説明

創薬用マイクロチューブのキャップ

【課題】創薬用キャップ整列装置を用いて整列プレートに整列させる際に短時間で正しい向きで整列させることができる創薬用マイクロチューブのキャップを提供する。
【解決手段】創薬用マイクロチューブのキャップ100が、創薬用マイクロチューブの開口部に挿入される挿入部120と、挿入部120の外周径よりも大きな外周径を有し創薬用マイクロチューブの開口部から突出する把持部110とを有し、キャップ100の全長が整列プレートのピッチよりも大きくかつ該ピッチの2倍より小さく、キャップ100の把持部110の上端縁が整列プレートのピッチよりも大きな外周径の鍔130を有し、キャップ100の挿入部120が先端に向けて細くなるテーパ122を有し、キャップ100の重心が挿入部120側にあることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬研究の分野において、創薬用試料を封入するために使用される創薬用マイクロチューブに関するものであり、さらに詳しくは、保管ラックに縦列収容されている複数の創薬用マイクロチューブの開口部を一度にキャップで封鎖するために予め保管ラックと同ピッチの整列プレートにキャップを整列させるのに適した形状を有した創薬用マイクロチューブのキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
創薬研究の分野においては、大量の試料を低温で保管したり分析したりする実験を高効率で行う必要がある。そのため、試料を溶解した溶液をマイクロチューブと呼ばれる円筒状又は四角筒状の小型容器に封入し、このマイクロチューブをSBS(Society for Biomolecular Screening)規格に準拠した16行×24列の合計384個の格子状に区画された保管ラックに垂直に縦列収容し、保管や搬送を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなSBS規格に準拠した384個の区画を有する保管ラックは、区画のピッチが4.5mmときわめて短いため、保管ラックに収容されたマイクロチューブの開口部の封鎖に着脱可能なキャップを用いた場合、機械によるキャップの装着は、きわめて困難であった。そのため、人手によって、一本ずつキャップを装着することが余儀なくされており、保管ラックに収容された384本のマイクロチューブの開口部の全てにキャップを装着するためには、かなりの手間と時間を要していた。
【0004】
また、本発明者らは、保管ラックと同じピッチを有する整列プレートにマイクロチューブのキャップを予め整列させておき、この整列プレートを保管ラックの上に被せて、整列プレートに整列させたキャップを保管ラックに収容されたマイクロチューブの開口部に一斉に押し込み、キャップの弾性によってキャップを整列プレートを通過させて、保管ラックに収容された全てのマイクロチューブの開口部を一度にキャップで封鎖するという新規なマイクロチューブのキャップ装着方法を考案し、このキャップ装着方法を効率よく実施するために、整列プレートにキャップを短時間で整列させるキャップ整列装置を開発した。
【特許文献1】特許第2007−33061号公報(第6頁第25〜26段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このキャップ整列装置を用いて創薬用マイクロチューブのキャップを整列プレートに整列させる際に従来のキャップを用いた場合、整列プレートに逆さまに嵌ったり、横向きに嵌ったりするキャップが存在し、そのような整列に失敗したキャップを個別に整列させ直す手間が発生していた。
【0006】
また、保管ラックにキャップ付きの創薬用マイクロチューブを縦列収容した場合、隣接したマイクロチューブのキャップ間に隙間がほとんどないため、保管ラックからマイクロチューブを抜き取ることが困難であった。
【0007】
さらに、従来のキャップは、創薬用マイクロチューブの開口部との気密性が低く、マイクロチューブの開口部の縁からマイクロチューブ内の試料がしみ出すという問題が懸念されていた。
また、従来のキャップは、把持部が小さいため人手で掴むことが困難であった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、創薬用キャップ整列装置を用いて整列プレートに整列させる際に短時間で正しい向きに整列させることができ、保管ラックから創薬用マイクロチューブを簡単に引き抜くことができ、高い機密性を有し、把持部を人手でも掴むことができる創薬用マイクロチューブのキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず、本請求項1に係る発明は、予め保管ラックと同ピッチの整列プレートに整列させて、開口した創薬用マイクロチューブが縦立収容されている前記保管ラック上に前記整列プレートを載せて、前記創薬用マイクロチューブの開口部に向けて押し出すことにより該開口部を一度に封鎖する創薬用マイクロチューブのキャップであって、前記キャップが、前記創薬用マイクロチューブの開口部に挿入される挿入部と前記挿入部の外周径よりも大きな外周径を有し前記創薬用マイクロチューブの開口部から突出する把持部とを有し、前記キャップの全長が、前記整列プレートのピッチよりも大きくかつ該ピッチの2倍より小さく、前記キャップの把持部の上端縁が、前記整列プレートのピッチよりも大きな外周径の鍔を有し、前記キャップの挿入部が、先端に向けて細くなるテーパを有し、前記キャップの重心が、前記挿入部側にあることにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る創薬用マイクロチューブのキャップにおいて、前記キャップの把持部の上面に、ピッキング用軸棒挿入用の凹部が形成されていることにより、前記課題をさらに解決したものである。
なお、本発明における「ピッキング用軸棒」とは、鉄等で構成され、キャップの把持部の上面に形成された凹部に嵌合してキャップのピッキングを行うことができる棒状の治具の総称である。
【0011】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る創薬用マイクロチューブのキャップにおいて、前記キャップの挿入部と把持部の境界に段差が形成されていると共に、前記挿入部の前記境界近傍に、前記創薬用マイクロチューブの開口部の内壁と密着しないくびれが形成されていることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0012】
また、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る創薬用マイクロチューブのキャップにおいて、前記キャップの把持部の長さが、前記挿入部の長さよりも長いことにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本請求項1に係る発明によれば、予め保管ラックと同ピッチの整列プレートに整列させて、開口した創薬用マイクロチューブが縦立収容されている前記保管ラック上に前記整列プレートを載せて、前記創薬用マイクロチューブの開口部に向けて押し出すことにより該開口部を一度に封鎖する創薬用マイクロチューブのキャップであって、前記キャップが、前記創薬用マイクロチューブの開口部に挿入される挿入部と前記挿入部の外周径よりも大きな外周径を有し前記創薬用マイクロチューブの開口部から突出する把持部とを有し、前記キャップの全長が、前記整列プレートのピッチよりも大きくかつ該ピッチの2倍より小さく、前記キャップの把持部の上端縁が、前記整列プレートのピッチよりも大きな外周径の鍔を有し、前記キャップの挿入部が、先端に向けて細くなるテーパを有し、前記キャップの重心が、前記挿入部側にあることにより、創薬用マイクロチューブのキャップが、整列プレートの区画に正しい向きで入りやすい形状となるため、キャップ整列装置を用いてきわめて効率よく整列プレートにキャップを整列させることが可能になる。
【0014】
そして、本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る創薬用マイクロチューブのキャップにおいて、キャップの把持部の上面に、ピッキング用軸棒挿入用の凹部が形成されていることにより、前記凹部にピッキング用軸棒を挿入するだけで保管ラックに収容された創薬用マイクロチューブを抜き取ることができるため、創薬用マイクロチューブの取扱性が格段に向上する。さらに、創薬用マイクロチューブを保管ラックから抜き取ることを複雑なピッキング機構などを用いることなく簡単な装置構成で機械化することも可能になる。
【0015】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る創薬用マイクロチューブのキャップにおいて、キャップの挿入部と把持部の境界に段差が形成されていると共に、前記挿入部の前記境界近傍に、前記創薬用マイクロチューブの開口部の内壁と密着しないくびれが形成されていることにより、前記キャップの挿入部の外周面と前記創薬用マイクロチューブの開口部の内壁との間の気密嵌合面の面積が小さくなり、気密嵌合面に生じる接触面圧が大きくなるため、キャップと創薬用マイクロチューブの開口部との気密性が向上する。
【0016】
また、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る創薬用マイクロチューブのキャップにおいて、前記キャップの把持部の長さが、前記挿入部の長さよりも長いことにより、キャップの挿入部に触れることなく、キャップの把持部を人の指で把持できるようになるため、キャップの取扱性が向上すると共に、マイクロチューブ内の試料が汚染されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、予め保管ラックと同ピッチの整列プレートに整列させて、開口した創薬用マイクロチューブが縦立収容されている前記保管ラック上に前記整列プレートを載せて、前記創薬用マイクロチューブの開口部に向けて押し出すことにより該開口部を一度に封鎖する創薬用マイクロチューブのキャップであって、前記キャップが、前記創薬用マイクロチューブの開口部に挿入される挿入部と前記挿入部の外周径よりも大きな外周径を有し前記創薬用マイクロチューブの開口部から突出する把持部とを有し、前記キャップの全長が、前記整列プレートのピッチよりも大きくかつ該ピッチの2倍より小さく、前記キャップの把持部の上端縁が、前記整列プレートのピッチよりも大きな外周径の鍔を有し、前記キャップの挿入部が、先端に向けて細くなるテーパを有し、前記キャップの重心が、前記挿入部側にあることにより、創薬用キャップ整列装置を用いて整列プレートに整列させる際に短時間で正しい向きで整列させることができるものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0018】
本発明の創薬用マイクロチューブのキャップの一実施例の構成について図1乃至図4に基づいて説明する。
【0019】
ここで、図1は、本実施例のキャップが用いられる創薬用マイクロチューブとそれを収容するSBS規格に準拠した16行×24列の格子状の384個の区画を有する保管ラックの斜視図である。図2は、本実施例のキャップが装着された創薬用マイクロチューブの斜視図である。図3は、本実施例の創薬用マイクロチューブのキャップの斜視図であり、図4は、図3に示した創薬用マイクロチューブのキャップの側面図である。
【0020】
まず、本実施例である創薬用マイクロチューブのキャップを保管ラックと同じピッチを有する整列プレートに予め整列させておき、この整列プレートを保管ラックの上に被せて、整列プレートに整列させたキャップを保管ラックに収容されたマイクロチューブの開口部に一斉に押し込み、キャップの弾性によって整列プレートを通過させて、保管ラックに収容された全てのマイクロチューブの開口部を一度にキャップで封鎖することが行われる創薬用マイクロチューブとそれを収容するSBS規格に準拠した16行×24列の格子状に区画された保管ラックについて、図1及び図2に基づき説明する。
【0021】
創薬用マイクロチューブMTは、図2に示すように、その本体MT1が四角筒形状となっており底部に向けて細くなっていると共に外側面の角部に面取りが施されている。そして、その開口部MT2は、円柱形状でキャップ100が嵌合するような形状に成形されている。このキャップ100は、弾性変形して整列プレートの区画を通過する必要があるため、弾性力に優れたポリエチレンなどにより形成することが好ましい。
【0022】
一方、保管ラックRは、ラックフレームの内側に格子状に区画された隔壁を有しており、この格子状の区画に前述した創薬用マイクロチューブMTの底部が嵌合する。なお、創薬用マイクロチューブMT及び保管ラックRの形状は、互いに安定した状態で係合するものであれば、それらの形状は、特に限定されるものではない。
【0023】
次に、本実施例の創薬用マイクロチューブのキャップ100について図3及び図4に基づいて説明する。本実施例の創薬用マイクロチューブのキャップ100は、図4に示すように、創薬用マイクロチューブの開口部に挿入される挿入部120と、この挿入部120の外周径よりも大きな外周径を有し創薬用マイクロチューブの開口部から突出する把持部110を有している。
【0024】
そして、キャップ100の全長L1は、整列プレートのピッチよりも大きく形成されている。その結果、整列プレートの1区画にキャップ100が横向きに嵌ってしまうことが防止される。
【0025】
さらに、キャップ100の全長L1は、整列プレートのピッチの2倍よりも小さく形成されている。その理由は、キャップ100の全長L1が整列プレートのピッチの2倍以上であると、整列プレート上に横向きに存在するキャップ100は、常に2つ以上の整列プレートの隔壁に跨り安定した状態で存在するため、整列プレートを振動させたとしてもキャップ100が整列プレートの区画に刺さり難く、キャップ整列装置を用いて整列プレートにキャップを整列させる際の効率が低下するからである。
【0026】
また、キャップ100の把持部110の上端縁には、整列プレートのピッチよりも大きな外周径D1の鍔130が形成されている。その結果、整列プレートの1区画にキャップ100が逆さまに嵌ってしまうことが防止される。この鍔130は、次工程、すなわち、整列プレートを保管ラック上に載せて保管ラックに縦列収容されているマイクロチューブの開口部を封鎖するとき、整列プレートの区画を円滑に通り抜ける必要があるため、薄く変形しやすい形状にしている。
【0027】
そして、キャップ100の挿入部120には、先端に向けて細くなるテーパ122が形成されている。その結果、キャップ100を整列プレートに整列させる際に、整列プレートの区画に嵌り易いと共に、整列プレートを保管プレート上に載せて、創薬用マイクロチューブの開口部をキャップ100で封鎖するときに、創薬用マイクロチューブの開口部とキャップ100とが嵌合し易い。
【0028】
また、キャップ100は、その重心が、キャップ100の挿入部120側に存在するように形成されている。その結果、整列プレート上にキャップ100を載せて、整列プレートを振動させた場合、キャップ100の挿入部120が整列プレートの区画に嵌り易い。
【0029】
さらに、キャップ100の把持部110の上面には、ピッキング用軸棒挿入用の開口面が円形形状の凹部112が形成されている。この凹部112の内周径D2よりも若干大きな直径を有する鉄製のピッキング用軸棒(図示はされていない)を凹部112に刺すことによって、ピッキング用軸棒は、キャップ100の弾性に抗して凹部112に緊合する。そのため、ピッキング用軸棒をラックに縦列収容されている創薬用マイクロチューブのキャップ100の凹部112に刺して引き上げることによって、ラックから創薬用マイクロチューブを引き抜くことができる。したがって、図1に示したように、隣接する創薬用マイクロチューブMTのキャップ100間に、ほとんど隙間がない場合であっても確実に所望の創薬用マイクロチューブを引き抜くことができると共に、ピッキング用軸棒をロボットアームなどのアクチュエータに取り付けることによって、SBS規格に準拠した384個の区画を有する保管ラックに縦列収容された創薬用マイクロチューブのピッキングを自動化することができ、その効果は甚大である。
【0030】
なお、本実施例においては、凹部112とピッキング軸棒との緊合状態を確実にするため、凹部112の深さL2は、凹部112の内周径D2と同等としている。さらに、ピッキング用軸棒が凹部112に嵌り易いように、凹部112の開口部の内周縁にテーパ114を設けている。
【0031】
また、キャップ100の挿入部120と把持部110との境界に段差が形成されていると共に、挿入部120の境界近傍に、創薬用マイクロチューブの開口部の内壁と密着しないくびれ126が形成されている。このくびれ126を設けたことにより、キャップ100の挿入部120の外周面と創薬用マイクロチューブの開口部の内壁との間に形成される気密嵌合面124の面積が小さくなり、気密嵌合面124に生じる接触面圧が大きくなるため、キャップ100と創薬用マイクロチューブの開口部との気密性が向上する。さらに、本実施例においては、気密嵌合面124をくびれ126側からテーパ122側に向けて、1°のテーパで拡幅させており、テーパ122と気密嵌合面124の境界部付近に接触面圧を集中させることにより、気密性を一層向上させている。
【0032】
また、キャップ100の把持部110の長さL3は、挿入部120の長さL4よりも長くなるように形成されている。そのため、キャップ100の把持部110を人の指で把持できるようになるため、キャップ100の取扱性が向上する。
【0033】
次に、本実施例のキャップを整列させる整列プレートと、キャップが整列プレートに整列する時のキャップの状態変化と、整列プレートにキャップを整列させるときに使用するキャップ整列装置の一例とを、図5乃至図8に基づいて説明する。
【0034】
ここで、図5は、本実施例のキャップの整列を行うための整列プレートを6つのキャップと共に示した斜視図であり、図6は、図5のVI−VI線で切断して矢印方向から見たときの断面図であり、図7は、図6のVII部を拡大した拡大断面図であり、図8は、整列プレートにキャップを整列させるときに使用するキャップ整列装置の一例を示した斜視図である。
【0035】
本実施例のキャップは、保管ラックと同ピッチの図5に示すような整列プレートPによって、整列させられる。整列プレートPにキャップを整列させるためには、例えば、図8に示すようなキャップ整列装置500が使用される。このキャップ整列装置500は、上部が開口した振動ボックス510を装置の最上部に有している。この振動ボックス510には、整列プレートを収容する所定の深さを有する整列プレート装着部512と未整列のキャップが滞留するキャップ滞留部514とが併置されている。
【0036】
そして、キャップ滞留部514と連通する溝部516が、整列プレート装着部512の両側に整列プレート装着部512とキャップ滞留部514の段差を解消するテーパ518を有する形状に形成されている。この振動ボックス510は、上部の開口面を除いて2面が円弧状に形成された円弧カバー520によって覆われており、この円弧カバー520の円弧の中心を軸として、整列プレート装着部512とキャップ滞留部514とを交互に上下させる揺動機構を装置内に有している。さらに、振動ボックス510の整列プレート装着部512側の床面裏に整列プレートに振動を与える振動機構を備えている。
【0037】
そして、整列プレート装着部512に整列プレートを装着し、多量のキャップを振動ボックス510内に入れてキャップ整列装置500を起動すると、振動ボックス510が揺動し、キャップが整列プレート上にばらまかれると共に、整列プレートに与えられた振動によって、キャップが、挿入部を下にして整列プレートの区画に嵌る。そして、整列プレートの全ての区画にキャップが嵌った段階で、整列プレート装着部512側が上になるような状態でキャップ整列装置500を停止させて、整列プレートを取り外す。
【0038】
次に、整列プレートPの一区画に1つのキャップが嵌るまでのキャップの動きの一例について図7に基づいて説明する。図7には、整列プレートP上に6つのキャップが存在する状態が示されているが、この6つのキャップは、個別のキャップを示しているのではなく、整列プレートP上に逆さまに存在するキャップaが、整列プレートPの1つの区画上で向きを変えながら最終的に正しい向き、すなわちキャップgのように整列プレートPの1つの区画に嵌るまでの様子を便宜上、整列プレートP上に存在する6つのキャップとして示している。
【0039】
まず、整列プレートPの1つの区画上にキャップaのように、ちょうど逆さまに存在したとする。この場合、本発明のキャップは、キャップの把持部の上端縁が、整列プレートPのピッチよりも大きな外周径の鍔を有しているので、逆さまのまま整列プレートPの区画に嵌ることがない。そして、整列プレートPに与えられた振動により、キャップbのようにキャップの把持部の一部が、整列プレートPの区画に嵌る。この時、本発明のキャップは、キャップの全長が、整列プレートPのピッチよりも大きいので、横向きに整列プレートPの区画に嵌ることがない。さらに、本発明のキャップは、重心が挿入部側にあるので、整列プレートPに与えられた振動により、キャップcのように、整列プレートPの隔壁上に載る。そして、本発明のキャップは、前述のように、重心が挿入部側にあるとともに、挿入部が先端に向けて細くなるテーパを有しているので、整列プレートPに与えられた振動により、キャップd、キャップeのように向きを変え、最終的にキャップgのように挿入部が下を向いた適正な状態で整列プレートPの区画に嵌る。
【0040】
なお、前述の説明においては、整列プレートPの1つの区画上にキャップaのように、ちょうど逆さまに存在している状態から最終的にキャップgのように挿入部が下を向いた適正な状態で整列プレートPの区画に嵌るまでのキャップの状態変化を説明したが、本発明のキャップによれば、キャップ整列装置の起動時に整列プレートP上にどのような状態で存在していても、短時間ですべての区画にキャップが適正な状態で嵌る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の創薬用マイクロチューブのキャップによれば、16行×24列の保管ラックに縦列収容されているマイクロチューブの開口部を整列プレートを用いて、一度に封鎖することを実現するものであって、創薬研究の高効率化、キャップの繰り返し利用による省資源化などに寄与し、その産業上の利用可能性はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】創薬用マイクロチューブと16行×24列の保管ラックの斜視図。
【図2】本発明のキャップが装着された創薬用マイクロチューブの斜視図。
【図3】本発明の創薬用マイクロチューブのキャップの斜視図。
【図4】図3に示した創薬用マイクロチューブのキャップの斜視図。
【図5】本発明のキャップの整列を行うための整列プレートの斜視図。
【図6】図5のVI−VI線で切断して矢印方向から見た時の断面図。
【図7】図6のVII部を拡大した拡大断面図。
【図8】本発明のキャップを整列プレートに整列させるときに使用するキャップ整列装置の一例を示した斜視図。
【符号の説明】
【0043】
100 ・・・ 創薬用マイクロチューブのキャップ
110 ・・・ (キャップの)把持部
112 ・・・ (キャップの)凹部
114 ・・・ (キャップの)テーパ
120 ・・・ (キャップの)挿入部
122 ・・・ (キャップの)テーパ
124 ・・・ (キャップの)気密嵌合面
126 ・・・ (キャップの)くびれ
130 ・・・ (キャップの)鍔
500 ・・・ キャップ整列装置
510 ・・・ (キャップ整列装置の)振動ボックス
512 ・・・ (キャップ整列装置の)整列プレート装着部
514 ・・・ (キャップ整列装置の)キャップ滞留部
516 ・・・ (キャップ整列装置の)溝部
518 ・・・ (キャップ整列装置の)テーパ
520 ・・・ (キャップ整列装置の)円弧カバー
L1 ・・・ キャップの全長
L2 ・・・ キャップの凹部の深さ
L3 ・・・ キャップの把持部の長さ
L4 ・・・ キャップの挿入部の長さ
D1 ・・・ キャップの鍔の外周径
D2 ・・・ キャップの凹部の内周径
MT ・・・ 創薬用マイクロチューブ
MT1 ・・・ (創薬用マイクロチューブの)本体
MT2 ・・・ (創薬用マイクロチューブの)開口部
R ・・・ 保管ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め保管ラックと同ピッチの整列プレートに整列させて、開口した創薬用マイクロチューブが縦立収容されている前記保管ラック上に前記整列プレートを載せて、前記創薬用マイクロチューブの開口部に向けて押し出すことにより該開口部を一度に封鎖する創薬用マイクロチューブのキャップであって、
前記キャップが、前記創薬用マイクロチューブの開口部に挿入される挿入部と前記挿入部の外周径よりも大きな外周径を有し前記創薬用マイクロチューブの開口部から突出する把持部とを有し、
前記キャップの全長が、前記整列プレートのピッチよりも大きくかつ該ピッチの2倍より小さく、
前記キャップの把持部の上端縁が、前記整列プレートのピッチよりも大きな外周径の鍔を有し、
前記キャップの挿入部が、先端に向けて細くなるテーパを有し、
前記キャップの重心が、前記挿入部側にあることを特徴とする創薬用マイクロチューブのキャップ。
【請求項2】
前記キャップの把持部の上面に、ピッキング用軸棒挿入用の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の創薬用マイクロチューブのキャップ。
【請求項3】
前記キャップの挿入部と把持部の境界に段差が形成されていると共に、前記挿入部の前記境界近傍に、前記創薬用マイクロチューブの開口部の内壁と密着しないくびれが形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の創薬用マイクロチューブのキャップ。
【請求項4】
前記キャップの把持部の長さが、前記挿入部の長さよりも長いことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の創薬用マイクロチューブのキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−208820(P2009−208820A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54884(P2008−54884)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(502327481)神戸バイオロボティクス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】