説明

前立腺癌マーカとしてのホスホジエステラーゼ4D7

本発明は、前立腺癌マーカーとしての4D7(PDE4D7)の使用及び前立腺癌及びその進展を診断、検出、モニタ又は予見するためのマーカーとしての使用に関する。本発明はまた、前立腺癌及びその進展を診断、検出、モニタ又は予見するための組成物に関する。また本発明は、対応する方法及びイムノアッセイに関する。本発明はまた、ホルモン抵抗性前立腺癌対ホルモン感受性前立腺癌を診断、モニタ又は予見するための方法とそれに対応するイムノアッセイの方法に関する。また本発明は、前立腺癌及びその進展を診断、検出、モニタ又は予見するためのデータ取得方法とイムノアッセイに関する。また本発明は、前立腺癌治療に適格する個人を同定する方法、前立腺癌疾患を持つ個人又はコホートを分けるためのイムノアッセイ、前立腺癌を持つ個人を分けるためのイムノアッセイに関する。また同様に、本発明は、PDE4D7活性を直接刺激するか変更する化合物、PDE4D7活性を間接的に刺激するか変更する化合物、PDE4D7タンパク質又はその生物的活性同等物、PDE4D7をコード化し発現する核酸、PDE4D7miRNAに特的に作用するmiRNAインヒビター、脱メチル化剤及び/又はホスホジエステラーゼ変位因子を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌マーカーとしての4D7(PDE4D7)の使用及び前立腺癌及びその進展を診断、検出、モニタ又は予見するためのマーカーとしての使用に関する。本発明はまた、前立腺癌及びその進展を診断、検出、モニタ又は予見するための組成物に関する。また本発明は、対応する方法及びイムノアッセイに関する。本発明はまた、ホルモン抵抗性前立腺癌対ホルモン感受性前立腺癌を診断、モニタ又は予見するための方法とそれに対応するイムノアッセイの方法に関する。また本発明は、前立腺癌及びその進展を診断、検出、モニタ又は予見するためのデータ取得方法とイムノアッセイに関する。また本発明は、前立腺癌治療に適格する個人を同定する方法、前立腺癌疾患を持つ個人又はコホートを分けるためのイムノアッセイ、前立腺癌を持つ個人を分けるためのイムノアッセイに関する。また同様に、本発明は、PDE4D7活性を直接刺激するか変更する化合物、PDE4D7活性を間接的に刺激するか変更する化合物、PDE4D7タンパク質又はその生物的活性同等物、PDE4D7をコード化し発現する核酸、PDE4D7miRNAに特異的に作用するmiRNAインヒビター、脱メチル化剤及び/又はホスホジエステラーゼ変位因子を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、細胞群が制御を受けずに成長し、侵入し及び時には転移を示すものである。癌のこれらの3つの悪特性が、良性腫瘍と区別するものである。良性腫瘍は自己限定的であり、侵入も転移をしない。男性にとって先進国で3つの最も普通に診断される癌が前立腺癌、肺癌及び大腸癌である。特に前立腺癌がヨーロッパ人男性の最も多い悪性腫瘍である。2002年にヨーロッパでは、推定225000男子が新たに前立腺癌と診断され、約83000人がこの疾患で死亡している。
【0003】
特定のホスホジエステラーゼは癌進展に関与している。例えば、ホスホジエステラーゼPDE7は慢性リンパ白血病に関係している(Zhang L et al、PNAS、2008、105(49):19532−7)。なお多くのタイプの癌及び癌の進展形については適切なマーカー分子が知られていない。
【0004】
例えば前立腺癌はこれまでは前立腺特異的抗原(PAS)の血清濃度から診断されてきた。しかし、PSAは前立腺癌特異的でなく他の状況で増加し、多くの場合偽陽性を導く(PASレベルが増加した男性の生検が実施されたうちの約70%で癌は見られない)。さらに、PSAテスト結果で「正常」であっても後に前立腺癌を進展させる予期できない数の偽陰性があり得る。
【0005】
従って、前立腺癌の検出、モニタ及び予見のための、新たなかつ効果的な他の診断方法を提供する要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この要求に鑑み、前立腺癌の診断及び検出を可能とする手段及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は前立腺癌マーカーとして使用するためのホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)により解決される。
【0008】
ホスホジエステラーゼ4D7は、前立腺癌細胞系及び癌患者由来の前立腺組織においてダウンレギュレートされることが本発明者により示された。PDE4D7は従って、前立腺癌進展の経過予測及びモニタと同様に前立腺癌予見のバイオマーカー及び特定の癌調査体制の分類の決定手段として考えられている。特に、本発明者により次のことが示された。即ち、PDE4D7はホルモン抵抗性ヒト由来前立腺癌細胞系において対応するヒト組織サンプルと同様にダウンレギュレーションされるということである。診断方法及び前立腺癌マーカーとしてのPDE4D7に基づく使用は、従って、次の場合に有利に適用され得る。即ち(i)生命を脅かす前立腺癌形を検出し診断する場合、(ii)生命を脅かす前立腺癌形を予見する場合、(iii)生命を脅かす前立腺癌形の前立腺癌進展をモニタする場合、(iv)生命を脅かす前立腺癌形と緩徐進行性形とを区別する場合においてである。
【0009】
他の側面で、本発明は、前立腺癌又は前立腺癌の進展の診断、検出又は予見のための組成物に関し、PDE4D7発現生成物又はタンパク質のための核酸親和性リガンド及び/又はペプチド親和性リガンドを含む。
【0010】
本発明の好ましい実施態様において、前記組成物は核酸親和性リガンド又はペプチド親和性リガンドを含み、これは造影剤として機能するように変性されている。
【0011】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、前記組成物は、一組の、PDE4D7発現生成物のための特異的なオリゴヌクレオチド、PDE4D7発現生成物に特異的なプローブ、PDE4D7発現生成物又はタンパク質に特異的なアプタマー、PDE4D7タンパク質に特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に特異的な抗体変異体を含む。
【0012】
本発明のさらなる側面において、本発明は前立腺癌及び前立腺癌の進展の診断、検出、モニタ又は予見のためのマーカーとしてのPDE4D7の使用に関する。
【0013】
本発明の他の側面において、本発明は、前立腺癌及び前立腺癌の進展の検出、診断、モニタ又は予見をする方法であり、PDE4D7のレベルを決定するステップを含む。
【0014】
他の側面で本発明は、ホルモン抵抗性前立腺癌及びホルモン抵抗性前立腺癌の進展の診断、モニタ又は予見をする方法であり、前記方法は、ホルモン感受性及びホルモン抵抗性前立腺癌を区別し、次のステップ:
(a)サンプル中のPDE4D7のレベルを決定するステップ;
(b)サンプル中の参照遺伝子の発現レベルを決定するステップ;
(c)PDE4D7の測定された発現レベルを前記参照遺伝子の発現レベルに正規化し;前記正規化された発現レベルと、ホルモン感受性前立腺癌を除外するために選択された既定の閾値と比較するステップ、とを含み;前記閾値よりも低い正規化された発現レベルがホルモン抵抗性前立腺癌を指示するものであり、前記閾値が約1と7の間であり、好ましくは5である、方法。
【0015】
他の側面において本発明は、データ取得方法に関し、次のステップ;
(a)PDE4D7の発現について個人を試験するステップ;及び
(b)ステップ(a)で決定された前記発現をコントロールレベルと比較するステップとを含む、方法。
【0016】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、本発明は、前記診断、検出、モニタ、予見又はデータ取得は個人から得られたサンプルで実行される、方法である。
【0017】
他の側面において本発明は、前立腺癌及び前立腺癌の進展の診断、検出、モニタ又は予見のためのイムノアッセイに関し、少なくとも次のステップ:
(a)PDE4D7の発現についてサンプルを試験するステップ、
(b)PDE4D7の発現についてコントロールサンプルを試験するステップ、
(c)ステップ(a)及びステップ(b)のPDE4D7の発現の差を決定するステップ、及び
(d)ステップ(c)で得られた結果に基づいて前立腺癌及び前立腺癌の進展存在又は段階を決定するステップを含み、前記試験ステップがPDE4D7に特異的に結合する抗体の使用に基づく、イムノアッセイ。
【0018】
他の側面において本発明は、ホルモン感受性前立腺癌とホルモン抵抗性前立腺癌との区別をするためのイムノアッセイに関し、次のステップ:
(a)サンプル中のPDE4D7のレベルを決定するステップ;
(b)サンプル中の参照遺伝子の発現レベルを決定するステップ;
(c)PDE4D7の測定された発現レベルを参照遺伝子の発現レベルに正規化するステップ;及び
(d)正規化されたPDE4D7の測定発現レベルとホルモン感受性前立腺癌を除外するための閾値とを比較するステップとを含み、前記閾値よりも低い正規化発現レベルがホルモン抵抗性前立腺癌を指示するものであり、前記閾値が約1及び7の間、好ましくは約5である、イムノアッセイ。
【0019】
他の側面において本発明は、前立腺癌治療するべき個人を同定する方法に関し、次のステップ:
(a)個人から得られたサンプル中のPDE4D7の発現を試験するステップ;
(b)前記サンプル中の参照遺伝子の発現を試験し及び/又はコントロールサンプル中のPDE4D7発現を試験するステップ;
(c)ステップ(a)の発現レベルをステップ(b)のPDE4D7のコントロールサンプル中のレベルに関して分類するステップ;及び
(d)前記個人のサンプルが低減したPDE4D7を持つとして分類された場合に、前記個人を前立腺癌の治療を受けるべきとして同定するステップを含む。
【0020】
他の側面において本発明は、前立腺癌疾患を持つ個人の個々又は集団(コホート)を分けるためのイムノアッセイに関し、次にステップ:
(a)PDE4D7発現を個人から得られたサンプルで試験するステップ;
(b)参照遺伝子の発現について前記サンプルを試験する及び/又はPDE4D7発現につきコントロールサンプルを試験するステップ;
(c) ステップ(a)のPDE4D7発現レベルとステップ(b)のPDE4D7発現及び/又は前記参照遺伝子発現との差を決定するステップ;及び
(d)前記個人のサンプルが低減したPDE4D7を持つとして分類された場合に、ステップ(c)で得られた結果に基づき前立腺癌治療への個人の個々又は集団を分けるステップとを含む。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記発現の試験又は決定は、核酸又はタンパク質レベルの測定により又はPDE4D7の生物活性又は参照遺伝子の決定により、遂行されるか又は追加的に遂行される。本発明のさらに好ましい実施態様において、前記方法又はイムノアッセイはさらに、測定された核酸又はタンパク質レベル又は測定された生物活性を、コントロールレベルと比較するステップを含む。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施態様では、前記参照遺伝子がハウスキーピング遺伝子、好ましくはGAPDH若しくはPBGD、又は異なるホスホジエステラーゼ、特に好ましくはPDE4D5である。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施態様では、前記方法又はイムノアッセイが、前立腺特異的抗原(PAS)のレベルを決定するステップをさらに含む。
【0024】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、上記サンプルが、組織サンプル、尿サンプル、尿ちんサンプル、血液サンプル、唾液サンプル、精液サンプル、循環性腫瘍細胞を含むサンプル又は分泌エクソソームである。
【0025】
他の側面において、本発明は、医薬組成物に関し、次の群から選択される少なくとも成分を含む:
(a) PDE4D7の活性を直接的に刺激するか又は変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激するか又は変更する化合物;
(c)PDE4D7タンパク質又はその生物学的同等物;
(d)PDE4D7をエンコード及び発現させる核酸;
(e)PDE4D7miRNAに特異的なmiRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び
(g)ホスホジエステラーゼ変異因子。
【0026】
ホスホジエステラーゼ4D7は、疾患関連細胞系においてダウンレギュレーションされることから、PDE4D7自体及びPDE4D7変性試薬、変性PDE4D7発現又は変性PDE4D7相互作用は、医薬として有利に使用され得る。従って、観察されるダウンレギュレーションプロセスに対して対抗作用により、PDE4D7及び/又はPDE4D7変性剤は医薬として使用され得る。例えば、低PDE4D7発現又はそのダウンレギュレーションに伴う効果の全て又は一部に対抗作用する医薬として使用され得る。
【0027】
さらなる側面において本発明は、前立腺癌の治療又は予防のための医薬組成物に関し、次の群から選択される少なくとも一つの成分を含む:
(a) PDE4D7の活性を直接的に刺激するか又は変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激するか又は変更する化合物;
(c)PDE4D7タンパク質又はその生物学的同等物;
(d)PDE4D7をエンコード及び発現させる核酸;
(e)PDE4D7miRNAに特異的なmiRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び
(g)ホスホジエステラーゼ変異因子。
【0028】
ホスホジエステラーゼ4D7は、疾患関連細胞系においてダウンレギュレーションされることから、PDE4D7自体及びPDE4D7変性試薬、変性PDE4D7発現又は変性PDE4D7相互作用は、癌、特に前立腺癌の治療のための医薬として有利に使用され得る。従って、観察されるダウンレギュレーションプロセスに対して対抗作用により、PDE4D7及び/又はPDE4D7変性剤は癌細胞、特に前立腺癌細胞に対抗作用する医薬として使用され得る。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、ここで説明したように前立腺癌治療は、上記医薬組成物の投与又は上記医薬組成物と追加の癌治療、好ましくは放射線治療又は薬物療法と組み合わせて投与することを含む。
【0030】
他の側面において本発明は、癌、特に前立腺癌の治療又は予防の方法に関し、個人への次の投与を含む:
(a)PDE4D7の活性を直接的に刺激するか又は変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激するか又は変更する化合物;
(c)PDE4D7タンパク質又はその生物学的同等物;
(d)PDE4D7をエンコード及び発現させる核酸;
(e)PDE4D7miRNAに特異的なmiRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び/又は
(g)ホスホジエステラーゼ変異因子。
【0031】
本発明の好ましい実施態様では、上記の前記ホスホジエステラーゼ変異因子が、ペプチド、ペプチド類似物、小分子、抗体又はアプタマーである。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施態様では、前記前立腺癌がホルモン抵抗性前立腺癌である。
【0033】
本発明のこれらの及び他の特徴、構成及び目的は、以下の詳細な説明から、添付図面及び実施例(これらは本発明の原理を説明するためである)を参照して明らかとなる。
【0034】
説明は例示することを目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は発現レベル試験されたサンプルについてのまとめを示す。ADは「アンドロゲン依存性」、ASは「アンドロゲン感受性」及びAIは「アンドロゲン非依存性」を意味する。サンプル「PC346P異種移植片」から「346Flu2」は細胞系であり、サンプル「PC295」から「PC374」は異種移植片である。
【図2】図2は、いくつかの前立腺癌細胞系及び異種移植片での、GAPDHに正規化されたPDE4D7mRNAのLNCaPと比較した相対的発現を示す。図は全ての研究されたサンプル(細胞系及び異種移植片を含む)のまとめを示す。
【図3】図3は、前立腺癌細胞系の、GAPDHに正規化されたPDE4D7mRNAのLNCaPと比較した相対的発現を示す。
【図4】図4は、前立腺癌細胞異種移植片の、GAPDHに正規化されたPDE4D7mRNAのLNCaPと比較した相対的発現を示す。
【図5】図5は、前立腺癌細胞系及び異種移植片での、合計PDE4D7mRNAのパーセントとして、発現されたPDE4D7含有量を示す。図は全ての研究されたサンプル(細胞系及び異種移植片を含む)のまとめを示す。
【図6】図6は、前立腺癌細胞系の、合計PDE4D7mRNAのパーセントとして、発現されたPDE4D7含有量を示す。
【図7】図7は、前立腺癌異種移植片の、合計PDE4D7mRNAのパーセントとして、発現されたPDE4D7含有量を示す。
【図8】図8は、人患者組織サンプル中の人PDE4D7の相対的遺伝子発現を示す。情報は合計16の異なるサンプル(表1に示され表1にリンパ節及び切除組織を含む)、から導かれた。サンプルグループ「1=no」はホルモン応答性一次前立腺腫瘍として定義され、サンプルグループ「2=yes」はホルモン抵抗性前立腺腫瘍として定義される。人PDE4D7についての個々の相対的発現値が示される。結果はGAPDH及びPBGDの発現に正規化されている。相対的データ測定のメジアン値がそれぞれの患者グループについて示されている。
【図9】図9は、人患者組織サンプル中の人PDE4D7の相対的遺伝子発現を示す。情報は合計16の異なるサンプル(表1に示され表1にリンパ節及び切除組織を含む)、から導かれた。サンプルグループ「1」はホルモン応答性一次前立腺腫瘍として定義され、サンプルグループ「2」はホルモン抵抗性前立腺腫瘍として定義される。結果はGAPDH及びPBGDの発現に正規化されている。図は、人PDE4D7についての個々の相対的発現データのボックスプロットが示される。ここでボックスには全ての測定の75%が含まれる。メジアン相対的発現値は、2つの色付きボックスの境界として示される。
【図10】図10は、人患者組織サンプル中の人PDE4D7の相対的遺伝子発現を示す。情報は表1に示される全てのうち12の異なるサンプル(表1に示され表1にリンパ節及び切除組織を含む)、から導かれた。サンプルグループ「1=no」はホルモン応答性一次前立腺腫瘍として定義され、サンプルグループ「2=yes」はホルモン抵抗性前立腺腫瘍として定義される。結果はGAPDH及びPBGDの発現に正規化されている。人前立腺癌の人PDE4D7についての個々の相対的発現値が示される。相対的データ測定のデータメジアン値がそれぞれの患者グループについて示されている。
【図11】図11は、人患者組織サンプル中の人PDE4D7の相対的遺伝子発現を示す。情報は表1に示される全てのうち12の異なるサンプル(表1に示され表1にリンパ節及び切除組織を含む)、から導かれた。サンプルグループ「1」はホルモン応答性一次前立腺腫瘍として定義され、サンプルグループ「2」はホルモン抵抗性前立腺腫瘍として定義される。結果はGAPDH及びPBGDの発現に正規化されている。図は、人PDE4D7についての個々の相対的発現データのボックスプロットが示される。ここでボックスには全ての測定の75%が含まれる。メジアン相対的発現値は、2つの色付きボックスの境界として示される。
【図12】図12は、人PDE4D7の、PC3前立腺癌細胞の増殖におけ、インビボ発現の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者は次のことを見出した。即ち、PDE4D7はある特定の前立腺癌関与細胞タイプ及び人患者組織で強くダウンレギュレーションされること、及び従ってPDE4D7が前立腺癌のバイオマーカーとして使用され得るということである。PDE4D7はPDE4D7変性剤又はPDE4D7発現変性剤同様に、さらに医薬特に前立腺癌治療のための医薬として使用され得る。
【0037】
以下本発明は具体的な実施態様により説明されるが、この説明はいかなることを制限することを意図するものではない。
【0038】
本発明の詳細な例示的実施態様を説明する前に、本発明を理解するために重要な定義を与える。この明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、単数形「ひとつの」は、記載上明記されない限り対応する複数をも含む。
【0039】
本発明において、用語「約」、「略」とは、当業者であれば技術的効果の存在が確実である理解し得る範囲の精度を意味する。通常この用語は示される数字から±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、さらに好ましくは±5%の変動を示す。
【0040】
用語「含む」は限定的意味ではないことは理解されるべきである。本発明の目的において、用語「からなる」は用語「含む」の好ましい実施であると理解されるべきである。以下で少なくともひとつのある数の実施態様を含むと定義される場合、これはまた好ましくはこれらの実施態様のみからなる群の範囲を含むことを意味する。
【0041】
さらに、明細書及び特許請求の範囲での用語「第一」、「第二」、「第三」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などは類似のエレメントを区別するために用いられるものであり、必ずしも数字の順の時間の順を説明するものではない。そのように使用される用語は適当な条件下で交換可能であり、個々で記載される本発明の実施態様はここで記載又は説明される順とは異なる順序でも可能である、ということは理解されるべきである。
【0042】
方法又は使用のステップに関する用語「第一」、「第二」、「第三」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などにおいては、これらのステップ間にはなんらの時間又は時間間隔が存在するものではなく、即ち、これらのステップは同時に実施されてもよい。又は明細書に特に明記されていない限り、これらのステップ間には、秒、分、時間、日、週、月又は年などの時間間隔が存在してもよい。
【0043】
本発明はここで説明される具体的な方法、手順、タンパク質、バクテリア、ベクター、試薬などに限定されず、変更され得るということは理解されるべきである。ここで使用される技術用語は具体的な実施態様を説明するためだけのものであり、添付の特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。特に明記されない限り、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語は当業者により通常理解される意味と同様の意味を持つ。
【0044】
上記の通り、本発明はひとつの側面において、前立腺癌マーカーとしてのホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)の使用に関する。用語「ホスホジエステラーゼ4D7」又は「PDE4D7」は、人ホスホジエステラーゼPDE4D7のスプライス変異7、即ち人ホスホジエステラーゼPDE4D7遺伝子、好ましくはGenbank Accession No:AF536976(version AF536976.1、GL22901883 as of 3 March 2009)に定められる配列、より好ましくは配列表の配列番号1(SEQIDNO:1)で定められる塩基配列(これはPDE4D7転写物の上記Genbank Accession numberに対応する)に関連し、又、配列表の配列番号2(SEQIDNO:2)で定められるアミノ酸配列(これはPDE4D7転写物によりエンコードされるPDE4D7ポリペプチドの上記Genbank Accession numberの配列に対応する)に関連する。前記用語はまたPDE4D7と高度に類似性を示す核酸配列、例えば、配列表の配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む。又は、配列表の配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。又は、配列表の配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列をエンコードする核酸配列を含む。又は、配列表の配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列によりエンコードされるアミノ酸配列を含む。
【0045】
ここで使用される用語「人ホスホジエステラーゼPDE4D7遺伝子」、「PDE4D7遺伝子」又は「PDE4D7マーカー遺伝子」は、ホスホジエステラーゼ4Dをエンコードする遺伝子に関する。好ましくは、この用語はスプライス変異7、例えばGenbank Accession No:AF536976(version AF536976.1、GL22901883 as of 3 March 2009) 又は配列表の配列番号1で定義される、遺伝子発現ホスホジエステラーゼ4Dに関する。この用語はまた、変異7としてスプライスされるホスホジエステラーゼ4DをエンコードするmRNA転写物から誘導されるDNA、好ましくはcDNAに関する。
【0046】
ここで使用される用語「マーカー」又は「PDE4D7マーカー」は、上で定義された遺伝子又は遺伝子的単位又は配列(核酸配列又はアミノ酸配列又はタンパク質配列)に関し、これらの発現レベルが、癌細胞又は癌組織中又はそれらの部分、断片中で、コントロールレベル又は状態と比較して変更され、好ましくは低減される。この用語はまた、前記遺伝子的単位又は配列の全ての発現生成物、特にPDE4D7mRNA転写物、前記PDE4D7転写物又はその変異体又は断片によりエンコードされるポリペプチドに関し、同様に個々で記載されたそれらの類似誘導体に関する。ここで使用される「発現レベル」とは、PDE4D7転写物の量に関し及び/又は既定の細胞数又は既定の組織部分から誘導されるPDE4D7タンパク質の量、好ましくは標準核酸(例えばRNA)又はタンパク質抽出手順で得られうるPDE4D7転写物及び/又はPDE4D7タンパク質の量に関する。適切な抽出方法は当業者に知られている。
【0047】
ここで使用される「コントロールレベル」とは、発現レベルに関するものであり、前記発現レベルが、疾患状態が癌性ではないことが知られている対象物から前もって集められ又は保存されているサンプルを用いて試験サンプルとして同時に又は類似の条件下で決定され得るものである。用語「疾患状態」又は「癌性疾患状態」は、非癌性状態と終末期癌細胞状態(を含む)との間の細胞又は分子の全ての状態又はタイプを意味する。好ましくはこの用語は、非癌性細胞状態及び終末期癌性細胞(を含む)との間の有機体中での異なる癌性増殖/進展暖気又は腫瘍の進展レベルを含む。このような進展段階には、UICCにより段階0及びIからIVに分類システムにより定義される悪性腫瘍のTNM(腫瘍、節、転移)の全ての段階を含み得る。この用語はまた、TNM段階0の前も含む。例えば当業者に知られた癌バイオマーカーが変更発現又は発現パターンを示す際の進展段階を含む。
【0048】
上記の発現レベルは好ましくは、上で定義されたPDE4D7の発現レベルである。これに代えて又はこれに加えて、発現レベルはまた、全ての他の適切な遺伝子又は細胞中で発現される遺伝子的成分、好ましくはPDE4D7内の成分であってよい。例えば他のホスホジエステラーゼの発現レベル、ハウスキーピング遺伝子例えばGAPDHやPBGDなどの発現である。
【0049】
用語「癌性」は、本発明はにおいて上で定義された癌性疾患状態に関する。癌性のコントロールにおける好ましいコントロールレベルは、悪性、ホルモン感受性腫瘍におけるPDE4D7発現である。
【0050】
用語「非癌性」は、本発明においては、良性でも悪性でも増殖が検出されない状態を意味する。かかる検出の適切な手段は知られている。非癌性コントロールにおける好ましいコントロールレベルは正常状態、即ち健康又は非癌性組織でのPDE4D7発現であり、又は良性前立腺腫瘍組織中のPDE4D7発現である。ここで使用される「良性前立腺腫瘍」は、癌の3つの全ての悪性特徴を欠く前立腺腫瘍であり、即ち無限に積極的には成長せず、周りに組織に侵入せず、かつ転移しないものである。通常良性前立腺腫瘍は、緩慢な非積極的前立腺新生物又は肥大症を意味し癌の侵入性を有しない。さらに良性前立腺腫瘍は通常包み込まれており従って悪性化することが防止されている。良性腫瘍又は健康状態は、当業者に知られた全ての適切な、独立した分子、組織又は生理学的方法で決定され得る。
【0051】
又はコントロールレベルは統計的方法により、疾患が知られている対象物からのサンプル中の本発明のPDE4D7マーカー遺伝子のすでに決定された発現レベルを分析して得られる結果に基づいて決定することができる。さらに、コントロールレベルは、すでに試験された対象物又は細胞からの発現パターンから導くこともできる。さらに、試験される生物サンプル中の本発明の遺伝子マーカーの発現レベルは、多数の参照サンプルから決定された多数のコントロールレベルと比較され得る。患者由来の生物サンプルと類似のタイプの組織から誘導される参照サンプルから決定されるコントロールレベルの使用が好ましい。特に好ましくは、疾患が上で定義された非癌性である対象物から得られたサンプルを用いることである。即ち良性でも悪性でも増殖が見られない健康状態を表す。本発明の他の実施態様では、コントロールレベルは、前立腺癌例えばホルモン非依存性又はホルモン抵抗性前立腺癌であると診断された対象物から得られる参照サンプルから決定され得る。
【0052】
又は、参照サンプルは、細胞系例えば不死化癌細胞系又は組織異種移植片から誘導される細胞系からの材料を含むこともできる。好ましくは、前立腺癌細胞系からの材料又は人前立腺組織、特に良性の腫瘍由来人前立腺組織への異種移植片からの材料が、本発明による参照サンプルに含まれ得る。好ましい細胞系の例としては、PC346P、PC346B、LNCaP、VCaP、DuCaP、PC346C、PC3、DU145、PC346CDD、PC346Flul、PC346Flu2が挙げられる。好ましい異種移植片の例としては、PC295、 PC310、PC−EW、PC82、PC133、PC135、PC324及びPC374が挙げられる。好ましくは細胞系及び異種移植片の完全なパネルが使用され得る。例えば人PC346パネルである。さらに好ましくはMarquesらの2006、Eur.Urol、49(2):245−57に記載されているものである。
【0053】
さらに好ましい変形例として、参照サンプルが患者の組織、又は組織パネル又は医学環境から得られる組織収集物から得られる得る。サンプルは全ての適切な組織タイプ、例えば前立腺組織又はリンパ節から得られる。患者組織収集物の好ましくは例は、外科的前立腺手順(例えば前立腺切除)からのものである。
【0054】
さらに、本発明の発現レベルの標準値を知られた疾患状態を持つ母集団で使用することが好ましい。標準値は、当該技術分野で知られる全ての方法で得られる。例えば平均±2SD(標準偏差)又は平均±3SDが標準値として使用され得る。
【0055】
さらに、コントロールレベルはまた、疾患が癌性であることが知られた対象物からすでに収集されて保存されたサンプルを用いることによる試験サンプルと同時又は類似の条件で決定され得る。ここで対象物はある種の癌タイプ、例えば前立腺癌特にホルモン依存性、ホルモン感受性又はホルモン抵抗性の前立腺癌であると診断された対象物である。
【0056】
本発明において、癌性ではないと知られている生物サンプルから決定されるコントロールレベルは、「正常コントロールレベル」とされる。このコントロールレベルが癌性生物サンプル例えば前立腺癌特にホルモン依存性、ホルモン感受性又はホルモン抵抗性癌であると独立して診断された対象物からのサンプルから決定される場合には、これは「癌性コントロールレベル」とされる。
【0057】
用語「前立腺癌」とは、男性再生産システムの前立腺組織の癌であり、前立腺細胞が変異し制御されることなく複製し始めるものである。通常前立腺癌は前立腺特異的抗原(PSA)のレベルを上昇させる。本発明のひとつの実施態様では、用語「前立腺癌」はPSAレベルが4.0を超える値を示す癌である。他の実施態様で、この用語は、2.0を超えるPSAレベルを示す癌に関する。用語「PSAレベル」は、血液中の前立腺特異的抗原(PSA)のng/mlでの濃度に関する。
【0058】
「ホルモン依存前立腺癌」とは、前立腺癌又は前立腺癌細胞系の成長及び/又は増殖が男性ホルモン刺激に依存するものを意味する。
【0059】
「ホルモン感受性前立腺癌」とは、前立腺癌又は前立腺癌細胞系の成長及び/又は増殖が男性ホルモン刺激に感受性を持つものを意味する。用語「感受性」とは、前立腺癌又は前立腺癌細胞系が、男性ホルモンの存在で生化学的又は細胞反応パターンを示すが、成長及び/又は増殖に男性ホルモンを必要としないものを意味する。
【0060】
用語「ホルモン抵抗性前立腺癌」とは、前立腺癌又は前立腺癌細胞系の成長及び増殖が男性ホルモン刺激に抵抗性であるものを意味する。この用語はまた、後期の前立腺癌進展段階に関すうものであり、抗ホルモン好ましくは上で定義された抗アンドロゲンの投与に対してもはや影響されないものを意味する。ここで使用される用語「男性ホルモン」とはアンドロゲンを意味し、好ましくはテストステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオール又はアンドロステロンを意味する。
【0061】
本発明のさらなる側面では、PDE4D7を、前立腺癌又は前立腺癌の進展の診断、検出、モニタ又は予見するためのマーカーに関する。
【0062】
ここで使用される用語「前立腺癌の診断」とは、本発明のPDE4D7マーカーの発現レベルが上で定義されたコントロールレベルと比較して、好ましくは上で定義された正常コントロールレベルと比較された場合に、変化、好ましくは低減又はダウンレギュレーションされる場合に、対象物又は個人が前立腺癌に罹っていると考えられることを意味する。用語「診断」とはまた、比較の手順を通じて到達される結論を意味する。
【0063】
本発明での用語「変化」又は「発現レベルの変更」とは、この発現レベルの変化を意味する。発現レベルが「変化する(される)」とは、例えば分析されるサンプル中のPDE4D7遺伝子発現が、コントロールレベルから例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は50%を超えて異なることを意味し、又はコントロールレベルと比べて少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍であることを意味する。コントロールレベルは、上で定義された正常コントロールレベル又は癌性コントロールレベルのいずれかでよい。癌性コントロールレベルが比較される場合、正常コントロールレベルでの追加の比較が好ましい。この追加の比較は変化の傾向を決定することを可能にする。即ち発現レベルの増加又は減少が観察される。
【0064】
用語「変化」とは、試験サンプルをコントロールレベルと比較した場合に好ましくはPDE4D7マーカーの発現レベルの減少又はダウンレギュレーション、又はPDE4D7マーカーの完全な抑制を意味する。コントロールレベルは上で定義された正常コントロールレベル又は癌性コントロールレベルのいずれかでよい。本発明の好ましい実施態様ではコントロールレベルはホルモン依存性前立腺腫瘍又は組織、より好ましくはホルモン感受性前立腺腫瘍又は組織からか、又は関与する癌性コントロールレベルである。本発明での用語「減少(された)発現レベル」又は「ダウンレギュレーションされた発現レベル」又は「発現レベルの減少」(これは同意語として使用され得る)とは、分析される状況例えば患者のサンプルからの状況と参照時点でのPDE4D7発現レベルの減少を意味し、参照時点とは、正常コントロールレベル又は当業者に知られた全ての適切な癌段階、好ましくはホルモン依存性、より好ましくはホルモン感受性腫瘍段階からの癌性コントロールレベルのいずれかであり得る。発現レベルは、PDE4D7遺伝子発現がコントロールレベルから減少、例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%又は50%を超えて減少する場合、又はコントロールレベル、好ましくはホルモン依存性又はホルモン感受性腫瘍と比較して少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍以上である場合に、「減少する」又は「ダウンレギュレーション」されている、とされる。
【0065】
さらなる実施態様において、対象物から得られるサンプルと上で定義された参照物(癌性)との全体の遺伝子パターンの追加の類似性は、対象物が癌に罹っていることを示す。本発明の他の実施態様において、診断は、追加の癌バイオマーカー発現レベルの決定と組み合わせることができる。例えばPSAなどのバイオマーカーの発現が試験され得る。
【0066】
癌特に前立腺癌は、本発明のPDE4D7マーカーの発現レベルが変化好ましくは上で定義されるコントロールレベル例えば上で定義される正常コントロールレベルに比べて減少又はダウンレギュレーションされる場合には、診断されるべきものとして考えられ得る。
【0067】
特に好ましい実施態様において、前立腺癌は、上で定義されるように、PDE4D7が、試験サンプル中でコントロールレベルと比較して、好ましくはホルモン依存性腫瘍コントロール又はホルモン感受性前立腺腫瘍コントロールからのコントロール発現レベルと比べて、20%と80%の間、好ましくは30%、40%、50%、60%又は70%減少する場合に、診断されるべきものと考えられ得る。さらに好ましい実施態様において、ホルモン抵抗性前立腺癌は、上で定義されるように、PDE4D7発現レベルが、試験サンプル中で、コントロールレベルと比較して20%と90%の間、好ましくは30%、40%、50%、60%、70%又は80%減少する場合に、診断されるべきものと考えられ得る。コントロールレベルは、正常レベル又は癌性コントロールレベル、好ましくはホルモン依存性又はホルモン感受性前立腺癌からのレベルのいずれかでよい。
【0068】
ここで使用される用語「前立腺癌検出」とは、有機体での癌性疾患又は症状の存在が決定され得ること、又は癌性疾患又は症状が有機体で同定され得ることを意味する。癌性疾患又は症状を決定又は同定することが、本発明のPDE4D7マーカーの発現レベルとここで定義された正常コントロールレベルとを比較することで遂行され得る。癌特に前立腺癌は、PDE4D7マーカーの発現レベルと上で定義された癌性コントロールレベルとが同程度である場合に、検出され得る。本発明の好ましい実施態様において、前立腺癌は、PDE4D7マーカーの発現レベルが、確立された前立腺癌細胞又は細胞系、例えば上で示した前立腺癌細胞系の癌性コントロールレベルとが同程度である場合に、検出され得る。
【0069】
ここで使用される用語「前立腺癌のモニタ」とは、診断された又は検出された癌性疾患又は症状に伴うものであり、例えば処置手順の間又はある時間間隔であり、通常2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、5年、10年又は全ての他の時間間隔である。用語「伴う」とは、上で定義された疾患状態及び特に、疾患のこれらの状態の変化が、サンプル中の本発明のPDE4D7マーカーの発現レベルを正常又は上で定義される癌性コントロールレベル、好ましくはホルモン依存性腫瘍コントロールレベル又はホルモン感受性前立腺腫瘍コントロールレベルとを、全てのタイプの時間間隔期間例えば毎週、2週毎、毎月、マイ2、3、4、5、5、6、7、8、9、10、11、12月、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20年のそれぞれの期間で比較することで検出され得ることを意味する。癌性コントロールレベルは、癌進展の異なる段階、例えばTNM分類システムの段階0及びIからIVに応じてサンプルから導かれ得る。本発明の好ましい実施態様では、この用語は、診断された前立腺癌、より好ましくはホルモン依存性及びホルモン感受性前立腺癌に伴う期間についてもまた使用され得る。さらなる実施態様では、モニタはまたホルモン抵抗性前立腺癌に伴うもの、例えば治療手順の間に伴い使用され得る。モニタはまた、追加の遺伝子また、遺伝子的成分、例えばGAPDH、PBGDなどのハウスキーピング遺伝子又は他のホスホジエステラーゼ好ましくはPDE4D7の発現を検出することを含む。
【0070】
ここで使用される用語「前立腺癌の予見」とは、診断され検出される前立腺疾患の進行又は出現を予想することを意味する。例えばある期間、治療の間又は治療後などである。この用語は又生存機会又は疾患からの回復の決定を意味し、同様に対象物の予期される生存期間の予期を予期することを意味する。予見はまた、特に、将来、例えば6ヶ月、1年、2年、3年、5年、10年又は全ての他の期間で、対象物の生存可能性の確率を含む。
【0071】
用語「前立腺癌の進展」とは、前立腺癌の異なる段階への変化を意味し、健康状態から始まって末期癌への段階であって、例えばTNM分類の段階0及びIからIV、又は他の全ての段階又はそのサブ段階の変化を意味する。通常かかる変化は、試験サンプル中のPDE4D7発現レベルが、同じ個人からの以前の試験サンプルの値と比べて、例えばホルモン依存性前立腺癌又は主要コントロール又はホルモン感受性瀬又は腫瘍コントロールと比較して変化、好ましくは減少を伴うものである。前立腺癌進展は、試験サンプル中のPDE4D7発現レベルが同じ個人からの以前の試験サンプルの値と比較して、3%から50%の値の減少、好ましくは10%、15%、20%又は25%減少する場合に、検出され又は診断され得る。変化は全ての期間にわたり検出され得る。好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20年間である。即ち、上記の値は、ある時点での初めのPDE4D7発現レベルとその後の示された時間経過後の第二の時点での値を比較することで計算され得る。進展は、ひとつの実施態様では、ホルモンの依存前立腺癌への進展である。
【0072】
本発明の特に好ましい実施態様では、用語「前立腺癌の進展」とは、ホルモン依存前立腺癌又はホルモン感受性前立腺癌状態からホルモン抵抗性前立腺癌への変化を意味する。
【0073】
ホルモン依存前立腺癌又はホルモン感受性前立腺癌状態からホルモン抵抗性前立腺癌への進展は、試験サンプル中のPDE4D7発現レベルが、ホルモン感受性前立腺癌又はホルモン依存前立腺癌を患っている同じ個人の以前の試験サンプル中の値と比べて、3%から50%の値の減少、好ましくは10%、15%、20%又は25%減少する場合に、検出され又は診断されるべきと考慮され得る。この進展はまた、この比較が他の個人からの試験サンプル、組織収集物からの試験サンプル、データベースからの値などを元に実施される場合に、検出されるべきと考慮され得る。
【0074】
変化は全ての期間にわたり検出され得る。好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20年間である。即ち、上記の値は、ある時点での初めのPDE4D7発現レベルとその後の示された時間経過後の第二の時点での値を比較することで計算され得る。
【0075】
さらなる実施態様において本発明は、前立腺癌、より好ましくはホルモン抵抗性前立腺癌の素因の診断及び検出に関する。ここで、「進展性前立腺癌の素因」及び特に「伸展性ホルモン抵抗性前立腺癌の素因」とは、前立腺癌、特にホルモン抵抗性前立腺癌の進展のリスク状態を意味する。好ましくは進展性ホルモン抵抗性前立腺癌は、PDE4D7発現レベルが癌性コントロールレベルより低い場合に存在し、例えば明らかにホルモン感受性前立腺癌を患っている対象物の組織又はサンプルからの参照発現レベルよりも低い場合に存在する可能性がある。用語「より低い」とはPDE4D7発現レベルが約40%から80%、好ましくは約50%癌性コントロールレベルより減少していることを意味する。
【0076】
また、ここで進展性癌の素因は、PDE4D7の発現レベルが与えられ、及びさらに、PSAなどの他の癌マーカーが発現レベルまた、発現パターンの変化を示さない場合に存在する可能性がある。さらに適切な癌マーカーは当業者に知られている。
【0077】
従って、前立腺癌、特にホルモン抵抗性前立腺癌の素因は、上のひとつの状況が観察される場合に診断又は検出されるべきと考慮され得る。
【0078】
試験サンプル及びコントロールレベルとの差は、さらなるコントロール核酸の発現レベルに正規化され得る。例えばハウスキーピング遺伝子でありその発現レベルが細胞の癌性又は非癌性によらないことが知られているものである。このようなコントロール遺伝子の例としては、アリアβ−アクチン、グリセリンアルデヒド3−リン酸エステルデヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)及びリボソームタンパク質P1が挙げられる。正規化はまた、他のホスホジエステラーゼ、好ましくは人ホスホジエステラーゼであり異なる腫瘍段階でも発現パターンが変化しないもの、であってもよい。好ましいホスホジエステラーゼは、PDE4D5又はPDE4Dファミリの全ての他のイソフォーム、例えばPDE4D1、PDE4D2、PDE4D3、PDE4D4、PDE4D6、PDE4D8又は PDE4D9が挙げられる。
【0079】
本発明では、「診断する」及び「予見する」はまた、予想及び予測分析を含むことが意図される。マーカーとしてのPDE4D7は従って医学的に、疾患についての調査などの治療的介入又は治療基準を含む、治療方法に関する決定を行う際に用いられ得る。本発明によれば、対象物の状態を検査のための中間的結果が与えられ得る。この中間結果は、追加の情報と組み合わせ、医者、看護師又は他の医療技術者が、対象物がその疾患に罹っていることを診断する助けとなり得る。又は、本発明は対象物由来の組織での癌性細胞を検出し、医者にこの対象物がこの疾患に罹っていることを診断するために有用な情報を提供するために利用され得る。
【0080】
本発明により、診断、モニターされるべき対象物又は個々、又は前立腺癌、前立腺癌の進展又は、前立腺癌の予見が検出され又は予見されるべき対象物又は好ましくは、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくは人が含まれる。
【0081】
特に好ましくは、PDE4D7を前立腺癌の進展の診断、検出、モニタ又は前立腺癌予見のためにマーカーとして使用する際に、当業者に知られている分子イメージング装置、例えば磁気共鳴イメージング(MRI)及び/又は磁気光子共鳴イメージング(MPI)技術などを使用することである。例えばPDE4D7は、人対象物内の診断マーカーをオンラインで検出することのできるMRI又はMPIなどの方法で、前立腺癌又は前立腺癌の進展の診断、検出、モニター又は予見のためにマーカーとして使用され得る。
【0082】
さらに本発明の側面において、個々の前立腺癌又は前立腺癌の進展の診断、検出、モニター又は予見のための組成物に関する。本発明のよる組成物は、PDE4D7発現生成物又はタンパク質に親和性のある核酸又はペプチドリガンドを含む。
【0083】
ここで用語「PDE4D7発現生成物への核酸親和性リガンド」とは、PDE4D7転写物又はPDE4Dのスプライス変異7から導かれるDNA分子、より好ましくは配列表の配列番号1で示されるDNA配列又は配列表の配列番号1で示される配列の相補的DNA配列又は対応するRNA配列へ特異的に結合することができる核酸分子を意味する。核酸親和性リガンドはまた、配列番号1で示される配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を持つDNA配列、または配列番号No2で示される配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を持つアミノ酸配列をエンコードするDNA配列又はそれらの配列の全ての断片にに特異的に結合することができるものである。
【0084】
ここで用語「PDE4D7発現生成物へのペプチド親和性リガンド」とは、PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができるペプチド分子を意味する。ペプチド分子は好ましくは配列表の配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチドに特異的に結合するものである。ペプチド親和性リガンドはまた、配列番号1で示される配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を持つDNA配列によりエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチド、又は配列番号2で示される配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を持つアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチド、又はそれらの配列の全ての断片に特異的に結合することができるものである。用語「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸を含む全てのアミノ酸配列を意味し、例えばポリペプチド構造、タンパク質構造又はそれらの機能的類似体を意味する。さらにペプチドはまたさらに化学基又は機能と組み合わされてもよい。
【0085】
ここで「発現生成物」とは、PDE4D7転写物又はPDE4D遺伝子の発現により生成されたmRNA分子を意味する。より好ましくは処理されたPDE4D転写物を意味し、例えば配列表の配列番号1の配列による。
【0086】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の組成物は、PDE4D7発現生成物に特異的オリゴヌクレオチド、PDE4D7発現生成物に特異的なプローブ、PDE4D7発現生成物又はPDE4D7タンパク質に特異的なアプトマー、PDE4D7タンパク質に特異的な抗体及びPDE4D7タンパク質に特異的な抗体変異体、を含む群から選択される、核酸及びペプチド親和性リガンドを含む。
【0087】
本発明の組成物は、例えば一組のPDE4D7発現生成物に特異的なオリゴヌクレオチド及び/又はPDE4D7発現生成物に特異的なプローブを含むことができる。用語「PDE4D7発現生成物に特異的なオリゴヌクレオチド」は、PDE4Dのスプライス変異7のセンス又はアンチセンス鎖に相補的であるヌクレオチド配列を意味する。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示されるDNA配列に又は配列番号1に示される配列の相補的DNA配列に、相補的であるものである。オリゴヌクレオチド配列はまた、配列番号1に示されるDNA配列と、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を持つDNA、又は配列番号No2に示される配列と、又は、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を持つアミノ酸配列をエンコードするDNA配列の相補的と相補的であるものである。
【0088】
オリゴヌクレオチドは、当業者に知られた、配列番号1又はその相補鎖からの全ての適切な長さ及び配列を有することができる。通常オリゴヌクレオチドは、長さ8から60ヌクレオチド、好ましくは10と35の間、より好ましくは長さが11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32または33ヌクレオチドのものである。PDE4D7発現生成物に特異的オリゴヌクレオチド配列は、当業者に知られたソフトウェアを用いて定めることができる。
【0089】
本発明のさらなる実施態様で、オリゴヌクレオチド配列は、PDE4D7遺伝子のエクソン1又は、エクソン2に局在する配列、PDE4D7遺伝子のエクソン1及びエクソン2の境界に局在する配列又はPDE4D7遺伝子のみのエクソン2に局在する配列、好ましくはPDE4D7の271ユニークヌクレオチドの拡張部、即ちPDE4Dのエクソン1の3’末端での42ヌクレオチドとエクソン2の5’末端229ヌクレオチドと相補的であり得るものである。例えば、フォワードプライマーとして使用可能なオリゴヌクレオチドはPDE4D7遺伝子のエクソン1及びエクソン2の間の領域に局在され、リバースプライマとして使用可能なオリゴヌクレオチドはPDE4D7遺伝子のエクソン2に局在され得る。
【0090】
本発明の好ましい実施態様において、前記オリゴヌクレオチドの組みは配列番号3及び4に記載された配列を持つ。さらに好ましくは、この配列は、配列番号7及び8に記載されている。
【0091】
ここで用語「PDE4D7発現生成物に特異的プローブ」とは、PDE4D7のスプライス変異7のセンス又はアンチセンス鎖に相補的なヌクレオチド配列を意味する。好ましくは、このプローブは配列番号No1に示されるDNA配列又は配列番号No1で示される配列の相補的DNA配列に相補的であるものである。このプローブはまた、配列番号No1の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるDNA配列又は配列番号2の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列をエンコードするDNA配列と相補的であり得るものである。
【0092】
このプローブは、配列番号1又はその相補物の配列から導かれ得るものとして当業者に知られる全ての適切な長さ及び配列を持ち得る。通常プローブは6から300ヌクレオチドの間の長さを持つ。好ましくは15から60ヌクレオチドの間であり、より好ましくは20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50ヌクレオチドである。PDE4D7発現生成物に特異的なプローブ配列は、当業者に知られるソフトウェアを利用して定めることができる。
【0093】
本発明のさらなる実施態様で、プローブ配列は、PDE4D7遺伝子のエクソン1又はエクソン2に局在する配列、好ましくはPDE4D7の271ユニークヌクレオチドの拡張部、即ちPDE4Dのエクソン1の3’末端での42ヌクレオチドとエクソン2の5’末端229ヌクレオチドと相補的であり得るものである。このプローブは、フォワード及びリバースプライマーの結合位置の間の位置に局在されるように設計され得る。好ましくは、このプライマーは、プライマーオリゴヌクレオチドの一つの近傍に局在されるように設計され得る。より好ましくは、このプライマーはフォワードプライマーの近傍に局在され得る。
【0094】
本発明の好ましい実施態様において、このプローブは配列番号5又は配列番号9に記載の配列を持つ。
【0095】
本発明の組成物は、さらに又は代えて、PDE4D7発現生成物又はタンパク質に特異的なアプタマーを含む。ここで用語「アプタマー」とは、短い核酸分子例えば、RNA、DNA、PNA、CNA、HNA、LNA又はANA又は他の全ての核酸形であり当業者にはPDE4Dスプライス変異7に特異的に結合することが知られているものであり、好ましくはPDE4Dのスプライス変異7から導かれるDNA分子を意味する。さらに好ましくは、核酸アプタマー分子は配列番号1に記載のDNA配列又はその二重鎖に特異的に結合するものである。本発明の核酸アプタマーはまた、PDE4D7転写物に対応するRNA、好ましくは、配列番号1に記載のDNA配列に応じたRNA分子に特異的に結合し得るものである。
【0096】
核酸アプタマーはさらに配列番号1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるDNA配列と特異的に結合可能であり、又は配列番号2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列をエンコードするDNA配列と特異的に結合可能であり、又はこれらのDNAに対応するRNA分子と特異的に結合可能であるものである。
【0097】
PDE4Dのスプライス変異7への核酸アプタマーの特異性は、そのスプライス変異にのみ存在する配列に特異的に結合することで与えられ、例えば、PDE4Dのエクソン2又はエクソン1及びエクソン2の境界に存在する配列である。本発明の具体的な実施態様ではPDE4Dのスプライス変異7への核酸アプタマーの特異性は、PDE4D7の271ユニークヌクレオチド内に局在する配列に特異的に結合することで与えられる。即ちPDE4Dのエクソンの3’末端の42ヌクレオチド及び絵の5’末端229ヌクレオチドである。核酸アプタマーは、当業者に知られた全ての方法により生成され得る。例えば、インビトロ選択又はSELEX方法による。好ましくは、核酸アプタマーは、Ellington及びSzostakの1990、Nature、346:818−822により与えられるガイダンスに基づいて生成及び/又は設計され得る。本発明による核酸アプタマーはさらに、追加の基と組み合わされてもよい。例えば、ビオチン又はリボソームなどの酵素的機能などの相互作用部分である。
【0098】
ここで用語「PDE4D7タンパク質に特異的なアプタマー」とは、PDE4D7タンパク質に相互作用し特異的に結合す得る短いペプチドを意味する。ペプチドアプタマーは好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチドに特異的に結合し得るものである。ペプチドアプタマーはまた、配列番号1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一のDNA配列によりエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチドと、又は配列番号2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチドと特異的に結合し得るものである。通常ペプチドアプタマーは可変のポリペプチドループであり、例えば10から20アミノ酸からなる。本発明において、ペプチドアプタマーは好ましくは、足場構造の両末端に付加され得るものである。足場構造は、全ての分子、好ましくはタンパク質であって、優れた溶解性を有するものである。適切な足場構造分子は当業者に知られているものである。本発明で好ましい足場構造分子は、バクテリアタンパク質チオレドキシンAである。このアプタマーペプチドループは好ましくはこの足場構造分子の活性低減サイト内に挿入され得る。又は、スタフィロコッカスタンパク質A及びそのドメイン及びそれらのドメインの誘導体(タンパク質Z又はリポカリンなど)などが、本発明の足場構造として使用され得る。
【0099】
ペプチドアプタマーは、当業者に知られた全ての適切な方法で生成され得る。例えば、酵母ツーハイブリッド法により可能である。
【0100】
本発明の他の好ましい実施態様において、前記組成物は、PDE4D7タンパク質に特異的抗体を含むか又はさらに含んでよい。好ましくはモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。また好ましくは、抗体変異体又は断片であって、例えば、単鎖抗体、二重異性抗体、微小抗体、モノクローナル抗体PDE4D7特異抗原に基づく単鎖Fv断片(sc(Fv))、Sc(Fv)2抗体、Fab断片又はF(ab’)2断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、結合領域免疫グロブリン融合タンパク質、キメラ抗体、VHH含有抗体などが挙げられる。
【0101】
抗体は、当業者に知られた適切な全ての方法で製造され得る。ポリクローナル抗体は動物を選択された抗原を用いて製造することができる。また定められた特異性を持つモノクローナル抗体は、例えばKoehler及びMilsteinによるハイブリドーマ技術(Koehler及びMilstein、1976、Eur.J.Immunol、6:511−519)を用いて製造することができる。
【0102】
ここでの親和性リガンドは、種々のマーカーでラベル化され、また種々のマーカーでラベル化された第二の親和性リガンドにより検出され、可視化され及び/又は定量化され得るものである。これは、全ての適切なラベルを用いて可能であり、このラベルは、PDE4D7発現生成物又はPDE4D7タンパク質と相互作用可能な親和性リガンドと共役され、または全ての第二の親和性リガンドと当業者に知られた全ての適切な技術及び方法により共役されることができるものである。用語「第二の親和性リガンド」とは、前記親和性リガンド(即ち、2つの相互作用リガンドを持つシステムで使用される場合では「第一の親和性リガンド」である)に結合可能な分子を意味する。結合作用は好ましくは特異的結合である。
【0103】
第一の及び/又は第二の親和性リガンドへ共役可能なラベルの例には、蛍光色素又は金属(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリン、フルオレスカミン)、着色色素(例えば、ロドプシン)、化学発光化合物(例えば、ルミノール、イミダゾール)及び生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えば、ビオチン)が挙げられる。
【0104】
特に好ましい実施態様では、プローブ、特にPDE4D7発現生成物に特異的に結合するプローブとして使用される親和性リガンドは、6−FAM、HEX、TET、ROX、Cy3、Cy5、テキサスレッド又はローダミンなどの蛍光ラベルでラベル化され及び/又は同時にTAMRA、Dabcyl、Black Hole Quencher、BHQ−1又はBHQ−2などの消光ラベルでラベル化され得る。他の有用な蛍光及び発色剤についてはStryerの1968、Science、162:526−533に記載されている。親和性リガンドはまた酵素でラベル化され得る(例えば、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ)、放射性同位体(例えば、H、14C、32P、33P、35S、125I、11C、13N、15O、18F、64Cu、62Cu、124I、76Br、82Rb、68Ga又は18F)又は粒子(例えば金)が挙げられる。
【0105】
異なるタイプのラベルは、種々化学的に親和性リガンドと共役され得る。例えば、アミン反応又はチオ反応などである。しかし、アミン反応やチオ反応の他の反応基もまた使用可能であり、例えばアルデヒド、カルボン酸及びグルタミンが挙げられる。
【0106】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の核酸親和性リガンド又はペプチド親和性リガンドは造影剤としての機能へ変更され得る。
【0107】
ここで「造影剤」とは、PDE4D7マーカーと特異的に相互作用可能な分子化合物であり、人又は動物の体外に設けられる装置で検出され得るものを意味する。好ましくは、かかる造影剤は磁気共鳴イメージング(MRI)又は磁気光イメージング(MPI)での使用に適するものである。用語「特異的に相互作用する」とは、人又は動物の体内に存在する細胞の表面のPDE4D7マーカーと、その細胞で発現される他のタンパク質とよりも優位に相互作用し得る分子化合物の性質を意味する。造影剤組成物として用いられる好ましい造影剤は、配列番号1のヌクレオチド配列、配列番号2のアミノ酸配列、又はそれらの誘導体又は類似変異体を持つ分子を特異的に検出することができるものである。好ましくは、造影剤はPDE4D7発現生成物又はPDE4D7タンパク質に特的アプタマーであり、またPDE4D7タンパク質に特異的な抗体である。
【0108】
PDE4D7マーカーを特異的に認識することができるこれらの性質とは別に、造影剤は通常さらに、使用される特有の検出技術により検出され得る分子を持つ。ここで用語「機能へ変更される」とは、当業者に知られた全ての適切は変更であり、分子イメージング方法(特にMRI又はMPI)での造影剤として使用できるために必要な変更である。例えば、蛍光スペクトルを検出手段として用いる場合には、このような分子は検出可能なマーカー分子として蛍光体を含み、特定の波長で励起されるものである。または、放射性活性ラベル例えば、放射性同位体ラベルが適用され得る。MRIに適した本発明による好ましい造影剤については、前記抗体などの造影剤は、MRIで検出され得るマーカー分子が含まれる(例えば、USPIOS及び19F色素である)。
【0109】
本発明の具体的な実施態様では、組成物はさらに付属成分を含み、例えば、PCRバッファ、dNTP、ポリメラーゼ、二価カチオン又は一価カチオンなどのイオン、ハイブリダイゼーション溶液、第二の親和性リガンド(例えば、第二の抗体)、検出色素及び全ての他の適切な成分又は溶液(当業者に知られた、全ての親和性リガンド又は造影剤に基づく検出を実施するために必要な)などが挙げられる。
【0110】
他の側面において本発明はPDE4D7発現生成物又はタンパク質のための核酸又はペプチド親和性リガンドを、前立腺癌又は前立腺癌の進展、また個々の前立腺癌の予後を診断、検出、モニター又は予見するための使用に関する。
【0111】
実施態様では本発明は、一組のPDE4D7発現生成物の特異的オリゴヌクレオチド及び/又はPDE4D7発現生成物の特異的プローブを、前立腺癌又は前立腺癌の進展、また個々の前立腺癌の予後を診断、検出、モニター又は予見するための組成物を製造するための使用に関する。他の好ましい実施態様において方法は、PDE4D7発現生成物の特異的アプタマーを、前立腺癌又は前立腺癌の進展、また個々の前立腺癌の予後を診断、検出、モニター又は予見するための組成物を製造するための使用に関する。
【0112】
さらなる好ましい実施態様において本発明は、PDE4D7発現生成物の特異的抗体又はPDE4D7タンパク質特異的抗体変異体を、前立腺癌又は前立腺癌の進展、また個々の前立腺癌の予後を診断、検出、モニター又は予見するための組成物を製造するための使用に関する。
【0113】
本発明の好ましい実施態様においてこの組成物は診断用組成物である。
【0114】
他の側面において本発明は、前立腺癌又は前立腺癌の進展、また個々の前立腺癌の予後を診断、検出、モニター又は予見するための診断キットに関する。このキットは、一組のPDE4D7発現生成物に特異的オリゴヌクレオチド及び/又はPDE4D7発現生成物に特異的プローブ及び/又はPDE4D7発現生成物又はタンパク質に特異的アプタマー及び/又はPDE4D7タンパク質に特異的抗体及びPDE4D7タンパク質に特異的抗体変異体を含む。
【0115】
通常本発明の診断キットは、PDE4D7の特異的検出を可能とする一つまたはそれ以上の試薬を含む。診断キットの試薬又は成分は、本発明によれば、一つまたはそれ以上の容器又は別々の物を含む。試薬の性質はキットが意図する検出方法による。PDE4D7mRNA(即ちPDE4D7発現生成物)発現レベルの検出が意図される場合、この含まれる試薬は一セットのPDE4D7発現生成物の特異的オリゴヌクレオチド及び/又はPDE4D7発現生成物の特異的プローブであり、これらは場合により当該技術分野で知られた方法でラベル化されている。さらに又はこれに代えて、PDE4D7発現生成物特異的アプタマーが含まれ得る。PDE4D7タンパク質レベルを検出することが意図される場合、含まれる試薬は、PDE4D7タンパク質に特異的な抗体又は抗体変異体の抗原結合断片を含む。さらに又はこれに代えて、PDE4D7タンパク質特異的アプタマーを含むこともできる。
【0116】
具体的タンパク質の存在はまた、PDE4D7と特異的に相互作用する他の化合物(例えば特定的基質又はリガンド)を用いて検出され得る。
【0117】
好ましくは、本発明の診断キットは、PDE4D7発現生成物又はPDE4D7タンパク質の検出試薬を含む。この試薬は例えば、既知濃度の核酸分子又はタンパク質を含み、キットの較正又は内部標準として使用される。通常、PDE4D7発現生成物検出の診断キットは、付属成分を含む。例えば、PCRバッファ、dNTP、ポリメラーゼ、二価カチオン又は一価カチオンなどのイオン、ハイブリダイゼーション溶液などである。PDE4D7タンパク質検出の診断キットはまた、付属の成分を含む。例えば、第二の抗体、検出色素及び全ての他の適切な成分又は溶液(当業者に知られた、全てのタンパク質検出を実施するために必要な)などが挙げられる。かかる成分は当業者に知られており、実施される検出方法に依存する。さらに、このキットには指示書及び/又は得られる結果の関連性に関する情報に提供されてもよい。
【0118】
他の側面において本発明は、個々の前立腺癌又は前立腺癌の進展を診断、モニター又は予見するための方法に関し、少なくとも、サンプル中のPDE4D7レベルを決定するステップを含む。「PDE4D7レベルを決定する」とは、PDE4D7発現生成物(例えば、PDE4D7転写物)の存在又は量を決定すること、及び/又はPDE4D7タンパク質の存在又は量を決定することを意味する。PDE4D7発現生成物の存在又は量を決定することは全ての当該技術分野で知られた方法を用いることができる。
【0119】
本発明の好ましい実施態様では、PDE4D7発現生成物(例えば、PDE4D7転写物)の存在及び量の決定は、核酸又はタンパク質レベルの決定又はPDE4D7の生物活性の決定により達成され得る。従ってPDE4D7発現レベルは、PDE4D7遺伝子によりエンコードされるmRNAの検出、PDE4D7転写物によりエンコードされるPDE4D7タンパク質及び/又はPDE4D7タンパク質の生物活性の検出を含む方法により決定され得る。
【0120】
例えば、PDE4D7発現の核酸レベルの測定は、サンプルからアガロース又はポリアクリルアミドゲルで得られる核酸分子(例えば、RNA又はcDNA)を分離し、続いてPDE4D7特異的オリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせることで評価され得る。または、発現レベルは、サンプルから得られた核酸をラベル化し、続いてゲルで分離することで決定され得る。核酸サンプルをゲル上に、患者のサンプル及びその隣にコントロール又は標準核酸のサンプルを置く。発現レベルの比較は視覚的又はデンシトメータにより達成され得る。mRNA又は発現生成物の検出方法は当業者に知られている。通常はノーザンブロット分析がこの目的で使用される。
【0121】
または、PDE4D7発現の核酸レベルは、DNAアレイ又はマイクロアレイ方法で検出され得る。通常、試験されるべき対象物からの核酸サンプルは処理されてましくは蛍光ラベル化される。その後かかる核酸分子は、本発明のPDE4D7遺伝組成物マーカー又は知られたバイオマーカー又は癌マーカー遺伝子に応じた固定化キャプチャプローブとハイブリダイズ処理方法で使用され得る。マイクロアレイ分析を実施するために適切な方法は当業者に知られている。
【0122】
標準の設定では、DNAアレイ又はマイクロアレイは、いくつかの遺伝子を検出する固定化高密度プローブを含む。このアレイ上のプローブはマーカー遺伝子の配列の一以上の部分と相補的であるか、マーカー遺伝子の全コードと相補的である。本発明では、ポリヌクレオチドがPDE4D7発現と他の遺伝子の発現とを区別することができる限り、ポリヌクレオチドに伴う全てのPDE4D7タイプがDNAアレイのプローブとして使用され得る。通常、cDNA、PCR生成物及びオリゴヌクレオチドがプローブとして有用である。好ましくは、PDE4Dのスプライス変異7の特異的部分を含むプローブがプローブとして使用され得る。PDE4D7発現の決定に加えてまた、他の遺伝子の発現(例えば、バイオマーカー又は癌マーカー)の決定も遂行され得る。
【0123】
DNAアレイ又はマイクロアレイに基づく検出方法は通常は、次のステップを含む:(1)サンプルからmRNAを単離し場合によりmRNAをcDNAへ変換し、続いてこのRNA又はcDNAをラベル化する。RNA単離方法、それをcDNAへ変換する方法、さらに核酸をラベル化する方法はマイクロアレイ技術の手順書に記載されている。(2)ステップ1からの核酸をマーカー遺伝子のプローブとハイブリダイズさせる。サンプルからの核酸は色素でラベル化(例えば、蛍光色素Cy3(赤)又はCy5(青))され得る。一般的に、コントロールサンプルは異なる色素でラベル化される。(3)サンプルからの核酸とプローブとのハイブリダイズを検出し、少なくとも定性的に、より好ましくは定量的に、PDE4D7及び/又は追加の試験されるマーカー遺伝子についてサンプル中のmRNA量を決定する。サンプル及びコントロールとの発現量の差はシグナル強度の違いから評価され得る。これらは適切な、しかし限定されるものではないソフトウェア(例えばAffymetrixから提供される)を用いて測定及び分析することができる。
【0124】
DNAアレイ上にスポットされる、使用されるマーカー遺伝子の対応するプローブの数には制限はない。また、マーカー遺伝子は2つ又はそれ以上のプローブで表わされ、このプローブは遺伝子の異なる部分でハイブリダイズする。プローブは、選択されたマーカー遺伝子につき設計される。このプローブは通常は、5−50ヌクレオチド残基を有するオリゴヌクレオチドである。マーカー遺伝子以外の遺伝子もまた、DNAアレイにスポットされ得る。例えば、その発現レベルが大きく変化しない遺伝子のためのプローブがDNAアレイにスポットしてアッセイ結果を正規化し、複数のアッセイ又は異なるアッセイの結果を比較することができる。
【0125】
または、PDE4D7発現の核酸レベルは、定量的RT−PCR方法、好ましくはPDE4D7mRNA転写物の逆転写に続くリアルタイムPCR方法で決定されるものである。通常は、第一のステップとして、当業者に知られる全ての適切な方法により転写物をcDNA分子へ逆転写する。定量的又はリアルタイムPCR方法は続いて上で説明したように得られた第一のDNA鎖に基づいて実施され得る。
【0126】
好ましくは、FRETに基づくプローブとしてTaqman又は分子ビーコンプローブが定量的PCR検出のために使用され得る。どちらの場合でも、プローブ、好ましくはPDE4D7プローブが内部プローブとして使用され、これは興味ターゲット領域に並ぶ一組の対向プライマー、好ましくはPDE4D7オリゴヌクレオチドのセットと一体化されて使用される。ターゲットセグメントが増幅されると、プローブは選択的にその生成物にプライマーサイトの間の配列を同定する位置で結合し、それによりターゲット回数増加に相対してFRETシグナルの増加を生じる。
【0127】
好ましくは、本発明による定量的PCR方法に使用されるTaqmanプローブは、FRET対を持つ両末端がラベル化される約22から30塩基のPDE4D7オリゴヌクレオチドを含む。通常5’末端がフルオレセイン(例えばFAM)などのより短波長蛍光体を持ち、および3’末端はより長波長の蛍光消光体(例えばTAMRA)又は非蛍光消光化合物(例えばBlack Hole Quencher)を持つ。好ましくは、定量的PCRのために使用されるプローブ、特にPDE4D7プローブは、レポータ色素に隣接する5’末端にグアニン(G)を持たないものであり、これはプローブが分解した後レポータ蛍光の消光を防止するためである。
【0128】
本発明による定量的PCR方法に使用される分子ビーコンプローブは好ましくは、PCR生成物を検出し定量化するためにFRET相互作用を用いるものである。これはそれぞれのプローブが5’末端に蛍光ラベル化され3’末端に消光ラベル化されているものである。このプローブのヘアピン又は幹ループ構造は好ましくは2つの短い自己結合末端を持つ幹と、約20から30塩基の内部ターゲット特異的領域を持つループを含むものである。
【0129】
又は本発明で適用され得る検出メカニズムは、ループ構造のみを持ち短い相補的幹領域を持たないプローブへも向けられる。本発明においても使用可能である、他のFRET系定量的PCR方法は、2つのハイブリダイズプローブの使用に基づくものであり、これはターゲットの隣接する位置に結合し、第一のプローブがその3’末端に蛍光ドナーラベルを持ち、第二のプローブがその5’末端に蛍光アクセプタラベルを持つものである。
【0130】
PDE4D7タンパク質又はその全ての断片、類似物又は誘導体のタンパク質レベルの測定は、当技術分野で知られてる全ての適切な検出技術により実施され得る。好ましくは、PDE4D7又はその誘導体のタンパク質レベルは、免疫的に検出され得る。例えば、PDE4D7タンパク質に特異的抗体、好ましくはここで記載された抗体を用いて決定され得る。又はここで定められた抗体変位体又は断片が使用され得る。本発明はまた、ここで定義されるPDE4D7タンパク質の特異的アプタマーなどのペプチド親和性リガンドの使用を含む。
【0131】
PDE4D7タンパク質レベルの検出は、例えば、サンプルからポリアクリルアミドゲル上でタンパク質を分離し、続いてPDE4D7タンパク質を、ウェスタンブロット分析で特異的に結合する抗体を用いてPDE4D7タンパク質の同定を行う。又は、タンパク質は2次元ゲル電気泳動システムで分離され得る。2次元ゲル電気泳動は当技術分野でよく知られており、通常第一の次元に沿って等電点電気泳動し、続いて第二の次元に沿ってSDS−PAGE電気泳動を行うものである。2DSDS−PAGEゲルの分析は免疫検出方法を用いて実施され得る。他の実施態様では、タンパク質サンプルは質量スペクトルにより分析される。
【0132】
本発明において、PDE4D7特異的抗体は支持体上に設けられて固定化され得る。分析サンプル又は組織から得られるタンパク質は従って前記抗体と混合される。検出反応が次に例えば、第二の親和性リガンド、好ましくは特異的抗体を用いて実施される。
【0133】
本発明で使用可能な、特に本発明の診断目的で使用できる免疫試験は、例えば、競争的及び非競争的アッセイシステムであり、例えば、ウェスタンブロット、RIA(ラジオリンク免疫アッセイ)などのラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素リンク免疫吸収アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、イムノ沈殿アッセイ、沈降反応、ゲル核酸沈降反応、イムノ拡散アッセイ、膠着アッセイ(例えば、ラテックス膠着)、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫アッセイ(例えば、FIA(蛍光リンクイムノアッセイ)、化学ルミネッセンスイムノアッセイ、電気化学ルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)及びタンパク質Aイムノアッセイなどの技術を用いたアッセイシステムが挙げられる。このようなアッセイは通常の技術であり当業者に知られている技術である。
【0134】
さらに、抗体への抗原の結合親和性及び抗原−抗体相互作用の脱速度は、競争結合アッセイにより決定される。競争結合アッセイの例はラジオイムノアッセイであり、ラベル化抗原(例えば、H又は125I)を適切な抗体と、ラベル化されていない多量の抗原と共にインキュベートし、ラベル化された抗原へ結合する抗体を検出することである。対象となる抗体の親和性及び結合の脱速度の決定は、適切な全ての分析方法によりデータから決定され得る。例えば、スカチャードプロット分析が挙げられる。第二の抗原との競争はまた、ラジオイムノアッセイを用いて決定され得る。この場合には抗原は、ラベル化化合物(例えば、H、125I)に共役する適切な抗体と、ラベル化されていない多量の抗体とインキュベートされ得る。
【0135】
さらに、PDE4D7タンパク質に特異的アプタマー、好ましくはここで定義されたアプタマーが、PDE4D7タンパク質の検出方法で使用され得る。かかるアプタマーは好ましくは、タンパク質−リガンド相互作用の検出を可能とするようにラベル化されているものである。
【0136】
PDE4D7の生物活性の決定は、PDE4D7の機能又は対応する機能に特異的な分子又は酵素アッセイを適用して実施され得る。好ましくは、ホスホジエステラーゼによるcAMPの変換に基づく読み出しシステムが使用され得る。適切な技術は当業者に知られている。さらなる好ましい実施態様では、PDE4D7の生物活性を検出するためのアッセイは、他のPDE4Dスプライス変位体、他のPDE4イソ型及び/又は他のPDE、好ましくはcAMPの変換を行うことができる他のPDEなどとの組み合わせで実施され得る。そのような活性抑制は当業者に知られる適切な方法で実施され得る。好ましくは、適切なアンチセンスヌクレオチド、siRNA分子又はmiRNA分子、より好ましくは特異的にハイブリダイズするアンチセンスヌクレオチド、特異的siRNA又はmiRNA分子である。
【0137】
さらに好ましい実施態様では、PDE4D7生物活性は、PDE4D7インヒビターを用いて試験され得る。かかるインヒビターの使用は、例えば、cAMPの変換に基づく読み出しシステムと組み合わせられ得る。通常使用されるPDE4D7インヒビターはアンチセンス分子、siRNA分子又はmiRNA分子が挙げられる。
【0138】
PDE4D7のラベルはまた、組織学的又は細胞生物学的手順を含む方法で検出され得る。通常、可視技術例えば、光学顕微鏡又は免疫蛍光顕微鏡、さらにフローサイトメトリー又はルミノメトリーなどが使用され得る。細胞のPDE4D7タンパク質の存在は、例えば、サンプルから試験される細胞を除去することで検出され得る。その後、PDE4D7の親和性リガンドを適用されうる。好ましくは、抗体又はアプタマーである。通常かかる親和性リガンドはラベル化され、好ましくは蛍光ラベル化されている。かかる手順により、PDE4D7を定量的に検出することを可能としさらに、その分布や発現の相対レベルを決定することができる。
【0139】
そのような手順は、可視化方法の使用を含む。適切な可視化技術は当業者に知られている。通常使用される方法は、蛍光測定、発光測定及び/又は酵素技術を含む。蛍光は通常、蛍光ラベルを特定の波長の光を照射しその後特定の波長の発光を検出及び/又は定量する。発光タグ付き親和性リガンドの存在は、化学反応の際に出てくる光を検出し及び定量することができる。酵素反応の検出は化学反応により生じる色のシフトによるものである。
【0140】
さらに好ましい実施態様では、PDE4D7レベルは適切な分子イメージング技術により検出され得る。例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)又は磁気光イメージング(MPI)及び/又は適切な造影剤例えば、ここで定義された造影剤を用いて決定され得る。
【0141】
さらには、本発明の前立腺癌又は前立腺癌の進展の検出、診断、モニター又は予見のための方法は、測定された拡散又はタンパク質レベル又は測定された生物活性をコントロールレベルと比較する追加のステップを含む。ここで用語「コントロールレベル」とは、PDE4D7マーカー又は他の適切なマーカー(癌性コントロール又は非癌性コントロールの)の発現を意味する。コントロールレベルの状態、性質、量及び条件は必要に応じて適合させ得る。好ましくは、非癌性コントロールレベルが使用され得る。用語「比較する」とは、データの全ての適切な、判断、評価、計算などを意味する。
【0142】
他の実施態様ではさらに、前記比較するステップの結果に基づいて、前立腺癌の存在又は状態又は前立腺癌の進展を決定する追加のステップを含む。前立腺癌マーカーとしての上で定めたPDE4D7に対応する本発明の方法で、前立腺癌は診断され又は予見され、また前立腺癌の進展が診断され又は予見され得る。
【0143】
他の実施態様において、本発明は、前立腺癌又は前立腺癌の進展の検出、診断、モニター又は予見のための方法に関し、この方法は少なくとも次のステップ:
(a)少なくともひとつの前立腺癌の疑いのある個人から少なくともひとつのサンプルのPDE4D7発現生成物又はPDE4D7タンパク質を試験するステップ;
(b)少なくともひとつの前立腺癌を患っていない個人から少なくともひとつのサンプルのPDE4D7発現生成物又はPDE4D7タンパク質を試験するステップ;
(c)ステップ(a)及び(b)の発現における差を決定し;及び
(d)ステップ(c)で得られた結果に基づき、前立腺癌又は前立腺癌の進展の存在及び段階につき判断するステップ、を含む。
【0144】
ひとつの実施態様において、診断のこの方法のステップ(a)、(b)、(c)及び/又は(d)は、人又は動物の体外で実施され得る。例えば、患者又は個人から得られたサンプルで行う。
【0145】
他の側面において本発明は、ホルモン抵抗性前立腺癌についての、前立腺癌又は前立腺癌の進展の検出、診断、モニター又は予見のための方法に関し、前記方法はホルモン感受性及びホルモン抵抗性前立腺癌を区別し、前記方法は次のステップ:
(a)サンプル中のPDE4D7レベルを決定するステップ;
(b)サンプル中の参照遺伝子の発現レベルを決定するステップ;
(c)測定されたPDE4D7発現レベルを前記参照遺伝子の発現レベルに正規化するステップ;
(d)前記正規化された発現レベルを、ホルモン感受性前立腺癌を除外するために既定閾値と比較するステップを含む、前記閾値未満の正規化発現レベルはホルモン抵抗性前立腺癌を示し、前記閾値が約1及び7の間、好ましくは約5である。
【0146】
PDE4D7レベルは、核酸、タンパク質又は生物活性により決定され得る。好ましくはPDE4D7転写物及び/又はタンパク質の量の決定である。さらにサンプル中の参照遺伝子のレベルが決定され得る。ここで用語「参照遺伝子」とは、全ての参照遺伝子であり、例えば、全ての安定して発現され持続的に検出され得る遺伝子、遺伝子産物、発現産物、タンパク質又は選択される有機体のタンパク質変異体を意味する。この用語はまた、発現されたタンパク質、ペプチド、ポリペプチドを意味し同様にそれらの変位体をも意味する。本発明は従ってまた、参照遺伝子から誘導された参照タンパク質をも含む。また参照遺伝子からの全ての種類の転写誘導物を含み、同様にそれらの誘導物又はそれらのリンクされる二次的パラメータをも含む意味である。それに代えてまたはそれに加えて、他の参照パラメータもまた、参照目的で使用され得る。例えば、代謝濃度、細胞サイズなどである。
【0147】
発現は好ましくは同じサンプルで実施され得る、即ちPDE4D7のレベル及び参照遺伝子のレベルは同じサンプルで決定される。試験を同じサンプルで実施される場合、単一又は多重検出が実施され得る。好ましくは、配列番号7、8及び9の配列を持つオリゴヌクレオチド及びプローブが使用され得る。多重検出の実施のためにプライマー及び/又はプローブヌクレオチドの濃度は変更され得る。さらに、バッファ、イオンなどのさらなる成分の濃度及び存在も変更され得る。例えば、製造者の指示内容に比べて増加又は減少させ得る。
【0148】
本発明の具体的な実施態様では、ひとつ以上の参照遺伝子又は安定発現遺伝子の発現が決決定され得る。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、30以上の参照遺伝子の発現が決定され得る。かかる測定の結果は別々に計算されるか、平均発現インデックスを得るために組み合わされ得る。さらに参照遺伝子発現のパターンが決定され及び/又は続くステップで使用される。かかるパターンは特定の癌特に前立腺癌の遺伝子の知られた発現態様に基づくことができる。
【0149】
さらに、発現結果は参照の場合又はデータベースからのすでに知られた結果と比較することができる。比較はさらに、結果の統計的精度を改善するために正規化することを含む。
【0150】
本発明の他の実施態様で、サンプル中の参照遺伝子の発現レベルを決定する代わりに、さらなる癌マーカー又は非定常的発現遺伝子の発現が決定されてもよい。例えば、ホルモン抵抗性前立腺癌で減少することが知られている、又はホルモン感受性前立腺癌で増加することが知られている発現が決定され得る。
【0151】
さらなる実施態様でまた、両方の発現決定が実施されてよい、即ち参照遺伝子及びさらに癌マーカー遺伝子発現の決定である。
【0152】
発現結果は当業者に知られる適切な方法により正規化され得る。例えば、標準スコア、スチューデントtテスト、スチューデント化残渣テスト、標準化モーメントテスト又は係数分散テストなどが挙げられる。通常は当業者に知られるテスト又は対応する式により、発現データを標準化して、遺伝子発現レベルでの実際の変動及び測定手順による変動とを区別することができる。
【0153】
ステップ(a)及び(b)及び/又はステップ(c)で得られる正規化結果出得られる発現結果に基づいて、PDE4D7発現の閾値との比較が実施され得る。PDE4D7の発現レベルがホルモン抵抗性前立腺癌を指示し、従ってホルモン感受性前立腺癌又は腫瘍型を除外する閾値未満の閾値は、約0.75と8、0.75と7.5、0.75と7、0.75と6.5、0.75と6、0.75と6、0.75と5.5、0.75と5.5、1.0と8、1.25と8、1.5と8、1.75と8、2と8、2.25と8、2.5と8、2.75と8、3と8、3.25と8、3.5と8、3.75と8、4と8、4.25と8、4.5と8、4.75と8又は5と8である。より好ましい閾値は約5、例えば、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1又は5.9、5.8、5.7、5.6、5.5、5.4、5.3、5.2、又は5.1である。特に好ましい閾値は参照遺伝子などのハウスキーピング遺伝子を用いるものである。
【0154】
本発明の好ましい実施態様では、閾値は、血清又は血漿などの血液サンプル中、尿ちんサンプル中のPDE4D7についての閾値である。本発明の特に好ましい実施態様では、閾値は尿中でのPDE4D7タンパク質又はポリペプチド又は他の全ての誘導体などについての閾値である。本発明の他の特に好ましい実施態様では、閾値は、尿中に含まれる細胞、又は尿中に含まれる細胞から分泌されたエキソソームについての閾値である。
【0155】
測定され及び/又は正規化されたPDE4D7発現が前記閾値を超える場合には、個々がホルモン抵抗性前立腺癌には罹っていないことを示すものと判断される。この値はさらに、個々がホルモン抵抗性前立腺癌以外の前立腺癌特にホルモン依存性前立腺癌又はホルモン感受性前立腺癌に罹っていることを意味し得る。
【0156】
他の側面で本発明は、データ取得方法に関し、前記方法は次ものステップ:
(a)PDE4D7の発現を個々で試験するステップ;及び
(b)ステップ(a)で決定された発現をコントロールレベルと比較するステップを、含む。
【0157】
PDE4D7の発現試験は、ここで記載のステップにより実施され得る。好ましくは、試験はPDE4D7の核酸又はタンパク質の測定、又はPDE4D7の生物活性の決定、より好ましくは、かかる測定の追加の選択的な方法により実施され得る。試験は個々で、即ちインビボで、又は個々の外部即ちエクスビボ又はインビボで実施され得る。データ取得の方法において用語「コントロールレベル」とは、PDE4D7マーカー又は他の適切な癌性コントロールマーカー又は非癌性コントロールマーカーの発現を意味する。このコントロールレベルの特徴、性質、量及び状態は要求に依存して調節され得る。好ましくは、非癌性コントロールレベル使用され得る。より好ましくは、ホルモン感受性前立腺癌段階から得られるコントロールレベルが使用され得る。発現レベルをコントロールレベルと比較することは、全ての適切な方法であって、判断し、計算し、評価し及びデータを処理して特に2つのデータセット間の違いを検出する助けとなる方法に従って実施され得る。差についての有意差の統計的評価がさらに行われる。適切な統計手法は当業者に知られている。得られたデータ及び情報は保存され、蓄積され又は適切な当業者に知られた情報工学的に又はコンピュータ方法で処理される。又は適切な方法で、技術者がこのデータを用いてひとつ以上の続く処理又は結論ステップのために用いることができるように提示されることができる。
【0158】
他の側面において、本発明は、前立腺癌又は前立腺癌の進展について検出、診断、モニター又は予見するためのイムノアッセイに関し、前記イムノアッセイはつぎのステップ:
(a)PDE4D7発現のために個々から得られるサンプルを試験するステップ;
(b)PDE4D7発現のためのコントロールサンプルを試験するステップ;
(c)ステップ(a)及びステップ(b)の発現の差を決定するステップ;及び
(d)ステップ(c)で得られる結果に基づいて、前立腺癌又は前立腺癌の進展の存在又は段階を決定するステップ、を含む。
イムノアッセイは好ましくは、PDE4D7特異的結合する抗体を使用する。例えば、ここで記載した一つ以上のPDE4D7が挙げられる。又はイムノアッセイは全ての他の試薬を組み合わせて実施され得る。例えば、前記アッセイは核酸検出と、又はここで記載された酵素的試験方法とを組み合わせることができる。
【0159】
さらなる側面で本発明は、ホルモン感受性及びホルモン抵抗性前立腺癌の区別するためのイムノアッセイに関し、前記イムノアッセイは次のステップ:
(a)サンプルのPDE4D7レベルを決定するステップ;
(b)サンプル中の参照遺伝子の発現レベルを決定するステップ;
(c)測定されたPDE4D7の発現レベルを参照遺伝子に対して正規化するステップ;及び
(d)正規化された発現レベルを、ホルモン感受性前立腺癌を除外するための既定閾値と比較するステップを含み、前記閾値未満の正規化発現レベルはホルモン抵抗性前立腺癌であることを示し、前記閾値が約1及び7の間である。好ましくは、閾値は約5である。
【0160】
PDE4D7のレベルは好ましくは、タンパク質又は上で記載された活性に基づいて決定され得る。好ましくは、PDE4D7特異的抗体を用いてPDE4D7タンパク質量を決定することである。例えば、ひとつ以上のPDE4D7抗体が挙げられる。又はイムノアッセイは全ての他の適切な試薬を他の部分の決定とともに組み合わせて実施され得る。例えば、前記イムノアッセイは核酸又は酵素的試験方法を組み合わせて実施され得る。
【0161】
さらに、サンプル中の参照遺伝子のレベルを決定され得る。参照遺伝子の検出のために、遺伝子発現生成物(即ちタンパク質)が決定され得る。好ましくは、当業者に知られるひとつ以上適切な抗体を用いることによってである。又は参照遺伝子の決定が他の全ての試薬を用いて実施され得る。又は核酸の存在又は量、又はここで記載の酵素的試験方法と組み合わせて実施され得る。
【0162】
ステップ(a)及び(b)及び/又はステップ(c)で得られる正規化結果で得られる発現に基づいて、PDE4D7発現の閾値との比較が実施され得る。PDE4D7の発現レベルがホルモン抵抗性前立腺癌を指示し、従ってホルモン感受性前立腺癌又は腫瘍型を除外する閾値未満の閾値は、約0.75と8、0.75と7.5、0.75と7、0.75と6.5、0.75と6、0.75と6、0.75と5.5、0.75と5.5、1.0と8、1.25と8、1.5と8、1.75と8、2と8、2.25と8、2.5と8、2.75と8、3と8、3.25と8、3.5と8、3.75と8、4と8、4.25と8、4.5と8、4.75と8又は5と8である。より好ましい閾値は約5、例えば、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1又は5.9、5.8、5.7、5.6、5.5、5.4、5.3、5.2、又は5.1である。
【0163】
閾値は血液サンプル中のPDE4D7についての閾値であってよく、例えば以下記載の血清又は血漿サンプル、尿サンプル又は尿ちんサンプルなどである。
【0164】
測定又は正規化PDE4D7発現が指示閾値を超える場合これは、個々がホルモン抵抗性前立腺癌に罹っていないことを示すものと考えられる。この値はさらに、個々がホルモン抵抗性前立腺癌以外の前立腺癌、特にホルモン依存性前立腺癌又はホルモン感受性前立腺癌に罹っていることを示し得る。
【0165】
さらなる側面で本発明は、前立腺癌治療を受けるべき個人を同定する方法に関し、前記方法は次のステップ:
(a)PDE4D7発現を個々からのサンプルで試験するステップ;
(b)前記サンプル中の参照遺伝子及び/又はコントロールサンプル中のPDE4D7発現を試験するステプ;
(c)ステップ(a)の発現レベルをステップ(b)のレベルと相対的に分類するステップ;及び
(d)個々のサンプルがPDE4D7発現の減少レベルを有する場合に、前記個人を前立腺癌治療を受けるべきであるとして同定するステップを含む。
【0166】
PDE4D7レベルは核酸、タンパク質又は個々で記載の生物活性により決定され得る。好ましくは、PDE4D7転写物及び/又はタンパク質の量を決定することである。さらにサンプル中の参照遺伝子のレベルが決定され得る。参照遺伝子の発現の試験は、PDE4D7決定のために使用される同じサンプルで実施され得る。試験が同じサンプルで実施される場合、単一又は多重検出方法が実施され得る。好ましくは、多重検出のために、配列番号7、8及び9を持つオリゴヌクレオチド及びプローブが使用され得る。多重検出の実施のために、プライマー及び/又はプローブオリゴヌクレオチドの濃度は変更され得る。さらに、バッファ、イオンなどのさらなる成分の存在及び濃度もまた変更され得る。例えば、製造者の指示と比べて増加又は減少させることができる。又は参照遺伝子の試験は異なるサンプルで行なってもよく、好ましくは、コントロールサンプルが挙げられる。好ましくは、かかるコントロールサンプルは試験サンプルと同じ個人からのコントロールサンプルであり、又は異なるソース又は個人から得られるコントロールサンプルであり得る。好ましくは、サンプルはまた、同じ組織から、例えば前立腺癌から得られるか、又は異なる組織から得られるものであってよい。好ましい他の組織の例としては、間質前立腺組織、膀胱上皮組織及び尿道上皮組織などが挙げられる。
【0167】
さらに参照遺伝子の発現のためにサンプルの試験及びPDE4D7の発現のためのコントロールサンプルの試験は組み合わされてもよい。
【0168】
さらなる実施態様においてコントロールサンプルはまた、参照遺伝子の発現のため試験されてよい。ある場合にはひとつ以上のサンプルが参照遺伝子の発現のために試験され、得られる発現結果は当業者に知られる適切な全ての統計手法により比較され及び/又は平均化され又は正規化され得る。
【0169】
ここで「ステップ(b)のレベルに相対的にステップ(a)のレベルを分類する」とは、PDE4D7についての試験サンプル中の発現及びPDE4D7についてのコントロールサンプル中の発現とを例えば、適切な正規化標準に対して正規化した後に比較することを意味する。比較した結果により、試験サンプルは、コントロールサンプルと同様の発現、コントロールサンプルと比べて増加した発現、又はコントロールサンプルと比べて減少した発現を与えるものとして示される。この用語はさらに、PDE4D7につき試験サンプル中の発現及び参照遺伝子について同じ試験サンプル中の発現が例えば、正規化参照としての遺伝子に対して正規化した後に比較されることを意味する。比較の結果により、試験サンプルは、参照遺伝子と同様の発現、参照遺伝子と比べて増加した発現、又は参照遺伝子と比べて減少した発現を与えるものとして示される。
【0170】
発現の分類によれば、個人は、PDE4D7発現レベルが減少する場合に前立腺癌治療を受けるべきと考えられる。発現レベルは、試験サンプルのPDE4D7遺伝子発現レベルが、コントロールサンプルのPDE4D7発現レベルに比較して、例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%以上減少する場合に、又はコントロールサンプルのPDE4D7発現に比較して少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍以上である場合に「減少する」と考えられ、又はPDE4D7遺伝子発現が、コントロールサンプル中の参照遺伝子の発現に比べて例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は50%以上減少する場合、又は参照遺伝子の発現に比較して少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍以上減少する場合に「減少する」と考えられる。具体的な実施態様では、参照遺伝子の発現はまた、追加の遺伝子また、マーカー例えば、ハウスキーピング遺伝子に対して正規化、又は調節され得る。
【0171】
さらなる側面で本発明は、前立腺癌を持つ個々の個人又は集団を分けるためのイムノアッセイに関し、次のステップ:
(a)PDE4D7の発現を、個人から得られたサンプルで試験するステップ;
(b)PDE4D7の発現を、参照遺伝子の発現を前記サンプルで試験し及び/又はコントロールサンプルで試験するステップ;
(c)ステップ(a)でのPDE4D7発現と及び(b)での参照遺伝子での発現とを決定するステップ;及び
(d)ステップ(c)で得られた結果に基づいて前立腺癌治療へ個人又は集団を分けるステップとを含み、ここで個人のサンプルがPDE4D7発現レベルが減少している、イムノアッセイ。
【0172】
PDE4D7発現の試験は好ましくは、PDE4D7タンパク質の決定又はPDE4D7の生物活性の決定により実施され得る。好ましくは、PDE4D7タンパク質の決定は、PDE4D7特異的抗体例えば、ひとつ以上のここで記載のPDE4D7抗体を用いて決定される。または、前記イムノアッセイは、全ての他の適切な試薬を用いて、又は他の物の決定と組み合わせられ得る。例えば、アッセイは核酸の存在又は量と組み合わせることができ、又はここで記載の酵素的試験方法と組み合わせることができる。さらにサンプル中の上記参照遺伝子が決定されてもよい。参照遺伝子の発現の試験はPDE4D7の決定のために用いた同じサンプルを用いて実施され得る。同じサンプルで実施される場合、単一又は多重検出方法が実施され得る。好ましくは、並行又は多重検出のために、相違してラベル化される第一又は第二の抗体が使用され得る。
【0173】
または、参照遺伝子の発現の試験は、異なるサンプルでも実施され得る。好ましくはここで記載のサンプルである。好ましくは、かかるコントロールサンプルは、試験サンプルとして同じ個人からのサンプルまたは、異なるソース又は個人からのコントロールサンプルであり得る。コントロールサンプルはさらに、同じ組織、好ましくは前立腺組織又は異なる組織からのものであってよい。好ましい他の組織タイプの例は、間質前立腺組織、膀胱上皮組織、尿道上皮組織が挙げられる。さらに参照遺伝子の発現の試験サンプル及びPDE4D7発現のためのコントロールサンプルの試験は組み合わせることができる。
【0174】
さらなる実施態様で、前記コントロールサンプルはまた、参照遺伝子発現について試験され得る。ある場合に、一以上のサンプルが参照遺伝子発現のために試験され、得られる発現結果は、当業者に知られた適切な統計方法により、比較及び/又は平均化又は正規化され得る。
【0175】
ここで用語「ステップ(a)PDE4D7発現と、ステップ(b)でのPDE3D7発現及び/又は参照遺伝子発現との差」とは、PDE4D7について試験サンプル中の発現とPDE4D7についてのコントロールサンプル中の発現が比較されることを意味し、例えば、適切な参照に対して正規化された後である。この比較の結果により、試験サンプルは、コントロールサンプルと同じ程度の発現、コントロールサンプルと比較して増加した発現、又はコントロールサンプルと比較して減少した発現を与えるものと示される。この用語はまた、これに代えてまたは加えて、PDE4D7について試験サンプル中の発現と参照遺伝子について同じ試験サンプル中の発現が比較されることも意味し、例えば適切な参照に対して正規化された後である。その比較の結果により、試験サンプルは、参照遺伝子と同じ程度、または異なる発現を与えるものと示される。この差は、参照遺伝子と比較して増加した発現か、又は減少した発現のいずれかである得る。
【0176】
ここで用語「前立腺癌治療へ個人又は個々のコホート(集団)を分ける」とは、ある個人が類似の個人のグループに関連するように同定されることを意味し、その最適治療形が前立腺癌治療であり、好ましくは、上記の発現試験の結果によるホルモン抵抗性前立腺癌に対する治療であり、特にPDE4D7発現で見られた差及び参照遺伝子又は異なるサンプル中でのPDE4D7発現レベルでの差によるものである。発現差の決定により、個人は、類似の個人のグループに関連するように同定されることを意味し、PDE4D7発現レベルが減少する場合にはその最適治療形が前立腺癌治療である。発現レベルは、試験サンプル中のPDE4D7遺伝子発現が、例えばコントロールサンプル中の発現と比較して、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は50%以上減少する場合に、又は、コントロールサンプル中のPDE4D7発現に比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍又は少なくとも10倍以上減少する場合に、又は、PDE4D7遺伝子の発現が、コントロールサンプル中の参照遺伝子の発現に比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%又は50%以上減少する場合に、又は参照遺伝子の発現に比較して、例えば少なくとも 0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍以上減少する場合に、減少する」と考えられる。
【0177】
前立腺癌治療すべきと考えられた個人、又は前立腺癌治療へ分けられた個人は、当業者に知られた適切な治療的前立腺癌処置を受けることとなる。通常、前立腺癌治療すべきと考えられた個人、又は該当する処置グループに分けられた個人は、DPE4D7発現の減少により、ホルモン抵抗性前立腺癌に罹っていると考えられるか、将来ホルモン抵抗性前立腺癌に進展する可能性があるものと考えられる。例えば、次の1から24ヶ月である。従って、同定された又は分けられた個人は本発明による医薬組成物で処置され得る。例えば、ここで記載された医薬組成物である。さらなる実施態様では、対応する同定された個人は本発明の医薬組成物と共に追加の癌治療を受け得る。用語「追加の癌治療」とは、当業者に知られた全ての癌治療を意味する。この用語はまた、例えば、全ての適切な薬物療法、放射線治療、外科、抗体治療などを含む。
【0178】
又は対応する同定された又は分けられた個人は、薬物療法、放射線治療、外科、抗体治療などの一以上の癌治療のみを受けることもできる。好ましくは、通常前立腺癌の治療で、より好ましくはホルモン抵抗性前立腺癌の治療で用いられる癌治療である。
【0179】
本発明のさらなる実施態様で、ここで記載される治療されるべきかを決定する方法又は分けるためのイムノアッセイはまた、個人の処置をモニターするために使用され得る。例えば、ホルモン抵抗性前立腺癌に罹っている個人についてである。前記モニタープロセスは、長期間にわたる発現決定により実施され得る。この期間は処置の間又は処置の後で、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10月、又は1、2、3年又はそれ以上の期間である。決定ステップは、適切な間隔で実施され得る。例えば、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2カ月毎、3カ月毎、6ヶ月毎、12ヶ月毎などである。さらなる本発明の実施態様では、ここで記載される全ての治療系が調節され得る。例えば、モニタープロセスの結果に応じて、適切な方法を強化、調節又は変更され得る。
【0180】
PDE4D7発現の試験は、ここで記載のステップに従って実施され得る。好ましくは、試験はPDE4D7のタンパク質レベルの測定の実施であり、より好ましくは、ここで選択的に好ましいとして記載された方法である。コントロール又はコントロールサンプルとしては個々で記載されたコントロールが好ましく使用できる。好ましい実施態様では、試験ステップは、PDE4D7に特異的に結合する抗体の使用に基づくものであり、例えば、NB300−652又はGTX14629などの市販の抗PDE4D7抗体が利用され得る。このイムノアッセイで癌が診断され又は予見され、又は癌の進展が診断され又は予見される。また個人が前立腺癌の治療すべきと同定され、又は個人又は個人の集団が、PDE4D7を癌マーカーとして用いるイムノアッセイにより分けられる。従って、PDE4D7発現の試験又は決定が遂行され、又は核酸又はタンパク質レベルの測定によりさらに遂行され、又はPDE4D7生物活性の決定により遂行され得ることとなる。類似の測定は、参照遺伝子に関して実施されてよい。
【0181】
特に本発明の好ましい実施態様において、参照遺伝子はハウスキーピング遺伝子又は異なるホスホジエステラーゼである。人において、「ハウスキーピング遺伝子」には、とりわけβアクチン、グリセリンアルデヒド3−ホスファートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)及びリボソームタンパクP1が挙げられる。これらの遺伝子のほか、全ての適切な遺伝子がハウスキーピング遺伝子として使用され得る。ただし、この遺伝子が、安定して、非変更レベルでの発現又は転写を示す限りであり、特に癌の異なる段階においてであり、より好ましくは前立腺癌の異なる段階においてであり、より好ましくはホルモン感受性前立腺癌からホルモン抵抗性前立腺癌への変化の際に、である。特に好ましくは、GAPDHの遺伝子、転写物又は発現産物又はタンパク質である。さらに好ましくは、PBGDの遺伝子、転写物又は発現産物又はタンパク質である。ハウスキーピング遺伝子の発現データは、同じ個人の一つ以上のサンプル又は数人例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、1000、5000、10000又はそれ以上の個人からのサンプルから得られる。発現データはまた当業者に利用可能なデータベースから、またはデータ収集物から得られる。
【0182】
ここで用語「異なるホスホジエステラーゼ」とは、PDE4D7ではない他のホスホジエステラーゼを意味する。かかるホスホジエステラーゼで参照遺伝子として適するものは、選択された有機体中での、安定して発現され、持続的に検出可能な遺伝子産物、発現産物、タンパク質又はタンパク質変異体である。特に好ましくは、PDE4Dファミリのホスホジエステラーゼであり、例えば、PDE4D1、PDE4D2、PDE4D3、PDE4D4、PDE4D5、PDE4D6、PDE4D8及びPDE4D9が挙げられる。より好ましくは、PDE4D5ホスホジエステラーゼである。
【0183】
従って、GAPDH、PBGD及び特にPDE4D6との正規化及び/又は比較が、上記の閾値に基づく診断方法及びイムノアッセイ、個々の区別又は分類のための方法又はイムノアッセイについて好ましく使用され得る。対応する決定ステップは、別々の反応で実施されてもよく、又は、特に好ましくは、多重反応で実施されてよい。多重検出の遂行のために、プライマー及び/又はプローブオリゴヌクレオチドは変更され得る。さらにバッファ、イオンなどの成分の濃度、存在を変更してもよい。例えば、製造者の指示よりも増加又は減少させてもよい。本発明のさらなる実施態様では、個々で記載のPDE4D7発現に基づく前立腺癌治療すべきとされる個人を同定する方法はさらに、ひとつ以上の類似の方法であってひとつ以上の異なるバイオマーカーの発現に基づく方法とを組み合わてもよい。好ましくは、前立腺癌特異的に抗原(PAS)レベルの決定である。従って、PASレベルが10、20、30又は好ましくは5.0を超える場合、個人はホルモン抵抗性前立腺癌に罹っていると考えられ、又は近い将来(例えば、次の1、2、3、4、5、6、12ヶ月)ホルモン抵抗性前立腺癌を進展させる恐れがある。
【0184】
本発明好ましい実施態様では、上記の診断、検出、モニター又は予見は個人から得られたサンプルで実施される。ここで用語「個人から得られるサンプル」とは、個人から、当業者に知られた全ての適切な方法で得られる生物材料を意味する。本発明で使用されるサンプルは、好ましくは、医学的に許容される方法で、より好ましくは核酸(特にRNA)又はタンパク質が保存されるような方法で集められるものである。
【0185】
生物材料には、身体組織及び液体(例えば、血液、汗、痰や唾液、精液および尿だけでなく、糞便又は糞便サンプルなど)が挙げられる。さらに、生物材料には、細胞又は細胞集団からの抽出物が含まれる。該細胞には、上皮細胞、好ましくは、癌上皮細胞又は癌性と疑われる組織から得られる上皮細胞を含む。より好ましくは、生物材料は、腺組織からの細胞集団であり、例えば、サンプルは男性個人の前立腺から得られるものであり得る。さらに、細胞は必要な場合得られた身体組織及び液体から精製された後生物材料として使用され得る。
【0186】
サンプルは特に最初の処理の後は、プールしてよい。しかしまた非プールサンプルも使用可能である。
【0187】
本発明の具体的な実施態様において、生物サンプルの内容はまた、濃縮ステップに供することができる。例えば、サンプルは細胞特異的リガンド又は特定の細胞タイプ(例えば、前立腺細胞)のオルガネラに接触させ得る。これらは例えば、磁気粒子で機能化されている。磁気粒子で濃縮された材料はその後ここで記載された検出及び分析ステップで使用され得る。
【0188】
本発明の具体的な実施態様では、生検又は切断サンプルが得られ及び/又は使用され得る。
【0189】
さらに、細胞(例えば、腫瘍細胞)は、液体又は液状サンプル(例えば、血液、尿、汗など)をろ過することで濃縮され得る。かかるろ過プロセスはまた、リガンド特異的相互作用と組み合わせることができる。
【0190】
本発明の特に好ましい実施態様では、サンプルには、組織サンプル、尿サンプル、尿ちんサンプル、血液サンプル、唾液サンプル、精液サンプル、循環腫瘍細胞を含むサンプル又は前立腺分離エキソソームを含むサンプルが挙げられる。
【0191】
さらに他の側面で本発明は医薬組成物であり、少なくとも次の成分:
(a)PDE4D7活性を直接刺激するか変更する化合物、好ましくは、PDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7活性を関節的に刺激するか変更する成分;
(c)PDE4D7タンパク質又はそれと生物学的に活性同一物;
(d)PDE4D7をエンコードし発現する核酸;
(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び
(g)ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくは、ペプチド、ペプチド様物、小分子、抗体又はアプタマー、を含む医薬組成物である。
【0192】
ここで用語「PDE4D7活性を直接刺激するか変更する化合物」とは、PDE4D7と直接相互作用してcAMPを分解してPDE4D7活性を増加させることができることを意味する。かかる化合物には、PDE4D7の全ての直接の相互作用剤であって、PDE4D7の触媒作用に正の効果を与えるものである。かかる化合物には、好ましくは、PDE4D7の触媒活性のアロステリックアゴニスト(例えば、ホモトロピックアロステリックモデュレータ)である。PDE4D7の好ましいアロステリックアゴニストはcAMP又はcAMPアナログである。本発明の範囲に含まれる他の直接刺激化合物には、イオン、好ましい生物活性一価及び二価カチオン(例えば、Ca2+、Mg2+など)が挙げられる。
【0193】
ここで用語「PDE4D7活性を間接的に刺激するか変更する化合物」とは、PDE4D7の直接相互作用するものと相互作用してcAMPを分解してPDE4D7活性を増加させることができることを意味する。かかる化合物には、PDE4D7の相互作用剤の全ての直接相互作用剤であってよい。PDE4D7の相互作用剤の直接相互作用剤による効果は、PDE4D7の相互作用剤自体がPDE4D7に対し正の効果を有する場合には正となり又はPDE4D7の相互作用剤がPDE4D7の活性へ負の効果を持つ場合には負のいずれかである。通常正に作用する間接相互作用剤は直接相互作用剤のアゴニスト効果を刺激し、例えば、PDE4D7によるcAMPの分解プロセスではなくcAMP生成物を上昇ことにより、cAMP又はその類似体などのアロステリックに作用する化合物の濃度の増加を促進する。
【0194】
又は、かかる正に作用する間接的相互作用剤は、直接結合タンパク質の結合様式の変更を促進し、PDE4D7活性の増加を導く。通常負に作用する間接的相互作用剤はPDE4D7のインヒビターに抑制効果を持つことができる。かかる相互作用剤の例はPDE4D7インヒビターを分解する酵素的活性、又はPDE4D7インヒビターに結合してクエンチすることもできるタンパク質である。又はかかる相互作用剤はPE4D7の分解に導く活性を抑制することができる。例えば、プロテナーゼインヒビターである。さらなる例及びその実施は当業者に知られているものである。
【0195】
又は、PDE4D7活性の間接的刺激は、内因性PDE4D7遺伝子の発現を活性化、保護又は維持する化合物により伝達され得る。かかる化合物の例には、PDE4D7特異的転写因子、PDE4D7特異的mRNA安定化活性又はPDE4D7スプライス因子が挙げられる。さらなる例及びその実施は当業者に知られている。
【0196】
医薬組成物に含まれる「PDE4D7タンパク質」は、ここで記載のPDE4D7タンパク質であり得る。特に人ホスホジエステラーゼPDE4Dのスプライス変位7によりエンコードされるタンパク質であり、より好ましくは、Genbank Accession No:AF536976(version AF536976.1、GL22901883 as of 3 March 2009)であり、さらにより好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列である。ここで「PDE4D7タンパク質」にはまた、アミノ酸配列であり、配列番号2と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、6%、97%、98%又は99%同一である配列、又は配列番号1の配列と、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一のヌクレオチド配列によりエンコードされるアミノ酸配列が含まれる。PDE4D7の類似変異体、特に上記の変異体は、好ましくは、PDE4D7の機能を持つ、即ちcAMP分解機能である。本発明のさらなる実施態様では、PDE4D7の類似変異体はさらに、又はこれに代えて細胞内又は組織タイプ内でPDE4D7と類似又は同一の局所パターンを持つ。
【0197】
さらに好ましい実施態様では、PDE4D7とPDE4D7の類似変異体の間の領域又は類似性はこのタンパク質のN末端領域に存在され得る。例えば、類似変異体はPDE4D7に存在するN末端を含み、その他のタンパク質部分は上で示すPDE4D7との類似する部分を含むことができる。類似変異体のN末端部分は、PDE4D7からの、1から120、1から110、1から100、1から90、1から80、1から70、1から60、1から50、1から40、1から30、1から20又は1から10のアミノ酸を含むことができる。
【0198】
ここで用語「PDE4D7の生物活性同一」とは、PDE4D7タンパク質であって、PDE4D7の全ての又は大部分の機能を実行することができるタンパク質を意味する。好ましくは、これはcAMP分解可能性に関連する。本発明のさらなる実施態様では、PDE4D7の生物活性同一性はさらに又はこれに代えて細胞又は組織タイプ内のPDE4D7として類似又は同一の局所パターンを持つ。PDE4D7と生物活性同一性はまたここで規定されるPDE4D7変異体を含む。
【0199】
本発明によるPDE4D7又はPDE4D7の生物活性同一物は、当業者に知られた全ての適切な方法で組み換え的に製造され得る。本発明は、従ってまた、PDE4D7を製造する方法又はPDE4D7と生物活性同一物を製造する方法を含むものである。
【0200】
従って本発明は、PDE4D7又はPSE4D7と生物活性同一物をエンコードするヌクレオチドを含むベクター、宿主細胞及びPDE4D7の生成物又は組み換え技術によるPDE4D7の生物活性同一物を含む。
【0201】
適切なベクターには、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス又はレトロウイルスベクターが挙げられる。レトロウイルスには、複製機能又は複製機能欠失が含まれる。複製機能欠失の場合、ウイルス増幅は一般には、相補的宿主細胞内でのみ生じる。PDE4D7又はPDE4D7生物活性同一物をエンコードするポリヌクレオチドは、宿主に伝播させるために選択的マーカーを含むベクター又はキャリアと結合され得る。対応するポリヌクレオチド挿入は操作的に適切なプロモーターへ結合され得る。例えば、ファージラムダPLプロモーター、E.Coliのlac、trp、phoA及びtacプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター及びレトロウイルスLTRのプロモーター又はPSAプロモーターが挙げられる。他の適切なプロモーターは当業者に知られている。発現構築物はさらに転写開始、停止のサイト及び翻訳領域において、翻訳のためのリボソーム結合サイトを含む。構築物による発現される転写物のコード部分は、好ましくは、翻訳開始コドンを最初の位置に持ち、かつ翻訳されるポリペプチドの末端に適切に位置する終始コドン(UAA、UGA又はUAG)を含む。
【0202】
ポリペプチドまたタンパク質は、グリコシル化又は非グリコシル化され又は他の方法で修飾され得る。さらに、ポリペプチド又はタンパク質はまた、宿主介在プロセスの結果としてある場合には最初に修飾されるメチオニン残基を含んでいてよい。さらに、ポリペプチド、タンパク質又はペプチドは、アセチル化、ペグ化、ヘシル化、ホルミル化、ホスホリル化、アミド化、知られる保護/ブロック基による誘導体化、特異的化学的切断、タンパク質分解、細胞性リガンド又は他のタンパク質又はハピル化(即ち、グリシンリッチのホモアミノ酸ポリマー(HAP))などで修飾・変性され得る。かかる変性は当業者に知られる適性な方法で実施される。さらにポリペプチド、ペプチド又は変異体はひとつ以上の非古典的アミノ酸を含むことができる。
【0203】
さらに、本発明のPDE4D7又はPDE4D7と生物活性同一物は、化学的に当技術分野で知られる技術を用いて合成できる。例えばペプチド合成装置である。
【0204】
医薬組成物に含まれる「PDE4D7をエンコードし発現する核酸」とは、適切な全てのキャリア成分を意味し、発現可能なPDE4D7遺伝子を含む。好ましくは、かかるキャリア成分はGenbank Accession No:AF536976(version AF536976.1、 GL22901883 as of 3 March 2009)で定められる配列を含み、より好ましくは、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列である。かかるキャリア成分はまた、PDE4D7と高度の類似性を持ち、例えば、配列番号1の配列と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を持つ核酸配列又は、配列番号2で記載される配列と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を持つアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むことができる。又は、前記キャリアはPDE4D7のゲノム配列を含み、好ましくは、ENSEMBLデータベースエントリー番号ENSG00000113448(Version ENSG0000013448.8、Ensembl release53−March 2009)で定められる配列を、Genbank Accession No.AC034234(Version AC034234.4、GL18390182 as of 24 March 2009)又はWangらの2003、Cell Signal、15(9):883−91と組み合わせて定められる配列である。より好ましくは、前記キャリアは配列番号6に記載されるPDE4Dのゲノム配列を含むことができる。
【0205】
さらに、ここで定めるPDE4D7の生物活性同一物は本発明のキャリアに含まれ得る。
【0206】
PDE4D7をエンコードするポリヌクレオチドは好ましくは、人細胞に伝播させるための選択的マーカーを含むベクターの結合され得る。この好ましい実施態様ではポリヌクレオチドはPSAプロモーターに操作的に結合され得る。
【0207】
本発明の実施態様において、PDE4D7をエンコードし発現する核酸は生治療物を介して提供され得る。ここで「生治療物」とは、PDE4D7のPDE4D7又は生物的活性同一物が全ての適切な生キャリアに発現されることを意味する。従って、本発明は対応するポリヌクレオチドであって、生細胞中に発現するために適するものである。本発明はまた、そのような核酸を含むベクター、適切な宿主及びその宿主細胞中で組換え技術によるポリヌクレオチドの生成物を含む。
【0208】
用語「生キャリア」とは、当業者に知られる全ての生宿主細胞又はウイルスを意味する。適切な宿主の代表例には、限定されるものではないが、大腸菌又は乳酸菌、酵母細胞、原生動物、昆虫細胞又は動物細胞が挙げられる。好ましくは、この用語は、弱化バクテリア、弱化真菌又は弱化原生動物細胞に関する。適切なウイルスの代表例は、アデノウイルス、レトロウイルス又はアンチウイルスを含む群のウイルス、好ましくは弱化アデノウイルス、レトロウイルス又はレンチウイルスを含む群のウイルスが挙げられる。好ましい実施態様では、プロバイオティックスバクテリア細胞、特にプロバイオティック大腸菌や乳酸菌細胞が使用され得る。より好ましくは、 大腸菌Nissle1973やさらに好ましくはラクトバチルスカゼイやラクトバチルスゼアエ393が挙げられる。
【0209】
本発明の医薬組成物に含まれる「PDE4D7特異的miRNAインヒビター」とは、PDE4D7miRNA又はミクロRNA分子に相補的な核酸配列をエンコードする核酸分子を意味する。用語「相補的」とは、miRNAインヒビター核酸(センス分子)およびmiRNA(アンチセンス分子9間にミスマッチなしの完全な相補性を意味し、また同様に核酸がいくつかのミスマッチを含む及び/又はmiRNA分子と比較してヌクレオチドを付加又は欠失する場合も含む。他の実施態様では、「相補的」miRNAインヒビター核酸分子は、少なくとも10個の連続するヌクレオチドを含みこれがmiRNA分子に含まれる配列と完全な相補性を示すものである。
【0210】
通常miRNAインヒビター核酸分子は、天然DNA又はRNA分子又は合成核酸分子であってその配列中にひとつ以上の変更ヌクレオチドを含み、これらが同一か又はより異なるタイプであってよい。
【0211】
例えば、本発明に含まれるものとしては、かかるmiRNAインヒビター核酸分子が、少なくとも一つのリボヌクレオチドバックボーンユニットと少なくとも一つのデオキシリボヌクレオチドバックボーンを含むものである。さらに、miRNAインヒビター核酸分子はひとつ以上の前記RNA分子の2’−O−メチル基又は2’−O−メトキシエチル基(これはまた2’−O−メチル化と参照される)のバックボーンの変更を含み、これにより培地でのヌクレアーゼ分解を防止し、重要なことにまた、RNA誘導サイレンシング複合体ヌクレアーゼによる核酸鎖切断を防止するものである。というのはこの切断によりmiRNAインヒビターが非可逆的となるからである。他の可能な変更は、2’−O−メチル化と機能的に同等であるもので、ロック核酸(LNA)を含むものであり、ひとつ以上のLNAヌクレオチドモノマーを含む核酸類似体を表す。
【0212】
本発明において使用されるmiRNA発現の他のサイレンサーのクラスには、化学的に変更されたオリゴヌクレオチドで「アンタゴミル(antagomirs)」と言われるものであり、コレステロールへ共役した単鎖RNA分子を表す。この分子は19から25のヌクレオチドを含む。好ましくは、この分子は20、21、22、23又は24のヌクレオチドを含む。より好ましくは、分子は23ヌクレオチド(さらなる詳細はKrutzfeldtら、2005、Nature、438:685−689を参照すること。)を含む。
【0213】
本発明の他の実施態様では、miRNAインヒビターは、組織又は細胞へ導入される発現ベクターの形で提供される。又はかかるベクターがまた上記の生治療物中に導入され得る。
【0214】
通常RNAは、トランスフェクション、又は一過性発現ベクター又はキャリアからの形で与えられる組み換え遺伝子から生成され得る。例えば、競争的miRNAインヒビターは、ひとつ以上の、好ましくは、複数の、興味領域のミクロRNAへの連続する結合サイトを含む強力なプロモーターから発現される転写物として与えられ得る。Ebertらの、2007、Nat.Methods、4:721−726に記載される「ミクロRNAスポンジ」は、この技術の一例である。
【0215】
医薬組成物に含まれる「脱メチル化剤」は、クロマチン構造を脱メチル化する試薬であり、好ましくはプロモーター領域、より好ましくはPDE4D7プロモーター領域においてである。脱メチル化剤の例は、5−アザ−2’−デオキシシチジン及び5−アザシチジンである。これらは、クロマチン構造変化により遺伝子を不適切にサイレンスさせ、従って主要な細胞経路を回復させるものである。これにより通常、遺伝子を再発現させ転写状態をある側面で逆転させることとなる。5−アザ−2’−デオキシシチジン及び5−アザシチジンは通常DNAシトシンC5−メチルトランスフェラーゼ活性を、DNA中の5−アザ−2’−デオキシシチジン残基と酵素間で安定な複合体を形成することによりメチルトランスフェラーゼ酵素へ結合される際の安定な遷移中間体を真似ることにより、不活性化させることとなる。
【0216】
本発明の医薬組成物に含まれうる他の試薬は、それ自体又は5−アザ−2’−デオキシシチジン及び/又は5−アザシチジンと組み合わせることができる、トリコスタチンA(TSA)でる。
【0217】
ここで医薬組成物に含まれる「ホスホジエステラーゼ変位因子」とは、ホスホジエステラーゼ特にPDE4D7が相互作用相手又は相互作用物との相互作用を抑制又は阻害することができる化合物を意味する。かかるプロセスは最終的にはPDE特にPDE4D7が、以前とは異なる相互作用の相手との作用をするように関与させ、PDEの再分布へと導くこととなる。かかる新たな作用相手はPDE特にPDE4D7を隔離し得るものであり、従って細胞挙動を変更する。例えば、レセプター結合又は他のダウンストリーム活性に影響を強めることができる。かかる変位反応に関与し及び/又はPDEを隔離可能なタンパク質の相手の例には、AKAPなどのアンカータンパク質、DSIC1、β−アレスチン又はRACK1などの足場タンパク質、XAP2/AIP/ARA9などの制御タンパク質、PKA−Rサブユニット又はEPACなどのcAMP結合タンパク質又はβ1−アドレノセプタなどのレセプターが、ERKなどの酵素と同様に挙げられる。
【0218】
好ましいホスホジエステラーゼ変位因子はペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体及びアプタマーである。ホスホジエステラーゼ変異因子においても「ペプチド」とは、ホスホジエステラーゼ分子中に又は特にPDE4D7中での一連のアミノ酸を意味する。又は上記定める相互作用又は隔離するペプチドを意味する。該ペプチドに含まれる一連のアミノ酸の長さは、5から100アミノ酸、好ましくは10から50アミノ酸、より好ましい20から30アミノ酸である。その長さはPDE又は相互作用体タンパク質又はその部分と完全に同じ長さであってよく、又配列変位を有していてもよい。例えば、ペプチド配列は変更アミノ酸残基を全アミノ酸に対して25%まで含むことができる。好ましくは、かかる変位は、該分子の結合特性や構造を変化させないものである。ペプチドに存在するアミノ酸配列はまた、PDE又は相互作用物タンパク質の空間領域に存在してよく、従って分子の一次配列に隣接することなく並列するアミノ酸列を含むこととなる。
【0219】
ホスホジエステラーゼ変位因子での「ペプチド類似体」とは、ペプチドを真似るように設計された短いタンパク質様鎖を意味する。かかるペプチド類似体は、分子特性を変えるために、既存のペプチド例えばここで記載したペプチドを変更することから得られるものである。ペプチド類似体は、分子の安定性又は結合可能性を変化させる変更により得られる。これらの変更は、通常、天然では生じないペプチドへの変更を含む。例えば、本発明のペプチド類似体は、ペプチドバックボーンの変更又は非天然アミノ酸を含み得る。好ましくは、本発明のペプチド類似体はホスホジエステラーゼ特にPDE4D7、又は相互作用タンパク質又は上記の隔離タンパク質を代表する。
【0220】
本発明の一つの実施態様では、ペプチド類似体はPDE特にPDE4D7及びその相互作用物との相互作用をブロックし得る。本発明の他の実施態様では、ペプチド類似体はPDE特にPDE4D7及びその相互作用物との相互作用を強化し得る。
【0221】
ペプチド類似体の製造方法及び技術、ペプチド類似体のアッセイ及び試験については当業者に知られている。
【0222】
ホスホジエステラーゼ変位因子での「小分子」とは、小有機化合物であり、好ましくは生物活性即ち生分子であるが、好ましくはポリマーではない。かかる有機化合物は全ての適切な形又は化学的性質を含む。化合物は二次代謝物などの天然化合物又は人工化合物であって、新たに設計又は製造されたものであってよい。本発明の実施態様において、小分子はPDE特にPDE4D7とその相互作用物との相互作用をブロックすることができる。他の実施態様では、分子はPDE特にPDE4D7とその相互作用物との相互作用を強化することができる。小分子の製造方法及び同定技術同様に小分子のアッセイ及び試験については当業者に知られている。
【0223】
ホスホジエステラーゼ変異体での「抗体」又は「アプタマー」とは、PDE4D7特異的抗体又は抗体変異体又は断片を意味し、又PDE4D7特異的アプタマーであって、PDE特にPDE4D7とひとつ以上の相互作用体との相互作用を妨害又は撹乱することができるものである。又はこの用語はまたひとつ以上のPDE4D7の相互作用体と結合する抗体又はアプタマーを意味し、PDE特にPDE4D7とひとつ以上の相互作用体との相互作用を妨害又は撹乱することができるものである。抗体又はアプタマーの製造方法及び技術、抗体又はアプタマーのアッセイ及び試験については当業者に知られている。
【0224】
本発明の実施態様において医薬組成物はさらに追加の化合物を含むことができ、癌細胞に対して活性であり例えば、当業者に知られる細胞毒性化合物又は他の薬物治療又は放射線治療化合物が挙げられる。
【0225】
さらなる実施態様において、本発明は、PDE4D7発現生成物又はタンパク質特的アプタマー、PDE4D7の活性を直接刺激する又は変更する化合物、PDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト、PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター、アンタゴミル、PDE4D7特異的脱メチル化剤、PDE4D7特異的ホスホジエステラーゼ変位因子、PDE4D7特異的ペプチド類似体及びPDE4D7特異的小分子又は薬物の、同定のためのスクリーニング手順又は方法を含む。かかるスクリーニング手順は次のステップ:
(a)PDE4D7を、分泌タンパク質又は細胞膜上に又は細胞間成分としてのいずれかのポリペプチドとして発現する細胞を製造するステップ;
(b)ステップ(a)で製造したポリペプチドを相互作用体、例えばPDE4D7タンパク質特異的アプタマー、PDE4D7の活性を直接刺激する又は変更する化合物、PDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト、PDE4D7miRNA特的miRNAインヒビター、アンタゴミル、PDE4D7特異的脱メチル化剤、PDE4D7特異的ホスホジエステラーゼ変位因子、PDE4D7特異的ペプチド類似体及びPDE4D7特異的小分子又は薬物、に接触させるステップ;および
(c)結合及び/又はインヒビター効果又はPDE4D7活性の変化を観察することで相互作用体を同定するステップ、とを含む。
【0226】
またはかかるスクリーニング手順は次のステップ:
(a)直接または間接的に相互作用する分子例えば、
PDE4D7転写物特的アプタマー、PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター、アンタゴミル、PDE4D7特異的脱メチル化剤、PDE4D7特異的ホスホジエステラーゼ変位因子、PDE4D7特異的ペプチド類似体及びPDE4D7特異的小分子又は薬物、とPDE4D7を転写物として発現するひとつ以上の細胞と接触させるステップ;
(b)前記配列の発現レベルを検出するステップ;及び
(c)結合又はPDE4D7の発現レベルの変更または減少を観察することで相互作用体を同定するステップ、とを含む。
【0227】
本発明はまた、本発明のスクリーニング手順又は方法で得られた又は得られうる、PDE4D7発現生成物又はタンパク質特的アプタマー、PDE4D7の活性を直接刺激する又は変更する化合物、PDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト、PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター、アンタゴミル、PDE4D7特異的脱メチル化剤、PDE4D7特異的ホスホジエステラーゼ変位因子、PDE4D7特異的ペプチド類似体及びPDE4D7特異的小分子又は薬物、を含むものである。
【0228】
さらなる側面において本発明は、癌処置又は予防特に前立腺癌治療、好ましくはホルモン抵抗性前立腺癌の処置のための医薬組成物に関する。
【0229】
さらに他の側面において、本発明は、癌処置又は予防特に前立腺癌治療、好ましくはホルモン抵抗性前立腺癌の処置のための医薬組成物の製造のための、(a)PDE4D7の活性を直接刺激する又は変更する化合物;(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激する又は変更する化合物;(c)PDE4D7タンパク質又はそれと生物活性同一物;(d)PDE4D7をエンコードし発現する核酸;(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;(f)PDE4D7特異的脱メチル化剤及び/又は(g)PDE4D7特異的ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくはペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体又はアプタマー、の使用に関する。
【0230】
他の側面において本発明は、癌処置又は予防特に前立腺癌治療、好ましくはホルモン抵抗性前立腺癌の処置のための方法に関し、次のステップ:
(a)PDE4D7の活性を直接刺激する又は変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト;(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激する又は変更する化合物;(c)PDE4D7タンパク質又はそれと生物活性同一物;(d)PDE4D7をエンコードし発現する核酸;(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;(f)PDE4D7特異的脱メチル化剤及び/又は(g)PDE4D7特異的ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくはペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体又はアプタマー、を個人特に癌に罹っているか又は癌進展が予見される個人に投与するステップを含む。
【0231】
本発明の医薬組成物は、患者、対象物又は個人に、当業者に知られる種々の輸送系を利用して投与され得る。例えば、リポソームカプセル、ミクロ粒子、ミクロカプセル、化合物を発現可能な組み換え細胞、レセプター介在エンドサイトーシス、レトロウイルス又は他のベクターなどの部分としての核酸の構築物などである。投与方法は、局所投与経腸又は非経口であり得る。また、皮内、筋肉内、腹腔内、整脈内、皮下、鼻腔内、吸入、硬膜外及び経口経路であり得る。組成物は、全ての簡便な経路例えば、注入又はボーラス注射により、上皮又は粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通じる吸収、又は吸入による吸収などの経路で投与され、又は他の生物活性剤とともに投与され得る。投与はシステムによっても局所的であってもよい。局所投与の好ましい方法は直接注射である。
【0232】
他の実施態様において、興味サイトへ直接注射針をガイドするためのイメージング装置を利用して、医薬組成物を直接内部器官、体内空洞などに輸送され得る。医薬組成物はまた、外科干渉の際に疾患部へ投与され得る。他の実施態様では、医薬組成物は制御された放出システムを用いて輸送され得る。
【0233】
好ましくは、医薬組成物の剤形は、経口、局所又はシステム的投与に適したものである。好ましい実施態様では医薬組成物は、局所的、経口又はシステム的に投与される。
【0234】
本発明の具体的な実施態様では医薬組成物は、個々を分けるためのイムノアッセイの後、又は前立腺癌であるとされた特にPDE4D7レベルが減少したとして分類された個人を同定する方法の後で投与され得る。
【0235】
さらなる実施態様で、医薬組成物は本発明の医薬組成物の治療のための有効量及び医薬的に許容される担体を含む。用語「医薬的に許容される」とは、規制当局により承認されているか又は他の一般的に動物への使用のため特に人への使用のために認められた薬局方により承認されることを意味する。用語「担体」とは、希釈剤、アジュバント、賦形剤又は治療薬を投与する助剤を意味する。かかる担体は医薬的に許容される。即ち投与される量及び濃度で被投与者に非毒性である。
【0236】
一般的に、成分は別々に供与又は投与単位に一緒に混合されてよい。例えば、活性物質の量を示すアンプルやサケットなどの密閉容器に入れた凍結乾燥させた乾燥粉末又は無水の濃縮物として供給される。
【0237】
本発明の医薬組成物は、中性の又は塩の形で処方され得る。
【0238】
好ましくは、医薬組成物は、直接投与され、又は当業者に知られる全ての適切なアジュバントとともに投与され得る。本発明の組成物は、動物好ましくは哺乳類に投与され得る。「哺乳類」とは、当業者において通常使用されるものと同じ意味である。特に「哺乳類」には人が含まれる。
【0239】
用語「投与される」とは、前記組成物の治療的に効果的容量を意味する。「治療的効果投与量」とは、投与されて効果を生じる投与量であり、好ましくは、この効果はPDE4D7の誘導又は増加である。正確な投与量は治療目的に依存し、既知の技術を用いて当業者により確認することが可能である。当該分野で知られているように、全身的対局所輸送、年齢、体重、一般的健康状態、性、食餌、投与時間、薬物相互作用及び状態の緊急性などの調節が必要とされ得る。また当業者により定期的に実験により確認され得る。
【0240】
本発明の医薬組成物の活性物質又は化合物の濃度はさらに、意図される投与計画、意図される使用期間、組成物の合う全ての成分の正確な量及び比率及び当業者に知られたその他のファクタ及びパラメーターなどに合わせて調節され得る。
【0241】
本発明の活性成分又は組成物はそのままで投与され得るし、又は他の処置とともに投与され得る。好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は抗ホルモン処置例えば、抗アンドロゲン処置と組み合わせて投与され得る。
【0242】
本発明の医薬組成物はまた、当業者に知られた全ての適切な保存剤を含むことができう。
【0243】
さらに本発明による製造はまた、作用を補う又は強化するための抗酸化剤、フリーラジカル消失剤、抗紅斑性剤、抗炎症剤又は抗アレルギー性剤を含むことができる。
【0244】
本発明の他の実施態様で、医薬組成物の活性成分は、適切なキャリアタンパク質に融合させることができる。例えば、IgFcレセプタータンパク質又はポリマー性Igレセプターである。好ましくは、PDE4D7又は生物活性同一物は融合タンパク質として提供され得る。融合相手はN−又はC末端で提供され得る。
【0245】
本発明の医薬組成物が、生細胞又は生治療物の形で投与される場合に、組み換え及び調製された細胞が、当業者に知られる全ての適切な形で患者の投与され得る。好ましくは、生治療物が微生物を含む組成物の形で投与され得る。例えば、前記ラクトバチルスを10から1012細胞、好ましくは10から10細胞の範囲で投与され得る。
【0246】
本発明のさらなる実施態様では、医薬組成物又は医薬中の2以上の成分の比率は当業者の知識により適切に調節され得る。
【0247】
適切なアッセイが場合により、本発明の医薬組成物の成分の最適比率及び/又は投与量の範囲を決めるために適用され得る。処方物に適用されるべき医薬組成物の成分間の正確な投与量とそれらの比率は、とりわけ、用途の経路、及び疾患又は症状の正確なタイプに依存し、医者及びそれぞれの患者の条件による判断により決定されるべきである。有効量又は成分比率は、インビトロ又は(動物)モデル試験系から得られる投与量応答曲線から外挿されてもよい。
【0248】
通常投与量は、例えば、0.001から1000μgの範囲である。しかしこの例の範囲よりも下又は上も含まれ、特に前記の因子を考慮する。
【0249】
他の側面で本発明は、癌特前立腺癌のの治療又は予防のための医学キットに関し、次の群から選択される少なくともひとつの成分を含む:(a)PDE4D7の活性を直接刺激する又は変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性のアロステリックアゴニスト;(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激する又は変更する化合物;(c)PDE4D7タンパク質又はそれと生物活性同一物;(d)PDE4D7をエンコードし発現する核酸;(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;(f)PDE4D7特異的脱メチル化剤及び/又は(g)PDE4D7特異的ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくはペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体又はアプタマーである。
【0250】
医学キットは、医薬組成物を投与する際に使用され得るものである。特に本発明のキットは癌特に前立腺癌の処置又は予防のために使用され得る。
【0251】
本発明の医学キットの成分は、ひとつ以上の容器又は別の容器に含まれ得る。これらは好ましくは、医薬組成物又は薬物として、より好ましくは、これらは本発明の医薬組成物として構成されるものである。例えば、これらは適切な医薬担体などを含むことができる。特に好ましくは、局所的投与のための処方である。本発明の医学的キットは場合によりまた、文書を含み、この文書には医学キット及びその成分の適用方法が指示されている。好ましくは、本発明の医学的キットに含まれる指示書には推奨される処置選択、投与計画などが含まれる。医学的キットはまた、指示リーフレットを含み及び/又は使用、投与量などについても追加の情報を提供することができる。
【0252】
本発明の医学的キットは当業者に知られた全ての適切な投与計画により患者に投与され得る。医学的キットまたはキット成分は好ましくは、週に一回、より好ましくは2回、3回、4回、5回又は6回与えられ得る。最も好ましくは特に指示されない限り、毎日及び一日2回またはそれ以上である。治療の進展の間に、投与は、ずっと長い時間間隔で与えられ得る。また必要な場合ずっと短い時間間隔で与えられ得る、例えば、一日数回である。好ましい場合には、治療への応答がここで記載の方法及び当該分野に知られる方法でモニターされ、それにより投与量が最適化、例えば時間、量及び/又は成分などを最適化され得る。進展は周期的評価によりモニターされ得る。本発明は、医学的キットが共治療方法に適用することをも含む。即ち、例えば抗生物質、抗ウイルス剤又はIgG又はIgA免疫グロブリン、抗癌剤及び好ましくは抗ホルモン医薬より好ましくは上記の抗アンドロゲンなどの他の医薬物又は薬物とともに投与するものである。
【0253】
さらに具体的な側面において本発明は、PDE4D7の発現の決定のための成分と、前立腺癌特にホルモン抵抗性前立腺癌の治療のための医学的キットの成分とを含むキットに関する。
【0254】
さらに、本発明の特に好ましい実施態様で、診断、検出、モニター又は予見されるべき癌又はその進展が診断、検出、モニター又は予見されるべき癌、又は前記医薬組成物で処置されるべき、又は本発明の措置の方法により処置されるべき癌は、前立腺癌である。
【0255】
本発明の他の特に好ましい実施態様において、診断、検出、モニター又は予見されるべき癌又はその進展が診断、検出、モニター又は予見されるべき癌、又は前記医薬組成物で処置されるべき、又は本発明の措置の方法により処置されるべき癌は、ホルモン抵抗性前立腺癌である。用語「ホルモン抵抗性前立腺癌」とは、前立腺癌又は前立腺癌細胞系の成長及び増殖が男性性ホルモン刺激に抵抗性であることを意味する。この用語はまた、後期の前立腺癌進展段階も意味し、ここではもはや抗ホルモン好ましくは抗アンドロゲン投与に応じない段階である。
【0256】
通常前立腺癌進展は、エンドクリン制御からパラクリンそして最終的にはオートクリン制御への依存性のシフトを伴い、この複雑なプロセスは細胞制御の分子レベルで生じる変化の結果であると信じられている。この段階で主要の転移拡散の可能性があるためにホルモン抵抗性前立腺癌は本発明特に上記実施態様での診断及び治療の第一の目標である。
【0257】
以下の実施例及び図は、例示の目的で提示される。従って、これらの例及び図が限定するように解釈されるべきではない。当分野の当業者は、ここに説明される原理からさらなる変更・変法について明確に想到することができる。
【実施例】
【0258】
実施例1−人細胞系及び人組織異種移植片の定量的RT−PCRアッセイ
図1(なお詳細はMarquesら、2006、Eur.Urol、49(2):245−57参照)に示される細胞系及び人組織異種移植片からRNAを単離し、標準方法によりcDNAへ転写された。サンプル「PC346Pxenograft」から「346Flu2」は細胞系であり、サンプル「PC295」から「PC374」は異種移植片であり、これらはPDE4D7の発現レベルが試験された。
【0259】
qRT−PCR:材料及び方法
RNAサンプルをDNA汚染がないことを確認するためにDNaseで処理した。cDNA合成の前に、RNAサンプルを37℃でDNaseI(In Vitrogen)で処理した。1μgのRNAサンプルをSuperscript Vilo (In Vitrogen)で処理してqPCR分析のための第一鎖DNAを使用手順書に従って合成した。DNAサンプルはその後37℃でRnaseH1により30分間処理した。
【0260】
得られたDNAを最終濃度50−60ng/μlとなるように希釈し、その5μlを96−穴光学反応プレートのそれぞれのウェルに添加した。
【0261】
定量的PCr反応は、ABI Prism7300装置を用いて、次の手順に従って15μl反応容量で行った。
7.5μlのPlatinum qPCR SuperMix−UDGとROX(InVitrogen)
2.2μlのヌクレアーゼ不含有水
0.1μlの100pmol/μlプローブ
0.1μlの100pmol/μlフォワードプロモーター
0.1μlの100pmol/μlリバースプライマー
それぞれの反応ウェルの合計容量はcDNAを含めて15μlであった。
【0262】
PCRは次のプログラムに沿って40回以上行った。
段階 繰り返し 温度(℃) 時間
1 1 50 2秒
2 1 95 2分
3 40 95 15秒
60 1分
qRT−PCRプライマー及びプローブ(TAQMAN)
次のオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブをPDE4D7のRT−PCRにつき用いた。
長さ101の産物のために、フォワードプライマー:5’−TGCCTCTGAGGAAACACTAC−3’(配列番号3)、リバースプライマー:5’−GCTGAATATTGCGAC ATGAAAG−3’(配列番号4)を用いた。
【0263】
プローブとして5’−CCAGTAATGAAGAGGAAGACCCTTTCCGC−3’(配列番号5)を使用した。
【0264】
プローブセットは、PDEイソ型のユニークなN末端を目標とするように設計された。増幅産物は、ABI Prism technologyのTaqmanアッセイのための最適範囲となるように設計された。全てのアッセイはデータ信頼性を最大化するために4組で行った。GAPDH参照プローブがまた含まれており、全ての続くデータがこれを参照した。
【0265】
qRC−PCR:データ分析
異なるRT−PCR実験を正規化し比較するために、−ddCt方法が実施された。Ct値は、それぞれのプローブセットが比較できる効果で指数関数的に増幅されたところを観察し手動で閾値を得た。特に次のステップが実施された:
(1)参照及び興味遺伝子間(GAPDHを興味遺伝子から差し引く)のサイクル数の違いが計算され実験サンプル(ES)dCtを与えるステップ。
(2)ひとつのサンプルが標準として選択され、(LNCaP)(C)に対して比較され、そのdCtが計算されるステップ。
(3)サイクル数の違いを、dCt(ES)−dCt(C)=ddCtにより誘導するステップ。
(4)最終比較可能な発現値を、それぞれのサイクル後のDNAの2倍を考慮して2−ddCtにより誘導し、それによりLNCaPに比較してmRNAの量を示すステップ。
【0266】
この操作は、LNCaP(これは値1を持つ)に比べた値を与えた。即ち、1を超える全ての値が発現の増加として考慮され、1未満の値が発現が減少したとして考慮された。
【0267】
従って、全てのPCR反応はある範囲においては値1の結果を与えることが仮定されていた。
【0268】
異なるRT−PCR実験を正規化し比較するためにパーセント方法 それぞれのプローブセットにつきCt(サイクル数)値が得られた。これは、指数関数相での増幅曲線を横切るベースラインを見出すことで生成された。ベースラインは、それぞれの実験で得られた曲線により動的に生成された。GOIのCt(横切るかサイクル)値がGAPDH標準のCt値から差し引かれた。
【0269】
GOICtは常に参照遺伝子よりも大きいとして、Ct(GAPDH)−Ct(GOI)=dCtの式により、得られるdCt値は負の値と、即ち−dCt値となる。
【0270】
それぞれのサイクルの二重効果に基づいて、絶対値が比較発現値=2−dCtにより決定された。この計算から得られる値が非常に小さいものであることから、取り扱い上その値を1000倍した。
【0271】
この方法で得られたPDE4D7についての発現レベルが図2から7に示される。特に図2から4には、−ddCt方法による、異なる人前立腺癌細胞系及び異種移植片(図1)のPDE4D7cDNAの相対的発現の相違が示されている。一方図5から7には、個人の細胞系又は異種移植片組織材料での総PDE4D7発現に対して正規化された異なる人前立腺癌細胞系及び異種移植片(図1)のPDE4D7cDNAの相対的発現の相違が示されている。
【0272】
図2から7に示されるようにPDE4D7の発現(又は転写)レベルは、たいていのアンドロゲン依存又はアンドロゲン感受性対アンドロゲン依存細胞系(図3及び6)又は人異種移植片(図4及び7)の間には有意の違いがある。図2及び5は、細胞系及び異種移植片の組み合わされた結果が示されている。
【0273】
図2から7に示される結果により、人前立腺癌細胞系および組織中のPDE4D7転写は、所与の細胞タイプのアンドロゲンレセプター活性の状態の依存する。AR及びアンドロゲン/ホルモン刺激への細胞の感受性が存在する場合には、有意のPDE4D7転写が観察され、一方で活性ARが不在である場合にはPDE4D7転写は非常に最小であり、即ち実質的に不存在である。
【0274】
実施例2−人組織サンプルを用いた定量RT−PCRアッセ
人PDE4D7の相対的遺伝子発現を、ホルモン感受性/応答性対ホルモン抵抗性/去勢耐性患者につき患者からの前立腺癌組織で評価した。
【0275】
材料及び方法
PDE遺伝子発現実験でqPCR測定で使用したサンプルの詳細は表1にまとめられている:
【0276】
【表1】

全てのサンプルは男性患者(年齢52から82)から得られた。カラム「組織」は、外科、前立腺粗既視又はリンパ節のいずれかを示す。カラム「組織タイプ」とは組織切除方法が記載されている。特に記載されていない限り、組織は前立腺手術(前立腺切除)の際に切除されたものである。「TURF」とはTrans Urethral Resection of the Prostate(前立腺のトランス尿道切除)を示す。cDNA欄には4つのサンプルが含まれ、ホルモン感受性前立腺癌に罹っている患者からのサンプルであり、8つのサンプルはホルモン抵抗性前立腺癌に罹っている患者からのサンプルである(「yes」は「ホルモン抵抗性状態」を示す)、かつ4つのサンプルはリンパ節転移からのサンプルである。
【0277】
人PDE4D7に使用されたプライマー及びプローブ:
センスプライマー:CGGAATGGAACCCTATCTTGTC(配列番号7)
アンチセンスプライマー:TTGGTCGTTGAATGTTCTCTGAT(配列番号8)
プローブ配列:CCTCTCGCCTTCAGACAGTTGGAACAAGGAGAGG(FAM−ラベル化)(配列番号9).
PDE4D7特異的プライマー(配列番号7及び8)は、FAMプローブ(配列番号9)と前混合されて、定量的、リアルタイムPCR(qPCR)を実施し、製造者指示書(PrimerDesign、UK)により1:20希釈で使用した。人cDNAサンプルは標準の、qPCR専用、96−穴ミクロタイタ(MT)プレートに配置した。
【0278】
16の異なる患者からの16組織サンプルは96−穴MTプレートに配置された。使用された16ウェルにはそれぞれ約2−3ngのRNA逆転写されたcDNAが含まれていた。
【0279】
MTプレートの使用ウェルのそれぞれに、15μLのApplied BiosystemsのGeneAmp mastermix(2x)、13.5μLのRNAse/DNAse不含有水及び2μLのPrimerDesign PerfectProbe primermix(PrimerDesign、UK)を添加した。
【0280】
全てのサンプルは次にPCR手順で分析した:50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒、50℃で30秒蛍光測定、72℃で15秒、及び最後の3ステップを50回繰り返した。
【0281】
相対的遺伝子発現値の計算のために、次に手順が使用された:40又はそれ以上又は16未満のCT値は低品質の点から除外された(ここで試験された遺伝子は平均Ct値が約33であった)。
【0282】
CT値を正規化するために、次の方法が使用された:CT値を、較正曲線に基づき、相対的遺伝子複製数に変換した。較正曲線は異なる希釈率でのcDNAにつき独立して測定した。その後PDE4D7発現を、ハウスキーピング遺伝子(グリセリンアルデヒド−3−ホスファート−デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD))の平均複製数でPDE4D7複製数を割り算する。
【0283】
リンパ節転移組織サンプルを含む、人前立腺組織(ホルモン応答性対ホルモン抵抗性)の人PDE4D7の相対的発現
人PDE4D7イソ型の遺伝子発現レベルは上で記載のように人前立腺組織で決定された。相対発現レベルは2つの既定の前立腺組織で決定された:「ホルモン応答性」及び「ホルモン耐性」である。人PDE4D7発現状態の初期研究のために、一次前立腺癌サンプルと共にリンパ節転移サンプルも含められた。
【0284】
リンパ節転移サンプルは、一次腫瘍からセンチネルリンパ節へ伝搬され侵入的に成長することで特徴付けされる。この意味で、これらのサンプルは一次腫瘍細胞とは分子的見地から相違するものであり、制御されない増殖ではあるがなお一次臓器内で成長するという特徴を持つ。侵入性成長はより積極的な振る舞いを意味するが、これはまたホルモン耐性前立腺癌組織にも見られる。
【0285】
スチューデントtテストを実施し、人PDE4D7遺伝子発現が、ホルモン応答性人前立腺組織と比較してホルモン抵抗性腫瘍組織において、やや平均で減少しているかどうかを調べてた。
【0286】
図8及び9から分かるように、ホルモン抵抗性腫瘍での発現は、一般に減少する。しかしホルモン感受性前立腺腫瘍グループでの発現からは容易には区別できない。試験されたタイプ間でのPDE4D7発現の平均の差は、従って有意ではないことが見出された(p−値=0.22)。
【0287】
この結果は、グループ1の分析に含まれるサンプルの部分のより積極的な振る舞いにより説明可能であると思われる。次のことが予想される。積極的な疾患がすでにアンドロゲン応答を失っている腫瘍細胞中に存在し、従って、ホルモン耐性又はホルモン抵抗性の振る舞いが本来的に積極的腫瘍に含まれている、ということである。これらの細胞は従って、アンドロゲン剥奪条件で選択されると考えられる。このことは、なぜかかる組織タイプが人PDE4D7の減少された発現レベルを示す傾向があり、これにより標準スチューデントtテストで有意でないp−値となるかを説明するものと思われる。従って、リンパ節切除サンプルの状態を正しく決定することの難しさ、即ちこれらの腫瘍にはすでにある程度のホルモン抵抗性腫瘍細胞集団を含んでいることが結論されることができないという事実が、得られた結果を引き出したものである。
【0288】
リンパ節切除組織サンプルを除いた、人前立腺組織(ホルモン応答性対ホルモン抵抗性)での相対的人PDE4D7発現
この問題を迂回するために、相対的発現レベルが2つの既定の組織で決定された:「ホルモン応答性」及び「ホルモン耐性」であり、ここで一次前立腺癌サンプルのみの人PDE4D7発現の研究に使用された。即ちリンパ節切除からの全てのサンプルが除外された。
【0289】
スチューデントtテストを実施して、人PDE4D7遺伝子発現が、ホルモン応答性人前立腺組織に比較してホルモン抵抗性腫瘍組織中で平均して有意に減少するかどうかを見た。
【0290】
図10及び11から分かるように、ホルモン抵抗性前立腺腫瘍での発現は減少し、ホルモン感受性前立腺腫瘍グループでの発現から容易に区別できる。2つの組織間(ホルモン抵抗性腫瘍組織対ホルモン感受性腫瘍組織)の平均発現差は有意であった(p=0.032)。
【0291】
図10及び11は、ホルモン抵抗性前立腺腫瘍でのPDE4D7の発現が一般的に、ホルモン感受性腫瘍に比較して減少することを示す。従って、cAMP−PDE活性の減少レベルは、細胞増殖を強化するために有利であることを結論する。次のことは長い間予想されてきたことである。即ち、アンドロゲンレセプター遺伝子の変異又は遺伝子増幅に続いて、他の細胞シグナル経路がホルモン応答性からホルモン独立性細胞成長の転移を支持することができる、ということである。
cAMP−PKA経路は、ホルモン関連成長の転移を意味するとされてきた経路の一つである。ホルモン感受性からホルモン耐性人前立腺組織へのPDE4D7発現の変化はこの経路を支持する。
【0292】
実施例3−PC3増幅に対してPDE4D7発現の効果
アンドロゲン非依存性細胞系の増殖における人PDE4D7の不均一な発現の効果を試験するために、いくつかの遺伝子構築物がPC3細胞に形質転換され、コントロール細胞系と比較して細胞成長を試験した。コントロールとして無処理のPC3細胞、PDE4D7のドミナントネガティブ形で形質転換されたPC3(ここでPDE4D7の触媒活性はPDE4D7のコード配列の遺伝子変異によりノックアウトされている)を、PDE4D1などのPDE4D7ファミリの異なるイソ型で形質転換したPC3と共に使用した。
【0293】
PC3細胞は、5%CO、37℃、L−グルタミン(最終濃度2mM)及びPenStrep (1%)で補助されたRPMI 1640中で成長させた。PC3細胞は96穴ウェルプレート(MTP)のウェル当たり5000細胞濃度で植えつけた。興味遺伝子(PDE4D7、ドミナントネガティブPDE4D7及びPDE4D1)の形質転換複合物は、Fugene6Transfection試薬を指示書の従って用いて形成した。興味遺伝子それぞれにつき、約25の独立した形質転換体が、試験の統計的精度を上げるために実施された(それぞれのバーは、約25の独立した測定を表す)。
【0294】
処理後の最初の4時間のち、形質転換複合体が成長培地に添加され、60時間増殖され、その後PromegaMTT化合物が添加された。細胞増殖試験MTTアッセイ手順は指示書に従った。
【0295】
吸収測定は、MithrasLB940プレート読取システムを用いた。
【0296】
上記の実験で示されるように、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞系PC3における人PDE4D7不均一発現は、インビボでの増殖に対し負の効果を示した。選択された条件での細胞増殖は、無処理の細胞に比較して人PDE4D7発現を合計−15%抑止された。この効果は統計的に有意であった(無処理のPC3に比較してp<0.001)。
【0297】
この実験により、人PDE4D7の活性は、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞の増殖に抑制効果があることが示された。細胞増殖への観測された効果は統計的に高度の有意である。
【0298】
実験に使用された形質転換物の転移方法により(即ち、形質転換効率に多かれ少なかれ依存して、より少ないPC3が形質転換され従ってPDE酵素を過剰発現する)、より高い転移的形質変換効率がPC3細胞で達成されると細胞増殖の抑制のより高いレベルが予想される。
【0299】
本出願は、次のさらなる実施態様の事項を含む:
1.癌のマーカーとして使用するホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)。
2.癌又は癌進展の診断、検出、モニター又は予見のための組成物であり、PDE4D7発現生成物又はタンパク質のための核酸親和性リガンド及び/又はペプチド親和性リガンドを含む、組成物。
3.事項2の組成物であり、前記核酸親和性リガンド又はペプチド親和性リガンドが造影剤として機能するように変性されている、組成物。
4.事項2の組成物であり、前記親和性リガンドが一組の、PDE4D7発現生成物のための特異的なオリゴヌクレオチド、PDE4D7発現生成物のための特異的なプローブ、PDE4D7発現生成物又はPDE4D7タンパク質のための特異的アプタマー、PDE4D7タンパク質の特異的抗体及び/又はPDE4D7タンパク質の特異的抗体変異体である、組成物。
5.PDE4D7の、癌又は癌進展の診断、検出、モニター又は予見のためにマーカーとしての使用。
6.癌又は癌進展の診断、検出、モニター又は予見のため方法であり、少なくともサンプル中のPDE4D7のレベルを決定するステップを含む、方法。
7.事項6に記載の方法であり、前記決定のステップが、核酸又はタンパク質レベルの決定又はPDE4D7の生物活性決定により遂行される方法。
8.事項7に記載の方法であり、前記方法が、前記測定された核酸又はタンパク質レベル又は前記測定された生物活性をコントロールレベルと比較するステップをさらに含む、方法。
9.データ取得方法であり、少なくとも次のステップ:
(a)PDE4D7の発現を個人で試験するステップ;
(b)ステップ(a)で決定された前記発現レベルコントロールレベルと比較するステップとを含む、方法。
10.事項2又は事項6乃至9のいずれかひとつの方法であり、前記診断、検出、モニター、予見又はデータ取得が個人から得られたサンプルで実施される、方法。
11.癌又は癌進展の診断、検出、モニター又は予見のためイムノアッセイであり、少なくとも次のステップ:
(a)PDE4D7発現につき個人から得られたサンプルで試験するステップ;
(b)PDE4D7発現につきコントロールサンプルで試験するステップ;
(c)ステップ(a)及び(b)のPDE4D7発現の差を決定するステップ;及び
(d)ステップ(c)で得られた結果に基づいて、癌又は癌の進展の存在又は段階を決定するステップとを含む、方法。
12.事項10に記載の方法又は事項11に記載のイムノアッセイの方法又は使用であり、前記サンプルが組織サンプル、尿サンプル、尿ちんサンプル、血液サンプル、唾液サンプル、精液サンプル又は循環腫瘍細胞を含むサンプルである、使用又は方法。
13.少なくとも一つの成分を含む医薬組成物であり、前記成分が:
(a)PDE4D7の活性を直接刺激するか変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性に対してアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激するか変更する化合物;
(c)PDE4D7タンパク質又はその生物活性同一物;
(d)PDE4D7をエンコードし、発現する核酸;
(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び
(g)ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくはペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体又はアプタマー、を含む群から選択される、組成物。
14.癌の治療又は予防のための医薬組成物であり、前記成分が:
(a)PDE4D7の活性を直接刺激するか変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性に対してアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激するか変更する化合物;
(c)PDE4D7タンパク質又はその生物活性同一物;
(d)PDE4D7をエンコードし、発現する核酸;
(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び
(g)ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくはペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体又はアプタマー、を含む群から選択される、医薬組成物。
15.癌の治療又は予防のための医薬組成物の製造のための、
(a)PDE4D7の活性を直接刺激するか変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性に対してアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激するか変更する化合物;
(c)PDE4D7タンパク質又はその生物活性同一物;
(d)PDE4D7をエンコードし、発現する核酸;
(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び
(g)ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくはペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体又はアプタマー、の使用。
16.事項1のホスホジエステラーゼであり、事項2乃至4のいずれかに記載の組成物、事項5、10又は12のいずれかに記載の方法、事項11又は12のいずれかに記載のイムノアッセイ、事項13又は14に記載の医薬組成物、又は事項15に記載の使用であり、前記癌が前立腺癌である、ホスホジエステラーゼ、使用、組成物、方法、イムノアッセイ又は医薬組成物。
17.事項16に記載のホスホジエステラーゼ、使用、組成物、方法、イムノアッセイ又は医薬組成物であり、前記前立腺癌がホルモン抵抗性前立腺癌である、ホスホジエステラーゼ、使用、組成物、方法、イムノアッセイ又は医薬組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌のマーカーとして使用するホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)。
【請求項2】
前立腺癌又は前立腺癌進展の診断、検出、モニター又は予見のための組成物であり、PDE4D7発現生成物又はタンパク質のための核酸親和性リガンド及び/又はペプチド親和性リガンドを含む、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であり、前記核酸親和性リガンド又はペプチド親和性リガンドが造影剤として機能するように変性されている、組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の組成物であり、前記親和性リガンドが一組の、PDE4D7発現生成物のための特異的なオリゴヌクレオチド、PDE4D7発現生成物のための特異的なプローブ、PDE4D7発現生成物又はPDE4D7タンパク質のための特異的アプタマー、PDE4D7タンパク質の特異的抗体及び/又はPDE4D7タンパク質の特異的抗体変異体である、組成物。
【請求項5】
PDE4D7の、前立腺癌又は前立腺癌進展の診断、検出、モニター又は予見のためにマーカーとしての使用。
【請求項6】
前立腺癌又は前立腺癌進展の診断、検出、モニター又は予見のため方法であり、少なくともサンプル中のPDE4D7のレベルを決定するステップを含む、方法。
【請求項7】
ホルモン抵抗性前立腺癌又はホルモン抵抗性前立腺癌の進展を診断、モニター又は予見する方法であり、前記方法はホルモン感受性及びホルモン抵抗性前立腺癌を区別し、次のステップ:
(a)サンプル中のPDE4D7レベルを決定するステップ;
(b)サンプル中の参照遺伝子の前記発現レベルを決定するステップ;
(c)前記測定されたPDE4D7発現レベルを前記参照遺伝子に対して正規化するステップ;及び
(d)前記正規化された発現レベルを、ホルモン感受性前立腺癌を除外するために既定された閾値と比較するステップとを含み、前記閾値よりも小さい正規化発現レベルはホルモン抵抗性前立腺癌であることを示し、かつ前記閾値が約1と7、好ましくは約5である、方法。
【請求項8】
データ取得方法であり、少なくとも次のステップ:
(a)PDE4D7の発現を個人で試験するステップ;
(b)ステップ(a)で決定された前記発現レベルコントロールレベルと比較するステップとを含む、方法。
【請求項9】
前立腺癌又は前立腺癌進展の検出、診断、モニター又は予見のためイムノアッセイであり、少なくとも次のステップ:
(a)PDE4D7発現につき個人から得られたサンプルで試験するステップ;
(b)PDE4D7発現につきコントロールサンプルで試験するステップ;
(c)ステップ(a)及び(b)のPDE4D7発現の差を決定するステップ;及び
(d)ステップ(c)で得られた結果に基づいて、癌又は癌の進展の存在又は段階を決定するステップとを含む、方法。
【請求項10】
ホルモン感受性及びホルモン抵抗性前立腺癌を区別するためのイムノアッセイであり、次のステップ:
(a)サンプル中のPDE4D7レベルを決定するステップ;
(b)サンプル中の参照遺伝子の前記発現レベルを決定するステップ;
(c)前記測定されたPDE4D7発現レベルを前記参照遺伝子に対して正規化するステップ;及び
(d)前記正規化された発現レベルを、ホルモン感受性前立腺癌を除外するために既定された閾値と比較するステップとを含み、前記閾値よりも小さい正規化発現レベルはホルモン抵抗性前立腺癌であることを示し、かつ前記閾値が約1と7、好ましくは約5である、イムノアッセイ。
【請求項11】
前立腺癌治療を受けるべき個人を同定する方法であり、次のステップ:
(a)PDE4D7の発現につき個人から得られたサンプルを試験するステップ;
(b)参照遺伝子の前記発現について前記サンプル中で試験及び/又はPDE4D7発現のためのコントロールサンプル中で試験するステップ;
(c)ステップ(a)の発現レベルをステップ(b)のレベルに相対して分類するステップ;及び
(d)個人のサンプルが、PDE4D7発現レベルが減少していると分類される場合に前記個人が前立腺癌治療を受けるべきと同定するステップ、を含む方法。
【請求項12】
前立腺癌疾患を持つ個人又は個人集団を分けるためのイムノアッセイであり、次にステップ:
(a)PDE4D7の発現につき個人から得られたサンプルを試験するステップ;
(b)参照遺伝子の前記発現について前記サンプル中で試験及び/又はPDE4D7発現のためのコントロールサンプル中で試験するステップ;
(c)ステップ(a)の発現レベルをステップ(b)のレベルに相対して分類するステップ;及び
(d)個人のサンプルが、PDE4D7発現レベルが減少している場合に前記個人又は個人の集団を分けるステップ、を含む方法
【請求項13】
請求項6乃至8又は11のいずれか一項に記載の方法、又は請求項9、10又は12のいずれか一項に記載のイムノアッセイであり、核酸又はタンパク質レベルの測定により又はPDE4D7又は参照遺伝子の生物活性の測定により、前記発現の試験又は決定が遂行又は部分的に遂行される、方法又はイムノアッセイ。
【請求項14】
請求項13に記載の方法又はイムノアッセイであり、前記方法又はイムノアッセイが、前記測定された核酸又はタンパク質レベル又は前記測定された生物活性をコントロールレベルと比較するステップをさらに含む、方法又はイムノアッセイ。
【請求項15】
請求項7、11、13又は14のいずれか一項に記載の方法、又は請求項10又は12乃至14のいずれか一項に記載のイムノアッセイであり、前記参照遺伝子がハウスキーピング遺伝子であり、好ましくはGAPDH又はPBGD、又は異なるホスホジエステラーゼ好ましくはPDE4D7である、方法又はイムノアッセイ。
【請求項16】
請求項7、11又は13乃至15のいずれか一項に記載の方法、又は請求項10又は12乃至15のいずれか一項に記載のイムノアッセイであり、前記方法又はイムノアッセイが、前立腺特異的抗原(PSA)のレベルの決定するステップを含む、方法又はイムノアッセイ。
【請求項17】
請求項6、7又は13乃至15のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6、7、11又は13乃至15のいずれか一項に記載のイムノアッセイであり、前記サンプルが、組織サンプル、尿サンプル、尿ちんサンプル、血液サンプル、唾液サンプル、精液サンプル、循環腫瘍細胞を含むサンプル又は前立腺分泌エキソソームを含むサンプルである、方法又はイムノアッセイ。
【請求項18】
少なくとも一つの成分を含む医薬組成物であり、前記成分が:
(a)PDE4D7の活性を直接刺激するか変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性に対してアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激するか変更する化合物;
(c)PDE4D7タンパク質又はその生物活性同一物;
(d)PDE4D7をエンコードし、発現する核酸;
(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び
(g)ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくはペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体又はアプタマー、を含む群から選択される、組成物。
【請求項19】
前立腺癌の治療又は予防のための医薬組成物であり、前記成分が:
(a)PDE4D7の活性を直接刺激するか変更する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性に対してアロステリックアゴニスト;
(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激するか変更する化合物;
(c)PDE4D7タンパク質又はその生物活性同一物;
(d)PDE4D7をエンコードし、発現する核酸;
(e)PDE4D7miRNA特異的miRNAインヒビター;
(f)脱メチル化剤;及び
(g)ホスホジエステラーゼ変位因子、好ましくはペプチド、ペプチド類似体、小分子、抗体又はアプタマー、を含む群から選択される、医薬組成物。
【請求項20】
請求項11又は13乃至16のいずれか一項に記載の方法、又は請求項12乃至16のいずれか一項に記載のイムノアッセイであり、前記前立腺癌治療が請求項16に記載の医薬組成物の投与又は請求項16に記載の医薬組成物と追加の癌治療、好ましくは放射線治療又は薬物療法と組み合わせて投与することを含む、方法又はイムノアッセイ。
【請求項21】
請求項1のホスホジエステラーゼであり、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の組成物、請求項5に記載の使用、請求項6、11又は13乃至17のいずれか一項、又は請求項7又は20に記載の方法、請求項9又は12乃至17のいずれか一項又は請求項20に記載のイムノアッセイ、請求項19に記載の医薬組成物であって、前記前立腺癌がホルモン抵抗性前立腺癌である、ホスホジエステラーゼ、組成物、使用、方法、イムノアッセイ又は医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−526545(P2012−526545A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510424(P2012−510424)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052073
【国際公開番号】WO2010/131195
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【出願人】(511272853)ザ ユニヴァーシティ コート オブ ザ ユニヴァーシティ オブ グラスゴー (1)
【Fターム(参考)】