説明

創傷被覆材

【課題】剥離時における痛み、上皮化皮膚の剥離、粘着剤の糊残り等の不具合を解消し、滲出液の少ない創傷に対しても適用可能な創傷被覆材を提供すること。
【解決手段】本発明の創傷被覆材10は、支持体1と、該支持体1上に積層された粘着剤層3と、該粘着剤層3の一部に積層された布帛5とを備える。粘着剤層3は、吸水性及び水膨潤性を有している。また、布帛5は、織布、不織布、編布及び多孔質フィルムのうちのいずれかで構成され、その乾燥重量が4g/m以上100g/m未満であり、かつ37℃の水に浸漬した後の吸水重量が4g/m以上1,000g/m未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は創傷被覆材に関し、より詳細には切り傷、擦り傷及び火傷等の創部に貼付して痛みの軽減や創傷の治療に有効な創傷被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切り傷、擦り傷及び火傷等の創傷の治療には、ガーゼ等の布帛で創部を保護することにより創部を積極的に乾燥状態に保つ、いわゆるドライドレッシングが行なわれてきた。かかるドライドレッシングにおいては、創部が開放状態におかれるために、細菌による感染や、創面の乾燥による再上皮化の遷延、更には痂皮の剥離や損傷による創治癒の遷延などの不具合が生ずることがあった。
【0003】
近年、創部の滲出液中に治癒を促進する種々の因子の存在が明らかになり、創傷の治療方法として、創部を滲出液で濡れた湿潤状態に保つ、いわゆるウエットドレッシングが注目されている。かかるウェットドレッシングにおいては、創部からの滲出液を吸収しつつ創部を湿潤状態に保つことの可能なハイドロコロイドドレッシング材などの材料が広く用いられており、これにより、創部が閉塞されるため細菌感染が未然に防止されるとともに、創治癒が促進されるという効果が得られる。
【0004】
かかるハイドロコロイドドレッシング材としては、例えば、ポリイソブチレン等のゴムエラストマーに、ペクチン、ゼラチン及びカルボキシメチルセルロースから選ばれる1種以上の水溶性又は水膨潤性のハイドロコロイド粉末を含有せしめたハイドロコロイド型粘着剤組成物が知られている(特許文献1)。また、ゴム系粘着剤と、ハイドロコロイド粉末を必須成分とする接着性組成物中に、水に対して易溶性のアルミニウム塩を分散せしめたハイドロコロイドドレッシング材も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】米国特許第3339549号明細書
【特許文献2】特開平05−331055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のハイドロコロイドドレッシング材においては、人体の皮膚体温によって粘着剤に流動性が生じ、その結果皮膚に密着する性質、すなわちコールドフロー性を有するために、貼付中に皮膚から剥がれ落ちることなく創部に密着することができる。一方、剥離時には、創周囲のハイドロコロイド粉末が滲出液を吸収し、粘着剤表面で膨張することで粘着力が低下し、ハイドロコロイドドレッシング材が創部に固着することなく剥離することが可能である。
【0006】
しかしながら、従来のハイドロコロイドドレッシング材においては上述のコールドフロー性を有することに起因して、滲出液が少ない創部に対して粘着剤が創部に強固に密着してしまうために、剥離する際に傷みを伴ったり、あるいは上皮化皮膚を剥離したり、更には創部周縁における粘着剤の糊残りなどの不具合が生じやすくなる。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その解決しようとする課題は、剥離時における痛み、上皮化皮膚の剥離、粘着剤の糊残り等の不具合を解消し、滲出液の少ない創傷に対しても適用可能な創傷被覆材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、支持体と、粘着剤層とを備える創傷被覆材の粘着剤層の一部に布帛を積層させ、更に粘着剤層及び布帛として特定性状を有するもので構成することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)支持体と、該支持体上に積層された粘着剤層と、該粘着剤層の一部に積層された布帛とを備え、粘着剤層が吸水性又は水膨潤性を有しており、布帛が織布、不織布、編布及び多孔質フィルムのうちのいずれかで構成され、その乾燥重量が4g/m以上100g/m未満であり、かつ37℃の水に浸漬した際の吸水重量が4g/m以上1,000g/m未満である、創傷被覆材。
(2)粘着剤層がエラストマーと、吸水性物質とを含有する粘着剤で構成される、上記(1)記載の創傷被覆材。
(3)エラストマーがポリイソブチレン及び/又はポリイソプレンである、上記(2)記載の創傷被覆材。
(4)吸水性物質がペクチン、ゼラチン及びカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種である、上記(2)又は(3)に記載の創傷被覆材。
(5)粘着剤層の厚みが0.1mm以上2.0mm未満である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の創傷被覆材。
(6)布帛の厚みが10μm以上500μm未満である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の創傷被覆材。
(7)布帛の透気度が0秒以上0.2秒未満である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の創傷被覆材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の創傷被覆材によれば、創部からの滲出液の多少に拘らず創部を湿潤状態に保つことが可能になるため、剥離時における痛み、上皮化皮膚の剥離、粘着剤の糊残り等の不具合が解消されるとともに、細菌による感染を防止しつつ創治癒を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0012】
図1は、本発明の創傷被覆材の一実施形態を示す断面図である。
創傷被覆材10は、支持体1と、粘着剤層3と、布帛5とから構成されている。粘着剤層3は支持体1上に積層されており、吸水性及び水膨潤性を有する。また、布帛5は粘着剤層3上の一部であって粘着剤層3の中央領域に積層されており、後述する特定性状を有している。以下、創傷被覆材10の各構成について詳細に説明する。
【0013】
(支持体)
支持体は粘着剤層を支持する部材として機能し、創傷被覆材に良好な操作性や使用感を付与することができる。支持体としては特に限定されることなく使用することができるが、透湿性を有するフィルムが好適に使用される。例えば、多孔質フィルムを用いることで透湿性をより高めることが可能であり、また創部への細菌の侵入が抑制されるため、細菌感染を予防することができる。
【0014】
支持体としては、例えば、プラスチックフィルムが好適に使用され、その材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリウレタン等が挙げられる。中でも、透湿性及び伸縮性に優れるポリウレタンが好適である。また、プラスチックフィルムは、無延伸フィルム及び延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フィルムのいずれであってもよく、例えば、無延伸フィルムの場合、微孔形成のための添加剤を樹脂中に混合分散し、成形後に添加剤を除去する抽出法等の公知の方法により多孔質フィルムにすることができる。また、樹脂組成物を延伸加工する公知の延伸法によっても多孔質フィルムを得ることが可能である。ここで、多孔質フィルムとは、微孔がフィルムの両面に連通しているものをいう。
また、支持体の大きさは使用目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、厚みは通常10〜100μmであり、好ましくは20〜80μmである。これにより、操作性及び使用感を良好にすることができる。
【0015】
(粘着剤層)
粘着剤層はそれ自体が粘着性を有するため、創傷被覆材を皮膚面に固定する機能を有する。粘着剤層としては吸水性又は水膨潤性を有するものであれば特に限定されるものではないが、ハイドロコロイド型粘着剤が好適である。これにより、コールドフロー性が良好になるために、皮膚面に対する密着性に優れ、外部からの細菌感染を予防することができる。なお、吸水性に乏しいと、滲出液が多い場合に布帛に滲出液が貯留し、創部に悪影響を与える虞がある。
【0016】
ハイドロコロイド型粘着剤は、エラストマーと、吸水性物質とを含む混合分散体からなる。エラストマーは、粘着剤層に適度な凝集性を付与し、また粘着剤層形成後の粘着剤の滲出し防止に寄与する。エラストマーとしては、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、天然ゴム、ポリメチルシロキサン等を主成分としたシリコーン系重合体、ポリビニルエーテル系重合体等が挙げられる。中でも、耐コールドフロー性の点から、ポリイソブチレンが好適であり、凝集力を向上させるためにポリイソプレンを併用することがより好ましい。その場合、ポリイソプレンをポリイソブチレン及びポリイソプレンの合計重量に対して50重量%を超えない範囲で配合することが望ましい。本発明においては、エラストマーを1種又は2種以上組み合わせて使用することが可能である。なお、エラストマーの粘度平均分子量(Mv)は、通常10,000〜2,000,000、好ましくは35,000〜1,500,000である。Mvが10,000未満であると、粘着剤層の凝集力が低下する傾向にあり、他方2,000,000を超えると、粘着剤層の吸水性が低下する傾向にある。なお、本明細書において、Mvとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の粘度平均分子量をいう。
【0017】
一方、吸水性物質は、粘着剤層に吸水性又は水膨潤性を付与する成分として機能する。吸水性物質としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、カラギーナン等の多糖類又はその誘導体(例えば、塩);ゼラチン、コラーゲン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマー等が挙げられる。中でも、ペクチン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースが好ましく、吸水性に極めて優れるカルボキシメチルセルロースと、ペクチン及びゼラチンとを組み合わせて使用することがより好ましい。本発明においては、吸水性物質を1種又は2種以上組み合わせて使用することが可能である。
【0018】
エラストマーと吸水性物質との配合割合(合計100重量%)は、エラストマーが40〜70重量%(好ましくは50〜65重量%)、吸水性物質が30〜60重量%(好ましくは35〜50重量)である。皮膚貼着性及び粘着剤層形成後の粘着剤の滲出し防止の点から、エラストマーと吸水性物質とを略同量、あるいは吸水性物質を若干多めに配合することがより好ましい。
また、粘着剤層には、内部凝集力を高めるために架橋剤(例えば、硫酸アルミニウム)を適宜配合したり、あるいはγ線等の放射線を照射して粘着剤層全体に架橋処理を施してもよい。
【0019】
粘着剤層の厚みは、吸水性及び凝集力維持(糊残り防止)の観点から、通常0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.5mmである。粘着剤層が厚過ぎると、皮膚面に貼付した際に皮膚の動きに追従するための柔軟性が得難くなる傾向にあり、また使用中に貼付面が浮き上がり接着性が不十分となる傾向にある。また、薄過ぎると、滲出液の分泌部に貼付した場合に、吸水性を十分発揮し難くなる傾向にある。粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることで、使用感が良好で、十分な吸水性、クッション性及びコールドフロー性を得ることができる。
【0020】
(布帛)
布帛は創部を覆って保護する機能を有するとともに、皮膚側から粘着剤層側へ滲出液を移行させて創部を湿潤状態に保つ機能をも有する。本明細書において「布帛」とは、合成繊維又は天然繊維を編む、織る、交絡させる等して形成されるシート状の繊維集合物を意味するか、あるいは上述した延伸法や抽出法等により形成される多孔質フィルムを意味し、網目構造を有するネット状の形態であってもよい。ここで、多孔質フィルムとは上記と同義である。また、繊維はその断面形状が略円形であって、太さが10〜30μmであるものが好ましく、汎用性、経済性及び加工性の点から15〜25μmがより好ましい。更に、編布の編み方は、伸縮性と弾性が維持されれば特に限定されないが、緯編が好ましく、中でも丸編、横編がより好ましい。
【0021】
また、布帛は、織布、不織布、編布及び多孔質フィルムのうちのいずれかで構成されるが、中でも粘着剤層との投錨性が良好であるという点から、不織布が好ましい。布帛の材質は特に限定されず、例えば綿、麻、絹、羊毛、パルプ等の天然繊維;ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維;プロミックス、ジアセテート、トリアセテート等の半合成繊維;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)等の合成繊維;これらの混紡等を用いることができる。本発明においては、布帛がその表面に凹凸を有するために粘着剤層との投錨性が良好になる。また、創傷被覆材の製造時において、粘着剤層を形成するために粘着剤を塗工後間もなく粘着剤層上に布帛を積層すると、粘着剤が流動性を有することに起因して布帛の沈み込みが生ずるため、投錨性を更に良好にすることができる。
【0022】
なお、綿、パルプ、レーヨン又はこれらを多く含有する混紡は、風合いに優れ、しかも吸水前の投錨性が良好であるが、親水性を有することに起因して滲出液を多く吸収すると粘着剤層との投錨性が悪化し、剥離時に粘着剤から布帛が剥がれやすくなる。また、剥離時において、粘着剤が創周囲で糊残りを生ずる可能性がある。滲出液の少ない創傷から多い創傷まで適用可能にするには、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)等の疎水性の材質で構成される布帛を使用することが特に好ましい。なお、これらの疎水性材料は、ハイドロコロイド型粘着剤との相溶性に優れ、貼付時や滲出液の吸収後においても投錨性が良好であるという利点もある。
布帛は粘着剤層の一部に積層されるが、皮膚面に対して十分な接着性を得るために、粘着剤層の中央領域に積層することが好ましい。また、布帛の大きさは適宜選択することができるが、布帛周囲で粘着剤層が十分な接着力を発揮できる大きさにすることが望ましい。
【0023】
さらに、本発明においては、布帛として吸水性のないものも使用することができるが、皮膚側から粘着剤層側へ滲出液を移行させて創部を湿潤状態に保つ機能を十分発揮するために透水性を有するものが好適に使用される。すなわち、布帛として、乾燥重量が4g/m以上100g/m未満(好ましくは4〜80g/m)であり、かつ37℃の水に布帛を浸漬した後の吸水重量が4g/m以上1,000g/m未満(好ましくは4〜600g/m)のものが使用される。なお、乾燥重量及び吸水重量が大き過ぎると、粘着剤層による吸水を阻害するので好ましくない。また、乾燥重量が小さ過ぎると、強度が弱く破損する虞があり、また皮膚面への粘着剤の滲出しを生ずる可能性がある。布帛の乾燥重量及び吸水重量を上記範囲とすることで、滲出液を吸収した場合にも粘着剤層のクッション性を損なわず、良好な使用感を得ることができる。なお、布帛は、滲出液を吸収した場合に粘着剤層における吸水を阻害するほど保水能力が高くないので、皮膚側から粘着剤層側へ滲出液を移行させることが可能であり、これにより湿潤状態が保たれる。本明細書において、「乾燥重量」とは23℃で平衡状態に達した時の布帛重量をいい、「吸水重量」とは37℃の水に3時間浸漬したときの吸水後の布帛重量をいう。なお、本明細書において、「平衡状態」とは布帛の重量変化が実質的に生じない状態をいい、「重量変化が実質的に生じない」とは重量変化が±2重量%の範囲内にあることをいう。
【0024】
さらに、布帛は、乾燥後の厚みが10μm以上500μm未満であることが好ましく、より好ましくは20〜400μmであり、粘着剤層よりも薄いことが望ましい。厚過ぎると、粘着剤層の吸水性及びクッション性を阻害し、また薄過ぎると、破損や粘着剤の滲出しを生ずる可能性がある。布帛の乾燥後の厚みを上記範囲とすることで、滲出液を吸収した場合にも粘着剤層のクッション性を損なわず、また貼付中にコールドフローにより布帛が粘着剤層に沈み込んでも粘着性に悪影響を与えることがない。更に、粘着剤層と布帛の境目において摩擦等を生ずることがないため、皮膚面に対して余分な刺激を与えることがない。
また、布帛の透気度は、0秒以上0.2秒未満であるが、より好ましくは0秒以上0.1秒以下である。0.2秒以上であると水が通る間隙が小さいか、あるいは繊維が層状に形成されているため、水の通りが悪くなる。よって、滲出液の粘着剤層への移行が阻害されやすくなる。なお、本明細書において、「透気度」とは、面積645.16mmの布帛を100ccの空気が通過する時間をガーレ式デンソメータで測定したものをいう。
【0025】
以上、本発明の創傷被覆材をその実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、粘着剤層及び布帛の保護のために、粘着剤層及び布帛上にセパレータが積層されていてもよく、セパレータとしては当該技術分野で公知のものを用いることができる。また、セパレータの表面は、粘着層からの剥離性を高めるために、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の離型処理が施されていてもよい。また、セパレータの厚さは、通常25〜200μm、好ましくは40〜150μm、より好ましくは50〜120μmである。
【0026】
次に、本発明の創傷被覆材の製造方法について説明する。創傷被覆材は、一般に、支持体上に上記粘着剤を塗布、必要により乾燥して粘着剤層を形成した後、粘着剤層の一部に布帛を積層するか、あるいは上記粘着剤を剥離紙等の基材上に塗布、必要により乾燥して粘着剤層を形成した後、これを支持体に貼り合わせ、次いで粘着剤層の一部に布帛を積層することで製造することができる。更には、上記粘着剤をプレス機によりシート状に成形して粘着剤層を形成した後、これを支持体に貼り合わせ、次いで粘着剤層の一部に布帛を積層してもよい。なお、支持体又は基材上に粘着剤を塗布する場合には、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いることができる。この場合、乾燥後の粘着剤層の厚みが、通常0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.5mmになるように粘着剤を塗布する。
【0027】
本発明の創傷被覆材は、布帛が創部に当接するように露出した粘着剤層を皮膚面に貼付して使用される。これにより、創部からの滲出液を吸収しつつ創部を湿潤状態に保つことが可能になるため、細菌感染を防止しつつ創治癒を促進することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
粘着剤を90℃に加温したプレス機にて厚み0.5mmのシート状に成形し、これを支持体であるポリウレタンフィルム[厚み30μm、透湿度(24時間)800g/m程度、シーダム(株)製]の一方面に貼り合わせた後、他方面にセパレータを貼り合わせて粘着シートを得た。なお、粘着剤として45重量%のエラストマー(ポリイソブチレン、Mv45,000〜56,000)と、50重量%の吸水性物質(ペクチン12.5重量%、ゼラチン20重量%、カルボキシメチルセルロース17.5重量%)と、5重量%の添加剤(硫酸アルミニウム)を含有するものを用いた。
次いで、表1に示す材質からなる布帛を3×3cmに裁断し、上記粘着シートのセパレータを剥離し、その剥離面側に布帛を貼り合わせ、次いで5×5cmの大きさに打ち抜いて創傷被覆材を得た。また、粘着シートに同様の方法により布帛を貼り合わせ、次いで2cm×10cmの大きさに打ち抜いて創傷被覆材を得た。
【0030】
(実施例2)
表1に示す材質からなる布帛を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、大きさの異なる2種類の創傷被覆材を得た。
【0031】
(比較例1)
表1に示す材質からなる布帛を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、大きさの異なる2種類の創傷被覆材を得た。
【0032】
(比較例2)
表1に示す材質からなる布帛を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、大きさの異なる2種類の創傷被覆材を得た。
【0033】
(比較例3)
表1に示す材質からなる布帛を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、大きさの異なる2種類の創傷被覆材を得た。
【0034】
(比較例4)
布帛を積層しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により粘着シートを裁断して、大きさの異なる2種類の粘着シートを得た。
【0035】
(比較例5)
実施例1の布帛を用い、粘着剤としてアクリル酸2−エチルヘキシル(95重量%)と、アクリル酸(5重量%)とからなる共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、大きさの異なる2種類の創傷被覆材を得た。
【0036】
(比較例6)
実施例1の布帛を用い、比較例5の粘着剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、大きさの異なる2種類の創傷被覆材を得た。
【0037】
【表1】

【0038】
[評価試験]
(1)皮膚貼付性
上述のようにして5×5cmに加工した、実施例1〜2、比較例1〜3、5及び6の創傷被覆材と、比較例4の粘着シートを試料として用い、5人のボランティアの前腕部内側に48時間貼付して皮膚貼付性について評価した。なお、評価は、貼付中の皮膚への違和感、及び布帛部分の皮膚からの剥離性ついて下記の基準にしたがって採点し、5人の平均点を求めた。評価結果を表2に示す。
【0039】
(貼付中の違和感)
1点:貼付中、皮膚への違和感があり、不快である。
2点:多少違和感があるが、気にならない。
3点:違和感はなかった。
【0040】
(皮膚からの剥離性)
1点:布帛部分から粘着剤が滲み出して皮膚に完全に付着している。
2点:布帛部分から粘着剤が滲み出しているが、スムースに剥離できる。
3点:布帛部分から粘着剤が滲み出しておらず、問題なく剥離できる。
【0041】
(2)投錨性
上述のようにして2cm×10cmに加工した、実施例1〜2、比較例1〜3、5及び6の創傷被覆材を試料として用い、布帛面のみを水に浸漬し、37℃で3時間静置した。3時間後、試料の水気を十分に拭き取った。次いで、図2に示すように、ベークライト板Aに2cm×10cmの両面テープBで試料の支持体1側を固定し、引張試験機により室温下、速度300mm/分の180°ピール試験にて粘着剤層3から布帛5を引き剥がす際の接着強度を測定した。
【0042】
(3)吸水率
実施例1〜2、比較例1〜3、5及び6の創傷被覆材の布帛部分を切り出して試料とし、また比較例4の粘着シートについては3×3cmに切り出して試料とした。次いで、試料の布帛側のみを37℃の水に浸漬して24時間静置した。なお、比較例4については粘着剤層側のみを水に浸漬した。24時間後の吸水率を下記式により算出した。評価結果を表2に示す。
【0043】
【数1】

【0044】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の創傷被覆材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】投錨性の試験方法についての説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1…支持体、3…粘着剤層、5…布帛、10…創傷被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
該支持体上に積層された粘着剤層と、
該粘着剤層の一部に積層された布帛と
を備え、
粘着剤層が吸水性又は水膨潤性を有しており、
布帛が織布、不織布、編布及び多孔質フィルムのうちのいずれかで構成され、その乾燥重量が4g/m以上100g/m未満であり、かつ37℃の水に浸漬した際の吸水重量が4g/m以上1,000g/m未満である、
創傷被覆材。
【請求項2】
粘着剤層がエラストマーと、吸水性物質とを含有する粘着剤で構成される、請求項1記載の創傷被覆材。
【請求項3】
エラストマーがポリイソブチレン及び/又はポリイソプレンである、請求項2記載の創傷被覆材。
【請求項4】
吸水性物質がペクチン、ゼラチン及びカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の創傷被覆材。
【請求項5】
粘着剤層の厚みが0.1mm以上2.0mm未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項6】
布帛の厚みが10μm以上500μm未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項7】
布帛の透気度が0秒以上0.2秒未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の創傷被覆材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−325718(P2007−325718A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158550(P2006−158550)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】