説明

剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物、並びに剥離紙又は剥離フィルムとその製造方法

【解決手段】(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(B1)ケイ素原子結合アルケニル基を含む置換基を持ち、アルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又は該置換基がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を有するオルガノポリシロキサン、(B2)炭素−炭素不飽和結合を含む置換基と、アルケニル基及び/又はケイ素原子結合水素原子と付加反応及び/又は縮合反応可能な基を含む置換基を有する化合物
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(D)白金族金属系触媒
(E)界面活性剤
(F)水
を含有してなる紫外線照射を併用する付加硬化型の剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物。
【効果】本発明によれば、フィルム密着性が高いレベルで達成され、剥離特性に殆ど影響を与えず密着性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やプラスチックフィルム等の基材との密着性に優れた剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物、並びに該組成物の硬化皮膜が形成されてなる剥離紙又は剥離フィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、ラミネート紙、プラスチックフィルムなどの各種基材表面に剥離性硬化皮膜を形成させることで、感圧接着剤などの粘着物質に対して剥離性を示す材料を得る方法は古くから知られている。このような剥離性硬化皮膜を形成する材料としてシリコーン組成物が使用されており、例えば特開昭62−86061号公報(特許文献1)には、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系化合物からなるシリコーン組成物が提案されている。
【0003】
この種のシリコーン組成物は、キュアー性に優れ、かつ、ポットライフも良好なことから現在でも主要な材料として利用されている。しかし、硬化皮膜の基材との密着が十分とは言えず、塗工できる基材が限定され、基材の前処理が必要となるなどの不都合が以前から指摘されていた。
【0004】
使用基材の最近の動向として、品質が均一で安定しており、平滑性も高く、薄膜化が可能なプラスチックフィルム基材の利用増加が挙げられるが、これらの多様な品種の基材が市販品として使用できるようになった今日では、シリコーン組成物の密着性向上に対する要求は以前にも増して強くなってきている。
【0005】
密着性を向上させるための提案は、シリコーン組成物の面からも以前からなされてきた。例えば、密着性がより良好な材料を利用する方法としては、有機系樹脂の配合やシランカップリング剤の添加などが試みられている。しかし、この方法は、剥離性を低下させるために利用できる条件が限られてしまう。組成物のベースポリマー構造に改良を加える方法としては、RSiO3/2単位を含有した分岐構造を持たせるものが、特開昭63−251465号公報、特公平3−19267号公報、特開平9−78032号公報、特開平11−193366号公報(特許文献2〜5)に提案されている。これらの方法は高速で剥離した時の軽剥離化と硬化性向上の効果を目的としたもので、副次的な効果として密着性の改善が見られるにとどまっている。また、特開2000−169794号公報、特開2000−177058号公報(特許文献6,7)には、溶剤型シリコーン組成物と無溶剤型シリコーン組成物を併用して、ベースポリマー構造を改良することなく剥離速度依存性低減効果を得る提案がなされているが、密着性の点では現状の溶剤型シリコーン組成物を超えるものではない。
【0006】
このように、今までの技術ではシリコーン組成物の剥離性に影響を与えることなく密着性を改良する適切な方法は見当たらない。
【0007】
また、近年の動向として、環境汚染、安全、衛生等の面から溶剤の使用量を削減したり、回収して外部に排出しない等の対策が重視されてきている。このうち溶剤使用量の削減方法としては、無溶剤型シリコーン組成物の使用が有効であるが、これらを紙、ラミネート紙、プラスチックフィルム基材上に1μm以下の膜厚で均一に塗工するには、高価な塗工装置と技術が必要であり、溶剤型から無溶剤型シリコーンへ組成物の変更は、一般的には容易に採用できる方法ではない。
【0008】
溶剤使用量を削減する他の有効な方法としてエマルジョン型シリコーン組成物の使用が挙げられる。この種のシリコーンは従来から利用されており、オルガノビニルポリシロキサン、白金化合物、乳化剤及び水からなるエマルジョンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン、乳化剤及び水からなるエマルジョンを混合したもの(特公昭57−53143号公報:特許文献8)、乳化重合により製造されるもの(特開昭54−52160号公報:特許文献9)、特定の乳化剤を用いてオルガノビニルシロキサン、オルガノハイドロジェンを乳化したものに白金化合物のエマルジョンを混合するもの(特開昭63−314275号公報:特許文献10)などが知られている。
【0009】
これらは水で任意に希釈可能であることから、無溶剤型のように薄膜塗工のための高価な塗工装置や技術は必要なく、使い勝手も溶剤型に近いという長所がある。
【0010】
しかし、エマルジョン型シリコーン組成物は分散媒が水であることによる欠点から、現状ではあまり普及が進んでいない。欠点の一つには、水の蒸発潜熱が大きいため高温キュアーが必要で、溶剤型や無溶剤型に比べるとキュアー性が悪い。もう一つには、水の表面張力が大きいため、基材に対する濡れ性に劣り密着性が悪いことが主なものである。これらの欠点は、とりわけプラスチックフィルム基材に対しては重大な問題となり、殆ど利用されていない原因と言える。
【0011】
これらの問題を解決するために多くの改良が提案されており、例えば、分子末端にアルケニル基をもつオルガノポリシロキサンを用いるもの(特開平6−57144号公報:特許文献11)、非シリコーン系ポリマーからなるエマルジョンを配合するもの(特開平11−222557号公報:特許文献12)などが挙げられる。
【0012】
しかし、紙基材を対象とした改良が多く、プラスチックフィルム基材に塗工した場合に満足のいく密着性を得られるシリコーンエマルジョンの提案は殆ど見られないし、実用に供されるものは皆無と言ってよい状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭62−86061号公報
【特許文献2】特開昭63−251465号公報
【特許文献3】特公平3−19267号公報
【特許文献4】特開平9−78032号公報
【特許文献5】特開平11−193366号公報
【特許文献6】特開2000−169794号公報
【特許文献7】特開2000−177058号公報
【特許文献8】特公昭57−53143号公報
【特許文献9】特開昭54−52160号公報
【特許文献10】特開昭63−314275号公報
【特許文献11】特開平6−57144号公報
【特許文献12】特開平11−222557号公報
【特許文献13】特開2003−192896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、紙又はプラスチックフィルムなどの基材表面に塗布し、該表面に対して密着性に優れた非粘着性皮膜を形成することができる剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物、並びに基材表面に該組成物の硬化皮膜が形成されてなる剥離紙又は剥離フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、従来の剥離紙及び剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物に、1分子中に加熱及び/又は紫外線によりラジカル反応する官能基を持つ置換基を少なくとも1つと、アルケニル基及び/又はSiH基と反応可能な基を持つ置換基を少なくとも1つとを有し、白金付加反応を阻害するS、Pを含まず、本組成物に安定して溶解又は分散可能な化合物を配合することにより、基材との密着性に優れた硬化皮膜が得られることを知見した。また、従来の密着性改良手法では、剥離特性への影響が避けられなかったが、剥離特性に殆ど影響を与えることなく密着性を向上させることを見出し、本発明をなすに至った。
【0016】
なお、本発明者らは、先に、主に三官能性シロキサン単位(T単位)を分子骨格としたアルケニル基含有量の大きいオルガノポリシロキサンを利用して各種プラスチックフィルム基材に対して良好に密着するシリコーンエマルジョンを提案(特開2003−192896号公報:特許文献13)した。この組成物は比較的重い剥離フィルムの生産に適しているが、軽剥離フィルムではコストアップなどの問題があり、広い範囲の剥離力をカバーするという点では十分とは言えない。また加熱により硬化するタイプであるため、耐熱性の低いフィルム基材へ塗工硬化するのには必ずしも最適な硬化処方ではなかった。そこで、紫外線照射を併用して加熱硬化させることで基材の熱劣化を抑制すると共に、シリコーン組成物の剥離特性に影響することなく、良好なフィルム密着性を達成できるシリコーンエマルジョン組成物を検討して本発明を完成するに至ったものである。
【0017】
即ち、本発明は、下記に示す剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物、剥離紙及び剥離フィルムとその製造方法を提供する。
請求項1:
(A)25℃での絶対粘度が0.04Pa・s以上で、かつ1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を持つオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)密着向上成分として、下記(B1)及び/又は(B2)
(B1)25℃での粘度が0.04Pa・s未満で、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合するアルケニル基を含む置換基を持ち、アルケニル基含有量が0.3〜2.0モル/100gの範囲内であり、かつアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又は該置換基がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を有するオルガノポリシロキサン、
(B2)1分子中に、官能基として炭素数2〜10の炭素−炭素不飽和結合(二重又は三重結合)を含む置換基を少なくとも1つと、(A)成分のアルケニル基及び/又は(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子と付加反応及び/又は縮合反応可能な基を含む置換基を少なくとも1つ有する化合物 0.1〜10質量部、
(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜20質量部、
(D)触媒量の白金族金属系触媒、
(E)界面活性剤
(A)、(B)、(C)成分の合計100質量部に対し0.1〜20質量部、
(F)水 100〜10,000質量部
を含有してなる紫外線照射を併用する付加硬化型の剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物。
請求項2:
(B1)成分が、下記一般式(2)で示される構造を有する下記組成式(1)で示される平均重合度が2〜50のオルガノポリシロキサンである請求項1記載のシリコーンエマルジョン組成物。
[M]m1[MAm2[D]d1[DAd2[T]t1[TAt2[Q]q1 (1)
【化1】


(式中、R1は炭素数2〜10のアルケニル基を含む置換基を示す。AはR2又は酸素原子を介して結合した式(1)を満たすように選ばれるシロキサン残基を示し、2個のAが−O(SiR22O)y−として環構造を形成してもよい。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基、xは0〜3の整数、yは式(1)のオルガノポリシロキサンの平均重合度2〜50を満足するように選定される整数である。
M、MA、D、DA、T、TA、Qは以下のシロキサン単位であり、O1/2は隣接するシロキサン単位と酸素原子を介して結合していることを示す。
【化2】


m1、m2、d1、d2、t1、t2、q1は以下の式を満足する数である。
t1+t2+2×q1≦m1+m2≦2+t1+t2+2×q1
0≦d1+d2≦48、0≦t1+t2≦30、0≦q1≦20
0.25≦(m2+d2+t2)/(m1+m2+d1+d2+t1+t2+q1)≦1)
請求項3:
式(2)のxが0又は1である請求項2記載のシリコーンエマルジョン組成物。
請求項4:
(B1)成分が、下記一般式(3)又は(4)で示される直鎖状又は分岐状シロキサン構造を持つ化合物である請求項2又は3記載のシリコーンエマルジョン組成物。
【化3】


(式中、R1、R2は上記の通り。Yは下記式(3a)
【化4】


で示される基であり、式(3a)において、R1、R2、Yは上記の通りである。
a2、b2、ay、byは0〜48の整数であり、c2、cyは0〜30の整数であり、d2、dyは0〜20の整数である。
式(3)、(3a)はそれぞれランダム構造を示すが、R1のアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又はR1がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を少なくとも1個含む。)
【化5】


(式中、R1、R2は上記の通り。Zは下記式(4a)
【化6】


で示される基であり、式(4a)において、R1、R2、Zは上記の通りである。
a2、b2、ay、byは0〜48の整数であり、c2、cyは0〜30の整数であり、d2、dyは0〜20の整数である。
式(4)、(4a)はそれぞれランダム構造を示すが、R1のアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又はR1がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を少なくとも1個含む。)
請求項5:
(B1)成分が、下記一般式(5)で示される環状シロキサン構造を持つ化合物である請求項2又は3記載のシリコーンエマルジョン組成物。
【化7】


(式中、R1、R2は上記の通り。R3はOH基又はケイ素原子に結合する水素原子を官能基として持つ置換基、又は炭素数1〜10の脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、a1は0又は1、b1は1〜6の整数、c1は0〜5の整数であり、a1+b1+c1は2以上の整数である。)
請求項6:
(B2)成分が、下記一般式(6−1)で示される2価の構造単位を含む化合物、下記一般式(6−2)と下記一般式(6−3)で示される2価の構造単位を含む化合物、下記一般式(7−1)で示される環状構造からなる化合物、又は下記一般式(7−2)で示される環状構造からなる化合物である請求項1記載のシリコーンエマルジョン組成物。
【化8】


(式中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基、R4は炭素数2〜10のアルキニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を含む置換基、R5はOH基、SiH基、又はアルケニル基を官能基として持つ置換基、R6は水素原子、炭素数1〜10の飽和炭化水素基又は芳香族基、R4と同じ基、又はR5と同じ基、dは4〜10、e+fは3〜9である。)
請求項7:
請求項1〜6のいずれか1項記載の剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物を紙又はプラスチックフィルム基材に直接塗工後、加熱及び/又は紫外線照射して上記塗工膜を硬化させることを特徴とする剥離紙又は剥離フィルムの製造方法。
請求項8:
塗工膜を紫外線照射した後、加熱により塗工膜を硬化させる請求項7記載の製造方法。
請求項9:
請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物の硬化シリコーン皮膜が形成された剥離紙又は剥離フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来の付加型剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物に対して、特定の構造を持つ密着向上成分を配合し、基材へ塗工して加熱及び/又は紫外線照射により硬化させることで、基材との密着性に優れた非粘着性硬化皮膜が得られる。また、本発明によれば、従来の密着性改良手法では、剥離特性への影響が避けられなかったが、剥離特性に殆ど影響を与えることなく密着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の組成物を構成する(A)成分のオルガノポリシロキサンは、回転粘度計を使用して測定される25℃の絶対粘度が0.04Pa・s以上で、かつ1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を持つものであり、より具体的には下記一般式(8)で示される構造を有するものが挙げられる。
【0020】
【化9】


(式中、R7はアルケニル基、R8は脂肪族不飽和結合を含有しない1価の有機基又は水酸基を示し、X1は下記式(9)
【0021】
【化10】


で示される基である。a3、b3、c3、d3、e3はオルガノポリシロキサンの25℃の粘度が0.04Pa・s以上、30質量%トルエン溶液での25℃の粘度が70Pa・s以下を満たす正数から選ばれ、b3、c3、d3、e3は0であってもよい。α及びβは0又は1〜3の整数である。)
【0022】
7は、ビニル基、アリル基、ブテニル基などの好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基、R8は炭素数1〜20、特に1〜8のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜12のアルキル基、シクロヘキシル基などの炭素数4〜20のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などの炭素数6〜20のアリール基あるいはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などの置換1価炭化水素基、更にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数1〜12のアルコキシ基、水酸基、炭素数2〜20のエポキシ基を含む1価炭化水素基、例えばグリシジル基、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基置換アルキル基などから選択される1価の有機基であるが、脂肪族不飽和結合は含有しない。
7はビニル基が工業的に好ましく、(A)成分のオルガノポリシロキサン全体に含まれるR8はその少なくとも80モル%がメチル基であることが製造上及び特性上好ましい。
【0023】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの1分子が持つアルケニル基は2個以上であるが、望ましくは、オルガノポリシロキサン100g当たりの含有量として0.001〜0.3モルである。相当する式(8)及び置換基X1のa3、b3、c3、d3、e3としては、1分子が持つアルケニル基の数c3+b3×(e3+β)+2αが2〜2,500の範囲になるように選ばれる。
なお、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、シラノール基を持っていてもよい。
【0024】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの主骨格構造は直鎖であるが、b3が0でない場合で示されるような分岐鎖構造を含むものも使用できる。
【0025】
本発明の(B)成分は、本組成物に密着性を付与する特徴的な成分であり、基材と(A)、(C)成分の非粘着硬化皮膜との間を繋ぐカップリング剤のように働き、密着性を向上させる。全く異なる材質からなる基材及び非粘着硬化皮膜と反応あるいは相互作用させるのに、一種類の反応だけを用いるのは、どちらか一方へ偏りを生じ易く、カップリング剤として十分に機能し難い。そこで、本発明では、基材との反応あるいは相互作用にラジカル反応を、非粘着硬化皮膜とは付加反応又は縮合反応を用いることにしたものである。
【0026】
(B)成分は、これら異なる二つの反応に一つの分子で対応する必要があるが、そのための一つの方法は、一つの分子に両方の反応が可能な官能基のみを含む同種の置換基だけを持たせるもので、置換基による反応選択性は低いが、分子構造上の特徴によって二つの反応を偏りなく進めるものであり、これに対応するオルガノシロキサンが(B1)成分である。
もう一つの方法は、基材とのラジカル反応が付加反応や縮合反応よりも起こり易い置換基と、(A)、(C)成分による非粘着硬化皮膜との付加反応や縮合反応がラジカル反応よりも起こり易い置換基の両方を一つの分子に持たせるもので、これに対応する化合物が(B2)成分である。
【0027】
(B)成分としては、上記(B1)成分又は(B2)成分を単独で用いてもよいし、(B1)成分と(B2)成分を併用してもよく、配合比率は必要とする密着性の水準、用いる基材や硬化条件により適宜調整して用いてよいが、好ましくは(B1):(B2)=100:0〜100:100(質量比)、より好ましくは(B1):(B2)=100:0〜100:90(質量比)である。両者を併用する場合は100:5以上とすることが好ましい。
【0028】
(B1)成分は、(B2)成分のように異種官能基を複数一つの分子内に持たせる必要がないため、製造も容易であり、入手やコストの面で有利である。また、本組成物の主成分である(A)成分と同じシリコーン化合物であり、本組成物に安定して溶解又は分散でき、組成物の製造や貯蔵の面にも利点がある。しかし、この特徴は、有機物である基材表面への接近には不利になり、ラジカル反応により基材との反応や相互作用する確率を低下させることになる。例えば、(A)成分はラジカル反応できるアルケニル基を持っているにもかかわらず、密着性に有効な基材との反応又は相互作用を形成することができない。その理由はポリシロキサン構造による分子間力の低さや無機的な性質が基材表面への接近を妨げ、同じシロキサン構造を持つ(C)成分のSiH基との付加反応で殆どのアルケニル基が消費されてしまうからである。そこで、(B1)成分は回転粘度計を使用して測定される25℃での絶対粘度が0.04Pa・s未満の、シロキサン重合度の低い低分子量とし、アルケニル基を0.3〜2.0モル/100g、好ましくは0.3〜1.3モル/100g、特に0.4モル/100g以上の高含有とすると共に、アルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位相互を近接配置することで、周辺の有機性を高めてアルケニル基が基材へ接近するのを容易にしてラジカル反応による反応及び相互作用を有利にしたものである。なお、絶対粘度の下限は特に制限されないが、通常0.1mPa・sである。
【0029】
即ち、(B1)成分は、アルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が、直接又は該アルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を有するオルガノポリシロキサンである。
なお、このようにアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が、直接又は該アルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を有すれば、アルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が、該アルケニル基を含まない置換基がケイ素原子に結合しているシロキサン単位を4個以上介在した構造を有していてもよい。しかし、アルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している全てのシロキサン単位が、アルケニル基を含まない置換基がケイ素原子に結合しているシロキサン単位を介在せず乃至は3個以下介在した状態で結合していることが好ましい。
【0030】
この場合、(B1)成分としては、下記一般式(2)で示される構造を有する下記組成式(1)で示すことができる。
[M]m1[MAm2[D]d1[DAd2[T]t1[TAt2[Q]q1 (1)
【化11】


(式中、R1は炭素数2〜10のアルケニル基を含む置換基を示す。AはR2又は酸素原子を介して結合した式(1)を満たすように選ばれるシロキサン残基を示し、2個のAが−O(SiR22O)y−として環構造を形成してもよい。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基、xは0〜3の整数、yは式(1)のオルガノポリシロキサンの平均重合度2〜50を満足するように選定される整数である。
M、MA、D、DA、T、TA、Qは以下のシロキサン単位であり、O1/2は隣接するシロキサン単位と酸素原子を介して結合していることを示す。
【化12】


m1、m2、d1、d2、t1、t2、q1は以下の式を満足する数である。
t1+t2+2×q1≦m1+m2≦2+t1+t2+2×q1
0≦d1+d2≦48、0≦t1+t2≦30、0≦q1≦20
0.25≦(m2+d2+t2)/(m1+m2+d1+d2+t1+t2+q1)≦1)
【0031】
また、R1のアルケニル基を含む置換基としては、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシ基置換アルキル基等が挙げられる。
2の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基のほか、ビニル基、アリル基等のアルケニル基などの非置換の1価炭化水素基、これらの非置換の1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基、あるいは上記アルキル基の水素原子が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された基、例えば(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等が挙げられる。従って、R2はR1であってもよい。
【0032】
なお、(B1)成分の平均重合度は2〜50、特に2〜40であることが好ましい。この平均重合度はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(溶媒:トルエン)によるポリスチレン換算値である。
yは上記平均重合度を満足するように選定されるが、好ましくは0〜10、特に1〜8の整数である。
【0033】
上記式(2)から明らかなように、(B1)成分のオルガノシロキサンは、2個の−SiR1A−基が−O−(SiA2O)x−(x=0〜3、特に0又は1)を介して連結している構造を有するものである。つまり、ケイ素原子に結合するアルケニル基を有する2個の−SiR1A−基が近接して存在しているもので、この場合、Aがアルケニル基であれば当然近接しているものであるが、Aがメチル基等のアルキル基やフェニル基等のアリール基であっても−SiR1A−相互が近接しているものであり、この近接の程度を示すxが最大で3、好ましくは0又は1であり、これにより本発明の効果が得られる。これに対し、xが4以上では密着性が低下し、剥離性能に影響を与えることなく密着性を向上させるという本発明の効果を達成し得ない。
式(2)では明らかに示されてはいないが、同じ一つのケイ素原子上に2個以上のアルケニル基が結合している構造も同じ理由から好ましい。このように接近が著しい場合はアルケニル基の種類により密着性向上効果が影響を受け易い傾向があり、使用状況に合わせた適切な構造の選択が重要になってくる。
【0034】
このようにアルケニル基を隣接した配置にすることで期待されるもう一つの効果として、付加反応の進行を遅らせてラジカル反応を優位に進めることがあり、その効果をより有効に得るにはx=0〜1とするのが好ましい。このアルケニル基同士がより接近した構造が付加反応を遅らせるのは、同種の構造を持つ化合物が制御剤として利用できることからも類推される。一方のアルケニル基がラジカル反応により変化してしまえば、残ったアルケニル基は付加反応し易い状態になり非粘着硬化皮膜との反応が進みカップリング剤として有効に働くことができる。
【0035】
できればラジカル反応だけで全てのアルケニル基が消費されてしまわないよう1分子中のアルケニル基を3個以上、あるいは4個以上とすることが好ましい。また分子量が小さいことは、カップリング剤として作用するのに、広い面積により多くの結合点を形成できるので有利でもある。
【0036】
上記式(1)の構造を有するオルガノシロキサンとして具体的には、下記一般式(3)又は(4)の直鎖状又は分岐状のオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0037】
【化13】


(式中、R1、R2は上記の通り。Yは下記式(3a)
【化14】


で示される基であり、式(3a)において、R1、R2、Yは上記の通りである。
a2、b2、ay、byは0〜48、好ましくは0〜45、更に好ましくは0〜40の整数であり、c2、cyは0〜30、好ましくは0〜25、更に好ましくは0〜20の整数であり、d2、dyは0〜20、好ましくは0〜18、更に好ましくは0〜15の整数である。
式(3)、(3a)はそれぞれランダム構造を示すが、R1のアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又はR1がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を少なくとも1個含む。従って、b2、by、cy、dyが同時に0になることはない。)
【0038】
【化15】


(式中、R1、R2は上記の通り。Zは下記式(4a)
【化16】


で示される基であり、式(4a)において、R1、R2、Zは上記の通りである。
a2、b2、ay、byは0〜48、好ましくは0〜45、更に好ましくは0〜40の整数であり、c2、cyは0〜30、好ましくは0〜25、更に好ましくは0〜20の整数であり、d2、dyは0〜20、好ましくは0〜18、更に好ましくは0〜15の整数である。
式(4)、(4a)はそれぞれランダム構造を示すが、R1のアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又はR1がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を少なくとも1個含む。)
【0039】
上記(B1)成分としてより具体的な構造は、例えば下記式
【化17】


で示される直鎖状のオルガノポリシロキサン(但し、xは上記の通り。)、
【化18】


で示される三官能又は四官能シロキサン単位で主骨格が形成される分岐状構造のオルガノポリシロキサンも可能である。
【0040】
ここで、上記Aのシロキサン残基、Y、Z、Bとしては、下記のものが例示される。
【化19】


(但し、R20はR2又はR1を示す。R0は−O−(SiR220y6−SiR2220を示し、yは上記の通り。y1+y2+y6=yであり、y1及びy6は0以上、y2は1以上の整数である。y3+y4=yであり、y3、y4は0以上の整数である。y5=yである。)
【0041】
より具体的には、下記のものが挙げられる。
【化20】

【0042】
また、(B1)成分としては、下記一般式(5)で示される環状構造のオルガノポリシロキサンでもよい。
【化21】


(式中、R1、R2は上記の通り。R3はOH基又はケイ素原子に結合する水素原子を官能基として持つ置換基、又は炭素数1〜10の脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、a1は0又は1、b1は1〜6の整数、c1は0〜5の整数であり、a1+b1+c1は2以上の整数である。)
【0043】
上記式中、R3のOH基又はケイ素原子に結合する水素原子を官能基として持つ置換基としては、ケイ素原子に結合した水酸基及び水素原子のほか、−CH2CH2CH2−O−CH2CH2−OH等が挙げられる。
3の1価炭化水素基としては、アルケニル基を含まない以外はR2で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0044】
工業的に望ましい具体的な(B1)の例は、上記式(5)において、R1がビニル基、R2がメチル基、R3が水素原子、a1=0〜1、b1=1〜4、c1=0〜1である。更に望ましくは、a1=0、b1=2〜4、c1=0である。
【0045】
次に、(B2)成分は、1分子中に、官能基として炭素数2〜10、好ましくは2〜8の炭素−炭素不飽和結合(二重結合又は三重結合)を含む置換基を少なくとも1つと、アルケニル基及び/又はケイ素原子に結合した水素原子(以下、SiH基と略す)と付加反応及び/又は縮合反応可能な基を含む置換基を少なくとも1つ有する化合物である。
【0046】
(B2)成分が少なくとも一つ持っている、炭素−炭素不飽和結合を官能基とする置換基は、加熱及び/又は紫外線によりラジカル反応する官能基を持つ置換基を意味するが、構造は直鎖、分岐など特定されず、シクロヘキセンやノルボルナジエンなどの環状構造でもよく、一般的にラジカル重合やラジカル反応硬化する系で用いられる官能基を含む置換基を用いることができる。(B2)成分がシロキサン構造を含む場合は特に付加反応による消費を抑制するために、メタクリロイルオキシ基などの炭素−炭素二重結合、アセチレン基、プロピニル基、ブチニル基などの炭素−炭素三重結合を含む置換基とすることが好ましい。
【0047】
(B2)成分がシロキサン構造を含まない有機物であれば、基材への接近が容易となりラジカル反応による反応や相互作用に有利となるため、置換基の選択はより広げてもよい。但し、非シリコーン系で分子量が大きくなるとシリコーンとの相溶性が低くなりすぎて非粘着硬化皮膜との結合や相互作用形成が難しくなるか、組成物自体への溶解性が低下して使用できなくなることから、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量は1,000以下であることが好ましい。より効率よくカップリング剤として密着性向上に働くためにも、広い面積で多くの結合点を形成できるよう小さい分子量の方が望ましい点も挙げられる。
【0048】
(B2)成分の、加熱及び/又は紫外線によりラジカル反応する官能基を持つ置換基は、ラジカル反応及び/又はラジカル反応で生成する基による相互作用で、本組成物が塗工される基材表面に(B2)成分を繋ぎ止める。ラジカルの生成は加熱によってでも紫外線などのエネルギー線照射によってでもよく、ラジカルの生成を促す目的で過酸化物などのラジカル発生剤や光増感剤などを本発明の効果を阻害しない範囲で添加してもよい。
【0049】
熱や紫外線によりラジカルを発生しうる構造又は発生ラジカルと反応しうる構造は、有機物である基材に多く存在し、ラジカルを発生させるエネルギー源となる赤外線や紫外線の吸収率も基材が圧倒的に高いため、ラジカルを基材に集中的に発生させることができて基材との反応を促進するのに適している。
【0050】
プラスチックフィルムなど熱に弱い基材の場合、紫外線照射によるラジカル生成手法はフィルム基材の温度があまり上がらない点で有利である。フィルム基材表面で多くが吸収される紫外線を用いればフィルム基材表面付近に集中的にラジカルを発生させることができ、フィルム基材との反応を促す上で望ましい。
【0051】
(B2)成分が少なくとも一つ持っている別の置換基は、(A)成分のアルケニル基及び/又は(C)成分のSiH基と反応可能な官能基を持つ置換基であって、(A)成分のアルケニル基についてはSiH基との付加、(C)成分のSiH基についてはOH基との縮合、炭素−炭素二重結合との付加反応が挙げられる。
【0052】
(B2)成分のこの置換基は、一つ目の置換基のラジカル反応とは異なる付加反応、縮合反応により非粘着硬化皮膜に(B2)成分を繋ぎ止める。ラジカル反応する置換基の働きと合わせて(B2)成分は非粘着硬化皮膜と基材を繋ぎ止めるカップリング剤として働き密着性を向上させる。
【0053】
(B2)成分を、シロキサン構造を持たない有機系化合物とした場合、シリコーン成分との相溶性が低下傾向となるため付加反応が進み難くなり易い。そのため(A)成分のアルケニル基及び/又は(C)成分のSiH基と反応可能な官能基として炭素−炭素二重結合を含む置換基を選択するとSiH基との付加反応する前にラジカル反応により消費されてしまい、カップリング剤として作用し難くなるおそれがある。これを防止するためにはラジカル反応し難いSiH基や水酸基を選択し、例えば、下記一般式(6−1)で示される2価の構造、又は下記一般式(6−2)と(6−3)で示される2種類の2価の構造を含む分子構造とすることができる。
【0054】
【化22】

【0055】
上記式中、R2は上記の通り。R4は炭素数2〜10、好ましくは2〜8のアルキニル基(例えばアセチレン基、プロピニル基、ブチニル基など)、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を含む置換基、R5はOH基、SiH基、又はアルケニル基を官能基として持つ置換基を示す。
上記式において、工業的に望ましい例としては、HC≡C−C(CH32−OHが挙げられる。
【0056】
また、下記一般式(7−1)、(7−2)で示される環状物などが具体的な構造として挙げられる。
【化23】

【0057】
上記式中、R4、R5は上記の通り。R6は水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜8の飽和炭化水素基又は芳香族基、R4と同じ基、又はR5と同じ基である。dは4〜10、e+fは3〜9を示す。
上記式において、工業的に好ましい例としては、エチニルシクロヘキサノールが挙げられる。
【0058】
(B1)成分も(B2)成分も分子量が小さいことが有利な点となっているが、本組成物が基材へ塗工され加熱された場合、分子量が小さすぎると気化が速すぎて反応しないまま組成物から除去されてしまう心配がある。そのため(B)成分の沸点が80℃以上となるような分子量とすることが望ましい。温度が高くならないよう紫外線照射を用いることはこの影響を軽減するのには有効である。
【0059】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜9質量部である。(B)成分の配合量が少なすぎると密着向上が見られず、多すぎると硬化性を低下させる場合がある。
【0060】
本発明の(C)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に直接結合する水素原子(SiH基)を少なくとも3個有するものであり、下記平均組成式(10)で示されるものが好ましい。
8fgSiO(4-f-g)/2 (10)
(式中、R8は上記の通り、fは0〜3、gは0〜3で、f+gは1〜3の正数である。)
【0061】
分子構造は直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のいずれであってもよい。回転粘度計を使用して測定される25℃での絶対粘度も数mPa・s〜数万mPa・sの範囲であればよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例として、下記のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0062】
【化24】


(但し、上記式において、Meはメチル基、h、l、nは3〜500、m、p、sは1〜500、i、j、k、o、q、r、t、u、v、wは0〜500である。)
【0063】
上記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、含有されるSiH基のモル数が、(A)成分に含まれるアルケニル基の合計モル数の1〜10倍に相当する量である。(C)成分が含有するSiH基のモル数が(A)成分に含まれるアルケニル基の合計モル数の下限未満では硬化性が不十分となる一方、上記上限を超えて配合しても効果の顕著な増加は見られない上、重剥離化するおそれがある。一般的なオルガノハイドロジェンポリシロキサンでの配合量としては、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲である。
【0064】
本発明の(D)成分である白金族金属系触媒としては、従来から公知のものを全て使用することができる。例えば、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸−オレフィンコンプレックス、塩化白金酸−アルコール配位化合物、ロジウム、ロジウム−オレフィンコンプレックス等が挙げられる。上記白金族金属系触媒(付加反応用触媒)の添加量は触媒量であり、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対し、白金又はロジウムの量として5〜1,000ppm(質量比)配合することが、十分な硬化皮膜を形成する上で好ましいが、前記成分の反応性又は所望の硬化速度に応じて適宜増減させることができる。
【0065】
本発明の(E)成分である界面活性剤としてはノニオン系、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等のアルキルエーテル型のもの、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型のものが挙げられ、これらのノニオン系界面活性剤(乳化剤)は1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。安定なシリコーンエマルジョン組成物を得るには、これらノニオン系界面活性剤(乳化剤)の単独あるいは混合後のHLBが10〜15であることが望ましい。
【0066】
また、アニオン型界面活性剤やカチオン型界面活性剤も使用できるが、ノニオン系界面活性剤と併用することが、シリコーンエマルジョンの安定性や基材に対する濡れ性の面から望ましい。
【0067】
界面活性剤の配合量は、シリコーンエマルジョンの安定性と基材に対する濡れ性が十分得られる最少の量とすることが望ましい。具体的には(A)成分+(B)成分+(C)成分の合計100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部である。0.1質量部未満では乳化が困難になり、20質量部を超えるとシリコーンエマルジョンの硬化性が低下するおそれがある。
【0068】
乳化を助け、安定性を向上させるために、界面活性剤と共に水溶性樹脂を併用することもできる。水溶性樹脂としてはポリビニルアルコールなどを挙げられるが、白金族金属系触媒に対する触媒毒作用が極力少ないものを選択する。配合量は、界面活性剤と同様に、シリコーンエマルジョンの安定性と基材に対する濡れ性が十分得られる最少量とすることが望ましい。具体的には(A)成分+(B)成分+(C)成分の合計100質量部に対し0〜10質量部、好ましくは1〜10質量部である。
【0069】
水(F)の量は、実際に使用する塗工装置に適した粘度と、目標とする基材へのシリコーン塗工量を満たすように調整されるもので、特に限定されるものではないが、オルガノポリシロキサン(A)の100質量部に対して100〜10,000質量部が好ましい。100質量部未満ではO/W型エマルジョンを得るのが難しく、10,000質量部を超えると安定性が低下する。
【0070】
使用できる水としては、水道水程度の不純物濃度であれば十分であるが、強酸、強アルカリ、多量のアルコール、塩類などの混入した水はエマルジョンの安定性を低下させるため使用には適さない。
【0071】
本発明のシリコーンエマルジョン組成物の製造には、公知の方法を用いることができるが、上記(A)〜(E)成分の所定量と、水(F)の一部を、プラネタリーミキサー、コンビミキサーなどの高剪断可能な撹拌装置を用いて混合し、転相法により乳化し、水(F)の残分を加えて希釈するとよい。各成分は単一で使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0072】
(D)成分の白金族金属系触媒は他の成分と同時に乳化せず、(A)〜(C)、(E)、(F)成分をエマルジョンとした後に、このエマルジョンを使用する直前に添加することが望ましい。白金族金属系触媒は添加に先立ち水分散可能なものとするのが好ましく、例えば、界面活性剤と予め混合する、あるいは同様の方法でエマルジョンにしておく方法などが有効である。
【0073】
以上の各成分以外に、他の任意成分、例えば白金族金属系触媒の触媒活性を抑制する目的で、各種有機窒素化合物、有機りん化合物、アセチレン誘導体、オキシム化合物、有機ハロゲン化物などの触媒活性抑制剤、剥離性を制御する目的でシリコーンレジン、シリカ、又はケイ素原子に結合した水素原子やアルケニル基を有さないオルガノポリシロキサン、フッ素系界面活性剤などのレベリング剤、水溶性高分子、例えばメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの増粘剤などを必要に応じて添加することができる。反応を促進する目的で過酸化物などのラジカル発生剤や光増感剤などを添加してもよい。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0074】
本発明の組成物を使用して塗工する場合には、本発明の組成物を直接又は適当な有機溶剤で希釈した後、バーコーター、ロールコーター、リバースコーター、グラビアコーター、エアナイフコーター、更に薄膜の塗工には高精度のオフセットコーター、多段ロールコーター等の公知の塗布方法により、紙やプラスチックフィルム等の基材に塗布する。
ここで、基材としては、グラシン紙、ポリエチレンラミネート紙、クラフト紙、クレーコート紙、ミラーコート紙等の紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0075】
本発明の組成物の基材への塗布量は塗布すべき基材の材質の種類によっても異なるが、固形分の量として0.05〜5g/m2の範囲が好ましい。上記のようにして本発明の組成物を塗布した基材を80〜150℃で5〜60秒間加熱することにより基材表面に硬化皮膜を形成せしめ、剥離紙及び剥離フィルムを得ることができる。硬化は(A)、(B)、(C)成分間の付加反応により進み、それと同時に熱によるラジカル反応で(B)成分と基材間の結合形成及び相互作用が強められ、剥離特性に優れかつ密着性、皮膜強度に優れたシリコーン皮膜を紙又はフィルム基材面上に形成できる。また、紫外線照射を併用することにより温度上昇を抑えながらより効率よく紙又はフィルム基材表面付近でのラジカル反応を促進でき、高い密着性を有する剥離紙及び剥離フィルムの製造が容易となる。紫外線の照射は、水銀灯、メタルハライド、フュージョンなど市販のランプ及びバルブを使用できる。フィルム基材の吸光係数が大きい300nmより短波長な成分を多く含む波長分布のランプ及びバルブが効果的で、積算光量は10〜500mJ/cm2で、例えば120W1灯又は2灯でラインスピード10〜100m/分の照射条件である。紫外線照射は加熱を同時に実施してもよいが、別々に実施する方が、設備が単純になる点で利点があり、(B)成分の構造や他の成分との配合比によって、加熱後に紫外線照射、あるいは紫外線照射後に加熱する方がより効果的な場合もある。(B)成分がシロキサン構造を含む時は、紫外線照射後に加熱する方法が効果的な場合が多いが、実施状況に合わせ効果的な方法を適宜選択するのが望ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、粘度は回転粘度計を使用して測定される25℃の絶対粘度である。
【0077】
白金系錯体含有ポリシロキサンエマルジョン組成物の調製
[調製例1]
容器内全体を撹拌できる錨型撹拌装置と、周縁に小さな歯型突起が上下に交互に設けられている回転可能な円板とを有する5リットルの複合乳化装置(TKコンビミックスM型、特殊機化工業(株)製)に、白金−ビニルシロキサンの錯塩(白金含有量は白金換算5,000ppm)1,000質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤(HLB13.6、PH5.4、イオン電導度9.8μS/cm)20質量部、ケン化度が90モル%であって4質量%水溶液の20℃における粘度が30mPa・sであるポリビニルアルコールを50質量部、及び水3,930質量部を仕込み、均一に撹拌混合した後、ホモジナイザーを使用して白金含有量1,000ppmの均質なO/W型エマルジョン組成物を得た。
【0078】
[実施例1〜11、比較例1〜5]
容器内全体を撹拌できる錨型撹拌装置と、周縁に小さな歯型突起が上下に交互に設けられている回転可能な円板とを有する5リットルの複合乳化装置(TKコンビミックスM型、特殊機化工業(株)製)に、(A)、(B)、(C)、(F)成分を下記表1に示す質量部、(E)成分としてポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤(HLB13.6、PH5.4、イオン電導度9.8μS/cm)を2質量部、増粘剤としてケン化度90モル%であって4質量%水溶液の20℃における粘度が30mPa・sであるポリビニルアルコールを2質量部、反応抑制剤としてエチニルシクロヘキサノール0.5質量部とを仕込み、均一に撹拌混合した後、ホモジナイザーを使用してシリコーン分5質量%の均質なO/W型エマルジョンを得た。
得られたエマルジョン1,000質量部に対し、(D)成分として調製例1で用意した白金系錯体含有ポリシロキサンエマルジョン組成物を5質量部(シロキサン分に対する白金量として100ppm)の配合量で混合して塗工用の組成物を調製した。
この組成物を用いて後述する評価方法に従って剥離フィルムを作製し、評価したが、より詳細なキュアー操作は、UVランプ80W2灯、ランプ高さ30cm、ラインスピード40m/分でUV照射(積算光量50mJ/cm2)後、熱風循環式乾燥機で所定時間、加熱処理して硬化皮膜を形成する方法とした。
【0079】
[実施例12、13]
実施例1と同様に配合し塗工用の組成物を調製した。この組成物を用いて後述する評価方法に従って剥離フィルムを作製し、評価したが、より詳細なキュアー操作は、熱風循環式乾燥機で所定時間、加熱処理後、UVランプ120W2灯、ランプ高さ30cm、ラインスピード30m/分でUV照射(積算光量100mJ/cm2)して硬化皮膜を形成する方法とした。
【0080】
[表中記号と各成分の構造]
式中のMeはメチル基、Viはビニル基を表す。
【0081】
−−−(A)成分−−−
(A−1)オルガノポリシロキサン、粘度0.2Pa・s、Vi含有量0.026モル/100g
【化25】

【0082】
(A−2)オルガノポリシロキサン、粘度0.1Pa・s、Vi含有量0.043モル/100g
【化26】

【0083】
−−−(B)成分−−−
(B1−1)シロキサン、粘度5mPa・s、Vi含有量1.2モル/100g
【化27】

【0084】
(B1−2)シロキサン、粘度5mPa・s、Vi含有量0.63モル/100g
【化28】

【0085】
(B1−3)シロキサン、粘度10mPa・s、Vi含有量0.6モル/100g
【化29】

【0086】
(B1−4)シロキサン、粘度6mPa・s、Vi含有量0.7モル/100g
【化30】

【0087】
(B1−5)シロキサン、粘度0.02Pa・s、アルケニル基含有量0.33モル/100g
【化31】


1は−CH2CH2CH2−O−CO−(CH3)C=CH2(127)
2は−CH2CH2CH2−O−CH2CH2−OH(106)
【0088】
(B1−6)シロキサン、粘度6mPa・s、アルケニル基含有量0.49モル/100g
【化32】


1は−CH2CH2CH2−O−CO−(CH3)C=CH2(127)
【0089】
(B1−7)シロキサン、粘度5mPa・s、Vi含有量0.32モル/100g
【化33】

【0090】
(B1−8)シロキサン、粘度6mPa・s、Vi含有量0.32モル/100g
【化34】

【0091】
(B1−9)シロキサン、粘度0.05Pa・s、Vi含有量0.25モル/100g
【化35】

【0092】
(B1−10)シロキサン、粘度0.01Pa・s、Vi含有量0.70モル/100g
【化36】

【0093】
(B1−11)シロキサン、粘度30mPa・s、アルケニル基含有量0.58モル/100g
【化37】


1は−CH2CH2CH2−O−CO−CH=CH2(113)
【0094】
(B2−1)アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール
(B2−2)アセチレンアルコール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール
(B2−3)アセチレンアルコール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール
(B2−4)アセチレン化合物、1−オクチン
【0095】
−−−(C)成分−−−
(C−1)メチルハイドロジエンポリシロキサン、粘度が25mPa・s、H含有量1.5モル/100g
【化38】

【0096】
(C−2)メチルハイドロジエンポリシロキサン、粘度60mPa・s、H含有量1.00モル/100g
【化39】

【0097】
【表1】

【0098】
<評価方法>
各項目の評価と結果の表示は以下の方法に従った。
(1)硬化性
PETフィルム(40μm)にバーコーターを用いて固形分で0.5g/m2塗布し、UVランプ80W2灯、ランプ高さ30cm、ラインスピード40m/分でUV照射(積算光量50mJ/cm2)し、110℃の熱風循環式乾燥機で所定時間の加熱処理により完全に硬化皮膜を形成するまでの時間を測定した。完全に硬化したかどうかの判定は硬化皮膜表面を指でこすり、皮膜表面の曇りや脱落が見られない時点とした。
【0099】
(2)剥離力
PETフィルム(40μm)にバーコーターを用いて固形分で0.5g/m2塗布し、上記実施例の手順に従いUVランプ80W(又は120W)2灯、ランプ高さ30cm、ラインスピード40m/分(又は30m/分)でUV照射(積算光量50mJ/cm2又は100mJ/cm2)と、110℃の熱風循環式乾燥機で30秒間の加熱処理により硬化皮膜を形成し、評価用セパレータを作製した。
作製したセパレータを25℃,50%RHに1日放置後、処理面にアクリル系溶剤型粘着剤〔オリバインBPS−5127(東洋インキ製造(株)製)〕を塗布して100℃で3分間熱処理した。次いで、この処理面にPETフィルム(40μm)を貼り合わせて2kgローラーで1往復圧着し、25℃で20時間エージングさせた後、試料を5cm幅に切断し、引張り試験機を用いて180°の角度で剥離速度0.3m/分で貼り合わせ紙を引張り、剥離するのに要する力(N)を測定した。測定はオートグラフDCS−500((株)島津製作所製)を使用した。
【0100】
(3)密着性
(2)と同様にPETフィルム(40μm)基材で作製したセパレータと、基材をOPPフィルム(40μm、コロナ処理)に代えて(2)と同様に作製したセパレータを、規定条件で放置し、硬化皮膜表面を指でこすり、皮膜表面の曇り及び脱落が見られるまでの日数を調べた。
40℃,80%RHに1日放置して曇り又は脱落が見られるものを×、40℃,80%RHに3日放置して曇り又は脱落が見られるものを△、40℃,80%RHに1ヶ月放置しても曇り又は脱落が見られないものを○、60℃,90%RHに1ヶ月放置しても曇り又は脱落が見られないものを◎として示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃での絶対粘度が0.04Pa・s以上で、かつ1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を持つオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)密着向上成分として、下記(B1)及び/又は(B2)
(B1)25℃での粘度が0.04Pa・s未満で、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合するアルケニル基を含む置換基を持ち、アルケニル基含有量が0.3〜2.0モル/100gの範囲内であり、かつアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又は該置換基がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を有するオルガノポリシロキサン、
(B2)1分子中に、官能基として炭素数2〜10の炭素−炭素不飽和結合(二重又は三重結合)を含む置換基を少なくとも1つと、(A)成分のアルケニル基及び/又は(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子と付加反応及び/又は縮合反応可能な基を含む置換基を少なくとも1つ有する化合物 0.1〜10質量部、
(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜20質量部、
(D)触媒量の白金族金属系触媒、
(E)界面活性剤
(A)、(B)、(C)成分の合計100質量部に対し0.1〜20質量部、
(F)水 100〜10,000質量部
を含有してなる紫外線照射を併用する付加硬化型の剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項2】
(B1)成分が、下記一般式(2)で示される構造を有する下記組成式(1)で示される平均重合度が2〜50のオルガノポリシロキサンである請求項1記載のシリコーンエマルジョン組成物。
[M]m1[MAm2[D]d1[DAd2[T]t1[TAt2[Q]q1 (1)
【化1】


(式中、R1は炭素数2〜10のアルケニル基を含む置換基を示す。AはR2又は酸素原子を介して結合した式(1)を満たすように選ばれるシロキサン残基を示し、2個のAが−O(SiR22O)y−として環構造を形成してもよい。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基、xは0〜3の整数、yは式(1)のオルガノポリシロキサンの平均重合度2〜50を満足するように選定される整数である。
M、MA、D、DA、T、TA、Qは以下のシロキサン単位であり、O1/2は隣接するシロキサン単位と酸素原子を介して結合していることを示す。
【化2】


m1、m2、d1、d2、t1、t2、q1は以下の式を満足する数である。
t1+t2+2×q1≦m1+m2≦2+t1+t2+2×q1
0≦d1+d2≦48、0≦t1+t2≦30、0≦q1≦20
0.25≦(m2+d2+t2)/(m1+m2+d1+d2+t1+t2+q1)≦1)
【請求項3】
式(2)のxが0又は1である請求項2記載のシリコーンエマルジョン組成物。
【請求項4】
(B1)成分が、下記一般式(3)又は(4)で示される直鎖状又は分岐状シロキサン構造を持つ化合物である請求項2又は3記載のシリコーンエマルジョン組成物。
【化3】


(式中、R1、R2は上記の通り。Yは下記式(3a)
【化4】


で示される基であり、式(3a)において、R1、R2、Yは上記の通りである。
a2、b2、ay、byは0〜48の整数であり、c2、cyは0〜30の整数であり、d2、dyは0〜20の整数である。
式(3)、(3a)はそれぞれランダム構造を示すが、R1のアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又はR1がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を少なくとも1個含む。)
【化5】


(式中、R1、R2は上記の通り。Zは下記式(4a)
【化6】


で示される基であり、式(4a)において、R1、R2、Zは上記の通りである。
a2、b2、ay、byは0〜48の整数であり、c2、cyは0〜30の整数であり、d2、dyは0〜20の整数である。
式(4)、(4a)はそれぞれランダム構造を示すが、R1のアルケニル基を含む置換基がケイ素原子に結合している2個のシロキサン単位が直接又はR1がケイ素原子に結合していないシロキサン単位を3個以下介在した状態で結合している構造を少なくとも1個含む。)
【請求項5】
(B1)成分が、下記一般式(5)で示される環状シロキサン構造を持つ化合物である請求項2又は3記載のシリコーンエマルジョン組成物。
【化7】


(式中、R1、R2は上記の通り。R3はOH基又はケイ素原子に結合する水素原子を官能基として持つ置換基、又は炭素数1〜10の脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、a1は0又は1、b1は1〜6の整数、c1は0〜5の整数であり、a1+b1+c1は2以上の整数である。)
【請求項6】
(B2)成分が、下記一般式(6−1)で示される2価の構造単位を含む化合物、下記一般式(6−2)と下記一般式(6−3)で示される2価の構造単位を含む化合物、下記一般式(7−1)で示される環状構造からなる化合物、又は下記一般式(7−2)で示される環状構造からなる化合物である請求項1記載のシリコーンエマルジョン組成物。
【化8】


(式中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基、R4は炭素数2〜10のアルキニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を含む置換基、R5はOH基、SiH基、又はアルケニル基を官能基として持つ置換基、R6は水素原子、炭素数1〜10の飽和炭化水素基又は芳香族基、R4と同じ基、又はR5と同じ基、dは4〜10、e+fは3〜9である。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の剥離紙又は剥離フィルム用シリコーンエマルジョン組成物を紙又はプラスチックフィルム基材に直接塗工後、加熱及び/又は紫外線照射して上記塗工膜を硬化させることを特徴とする剥離紙又は剥離フィルムの製造方法。
【請求項8】
塗工膜を紫外線照射した後、加熱により塗工膜を硬化させる請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物の硬化シリコーン皮膜が形成された剥離紙又は剥離フィルム。

【公開番号】特開2012−92165(P2012−92165A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238467(P2010−238467)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】