説明

剥離検知機能付きラベル及びラベル剥離検知方法

【課題】基材の片面に粘着層が設けられ、前記粘着層とは反対側の面にインキ印刷層が設けられた剥離検知機能付きラベルが溶剤を用いて剥離された場合に、その痕跡が容易に確認できるようにする。
【解決手段】粘着層を溶解する溶剤に溶解する赤外線吸収色素が分散され、かつ、互いに隣接する高次構造を形成した赤外線吸収インキパターンが前記印刷層に形成され、前記赤外線吸収色素が前記溶剤に溶解して前記高次構造が分解されることで前記赤外線吸収色素の赤外線吸収スペクトルが変わる剥離検知機能付きラベルを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離された場合に剥離されたことを検知可能にする剥離検知機能付きラベルに関するものである。特に、貼り替えられたときに、目視では確認できないが、剥離したことが特定の関係者にのみ、確認可能とする剥離検知機能付きラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重要書類や貴重品等を保管する保管容器を封印したり、商品の未使用を証明したりするためにラベルが用いられている(例えば、特許文献1参照)。また、ラベルにICチップを設け、これを商品等に貼付して在庫管理等を、効率よく正確に行う技術が提案、実現されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらのラベルには、不正にラベルが剥離されることを防止するための様々な工夫がなされている。特許文献1のラベルは、ラベルを剥離した場合に、剥離したことの証となる文字等の剥離表示が出現する機能を有する。また、特許文献2のデータキャリアは、ICチップのアンテナ回路の外周に切り欠きやミシン目を易破断性の回路を破断検出センサとしてアンテナ回路の外側を周回するように設けられた導体からなる易破断性の回路を有し、商品等に貼付された後にデータキャリアの不正な貼り替えを検知できる機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−255838号公報
【特許文献2】特開2006−39643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなラベルでは、改ざんされたときに、目視により改ざんされたことが容易に確認できるため、不正貼り替えの手段が変更され、ラベルに接着剤等を溶かす溶剤等を塗布したり、温風を当てたりして、また、さらに、刃をラベルと被着体の間に入れて剥がしたりすることで、ラベル基材等を破損すること無く剥離しようとし、結果、破損することなく剥離されて偽造されてしまう。そのため、外見上は不正に剥離された痕跡が残らず、改ざんされたことがわからない偽造がされることになる恐れがある。また、一方で、ICチップを用いたラベルでは、正規のラベルからICチップを取り外し、その取り外したICチップを偽造したラベルに内包することで不正なラベルが作られてしまうという問題点がある。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、溶剤を用いて剥離されて偽造された場合に、剥離された痕跡が目視では確認できないが、赤外線を用いて容易に確認でき、かつ、カラーコピー等でラベル自体の複製が不可能な偽造防止機能を有する剥離検知機能付きラベル及びこれを用いた剥離検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、基材の片面に粘着層が設けられ、前記粘着層とは反対側の面にインキ印刷層が設けられた剥離検知機能付きラベルであって、前記粘着層を溶解する溶剤に溶解する赤外線吸収色素が分散され、かつ、互いに隣接する高次構造を形成した赤外線吸収インキパターンが前記インキ印刷層に形成され、前記赤外線吸収色
素が前記溶剤に溶解して前記高次構造が分解されることで前記赤外線吸収色素の赤外線吸収スペクトルが変わることを特徴とする剥離検知機能付きラベルである。
【0008】
また、本発明は、基材の片面に粘着層が設けられ、前記粘着層とは反対側の面にインキ印刷層が設けられた剥離検知機能付きラベルであって、前記粘着層を溶解する溶剤に溶解する赤外線吸収色素が分散され、かつ、互いに隣接する高次構造を形成した赤外線吸収剤パターンが前記粘着層に形成され、前記赤外線吸収色素が前記溶剤に溶解して前記高次構造が分解されることで前記赤外線吸収色素の赤外線吸収スペクトルが変わることを特徴とする剥離検知機能付きラベルである。
【0009】
また、本発明は、上記赤外線吸収色素が、100℃に加熱されると赤外線吸収効率が劣化することを特徴とする上記の剥離検知機能付きラベルである。
【0010】
また、本発明は、上記基材の面の法線方向に切り込みを入れたスリットを形成したことを特徴とする上記の剥離検知機能付きラベルである。
【0011】
また、本発明は、上記の剥離検知機能付きラベルに対し、赤外線を照射して、少なくとも2波長の赤外線吸収効率を検出することで上記ラベルの剥離の有無を検知することを特徴とするラベル剥離検知方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上の構成であるから、下記に示す如き効果を奏することができる。即ち、本発明は、基材に、赤外線吸収色素を分散して含むインキ印刷層を備えているので、赤外画像、または、赤外検出機にて吸収があることが判定できるため、複写等の偽造を行った場合に、不正に貼り替えたものとの真偽判定が可能である。さらに、インキや赤外線吸収剤パターン内に分散して互いに隣接する高次構造を形成している状態と有機溶剤が浸入して溶解することで高次構造が分解された状態では吸収波形が異なる赤外線吸収色素を分散したインキ印刷層や粘着層を設けているため、有機溶剤を使用して剥離検知機能付きラベルを剥離しようとした場合に、有機溶剤に赤外線吸収色素が溶解し、赤外領域の分光が変化する。そのため、不正な偽造がされた痕跡が、赤外画像、または、赤外検出機にて、特定の者にのみ検知することが可能になる効果がある。
【0013】
また、本発明によれば、熱により赤外線の吸収が低下する赤外線吸収色素を使用するため、熱により剥がし取った場合に、赤外画像、または、赤外線検出機にて、不正があったことが、特定の者にのみ検知することが可能となると共に、不正物品等に貼り替えるといった不正使用を不可能にすることができる効果がある。
【0014】
また、本発明によれば、剥離検知機能付きラベルを使用している赤外線吸収色素を分散したときの吸収極大波長と、吸収極大波長から離れた波長との2つの波長の赤外線を検知することによって、赤外の吸収に変化があったことが判別でき、確実に不正があったかどうかを検出することが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態の剥離検知機能付きラベルの断面を表した説明図である。
【図2】(a)本発明の第1の実施形態の赤外線吸収インキパターン中の赤外線吸収色素の高次構造を示す断面模式図である。(b)本発明の第1の実施形態の赤外線吸収インキパターンに溶剤が浸入した場合に赤外線吸収色素の高次構造が分解することを示す断面模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の剥離検知機能付きラベルの平面図を表した説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の剥離検知機能付きラベルの各状態における赤外吸収色素の反射率の分光測定結果のグラフである。(a)通常の状態。(b)溶剤を使用した場合。(c)熱をかけた場合。(d)貼り替えが行われた場合。
【図5】本発明の第2の実施形態の剥離検知機能付きラベルの断面を表した説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の剥離検知機能付きラベルの赤外画像を表した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に従い、本発明に係わる剥離検知機能付きラベル1及びこれを用いた剥離検知方法について詳しく説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の剥離検知機能付きラベル1の断面を表した説明図であり、この剥離検知機能付きラベル1は、赤外線を反射する基材11の表面に、インキ印刷層21を備えていて、インキ印刷層21の一部には赤外線吸収インキパターン22が印刷されている。この赤外線吸収インキパターン22は、図2(a)のように、熱に弱い赤外線吸収色素22aが分散されて、赤外線吸収インキパターン22中で分散しつつも赤外線吸収色素22a同士が隣接して高次構造23を形成したインキを印刷して形成する。基材11の反対の面には、ICチップ51、および、アンテナ52とこれらの支持体53が備えられ、これらを覆うように粘着層31を設ける。そして、基材11の面に対する法線方向に切り込みを入れて基材11と支持体53を貫通して粘着層31に達するスリット41を形成する。また、この剥離検知機能付きラベル1には離型紙61を仮粘着する。
【0017】
以下に本実施形態の剥離検知機能付きラベル1を構成する各層の材料と形成方法について、具体的に説明する。
(赤外線反射性の基材11)
第1の実施形態で用いる基材11は、赤外光を反射する性質を持つ基材11であり、特には、赤外線吸収インキパターン22の反射率に比べて、かなり高い反射性を持つ基材が好適であり、パターンの検出に用いる赤外線の反射率が80%以上であることが好ましい。
【0018】
基材11に用いる材料としては、脆性を有するフィルムや紙が好ましく、加工が容易で脆性の高い材料としては、カオリン、炭酸カルシウムなどの可塑剤を適量混合して脆質化した脆性塩化ビニル、脆性ポリエステルなどの合成樹脂フィルムが好適である。セルロースアセテート、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの高結晶性プラスチック素材を溶液成膜からフィルム化した物、あるいは、合成繊維での不織布、さらには、アート紙、コートし、上質紙などの用紙も望ましい。
【0019】
(インキ印刷層)
インキ印刷層21は、剥離検知機能付きラベル1に必要な情報や、マーク、デザイン、偽造防止に必要な地紋等を、印刷にて設けたものである。印刷法としては、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等、既知の印刷方法であれば良く、これに限定しない。また、印刷に用いるインキは通常に使用されるインキを使用できるが、赤外線を検知するときに検出以外の部分は吸収する部分がない方が検出しやすいため、赤外線に吸収のないY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)の三色で印刷することが好ましい。
【0020】
(赤外線吸収インキパターン)
赤外線吸収インキパターン22は、インキ印刷層21の一部の領域に形成し、赤外線吸
収色素22aを貧溶媒に分散させて作成した赤外線吸収インキパターン22を印刷して形成したインキ印刷層21の一部の印刷パターンである。赤外線吸収インキパターン22が含む赤外線吸収色素22aは、貧溶媒に溶解しないので、乾燥した赤外線吸収インキパターン22が図2(a)のように、赤外線吸収色素22aがある程度均一に分散しつつも、赤外線吸収色素22a同士が隣接する高次構造23が形成されて赤外線吸収インキパターン22中に分散する構造が形成される。赤外線吸収色素22aとしては、800nm〜1400nmに吸収のある近赤外線吸収色素22aであって、例えば、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、ジイモニウム化合物、シアニン化合物を用いる。これらの赤外線吸収色素22aの化合物は、その化合物を変性して、その化合物の主鎖に側鎖として例えばカルボン酸エステル基などの官能基を接続することにより、その耐熱性等の特性を変えて、100℃の熱を加えることで劣化するように熱に弱い分子にする。
【0021】
また、これらの赤外線吸収色素22aの分子には、その分子の主鎖に、ラベルを剥がす際に用いられる溶剤への溶解性を付与する官能基の側鎖を付加する。例えば、フタロシアニン化合物は、そのままでは溶剤不溶性であるが、そのフタロシアニン化合物の主鎖に、側鎖の先端に金属元素を設置し、その金属元素に加水分解基を接続して成る側鎖を接続した加水分解性金属化合物のフタロシアニン化合物にすることで、溶剤溶解性のフタロシアニン化合物にして用いる。また、同様に、ナフタロシアニン化合物も、そのままではアセトンへの溶解度が低いが、同様に溶剤溶解性を付与する官能基の側鎖を加えて変性した赤外線吸収色素22aにすることで本実施形態で用いることができる。ジイモニウム化合物についても、溶剤のトルエン、キシレン等への溶解度は5重量%未満で溶解度が低いが、同様に溶剤溶解性を付与する官能基の側鎖を加えて変性した赤外線吸収色素22aにして本実施形態で用いることができる。他の赤外線吸収色素22aについても同様に、溶剤溶解性を付与する官能基の側鎖を付加した分子にして用いる。
【0022】
赤外線吸収色素22aは、その分子の主鎖に溶剤溶解性の官能基の側鎖を付加し、極性の強い溶剤であるアセトンやトルエン、o−キシレン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、エタノール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、LPG、ナフサ等に溶解するようにする。一方、この赤外線吸収色素22aは、極性の弱い溶媒である紫外線硬化型樹脂のモノマーや、酸化重合型のモノマーやロジン変性フェノール樹脂や、植物油や石油系高分子溶剤、あるいはアルコール等への溶解度が低く、それらが貧溶媒になる。そのため、赤外線吸収色素22aは、それらの貧溶媒に分散させると、一旦は微分散されても、微分散された赤外線吸収色素22aの粒子同士が再凝集して互いに隣接する高次構造23が形成される。そして、乾燥後の赤外線吸収インキパターン22には、図2(a)のように、ある程度均一に分散しつつも、赤外線吸収色素22a同士が隣接した高次構造23が形成される。本実施形態は、赤外線吸収色素22aが貧溶媒中で再凝集して隣接した高次構造23を有する赤外線吸収印刷パターン22を基材11上に形成する。
【0023】
また、赤外線吸収色素22aは、以上に列記した化合物以外も用いることができ、その化合物による赤外線吸収色素22aの分子の主鎖に接続する官能基によって、熱に弱くするとともに、ラベル1を剥がす際に用いられる極性の強い有機溶剤に溶解する特性を付与して用いることができる。その場合、その赤外線吸収色素22aは、上記の極性の弱い溶媒である貧溶媒への溶解度は低いものを用いる。また、赤外線吸収色素22aは、可視波長域には吸収が少ない方が、それが不可視となるため本発明の目的には望ましいが、可視波長域の吸収が高くても赤外領域で検知ができれば特に問題なく、本実施形態で用いることができる。
【0024】
赤外線吸収インキパターン22のインキ成分には、赤外線吸収色素22aを分散させるべく、赤外線吸収色素22aの溶解度が低い貧溶媒を用いる。貧溶媒となるインキ成分と
して、酸化重合型、および、紫外線硬化型のインキが好ましい。以上のインキ成分の他にも、赤外線吸収色素22aに対して貧溶媒となるその他のインキ成分を用いても良い。また、ラベル1に赤外線吸収インキパターン22を印刷する位置は、基材11の外周に接する位置に赤外線吸収インキパターン22を印刷することが望ましい。赤外線吸収インキパターン22を基材11の外周に印刷することで、不正にラベル1を剥離しようとした場合に、赤外線吸収インキパターン22がラベル1から剥離し易くして偽造を検出し易くできる効果がある。
【0025】
(粘着層31)
粘着層31としては、ラベル1を不正に剥離するために粘着層31を溶解する溶媒が、赤外線吸収色素22aを溶解する溶媒となるように粘着層31の材料を選定する。粘着層31として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系の粘着剤を単独で、もしくは、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等を凝集成分とし、これらに不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等の改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤などの添加物を加えたものが使用できる。
【0026】
粘着層31は、ICチップ51、および、アンテナ52、これらの支持体53を覆うように形成するが、剥離検知機能付きラベル1が被着体と強く接着すれば良く、基材11の一部を覆う形であっても良い。被着体からラベル1の基材11を引き剥がす際の、粘着剤31の接着力に関しては、その粘着力を、JISZ0237基準の8000mN/25mmに設定することが好ましく、剥離検知機能付きラベル1自体の破断力以上は必要であるため、8000mN/25mm以上30000mN/25mm以下であることが望ましい。
【0027】
(ICチップとアンテナ)
ラベル1には、ICチップ51、および、アンテナ52、支持体53からなるICタグを設置し、そのICタグに無線により通信を行わせる。このICタグは、ICチップ51の駆動電池を持たないパッシブ型のものを用いる。なお、パッシブ型に代えて、ICチップ51の駆動電池を有するアクティブ型のICタグを用いても良い。その場合には、ICタグの構造が複雑化するが、無線での読み取り距離が伸張する効果がある。
【0028】
このICタグは、図1と図3に示すように、支持体53を介して、赤外反射性の基材11に貼り付ける。すなわち、このICタグは、支持体53上に形成したアルミや銅などの金属製のアンテナ52にICチップ51を電気的に接続して構成する。
【0029】
このアンテナ52は、帯状に延ばされて形成して、例えば、送受信される電波がマイクロ波以上の周波数を有するとき、使用周波数の波長をλとすると、アンテナ52の長手方向の長さをλ/2近傍に設定した電波の送受信効率の良いダイポール形アンテナとして形成しても良い。また、例えば、電波の使用周波数を2.45GHzとすると、ダイポール型におけるアンテナ52の長手方向の最適長さは、約40mm〜60mm程度である。
【0030】
上記ICタグを構成するICチップ51は、正方形状に形成されており、その辺部の長さ寸法が0.5mm、高さ寸法が0.1mmとされている。なお、辺部の長さ寸法は、0.5mmに代えて、適宜変更可能である。さらにまた、ICチップ51の形状は、例えば長方形状などのように、適宜変更可能である。この場合も、辺部の長さ寸法を0.05mmから0.5mmの範囲とすることが好ましい。なお、このような寸法のICチップ51には、例えば、幅0.4mm、奥行き0.4mm、高さ0.1mm程度という寸法にて製造されている、日立製作所製のミューチップ(TM)等を用いることができる。
【0031】
(変形例1)
本実施形態のICタグの変形例1として、支持体53を用いずに、基材11上に直接に、導電性粒子が樹脂バインダーに分散された導電性ペーストを所望の形状に印刷してアンテナ52を形成することも可能である。印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の印刷方法を使用することができる。そして、そのアンテナ52にICチップ51を電気的に接続して構成する。
【0032】
図1と図3に示すように、剥離検知機能付きラベル1は、離型紙61に仮粘着する。そして、基材11の面に垂直な法線方向に切り込みを入れて基材11と支持体53を貫通して粘着層31に達するスリット41を形成する。ここで、スリット41は、基材11を貫通しているだけでも良いが、剥離検知機能付きラベル1を機械的に剥離しようとした場合に、剥離検知機能付きラベル1全体を破断させるために、支持体53も貫通して粘着層31に達するスリット41を設けることが望ましい。スリット41は、離型紙61を突き抜けないように形成する。スリット41の位置は、ICチップ51及びアンテナ52を避けた位置に設置するか、あるいは、スリット41がそれらを突き抜けなければそれらの一部に達しても良い。スリット41は、その他に、インキ印刷層21や粘着層31を突き抜けても問題ない。また、スリット41の形成手順は、あらかじめスリット41を設けた基材11を形成して、後から他の層を設けても良い。
【0033】
次に、赤外線吸収色素22aが高次構造23を成している赤外線吸収インキパターン22の検出方法について説明する。この検出方法は、赤外線吸収色素22a同士が隣り合う高次構造23を成している場合は、赤外線吸収色素22aの分子中の電子の局在状態が、隣り合う赤外線吸収色素22aとの相互作用の影響を受け赤外線吸収スペクトル(分光特性)が変わることにより高次構造23の存在を検出できることを利用する。図4は、赤外線吸収インキパターン22の反射率の分光特性を表し、図4の(a)は、ラベル1を剥離しない場合、(b)は、ラベル1に溶剤を使用した場合、(c)は、ラベル1に熱をかけた場合、(d)は、複写した偽造ラベルが貼付された場合の偽造ラベル、それぞれの赤外線吸収インキパターン22の反射率の分光特性を表している。
【0034】
(ラベルを機械的に剥離する場合)
被着体に貼付してある本発明の剥離検知機能付きラベル1を剥離しようと試みる場合、まず、剥離検知機能付きラベル1を端から慎重に削るようにして機械的に剥離しようとする場合は、スリット41の部分からラベル1のアンテナ52が破断される。特に、アンテナ52を印刷して形成した場合は、アンテナ52とラベル1全体とがより容易に破断されるようにできる効果がある。このように、本実施形態は、外部の読み取り装置と非接触でデータ通信が可能なアンテナ52とICチップ51が設けられているため、在庫管理を可能にするとともに、ICチップ51およびアンテナ52を機械的に抜き取って偽造された場合にアンテナ52も破断されるため、通信ができなくなることにより、偽造による不正使用を検知することができる効果がある。こうして、本実施形態は、基材に設けたスリット41により脆質性を向上させることにより、溶剤や熱を使用しないで、剥がすことを不可能にすることができる効果がある。そのため、本実施形態の剥離検知機能付きラベル1を剥離する場合は、熱か溶剤を使用して慎重に剥離することになる。
【0035】
(ラベルを加熱して剥離する場合)
また、ラベル1に100℃程度の熱風を吹き付けて慎重にラベル1を剥離する場合、官能基により熱に弱くされた赤外線吸収色素22aが加熱により劣化すると赤外線の吸収が無くなる。そのため、図4の(c)のように、赤外線吸収色素22aを含む赤外線吸収インキパターン22の赤外線の吸収が図4(a)の通常の場合と比較して全体的に小さくなることを分光測定で検知することにより容易に偽造を判別できる効果がある。また、剥離
検知機能付きラベル1を複写された場合も、分光測定で図4(d)のように赤外線の吸収が無いことを検知して偽造を判別できる効果がある。
【0036】
(ラベルを溶剤を用いて剥離する場合)
本実施形態の剥離検知機能付きラベル1に、溶剤のアセトンやトルエン、o−キシレン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、エタノール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、LPG、ナフサ等を使用して粘着層31を溶解して、インキ印刷層21のインキと赤外線吸収インキパターン22のインキが溶出せずにラベル1の基材11上に留まるように慎重にラベル1を剥離し、他の被着体に貼付する場合も、赤外線吸収インキパターン22に溶剤が浸入し、図2(b)のように、浸入した溶剤に赤外線吸収色素22aが溶解して、赤外線吸収インキパターン22中に形成されていた赤外線吸収色素22aの高次構造23(図2(a))が分解される。
【0037】
図2(a)のように赤外線吸収インキパターン22中で赤外線吸収色素22aが集合して隣接した高次構造23を形成している場合と、図2(b)のように溶剤が浸入して、その溶剤に赤外線吸収色素22aが溶解して高次構造23が分解された場合とでは、赤外線吸収色素22aの赤外線吸収スペクトル及び赤外線の反射率の分光特性が変わる。すなわち、赤外線吸収色素22aが溶剤が浸入した溶剤に溶解して高次構造が分解されると、図4の(d)のように、赤外線吸収色素22aが吸収することで反射率が低下する赤外線の波長範囲が狭くなる。この現象は、赤外線吸収色素22a同士が隣り合う高次構造23を成している場合は、赤外線吸収色素22aの分子中の電子の局在状態が隣り合う赤外線吸収色素22aとの相互作用の影響を受ける。一方、赤外線吸収色素22a同士が隣接する高次構造を成さずに、赤外線吸収色素22aが溶剤中に互いに離れて溶解していて、溶剤とのみ隣り合う場合は、赤外線吸収色素22aの分子中の電子の局在状態は隣接する溶剤の分子との相互作用の影響を受ける。そして、電子の局在状態に相違を生じ、赤外線吸収色素22aの赤外線の吸収スペクトル及び反射率の分光特性が変わる。そのため、ラベル1の分光測定を行い赤外線吸収色素22aの状態の変化を検出することで、溶剤を用いて不正に剥離されたラベル1を検知することができる効果がある。
【0038】
(変形例2)
本実施形態の変形例1として、図4の(1)と(2)の2波長の反射率の値を測定することで不正に剥離したかどうかを瞬時に判別できる。すなわち、使用している赤外線吸収色素22aの吸収極大波長と、吸収極大波長から50nm離れた波長の2つの波長を測定することにより、赤外線吸収色素22aの状態が変化していることを判別できる。この方法によると、分光測定をするためのやや大掛かりな設置型の装置を用いる必要が無い効果と、瞬時の判断ができる効果がある。
【0039】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態の剥離検知機能付きラベル1の断面を表した説明図であり、この剥離検知機能付きラベル1は、赤外線を透過する基材12の表面に、インキ印刷層21を備えていて、基材12の反対の面には、ICチップ51、および、アンテナ52とこれらの支持体53が備えられ、これらを覆うように粘着層32が設けられている。この粘着層32の少なくとも一部には、赤外線吸収色素22aを粘着層32の材料中に分散させて、かつ、互いに隣接する高次構造23を形成させた赤外線吸収剤パターンを設ける。この剥離検知機能付きラベル1には離型紙61が仮粘着され、基材12と支持体53を貫通する切込みを基材12の面の法線方向に入れたスリット41を形成している。また、ICタグは、図5に示すように、支持体53を介して、赤外透過性基材12に貼り付ける。
【0040】
(赤外線透過性の基材12)
第2の実施形態で用いる基材12は、赤外光を透過する性質を持つ基材12であり、赤外光を80%以上透過するシートが好ましいが、基材の厚みや基材に含む材料の濃度により、50%程度透過するものを用いても良い。基材12に用いる材料としては、第1の実施形態の基材11と同じく、脆性を有するフィルムや紙が好ましい。
【0041】
(粘着層32)
粘着層32は、第1の実施形態で用いた粘着層31の材料に赤外線吸収色素22aを分散させて赤外線吸収色素22a同士を隣接させて高次構造を形成させた赤外線吸収剤パターンを粘着層31中に設置して形成する。ラベル1を不正に剥離するためにその粘着層32を溶解する溶剤は赤外線吸収色素22aを溶解するが、一方、粘着層31の材料は、赤外線吸収色素22aをその中に分散させるとともに赤外線吸収色素22a同士を隣接させて高次構造23を形成させる。
【0042】
粘着層32は、第1の実施形態の粘着層31と同様に、剥離検知機能付きラベル1が被着体と強く接着するように形成する。また、粘着層32の一部に赤外線吸収色素22aが分散されてなる材料のパターンを設けるようにしても良い。それにより、部分的に用いた赤外線吸収色素22aが分散されてなる粘着層32の部分を赤外線を吸収する部分として使用できる。赤外線吸収色素22aが分散されてなる材料のパターンは、基材12の外周に印刷することが望ましい。それにより、不正にラベル1を剥離しようとした場合に、赤外線吸収色素22aが分散された粘着層32の部分がラベル1から剥離し易くできる効果がある。赤外線吸収色素22aが分散された粘着層32の部分の赤外線吸収色素22aの検出は、第1の実施形態の、赤外線吸収インキパターン22における赤外線吸収色素22aの検出と同様に行う。赤外線吸収色素22aが分散された粘着層32の部分の反射率の分光特性も第1の実施形態と同様に図4のようになる。
【0043】
本実施形態は、赤外線吸収色素22aを少なくとも一部に分散して、かつ、赤外線吸収色素22a同士を互いに隣接させた高次構造23を含む粘着層32を備えているので、溶剤を用いて、不正に貼り替えを行う場合に、粘着層32自体に赤外線吸収色素22aを分散しているため、赤外線吸収色素22aの溶解をより確実にすることにより、不正物品等に貼り替えるといった不正使用を確実に検知することが可能となる効果がある。
【0044】
<第3の実施形態>
第3の実施形態として、第1の実施形態で形成した剥離検知機能付きラベル1に2波長の光を照射し、CCDカメラにて赤外線画像を観察する。この場合は、図6のように、赤外線吸収インキパターン22を赤外線で画像で観察することができる。そして、本実施形態のラベル1を溶剤を用いて不正に剥離した場合は、CCDカメラで観察される赤外線吸収インキパターン22の赤外線吸収色素22aが劣化するため、その赤外画像の色の濃さが淡くなることが観察できる。それにより、ラベル1が不正に剥離されたことが判別できる効果がある。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
<実施例1>
まず、厚さ90μmのコート紙の基材11の表面に、下記情報インキにて、地紋を印刷した。
(情報インキ)
FDカルトンACE藍ロ(東洋インキ製造社(製))
FDカルトンACEプロセス耐性黄ロ(東洋インキ製造社(製))
FDカルトンACEプロセス耐性紅ロ(東洋インキ製造社(製))
【0046】
次に、赤外線吸収色素22aであるフタロシアニン色素イーエクスカラーIR−14(日本触媒株式会社製)10重量部を、貧溶媒である、ロジン変性フェノール樹脂/大豆油/石油系高沸点溶剤の重量比が、40/10/50の油性ワニス0号ソルベントH(新日本石油製)90重量部とを常温でディスパーにて混合し、赤外線吸収色素22aを分散した酸化重合型の赤外線吸収インキパターン22を上記コート紙に印刷した。この赤外線吸収インキパターン22の材料は、この赤外線吸収色素22aに対する貧溶媒であるので、この赤外線吸収インキパターン22中で赤外線吸収色素22a同士が隣接して高次構造23を形成する。
【0047】
さらに、厚み19μmのPETフィルムを支持体53として、その上にアルミニウム薄膜のアンテナ52をエッチングにより形成し、周囲に4mm間隔にスリット41を入れた。このアンテナ52と金製のバンプを持つICチップ51との接続面に異方導電性接着剤を用いて熱圧着することによって接合して、ICタグを作製した。このICタグを上記コート紙の基材11の裏面に載せ、その上を覆うように、12000mN/25mmの粘着力を持つアクリル系の粘着材を塗布して粘着層31を形成した。クラフト紙の基材11の片面にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコン処理した厚み112μmの離型紙61に仮粘着し、図1及び図3に示すように長さ3mm、深さ1.5mmのスリット41を基材11の面の法線方向に切り込んで設け、剥離検知機能付きラベル1を得た。
【0048】
上記で得た本発明の剥離検知機能付きラベル1を被着体に添付し、各剥離方法にて剥離を試みた。剥離検知機能付きラベル1を端から慎重に削るようにして剥離しようとしたところ、ラベルがスリット41部分から破断した。他の方法として、(c)温度が100℃程度の熱風を吹きつけることで温度を上昇させてラベル1を慎重に剥離して、他の被着体に貼付した。更に他の方法として、(b)ラベル1に溶剤としてアセトンをつけて慎重に剥離して、他の被着体に貼付した。これらの別の被着体に貼付した剥離検知機能付きラベル1を分光測定し、剥離していない(a)剥離検知機能付きラベル1と比較した。
【0049】
分光測定の結果は、図4のようになり、剥離していない剥離検知機能付きラベル1の分光測定結果は(a)、溶剤としてアセトンを使用した場合は(b)、熱をかけた場合は(c)、複写したラベルが貼付された場合には(d)のような結果となり、反射率の分光特性を測定することで、ラベル1を不正に剥離したことが検知できた。なお、溶剤として、トルエン、ケトン等を使用してラベル1を剥離した場合も(b)と同様な分光特性を得、不正に剥離したことが検知できた。
【0050】
さらに、図4の(1)と(2)の2波長の反射率の値を測定することで、不正に剥離したかどうかを瞬時に判別することもできた。この、2波長の反射率の値を測定する方法によると、分光測定をするためのやや大掛かりな設置型の装置が必要無く、瞬時の判断ができる効果があった。
【0051】
なお、本発明は、以上で説明したICチップ51が埋め込まれた剥離検知機能付きラベル1に限定されず、ICチップ51及びアンテナ52が埋め込まれていなくても、偽造を検出するために、粘着層31を溶解する溶剤に溶解する赤外線吸収色素22aが分散され、かつ、互いに隣接する高次構造23を形成した赤外線吸収インキパターン22、あるいは、粘着層32中に形成された赤外線吸収剤パターンを有する剥離検知機能付きラベル1に適用できる。本発明の剥離検知機能付きラベル1は、偽造の際に用いられる溶剤に赤外線吸収色素22aが溶解して高次構造23が分解されることで、赤外線吸収色素22aの赤外線吸収スペクトルが変わる現象を利用することができる効果がある。
【符号の説明】
【0052】
1・・・剥離検知機能付きラベル
11、12・・・基材
21・・・インキ印刷層
22・・・赤外線吸収インキパターン
22a・・・赤外線吸収色素
23・・・赤外線吸収色素の高次構造
31、32・・・粘着層
41・・・スリット
51・・・ICチップ
52・・・アンテナ
53・・・支持体
61・・・離型紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に粘着層が設けられ、前記粘着層とは反対側の面にインキ印刷層が設けられた剥離検知機能付きラベルであって、前記粘着層を溶解する溶剤に溶解する赤外線吸収色素が分散され、かつ、互いに隣接する高次構造を形成した赤外線吸収インキパターンが前記インキ印刷層に形成され、前記赤外線吸収色素が前記溶剤に溶解して前記高次構造が分解されることで前記赤外線吸収色素の赤外線吸収スペクトルが変わることを特徴とする剥離検知機能付きラベル。
【請求項2】
基材の片面に粘着層が設けられ、前記粘着層とは反対側の面にインキ印刷層が設けられた剥離検知機能付きラベルであって、前記粘着層を溶解する溶剤に溶解する赤外線吸収色素が分散され、かつ、互いに隣接する高次構造を形成した赤外線吸収剤パターンが前記粘着層に形成され、前記赤外線吸収色素が前記溶剤に溶解して前記高次構造が分解されることで前記赤外線吸収色素の赤外線吸収スペクトルが変わることを特徴とする剥離検知機能付きラベル。
【請求項3】
前記赤外線吸収色素が、100℃に加熱されると赤外線吸収効率が劣化することを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離検知機能付きラベル。
【請求項4】
前記基材の面の法線方向に切り込みを入れたスリットを形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の剥離検知機能付きラベル。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の剥離検知機能付きラベルに対し、赤外線を照射して、少なくとも2波長の赤外線吸収効率を検出することで前記ラベルの剥離の有無を検知することを特徴とするラベル剥離検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−237717(P2011−237717A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110907(P2010−110907)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】