創傷閉鎖デバイス
【課題】創傷に閉鎖を提供する移植物を提供する。
【解決手段】創傷閉鎖デバイス1であって、近位端および遠位端を有する細長い本体12と、上記細長い本体の上記遠位端に枢動可能に接続された組織対向面16、および上記組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材14とを含み、上記組織対向面は、求電子性成分を含み、そして上記組織対向面と反対側の上記第2の表面は、求核性成分を含む、創傷閉鎖デバイス。本開示は、創傷閉鎖デバイス、同デバイスを作製する方法、および同デバイスを使用する方法を提供する。
【解決手段】創傷閉鎖デバイス1であって、近位端および遠位端を有する細長い本体12と、上記細長い本体の上記遠位端に枢動可能に接続された組織対向面16、および上記組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材14とを含み、上記組織対向面は、求電子性成分を含み、そして上記組織対向面と反対側の上記第2の表面は、求核性成分を含む、創傷閉鎖デバイス。本開示は、創傷閉鎖デバイス、同デバイスを作製する方法、および同デバイスを使用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年10月8日に出願された米国仮特許出願第61/249,630号の利益およびこの仮特許出願に対する優先権を主張し、この仮特許出願の全開示は本明細書において、参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、創傷に閉鎖を提供する移植物に関し、特に、腹腔鏡ポート部位等の組織の穿孔を修復および密閉するための創傷閉鎖デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
様々な外科手技(例えば、腹腔鏡手技)は、アクセスポートを介して行われ、その間、アクセスデバイスが組織を穿刺して、手術部位にアクセスを提供する。
【0004】
ヘルニアは、損傷した筋組織または損傷した膜(通常、筋組織または膜により組織、構造物、または器官が収容されている)を通り抜けて、その組織、構造、または器官の一部が突出することである。外套針部位のヘルニア形成は、低侵襲手術の潜在的な合併症である。低侵襲外科用デバイスまたはアクセスポートを除去すると、組織が適切に治癒しない可能性があり、ヘルニアの再形成を含む懸念が生じ得る。より具体的には、より大きな外套針部位(10mm)に大網ヘルニアおよび腸ヘルニアの形成が報告されている。
【0005】
現在、縫合糸等の創傷閉鎖デバイスが、術後に種々の組織層を閉鎖するために使用されている。アクセスデバイスの除去後に患者を縫合することは煩雑であることがあり、その上、手術室で過ごす時間の増加等、患者にとっての追加費用が累積する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
縫合等の従来の方法が存在する一方で、本分野における改良が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本開示は、創傷閉鎖デバイス、同デバイスを作製する方法、および同デバイスを使用する方法を提供する。実施形態において、本開示の創傷閉鎖デバイスは、近位端および遠位端を有する細長い本体と、細長い本体の遠位端に枢動可能に接続する組織対向面およびこの組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含んでもよく、組織対向面は、求電子成分を含み、そして組織対向面と反対側の第2の表面は、求核性成分を含む。
【0008】
実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、栓部材の組織対向面の少なくとも一部上に多孔質基質をさらに含むことができる。この多孔質基質は、メッシュまたはヒドロゲルであってもよい。
【0009】
他の実施形態において、本開示の創傷閉鎖デバイスは、近位端および遠位端を有する細長い本体と、組織対向面およびこの組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含んでもよく、組織対向面は、細長い本体の遠位端に枢動可能に接続し、栓部材は、多孔質基質の組織対向面に適用される第1のヒドロゲル前駆体、および組織対向面と反対側の第2の表面に適用される第2のヒドロゲル前駆体を含む多孔質基質を含み、基質の組織対向面は、組織対向面と反対側の第2の表面から空間的に分離されている。
【0010】
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 創傷閉鎖デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い本体と、
該細長い本体の該遠位端に枢動可能に接続された組織対向面、および該組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含み、
該組織対向面は、求電子性成分を含み、そして該組織対向面と反対側の該第2の表面は、求核性成分を含む、創傷閉鎖デバイス。
【0011】
(項目2) 前記栓部材の組織対向面の少なくとも一部上に多孔質基質をさらに含み、該多孔質基質は、第一の組織対向面および、該栓部材に隣接する該第一の組織対向面の反対側の表面を有する、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0012】
(項目3) 前記多孔質基質は、メッシュを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0013】
(項目4) 前記多孔質基質は、ヒドロゲルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0014】
(項目5) 前記求核性成分は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0015】
(項目6) 前記求電子性成分は、ポリエチレングリコールエステルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0016】
(項目7) 前記求電子性成分は、求電子性基としてN−ヒドロキシスクシンイミドを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0017】
(項目8) 前記求核性成分は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0018】
(項目9) 前記求電子性成分は、粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0019】
(項目10) 前記求核性成分は、粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0020】
(項目11) 前記細長い本体は、多孔質基質を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0021】
(項目12) 創傷閉鎖デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い本体と、
組織対向面および該組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含み、
該組織対向面は、該細長い本体の遠位端に枢動可能に接続し、該栓部材は、多孔質基質を含み、該多孔質基質は、該多孔質基質の組織対向面に適用された第1のヒドロゲル前駆体、および該組織対向面と反対側の第2の面に適用された第2のヒドロゲル前駆体を含み、該基質の組織対向面は、該組織対向面と反対側の該第2の表面から空間的に分離されている、創傷閉鎖デバイス。
【0022】
(項目13) 前記多孔質基質は、メッシュを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0023】
(項目14) 前記多孔質基質は、ヒドロゲルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0024】
(項目15) 前記第2のヒドロゲル前駆体は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0025】
(項目16) 前記第1のヒドロゲル前駆体は、ポリエチレングリコールエステルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0026】
(項目17) 前記第1のヒドロゲル前駆体は、求電子性基としてN−ヒドロキシスクシンイミドを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0027】
(項目18) 前記第2のヒドロゲル前駆体は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0028】
(項目19) 前記第1のヒドロゲル前駆体は、粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0029】
(項目20) 前記第2のヒドロゲル前駆体は、粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0030】
(項目21) 前記細長い本体は、多孔質基質を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0031】
(摘要)
創傷の修復に有用である細長い本体および栓部材を含む、生体適合性創傷閉鎖デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0032】
創傷閉鎖デバイスの種々の実施形態が、以下の図面に関連して本明細書に記載される。
【図1】図1は、本開示の一実施形態による創傷閉鎖デバイスの断面斜視図である。
【図2】図2は、本開示の別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの断面図である。
【図3A】図3Aは、本開示の代替実施形態による脱水された成分を有する創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図3B】図3Bは、再水和後の図3Aの創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図4】図4は、本開示の別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図5】図5は、本開示のさらに別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図6】図6は、本開示の別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図7】図7は、本開示のさらに別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図8】図8は、本開示の一実施形態による創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図9】図9は、本開示による創傷閉鎖デバイスの代替実施形態の断面図である。
【図10】図10は、本開示の一実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図11】図11は、本開示の別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図12】図12は、本開示のさらに別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図13A】図13Aは、本開示の実施形態による第1の折り曲げ位置にある創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図13B】図13Bは、図13Aの創傷閉鎖デバイスの側面斜視図である。
【図13C】図13Cは、第2の拡張位置にある図13Aの創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図13D】図13Dは、図13Cの創傷閉鎖デバイスの上面図である。
【図14A】図14Aは、本開示の一実施形態による展開位置にある創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図14B】図14Bは、折り曲げ位置にある図14Aの創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図14C】図14Cは、展開位置に示される図14Aの創傷閉鎖デバイスの側面図であり、図14Bの折り曲げ位置が破線で示される。
【図15A】図15Aは、本開示の別の実施形態による展開位置にある創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図15B】図15Bは、第1の折り曲げ位置に示される図15Aの創傷閉鎖デバイスの側面図であり、第2の展開位置が破線で示される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(詳細な説明)
本発明の創傷閉鎖デバイスは、創傷の閉鎖を促進するものであり、また治癒を向上させ、瘢痕、疼痛、および感染を減少させるための生物製剤および/または治療剤を送達するために、ならびに創傷部位に機械的な安定性を提供してポート部位のヘルニア形成を防止するために使用されてもよい。創傷閉鎖デバイスは、創傷の穿孔組織内に挿入し、組織を充填して一緒に保持するための細長い本体と、組織の内部表面に対して位置付けて創傷を塞ぐまたは閉じるための実質的に平坦な組織対向面を有する、細長い本体の遠位端部に装着された栓部材とを含む。実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、外套針等の挿入デバイスを通して挿入され、針が除去されると、残された創傷閉鎖デバイスが創傷を閉鎖する。
【0034】
創傷閉鎖デバイスの構成要素、すなわち、細長い本体および/または栓部材は、外科手技において使用することができる任意の生分解性材料から製造されてもよい。本明細書で使用される場合の「生分解性」という用語は、生体吸収性材料および生体再吸収性材料の両方を含むように定義される。生分解性とは、分解産物が身体によって排泄可能または吸収可能となるように、身体条件(例えば、酵素分解または加水分解)下で材料が分解すること、または構造的完全性を失うこと、または体内の生理的条件下で(物理的または化学的に)崩壊することを意味する。そのような材料は、本開示の創傷閉鎖デバイスの構成要素を形成するための天然、合成、生体吸収性、および/または非吸収性の材料ならびにそれらの組み合わせを含むことを理解されたい。
【0035】
代表的な天然の生分解性ポリマーは、アルギネート、デキストラン、キチン、ヒアルロン酸、セルロース、コラーゲン、ゼラチン、フカン、グリコサミノグリカン等の多糖類およびそれらの化学的誘導体(例えば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、ならびに当業者によって日常的に行われる他の修飾等の化学基の置換および/または付加)、タンパク質(アルブミン、カゼイン、ゼインおよび絹等)、ならびに単独のまたは合成の生分解性ポリマーと組み合わせたそれらのコポリマーおよびブレンドを含む。
【0036】
合成的に修飾された天然のポリマーは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサン等のセルロース誘導体を含む。好適なセルロース誘導体の実施例は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩を含む。本明細書の実施形態においては、これらを総称して「セルロース」と称してもよい。
【0037】
代表的な合成の生分解性ポリマーは、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン(ε−カプロラクトンを含む)、バレロラクトン(δ−バレロラクトンを含む)等のラクトンモノマーから調製されるポリヒドロキシ酸、ならびに炭酸(例えば、炭酸トリメチレン、炭酸テトラメチレン等)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノンおよびp−ジオキサノン)、1,ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、およびそれらの組み合わせを含む。それらから形成されるポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−(ε−カプロラクトン−))、ポリ(グリコリド−コ−(ε−カプロラクトン))、ポリカーボネート、ポリ(偽アミノ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ならびにそれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせを含む。
【0038】
創傷閉鎖デバイスを作製することができる生分解性材料の他の非限定的な実施例は、ポリ(ホスファジン)、脂肪族ポリエステル、ポリエチレングリコール、グリセロール、コポリ(エーテル‐エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカルボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ならびにそれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせを含む。
【0039】
ポリマーの表面が侵食するにつれてカルボキシル基が外表面上に暴露される、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ無水物、およびポリオルトエステル等の急速生体侵食性ポリマーが使用されてもよい。
【0040】
実施形態において、細長い本体、栓部材、もしくはその両方、または細長い本体、栓部材、もしくはその両方のコーティングは、ヒドロゲルから形成されてもよい。ヒドロゲルは、当業者の知識の範囲内である任意の成分で形成されてもよい。いくつかの実施形態において、後にさらに説明するように、ヒドロゲルは、コラーゲン、ゼラチン、血清、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ等の天然成分で形成されてもよい。天然成分は、創傷閉鎖デバイスの一部として使用される任意のヒドロゲルが分解するにつれて、移植部位で分解してもよく、そうでなければ放出されてもよい。本明細書で使用される場合、「天然成分」という用語は、天然に見出され得るか、または天然に見出される組成物/生命体に由来し得る、ポリマー、組成物、材料、それらの組み合わせ等を含む。また天然成分は、天然に見出されるが、例えば、天然/合成/生物学的な組換材料を作製する方法、ならびに天然に見出されるタンパク質と同じ配列を有するタンパク質を生成することができる方法、および/または、例えばSigma Aldrichより市販される合成ヒアルロン酸等の天然の材料と同じ構造および成分を有する材料を生成することができる方法を用いて、人間によって合成され得る組成物を含んでもよい。
【0041】
ヒドロゲルは、単一の前駆体または複数の前駆体から形成されてもよい。これは、移植前または移植時に起こり得る。いずれの場合も、ヒドロゲルの形成は、適用時に活性化され、実施形態においては、ヒドロゲルを作成し得る前駆体を有し得ることにより、達成することができる。活性化は、これに限定されないが、pH、イオン性、圧力、温度等の環境変化を含む種々の方法によってなされ得る。他の実施形態において、ヒドロゲルを形成するための成分は、体外で接触させ、その後、予め形成された創傷閉鎖デバイスまたはその構成要素等の移植物として、患者の体内に導入されてもよい。
【0042】
ヒドロゲルが複数の前駆体(例えば、2つの前駆体)から形成される場合、前駆体は、第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体と称されてもよい。「第1のヒドロゲル前駆体」および「第2のヒドロゲル前駆体」という用語は、各々、架橋分子(例えばヒドロゲル)のネットワークを形成するための反応に関与し得る、ポリマー、官能性ポリマー、巨大分子、小分子、または架橋剤を意味する。
【0043】
実施形態において、ヒドロゲルを形成するために使用される前駆体は、例えば、モノマーまたはマクロマーであってもよい。ある種類の前駆体は、求電子剤または求核剤である官能基を有してもよい。求電子剤は、求核剤と反応して共有結合を形成する。共有結合性の架橋または結合とは、異なるポリマーを互いに共有結合させる役割を果たす異なるポリマー上の官能基の反応によって形成される化学基を指す。特定の実施形態において、第1の前駆体上の第1のセットの求電子性官能基は、第2の前駆体上の第2のセットの求核性官能基と反応することができる。反応を可能にする環境(例えば、pH、温度、イオン性および/または溶媒と関連する)で前駆体が混合されると、官能基は互いに反応して共有結合を形成する。前駆体のうちの少なくともいくつかが、1つより多くの他の前駆体と反応できる場合に、前駆体は架橋する。例えば、第1の種類の官能基を2つ有する前駆体は、第1の種類の官能基と反応することができる第2の種類の官能基を少なくとも3つ有する架橋前駆体と反応させてもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、「官能基」という用語は、互いに反応して結合を形成することができる基を指す。実施形態において、そのような基は、求電子性または求核性であってもよい。求電子性官能基は、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミド、カルボニルジイミダゾール、スルホニルクロリド、アリールハライド、スルホスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステル等を含む。実施形態において、求電子性官能基は、スクシンイミジルエステルである。
【0045】
第1および第2のヒドロゲル前駆体は、生物学的に不活性な水溶性のコアを有することができる。より具体的には、求電子性ヒドロゲル前駆体は、生物学的に不活性な水溶性のコア、および非水溶性のコアを有することができる。コアが水溶性のポリマー領域である場合、使用することができる好適なポリマーは、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−コ‐ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、コ‐ポリエチレンオキシドブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、およびポリビニルアルコール(「PVA」)等)等のポリエーテル、ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(サッカリド)(例えば、デキストラン、キトサン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒアルロン酸等)、ならびにアルブミン、コラーゲン、カゼイン、およびゼラチン等のタンパク質を含む。他の好適なヒドロゲルは、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、それらの組み合わせ等の成分を含んでもよい。実施形態において、上記ポリマーおよび成分の組み合わせが使用され得る。
【0046】
ポリエーテル、より具体的には、ポリ(オキシアルキレン)またはポリエチレングリコールが、いくつかの実施形態において使用されてもよい。分子の性質上、コアが小さい場合は、種々の親水性官能基のいずれかが、第1および第2のヒドロゲル前駆体を水溶性にするために使用されてもよい。例えば、ヒドロキシル、アミン、スルホネートおよびカルボキシレート等の水溶性の官能基が、前駆体を水溶性にするために使用されてもよい。例えば、スベリン酸のN−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは水に不溶性であるが、スクシンイミド環にスルホネート基を付加することによって、スベリン酸のNHSエステルは、そのアミン基に対する反応性に影響を及ぼすことなく、水溶性にされ得る。実施形態において、求電子性官能基を有する前駆体は、PEGエステルであってもよい。
【0047】
上述したように、第1および第2のヒドロゲル前駆体のそれぞれが多官能性であってもよく、つまり、それらは2つ以上の求電子性官能基または求核性官能基を含んでもよく、そのため、例えば、第1のヒドロゲル前駆体上の求核性官能基が、第2のヒドロゲル前駆体上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成できることを意味している。第1または第2のヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは2個を超える官能基を含んでおり、そのため、求電子−求核反応の結果として、前駆体が組み合わさり、架橋ポリマー生成物、実施形態においては、ヒドロゲルを形成する。
【0048】
求電子性官能基を有する巨大分子は、マルチアーム型であってもよい。例えば、巨大分子は、コアから延びる4本、6本、8本、またはそれ以上のアームを有するマルチアームPEGであってもよい。コアは、アームを形成する巨大分子と同じかまたは異なっていてもよい。例えば、コアはPEGであってもよく、マルチアームもまたPEGであってもよい。実施形態において、コアは、天然のポリマーであってもよい。
【0049】
求電子性架橋剤の分子量(MW)は、約2,000g/molから約100,000g/molであってもよく、実施形態においては、約10,000g/molから約40,000g/molである。マルチアーム型の前駆体は、アームの数によって異なる分子量を有することができる。例えば、1000g/molのPEGを有するアームは、合計で少なくとも1000g/molになるのに十分なCH2CH2O基を有する。個々のアームの分子量を合わせると、約250g/molから約5,000g/molであってもよく、実施形態においては、約1,000g/molから約3,000g/molであり、実施形態においては、約1,250g/molから約2,500g/molである。実施形態において、求電子性架橋剤は、例えば、4本、6本、または8本のアームを有し、かつ、約5,000g/molから約25,000g/molの分子量を有する、複数のNHS基で官能化されたマルチアームPEGであってもよい。好適な前駆体の他の実施例は、米国特許第6,152,943号、同第6,165,201号、同第6,179,862号、同第6,514,534号、同第6,566,406号、同第6,605,294号、同第6,673,093号、同第6,703,047号、同第6,818,018号、同第7,009,034号、および同第7,347,850号に開示され、これらの各々の全開示は、参考として本明細書に援用される。
【0050】
求電子性前駆体は、特定の実施形態において1級アミンを含有する天然成分等の別の成分上の求核剤と結合することができる求電子性官能基を提供する架橋剤であってもよい。求電子性架橋剤が適用される天然成分は、内因性成分(患者にとって、(すなわち、コラーゲン))であってもよい。
【0051】
実施形態において、前駆体のうちの1つは、求核性基を保有する求核性前駆体であってもよい。存在し得る求核性基は、例えば、−NH2、−SH、−OH、−PH2、および−CO−NH−NH2を含む。求電子性前駆体の形成における使用に好適であると上述した任意のモノマー、マクロマー、ポリマー、またはコアは、求核性基で官能化して求核性前駆体を形成することができる。他の実施形態において、上に列記したような求核性基を保有する天然成分は、求核性前駆体として使用されてもよい。
【0052】
天然成分は、例えば、コラーゲン、ゼラチン、血液(全血清またはその抽出物であってもよい血清を含む)、ヒアルロン酸、タンパク質、アルブミン、他の血清タンパク質、血清濃縮物、多血小板血漿(prp)、それらの組み合わせ等であってもよい。使用されてもよいか、または別の天然成分に添加されてもよい、さらなる好適な天然成分は、例えば、幹細胞、DNA、RNA、酵素、成長因子、増殖因子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、他の窒素含有天然分子、それらの組み合わせ等を含む。他の天然成分は、天然由来、合成、もしくは生物学的に派生したものであってもよい、例えば、ヒアルロン酸またはデキストラン等の修飾された多糖類等の上記物質の誘導体を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、天然成分は、アミノ化されたヒアルロン酸であってもよい。
【0053】
実施形態において、上記天然成分のいずれかは人工的に調製されてもよく、例えばSigma Aldrichより購入することができる合成ヒアルロン酸等であってもよい。同様に、実施形態において、天然成分は、天然または合成の長鎖アミノ化ポリマーであってもよい。
【0054】
天然成分は、それがインサイチュで接触する組織に、細胞の構成単位または細胞の栄養分を提供することができる。例えば、血清は、組織の形成または再生において有用であり得るタンパク質、グルコース、凝固因子、無機イオン、およびホルモンを含有する。
【0055】
実施形態において、天然成分は全血清を含む。いくつかの実施形態において、天然成分は自己由来であり、すなわち、コラーゲン、血清、血液等である。
【0056】
実施形態において、複数のアミン基を有する天然成分等の多官能性求核性ポリマーは、第1のヒドロゲル前駆体として使用されてもよく、複数のNHS基で官能化されたマルチアームPEG、すなわちPEGエステル等の多官能性求電子性ポリマーは、第2のヒドロゲル前駆体として使用されてもよい。実施形態において、前駆体は、ヒドロゲルの形成を可能にするために組み合わせられてもよい溶液(複数可)中に存在してもよい。インサイチュの形成材料系の一部として使用されるいずれの溶液も、有害または毒性の溶媒を含有するべきではない。実施形態において、前駆体(複数可)は、緩衝等張食塩水等の生理的に適合性のある溶液における適用を可能にするよう、水等の溶媒中で実質的に可溶性であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、予め形成されたヒドロゲルは、架橋剤として多官能性PEGを用いて、天然成分としてコラーゲンとゼラチンの組み合わせから形成されてもよい。実施形態において、コラーゲンおよびゼラチンは、好適な溶媒を用いて、溶液に入れられてもよい。この溶液に、高pH緩衝液とともにヒアルロン酸が添加されてもよい。そのような緩衝液は、約8から約12のpHを有することができ、実施形態においては、約8.2から約9であってもよい。そのような緩衝液の実施例は、これに限定されないが、ホウ酸塩緩衝液等を含む。
【0058】
第2の溶液中では、実施形態においてn−ヒドロキシスクシンイミド等の求電子性基で官能化したマルチアームPEGである求電子性架橋剤が、ハンクス平衡塩溶液、ダルベッコ改変イーグル培地、リン酸緩衝食塩水、水、リン酸緩衝液、それらの組み合わせ等の緩衝液中で調製されてもよい。実施形態ではn−ヒドロキシスクシンイミド基で官能化したマルチアームPEGである求電子性架橋剤は、約0.02グラム/mLから約0.5グラム/mLの濃度で、実施形態においては約0.05グラム/mLから約0.3グラム/mLの濃度で、上記緩衝液を含む溶液中に存在してもよい。
【0059】
2つの成分が組み合わされてもよく、マルチアームPEG上の求電子性基が、コラーゲンおよび/またはゼラチンのアミン求核性成分と架橋する。天然成分対求電子性成分の比率は、約0.01:1から約100:1であってもよく、実施形態においては、約1:1から約10:1である。
【0060】
特定の実施形態において、たとえば、コラーゲン、ゼラチン、および/またはヒアルロン酸等の天然成分である求核性成分は、ヒドロゲルの少なくとも約1.5重量パーセントの濃度で一緒に存在してもよく、実施形態において、ヒドロゲルの約1.5重量パーセントから約20重量パーセント、他の実施形態において、ヒドロゲルの約2重量パーセントから約10重量パーセントである。特定の実施形態において、コラーゲンは、ヒドロゲルの約0.5重量パーセントから約7重量パーセントで存在してもよく、さらなる実施形態において、ヒドロゲルの約1重量パーセントから約4重量パーセントである。別の実施形態において、ゼラチンは、ヒドロゲルの約1重量パーセントから約20重量パーセントで存在してもよく、さらなる実施形態において、ヒドロゲルの約2重量パーセントから約10重量パーセントである。さらに別の実施形態において、天然成分(複数可)として組み合わされるヒアルロン酸およびコラーゲンは、ヒドロゲルの約0.5重量パーセントから約8重量パーセントで存在してもよく、さらなる実施形態において、ヒドロゲルの約1重量パーセントから約5重量パーセントである。また、ヒアルロン酸は、「構造的な」成分としてではなく、むしろ生物活性剤として存在してもよいことも想定されたい。例えば、ヒアルロン酸は、溶液/ゲルの0.001重量パーセントという低濃度で溶液/ゲル中に存在してもよく、生物学的活性を有する。
【0061】
求電子性架橋剤は、ヒドロゲルの約0.5重量パーセントから約20重量パーセントの量で存在してもよく、実施形態において、ヒドロゲルの約1.5重量パーセントから約15重量パーセントである。
【0062】
ヒドロゲルは、共有結合、イオン性結合、または疎水性結合のいずれかによって形成されてもよい。物理的(非共有結合性)架橋は、複合体形成、水素結合、脱溶媒和、ファンデルワールス相互作用、イオン性結合、それらの組み合わせ等に起因してもよく、インサイチュで組み合わせられるまでは物理的に分離している2つの前駆体を混合することによって、または、温度、圧力、pH、イオン強度、それらの組み合わせ等を含む生理的環境における一般的な条件もしくは変化の結果として、開始されてもよい。よって、ヒドロゲルは、これらの環境条件/変化に感受性であり得る。化学的(共有結合性)架橋は、フリーラジカル重合、縮合重合、アニオン性もしくはカチオン性重合、逐次重合、求電子−求核反応、およびそれらの組み合わせ等を含む、多数の機構のうちのいずれかによって達成されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル系は、前駆体が混合されると自然に架橋するが、堆積プロセスの間は2つ以上の前駆体が個別に安定している生体適合性の複数前駆体系を含んでもよい。他の実施形態において、ヒドロゲルは、内因性の物質および/または組織と架橋する単一の前駆体から形成されてもよい。
【0064】
得られたヒドロゲルの架橋密度は、架橋剤および天然成分の総分子量、ならびに分子当たり使用可能な官能基の数によって制御することができる。600ダルトン(Da)等の架橋間の低い分子量は、10,000Da等の高い分子量と比較すると、はるかに高い架橋密度を示す。弾性ゲルは、3000Daを超える分子量を有する高い分子量の天然成分で得ることができる。1ダルトンは1g/molに相等し、分子量に言及する場合、それらの用語は、交換可能に使用されてもよいことを理解されたい。
【0065】
また架橋密度は、架橋剤および天然成分の溶液の総固体パーセントによって制御することができる。固体パーセントを増加させると、加水分解による不活性化の前に、求電子性基が求核性基と結合する確率が増加する。架橋密度を制御するためのさらに別の方法は、求核性基対求電子性基の化学量論を調節することによる。1対1の比率は最高の架橋密度をもたらすことができるが、反応性官能基(例えば、求電子性:求核性)の他の比率が所望の製剤に適することが想定される。
【0066】
よって、生成されるヒドロゲルは生体吸収性であってもよい。例えば、本開示のヒドロゲルは、約1日から約18ヶ月まで、あるいは約18ヶ月以上かけて吸収されてもよい。吸収性ポリマー材料は、天然および合成のポリマー、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0067】
実施形態において、ヒドロゲルを生分解性または吸収性にするために、官能基間に存在する生分解性結合を有する1つ以上の前駆体が含まれてもよい。いくつかの実施形態において、これらの結合は、例えば、加水分解的に分解され得るエステルであってもよい。そのような結合の使用は、タンパク質分解作用によって分解され得るタンパク質結合とは対照的である。また生分解性結合は、任意選択的に、1つ以上の前駆体の水溶性コアの一部を形成してもよい。代替として、または追加で、前駆体の官能基は、前駆体の間の反応生成物が生分解性結合をもたらすように選択されてもよい。それぞれのアプローチについて、生分解性結合は、得られた生分解性の生体適合性架橋ポリマーが、所望の期間に分解するかまたは吸収されるように選択されてもよい。一般的に、ヒドロゲルを生理的条件下で分解して、非毒性または低毒性の生成物にする生分解性結合が選択されてもよい。
【0068】
本開示において用いられる生分解性ゲルは、そのゲルが天然成分の一部であろうと、または合成の求電子性架橋剤に導入されようと、生分解性領域の加水分解または酵素分解によって分解することができる。合成ペプチド配列を含有するゲルの分解は、特定の酵素およびその濃度に依存する。いくつかの場合において、分解プロセスを促進するために、架橋反応の最中に特定の酵素が添加されてもよい。分解性酵素の非存在下では、架橋ポリマーは、単に生分解性セグメントの加水分解によってだけで分解することができる。ポリグリコレートが生分解性セグメントとして使用される実施形態において、架橋ポリマーは、ネットワークの架橋密度に依存して、約1日から約30日かけて分解することができる。同様に、ポリカプロラクトンに基づく架橋ネットワークが使用される実施形態において、分解は約1ヶ月から約8ヶ月の期間にわたって起こり得る。通常、分解時間は、使用される分解性セグメントの種類にしたがって、以下の順序で変化する:ポリグリコレート<ポリ乳酸<ポリ炭酸トリメチレン<ポリカプロラクトン。よって、異なる分解性セグメントを使用して、数日から数ヶ月までの所望の分解プロファイルを有するヒドロゲルを構築することが可能である。
【0069】
使用される場合、オリゴヒドロキシ酸ブロック等の生分解性ブロックによって生じる疎水性、または求電子性前駆体を形成するために使用されるPLURONICTMもしくはTETRONICTMポリマーにおけるPPOブロックの疎水性は、小さな有機薬物分子を溶解させる際に有用であり得る。生分解性または疎水性のブロックを組み込むことにより影響を受ける他の特性は、水分の吸収、機械的特性、および、感熱性を含む。
【0070】
他の実施形態において、ヒドロゲルを形成するために使用される前駆体は非分解性であってもよく、すなわち、前駆体は、求電子性前駆体の形成における使用に好適であると上述したマクロマー、ポリマー、またはコアのうちのいずれかを含んでもよいが、エステルまたは他の類似する分解性結合を保有しない。非生分解性結合は、N−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートの反応によって作製されてもよい。一実施形態において、マルチアームポリオールとN,N’−ジヒドロキシスクシンイミジルカーボネートとの反応は、N−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートを作製する。N−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートを、次いで、コラーゲン、アミノ化ヒアルロン酸、ゼラチン、またはデキストラン等の高分子量ポリアミンとさらに反応させて、予め形成されたヒドロゲルを作製することができる。高分子量ポリアミンは、低分子量ポリアミンと比較して、移植物の長期安定性を提供することができる。高分子量ポリアミンは、約15,000g/molから約250,000g/molの分子量を含んでもよく、特定の実施形態において、約75,000g/molから約150,000g/molである。非生分解性結合が使用される場合であっても、コラーゲン等の生分解性の第1のヒドロゲル前駆体の使用によって、移植物は生分解性のままであることを理解されたい。例えば、コラーゲンは、酵素的に分解されてもよく、ヒドロゲルを分解し、その後で腐食される。
【0071】
また、殺菌が容易で、天然材料の使用に伴う疾病伝播の危険性を回避する合成材料も使用されてもよい。実際に、例えば、FOCALSEAL(登録商標)(Genzyme,Inc.)、COSEAL(登録商標)(Angiotech Pharmaceuticals)、およびDURASEAL(登録商標)(Confluent Surgical,Inc)等の市販の製品において使用される、合成の前駆体を使用して作製される特定の重合可能なヒドロゲルは、当業者の知識の範囲内である。他の既知のヒドロゲルは、例えば、米国特許第6,656,200号、同第5,874,500号、同第5,543,441号、同第5,514,379号、同第5,410,016号、同第5,162,430号、同第5,324,775号、同第5,752,974号、および同第5,550,187号に開示されるものを含む。
【0072】
上述したように、実施形態において、本明細書で時として星型PEGと称されるマルチアームPEGは、本開示の創傷閉鎖デバイスの少なくとも一部を形成する際に使用されるヒドロゲルを形成するために含まれてもよい。星型PEGは、そのアームが、そのコア、そのアーム、またはそのアームの端部に、アミノ酸、ペプチド、抗体、酵素、薬剤、または他の部分等の生物学的官能基(biofunctional groups)を含むように官能化されてもよい。また生物学的官能基は、PEGの骨格内に組み込まれても、PEG骨格内に含有される反応基に結合してもよい。結合は、静電的、チオール媒介性、ペプチド媒介性、または、例えばビオチンとアビジン等の既知の反応化学の使用を含む、共有結合性または非共有結合性であってもよい。
【0073】
星型PEGに組み込まれるアミノ酸は天然または合成であってもよく、単独でまたはペプチドの一部として使用することができる。配列は、細胞接着、細胞分化、それらの組み合わせ等に使用されてもよく、成長因子、増殖因子、薬剤、サイトカイン、DNA、抗体、酵素、それらの組み合わせ等の他の生体分子の結合に有用であり得る。そのようなアミノ酸は、星型PEGの酵素分解により放出されてもよい。
【0074】
これらの星型PEGはまた、それらのヒドロゲル内への組み込みを可能にするために、上述したような官能基を含んでもよい。星型PEGは、求電子性架橋剤として使用されてもよいか、または、実施形態において、上記求電子性架橋剤に加えて別個の成分として使用されてもよい。実施形態において、星型PEGは、求核性基に結合する求電子性基を含むことができる。上述したように、求核性基は、本開示のヒドロゲルを形成するために使用される天然成分の一部であってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、生物学的官能基は、分解性結合を通して、星型PEGに含まれてもよく、この分解性結合として、PEGカルボン酸または活性化PEGカルボン酸と生物学的官能基上のアルコール基との反応によって形成されるエステル結合が挙げられる。この場合、エステル基は、生物学的官能基を放出するための生理的条件下で加水分解することができる。
【0076】
よって、細長い本体および/もしくは栓部材ならびに/またはその一部の上のコーティングは、1つの前駆体(フリーラジカル重合による)、もしくは、2つの前駆体から形成されるか、または3つ以上の前駆体で作成されるヒドロゲルであってもよく、前駆体のうちの1つ以上が、細長い本体および/もしくは栓部材を形成するための架橋に関与するか、または、細長い本体および/もしくは栓部材の上にコーティングもしくは層を形成することに関与する。
【0077】
細長い本体および栓部材は、後に実施形態において詳述するように、発泡体、繊維、フィラメント、メッシュ、織網および不織網、多孔性基質、圧定布、パッド、粉末、薄片、粒子、ならびにそれらの組み合わせの形態を採ることができる。創傷閉鎖デバイスの構成要素を形成するための好適な技術は当業者の知識の範囲内であり、凍結乾燥、製織、溶媒蒸発、成形等を含む。
【0078】
実施形態において、本開示の創傷閉鎖デバイスの細長い本体および栓部材のうちの一方または両方は、メッシュの形態であってもよい。メッシュを形成するための技術は当業者の知識の範囲内であり、例えば、鋳造、成形、ニードルパンチ、フッキング、製織、圧延、圧縮、バンドリング、ブレーディング、スピニング、杭打ち、編成、フェルティング(felting)、延伸、接合、束線、押出、および/またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、メッシュは、少なくとも細長い本体および/または栓部材を形成することができる。後に詳述するいくつかの実施形態において、メッシュは、本明細書に記載される反応基をさらに含むことができる。実施形態において、メッシュは生体吸収性であっても、非生体吸収性であってもよい。
【0079】
メッシュが、細長い本体および栓部材の両方の上に層を形成する場合、メッシュ自体がリビングヒンジ(living hinge)としての役割を果たすことができ、細長い本体を栓部材に枢動可能に接続する。メッシュのストランドを生成するために使用されるフィラメントは、約1μmから約2mmの直径を有してもよく、実施形態において、約100μmから約1mmである。
【0080】
よって、生成されるメッシュは、約0.2mmから約5mmの厚さ、実施形態においては約1mmから約3mmの厚さを有することができる。ストランドは、約100ミクロンから約2000ミクロンの直径、実施形態において、約200ミクロンから約1500ミクロン、他の実施形態において、約750ミクロンから約1250ミクロンの直径の細孔を形成するように隔置されてもよい。種々のメッシュの実施例は、米国特許第6,596,002号、同第6,408,656号、同第7,021,086号、同第6,971,252号、同第6,695,855号、同第6,451,032号、同第6,443,964号、同第6,478,727号、同第6,391,060号、および米国特許出願公開第2007/0032805号に開示されるものを含み、それらの各々の全開示は、参考として本明細書に援用される。
【0081】
メッシュのフィラメントは、モノフィラメントまたはマルチフィラメントであってもよい。マルチフィラメントの構築物が使用される場合、それらは、布、織物、パッチ、メッシュ等の中にさらに構築するためのユニットを形成するために、ひだを付ける、編込む、織る、ねじる等することができるか、または平行に並べられてもよい。フィラメントまたはストランドの分布は、無作為であるかまたは配向性があってもよい。
【0082】
メッシュは、本明細書に列挙するものを含む、天然または合成の、生体吸収性または非生体吸収性の材料を含むことができる。好適なメッシュはコラーゲン複合メッシュを含み、例えばPARIETEXTM(Covidienとして業務実施中のTyco Healthcare Group LP,North Haven,CT)等が使用されてもよい。PARIETEXTTM複合メッシュは、一つの面に再吸収性コラーゲンフィルムが結合した3次元のポリエステル織物である。
【0083】
実施形態において、メッシュ構成要素は、実質的に平坦なシートであってもよい。他の実施形態において、メッシュ構成要素は円筒形状であってもよい。円筒状のメッシュ構成要素は、平坦なメッシュのシートを丸めて中空の円筒を形成することによって形成されてもよい。
【0084】
細長い本体がメッシュで形成される実施形態において、メッシュは組織足場としての役割を果たすことができるため、組織統合/内殖のための手段を提供する。組織足場はまた、細胞に成長構成要素および発達構成要素を提供することができる。よって、本開示のヒドロゲルが組織足場として使用される場合、周辺組織に必要な栄養素および生物活性剤を提供することにより、自然の組織再成長における補助となり得る。いくつかの実施形態において、本明細書で考察されるように、ヒドロゲル自体が、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ等の天然成分を含んでもよく、よって、組織足場が分解するにつれて、天然成分は、移植部位で放出されてもよく、そうでなければ分解してもよい。
【0085】
細長い本体、栓部材、またはその両方を形成するために使用されるヒドロゲルもまた、組織足場としての機能を果たすことができる。
【0086】
創傷閉鎖デバイスの細長い本体および栓部材は、種々の化学的および/または物理的な手段のうちのいずれかを用いて、創傷閉鎖を提供する。細長い本体および/または栓部材は、その表面上に組織と結合する反応基を含むことができるか、または予め処理した部分が、移植されるとデバイスに結合する組織表面に適用されてもよい。反応基は、噴霧コーティング、浸漬コーティング、溶融加圧、押し出しまたは共有押し出し等を含むが、これに限定されない種々の手段を使用して創傷閉鎖デバイスに適用されてもよい。反応基は、固体、液体、または粒子の形態であってもよい。
【0087】
実施形態において、少なくとも1つの反応基を保有するポリマーは、創傷閉鎖デバイスの構成要素を組織に固定化することができる。他の実施形態において、ポリマーは、複数の反応基を保有してもよい。例えば、第1の反応基は、ポリマーを細長い本体および/または栓部材に化学的に結合させるために使用することができ、第2の反応基は、創傷閉鎖デバイスを組織に化学的に結合させるために使用することができ、よって、反応性ポリマーは、細長い本体および/または栓部材と組織との間にブリッジを形成する。化学結合とは、共有結合、架橋、イオン性結合等を含む、あらゆる種類の化学結合を意味する。
【0088】
いくつかの実施形態において、本開示による創傷閉鎖デバイスの構成要素を作製するために使用される任意のポリマーは、1つ以上の反応基で官能化されてもよい。ポリマーは、上述したような任意の好適な生分解性または非分解性ポリマーであってもよい。
【0089】
細長い本体および/または栓部材は、インサイチュに配置されたときにデバイスを周辺組織に架橋するための、少なくとも1つの反応基を含むことができる。上述したように、得られた反応性デバイスは、単数もしくは複数の反応性官能性を有することができるか、または、組織と共有結合的に結合することができる反応性部分と、小分子もしくはオリゴマー分子との混合物を含むことができる。
【0090】
実施形態において、反応性デバイスは、同デバイスを組織に結合することができる少なくとも1つの遊離反応基で官能化される架橋剤、接着剤、封止剤、カプラー等を含むことができる。追加として、反応基は、本開示の創傷閉鎖デバイスのヒドロゲル構成要素、およびその上の任意のコーティングを形成するために用いられる前駆体からの遊離官能基を含むことができる。
【0091】
より具体的には、反応基は、これに限定されないが、イソシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、シアノアクリレート、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセルアルデヒド、およびジアルデヒド)、ゲニピン、それらの組み合わせ、ならびに、組成物、組織、またはその両方の他の成分に対して何らかの親和性を有する化学物質を保有する、他の化合物を含む。反応性デバイスはまた、これに限定されないが、上に列挙したようなアルデヒド、リジン(トリリジン、テトラリジン、および/もしくはポリリジン等)、ジイミド、ジイソシアネート、シアナミド、カルボジイミド、ジメチルアジプイミデート(adipimidate)、デンプン、およびそれらの組み合わせを含む、任意の天然または合成の架橋剤を含むことができる。反応性成分は、移植前または移植時に形成される単官能性、二官能性、もしくは多官能性のモノマー、ダイマー、小分子、またはオリゴマーであってもよい。
【0092】
複数の異なる反応基が存在してもよく、それらは、末端に位置するか、またはポリマー鎖の長さに沿って交互に位置してもよいことが企図される。実施形態において、ポリマーは、約2個から約50個の反応基を有する。
【0093】
実施形態において、細長い本体および/または栓部材は、乾燥成分を含むことができ、実施形態において、前駆体および/または反応性成分は、本明細書に記載するように、任意選択的に粒子の形態であってもよい。これらの乾燥材料は、水性の生理学的液体の存在によって活性化されてもよい。例えば、前駆体および/または反応性成分は、微粒子状物質等の乾燥形態で、あるいはフィルムもしくは発泡体等の固体または半固体の状態で適用されてもよい。実施形態において、第1または第2のヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは、本開示の創傷閉鎖デバイス上のフィルムとして提供されてもよい。いくつかの実施形態において、これらの乾燥した前駆体は、本開示の創傷閉鎖デバイスの構成要素または構成要素の一部として使用されるメッシュ内に適用または包埋されてもよい。実施形態において、デバイスに適用される第1のヒドロゲル前駆体を有する本開示の創傷閉鎖デバイスの第1の部分は、デバイスに適用される第2のヒドロゲル前駆体を有する創傷閉鎖デバイスの第2の部分とは空間的に分離される。互いから空間的に分離された第1および第2のヒドロゲル前駆体を有することにより、創傷閉鎖デバイスが移植部位に配置され、患者の生理学的液体に曝露されるまで、ヒドロゲル前駆体が互いに反応するのを阻止する。実施形態において、この前駆体の空間的分離は、栓部材、細長い本体、またはその両方の上で起こってもよい。他の実施形態において、この空間的分離は、細長い本体、栓部材、またはその両方に外層として適用されてもよい、例えば、メッシュ、ヒドロゲル、フィルム、発泡体、それらの組み合わせ等の任意の多孔性基質について起こり得る。
【0094】
代替として、第1のヒドロゲル前駆体(複数可)および/または反応性成分は、これに限定されないが、噴霧、浸漬、ブラッシング、浸水、蒸着、共有押し出し、毛細管現象によるウィッキング、フィルムキャスティング、成形、溶媒の蒸発、およびデバイスとポリマーとの間の任意の他の物理的接触、それらの組み合わせ等を含む、当業者に既知である任意の好適な方法を用いて、本開示の創傷閉鎖デバイスにコーティングとして適用されてもよい。
【0095】
実施形態において、第1のヒドロゲル前駆体(複数可)および/または反応性成分は、創傷閉鎖デバイスを形成する前に本開示の創傷閉鎖デバイスに組み込まれてもよい。実施形態において、第1のヒドロゲル前駆体(複数可)および/または反応性成分は、溶液中で創傷閉鎖デバイスに適用されてもよく、続いて、溶媒の蒸発または凍結乾燥が行われる。実施形態において、第1のヒドロゲル前駆体(複数可)および/または反応性成分は、創傷閉鎖デバイスの少なくとも1つの面上のコーティングとして、または創傷閉鎖デバイスの少なくとも1つの表面上に存在するフィルムとして、創傷閉鎖デバイスに適用されてもよい。
【0096】
コーティングが乾燥成分を含む場合、実施形態において、任意選択的に粒子形態である乾燥した前駆体が創傷内に導入されると、体液は、前駆体および/または反応性成分の相互の反応ならびに/あるいは組織との反応を開始するために必要な水分を提供することができる。
【0097】
代替として、コーティングは、例えば、移植の前に手術室で医療用デバイスを浸漬する等、移植の前にデバイスに適用されてもよい。実施形態において、デバイスの周囲、かつ/またはデバイスもしくはその一部を介して複雑なネットワークが形成され、任意選択的にデバイスと結合するように、デバイスを大量の反応溶液に浸漬することによって、反応溶液がデバイスと接触させられてもよい。次いで、遊離反応基が組織と結合することができ、それによりデバイスを組織に取り付ける。例えば、実施形態において、反応溶液は、デバイスを含有する特殊な注入可能なパッケージ材料と連携して使用される導管において供給されてもよい。反応溶液は、外科的使用の前の任意の時点で、デバイスのパッケージ内に注入されてもよい。水溶性または分散性であり得る反応溶液は、使用に備えてデバイスを飽和および膨張させることができる。後にさらに詳述する生物活性剤もまた、使用時に、反応溶液、または直接デバイスのパッケージ内のいずれかに添加されてもよい。そのような梱包の実施例は、米国特許公開第2007/0170080号に開示されるものを含み、その全開示は、参考として本明細書に援用される。
【0098】
同様に、第2のヒドロゲル前駆体も、これに限定されないが、噴霧、ブラッシング、浸漬、注入、積層等の当業者の知識の範囲内である任意の好適な方法を使用して、コーティングとして創傷閉鎖デバイスに適用されてもよい。実施形態において、第2のヒドロゲル前駆体は、任意の濃度、寸法、および構成で、創傷閉鎖デバイス上のコーティングとして適用されてもよい。コーティングは、非多孔質層または多孔質層を形成することができる。実施形態において、第2のヒドロゲル前駆体は、その少なくとも1つの表面上のコーティングとして、または他の実施形態において、その少なくとも1つの表面上に積層され得るフィルムとして、創傷閉鎖デバイスに適用されてもよい。
【0099】
第1または第2のヒドロゲル前駆体のうちのいずれかが非多孔質層(すなわち、フィルム)を形成する実施形態において、非多孔質層の厚さは、創傷閉鎖デバイスが創傷を密閉する前に、第1のヒドロゲル前駆体の一部のみが第2のヒドロゲル前駆体と反応することを可能にするのに十分であってもよい。そのような実施形態において、残りの未反応のヒドロゲル前駆体は、創傷と周辺組織との間のバリア層としての役割を果たし、癒着の形成を防止することができる。ヒドロゲル創傷閉鎖デバイスの形成において、前駆体はまた、生理学的液体に抗癒着性等の特定の特性を付与することができる。生理学的液体ヒドロゲルもまた、創傷と周辺組織との間のバリア層としての役割を果たし、癒着の形成を防止することができる。実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、ヒアルロン酸、PEG等の、癒着を減少または防止することで知られる非反応性材料をさらに含有することができる。そのような実施形態において、非反応性材料は、第1のヒドロゲル前駆体と第2のヒドロゲル前駆体とが相互作用した後で、癒着の形成を防止することができる。
【0100】
創傷に導入されると、体液は、前駆体および/または反応性成分の相互の反応ならびに/あるいは組織との反応を開始するために必要な水分を提供することができる。実施形態において、この反応はまた、液体の取り込みをもたらし、結果として、細長い本体、栓部材、またはその両方の体積膨張をもたらす。
【0101】
一旦、創傷閉鎖デバイスの成分が反応すると、治療される状態によって、デバイスの形状が変化してもよい。患者の形態および解剖学的構造の変動性のために、デバイスは任意の好適なサイズであってもよい。実施形態において、創傷閉鎖デバイスの細長い本体は約10mmから約150mmの長さを有してもよく、栓部材は約5mmから約36mmの幅を有してもよく、実施形態において、細長い本体は約30mmから約80mmの長さを有してもよく、栓部材は約10mmから約15mmの幅を有してもよく、他の実施形態において、細長い本体は少なくとも10mmからの長さを有してもよく、栓部材は少なくとも約5mmからの幅を有してもよい。特定の一実施形態において、細長い本体は、約39mmの幅および約50mmの長さを有してもよい。
【0102】
本開示による創傷閉鎖デバイスはまた、クリック反応性を有することで知られる、クリックケミストリーを介した反応が可能な、少なくとも1つの官能基を有するポリマーから調製されてもよい。クリックケミストリーとは、高度に選択的な、高収率の反応をもたらすことができる、高い化学的ポテンシャルエネルギーを有する一連の反応基を意味する。本開示のデバイスとともに使用されてもよいクリックケミストリーの実施例は、米国特許出願第12/368,415号に開示されるものを含み、その全開示は、参考として本明細書に援用される。
【0103】
反応基は、生理学的液体を含むほとんどの溶媒において、反応して非常に信頼性の高い分子接続を形成し、他の試薬および反応に緩衝しないことが多い。クリックケミストリー反応の実施例は、Huisgen環化付加、Diels−Alder反応、チオール−アルケン反応、およびマレイミド−チオール反応を含む。一旦、所望の形状に製造されると、創傷閉鎖デバイスは、その表面でクリック反応性を有することで知られる複数の官能基を有する。
【0104】
Huisgen環化付加は、ダイポーラロフィル(dipolarophile)と1,3−双極子(dipolar)化合物が反応して5員(ヘテロ)環となることである。ダイポーラロフィルの例は、アルケンおよびアルキンならびに関連するヘテロ原子官能基(カルボニルおよびニトリル等)を保有する分子である。1,3−双極子化合物は1つ以上のヘテロ原子を含有し、電荷を帯びた双極子を表す少なくとも1つのメソメリー構造を有すると説明することができる。それらは、ニトリルオキシド、アジド、およびジアゾアルカンを含む。金属触媒によるクリックケミストリーは、アルキル−アリール−スルホニルアジド、C−N三重結合、およびC−C三重結合の間のHuisgen 1,3−双極子環化付加反応の非常に効率的な変形例である。これらの反応の結果は、1,2オキサゾール、1,2,3トリアゾール、またはテトラゾールである。例えば、1,2,3トリアゾールは、銅触媒によるアルキンとアルキル/アリールアジドとの間のHuisgen反応によって形成される。周囲温度で進行する金属触媒によるHuisgen反応は、溶媒に感受性ではなく、官能基に対する耐性が高い。非金属性のHuisgen反応(歪みによって促進される環化付加とも称される)は、ともにアジドとの[3+2]双極子環化付加を促進する、環の歪みおよび電子求引性置換基(例えば、フッ素)を保有する置換シクロオクチンの使用を伴う。これらの反応は、金属触媒による反応と比較して毒性が低いため、本明細書における使用に適切である。例としては、ジフッ素化シクロオクチン(DIFO)および6,7−ジメトキシアザシクロオクト−4−イン(DIMAC)等のアザシクロオクチンが挙げられる。アルキンとアジドの反応は非常に特異的であり、生物組織の化学的環境に対して本質的に不活性である。
【0105】
Diels−Alder反応は、ジエン(2つの交互二重結合を有する分子)と求ジエン体(アルケン)とを組み合わせて、環および二環式化合物を作製する。
【0106】
チオール−アルケン(チオール−エン)反応は、ヒドロチオール化、すなわち、C=C結合を横切るRS−Hの付加である。チオール−エン反応は、フリーラジカル連鎖機構によって進行する。イニシエーションは、光反応開始剤またはチオール自体のUV励起によるラジカル形成によって起こる。チオール−エン系は、基底状態の電荷移動複合体を形成し、たとえ開始剤が存在しなくても、妥当な重合時間内に光重合する。しかしながら、UV光を加えることは、反応が進行する速度を増加させる。チオールまたはアルケンに結合する構成物のサイズおよび性質によって、必要に応じて光の波長を調節することが可能である。
【0107】
よって、ポリマーに適用されてもよい好適な反応部材は、例えば、アミン、硫酸、チオール、ヒドロキシル、アジド、アルキン、アルケン、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン基、ビニルスルホン基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシド基、アジリジン基、エピスルフィド基、ならびに−CO2N(COCH2)2、−CO2N(COCH2)2、−CO2H、−CHO、−CHOCH2、−N=C=O、−SO2CH=CH2、−N(COCH)2、および−S−S−(C5H4)N等の基を含む。
【0108】
ポリマーは、任意の種々の好適な化学的プロセスを用いたクリック反応基を提供されてもよい。例えば、コアが作製されるモノマーは、コアの長さ方向に沿って反応基が現れるように官能化することができる。そのような実施形態において、モノマーは、最初にハロゲン等の基で官能化して、重合の後で、所望の第1のクリック反応基が結合し得る反応部位を提供することができる。よって、例えば、環状ラクトン(例えば、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン等)は、ハロゲン化されてから、その後で、開環重合のための既知の技術を用いて重合されてもよい。一旦重合されると、得られたポリエステル鎖に沿ってハロゲン化された部位を、第1の反応基で官能化することができる。例えば、ハロゲン化されたポリエステルは、アジ化ナトリウムと反応させてポリマー鎖に沿ってアジド基を提供することができるか、または、プロパルギルアルコールと反応させてポリマー鎖に沿ってアルキン基を提供することができる。別の実施例において、プロパルギル基を、環状カーボネートのモノマーに導入して、5−メチル−5−プロパルギルオキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン(MPC)を形成することができ、これはラクチドと重合可能であり、p(LA−コ−MPC)を形成する。代替として、ポリマーまたはコポリマーの骨格がハロゲン化されてもよい。一旦ハロゲン化されると、ヒドロキシ酸と反応させ、次いでアジ化ナトリウムと反応させることにより、クリック反応性官能基で骨格が官能化されてもよい。ハロゲンはまた、プロパルギルアルコール等のアルコール性のアルキンと反応させることにより、直接アルキンに変換されてもよい。
【0109】
本開示を読む当業者は、本開示の創傷閉鎖デバイスにおける前駆体としての使用に好適となるように、他の材料を活性化するための化学反応を容易に想定するであろう。
【0110】
実施形態において、創傷閉鎖デバイスの一部またはその上のコーティングを形成するために使用される反応基を保有するポリマーは、溶液中に存在してもよい。そのような溶液の形成における使用のための好適な溶媒は、これに限定されないが、生理食塩水、水、アルコール、アセトン、およびそれらの組み合わせを含む。
【0111】
そのような溶液を形成するための方法は当業者の知識の範囲内であり、これに限定されないが、混合、融合、超音波処理、加熱、それらの組み合わせ等を含む。
【0112】
代替として、本開示の組成物は、細孔内へのウィッキングまたは毛管作用等の機械的相互作用により、移植物に固定化されてもよい。例えば、グラフトまたはメッシュ等の織られたまたは編まれた移植物では、本開示の組成物を含む溶液は、細孔内または繊維間に物理的に捕捉されてもよい。移植物は、特定の温度および湿度レベルでさらに乾燥させてもよく、残留する溶媒を除去し、反応性コーティングを残して反応性移植物を作製する。
【0113】
反応基を保有するポリマーが創傷閉鎖デバイスの構成要素に適用され、デバイスを組織に接着するために使用される実施形態において、反応基を保有するポリマーは、当業者の知識の範囲内である任意の方法を使用してデバイスに適用することができる。例えば、移植物は、生体組織に化学的に結合することができる少なくとも1つの遊離反応基を有する組成物と組み合わせてもよい。生体組織との化学結合は、デバイスを組織に固定させ、デバイスを装着するためのステープル、鋲、縫合糸等の他の機械的または物理的な装着デバイスを使用する必要性を減少させる。反応性組成物が組織に結合するための時間は、約3秒から約20分と異なってもよく、実施形態において、約10秒から約5分である。時間は、反応性組成物の濃度、添加剤の使用等によって異なり得る。
【0114】
他の実施形態において、組成物は、それ自体と架橋することができる。例えば、創傷閉鎖デバイスの一部またはその上の任意のコーティングを形成するために使用されるポリマー上の反応基は、デバイスの周囲で自己反応することができ、デバイスの周囲およびデバイスの至るところに複雑なネットワークを形成し、それにより、組織と反応させるための遊離反応基を維持しながら、デバイスに化学的に結合することなく、デバイスまたはその一部を包含する。
【0115】
いくつかの実施形態において、組成物中の第1の反応基は、デバイスに化学的に結合するために使用することができ、組成物中の第2の反応基は、デバイスを組織に化学的に結合させるために使用することができる。よって、組成物は、2つより多くの反応基を有する。1つより多くの反応基が組織と反応するために遊離していてもよく、実施形態において、約1個の反応基から約8個の反応基が組織と反応するために遊離していてもよい。例えば、反応性組成物は、1級アミノ基、2級アミノ基、ヒドロキシル基、それらの組み合わせ等の、組織中の官能基と反応することができる。実施形態において、反応基は組織中のコラーゲンと架橋することができ、それにより、移植物を所定の位置に固定する。別の実施例において、反応性成分はタンパク質の移植物に反応性であってもよい。反応基とデバイスとの間の化学反応は、組成物をデバイスに結合させることができる一方で、インサイチュでの組織表面との将来的な化学反応のために、いくつかの反応基を未反応のままの状態にする。
【0116】
反応性組成物は、患者の体内に留置される前にデバイスに固定化されても、または代替として、インサイチュでデバイスと接触させてもよく、それによりデバイスを組織に固定する。デバイスは、メッシュ等の市販の移植物として供給されても、または、使用の前に組み立てられてもよい。上述したように、実施形態において、基質自体が反応性前駆体で作製されてもよい。他の実施形態において、反応性前駆体は、移植物上のコーティングを形成することができる。表面領域全体または表面のほんの一部が、その上に組織と反応するための反応性コーティングを有することができる。上述したように、反応性コーティングは溶液として適用されてもよい。デバイスは溶液とともに梱包されても、または組織への適用の前に溶液がデバイスに適用されてもよい。実施形態において、溶液はデバイス上に噴霧、コーティング、浸漬、溶媒蒸発、または塗布されてもよい。
【0117】
代替として、細長い本体または栓部材の組織への接着はまた、例えば、マイクロテクスチャ(やもりの足状)または逆刺を含む機械的手段によって提供されてもよい。ある実施形態において、編地またはメッシュは、メッシュに対して垂直に突出し、貫通してデバイスを締結させる、逆立った毛羽を含んでもよい。そのような布地および織物の例は、米国特許第7,331,199号に開示されるものを含み、その全開示は、参考によって本明細書に援用される。
【0118】
次に図面を参照すると、本開示の創傷閉鎖デバイスの実施形態が提供される。その後の説明において、本明細書で使用される場合の「近位の」という用語は、ユーザにより近いデバイスの部分を意味し、「遠位の」という用語は、ユーザからより遠く離れたデバイスの部分を意味する。本明細書で定義される「組織」という用語は、種々の皮膚層、筋肉、腱、靭帯、神経、脂肪、筋膜、骨、および異なる器官を意味する。
【0119】
次に図1を参照すると、本開示による創傷閉鎖デバイス10の実施形態が示される。創傷閉鎖デバイス10は、栓部材14に連結された細長い本体12を含む。細長い本体12は、栓部材14の組織対向面16に対して実質的に垂直である。いくつかの実施形態において、細長い本体12は栓部材14と一体であってもよく、他の実施形態において、細長い本体12は、栓部材14に装着されてもよく、そうでなければ接続されてもよい。
【0120】
細長い本体またはステム12は、組織「t」の穿孔を充填もしくは密閉するように、かつ/または、穿孔組織を一緒に結合するように適合される。したがって、細長い本体12は、創傷に嵌入するいずれの形状であってもよい。現在の実施形態において例示されるように、細長い本体12は円筒形状であり、断面形状は楕円形であるが、形状および断面形状は、長方形、平坦、または当業者の知識の範囲内であって、本明細書で後に開示される実施形態に示されるような、その他の形状であってもよい。例えば、図2に例示されるように、組織「t」の厚さによって細長い本体22の長さを伸縮できるように、創傷閉鎖デバイス20はアコーディオン形状である。よって、図1を再度参照すると、細長い本体12は、実質的に密閉されるべき組織のおよその長さもしくは深さである所定の長さであっても、または、細長い本体12は、患者の壁の厚さに可変性を許容するように長めに作製されてもよい。例えば、細長い本体12の余分な長さは、図1において破線「a」で示されるように、組織「t」の表面「s」で切り取られてもよい。
【0121】
栓部材または基部14は、組織「t」の内壁「w」で組織の穿孔を密閉することにより、創傷に閉鎖を提供するように適合される。栓部材14は、細長い本体12の遠位端13に連結された組織対向面16を有する。栓部材14は、当業者によって想定されるように、特にきのこ状等の、組織「t」の内壁「w」に当接するための実質的に平坦である組織対向面を有する任意の形状であってもよい。組織対向面16は、穿孔組織「t」を取り囲む内壁「w」に接着するためにそこに装着される細長い本体12の直径「ds」よりも大きい直径「db」を画定する。
【0122】
実施形態において、創傷閉鎖デバイス10は、ヒドロゲルであってもよいか、または少なくともその一部にヒドロゲルを含んでもよい。例えば、ヒドロゲルは、組織に所望の接着および組織増殖を提供するように、スクシンイミジルエステル反応性PEG(求電子性)と架橋した血清タンパク質(求核性)から構成されてもよい。
【0123】
アミン含有組織と反応すると、反応性デバイスは、有用な時間範囲内で組織に固着するはずである。代替の実施形態において、反応基は、組織との反応を遅らせる補助として、化学的に「遮蔽」または「阻害」されていてもよいか、または、反応基は、単純に緩やかな反応動態を有してもよい。
【0124】
本開示の組成物の反応性成分が移植物を組織に結合させるために必要な時間は、約3秒から約20分まで変わってもよく、実施形態において、約10秒から約5分である。
【0125】
図3Aおよび3Bに例示されるように、創傷閉鎖デバイスの少なくとも一部は、ポリマー発泡体を含んでもよい。組織に留置する前にポリマー(ヒドロゲル等)を乾燥させて、発泡体を作製することは、組織内へのデバイスの挿入を容易にすることができ、かつ/または、組織内のデバイスのサイズおよび適合度の制御を提供することができる。発泡体は、凍結乾燥、微粒子の浸出、圧縮成形および当業者の知識の範囲内である他の技術の使用により作製されてもよい。種々の技術が、異なるサイズおよび分布の細孔をもたらすことができる。さまざまな細孔のサイズおよび分布は、水および他の水性液体が、より迅速に発泡体内に侵入できるようにし得る。発泡体は、連続気泡発泡体または不連続気泡発泡体であってもよい。また、組織内に移植されると遭遇するような生理的環境において、発泡体が再水和する速度に影響を及ぼす可能性もある。例えば、発泡体の形成中に発泡剤を組み込むことは、水が発泡体構造内に拡散するために利用可能な表面積が増大されるため、より迅速な再水和につながる。発泡体の水和は、移動を防止して組織を一緒に保持するために、デバイスが所定の位置に固定されることを可能にする。
【0126】
図3Aは、予め水和させた発泡体である細長い本体32を有する創傷閉鎖デバイス30を例示する図である。組織「t」の穿孔「p」内に創傷閉鎖デバイス30を留置すると、細長い本体32を生理食塩水等の流体で灌注させることにより、および/または、生理的環境における体液との接触により、細長い本体32は迅速に再水和することができる。図3Bに例示するように、細長い本体32は膨張して、組織「t」の穿孔「p」を充填する。いくつかの実施形態において、発泡体は、湿潤な組織環境に留置されてから数秒以内に迅速に再水和することができるか、または、数時間にわたって緩やかな速度で再水和することができる。水和プロセスの間、発泡体の容量は、例えば1次元、2次元、または3次元に拡大して、その元のサイズの数倍にまでなり得るため、創傷閉鎖デバイスを組織内に埋め込み、組織を通って漏出する流体を封止する。
【0127】
他の実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、実質的に脱水されたヒドロゲルを含んでもよく、この脱水されたヒドロゲルは、実施形態において発泡体を含み得る。本開示のデバイスのヒドロゲル構成要素は、その元の体積の約5%から約100%、実施形態において、その元の体積の約20%から約80%の量で膨張および/または拡張することができる。実施形態において、ヒドロゲルの膨張は、少なくとも1つの組織面を実質的に密閉することができる。
【0128】
実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、体積膨張を可能にし、デバイスの水和を促進するために、その一部を通る開口部またはチャネルを有することができる。図4に例示されるように、開口部47は、細長い本体42内に長手方向に配置され、近位端41から遠位端43まで延在する。開口部47は、細長い本体42の部分および栓部材44の部分に水分を到達させる。
【0129】
次に図5を参照すると、創傷閉鎖デバイス50は、創傷の治癒を促進するために、ヒドロゲルをメッシュ等の織物と組み合わせることができる。実施形態において、メッシュ59は、組織の接着および内殖を補助するように、栓部材54の組織対向面56上に配置されてもよい。例えば、メッシュ59は、上述したような血清を用いたヒドロゲル等のヒドロゲルで封入またはコーティングされて、生分解性ポリマーである栓部材54上に留置されてもよいか、または、メッシュ59は、図5に例示されるように、ヒドロゲル栓部材54の少なくとも1つの表面上に配置されてもよい。さらに、メッシュ59は、組織の接着においてヒドロゲルを補助するように、逆立った毛羽または逆刺等の自己粘着性であってもよい。いくつかの実施形態において、自己粘着性メッシュは、ヒドロゲルまたは後に記載する他の接着性構成要素なしで使用されてもよい。
【0130】
細長い本体52はまた、ヒドロゲルから形成されてもよいか、または続いてヒドロゲルでコーティングされるポリマーから構成されてもよい。メッシュもまた、さらなる組織の接着および内殖を提供するために、細長い本体52と組み合わされてもよいことが企図される。細長い本体52は、穿孔組織を一緒に保持するための種々の形態で提供されてもよい。例えば、図6に例示されるように、創傷閉鎖デバイスの細長い本体は、栓部材64から延在して、組織を一緒に保持するために穿孔組織を貫通させてもよい縫合糸62を含むことができる。実施形態において、縫合糸は、組織の接着を補助するために、少なくとも1つの反応基を保有するポリマーでコーティングされてもよい。いくつかの実施形態において、縫合糸は、通常、縫合糸本体から外側に延在して組織の保持を補助する逆刺付きであってもよいか、または逆刺様突起を有してもよい。
【0131】
図7および8は、それぞれ、ヒドロゲルから形成される細長い本体72、82およびメッシュから製造される栓部材74、84を含む、創傷閉鎖デバイス70および80を例示する図である。栓部材74、84は、本明細書に記載されるように、織物および布地の材料のうちのいずれかであってもよく、また本明細書に記載されるように、官能性前駆体(複数可)のうちのいずれかを含むコーティング組成物を含んでもよい。図8に例示されるように、細長い本体82は、表面積の増大および組織統合のために溝付きの外部を含んでもよい。
【0132】
次に図9を参照すると、創傷閉鎖デバイス90の栓部材94は、積層等の1つより多くの層を含むように構成されてもよい。栓部材94の組織対向面96は、上述したように、反応基を有するポリマーまたはメッシュ等の接着性を有する材料から製造されてもよく、栓部材94の遠位面95は、デバイスが内臓に癒着するのを防止するために、ヒアルロン酸またはPEGのコーティング等の抗癒着性を有する材料を含んでもよい。実施形態において、栓部材94は、栓部材94と組織の接着を達成させるために、組織対向面96上に多孔質層を有し、栓部材94が穿孔組織を取り囲む他の組織または器官に癒着するのを防止するために、遠位面95上に非多孔質層を有する、PARIETEXTM複合メッシュ等の複合材料から製造されてもよい。他の実施形態において、生分解性コラーゲンフィルム(図示せず)等の第2の層を栓部材94の遠位面に結合させるために、組織対向面は、生分解性リンカーおよび反応性末端基で修飾されたメッシュを含んでもよい。コラーゲンフィルムを含む遠位面は、癒着を防止するために非多孔質であってもよい。代替として、コラーゲンフィルムを含む遠位面は、内臓に接着してもよく、コラーゲンフィルムをメッシュに結合しているリンカーは短期間で分解することができるため、2つの層を分離して接着を防止する。実施形態において、メッシュおよびコラーゲンフィルムの両方が、長期間にわたって分解するように設計されてもよい。
【0133】
複合メッシュを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内である。接着剤、複数層上の反応基の架橋、加熱成形、共有押し出し、溶媒キャスティング、溶融加圧、それらの組み合わせ等を使用して、複数の層が接着されてもよい。
【0134】
図10は、組織対向面106上のメッシュおよび抗癒着性の遠位面105を含む複合栓部材104を含む、創傷閉鎖デバイス100の実施形態を例示する図である。細長い本体102は、単独で使用されてもよいか、または、本明細書に記載されるように、反応基を有するコーティングと組み合わせて使用されてもよいメッシュを含む。いくつかの実施形態において、創傷閉鎖デバイス110および/または120は、図11および12に例示されるように、メッシュ単独で、または、反応性ポリマーと組み合わせたメッシュのいずれかからのみ形成されてもよい。図11および12に表されるように、創傷閉鎖デバイス110および120は、すべてメッシュで形成された組織対向面116および126ならびに細長い本体112および122を有する、栓部材114および124を、それぞれ含むことができる。
【0135】
図13Aから13Dは、枢動可能に接続された細長い本体132および栓部材134を含む創傷閉鎖デバイス130を例示する図であるが、本明細書に記載される他の実施形態もまた、枢動可能に接続されてもよいことを理解されたい。図13Aおよび13Bは、第1の折り畳み位置または折り曲げ位置にある創傷閉鎖デバイス130を例示する図であり、図13Cから13Dは、第2の展開位置にある創傷閉鎖デバイス130を例示する図である。創傷閉鎖デバイス130の細長い本体132および栓部材134は、蝶番接続部131を介して連結される。細長い本体132の遠位端133は、栓部材134が、折り曲げ位置から展開位置まで細長い本体132に対して枢動できるように、栓部材134の組織対向面136に蝶番で接続される。特定の実施形態において、細長い本体132および栓部材134は、当業者から予想されるように、種々の生分解性締結具のいずれかと蝶番で連結されてもよい。締結具は、上記生分解性ポリマーのいずれかから形成されてもよく、折り曲げ位置から展開位置まで枢動する応力に耐える高い強度を有し、移植されたときに創傷閉鎖デバイスの完全性を維持するように、適合および構成されてもよい。締結具は、時間の経過とともに新しい組織が締結具に取って替わるように、徐々に分解することができる。代替として、蝶番131は、細長い本体132と栓部材134の交差点に形成される、薄い可塑性ポリマーウェブ等のリビングヒンジであってもよい。他の実施形態において、蝶番は、栓部材と細長い本体を一緒に溶接することによって形成されてもよい。
【0136】
細長い本体132および栓部材134は、組織内における位置付けおよび留置のために、図13Aに表されるような折り曲げ位置(挿入のため)から図13Cに表されるような展開された状態に変形することができる。実施形態において、栓部材134が細長い本体132に対して長手方向に整列されるように、栓部材134は、通常、折り曲げ位置に付勢されていてもよい。結果として、創傷閉鎖デバイス130が組織内に留置され、図13Cに表される矢印「p」の方向に引かれると、栓部材134は、細長い本体132から離れて枢動し、細長い本体132に対して実質的に垂直となり、栓部材134は、創傷閉鎖デバイス130が組織から引き抜かれないように、効果的にフランジとしての役割を果たす。代替として、創傷閉鎖デバイスは、後に記載する挿入デバイスの使用を介して留置されてもよい。
【0137】
図13Aに例示されるように、折り畳み位置または折り曲げ位置において、組織内への挿入のために細い形状が優先的に使用される。さらに、図13Bに示すように、栓部材134は、挿入のために非外傷性の先端を提供するために、丸みを帯びた縁を含む。図13Cおよび13Dに例示するように、展開された状態では、栓部材134の幅「w」は切開の大きさに基づいてもよく、細長い本体132の長さ「l」は、組織内に挿入した後で切断されるように、必要とされる長さよりも長い長さ等の任意の長さで作製されてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、細長い本体132は、創傷の周囲の組織がそこに化学的に結合することを促進し、細胞の成長および組織の増殖を促進する材料から製造されてもよい。さらに、栓部材134の組織対向面136は、組織の統合を促進するための他のポリマー材料を含んでもよい。栓部材134の遠位面135は、組織の癒着を防止するための抗癒着性コーティングを含んでもよい。
【0139】
創傷内への挿入のために枢動可能に接続された創傷閉鎖デバイスの別の実施形態を、図14Aから14Cに示す。創傷閉鎖デバイス140は、細長い本体142と、実質的に同一形状である一対のセクション144aおよび144bから形成される栓部材144とを含む。細長い本体142と、栓部材144のセクション144aおよび144bとは、1つ以上の蝶番141を介して連結される。栓部材144のセクション144aおよび144bは、共通の枢軸上で移動するように蝶番141に枢動可能に取り付けられる。
【0140】
成形されたセクション144aおよび144bは、通常、3角形の形状で例示されるが、長方形等の他の形状が想定される。成形されたセクション144a、144bの各々は、それぞれ当接面143aおよび143bを含む(図14B)。挿入のために、当接面143a、143bは、細長い本体142と通常平行に配置される。一旦挿入および留置されると、セクション144aおよび144bを細長い本体142に対して通常垂直に配置するために、当接面が近付けられる。当接面143a、143bは、成形されたセクションが細長い本体142に対していかに傾斜しているかについての制御を提供する。例えば、当接面が細長い本体に対して90°を超えてまたは90°未満で(図14Bでは通常垂直であるのに対して)傾斜している場合、成形されたセクション144aおよび144bも同様に、細長い本体に対して90°を超えてまたは90°未満で配置されるであろう。
【0141】
組織内に留置する前に、栓部材のセクション144aおよび144bは、図14Bにおいて表される矢印「b」の方向に折り曲げられてもよい。創傷閉鎖デバイス140が組織内に留置され、図14Cにおいて表される矢印「p」の方向に引かれると、栓部材144のセクション144aおよび144bは、細長い本体142から離れて枢動し(破線で表示)、細長い本体142に対して実質的に垂直となり、栓部材144は、創傷閉鎖デバイス140が組織から引き抜かれないように、効果的にフランジとしての役割を果たす。例示されるように、セクション144aおよび144bは、不注意による組織からの創傷閉鎖デバイス140の除去を防止するために、栓部材144が細長い部材142から約90°を超えて展開しないよう、3角形の形状である。栓部材144のセクション144aおよび144bは、実質的に同様の形状である必要はないことが想定される。
【0142】
実施形態において、細長い本体142は、吸収性のメッシュ層を有する予め形成されたヒドロゲルであってもよい。実施形態において、予め形成されたヒドロゲルは、コラーゲン、ゼラチン、または多糖様アミノ化デキストランもしくはヒアルロン酸等の他のアミノ化生分解性ポリマー等の、8アームを有する15kDaのPEGの第1の前駆体および第2の前駆体から形成されてもよい。実施形態において、栓部材144は、その遠位端145上の抗癒着性コーティング、および組織対向面146に装着された分解性または非分解性のメッシュを有しても有さなくてもよい、予め形成されたヒドロゲルであってもよい
予め形成されたヒドロゲルは、デバイスがインサイチュで形成するのを待つ時間が存在しないため、創傷閉鎖デバイスの迅速な挿入および送達を可能にする。さらに、予め形成された構成要素は、標的の創傷以外の組織と構成要素が反応する可能性を回避し、体腔または皮膚表面等の他の場所に材料が流出するのを回避する。予め形成されたヒドロゲルを作製するための方法は、所望の形状の型の中に、第1の前駆体および第2の前駆体を同時に噴霧することを含む。
【0143】
実施形態において、細長い本体および/または栓部材は、メッシュに包埋されるか、またはその上にメッシュが装着される、未反応のヒドロゲルを含んでもよく、それは、組織内で可溶化および反応させることができるため、メッシュ構造内でゲル化して、そこに組織を結合させる。これにより、メッシュは、組織の内壁と結合することが可能となり、他の成分が創傷内に侵入するのを防止する。
【0144】
代替として、メッシュを含む創傷閉鎖デバイスが最初に創傷内に挿入されてもよく、続いてヒドロゲルが、空隙を充填してメッシュを包み込むために静的ミキサーを用いて創傷内に注入されてもよい。実施形態において、栓部材は、予め形成されたヒドロゲルを含んでもよく、ヒドロゲルが創傷内に注入されて組織およびメッシュを所定の位置に維持できるように、細長い本体は未反応であってもよい。
【0145】
次に、図15Aから15Bを参照すると、細長い本体と、一対の成形されたセクションを含む栓部材とを含む創傷閉鎖デバイスの別の実施形態が示される。図15Aは、細長い本体152と、実質的に同一形状である一対のセクション154aおよび154bから形成される栓部材154とを有する、展開位置にある創傷閉鎖デバイス150を例示する図である。栓部材154のセクション154aおよび154bは、図15Bに例示されるように、独立した蝶番151aおよび151bに枢動可能に取り付けられる。セクション154aおよび154bは、細長い本体152から離れて、図15Aの展開位置(破線)まで枢動するように示されている。細長い本体152は、栓部材154のセクション154aおよび154bが、約90°である角度αを超えて拡張し過ぎないように、遠位端153に停止部材152aを含む。
【0146】
本開示の創傷閉鎖デバイスは、カニューレまたは患者の腔内の組織壁を通って延在するスリーブを有する、他のポータルアクセスデバイスの経路内に挿入されてもよい。創傷閉鎖デバイスは、栓部材がスリーブを出て腔内に達するまで、スリーブの経路を通って移動させられる。栓部材は、組織対向面が創傷に当接し、スリーブが除去され、穿孔組織内に細長い本体が配置されるように、留置されてもよい。したがって、創傷閉鎖デバイスは、アクセスデバイス内に留置されるのに十分に柔軟でなければならないが、組織を支持して創傷を密閉するのに十分に弾力性でなければならない。代替として、創傷閉鎖デバイスは、デバイスの挿入および留置の容易さのための機械的手段を含んでもよい。
【0147】
実施形態において、本開示の創傷閉鎖デバイスを組織に固定する追加の方法が使用されてもよい。例えば、包帯、フィルム、ガーゼ、テープ、フェルト、それらの組み合わせ等がそれと組み合わされてもよいか、または本開示の創傷閉鎖デバイスおよびデバイスを取り囲む組織の上に適用されてもよい。同様に、追加の接着剤がそこに適用されてもよく、創傷閉鎖デバイスを組織、それらの組み合わせ等に取り付けるために縫合糸が使用されてもよい。
【0148】
特定の生物学的特性または治療的特性を提供するよう、生物活性剤が創傷閉鎖デバイスに追加されてもよい。組織の修復を促進する、敗血症の危険性を制限する、および創傷閉鎖デバイスの機械的特性を調節することが可能な任意の生成物が、デバイスの準備中に加えられてもよいか、または、デバイス上にコーティングされてもよいか、または、そこに装着されたメッシュの細孔内に入れられてもよい。
【0149】
さらに、創傷閉鎖デバイスはまた、1つ以上の生物活性剤を送達するために使用されてもよい。生物活性剤は、遊離懸濁、リポソーム送達、ミクロスフェア等によって、または、ポリマーコーティング、ドライコーティング、凍結乾燥、メッシュ表面への塗布、創傷閉鎖デバイスの分解性構成要素を官能化するためのイオン性結合、共有結合、もしくは親和結合等で、創傷閉鎖デバイスもしくはその一部の表面をコーティングすることによって、デバイスの形成中に創傷閉鎖デバイスに組み込まれてもよい。よって、いくつかの実施形態において、創傷閉鎖デバイスの分解中に生物活性剤の放出を提供するために、少なくとも1つの生物活性剤が、形成中に創傷閉鎖デバイスの構成要素(すなわち、細長い本体および/または栓部材)と組み合わせられてもよい。創傷閉鎖デバイスがインサイチュで分解または加水分解するにつれて、生物活性剤が放出される。他の実施形態において、生物活性剤の迅速な放出のために、生物活性剤は、創傷閉鎖デバイスの細長い本体または栓部材の表面もしくは表面の一部にコーティングされてもよい。
【0150】
本明細書で使用される生物活性剤は最も広義で使用され、臨床的使用を有する任意の物質または物質の混合物を含む。そのため、生物活性剤は、それ自体が例えば色素等、薬理活性を有してもまたは有さなくてもよい。代替として、生物活性剤は、治療効果または予防効果を提供する任意の薬剤;組織成長、細胞成長、および/もしくは細胞分化に影響を与えるかまたは関与する化合物;抗癒着性化合物;免疫応答等の生物学的作用を引き起こすことが可能であり得る化合物であってよく、あるいは、1つ以上の生物学的プロセスにおいて任意の他の役割を果たすことができる。種々の生物活性剤がメッシュ内に組み込まれてもよい。
【0151】
本開示による、使用されてもよい生物活性剤のクラスの例は、例えば、抗癒着剤、抗菌剤、鎮痛剤、解熱剤、麻酔薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、心血管作動薬、診断薬、交感神経模倣薬、コリン作用薬、抗ムスカリン様作用薬、鎮痙剤、ホルモン、成長因子、増殖因子、筋肉弛緩剤、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗新生物薬、免疫原性剤、免疫抑制剤、胃腸薬、利尿剤、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化剤、凝固因子および酵素を含む。また、生物活性剤の組み合わせが使用されてもよいことも意図される。
【0152】
生物活性剤として含まれてもよい他の生物活性剤は、局所麻酔薬、非ステロイド性避妊薬、副交感神経刺激薬、精神治療薬、精神安定剤、充血除去剤、催眠鎮静薬、ステロイド、スルホンアミド、交感神経様作用薬、ワクチン、ビタミン、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、L−ドパ等の抗パーキンソン病薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬(例えば、オキシブチニン)、鎮咳薬、気管支拡張薬、心血管治療薬(冠拡張薬およびニトログリセリン等)、アルカロイド、鎮痛薬、麻薬(コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネ等)、非麻薬(サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェン等)、ナルトレキソンおよびナロキソン等のオピオイド受容体拮抗薬、抗癌剤、抗けいれん薬、制吐薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬(ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾン等)、プロスタグランジンおよび細胞毒性薬、化学療法薬、エストロゲン、抗菌剤、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗凝固剤、抗けいれん薬、抗鬱薬、抗ヒスタミン薬、ならびに免疫薬を含む。
【0153】
創傷閉鎖デバイスに含まれてもよい好適な生物活性剤の他の例は、例えば、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質(ならびにその類似体、突然変異タンパク質およびその活性フラグメント)、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質(フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成のフィブリノゲン等)、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CG等)、ホルモンおよびホルモン類似体(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原、およびウイルス抗原)、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子(例えば、神経成長因子、インスリン様成長因子)、骨形成タンパク質、TGF−B、タンパク質阻害剤、タンパク質拮抗薬、タンパク質作用薬、核酸(アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi等)、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびリボザイムを含む。
【0154】
実施形態において、前駆体および/または前駆体から形成されるヒドロゲル等の、創傷閉鎖デバイスを形成するポリマーは、外科手技の間にそれらの可視性を向上するための可視化剤を含有してもよい。可視化剤は、移植可能な医療用デバイスにおける使用に好適な、色素等の種々の非毒性の着色物質から選択されてもよい。好適な色素は、当業者の知識の範囲内であり、例えば、米国特許第7,009,034号に記載されるように、例えば、インサイチュで形成されるので、ヒドロゲルの厚さを可視化するための色素を含んでもよい。いくつかの実施形態において、好適な色素は、例えば、FD&Cブルー#1、FD&Cブルー#2、FD&Cブルー#3、FD&Cブルー#6、D&Cグリーン#6、メチレンブルー、インドシアニングリーン、他の着色色素、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。蛍光化合物(例えば、フルオレセインまたはエオシン)、X線造影剤(例えば、ヨウ素化化合物)、超音波造影剤、およびMRI造影剤(例えば、ガドリニウム含有化合物)等の追加の可視化剤が使用されてもよいことが想定される。
【0155】
可視化剤は、任意の前駆体成分の溶液中に存在してもよい。着色された物質は、得られたヒドロゲルに組み込まれても、組み込まれなくてもよい。しかしながら、実施形態において、可視化剤は、前駆体(複数可)と反応することができる官能基を有しない。
【0156】
実施形態において、生物活性剤は、創傷閉鎖デバイスを形成するために使用されるポリマーを用いて封入されてもよい。例えば、ポリマーは、生物活性剤の周囲にミクロスフェアを形成することができる
好適な生物活性剤は、製造プロセスの前または最中のいずれかに、創傷栓と組み合わせてもよい。生物活性剤は、ポリマーと混合するかまたは組み合わせて、生物活性特性を有する栓をもたらすことができる。他の実施形態において、生物活性剤は、栓が成形された後に、例えば、コーティングの形態で、本開示と組み合わせてもよい。生物活性剤は、フィルム、粉末、液体、ゲル等の、任意の好適な形態で本開示に適用されてもよいことが想定される。
【0157】
細長い本体および栓部材の種々の組み合わせが、本開示による創傷閉鎖デバイスを製造するために使用されてもよいことを理解されたい。例えば、治療される創傷の種類および創傷閉鎖デバイスから所望される特性によって、上で説明した実施形態の細長い本体のいずれかが、同様に上で説明した栓部材のいずれかと組み合わされてもよい。
【0158】
本開示のいくつかの実施形態を記載してきたが、本開示がそれらに限定されることを意図するものではなく、本開示は当該技術分野で許容される限り広い範囲であり、本明細書も同様に解釈されることが意図される。したがって、上記は限定的であると解釈されるべきではなく、本開示の実施形態の例証に過ぎないと解釈されるべきである。当業者には、創傷閉鎖デバイスならびに創傷閉鎖デバイスの細長い本体および栓部材を形成して、構成要素を一緒に取り付ける方法の種々の改変および変更が、前述の詳細な説明から明らかであろう。そのような改変および変更は、ここに添付する特許請求の範囲および主旨の範囲内であることが意図される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年10月8日に出願された米国仮特許出願第61/249,630号の利益およびこの仮特許出願に対する優先権を主張し、この仮特許出願の全開示は本明細書において、参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、創傷に閉鎖を提供する移植物に関し、特に、腹腔鏡ポート部位等の組織の穿孔を修復および密閉するための創傷閉鎖デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
様々な外科手技(例えば、腹腔鏡手技)は、アクセスポートを介して行われ、その間、アクセスデバイスが組織を穿刺して、手術部位にアクセスを提供する。
【0004】
ヘルニアは、損傷した筋組織または損傷した膜(通常、筋組織または膜により組織、構造物、または器官が収容されている)を通り抜けて、その組織、構造、または器官の一部が突出することである。外套針部位のヘルニア形成は、低侵襲手術の潜在的な合併症である。低侵襲外科用デバイスまたはアクセスポートを除去すると、組織が適切に治癒しない可能性があり、ヘルニアの再形成を含む懸念が生じ得る。より具体的には、より大きな外套針部位(10mm)に大網ヘルニアおよび腸ヘルニアの形成が報告されている。
【0005】
現在、縫合糸等の創傷閉鎖デバイスが、術後に種々の組織層を閉鎖するために使用されている。アクセスデバイスの除去後に患者を縫合することは煩雑であることがあり、その上、手術室で過ごす時間の増加等、患者にとっての追加費用が累積する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
縫合等の従来の方法が存在する一方で、本分野における改良が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本開示は、創傷閉鎖デバイス、同デバイスを作製する方法、および同デバイスを使用する方法を提供する。実施形態において、本開示の創傷閉鎖デバイスは、近位端および遠位端を有する細長い本体と、細長い本体の遠位端に枢動可能に接続する組織対向面およびこの組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含んでもよく、組織対向面は、求電子成分を含み、そして組織対向面と反対側の第2の表面は、求核性成分を含む。
【0008】
実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、栓部材の組織対向面の少なくとも一部上に多孔質基質をさらに含むことができる。この多孔質基質は、メッシュまたはヒドロゲルであってもよい。
【0009】
他の実施形態において、本開示の創傷閉鎖デバイスは、近位端および遠位端を有する細長い本体と、組織対向面およびこの組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含んでもよく、組織対向面は、細長い本体の遠位端に枢動可能に接続し、栓部材は、多孔質基質の組織対向面に適用される第1のヒドロゲル前駆体、および組織対向面と反対側の第2の表面に適用される第2のヒドロゲル前駆体を含む多孔質基質を含み、基質の組織対向面は、組織対向面と反対側の第2の表面から空間的に分離されている。
【0010】
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 創傷閉鎖デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い本体と、
該細長い本体の該遠位端に枢動可能に接続された組織対向面、および該組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含み、
該組織対向面は、求電子性成分を含み、そして該組織対向面と反対側の該第2の表面は、求核性成分を含む、創傷閉鎖デバイス。
【0011】
(項目2) 前記栓部材の組織対向面の少なくとも一部上に多孔質基質をさらに含み、該多孔質基質は、第一の組織対向面および、該栓部材に隣接する該第一の組織対向面の反対側の表面を有する、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0012】
(項目3) 前記多孔質基質は、メッシュを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0013】
(項目4) 前記多孔質基質は、ヒドロゲルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0014】
(項目5) 前記求核性成分は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0015】
(項目6) 前記求電子性成分は、ポリエチレングリコールエステルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0016】
(項目7) 前記求電子性成分は、求電子性基としてN−ヒドロキシスクシンイミドを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0017】
(項目8) 前記求核性成分は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0018】
(項目9) 前記求電子性成分は、粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0019】
(項目10) 前記求核性成分は、粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0020】
(項目11) 前記細長い本体は、多孔質基質を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0021】
(項目12) 創傷閉鎖デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い本体と、
組織対向面および該組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含み、
該組織対向面は、該細長い本体の遠位端に枢動可能に接続し、該栓部材は、多孔質基質を含み、該多孔質基質は、該多孔質基質の組織対向面に適用された第1のヒドロゲル前駆体、および該組織対向面と反対側の第2の面に適用された第2のヒドロゲル前駆体を含み、該基質の組織対向面は、該組織対向面と反対側の該第2の表面から空間的に分離されている、創傷閉鎖デバイス。
【0022】
(項目13) 前記多孔質基質は、メッシュを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0023】
(項目14) 前記多孔質基質は、ヒドロゲルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0024】
(項目15) 前記第2のヒドロゲル前駆体は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0025】
(項目16) 前記第1のヒドロゲル前駆体は、ポリエチレングリコールエステルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0026】
(項目17) 前記第1のヒドロゲル前駆体は、求電子性基としてN−ヒドロキシスクシンイミドを含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0027】
(項目18) 前記第2のヒドロゲル前駆体は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0028】
(項目19) 前記第1のヒドロゲル前駆体は、粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0029】
(項目20) 前記第2のヒドロゲル前駆体は、粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0030】
(項目21) 前記細長い本体は、多孔質基質を含む、上記項目のいずれか一項に記載の創傷閉鎖デバイス。
【0031】
(摘要)
創傷の修復に有用である細長い本体および栓部材を含む、生体適合性創傷閉鎖デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0032】
創傷閉鎖デバイスの種々の実施形態が、以下の図面に関連して本明細書に記載される。
【図1】図1は、本開示の一実施形態による創傷閉鎖デバイスの断面斜視図である。
【図2】図2は、本開示の別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの断面図である。
【図3A】図3Aは、本開示の代替実施形態による脱水された成分を有する創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図3B】図3Bは、再水和後の図3Aの創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図4】図4は、本開示の別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図5】図5は、本開示のさらに別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図6】図6は、本開示の別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図7】図7は、本開示のさらに別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図8】図8は、本開示の一実施形態による創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図9】図9は、本開示による創傷閉鎖デバイスの代替実施形態の断面図である。
【図10】図10は、本開示の一実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図11】図11は、本開示の別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図12】図12は、本開示のさらに別の実施形態による創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図13A】図13Aは、本開示の実施形態による第1の折り曲げ位置にある創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図13B】図13Bは、図13Aの創傷閉鎖デバイスの側面斜視図である。
【図13C】図13Cは、第2の拡張位置にある図13Aの創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図13D】図13Dは、図13Cの創傷閉鎖デバイスの上面図である。
【図14A】図14Aは、本開示の一実施形態による展開位置にある創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図14B】図14Bは、折り曲げ位置にある図14Aの創傷閉鎖デバイスの側面図である。
【図14C】図14Cは、展開位置に示される図14Aの創傷閉鎖デバイスの側面図であり、図14Bの折り曲げ位置が破線で示される。
【図15A】図15Aは、本開示の別の実施形態による展開位置にある創傷閉鎖デバイスの斜視図である。
【図15B】図15Bは、第1の折り曲げ位置に示される図15Aの創傷閉鎖デバイスの側面図であり、第2の展開位置が破線で示される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(詳細な説明)
本発明の創傷閉鎖デバイスは、創傷の閉鎖を促進するものであり、また治癒を向上させ、瘢痕、疼痛、および感染を減少させるための生物製剤および/または治療剤を送達するために、ならびに創傷部位に機械的な安定性を提供してポート部位のヘルニア形成を防止するために使用されてもよい。創傷閉鎖デバイスは、創傷の穿孔組織内に挿入し、組織を充填して一緒に保持するための細長い本体と、組織の内部表面に対して位置付けて創傷を塞ぐまたは閉じるための実質的に平坦な組織対向面を有する、細長い本体の遠位端部に装着された栓部材とを含む。実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、外套針等の挿入デバイスを通して挿入され、針が除去されると、残された創傷閉鎖デバイスが創傷を閉鎖する。
【0034】
創傷閉鎖デバイスの構成要素、すなわち、細長い本体および/または栓部材は、外科手技において使用することができる任意の生分解性材料から製造されてもよい。本明細書で使用される場合の「生分解性」という用語は、生体吸収性材料および生体再吸収性材料の両方を含むように定義される。生分解性とは、分解産物が身体によって排泄可能または吸収可能となるように、身体条件(例えば、酵素分解または加水分解)下で材料が分解すること、または構造的完全性を失うこと、または体内の生理的条件下で(物理的または化学的に)崩壊することを意味する。そのような材料は、本開示の創傷閉鎖デバイスの構成要素を形成するための天然、合成、生体吸収性、および/または非吸収性の材料ならびにそれらの組み合わせを含むことを理解されたい。
【0035】
代表的な天然の生分解性ポリマーは、アルギネート、デキストラン、キチン、ヒアルロン酸、セルロース、コラーゲン、ゼラチン、フカン、グリコサミノグリカン等の多糖類およびそれらの化学的誘導体(例えば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、ならびに当業者によって日常的に行われる他の修飾等の化学基の置換および/または付加)、タンパク質(アルブミン、カゼイン、ゼインおよび絹等)、ならびに単独のまたは合成の生分解性ポリマーと組み合わせたそれらのコポリマーおよびブレンドを含む。
【0036】
合成的に修飾された天然のポリマーは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサン等のセルロース誘導体を含む。好適なセルロース誘導体の実施例は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩を含む。本明細書の実施形態においては、これらを総称して「セルロース」と称してもよい。
【0037】
代表的な合成の生分解性ポリマーは、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン(ε−カプロラクトンを含む)、バレロラクトン(δ−バレロラクトンを含む)等のラクトンモノマーから調製されるポリヒドロキシ酸、ならびに炭酸(例えば、炭酸トリメチレン、炭酸テトラメチレン等)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノンおよびp−ジオキサノン)、1,ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、およびそれらの組み合わせを含む。それらから形成されるポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−(ε−カプロラクトン−))、ポリ(グリコリド−コ−(ε−カプロラクトン))、ポリカーボネート、ポリ(偽アミノ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ならびにそれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせを含む。
【0038】
創傷閉鎖デバイスを作製することができる生分解性材料の他の非限定的な実施例は、ポリ(ホスファジン)、脂肪族ポリエステル、ポリエチレングリコール、グリセロール、コポリ(エーテル‐エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカルボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ならびにそれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせを含む。
【0039】
ポリマーの表面が侵食するにつれてカルボキシル基が外表面上に暴露される、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ無水物、およびポリオルトエステル等の急速生体侵食性ポリマーが使用されてもよい。
【0040】
実施形態において、細長い本体、栓部材、もしくはその両方、または細長い本体、栓部材、もしくはその両方のコーティングは、ヒドロゲルから形成されてもよい。ヒドロゲルは、当業者の知識の範囲内である任意の成分で形成されてもよい。いくつかの実施形態において、後にさらに説明するように、ヒドロゲルは、コラーゲン、ゼラチン、血清、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ等の天然成分で形成されてもよい。天然成分は、創傷閉鎖デバイスの一部として使用される任意のヒドロゲルが分解するにつれて、移植部位で分解してもよく、そうでなければ放出されてもよい。本明細書で使用される場合、「天然成分」という用語は、天然に見出され得るか、または天然に見出される組成物/生命体に由来し得る、ポリマー、組成物、材料、それらの組み合わせ等を含む。また天然成分は、天然に見出されるが、例えば、天然/合成/生物学的な組換材料を作製する方法、ならびに天然に見出されるタンパク質と同じ配列を有するタンパク質を生成することができる方法、および/または、例えばSigma Aldrichより市販される合成ヒアルロン酸等の天然の材料と同じ構造および成分を有する材料を生成することができる方法を用いて、人間によって合成され得る組成物を含んでもよい。
【0041】
ヒドロゲルは、単一の前駆体または複数の前駆体から形成されてもよい。これは、移植前または移植時に起こり得る。いずれの場合も、ヒドロゲルの形成は、適用時に活性化され、実施形態においては、ヒドロゲルを作成し得る前駆体を有し得ることにより、達成することができる。活性化は、これに限定されないが、pH、イオン性、圧力、温度等の環境変化を含む種々の方法によってなされ得る。他の実施形態において、ヒドロゲルを形成するための成分は、体外で接触させ、その後、予め形成された創傷閉鎖デバイスまたはその構成要素等の移植物として、患者の体内に導入されてもよい。
【0042】
ヒドロゲルが複数の前駆体(例えば、2つの前駆体)から形成される場合、前駆体は、第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体と称されてもよい。「第1のヒドロゲル前駆体」および「第2のヒドロゲル前駆体」という用語は、各々、架橋分子(例えばヒドロゲル)のネットワークを形成するための反応に関与し得る、ポリマー、官能性ポリマー、巨大分子、小分子、または架橋剤を意味する。
【0043】
実施形態において、ヒドロゲルを形成するために使用される前駆体は、例えば、モノマーまたはマクロマーであってもよい。ある種類の前駆体は、求電子剤または求核剤である官能基を有してもよい。求電子剤は、求核剤と反応して共有結合を形成する。共有結合性の架橋または結合とは、異なるポリマーを互いに共有結合させる役割を果たす異なるポリマー上の官能基の反応によって形成される化学基を指す。特定の実施形態において、第1の前駆体上の第1のセットの求電子性官能基は、第2の前駆体上の第2のセットの求核性官能基と反応することができる。反応を可能にする環境(例えば、pH、温度、イオン性および/または溶媒と関連する)で前駆体が混合されると、官能基は互いに反応して共有結合を形成する。前駆体のうちの少なくともいくつかが、1つより多くの他の前駆体と反応できる場合に、前駆体は架橋する。例えば、第1の種類の官能基を2つ有する前駆体は、第1の種類の官能基と反応することができる第2の種類の官能基を少なくとも3つ有する架橋前駆体と反応させてもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、「官能基」という用語は、互いに反応して結合を形成することができる基を指す。実施形態において、そのような基は、求電子性または求核性であってもよい。求電子性官能基は、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミド、カルボニルジイミダゾール、スルホニルクロリド、アリールハライド、スルホスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステル等を含む。実施形態において、求電子性官能基は、スクシンイミジルエステルである。
【0045】
第1および第2のヒドロゲル前駆体は、生物学的に不活性な水溶性のコアを有することができる。より具体的には、求電子性ヒドロゲル前駆体は、生物学的に不活性な水溶性のコア、および非水溶性のコアを有することができる。コアが水溶性のポリマー領域である場合、使用することができる好適なポリマーは、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−コ‐ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、コ‐ポリエチレンオキシドブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、およびポリビニルアルコール(「PVA」)等)等のポリエーテル、ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(サッカリド)(例えば、デキストラン、キトサン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒアルロン酸等)、ならびにアルブミン、コラーゲン、カゼイン、およびゼラチン等のタンパク質を含む。他の好適なヒドロゲルは、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、それらの組み合わせ等の成分を含んでもよい。実施形態において、上記ポリマーおよび成分の組み合わせが使用され得る。
【0046】
ポリエーテル、より具体的には、ポリ(オキシアルキレン)またはポリエチレングリコールが、いくつかの実施形態において使用されてもよい。分子の性質上、コアが小さい場合は、種々の親水性官能基のいずれかが、第1および第2のヒドロゲル前駆体を水溶性にするために使用されてもよい。例えば、ヒドロキシル、アミン、スルホネートおよびカルボキシレート等の水溶性の官能基が、前駆体を水溶性にするために使用されてもよい。例えば、スベリン酸のN−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは水に不溶性であるが、スクシンイミド環にスルホネート基を付加することによって、スベリン酸のNHSエステルは、そのアミン基に対する反応性に影響を及ぼすことなく、水溶性にされ得る。実施形態において、求電子性官能基を有する前駆体は、PEGエステルであってもよい。
【0047】
上述したように、第1および第2のヒドロゲル前駆体のそれぞれが多官能性であってもよく、つまり、それらは2つ以上の求電子性官能基または求核性官能基を含んでもよく、そのため、例えば、第1のヒドロゲル前駆体上の求核性官能基が、第2のヒドロゲル前駆体上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成できることを意味している。第1または第2のヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは2個を超える官能基を含んでおり、そのため、求電子−求核反応の結果として、前駆体が組み合わさり、架橋ポリマー生成物、実施形態においては、ヒドロゲルを形成する。
【0048】
求電子性官能基を有する巨大分子は、マルチアーム型であってもよい。例えば、巨大分子は、コアから延びる4本、6本、8本、またはそれ以上のアームを有するマルチアームPEGであってもよい。コアは、アームを形成する巨大分子と同じかまたは異なっていてもよい。例えば、コアはPEGであってもよく、マルチアームもまたPEGであってもよい。実施形態において、コアは、天然のポリマーであってもよい。
【0049】
求電子性架橋剤の分子量(MW)は、約2,000g/molから約100,000g/molであってもよく、実施形態においては、約10,000g/molから約40,000g/molである。マルチアーム型の前駆体は、アームの数によって異なる分子量を有することができる。例えば、1000g/molのPEGを有するアームは、合計で少なくとも1000g/molになるのに十分なCH2CH2O基を有する。個々のアームの分子量を合わせると、約250g/molから約5,000g/molであってもよく、実施形態においては、約1,000g/molから約3,000g/molであり、実施形態においては、約1,250g/molから約2,500g/molである。実施形態において、求電子性架橋剤は、例えば、4本、6本、または8本のアームを有し、かつ、約5,000g/molから約25,000g/molの分子量を有する、複数のNHS基で官能化されたマルチアームPEGであってもよい。好適な前駆体の他の実施例は、米国特許第6,152,943号、同第6,165,201号、同第6,179,862号、同第6,514,534号、同第6,566,406号、同第6,605,294号、同第6,673,093号、同第6,703,047号、同第6,818,018号、同第7,009,034号、および同第7,347,850号に開示され、これらの各々の全開示は、参考として本明細書に援用される。
【0050】
求電子性前駆体は、特定の実施形態において1級アミンを含有する天然成分等の別の成分上の求核剤と結合することができる求電子性官能基を提供する架橋剤であってもよい。求電子性架橋剤が適用される天然成分は、内因性成分(患者にとって、(すなわち、コラーゲン))であってもよい。
【0051】
実施形態において、前駆体のうちの1つは、求核性基を保有する求核性前駆体であってもよい。存在し得る求核性基は、例えば、−NH2、−SH、−OH、−PH2、および−CO−NH−NH2を含む。求電子性前駆体の形成における使用に好適であると上述した任意のモノマー、マクロマー、ポリマー、またはコアは、求核性基で官能化して求核性前駆体を形成することができる。他の実施形態において、上に列記したような求核性基を保有する天然成分は、求核性前駆体として使用されてもよい。
【0052】
天然成分は、例えば、コラーゲン、ゼラチン、血液(全血清またはその抽出物であってもよい血清を含む)、ヒアルロン酸、タンパク質、アルブミン、他の血清タンパク質、血清濃縮物、多血小板血漿(prp)、それらの組み合わせ等であってもよい。使用されてもよいか、または別の天然成分に添加されてもよい、さらなる好適な天然成分は、例えば、幹細胞、DNA、RNA、酵素、成長因子、増殖因子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、他の窒素含有天然分子、それらの組み合わせ等を含む。他の天然成分は、天然由来、合成、もしくは生物学的に派生したものであってもよい、例えば、ヒアルロン酸またはデキストラン等の修飾された多糖類等の上記物質の誘導体を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、天然成分は、アミノ化されたヒアルロン酸であってもよい。
【0053】
実施形態において、上記天然成分のいずれかは人工的に調製されてもよく、例えばSigma Aldrichより購入することができる合成ヒアルロン酸等であってもよい。同様に、実施形態において、天然成分は、天然または合成の長鎖アミノ化ポリマーであってもよい。
【0054】
天然成分は、それがインサイチュで接触する組織に、細胞の構成単位または細胞の栄養分を提供することができる。例えば、血清は、組織の形成または再生において有用であり得るタンパク質、グルコース、凝固因子、無機イオン、およびホルモンを含有する。
【0055】
実施形態において、天然成分は全血清を含む。いくつかの実施形態において、天然成分は自己由来であり、すなわち、コラーゲン、血清、血液等である。
【0056】
実施形態において、複数のアミン基を有する天然成分等の多官能性求核性ポリマーは、第1のヒドロゲル前駆体として使用されてもよく、複数のNHS基で官能化されたマルチアームPEG、すなわちPEGエステル等の多官能性求電子性ポリマーは、第2のヒドロゲル前駆体として使用されてもよい。実施形態において、前駆体は、ヒドロゲルの形成を可能にするために組み合わせられてもよい溶液(複数可)中に存在してもよい。インサイチュの形成材料系の一部として使用されるいずれの溶液も、有害または毒性の溶媒を含有するべきではない。実施形態において、前駆体(複数可)は、緩衝等張食塩水等の生理的に適合性のある溶液における適用を可能にするよう、水等の溶媒中で実質的に可溶性であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、予め形成されたヒドロゲルは、架橋剤として多官能性PEGを用いて、天然成分としてコラーゲンとゼラチンの組み合わせから形成されてもよい。実施形態において、コラーゲンおよびゼラチンは、好適な溶媒を用いて、溶液に入れられてもよい。この溶液に、高pH緩衝液とともにヒアルロン酸が添加されてもよい。そのような緩衝液は、約8から約12のpHを有することができ、実施形態においては、約8.2から約9であってもよい。そのような緩衝液の実施例は、これに限定されないが、ホウ酸塩緩衝液等を含む。
【0058】
第2の溶液中では、実施形態においてn−ヒドロキシスクシンイミド等の求電子性基で官能化したマルチアームPEGである求電子性架橋剤が、ハンクス平衡塩溶液、ダルベッコ改変イーグル培地、リン酸緩衝食塩水、水、リン酸緩衝液、それらの組み合わせ等の緩衝液中で調製されてもよい。実施形態ではn−ヒドロキシスクシンイミド基で官能化したマルチアームPEGである求電子性架橋剤は、約0.02グラム/mLから約0.5グラム/mLの濃度で、実施形態においては約0.05グラム/mLから約0.3グラム/mLの濃度で、上記緩衝液を含む溶液中に存在してもよい。
【0059】
2つの成分が組み合わされてもよく、マルチアームPEG上の求電子性基が、コラーゲンおよび/またはゼラチンのアミン求核性成分と架橋する。天然成分対求電子性成分の比率は、約0.01:1から約100:1であってもよく、実施形態においては、約1:1から約10:1である。
【0060】
特定の実施形態において、たとえば、コラーゲン、ゼラチン、および/またはヒアルロン酸等の天然成分である求核性成分は、ヒドロゲルの少なくとも約1.5重量パーセントの濃度で一緒に存在してもよく、実施形態において、ヒドロゲルの約1.5重量パーセントから約20重量パーセント、他の実施形態において、ヒドロゲルの約2重量パーセントから約10重量パーセントである。特定の実施形態において、コラーゲンは、ヒドロゲルの約0.5重量パーセントから約7重量パーセントで存在してもよく、さらなる実施形態において、ヒドロゲルの約1重量パーセントから約4重量パーセントである。別の実施形態において、ゼラチンは、ヒドロゲルの約1重量パーセントから約20重量パーセントで存在してもよく、さらなる実施形態において、ヒドロゲルの約2重量パーセントから約10重量パーセントである。さらに別の実施形態において、天然成分(複数可)として組み合わされるヒアルロン酸およびコラーゲンは、ヒドロゲルの約0.5重量パーセントから約8重量パーセントで存在してもよく、さらなる実施形態において、ヒドロゲルの約1重量パーセントから約5重量パーセントである。また、ヒアルロン酸は、「構造的な」成分としてではなく、むしろ生物活性剤として存在してもよいことも想定されたい。例えば、ヒアルロン酸は、溶液/ゲルの0.001重量パーセントという低濃度で溶液/ゲル中に存在してもよく、生物学的活性を有する。
【0061】
求電子性架橋剤は、ヒドロゲルの約0.5重量パーセントから約20重量パーセントの量で存在してもよく、実施形態において、ヒドロゲルの約1.5重量パーセントから約15重量パーセントである。
【0062】
ヒドロゲルは、共有結合、イオン性結合、または疎水性結合のいずれかによって形成されてもよい。物理的(非共有結合性)架橋は、複合体形成、水素結合、脱溶媒和、ファンデルワールス相互作用、イオン性結合、それらの組み合わせ等に起因してもよく、インサイチュで組み合わせられるまでは物理的に分離している2つの前駆体を混合することによって、または、温度、圧力、pH、イオン強度、それらの組み合わせ等を含む生理的環境における一般的な条件もしくは変化の結果として、開始されてもよい。よって、ヒドロゲルは、これらの環境条件/変化に感受性であり得る。化学的(共有結合性)架橋は、フリーラジカル重合、縮合重合、アニオン性もしくはカチオン性重合、逐次重合、求電子−求核反応、およびそれらの組み合わせ等を含む、多数の機構のうちのいずれかによって達成されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル系は、前駆体が混合されると自然に架橋するが、堆積プロセスの間は2つ以上の前駆体が個別に安定している生体適合性の複数前駆体系を含んでもよい。他の実施形態において、ヒドロゲルは、内因性の物質および/または組織と架橋する単一の前駆体から形成されてもよい。
【0064】
得られたヒドロゲルの架橋密度は、架橋剤および天然成分の総分子量、ならびに分子当たり使用可能な官能基の数によって制御することができる。600ダルトン(Da)等の架橋間の低い分子量は、10,000Da等の高い分子量と比較すると、はるかに高い架橋密度を示す。弾性ゲルは、3000Daを超える分子量を有する高い分子量の天然成分で得ることができる。1ダルトンは1g/molに相等し、分子量に言及する場合、それらの用語は、交換可能に使用されてもよいことを理解されたい。
【0065】
また架橋密度は、架橋剤および天然成分の溶液の総固体パーセントによって制御することができる。固体パーセントを増加させると、加水分解による不活性化の前に、求電子性基が求核性基と結合する確率が増加する。架橋密度を制御するためのさらに別の方法は、求核性基対求電子性基の化学量論を調節することによる。1対1の比率は最高の架橋密度をもたらすことができるが、反応性官能基(例えば、求電子性:求核性)の他の比率が所望の製剤に適することが想定される。
【0066】
よって、生成されるヒドロゲルは生体吸収性であってもよい。例えば、本開示のヒドロゲルは、約1日から約18ヶ月まで、あるいは約18ヶ月以上かけて吸収されてもよい。吸収性ポリマー材料は、天然および合成のポリマー、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0067】
実施形態において、ヒドロゲルを生分解性または吸収性にするために、官能基間に存在する生分解性結合を有する1つ以上の前駆体が含まれてもよい。いくつかの実施形態において、これらの結合は、例えば、加水分解的に分解され得るエステルであってもよい。そのような結合の使用は、タンパク質分解作用によって分解され得るタンパク質結合とは対照的である。また生分解性結合は、任意選択的に、1つ以上の前駆体の水溶性コアの一部を形成してもよい。代替として、または追加で、前駆体の官能基は、前駆体の間の反応生成物が生分解性結合をもたらすように選択されてもよい。それぞれのアプローチについて、生分解性結合は、得られた生分解性の生体適合性架橋ポリマーが、所望の期間に分解するかまたは吸収されるように選択されてもよい。一般的に、ヒドロゲルを生理的条件下で分解して、非毒性または低毒性の生成物にする生分解性結合が選択されてもよい。
【0068】
本開示において用いられる生分解性ゲルは、そのゲルが天然成分の一部であろうと、または合成の求電子性架橋剤に導入されようと、生分解性領域の加水分解または酵素分解によって分解することができる。合成ペプチド配列を含有するゲルの分解は、特定の酵素およびその濃度に依存する。いくつかの場合において、分解プロセスを促進するために、架橋反応の最中に特定の酵素が添加されてもよい。分解性酵素の非存在下では、架橋ポリマーは、単に生分解性セグメントの加水分解によってだけで分解することができる。ポリグリコレートが生分解性セグメントとして使用される実施形態において、架橋ポリマーは、ネットワークの架橋密度に依存して、約1日から約30日かけて分解することができる。同様に、ポリカプロラクトンに基づく架橋ネットワークが使用される実施形態において、分解は約1ヶ月から約8ヶ月の期間にわたって起こり得る。通常、分解時間は、使用される分解性セグメントの種類にしたがって、以下の順序で変化する:ポリグリコレート<ポリ乳酸<ポリ炭酸トリメチレン<ポリカプロラクトン。よって、異なる分解性セグメントを使用して、数日から数ヶ月までの所望の分解プロファイルを有するヒドロゲルを構築することが可能である。
【0069】
使用される場合、オリゴヒドロキシ酸ブロック等の生分解性ブロックによって生じる疎水性、または求電子性前駆体を形成するために使用されるPLURONICTMもしくはTETRONICTMポリマーにおけるPPOブロックの疎水性は、小さな有機薬物分子を溶解させる際に有用であり得る。生分解性または疎水性のブロックを組み込むことにより影響を受ける他の特性は、水分の吸収、機械的特性、および、感熱性を含む。
【0070】
他の実施形態において、ヒドロゲルを形成するために使用される前駆体は非分解性であってもよく、すなわち、前駆体は、求電子性前駆体の形成における使用に好適であると上述したマクロマー、ポリマー、またはコアのうちのいずれかを含んでもよいが、エステルまたは他の類似する分解性結合を保有しない。非生分解性結合は、N−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートの反応によって作製されてもよい。一実施形態において、マルチアームポリオールとN,N’−ジヒドロキシスクシンイミジルカーボネートとの反応は、N−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートを作製する。N−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートを、次いで、コラーゲン、アミノ化ヒアルロン酸、ゼラチン、またはデキストラン等の高分子量ポリアミンとさらに反応させて、予め形成されたヒドロゲルを作製することができる。高分子量ポリアミンは、低分子量ポリアミンと比較して、移植物の長期安定性を提供することができる。高分子量ポリアミンは、約15,000g/molから約250,000g/molの分子量を含んでもよく、特定の実施形態において、約75,000g/molから約150,000g/molである。非生分解性結合が使用される場合であっても、コラーゲン等の生分解性の第1のヒドロゲル前駆体の使用によって、移植物は生分解性のままであることを理解されたい。例えば、コラーゲンは、酵素的に分解されてもよく、ヒドロゲルを分解し、その後で腐食される。
【0071】
また、殺菌が容易で、天然材料の使用に伴う疾病伝播の危険性を回避する合成材料も使用されてもよい。実際に、例えば、FOCALSEAL(登録商標)(Genzyme,Inc.)、COSEAL(登録商標)(Angiotech Pharmaceuticals)、およびDURASEAL(登録商標)(Confluent Surgical,Inc)等の市販の製品において使用される、合成の前駆体を使用して作製される特定の重合可能なヒドロゲルは、当業者の知識の範囲内である。他の既知のヒドロゲルは、例えば、米国特許第6,656,200号、同第5,874,500号、同第5,543,441号、同第5,514,379号、同第5,410,016号、同第5,162,430号、同第5,324,775号、同第5,752,974号、および同第5,550,187号に開示されるものを含む。
【0072】
上述したように、実施形態において、本明細書で時として星型PEGと称されるマルチアームPEGは、本開示の創傷閉鎖デバイスの少なくとも一部を形成する際に使用されるヒドロゲルを形成するために含まれてもよい。星型PEGは、そのアームが、そのコア、そのアーム、またはそのアームの端部に、アミノ酸、ペプチド、抗体、酵素、薬剤、または他の部分等の生物学的官能基(biofunctional groups)を含むように官能化されてもよい。また生物学的官能基は、PEGの骨格内に組み込まれても、PEG骨格内に含有される反応基に結合してもよい。結合は、静電的、チオール媒介性、ペプチド媒介性、または、例えばビオチンとアビジン等の既知の反応化学の使用を含む、共有結合性または非共有結合性であってもよい。
【0073】
星型PEGに組み込まれるアミノ酸は天然または合成であってもよく、単独でまたはペプチドの一部として使用することができる。配列は、細胞接着、細胞分化、それらの組み合わせ等に使用されてもよく、成長因子、増殖因子、薬剤、サイトカイン、DNA、抗体、酵素、それらの組み合わせ等の他の生体分子の結合に有用であり得る。そのようなアミノ酸は、星型PEGの酵素分解により放出されてもよい。
【0074】
これらの星型PEGはまた、それらのヒドロゲル内への組み込みを可能にするために、上述したような官能基を含んでもよい。星型PEGは、求電子性架橋剤として使用されてもよいか、または、実施形態において、上記求電子性架橋剤に加えて別個の成分として使用されてもよい。実施形態において、星型PEGは、求核性基に結合する求電子性基を含むことができる。上述したように、求核性基は、本開示のヒドロゲルを形成するために使用される天然成分の一部であってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、生物学的官能基は、分解性結合を通して、星型PEGに含まれてもよく、この分解性結合として、PEGカルボン酸または活性化PEGカルボン酸と生物学的官能基上のアルコール基との反応によって形成されるエステル結合が挙げられる。この場合、エステル基は、生物学的官能基を放出するための生理的条件下で加水分解することができる。
【0076】
よって、細長い本体および/もしくは栓部材ならびに/またはその一部の上のコーティングは、1つの前駆体(フリーラジカル重合による)、もしくは、2つの前駆体から形成されるか、または3つ以上の前駆体で作成されるヒドロゲルであってもよく、前駆体のうちの1つ以上が、細長い本体および/もしくは栓部材を形成するための架橋に関与するか、または、細長い本体および/もしくは栓部材の上にコーティングもしくは層を形成することに関与する。
【0077】
細長い本体および栓部材は、後に実施形態において詳述するように、発泡体、繊維、フィラメント、メッシュ、織網および不織網、多孔性基質、圧定布、パッド、粉末、薄片、粒子、ならびにそれらの組み合わせの形態を採ることができる。創傷閉鎖デバイスの構成要素を形成するための好適な技術は当業者の知識の範囲内であり、凍結乾燥、製織、溶媒蒸発、成形等を含む。
【0078】
実施形態において、本開示の創傷閉鎖デバイスの細長い本体および栓部材のうちの一方または両方は、メッシュの形態であってもよい。メッシュを形成するための技術は当業者の知識の範囲内であり、例えば、鋳造、成形、ニードルパンチ、フッキング、製織、圧延、圧縮、バンドリング、ブレーディング、スピニング、杭打ち、編成、フェルティング(felting)、延伸、接合、束線、押出、および/またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、メッシュは、少なくとも細長い本体および/または栓部材を形成することができる。後に詳述するいくつかの実施形態において、メッシュは、本明細書に記載される反応基をさらに含むことができる。実施形態において、メッシュは生体吸収性であっても、非生体吸収性であってもよい。
【0079】
メッシュが、細長い本体および栓部材の両方の上に層を形成する場合、メッシュ自体がリビングヒンジ(living hinge)としての役割を果たすことができ、細長い本体を栓部材に枢動可能に接続する。メッシュのストランドを生成するために使用されるフィラメントは、約1μmから約2mmの直径を有してもよく、実施形態において、約100μmから約1mmである。
【0080】
よって、生成されるメッシュは、約0.2mmから約5mmの厚さ、実施形態においては約1mmから約3mmの厚さを有することができる。ストランドは、約100ミクロンから約2000ミクロンの直径、実施形態において、約200ミクロンから約1500ミクロン、他の実施形態において、約750ミクロンから約1250ミクロンの直径の細孔を形成するように隔置されてもよい。種々のメッシュの実施例は、米国特許第6,596,002号、同第6,408,656号、同第7,021,086号、同第6,971,252号、同第6,695,855号、同第6,451,032号、同第6,443,964号、同第6,478,727号、同第6,391,060号、および米国特許出願公開第2007/0032805号に開示されるものを含み、それらの各々の全開示は、参考として本明細書に援用される。
【0081】
メッシュのフィラメントは、モノフィラメントまたはマルチフィラメントであってもよい。マルチフィラメントの構築物が使用される場合、それらは、布、織物、パッチ、メッシュ等の中にさらに構築するためのユニットを形成するために、ひだを付ける、編込む、織る、ねじる等することができるか、または平行に並べられてもよい。フィラメントまたはストランドの分布は、無作為であるかまたは配向性があってもよい。
【0082】
メッシュは、本明細書に列挙するものを含む、天然または合成の、生体吸収性または非生体吸収性の材料を含むことができる。好適なメッシュはコラーゲン複合メッシュを含み、例えばPARIETEXTM(Covidienとして業務実施中のTyco Healthcare Group LP,North Haven,CT)等が使用されてもよい。PARIETEXTTM複合メッシュは、一つの面に再吸収性コラーゲンフィルムが結合した3次元のポリエステル織物である。
【0083】
実施形態において、メッシュ構成要素は、実質的に平坦なシートであってもよい。他の実施形態において、メッシュ構成要素は円筒形状であってもよい。円筒状のメッシュ構成要素は、平坦なメッシュのシートを丸めて中空の円筒を形成することによって形成されてもよい。
【0084】
細長い本体がメッシュで形成される実施形態において、メッシュは組織足場としての役割を果たすことができるため、組織統合/内殖のための手段を提供する。組織足場はまた、細胞に成長構成要素および発達構成要素を提供することができる。よって、本開示のヒドロゲルが組織足場として使用される場合、周辺組織に必要な栄養素および生物活性剤を提供することにより、自然の組織再成長における補助となり得る。いくつかの実施形態において、本明細書で考察されるように、ヒドロゲル自体が、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ等の天然成分を含んでもよく、よって、組織足場が分解するにつれて、天然成分は、移植部位で放出されてもよく、そうでなければ分解してもよい。
【0085】
細長い本体、栓部材、またはその両方を形成するために使用されるヒドロゲルもまた、組織足場としての機能を果たすことができる。
【0086】
創傷閉鎖デバイスの細長い本体および栓部材は、種々の化学的および/または物理的な手段のうちのいずれかを用いて、創傷閉鎖を提供する。細長い本体および/または栓部材は、その表面上に組織と結合する反応基を含むことができるか、または予め処理した部分が、移植されるとデバイスに結合する組織表面に適用されてもよい。反応基は、噴霧コーティング、浸漬コーティング、溶融加圧、押し出しまたは共有押し出し等を含むが、これに限定されない種々の手段を使用して創傷閉鎖デバイスに適用されてもよい。反応基は、固体、液体、または粒子の形態であってもよい。
【0087】
実施形態において、少なくとも1つの反応基を保有するポリマーは、創傷閉鎖デバイスの構成要素を組織に固定化することができる。他の実施形態において、ポリマーは、複数の反応基を保有してもよい。例えば、第1の反応基は、ポリマーを細長い本体および/または栓部材に化学的に結合させるために使用することができ、第2の反応基は、創傷閉鎖デバイスを組織に化学的に結合させるために使用することができ、よって、反応性ポリマーは、細長い本体および/または栓部材と組織との間にブリッジを形成する。化学結合とは、共有結合、架橋、イオン性結合等を含む、あらゆる種類の化学結合を意味する。
【0088】
いくつかの実施形態において、本開示による創傷閉鎖デバイスの構成要素を作製するために使用される任意のポリマーは、1つ以上の反応基で官能化されてもよい。ポリマーは、上述したような任意の好適な生分解性または非分解性ポリマーであってもよい。
【0089】
細長い本体および/または栓部材は、インサイチュに配置されたときにデバイスを周辺組織に架橋するための、少なくとも1つの反応基を含むことができる。上述したように、得られた反応性デバイスは、単数もしくは複数の反応性官能性を有することができるか、または、組織と共有結合的に結合することができる反応性部分と、小分子もしくはオリゴマー分子との混合物を含むことができる。
【0090】
実施形態において、反応性デバイスは、同デバイスを組織に結合することができる少なくとも1つの遊離反応基で官能化される架橋剤、接着剤、封止剤、カプラー等を含むことができる。追加として、反応基は、本開示の創傷閉鎖デバイスのヒドロゲル構成要素、およびその上の任意のコーティングを形成するために用いられる前駆体からの遊離官能基を含むことができる。
【0091】
より具体的には、反応基は、これに限定されないが、イソシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、シアノアクリレート、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセルアルデヒド、およびジアルデヒド)、ゲニピン、それらの組み合わせ、ならびに、組成物、組織、またはその両方の他の成分に対して何らかの親和性を有する化学物質を保有する、他の化合物を含む。反応性デバイスはまた、これに限定されないが、上に列挙したようなアルデヒド、リジン(トリリジン、テトラリジン、および/もしくはポリリジン等)、ジイミド、ジイソシアネート、シアナミド、カルボジイミド、ジメチルアジプイミデート(adipimidate)、デンプン、およびそれらの組み合わせを含む、任意の天然または合成の架橋剤を含むことができる。反応性成分は、移植前または移植時に形成される単官能性、二官能性、もしくは多官能性のモノマー、ダイマー、小分子、またはオリゴマーであってもよい。
【0092】
複数の異なる反応基が存在してもよく、それらは、末端に位置するか、またはポリマー鎖の長さに沿って交互に位置してもよいことが企図される。実施形態において、ポリマーは、約2個から約50個の反応基を有する。
【0093】
実施形態において、細長い本体および/または栓部材は、乾燥成分を含むことができ、実施形態において、前駆体および/または反応性成分は、本明細書に記載するように、任意選択的に粒子の形態であってもよい。これらの乾燥材料は、水性の生理学的液体の存在によって活性化されてもよい。例えば、前駆体および/または反応性成分は、微粒子状物質等の乾燥形態で、あるいはフィルムもしくは発泡体等の固体または半固体の状態で適用されてもよい。実施形態において、第1または第2のヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは、本開示の創傷閉鎖デバイス上のフィルムとして提供されてもよい。いくつかの実施形態において、これらの乾燥した前駆体は、本開示の創傷閉鎖デバイスの構成要素または構成要素の一部として使用されるメッシュ内に適用または包埋されてもよい。実施形態において、デバイスに適用される第1のヒドロゲル前駆体を有する本開示の創傷閉鎖デバイスの第1の部分は、デバイスに適用される第2のヒドロゲル前駆体を有する創傷閉鎖デバイスの第2の部分とは空間的に分離される。互いから空間的に分離された第1および第2のヒドロゲル前駆体を有することにより、創傷閉鎖デバイスが移植部位に配置され、患者の生理学的液体に曝露されるまで、ヒドロゲル前駆体が互いに反応するのを阻止する。実施形態において、この前駆体の空間的分離は、栓部材、細長い本体、またはその両方の上で起こってもよい。他の実施形態において、この空間的分離は、細長い本体、栓部材、またはその両方に外層として適用されてもよい、例えば、メッシュ、ヒドロゲル、フィルム、発泡体、それらの組み合わせ等の任意の多孔性基質について起こり得る。
【0094】
代替として、第1のヒドロゲル前駆体(複数可)および/または反応性成分は、これに限定されないが、噴霧、浸漬、ブラッシング、浸水、蒸着、共有押し出し、毛細管現象によるウィッキング、フィルムキャスティング、成形、溶媒の蒸発、およびデバイスとポリマーとの間の任意の他の物理的接触、それらの組み合わせ等を含む、当業者に既知である任意の好適な方法を用いて、本開示の創傷閉鎖デバイスにコーティングとして適用されてもよい。
【0095】
実施形態において、第1のヒドロゲル前駆体(複数可)および/または反応性成分は、創傷閉鎖デバイスを形成する前に本開示の創傷閉鎖デバイスに組み込まれてもよい。実施形態において、第1のヒドロゲル前駆体(複数可)および/または反応性成分は、溶液中で創傷閉鎖デバイスに適用されてもよく、続いて、溶媒の蒸発または凍結乾燥が行われる。実施形態において、第1のヒドロゲル前駆体(複数可)および/または反応性成分は、創傷閉鎖デバイスの少なくとも1つの面上のコーティングとして、または創傷閉鎖デバイスの少なくとも1つの表面上に存在するフィルムとして、創傷閉鎖デバイスに適用されてもよい。
【0096】
コーティングが乾燥成分を含む場合、実施形態において、任意選択的に粒子形態である乾燥した前駆体が創傷内に導入されると、体液は、前駆体および/または反応性成分の相互の反応ならびに/あるいは組織との反応を開始するために必要な水分を提供することができる。
【0097】
代替として、コーティングは、例えば、移植の前に手術室で医療用デバイスを浸漬する等、移植の前にデバイスに適用されてもよい。実施形態において、デバイスの周囲、かつ/またはデバイスもしくはその一部を介して複雑なネットワークが形成され、任意選択的にデバイスと結合するように、デバイスを大量の反応溶液に浸漬することによって、反応溶液がデバイスと接触させられてもよい。次いで、遊離反応基が組織と結合することができ、それによりデバイスを組織に取り付ける。例えば、実施形態において、反応溶液は、デバイスを含有する特殊な注入可能なパッケージ材料と連携して使用される導管において供給されてもよい。反応溶液は、外科的使用の前の任意の時点で、デバイスのパッケージ内に注入されてもよい。水溶性または分散性であり得る反応溶液は、使用に備えてデバイスを飽和および膨張させることができる。後にさらに詳述する生物活性剤もまた、使用時に、反応溶液、または直接デバイスのパッケージ内のいずれかに添加されてもよい。そのような梱包の実施例は、米国特許公開第2007/0170080号に開示されるものを含み、その全開示は、参考として本明細書に援用される。
【0098】
同様に、第2のヒドロゲル前駆体も、これに限定されないが、噴霧、ブラッシング、浸漬、注入、積層等の当業者の知識の範囲内である任意の好適な方法を使用して、コーティングとして創傷閉鎖デバイスに適用されてもよい。実施形態において、第2のヒドロゲル前駆体は、任意の濃度、寸法、および構成で、創傷閉鎖デバイス上のコーティングとして適用されてもよい。コーティングは、非多孔質層または多孔質層を形成することができる。実施形態において、第2のヒドロゲル前駆体は、その少なくとも1つの表面上のコーティングとして、または他の実施形態において、その少なくとも1つの表面上に積層され得るフィルムとして、創傷閉鎖デバイスに適用されてもよい。
【0099】
第1または第2のヒドロゲル前駆体のうちのいずれかが非多孔質層(すなわち、フィルム)を形成する実施形態において、非多孔質層の厚さは、創傷閉鎖デバイスが創傷を密閉する前に、第1のヒドロゲル前駆体の一部のみが第2のヒドロゲル前駆体と反応することを可能にするのに十分であってもよい。そのような実施形態において、残りの未反応のヒドロゲル前駆体は、創傷と周辺組織との間のバリア層としての役割を果たし、癒着の形成を防止することができる。ヒドロゲル創傷閉鎖デバイスの形成において、前駆体はまた、生理学的液体に抗癒着性等の特定の特性を付与することができる。生理学的液体ヒドロゲルもまた、創傷と周辺組織との間のバリア層としての役割を果たし、癒着の形成を防止することができる。実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、ヒアルロン酸、PEG等の、癒着を減少または防止することで知られる非反応性材料をさらに含有することができる。そのような実施形態において、非反応性材料は、第1のヒドロゲル前駆体と第2のヒドロゲル前駆体とが相互作用した後で、癒着の形成を防止することができる。
【0100】
創傷に導入されると、体液は、前駆体および/または反応性成分の相互の反応ならびに/あるいは組織との反応を開始するために必要な水分を提供することができる。実施形態において、この反応はまた、液体の取り込みをもたらし、結果として、細長い本体、栓部材、またはその両方の体積膨張をもたらす。
【0101】
一旦、創傷閉鎖デバイスの成分が反応すると、治療される状態によって、デバイスの形状が変化してもよい。患者の形態および解剖学的構造の変動性のために、デバイスは任意の好適なサイズであってもよい。実施形態において、創傷閉鎖デバイスの細長い本体は約10mmから約150mmの長さを有してもよく、栓部材は約5mmから約36mmの幅を有してもよく、実施形態において、細長い本体は約30mmから約80mmの長さを有してもよく、栓部材は約10mmから約15mmの幅を有してもよく、他の実施形態において、細長い本体は少なくとも10mmからの長さを有してもよく、栓部材は少なくとも約5mmからの幅を有してもよい。特定の一実施形態において、細長い本体は、約39mmの幅および約50mmの長さを有してもよい。
【0102】
本開示による創傷閉鎖デバイスはまた、クリック反応性を有することで知られる、クリックケミストリーを介した反応が可能な、少なくとも1つの官能基を有するポリマーから調製されてもよい。クリックケミストリーとは、高度に選択的な、高収率の反応をもたらすことができる、高い化学的ポテンシャルエネルギーを有する一連の反応基を意味する。本開示のデバイスとともに使用されてもよいクリックケミストリーの実施例は、米国特許出願第12/368,415号に開示されるものを含み、その全開示は、参考として本明細書に援用される。
【0103】
反応基は、生理学的液体を含むほとんどの溶媒において、反応して非常に信頼性の高い分子接続を形成し、他の試薬および反応に緩衝しないことが多い。クリックケミストリー反応の実施例は、Huisgen環化付加、Diels−Alder反応、チオール−アルケン反応、およびマレイミド−チオール反応を含む。一旦、所望の形状に製造されると、創傷閉鎖デバイスは、その表面でクリック反応性を有することで知られる複数の官能基を有する。
【0104】
Huisgen環化付加は、ダイポーラロフィル(dipolarophile)と1,3−双極子(dipolar)化合物が反応して5員(ヘテロ)環となることである。ダイポーラロフィルの例は、アルケンおよびアルキンならびに関連するヘテロ原子官能基(カルボニルおよびニトリル等)を保有する分子である。1,3−双極子化合物は1つ以上のヘテロ原子を含有し、電荷を帯びた双極子を表す少なくとも1つのメソメリー構造を有すると説明することができる。それらは、ニトリルオキシド、アジド、およびジアゾアルカンを含む。金属触媒によるクリックケミストリーは、アルキル−アリール−スルホニルアジド、C−N三重結合、およびC−C三重結合の間のHuisgen 1,3−双極子環化付加反応の非常に効率的な変形例である。これらの反応の結果は、1,2オキサゾール、1,2,3トリアゾール、またはテトラゾールである。例えば、1,2,3トリアゾールは、銅触媒によるアルキンとアルキル/アリールアジドとの間のHuisgen反応によって形成される。周囲温度で進行する金属触媒によるHuisgen反応は、溶媒に感受性ではなく、官能基に対する耐性が高い。非金属性のHuisgen反応(歪みによって促進される環化付加とも称される)は、ともにアジドとの[3+2]双極子環化付加を促進する、環の歪みおよび電子求引性置換基(例えば、フッ素)を保有する置換シクロオクチンの使用を伴う。これらの反応は、金属触媒による反応と比較して毒性が低いため、本明細書における使用に適切である。例としては、ジフッ素化シクロオクチン(DIFO)および6,7−ジメトキシアザシクロオクト−4−イン(DIMAC)等のアザシクロオクチンが挙げられる。アルキンとアジドの反応は非常に特異的であり、生物組織の化学的環境に対して本質的に不活性である。
【0105】
Diels−Alder反応は、ジエン(2つの交互二重結合を有する分子)と求ジエン体(アルケン)とを組み合わせて、環および二環式化合物を作製する。
【0106】
チオール−アルケン(チオール−エン)反応は、ヒドロチオール化、すなわち、C=C結合を横切るRS−Hの付加である。チオール−エン反応は、フリーラジカル連鎖機構によって進行する。イニシエーションは、光反応開始剤またはチオール自体のUV励起によるラジカル形成によって起こる。チオール−エン系は、基底状態の電荷移動複合体を形成し、たとえ開始剤が存在しなくても、妥当な重合時間内に光重合する。しかしながら、UV光を加えることは、反応が進行する速度を増加させる。チオールまたはアルケンに結合する構成物のサイズおよび性質によって、必要に応じて光の波長を調節することが可能である。
【0107】
よって、ポリマーに適用されてもよい好適な反応部材は、例えば、アミン、硫酸、チオール、ヒドロキシル、アジド、アルキン、アルケン、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン基、ビニルスルホン基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシド基、アジリジン基、エピスルフィド基、ならびに−CO2N(COCH2)2、−CO2N(COCH2)2、−CO2H、−CHO、−CHOCH2、−N=C=O、−SO2CH=CH2、−N(COCH)2、および−S−S−(C5H4)N等の基を含む。
【0108】
ポリマーは、任意の種々の好適な化学的プロセスを用いたクリック反応基を提供されてもよい。例えば、コアが作製されるモノマーは、コアの長さ方向に沿って反応基が現れるように官能化することができる。そのような実施形態において、モノマーは、最初にハロゲン等の基で官能化して、重合の後で、所望の第1のクリック反応基が結合し得る反応部位を提供することができる。よって、例えば、環状ラクトン(例えば、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン等)は、ハロゲン化されてから、その後で、開環重合のための既知の技術を用いて重合されてもよい。一旦重合されると、得られたポリエステル鎖に沿ってハロゲン化された部位を、第1の反応基で官能化することができる。例えば、ハロゲン化されたポリエステルは、アジ化ナトリウムと反応させてポリマー鎖に沿ってアジド基を提供することができるか、または、プロパルギルアルコールと反応させてポリマー鎖に沿ってアルキン基を提供することができる。別の実施例において、プロパルギル基を、環状カーボネートのモノマーに導入して、5−メチル−5−プロパルギルオキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン(MPC)を形成することができ、これはラクチドと重合可能であり、p(LA−コ−MPC)を形成する。代替として、ポリマーまたはコポリマーの骨格がハロゲン化されてもよい。一旦ハロゲン化されると、ヒドロキシ酸と反応させ、次いでアジ化ナトリウムと反応させることにより、クリック反応性官能基で骨格が官能化されてもよい。ハロゲンはまた、プロパルギルアルコール等のアルコール性のアルキンと反応させることにより、直接アルキンに変換されてもよい。
【0109】
本開示を読む当業者は、本開示の創傷閉鎖デバイスにおける前駆体としての使用に好適となるように、他の材料を活性化するための化学反応を容易に想定するであろう。
【0110】
実施形態において、創傷閉鎖デバイスの一部またはその上のコーティングを形成するために使用される反応基を保有するポリマーは、溶液中に存在してもよい。そのような溶液の形成における使用のための好適な溶媒は、これに限定されないが、生理食塩水、水、アルコール、アセトン、およびそれらの組み合わせを含む。
【0111】
そのような溶液を形成するための方法は当業者の知識の範囲内であり、これに限定されないが、混合、融合、超音波処理、加熱、それらの組み合わせ等を含む。
【0112】
代替として、本開示の組成物は、細孔内へのウィッキングまたは毛管作用等の機械的相互作用により、移植物に固定化されてもよい。例えば、グラフトまたはメッシュ等の織られたまたは編まれた移植物では、本開示の組成物を含む溶液は、細孔内または繊維間に物理的に捕捉されてもよい。移植物は、特定の温度および湿度レベルでさらに乾燥させてもよく、残留する溶媒を除去し、反応性コーティングを残して反応性移植物を作製する。
【0113】
反応基を保有するポリマーが創傷閉鎖デバイスの構成要素に適用され、デバイスを組織に接着するために使用される実施形態において、反応基を保有するポリマーは、当業者の知識の範囲内である任意の方法を使用してデバイスに適用することができる。例えば、移植物は、生体組織に化学的に結合することができる少なくとも1つの遊離反応基を有する組成物と組み合わせてもよい。生体組織との化学結合は、デバイスを組織に固定させ、デバイスを装着するためのステープル、鋲、縫合糸等の他の機械的または物理的な装着デバイスを使用する必要性を減少させる。反応性組成物が組織に結合するための時間は、約3秒から約20分と異なってもよく、実施形態において、約10秒から約5分である。時間は、反応性組成物の濃度、添加剤の使用等によって異なり得る。
【0114】
他の実施形態において、組成物は、それ自体と架橋することができる。例えば、創傷閉鎖デバイスの一部またはその上の任意のコーティングを形成するために使用されるポリマー上の反応基は、デバイスの周囲で自己反応することができ、デバイスの周囲およびデバイスの至るところに複雑なネットワークを形成し、それにより、組織と反応させるための遊離反応基を維持しながら、デバイスに化学的に結合することなく、デバイスまたはその一部を包含する。
【0115】
いくつかの実施形態において、組成物中の第1の反応基は、デバイスに化学的に結合するために使用することができ、組成物中の第2の反応基は、デバイスを組織に化学的に結合させるために使用することができる。よって、組成物は、2つより多くの反応基を有する。1つより多くの反応基が組織と反応するために遊離していてもよく、実施形態において、約1個の反応基から約8個の反応基が組織と反応するために遊離していてもよい。例えば、反応性組成物は、1級アミノ基、2級アミノ基、ヒドロキシル基、それらの組み合わせ等の、組織中の官能基と反応することができる。実施形態において、反応基は組織中のコラーゲンと架橋することができ、それにより、移植物を所定の位置に固定する。別の実施例において、反応性成分はタンパク質の移植物に反応性であってもよい。反応基とデバイスとの間の化学反応は、組成物をデバイスに結合させることができる一方で、インサイチュでの組織表面との将来的な化学反応のために、いくつかの反応基を未反応のままの状態にする。
【0116】
反応性組成物は、患者の体内に留置される前にデバイスに固定化されても、または代替として、インサイチュでデバイスと接触させてもよく、それによりデバイスを組織に固定する。デバイスは、メッシュ等の市販の移植物として供給されても、または、使用の前に組み立てられてもよい。上述したように、実施形態において、基質自体が反応性前駆体で作製されてもよい。他の実施形態において、反応性前駆体は、移植物上のコーティングを形成することができる。表面領域全体または表面のほんの一部が、その上に組織と反応するための反応性コーティングを有することができる。上述したように、反応性コーティングは溶液として適用されてもよい。デバイスは溶液とともに梱包されても、または組織への適用の前に溶液がデバイスに適用されてもよい。実施形態において、溶液はデバイス上に噴霧、コーティング、浸漬、溶媒蒸発、または塗布されてもよい。
【0117】
代替として、細長い本体または栓部材の組織への接着はまた、例えば、マイクロテクスチャ(やもりの足状)または逆刺を含む機械的手段によって提供されてもよい。ある実施形態において、編地またはメッシュは、メッシュに対して垂直に突出し、貫通してデバイスを締結させる、逆立った毛羽を含んでもよい。そのような布地および織物の例は、米国特許第7,331,199号に開示されるものを含み、その全開示は、参考によって本明細書に援用される。
【0118】
次に図面を参照すると、本開示の創傷閉鎖デバイスの実施形態が提供される。その後の説明において、本明細書で使用される場合の「近位の」という用語は、ユーザにより近いデバイスの部分を意味し、「遠位の」という用語は、ユーザからより遠く離れたデバイスの部分を意味する。本明細書で定義される「組織」という用語は、種々の皮膚層、筋肉、腱、靭帯、神経、脂肪、筋膜、骨、および異なる器官を意味する。
【0119】
次に図1を参照すると、本開示による創傷閉鎖デバイス10の実施形態が示される。創傷閉鎖デバイス10は、栓部材14に連結された細長い本体12を含む。細長い本体12は、栓部材14の組織対向面16に対して実質的に垂直である。いくつかの実施形態において、細長い本体12は栓部材14と一体であってもよく、他の実施形態において、細長い本体12は、栓部材14に装着されてもよく、そうでなければ接続されてもよい。
【0120】
細長い本体またはステム12は、組織「t」の穿孔を充填もしくは密閉するように、かつ/または、穿孔組織を一緒に結合するように適合される。したがって、細長い本体12は、創傷に嵌入するいずれの形状であってもよい。現在の実施形態において例示されるように、細長い本体12は円筒形状であり、断面形状は楕円形であるが、形状および断面形状は、長方形、平坦、または当業者の知識の範囲内であって、本明細書で後に開示される実施形態に示されるような、その他の形状であってもよい。例えば、図2に例示されるように、組織「t」の厚さによって細長い本体22の長さを伸縮できるように、創傷閉鎖デバイス20はアコーディオン形状である。よって、図1を再度参照すると、細長い本体12は、実質的に密閉されるべき組織のおよその長さもしくは深さである所定の長さであっても、または、細長い本体12は、患者の壁の厚さに可変性を許容するように長めに作製されてもよい。例えば、細長い本体12の余分な長さは、図1において破線「a」で示されるように、組織「t」の表面「s」で切り取られてもよい。
【0121】
栓部材または基部14は、組織「t」の内壁「w」で組織の穿孔を密閉することにより、創傷に閉鎖を提供するように適合される。栓部材14は、細長い本体12の遠位端13に連結された組織対向面16を有する。栓部材14は、当業者によって想定されるように、特にきのこ状等の、組織「t」の内壁「w」に当接するための実質的に平坦である組織対向面を有する任意の形状であってもよい。組織対向面16は、穿孔組織「t」を取り囲む内壁「w」に接着するためにそこに装着される細長い本体12の直径「ds」よりも大きい直径「db」を画定する。
【0122】
実施形態において、創傷閉鎖デバイス10は、ヒドロゲルであってもよいか、または少なくともその一部にヒドロゲルを含んでもよい。例えば、ヒドロゲルは、組織に所望の接着および組織増殖を提供するように、スクシンイミジルエステル反応性PEG(求電子性)と架橋した血清タンパク質(求核性)から構成されてもよい。
【0123】
アミン含有組織と反応すると、反応性デバイスは、有用な時間範囲内で組織に固着するはずである。代替の実施形態において、反応基は、組織との反応を遅らせる補助として、化学的に「遮蔽」または「阻害」されていてもよいか、または、反応基は、単純に緩やかな反応動態を有してもよい。
【0124】
本開示の組成物の反応性成分が移植物を組織に結合させるために必要な時間は、約3秒から約20分まで変わってもよく、実施形態において、約10秒から約5分である。
【0125】
図3Aおよび3Bに例示されるように、創傷閉鎖デバイスの少なくとも一部は、ポリマー発泡体を含んでもよい。組織に留置する前にポリマー(ヒドロゲル等)を乾燥させて、発泡体を作製することは、組織内へのデバイスの挿入を容易にすることができ、かつ/または、組織内のデバイスのサイズおよび適合度の制御を提供することができる。発泡体は、凍結乾燥、微粒子の浸出、圧縮成形および当業者の知識の範囲内である他の技術の使用により作製されてもよい。種々の技術が、異なるサイズおよび分布の細孔をもたらすことができる。さまざまな細孔のサイズおよび分布は、水および他の水性液体が、より迅速に発泡体内に侵入できるようにし得る。発泡体は、連続気泡発泡体または不連続気泡発泡体であってもよい。また、組織内に移植されると遭遇するような生理的環境において、発泡体が再水和する速度に影響を及ぼす可能性もある。例えば、発泡体の形成中に発泡剤を組み込むことは、水が発泡体構造内に拡散するために利用可能な表面積が増大されるため、より迅速な再水和につながる。発泡体の水和は、移動を防止して組織を一緒に保持するために、デバイスが所定の位置に固定されることを可能にする。
【0126】
図3Aは、予め水和させた発泡体である細長い本体32を有する創傷閉鎖デバイス30を例示する図である。組織「t」の穿孔「p」内に創傷閉鎖デバイス30を留置すると、細長い本体32を生理食塩水等の流体で灌注させることにより、および/または、生理的環境における体液との接触により、細長い本体32は迅速に再水和することができる。図3Bに例示するように、細長い本体32は膨張して、組織「t」の穿孔「p」を充填する。いくつかの実施形態において、発泡体は、湿潤な組織環境に留置されてから数秒以内に迅速に再水和することができるか、または、数時間にわたって緩やかな速度で再水和することができる。水和プロセスの間、発泡体の容量は、例えば1次元、2次元、または3次元に拡大して、その元のサイズの数倍にまでなり得るため、創傷閉鎖デバイスを組織内に埋め込み、組織を通って漏出する流体を封止する。
【0127】
他の実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、実質的に脱水されたヒドロゲルを含んでもよく、この脱水されたヒドロゲルは、実施形態において発泡体を含み得る。本開示のデバイスのヒドロゲル構成要素は、その元の体積の約5%から約100%、実施形態において、その元の体積の約20%から約80%の量で膨張および/または拡張することができる。実施形態において、ヒドロゲルの膨張は、少なくとも1つの組織面を実質的に密閉することができる。
【0128】
実施形態において、創傷閉鎖デバイスは、体積膨張を可能にし、デバイスの水和を促進するために、その一部を通る開口部またはチャネルを有することができる。図4に例示されるように、開口部47は、細長い本体42内に長手方向に配置され、近位端41から遠位端43まで延在する。開口部47は、細長い本体42の部分および栓部材44の部分に水分を到達させる。
【0129】
次に図5を参照すると、創傷閉鎖デバイス50は、創傷の治癒を促進するために、ヒドロゲルをメッシュ等の織物と組み合わせることができる。実施形態において、メッシュ59は、組織の接着および内殖を補助するように、栓部材54の組織対向面56上に配置されてもよい。例えば、メッシュ59は、上述したような血清を用いたヒドロゲル等のヒドロゲルで封入またはコーティングされて、生分解性ポリマーである栓部材54上に留置されてもよいか、または、メッシュ59は、図5に例示されるように、ヒドロゲル栓部材54の少なくとも1つの表面上に配置されてもよい。さらに、メッシュ59は、組織の接着においてヒドロゲルを補助するように、逆立った毛羽または逆刺等の自己粘着性であってもよい。いくつかの実施形態において、自己粘着性メッシュは、ヒドロゲルまたは後に記載する他の接着性構成要素なしで使用されてもよい。
【0130】
細長い本体52はまた、ヒドロゲルから形成されてもよいか、または続いてヒドロゲルでコーティングされるポリマーから構成されてもよい。メッシュもまた、さらなる組織の接着および内殖を提供するために、細長い本体52と組み合わされてもよいことが企図される。細長い本体52は、穿孔組織を一緒に保持するための種々の形態で提供されてもよい。例えば、図6に例示されるように、創傷閉鎖デバイスの細長い本体は、栓部材64から延在して、組織を一緒に保持するために穿孔組織を貫通させてもよい縫合糸62を含むことができる。実施形態において、縫合糸は、組織の接着を補助するために、少なくとも1つの反応基を保有するポリマーでコーティングされてもよい。いくつかの実施形態において、縫合糸は、通常、縫合糸本体から外側に延在して組織の保持を補助する逆刺付きであってもよいか、または逆刺様突起を有してもよい。
【0131】
図7および8は、それぞれ、ヒドロゲルから形成される細長い本体72、82およびメッシュから製造される栓部材74、84を含む、創傷閉鎖デバイス70および80を例示する図である。栓部材74、84は、本明細書に記載されるように、織物および布地の材料のうちのいずれかであってもよく、また本明細書に記載されるように、官能性前駆体(複数可)のうちのいずれかを含むコーティング組成物を含んでもよい。図8に例示されるように、細長い本体82は、表面積の増大および組織統合のために溝付きの外部を含んでもよい。
【0132】
次に図9を参照すると、創傷閉鎖デバイス90の栓部材94は、積層等の1つより多くの層を含むように構成されてもよい。栓部材94の組織対向面96は、上述したように、反応基を有するポリマーまたはメッシュ等の接着性を有する材料から製造されてもよく、栓部材94の遠位面95は、デバイスが内臓に癒着するのを防止するために、ヒアルロン酸またはPEGのコーティング等の抗癒着性を有する材料を含んでもよい。実施形態において、栓部材94は、栓部材94と組織の接着を達成させるために、組織対向面96上に多孔質層を有し、栓部材94が穿孔組織を取り囲む他の組織または器官に癒着するのを防止するために、遠位面95上に非多孔質層を有する、PARIETEXTM複合メッシュ等の複合材料から製造されてもよい。他の実施形態において、生分解性コラーゲンフィルム(図示せず)等の第2の層を栓部材94の遠位面に結合させるために、組織対向面は、生分解性リンカーおよび反応性末端基で修飾されたメッシュを含んでもよい。コラーゲンフィルムを含む遠位面は、癒着を防止するために非多孔質であってもよい。代替として、コラーゲンフィルムを含む遠位面は、内臓に接着してもよく、コラーゲンフィルムをメッシュに結合しているリンカーは短期間で分解することができるため、2つの層を分離して接着を防止する。実施形態において、メッシュおよびコラーゲンフィルムの両方が、長期間にわたって分解するように設計されてもよい。
【0133】
複合メッシュを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内である。接着剤、複数層上の反応基の架橋、加熱成形、共有押し出し、溶媒キャスティング、溶融加圧、それらの組み合わせ等を使用して、複数の層が接着されてもよい。
【0134】
図10は、組織対向面106上のメッシュおよび抗癒着性の遠位面105を含む複合栓部材104を含む、創傷閉鎖デバイス100の実施形態を例示する図である。細長い本体102は、単独で使用されてもよいか、または、本明細書に記載されるように、反応基を有するコーティングと組み合わせて使用されてもよいメッシュを含む。いくつかの実施形態において、創傷閉鎖デバイス110および/または120は、図11および12に例示されるように、メッシュ単独で、または、反応性ポリマーと組み合わせたメッシュのいずれかからのみ形成されてもよい。図11および12に表されるように、創傷閉鎖デバイス110および120は、すべてメッシュで形成された組織対向面116および126ならびに細長い本体112および122を有する、栓部材114および124を、それぞれ含むことができる。
【0135】
図13Aから13Dは、枢動可能に接続された細長い本体132および栓部材134を含む創傷閉鎖デバイス130を例示する図であるが、本明細書に記載される他の実施形態もまた、枢動可能に接続されてもよいことを理解されたい。図13Aおよび13Bは、第1の折り畳み位置または折り曲げ位置にある創傷閉鎖デバイス130を例示する図であり、図13Cから13Dは、第2の展開位置にある創傷閉鎖デバイス130を例示する図である。創傷閉鎖デバイス130の細長い本体132および栓部材134は、蝶番接続部131を介して連結される。細長い本体132の遠位端133は、栓部材134が、折り曲げ位置から展開位置まで細長い本体132に対して枢動できるように、栓部材134の組織対向面136に蝶番で接続される。特定の実施形態において、細長い本体132および栓部材134は、当業者から予想されるように、種々の生分解性締結具のいずれかと蝶番で連結されてもよい。締結具は、上記生分解性ポリマーのいずれかから形成されてもよく、折り曲げ位置から展開位置まで枢動する応力に耐える高い強度を有し、移植されたときに創傷閉鎖デバイスの完全性を維持するように、適合および構成されてもよい。締結具は、時間の経過とともに新しい組織が締結具に取って替わるように、徐々に分解することができる。代替として、蝶番131は、細長い本体132と栓部材134の交差点に形成される、薄い可塑性ポリマーウェブ等のリビングヒンジであってもよい。他の実施形態において、蝶番は、栓部材と細長い本体を一緒に溶接することによって形成されてもよい。
【0136】
細長い本体132および栓部材134は、組織内における位置付けおよび留置のために、図13Aに表されるような折り曲げ位置(挿入のため)から図13Cに表されるような展開された状態に変形することができる。実施形態において、栓部材134が細長い本体132に対して長手方向に整列されるように、栓部材134は、通常、折り曲げ位置に付勢されていてもよい。結果として、創傷閉鎖デバイス130が組織内に留置され、図13Cに表される矢印「p」の方向に引かれると、栓部材134は、細長い本体132から離れて枢動し、細長い本体132に対して実質的に垂直となり、栓部材134は、創傷閉鎖デバイス130が組織から引き抜かれないように、効果的にフランジとしての役割を果たす。代替として、創傷閉鎖デバイスは、後に記載する挿入デバイスの使用を介して留置されてもよい。
【0137】
図13Aに例示されるように、折り畳み位置または折り曲げ位置において、組織内への挿入のために細い形状が優先的に使用される。さらに、図13Bに示すように、栓部材134は、挿入のために非外傷性の先端を提供するために、丸みを帯びた縁を含む。図13Cおよび13Dに例示するように、展開された状態では、栓部材134の幅「w」は切開の大きさに基づいてもよく、細長い本体132の長さ「l」は、組織内に挿入した後で切断されるように、必要とされる長さよりも長い長さ等の任意の長さで作製されてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、細長い本体132は、創傷の周囲の組織がそこに化学的に結合することを促進し、細胞の成長および組織の増殖を促進する材料から製造されてもよい。さらに、栓部材134の組織対向面136は、組織の統合を促進するための他のポリマー材料を含んでもよい。栓部材134の遠位面135は、組織の癒着を防止するための抗癒着性コーティングを含んでもよい。
【0139】
創傷内への挿入のために枢動可能に接続された創傷閉鎖デバイスの別の実施形態を、図14Aから14Cに示す。創傷閉鎖デバイス140は、細長い本体142と、実質的に同一形状である一対のセクション144aおよび144bから形成される栓部材144とを含む。細長い本体142と、栓部材144のセクション144aおよび144bとは、1つ以上の蝶番141を介して連結される。栓部材144のセクション144aおよび144bは、共通の枢軸上で移動するように蝶番141に枢動可能に取り付けられる。
【0140】
成形されたセクション144aおよび144bは、通常、3角形の形状で例示されるが、長方形等の他の形状が想定される。成形されたセクション144a、144bの各々は、それぞれ当接面143aおよび143bを含む(図14B)。挿入のために、当接面143a、143bは、細長い本体142と通常平行に配置される。一旦挿入および留置されると、セクション144aおよび144bを細長い本体142に対して通常垂直に配置するために、当接面が近付けられる。当接面143a、143bは、成形されたセクションが細長い本体142に対していかに傾斜しているかについての制御を提供する。例えば、当接面が細長い本体に対して90°を超えてまたは90°未満で(図14Bでは通常垂直であるのに対して)傾斜している場合、成形されたセクション144aおよび144bも同様に、細長い本体に対して90°を超えてまたは90°未満で配置されるであろう。
【0141】
組織内に留置する前に、栓部材のセクション144aおよび144bは、図14Bにおいて表される矢印「b」の方向に折り曲げられてもよい。創傷閉鎖デバイス140が組織内に留置され、図14Cにおいて表される矢印「p」の方向に引かれると、栓部材144のセクション144aおよび144bは、細長い本体142から離れて枢動し(破線で表示)、細長い本体142に対して実質的に垂直となり、栓部材144は、創傷閉鎖デバイス140が組織から引き抜かれないように、効果的にフランジとしての役割を果たす。例示されるように、セクション144aおよび144bは、不注意による組織からの創傷閉鎖デバイス140の除去を防止するために、栓部材144が細長い部材142から約90°を超えて展開しないよう、3角形の形状である。栓部材144のセクション144aおよび144bは、実質的に同様の形状である必要はないことが想定される。
【0142】
実施形態において、細長い本体142は、吸収性のメッシュ層を有する予め形成されたヒドロゲルであってもよい。実施形態において、予め形成されたヒドロゲルは、コラーゲン、ゼラチン、または多糖様アミノ化デキストランもしくはヒアルロン酸等の他のアミノ化生分解性ポリマー等の、8アームを有する15kDaのPEGの第1の前駆体および第2の前駆体から形成されてもよい。実施形態において、栓部材144は、その遠位端145上の抗癒着性コーティング、および組織対向面146に装着された分解性または非分解性のメッシュを有しても有さなくてもよい、予め形成されたヒドロゲルであってもよい
予め形成されたヒドロゲルは、デバイスがインサイチュで形成するのを待つ時間が存在しないため、創傷閉鎖デバイスの迅速な挿入および送達を可能にする。さらに、予め形成された構成要素は、標的の創傷以外の組織と構成要素が反応する可能性を回避し、体腔または皮膚表面等の他の場所に材料が流出するのを回避する。予め形成されたヒドロゲルを作製するための方法は、所望の形状の型の中に、第1の前駆体および第2の前駆体を同時に噴霧することを含む。
【0143】
実施形態において、細長い本体および/または栓部材は、メッシュに包埋されるか、またはその上にメッシュが装着される、未反応のヒドロゲルを含んでもよく、それは、組織内で可溶化および反応させることができるため、メッシュ構造内でゲル化して、そこに組織を結合させる。これにより、メッシュは、組織の内壁と結合することが可能となり、他の成分が創傷内に侵入するのを防止する。
【0144】
代替として、メッシュを含む創傷閉鎖デバイスが最初に創傷内に挿入されてもよく、続いてヒドロゲルが、空隙を充填してメッシュを包み込むために静的ミキサーを用いて創傷内に注入されてもよい。実施形態において、栓部材は、予め形成されたヒドロゲルを含んでもよく、ヒドロゲルが創傷内に注入されて組織およびメッシュを所定の位置に維持できるように、細長い本体は未反応であってもよい。
【0145】
次に、図15Aから15Bを参照すると、細長い本体と、一対の成形されたセクションを含む栓部材とを含む創傷閉鎖デバイスの別の実施形態が示される。図15Aは、細長い本体152と、実質的に同一形状である一対のセクション154aおよび154bから形成される栓部材154とを有する、展開位置にある創傷閉鎖デバイス150を例示する図である。栓部材154のセクション154aおよび154bは、図15Bに例示されるように、独立した蝶番151aおよび151bに枢動可能に取り付けられる。セクション154aおよび154bは、細長い本体152から離れて、図15Aの展開位置(破線)まで枢動するように示されている。細長い本体152は、栓部材154のセクション154aおよび154bが、約90°である角度αを超えて拡張し過ぎないように、遠位端153に停止部材152aを含む。
【0146】
本開示の創傷閉鎖デバイスは、カニューレまたは患者の腔内の組織壁を通って延在するスリーブを有する、他のポータルアクセスデバイスの経路内に挿入されてもよい。創傷閉鎖デバイスは、栓部材がスリーブを出て腔内に達するまで、スリーブの経路を通って移動させられる。栓部材は、組織対向面が創傷に当接し、スリーブが除去され、穿孔組織内に細長い本体が配置されるように、留置されてもよい。したがって、創傷閉鎖デバイスは、アクセスデバイス内に留置されるのに十分に柔軟でなければならないが、組織を支持して創傷を密閉するのに十分に弾力性でなければならない。代替として、創傷閉鎖デバイスは、デバイスの挿入および留置の容易さのための機械的手段を含んでもよい。
【0147】
実施形態において、本開示の創傷閉鎖デバイスを組織に固定する追加の方法が使用されてもよい。例えば、包帯、フィルム、ガーゼ、テープ、フェルト、それらの組み合わせ等がそれと組み合わされてもよいか、または本開示の創傷閉鎖デバイスおよびデバイスを取り囲む組織の上に適用されてもよい。同様に、追加の接着剤がそこに適用されてもよく、創傷閉鎖デバイスを組織、それらの組み合わせ等に取り付けるために縫合糸が使用されてもよい。
【0148】
特定の生物学的特性または治療的特性を提供するよう、生物活性剤が創傷閉鎖デバイスに追加されてもよい。組織の修復を促進する、敗血症の危険性を制限する、および創傷閉鎖デバイスの機械的特性を調節することが可能な任意の生成物が、デバイスの準備中に加えられてもよいか、または、デバイス上にコーティングされてもよいか、または、そこに装着されたメッシュの細孔内に入れられてもよい。
【0149】
さらに、創傷閉鎖デバイスはまた、1つ以上の生物活性剤を送達するために使用されてもよい。生物活性剤は、遊離懸濁、リポソーム送達、ミクロスフェア等によって、または、ポリマーコーティング、ドライコーティング、凍結乾燥、メッシュ表面への塗布、創傷閉鎖デバイスの分解性構成要素を官能化するためのイオン性結合、共有結合、もしくは親和結合等で、創傷閉鎖デバイスもしくはその一部の表面をコーティングすることによって、デバイスの形成中に創傷閉鎖デバイスに組み込まれてもよい。よって、いくつかの実施形態において、創傷閉鎖デバイスの分解中に生物活性剤の放出を提供するために、少なくとも1つの生物活性剤が、形成中に創傷閉鎖デバイスの構成要素(すなわち、細長い本体および/または栓部材)と組み合わせられてもよい。創傷閉鎖デバイスがインサイチュで分解または加水分解するにつれて、生物活性剤が放出される。他の実施形態において、生物活性剤の迅速な放出のために、生物活性剤は、創傷閉鎖デバイスの細長い本体または栓部材の表面もしくは表面の一部にコーティングされてもよい。
【0150】
本明細書で使用される生物活性剤は最も広義で使用され、臨床的使用を有する任意の物質または物質の混合物を含む。そのため、生物活性剤は、それ自体が例えば色素等、薬理活性を有してもまたは有さなくてもよい。代替として、生物活性剤は、治療効果または予防効果を提供する任意の薬剤;組織成長、細胞成長、および/もしくは細胞分化に影響を与えるかまたは関与する化合物;抗癒着性化合物;免疫応答等の生物学的作用を引き起こすことが可能であり得る化合物であってよく、あるいは、1つ以上の生物学的プロセスにおいて任意の他の役割を果たすことができる。種々の生物活性剤がメッシュ内に組み込まれてもよい。
【0151】
本開示による、使用されてもよい生物活性剤のクラスの例は、例えば、抗癒着剤、抗菌剤、鎮痛剤、解熱剤、麻酔薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、心血管作動薬、診断薬、交感神経模倣薬、コリン作用薬、抗ムスカリン様作用薬、鎮痙剤、ホルモン、成長因子、増殖因子、筋肉弛緩剤、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗新生物薬、免疫原性剤、免疫抑制剤、胃腸薬、利尿剤、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化剤、凝固因子および酵素を含む。また、生物活性剤の組み合わせが使用されてもよいことも意図される。
【0152】
生物活性剤として含まれてもよい他の生物活性剤は、局所麻酔薬、非ステロイド性避妊薬、副交感神経刺激薬、精神治療薬、精神安定剤、充血除去剤、催眠鎮静薬、ステロイド、スルホンアミド、交感神経様作用薬、ワクチン、ビタミン、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、L−ドパ等の抗パーキンソン病薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬(例えば、オキシブチニン)、鎮咳薬、気管支拡張薬、心血管治療薬(冠拡張薬およびニトログリセリン等)、アルカロイド、鎮痛薬、麻薬(コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネ等)、非麻薬(サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェン等)、ナルトレキソンおよびナロキソン等のオピオイド受容体拮抗薬、抗癌剤、抗けいれん薬、制吐薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬(ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾン等)、プロスタグランジンおよび細胞毒性薬、化学療法薬、エストロゲン、抗菌剤、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗凝固剤、抗けいれん薬、抗鬱薬、抗ヒスタミン薬、ならびに免疫薬を含む。
【0153】
創傷閉鎖デバイスに含まれてもよい好適な生物活性剤の他の例は、例えば、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質(ならびにその類似体、突然変異タンパク質およびその活性フラグメント)、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質(フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成のフィブリノゲン等)、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CG等)、ホルモンおよびホルモン類似体(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原、およびウイルス抗原)、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子(例えば、神経成長因子、インスリン様成長因子)、骨形成タンパク質、TGF−B、タンパク質阻害剤、タンパク質拮抗薬、タンパク質作用薬、核酸(アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi等)、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびリボザイムを含む。
【0154】
実施形態において、前駆体および/または前駆体から形成されるヒドロゲル等の、創傷閉鎖デバイスを形成するポリマーは、外科手技の間にそれらの可視性を向上するための可視化剤を含有してもよい。可視化剤は、移植可能な医療用デバイスにおける使用に好適な、色素等の種々の非毒性の着色物質から選択されてもよい。好適な色素は、当業者の知識の範囲内であり、例えば、米国特許第7,009,034号に記載されるように、例えば、インサイチュで形成されるので、ヒドロゲルの厚さを可視化するための色素を含んでもよい。いくつかの実施形態において、好適な色素は、例えば、FD&Cブルー#1、FD&Cブルー#2、FD&Cブルー#3、FD&Cブルー#6、D&Cグリーン#6、メチレンブルー、インドシアニングリーン、他の着色色素、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。蛍光化合物(例えば、フルオレセインまたはエオシン)、X線造影剤(例えば、ヨウ素化化合物)、超音波造影剤、およびMRI造影剤(例えば、ガドリニウム含有化合物)等の追加の可視化剤が使用されてもよいことが想定される。
【0155】
可視化剤は、任意の前駆体成分の溶液中に存在してもよい。着色された物質は、得られたヒドロゲルに組み込まれても、組み込まれなくてもよい。しかしながら、実施形態において、可視化剤は、前駆体(複数可)と反応することができる官能基を有しない。
【0156】
実施形態において、生物活性剤は、創傷閉鎖デバイスを形成するために使用されるポリマーを用いて封入されてもよい。例えば、ポリマーは、生物活性剤の周囲にミクロスフェアを形成することができる
好適な生物活性剤は、製造プロセスの前または最中のいずれかに、創傷栓と組み合わせてもよい。生物活性剤は、ポリマーと混合するかまたは組み合わせて、生物活性特性を有する栓をもたらすことができる。他の実施形態において、生物活性剤は、栓が成形された後に、例えば、コーティングの形態で、本開示と組み合わせてもよい。生物活性剤は、フィルム、粉末、液体、ゲル等の、任意の好適な形態で本開示に適用されてもよいことが想定される。
【0157】
細長い本体および栓部材の種々の組み合わせが、本開示による創傷閉鎖デバイスを製造するために使用されてもよいことを理解されたい。例えば、治療される創傷の種類および創傷閉鎖デバイスから所望される特性によって、上で説明した実施形態の細長い本体のいずれかが、同様に上で説明した栓部材のいずれかと組み合わされてもよい。
【0158】
本開示のいくつかの実施形態を記載してきたが、本開示がそれらに限定されることを意図するものではなく、本開示は当該技術分野で許容される限り広い範囲であり、本明細書も同様に解釈されることが意図される。したがって、上記は限定的であると解釈されるべきではなく、本開示の実施形態の例証に過ぎないと解釈されるべきである。当業者には、創傷閉鎖デバイスならびに創傷閉鎖デバイスの細長い本体および栓部材を形成して、構成要素を一緒に取り付ける方法の種々の改変および変更が、前述の詳細な説明から明らかであろう。そのような改変および変更は、ここに添付する特許請求の範囲および主旨の範囲内であることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷閉鎖デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い本体と、
該細長い本体の該遠位端に枢動可能に接続された組織対向面、および該組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含み、
該組織対向面は、求電子性成分を含み、そして該組織対向面と反対側の該第2の表面は、求核性成分を含む、創傷閉鎖デバイス。
【請求項2】
前記栓部材の組織対向面の少なくとも一部上に多孔質基質をさらに含み、該多孔質基質は、第一の組織対向面および、該栓部材に隣接する該第一の組織対向面の反対側の表面を有する、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項3】
前記多孔質基質は、メッシュを含む、請求項2に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項4】
前記多孔質基質は、ヒドロゲルを含む、請求項2に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項5】
前記求核性成分は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項6】
前記求電子性成分は、ポリエチレングリコールエステルを含む、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項7】
前記求電子性成分は、求電子性基としてN−ヒドロキシスクシンイミドを含む、請求項6に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項8】
前記求核性成分は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、請求項7に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項9】
前記求電子性成分は、粒子を含む、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項10】
前記求核性成分は、粒子を含む、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項11】
前記細長い本体は、多孔質基質を含む、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項12】
創傷閉鎖デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い本体と、
組織対向面および該組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含み、
該組織対向面は、該細長い本体の遠位端に枢動可能に接続し、該栓部材は、多孔質基質を含み、該多孔質基質は、該多孔質基質の組織対向面に適用された第1のヒドロゲル前駆体、および該組織対向面と反対側の第2の面に適用された第2のヒドロゲル前駆体を含み、該基質の組織対向面は、該組織対向面と反対側の該第2の表面から空間的に分離されている、創傷閉鎖デバイス。
【請求項13】
前記多孔質基質は、メッシュを含む、請求項12に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項14】
前記多孔質基質は、ヒドロゲルを含む、請求項12に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項15】
前記第2のヒドロゲル前駆体は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、請求項12に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項16】
前記第1のヒドロゲル前駆体は、ポリエチレングリコールエステルを含む、請求項12に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項17】
前記第1のヒドロゲル前駆体は、求電子性基としてN−ヒドロキシスクシンイミドを含む、請求項16に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項18】
前記第2のヒドロゲル前駆体は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、請求項17に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項19】
前記第1のヒドロゲル前駆体は、粒子を含む、請求項17に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項20】
前記第2のヒドロゲル前駆体は、粒子を含む、請求項17に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項21】
前記細長い本体は、多孔質基質を含む、請求項17に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項1】
創傷閉鎖デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い本体と、
該細長い本体の該遠位端に枢動可能に接続された組織対向面、および該組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含み、
該組織対向面は、求電子性成分を含み、そして該組織対向面と反対側の該第2の表面は、求核性成分を含む、創傷閉鎖デバイス。
【請求項2】
前記栓部材の組織対向面の少なくとも一部上に多孔質基質をさらに含み、該多孔質基質は、第一の組織対向面および、該栓部材に隣接する該第一の組織対向面の反対側の表面を有する、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項3】
前記多孔質基質は、メッシュを含む、請求項2に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項4】
前記多孔質基質は、ヒドロゲルを含む、請求項2に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項5】
前記求核性成分は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項6】
前記求電子性成分は、ポリエチレングリコールエステルを含む、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項7】
前記求電子性成分は、求電子性基としてN−ヒドロキシスクシンイミドを含む、請求項6に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項8】
前記求核性成分は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、請求項7に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項9】
前記求電子性成分は、粒子を含む、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項10】
前記求核性成分は、粒子を含む、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項11】
前記細長い本体は、多孔質基質を含む、請求項1に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項12】
創傷閉鎖デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い本体と、
組織対向面および該組織対向面と反対側の第2の表面を有する栓部材とを含み、
該組織対向面は、該細長い本体の遠位端に枢動可能に接続し、該栓部材は、多孔質基質を含み、該多孔質基質は、該多孔質基質の組織対向面に適用された第1のヒドロゲル前駆体、および該組織対向面と反対側の第2の面に適用された第2のヒドロゲル前駆体を含み、該基質の組織対向面は、該組織対向面と反対側の該第2の表面から空間的に分離されている、創傷閉鎖デバイス。
【請求項13】
前記多孔質基質は、メッシュを含む、請求項12に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項14】
前記多孔質基質は、ヒドロゲルを含む、請求項12に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項15】
前記第2のヒドロゲル前駆体は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、請求項12に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項16】
前記第1のヒドロゲル前駆体は、ポリエチレングリコールエステルを含む、請求項12に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項17】
前記第1のヒドロゲル前駆体は、求電子性基としてN−ヒドロキシスクシンイミドを含む、請求項16に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項18】
前記第2のヒドロゲル前駆体は、コラーゲン、血清、ゼラチンおよびトリリジンからなる群より選択される、請求項17に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項19】
前記第1のヒドロゲル前駆体は、粒子を含む、請求項17に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項20】
前記第2のヒドロゲル前駆体は、粒子を含む、請求項17に記載の創傷閉鎖デバイス。
【請求項21】
前記細長い本体は、多孔質基質を含む、請求項17に記載の創傷閉鎖デバイス。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【公開番号】特開2011−104356(P2011−104356A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−228000(P2010−228000)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228000(P2010−228000)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
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