数に対して、より多くの標的遺伝子座を生成する。最も好ましい実施形態では、反応は、指数関数的に大きな量の標的遺伝子座を生成する。これらのような反応としては、PCR反応が挙げられる。典型的には一方のプライマーは、遺伝子座の負(−)の鎖と相補的であり、他方は、正(+)の鎖と相補的である。変性した核酸にプライマーをアニーリングし、続いて、酵素、例えば、DNAポリメラーゼI(Klenow)、及びヌクレオチドの大きな断片で伸長することにより、新たに合成された、標的遺伝子座配列を含む正鎖及び負鎖が生じる。連鎖反応の産物は、別個の核酸二重鎖であり、末端は利用される特異的プライマーの端部と対応する。
【0029】
プライマーは、自動化された方法を含む、従来のホスホトリエステル法、及びホスホジエステル法などの、任意の好適な方法を使用して調製され得る。1つのこのような自動化された実施形態では、ジエチルホスホラミダイトが、出発物質として使用され、Beaucage et al.(1981)によって記載されるように合成され得る。修飾された固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成するための方法は、米国特許第4458066号に記載されている。
【0030】
精製された、又は未精製の、尿又は尿道洗浄からとられる任意の核酸被検査物が、開始核酸として使用され得るが、ただしこれは、標的遺伝子座(例えば、CpG)を含む特異的核酸配列を含むか、又は含むことが予測される。したがって、プロセスは、例えば、DNA又はメッセンジャーRNAを含むRNAを利用してもよい。DNA又はRNAは、1本鎖又は二本鎖であってよい。RNAがテンプレートとして使用される場合、テンプレートをDNAに逆転写するために最適な酵素及び/又は条件が利用される。加えて、各1本の鎖を含む、DNA−RNAハイブリッドが利用されてもよい。核酸の混合物が利用されてもよく、又は同じ若しくは異なるプライマーを使用する、本明細書における先の増幅反応で生成される核酸が同様に利用されてもよい。増幅される特異的核酸配列、即ち標的遺伝子座は、より大きな分子の一部であってもよく、又は特定の配列が全体の核酸を構成するように、別個の分子として最初に存在してもよい。
【0031】
抽出されたサンプルが不純である場合、これは、サンプルの細胞、流体、組織、又は動物細胞膜を開き、核酸の鎖を曝露及び/又は分離するために有効な量の試薬で、増幅の前に処理されてもよい。鎖を曝露、及び分離するための、この溶解及び核酸変性工程は、はるかに多くの増幅が容易に生じることを可能にする。
【0032】
サンプルの標的核酸配列が二本鎖を含む場合、核酸の鎖を、これがテンプレートとして使用される前に分離することが必要である。鎖の分離は、分離工程として、又はプライマー伸長産物の合成と同時的に生じ得る。この鎖の分離は、物理的、化学的、又は酵素による手段を含む、様々な好適な変性条件を使用して達成され得る。核酸の鎖を分離するための1つの物理的方法は、核酸をこれが変性するまで加熱することを含む。典型的な熱変性は、約80〜105℃の範囲の温度、最大10分間を含み得る。鎖の分離はまた、ヘリカーゼとして既知の酵素の種類からの酵素によって、又はヘリカーゼ活性を有しriboATPの存在下においてDNAを変性させるものとして既知の酵素RecAによって、誘発され得る。ヘリカーゼを使用する、核酸の鎖の分離のために好適な反応条件は、Kuhn Hoffmann−Berling(1978)により記載されている。RecAを使用するための技術は、C.Radding(1982)に確認することができる。これらの技術の微調整もまた、現在では周知である。
【0033】
核酸の相補的な鎖が分離される場合、核酸がもともと二本鎖であったか、又は1本鎖であったかにかかわらず、分離された鎖は、更なる核酸鎖の合成のためにテンプレートとして使用できる状態である。この合成は、プライマーのテンプレートへのハイブリダイゼーションを生じさせる条件下で行われる。一般に、合成は、緩衝水溶液中で、好ましくはpH7〜9、最も好ましくは約8で生じる。モル過剰(ゲノム核酸では、通常約108:1(プライマー:テンプレート))の2つのオリゴヌクレオチドプライマーが、好ましくは、分離されたテンプレート鎖を含むバッファに加えられる。本発明のプロセスが診察用途に使用される場合、相補的な鎖の量は既知でないことがあり、そのため、相補的な鎖の量に関連するプライマーの量は、常に確実に決定することはできない。しかしながら、実際問題として、加えられるプライマーの量は一般的に、増幅される配列が複雑な長鎖の核酸の鎖の混合物中に含まれる場合には、相補的な鎖(テンプレート)の量に対しモル過剰となる。大きなモル過剰は、プロセスの効率性を改善するために好ましい。
【0034】
デオキシリボヌクレオシド三リン酸dATP、dCTP、dGTP、及びdTTPが、プライマーとは別々に、又は一緒に、十分な量で合成混合物に加えられ、得られた溶液は約90〜100℃で最大10分間、好ましくは1〜4分間加熱された。この加熱時間の後、溶液を室温まで冷却させる(これは、プライマーハイブリダイゼーションのために好ましい)。冷却した混合物に、プライマー伸長反応を生じるために適切な剤(「重合剤」)を加え、当該技術分野において既知の条件下で反応を生じさせる。重合剤はまた、他の試薬と(これが熱安定性であれば)共に加えられてもよい。この合成(又は増幅)反応は、室温から、最高で重合剤が機能しなくなる温度までで生じ得る。重合剤は、プライマー伸長産物の合成を達成するように機能する任意の化合物又は系、好ましくは酵素であり得る。この目的のための好適な酵素は、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、他の利用可能なDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼ変異体、逆転写酵素、及び熱安定性酵素(例えば、変性を生じるために十分に高い温度に供した後に、プライマー伸長を生じる酵素)を含む他の酵素が挙げられる。好ましい剤は、Taqポリメラーゼである。好適な酵素は、各遺伝子座の核酸鎖に対して相補的であるプライマー伸長産物を形成するように、好適な方法でヌクレオチドの化合を促進する。一般的に合成は、各プライマーの3’末端で開始し、テンプレート鎖に沿って5’方向で、合成が終了するまで進み、異なる長さの分子を生成する。しかしながら、上記の同じプロセスを使用して、5’末端で合成を開始し、他方に進む重合剤も存在し得る。
【0035】
最も好ましくは、増幅方法はPCRによる。別の手段によって、本発明のプライマーを使用してPCRによって増幅されるメチル化及び非メチル化遺伝子座が、同様に増幅されるならば、かかる別の増幅方法も利用され得る。このような1つの最も好ましい実施形態では、アッセイはネステッドPCRとして実行され得る。ネステッドPCR法では、2つ以上の段階を有するポリメラーゼ連鎖反応が行われる。第1段階のポリメラーゼ連鎖反応では、5’及び3’の位置の、特定の第1標的ヌクレオチド配列に隣接する上流及び下流プライマーから構成される、一対の外側オリゴヌクレオチドプライマーがそれぞれ使用されて、この第1配列を増幅する。続く段階では、やはり上流及び下流プライマーからなる、内部の、又はネステッドオリゴヌクレオチドプライマーの第2のセットが使用されて、第1標的ヌクレオチド配列内に含まれるより小さな第2標的ヌクレオチド配列を増幅する。
【0036】
上流及び下流内部プライマーは、それぞれ、5’及び3’位置で第2標的ヌクレオチド配列と隣接する。隣接するプライマーは、PCRプロセス中に増幅される、二本鎖標的ヌクレオチド配列の、3’末端位置の区分に対して相補的である。第1段階ポリメラーゼ連鎖反応における増幅の標的である遺伝子の区域内の第1ヌクレオチド配列は、5’上流位置の上流プライマー、及び3’下流位置の下流プライマーと隣接する。第1標的ヌクレオチド配列、及びしたがって第1段階ポリメラーゼ連鎖反応の増幅産物は、外側プライマー対の、それぞれ、上流プライマー及び下流プライマーの、5’上流ハイブリダイゼーション位置と3’下流ハイブリダイゼーション位置との間の塩基対距離によって決定される、予想される塩基対長さを有する。
【0037】
第1段階ポリメラーゼ連鎖反応の末端では、得られる混合物のアリコートが、第2段階のポリメラーゼ連鎖反応に繰り越される。これは、好ましくは、Cepheidからの「SMART CAP」装置などの、封止、又は密閉された容器の中で自動的に行われる。この第2段階の反応で、第1段階の反応の産物は、特異的な内部、又はネスト化プライマーと組み合わされる。これらの内部プライマーは、第1の標的ヌクレオチド配列内のヌクレオチド配列から得られ、第1標的ヌクレオチド配列内に含まれる第2のより小さな標的ヌクレオチド配列と隣接する。この混合物は、最初の変性、アニーリング、及び伸長工程に供され、続いて、上記のように熱循環させて、第2標的ヌクレオチド配列の反復的な変性、アニーリング、及び伸長又は複製を可能にする。第2標的ヌクレオチド配列は、5’上流位置の上流プライマー、及び3’下流位置の下流プライマーと隣接する。第2標的ヌクレオチド配列、及びしたがって第2段階PCRの増幅産物はまた、予測される塩基対長さを有し、これは、それぞれ、内部プライマー対の上流プライマー及び下流プライマーの、5’上流ハイブリダイゼーション位置と、3’下流ハイブリダイゼーション位置との間の塩基対間隔によって決定される。
【0038】
増幅産物は、好ましくは、米国特許第468319号に記載されるように、産物に特異的なプローブ又はレポーターで、メチル化又は非メチル化したものとして特定される。プローブ及びレポーターの分野における、ポリヌクレオチドを発見するための進歩は当業者には周知である。
【0039】
任意により、核酸のメチル化パターンは、制限酵素消化、及びサザンブロット分析などの他の技術によって確認され得る。5’CpGメチル化を発見するために使用され得るメチル化感度制限エンドヌクレアーゼの例としては、SmaI、SacII、EagI、MspI、HpaII、BstUI、及びBssHIIが挙げられる。
【0040】
本発明の別の態様では、メチル化率が使用される。これは、達成されるマーカーの増幅したメチル化種の量と、増幅した基準マーカー、又は増幅した非メチル化マーカー区域の量との比率を決定することによって行われ得る。これは、定量的リアルタイムPCRを使用して最も良好に行われる。設定された、又は既定のカットオフ値又は閾値を超える比率は、高メチル化し、癌(GSTP1の場合の前立腺癌)などの増殖性の疾患を有することの指標であるものとみなされる。既知の方法によってカットオフ値が設定され、この様な方法が少なくとも2組のサンプルに使用される(既知の異常な状態のものと、既知の正常な状態のもの)。本発明の基準マーカーはまた、内部標準として使用され得る。基準マーカーは、好ましくは、サンプルの細胞内で構造的に発現される細胞、例えば、βアクチンである。
【0041】
設定された、又は既定の値(カットオフ値又は閾値)はまた、比率が使用されない本発明による方法においても設定及び使用される。この場合、カットオフ値は、一定の基準値、例えば、正常なサンプル、又は癌が臨床的に重要でない(臨床的に意義のある状態で進行しない、又は侵攻性でないことが既知である)サンプルにおけるメチル化の量又は程度、に対するメチル化の量又は程度に関連して決定される。これらのカットオフ値は、メチル化率に基づく方法におけるこれらの使用の場合と同じように、既知の方法に従って決定される。
【0042】
マーカーと関連する遺伝子の、低水準の転写は、多くの場合、ポリヌクレオチド配列及び/又は発現制御配列(例えば、プロモーター配列)の特定の要素の高メチル化の結果であるため、これらの配列にマッチするよう調製されたプライマーが調製された。したがって、本発明は、特定の領域、好ましくはマーカーの発現制御、又はプロモーター領域内のメチル化を発見することによって、細胞増殖性疾患を発見又は診断する方法を提供する。これらの領域のメチル化を発見するために有用なプローブは、このような診断方法又は予後診断方法において有用である。
【0043】
本発明のキットは、様々な構成要素を備えるように構成され得るが、ただし、これらは全て、少なくとも1つのプライマー、又はプローブ、又は検出分子(例えば、スコーピオンレポーター)を含む。一実施形態では、キットは、高メチル化マーカー区分を増幅及び発見する試薬を含む。任意により、キットは、サンプルから核酸を抽出するための、サンプル調製試薬及び/又は物品(例えば、チューブ)を含む。
【0044】
好ましいキットでは、対応するPCRプライマーセットなどの1−チューブMSPに必要な試薬、Taqポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼ、及び加水分解プローブ又は分子指標などの好適な検出試薬、が含まれる。任意による好ましいキットでは、検出試薬は、スコーピオンレポーター又は試薬である。二本鎖DNAに特化した単一ダイプライマー又は蛍光染料、例えば、エチジウムブロマイドもまた使用され得る。プライマーは好ましくは、高い濃度を生じる量である。キット内の追加的な材料としては、好適な反応チューブ又はバイアル瓶、バリア組成物、典型的にはワックスビーズ(任意によりマグネシウムを含む)、必要なバッファ及びdNTPなどの試薬、対照核酸及び/又は任意の追加的なバッファ、化合物、補助因子、イオン構成成分、タンパク質及び酵素、ポリマー、MSP反応で使用され得る同様のものが挙げられる。任意により、キットは、核酸抽出試薬及び材料を含む。
【0045】
バイオマーカーは、指示されるマーカー核酸/タンパク質の任意のしるしである。核酸は、非制限的に、核、ミトコンドリア(ホモプラスミー、ヘテロプラスミー)、ウイルス、バクテリア、真菌、マイコプラズマなどを含むいずれかの既知のものであり得る。しるしは、直接又は間接的であり、生理的パラメーターを付与された遺伝子の過剰発現又は不足発現を、内部対照群、プラシーボ、正常な組織、又は別の癌との比較において測定することができる。バイオマーカーとしては、非制限的に、核酸及びタンパク質(双方とも、過剰及び不足発現、並びに直接及び間接的)が挙げられる。バイオマーカーとしての核酸の使用としては、非制限的に、DNA増幅、欠失、挿入、複製、RNA、マイクロRNA(miRNA)、ヘテロ接合性の消失(LOH)、単一ヌクレオチド多型(SNPs,Brookes(1999))、直接的に又はゲノム複製の際のいずれかにおけるコピー数多型(CNP)、マイクロサテライトDNA、後成的変化、例えば、DNA低メチル化又は高メチル化、並びにFISHの測定を含む、当該技術分野において既知の任意の方法が挙げられる。バイオマーカーとしてのタンパク質の使用としては、非制限的に、量、活性、修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化反応、ADP−リボシル化、ユビキチン化など)、又は免疫組織化学(IHC)、及び代謝回転の測定を含む、当該技術分野において既知の任意の方法が挙げられる。他のバイオマーカーとしては、画像化、分子プロファイリング、細胞計数、及びアポトーシスマーカーが挙げられる。
【0046】
マーカー遺伝子は、配列番号によって指定される配列に対応する(遺伝子がこの配列を含む場合)。遺伝子区分又は断片は、これが、基準配列、又はその相補体の一部を、これが遺伝子の配列であるものとして見分けるために、十分に含む場合、このような遺伝子の配列に対応する。遺伝子発現産物は、そのRNA、mRNA、又はcDNAがこのような配列(例えば、プローブ)を有する組成物にハイブリダイズする場合には、このような配列に対応し、ペプチド又はタンパク質の場合には、これは、かかるmRNAによってコードされる。遺伝子発現産物の区分又は断片は、これが基準遺伝子発現産物、又はその相補体の一部を、これが遺伝子又は遺伝子発現産物の配列であるものとして見分けるために十分に含む場合、このような遺伝子又は遺伝子発現産物の配列に対応する。
【0047】
本明細書において記載され、請求される、発明の方法、組成物、物品、及びキットは、1つ以上のマーカー遺伝子を含む。「マーカー」、又は「マーカー遺伝子」は、本明細書を通じて、その過剰発現又は不足発現が、指標又は組織型と関連するいずれかの遺伝子と対応する、遺伝子及び遺伝子発現産物を指すものとして使用される。
【0048】
遺伝子発現プロファイルを決定するための好ましい方法としては、タンパク質又はペプチドをコードすることができる遺伝子によって生成されるRNAの量を決定することが挙げられる。これは、逆転写PCR(RT−PCR)、競合RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、示差表示RT−PCR、ノーザンブロット分析、及び他の関係する試験によって達成することができる。個別のPCR反応を使用するこれらの技術を実行することが可能であるが、mRNAから生成される相補的DNA(cDNA)又は相補的RNA(cRNA)を増幅し、マイクロアレイによってこれを分析することが最善である。多くの異なるアレイ配列、及びこれらの生成のための方法が、当業者には既知であり、例えば、米国特許第5445934号、同第5532128号、同第5556752号、同第5242974号、同第5384261号、同第5405783号、同第5412087号、同第5424186号、同第5429807号、同第5436327号、同第5472672号、同第5527681号、同第5529756号、同第5545531号、同第5554501号、同第5561071号、同第5571639号、同第5593839号、同第5599695号、同第5624711号、同第5658734号、及び同第5700637号に記載されている。
【0049】
マイクロアレイ技術は、数千の遺伝子の定常状態のmRNAレベルを同時に測定することを可能にし、それによって、制御されない細胞増殖の開始、停止、又は調節などの効果を同定するための強力なツールを提示する。2つのマイクロアレイ技術は現在幅広く使用されている。1つは、cDNAアレイであり、2つ目はオリゴヌクレオチドアレイである。これらのチップの構成には違いが存在するものの、実質的に全ての下流データ分析及び出力は同じである。これらの分析の結果は典型的には、マイクロアレイの既知の位置で核酸配列にハイブリダイズするサンプルからのcDNA配列を発見するために使用される、標識されたプローブから受信されるシグナルの強度の測定値である。典型的には、シグナルの強度は、サンプル細胞において発現するcDNA、ひいてはmRNAの量に比例する。多くのこのような技術が利用可能であり有用である。遺伝子の発現を決定するための好ましい方法は、米国特許第6271002号、同第6218122号、同第6218114号、及び同第6004755号に見出すことができる。
【0050】
発現レベルの分析は、このようなシグナル強度を比較することによって行われる。試験サンプルの遺伝子の発現強度と対照サンプルのそれとの比率マトリックスを生成することによって最良に行われる。例えば、異常組織からの遺伝子発現強度が、同型の良性又は正常な組織から生成される発現強度と比較され得る。これらの発現強度の比率は、試験サンプルと対称サンプルとの間の遺伝子発現における倍数変化を示す。
【0051】
選別は、起源部の腫瘍発生源部位に関連する要因の間の、各遺伝子の異なる発現の有意性の証拠に関する順位付けされたリストを生成する統計的試験に基づき得る。このような試験の例としては、ANOVA及びKruskal−Wallisが挙げられる。順位付けは、カットオフ値までの、このような重さの合計を、ある種類が別のものよりも優位であることを肯定する証拠として解釈するように設計されたモデルにおける重み付けとして使用され得る。本文献において記載される先の証拠もまた、重み付けを調整するために使用され得る。
【0052】
好ましい実施形態は、安定的な対照セットを特定し、すべてのサンプルにわたって、このセットをゼロ変動に合わせることによって、各測定値を正規化する。対照セットは、アッセイにおける系統的誤差により影響を受けても、このエラーとは無関係に変化しないことが既知である、いずれかの単一の内在性転写物、又は内在性転写物のセットとして定義される。全てのマーカーは、対照セットのいずれかの記述的統計値、例えば、平均値若しくは中央値、又は直接的な測定値のための、ゼロ変動を生成する、サンプル固有の係数によって調整される。あるいは、系統的誤差のみに関する対照の変動の前提が、正確でないとしても、生じる分類誤差は、正規化が行われた際により小さく、対照セットは依然として前述のように使用され得る。非内在性スパイクコントロールもまた有用であり得るが、好ましくない。
【0053】
遺伝子発現プロファイルは、様々な方法で表され得る。最も一般的には、未調整の蛍光強度、又は比率マトリックスをグラフィカルデンドログラム(dendogram)に配列させ、列が試験サンプルを示し、行が遺伝子を示す。同様の発現プロファイルを有する遺伝子が、互いに近位にあるように配列される。各遺伝子の発現比率が色で可視化される。例えば、1未満の比率(下方制御)はスペクトルの青色部分として顕れ、一方で1を超える比率(上方制御)はスペクトルの赤色部分として顕れる。「Genespring」(Silicon Genetics,Inc.)並びに「Discovery」及び「Infer」(Partek,Inc.)を含む、市販のコンピューターソフトウェアプログラムが、このようなデータを表示するために利用可能である。
【0054】
遺伝子発現を決定するタンパク質濃度の測定の場合には、当該技術分野において既知の方法が、これが十分な特異性及び感度を生じる限りにおいて好適である。例えば、タンパク質濃度は、タンパク質に特異的な抗体又は抗体断片と結合し、抗体と結合されたタンパク質の量を測定することによって測定され得る。抗体は、発見を促進するための、放射性試薬、蛍光性試薬、又は他の発見可能な試薬によって指標され得る。発見の方法としては、非制限的に、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び免疫ブロット技術が挙げられる。
【0055】
本発明の方法で使用された調節された遺伝子が、実施例で記載される。異なる方法で発現した遺伝子が、特定の起源の癌の患者内で、異なる起源からの癌の患者に対して、上方制御又は下方制御された。上方制御、及び下方制御は、一定の基準に対する遺伝子の発現の程度において、発見可能な差異(これを測定するために使用されるシステムのノイズの寄与以外)が見出されることを意味する、相対的な用語である。この場合、基準は、アルゴリズムに基づいて決定される。異常細胞中の対象とする遺伝子は次に、同じ測定方法を使用して、基準濃度に対して上方制御又は下方制御される。この関連において、疾患を有する、とは制御されない細胞の増殖を生じ、身体機能の適切な性能を中断若しくは阻害するか、又は阻害する可能性を有する身体の状態変化を指す。ある人の遺伝子型又は表現型のある態様が、疾患の存在と合致する場合、その人は疾患を有するものとして診断される。しかしながら、診断又は予後診断を行う行為は、疾患/状態の問題の決定、例えば、再発の可能性、治療の種類、及び治療の監視などの決定を含み得る。治療監視では、経時的な遺伝子の発現を比較して、遺伝子発現プロファイルが、正常な組織とより一致するパターンに変化したか、又は変化しつつあるかを決定することによって所与の治療経過の効果に関連して、臨床的判断が行われる。
【0056】
遺伝子が分類され、その結果その分類の中の一連の遺伝子に関して得られる情報が、臨床的に関連する判断、例えば、診断、予後診断、又は治療選択などを行うための確固とした基盤を提供し得る。これらの一連の遺伝子は、本発明のポートフォリオを作製する。ほとんどの診療マーカーがそうであるように、多くの場合、正しい医療判断を行うために十分な、最小限の数のマーカーを使用することが、好ましい。これは、更なる分析を待つことによる治療の遅延、加えて、時間及び資源の非生産的な使用を防ぐ。
【0057】
遺伝子発現ポートフォリオの設定の一方法は、資源ポートフォリオの設定において広範に使用される、平均分散アルゴリズムなどの、最適化アルゴリズムの使用による。この方法は、米国特許第20030194734号において詳細に記載される。本質的に、この方法は、それを使用するために受信されるリターン(例えば、生成されるシグナル)を最適化する一方で、リターンのばらつきを最小化する、一連の入力の設定を必要とする(財政適用における株式、本明細書における強度により測定される発現)。このような作業を行うための、多くの市販のソフトウェアプログラムが入手可能である。「Wagner Software」と称される「Wagner Associates Mean−Variance Optimization Application」が、本明細書を通じて好ましい。このソフトウェアは、効果的境界及び最適なポートフォリオを決定するために、「Wagner Associates Mean−Variance Optimization Library」からの機能を使用し、そしてMarkowitzセンスにおける最適ポートフォリオが好ましい。Markowitz (1952)。このタイプのソフトウェアの使用は、ソフトウェアがその意図された財政分析目的のために使用される場合、株式リターンの方法で入力として処理され、リスク測定値が使用されるように、マイクロアレイデータが変換され得ることを必要とする。
【0058】
ポートフォリオの選択のプロセスはまた、ヒューリスティックルールの用途を含み得る。好ましくはこのようなルールは、生態、及び臨床結果を生成するために使用される技術の理解に基づいて生成される。より好ましくは、これらは、最適化方法からの出力に適用される。例えば、ポートフォリオ選択の平均分散方法は、癌患者において異なる様式で発現された多くの遺伝子の、マイクロアレイデータに適用され得る。方法からの出力は、末梢血、加えて異常組織中において発現されたいくつかの遺伝子を含み得る遺伝子の最適化されたセットである。試験方法で使用されるサンプルが末梢血から得られ、癌の事例において異なる様式で発現された一定の遺伝子がまた、末梢血中で異なる様式で発現され得る場合、ポートフォリオが、末梢血中で異なる様式で発現されたものを除く、効果的境界から選択される、ヒューリスティックルールが適用され得る。当然、例えば、データ予備選択の間にルールを適用することにより、効果的な境界の形成の前にルールを適用することができる。
【0059】
必ずしも問題となっているバイオロジーと関係しない、他のヒューリスティックルールを適用することができる。例えば、記載されたポートフォリオの比率のみが特定の遺伝子又は遺伝子群によって表され得るようなルールを適用することができる。Wagner Softwareなどの市販のソフトウェアは、このような種類のヒューリスティックを容易に適合させる。これは、正確性及び精密性以外の要因(例えば、予測されるライセンス料)が、1つ以上の遺伝子を含めることの望ましさに影響する場合に有用であり得る。
【0060】
本発明の遺伝子発現プロファイルはまた、癌診断、予後診断、又は治療監視において有用な、他の非遺伝子診断方法と共に使用することができる。例えば、一定の状況では、上記の遺伝子発現の診断能力と、従来的なマーカー、例えば、血清タンパク質マーカー(e.g.,Cancer Antigen 27.29(“CA 27.29”))からのデータを組み合わせることが有益である。CA 27.29などの検体を含む、様々なマーカーが存在する。1つのこのような方法では、治療される患者から定期的に血液がとられ、上記の血清マーカーの1つについて酵素イムノアッセイに供される。マーカーの濃度が、腫瘍の再発、又は治療の失敗を示唆する場合、遺伝子発現分析を受けるサンプル源がとられる。疑わしい腫瘤が存在する場合、細針吸引(FNA)がとられ、腫瘤からとられる細胞の遺伝子発現プロファイルが、上記のように分析される。あるいは、組織サンプルが、腫瘍がその前に取り除かれた組織に隣接する領域からとられ得る。この手法は、他の試験手順が曖昧な結果を生じる場合に特に有用であり得る。
【0061】
核酸とタンパク質を分離する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、ワールドワイドウェブ上のAmbionウェブサイト、及び米国特許第20070054287号に見出されるRNAの説明を参照されたい。
【0062】
DNA分析は、非制限的に、メチル化、脱メチル化、核型、倍数性(異数性、多倍数性)、遺伝子完全性(ゲル又は分光測光法により評価される)、転座、突然変異、遺伝子融合、活性化、非活性化、1塩基多型(SNP)、コピー数、又は遺伝子構造を発見するための全体的な遺伝子増幅を含む、当該技術分野において既知のいずれかのものであり得る。RNA分析としては、非制限的に、q−RT−PCR、miRNA、又は転写後修飾を含む、当該技術分野において既知のいずれかが挙げられる。タンパク質分析としては、非制限的に、抗体発見、転写後修飾、代謝回転を含む、当該技術分野において既知のいずれかが挙げられる。タンパク質は、細胞表面マーカー、好ましくは、上皮型、内皮型、ウイルス型、又は細胞型であり得る。バイオマーカーは、ウイルス/細菌感染、損傷、又は抗原発現に関連し得る。
【0063】
本発明に従って作製されたキットは、遺伝子発現プロファイルを決定するための、形式を合わせたアッセイを含む。これらは、アッセイを行うために必要な材料、例えば、試薬を、並びにバイオマーカーを分析するための命令及び媒体の全て、又はいくつかを含み得る。
【0064】
本発明の物品としては、治療、診断、予後診断、及び他の方法で疾患を評価するために有用な遺伝子発現プロファイルの表示を含む。これらの特性表示は、コンピューター読み取り可能な媒体(磁気、光学など)などの機械によって自動的に読み取ることができる媒体に変換される。物品はまた、このような媒体における、遺伝子発現プロファイルを評価するための命令も含み得る。例えば、物品は、上記の遺伝子のポートフォリオの遺伝子発現特性を比較するためのコンピューター命令を有するCD−ROMを含んでもよい。物品はまた、その中にデジタル処理で記録される遺伝子発現プロファイルを有してもよく、それによってこれらは、患者サンプルからの遺伝子発現データと比較され得る。あるいは、特性は、異なる表現形式で記録されてもよい。図形的な記録が1つのそのような形式である。クラスタ化アルゴリズム、例えば、上記のPartek社からの「DISCOVERY」「INFER」ソフトウェアに組み込まれるものは、このようなデータの可視化を最も良好に補助することができる。
【0065】
本発明による製品の異なる種類の物品は、遺伝子発現特性を表すために使用される媒体又は形式を合わせたアッセイである。これらは、例えば、マイクロアレイを含む場合があり、この中で配列相補体、又はプローブがマトリックスに取り付けられ、これに、対象とする遺伝子の指標となる配列が結合し、それらの存在の読み取り可能な行列式を生成する。あるいは、本発明による物品は、ハイブリダイゼーション、増幅、及び癌を発見するための対象とする遺伝子の発現レベルの指標となるシグナル生成を行うための試薬キットにされ得る。
【0066】
本出願のGSTP1アッセイは、試験されるサンプルにおいて、大幅に改善されたアッセイ性能を示した。同じ遺伝子(GSTP1)の、2つ以上の設計の組み合わせが、非常に高い特異性を有する、臨床的感度の改善を示した。同じ遺伝子における2つのアッセイの組み合わせは、非常に高い特異性と共に、所与の多重構造(multiplex)において標的となるより少ない遺伝子でより良好な臨床的感度を達成するために、より複雑でない解決法を提供する。GSTP1のための複数アッセイ設計でのより良好なアッセイ性能は、かかる多重構造から他のマーカー遺伝子を除去する能力を提供し、これはより高い特異性へと繋がる。より高い特異性での、改善された臨床的感度は、より良好な負及び正の測定値を生成する。
【0067】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
2つの新しい設計(バージョン2及びバージョン3)が、既存の設計(バージョン1)と、FFPE組織サンプル中で比較される。これら全ての設計が、以下の表1に示される。
【表1】

【0069】
APC及びActinを有する三重アッセイのFamでのバージョン1の設計、及びFamチャネルの単一構造(singlex)の各新しいGSTP1設計(バージョン2及びバージョン3)の実験が、Cepheid SmartCycler(登録商標)システムで行われた。前立腺全摘出術による33の腺癌、及び20の陰性の生検(negative biopsies)が試験された。TP6−25抗体に共役したTaq DNAポリメラーゼが、ホットスタートメカニズムで使用された。このサンプルのセットから得られるデータは、2つのより新しいアッセイ設計が、元来のバージョン1の設計と比較して改善された感度を有することを示す。データは、以下、表2に、要約されて示される。
【表2】

【0070】
アッセイの更なる最適化は、FastStart Taq酵素への変更が、アッセイのGSTP1の臨床的感度を改善したことを示した。全ての反応は、進行する全ての実験に関し、これらの最適化された条件を使用して誘起された。これらの反応条件は以下に示される。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0071】
臨床サンプルが、前立腺全摘出術による67の腺癌、前立腺全摘出術からの36の正常組織、及び24の陰性前立腺生検からの重亜硫酸修飾されたDNAに関して、Cepheidプラットフォームに基づいて、FastStart Taqで実行された。2つのアッセイがこれらのサンプルで実行され、1つ目のアッセイはバージョン2 GSTP1(Fam)、バージョン3 GSTP1(Texas Red)、及びActin(Q670)の多重構造を有し、2つ目は、バージョン1 GSTP1(Fam)、APC(Q570)、及びActin(Q670)の組み合わせを有する多重アッセイである。得られたデータは表3に要約される。
【表8】

【0072】
同じ組のデータを分析し、多数のGSTP1設計がより良好な臨床感度に寄与するかどうかを決定した際、より良好なアッセイ性能が実際に観測され、データは表4に要約されている。
【表9】

【0073】
2つの新しいGSTP1設計をより良好に比較し、2つの新しいGSTP1設計が使用された際にAPCが多重構造に価値を付加するかどうかを決定するために、GSTP1バージョン2(FAM)、GSTP1バージョン3(Cy3)、APC、及びActinを含む多重構造により、同じサンプルで実験が行われた。前立腺全摘出術により得られた合計38の腺癌、及び36の正常サンプルが試験された。データは表5に要約される。
【表10】

【0074】
上記のデータは、2つのGSTP1設計の互いの相補性能を実証する。2つのGSTP1設計の組み合わせは、2つの遺伝子の組み合わせ、例えば、GSTP1及びAPCの組み合わせを有することに非常に近い性能を示した。これは、新規の適用法であり、2つ以上のアッセイが高い特異性で同じ遺伝子を標的とすることができ、改善された臨床感度を生じる。これは、高い特異性における高い感度を達成するために、異なる相補的なマーカーが必要とされない適用法へと繋がる。GSTP1高メチル化は、前立腺組織の癌に対して非常に高い特異性を有するものとして知られるが、APCはより低い特異性に繋がり得る。GSTP1及びハウスキーピング遺伝子を備えるアッセイは、最初に陰性であり、後に陽性となる生検において、例えば、GSTP1とAPCとの組み合わせよりも高い特異性で、匹敵する臨床感度を提供する傾向がある。陰性の生検(negative biopsies)がこのアッセイで試験された場合、高い特異性は非常に重要となる。
【0075】
引用文献
20020197639
20030022215
20030032026
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5429807
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5445934
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5527681
5529756
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5545531
5554501
5556752
5561071
5571639
5593839
5599695
5624711
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5700637
5786146
6004755
6136182
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【0076】
〔実施の態様〕
(1) 複数のメチル化部位の発見のための試薬を有する前立腺癌アッセイであって、各標的が同じ遺伝子の異なる部分を目的とする、前立腺癌アッセイ。
(2) 前記遺伝子がGSTP1である、実施態様1に記載のアッセイ。
(3) 少なくとも1つのメチル化部位がプロモーター領域にある、実施態様2に記載のアッセイ。
(4) 2つ以上のメチル化部位が、プロモーション領域にある、実施態様2に記載のアッセイ。
(5) 試薬が少なくとも3つの異なるメチル化部位を発見する、実施態様1に記載のアッセイ。
(6) 前記同じ遺伝子の異なる部分を目的とする、複数のメチル化部位のみの発見のための試薬を有する、実施態様1に記載のアッセイ。
(7) 前記遺伝子はGSTP1である、実施態様6に記載のアッセイ。
(8) 少なくとも1つのメチル化部位が、プロモーター領域にある、実施態様7に記載のアッセイ。
(9) 2つ以上のメチル化部位が、プロモーション領域に存在する、実施態様7に記載のアッセイ。
(10) 試薬が、少なくとも3つの異なるメチル化部位を発見する、実施態様7に記載のアッセイ。
【0077】
(11) 配列番号2及び配列番号4を含む、複数のメチル化部位の発見のための試薬を有する、前立腺癌アッセイ。
(12) 配列番号6を含む、複数のメチル化部位の発見のための試薬を更に含む、実施態様12に記載のアッセイ。
(13) 配列番号2及び配列番号6を含む、複数のメチル化部位の発見のための試薬を有する、前立腺癌アッセイ。
(14) 配列番号4を含む、複数のメチル化部位の発見のための試薬を更に含む、実施態様13に記載のアッセイ。
(15) 同じ遺伝子内からの複数のメチル化ヌクレオチド配列を発見するための試薬、及び変換試薬を含む、キット。
(16) 前記変換試薬が重亜硫酸ナトリウムを含む、実施態様15に記載のキット。
(17) 前記遺伝子がGSTP1である、実施態様16に記載のキット。
(18) 前記試薬が、FFPE組織サンプルとの使用のために設計されている、実施態様16に記載のキット。
(19) 前記サンプルが、前立腺サンプルである、実施態様18に記載のキット。
(20) 前記試薬が、尿サンプルとの使用のために設計されている、実施態様16に記載のキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメチル化部位の発見のための試薬を有する前立腺癌アッセイであって、各標的が同じ遺伝子の異なる部分を目的とする、前立腺癌アッセイ。
【請求項2】
前記遺伝子がGSTP1である、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
少なくとも1つのメチル化部位がプロモーター領域にある、請求項2に記載のアッセイ。
【請求項4】
2つ以上のメチル化部位が、プロモーション領域にある、請求項2に記載のアッセイ。
【請求項5】
試薬が少なくとも3つの異なるメチル化部位を発見する、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項6】
前記同じ遺伝子の異なる部分を目的とする、複数のメチル化部位のみの発見のための試薬を有する、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項7】
前記遺伝子はGSTP1である、請求項6に記載のアッセイ。
【請求項8】
少なくとも1つのメチル化部位が、プロモーター領域にある、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項9】
2つ以上のメチル化部位が、プロモーション領域に存在する、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項10】
試薬が、少なくとも3つの異なるメチル化部位を発見する、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項11】
配列番号2及び配列番号4を含む、複数のメチル化部位の発見のための試薬を有する、前立腺癌アッセイ。
【請求項12】
配列番号6を含む、複数のメチル化部位の発見のための試薬を更に含む、請求項12に記載のアッセイ。
【請求項13】
配列番号2及び配列番号6を含む、複数のメチル化部位の発見のための試薬を有する、前立腺癌アッセイ。
【請求項14】
配列番号4を含む、複数のメチル化部位の発見のための試薬を更に含む、請求項13に記載のアッセイ。
【請求項15】
同じ遺伝子内からの複数のメチル化ヌクレオチド配列を発見するための試薬、及び変換試薬を含む、キット。
【請求項16】
前記変換試薬が重亜硫酸ナトリウムを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記遺伝子がGSTP1である、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記試薬が、FFPE組織サンプルとの使用のために設計されている、請求項16に記載のキット。
【請求項19】
前記サンプルが、前立腺サンプルである、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記試薬が、尿サンプルとの使用のために設計されている、請求項16に記載のキット。

【公表番号】特表2011−509688(P2011−509688A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544377(P2010−544377)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/031379
【国際公開番号】WO2009/094312
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(505060347)ベリデックス・エルエルシー (43)
【氏名又は名称原語表記】Veridex,LLC
【住所又は居所原語表記】33 Technology Drive,Warren,NJ 07059,U.S.A.
【Fターム(参考)】