説明

力学量センサ

【課題】本発明は、外付けの演算増幅器の増幅度を調整するための回路構成を付加する場合、基板の面積の増加量が少ない小型の力学量センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成するために本発明の力学量センサは、基板21の上面に感度調整抵抗29および調整電極26を設けるとともに、この感度調整抵抗29の一端を出力電極25と電気的に接続し、かつ他端を調整電極26と接続するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、自動車や各種産業機械に使用される重量、力、加速度、微少変位によって発生する歪を検出する力学量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の力学量センサについて、以下、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図5は従来の力学量センサの回路図、図6は同力学量センサにおけるハーフブリッジ回路を示す回路図を示したもので、この図5,図6において、1はシリコン半導体からなる基板(図示せず)の上面に設けられた電源電極である。2は第1の歪抵抗素子で、この第1の歪抵抗素子2は前記基板(図示せず)の上面に設けられるとともに、一端を電源電極1に接続し、かつ他端を出力電極3に電気的に接続している。4は第2の歪抵抗素子で、この第2の歪抵抗素子4は一端を出力電極3に電気的に接続するとともに、他端をGND電極5と電気的に接続している。そして、前記電源電極1、第1の歪抵抗素子2、出力電極3、第2の歪抵抗素子4およびGND電極5とでブリッジ回路を構成している。6は第1の抵抗素子で、この第1の抵抗素子6は一端を第1の調整電極7と電気的に接続するとともに、他端を第2の調整電極8と電気的に接続している。9は第2の抵抗素子で、この第2の抵抗素子9は一端を第2の調整電極8と電気的に接続するとともに、他端をバイアス電極10と電気的に接続している。11は感度調整抵抗で、この感度調整抵抗11は一端を第2の調整電極8と電気的に接続するとともに、他端をバイアス電極10と電気的に接続している。
【0004】
以上のように構成された従来の力学量センサについて、次にその動作を説明する。
【0005】
力学量センサにおける出力電極3に外付けの演算増幅器12の非反転入力端子13を接続するとともに、前記演算増幅器12の反転入力端子14を第2の調整電極8に接続する。
【0006】
そして、前記電源電極1に電圧を負荷した状態において、基板(図示せず)に外力が作用すると、第1の歪抵抗素子2および第2の歪抵抗素子4に引張応力または圧縮応力が作用し、これにより、出力電極3の電位が変化する。この状態において、演算増幅器12からの出力電圧が所定の電圧になるように、前記感度調整抵抗11の抵抗値をトリミングする。このとき、演算増幅器の増幅率は(数1)のように表わされる。
【0007】
【数1】

【0008】
すなわち、従来の力学量センサにおいては、出力電極3からの出力信号を演算増幅器12で増幅することにより、歪量に応じた出力信号を得るものであった。
【0009】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平6−34471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の構成においては、外付けの演算増幅器12の増幅度を調整するために、基板(図示せず)上に、第1の抵抗素子6、第2の抵抗素子9、感度調整抵抗11、第1の調整電極7、第2の調整電極8およびバイアス電極10を設けているため、基板の面積が大きくなり、これにより、力学量センサが大型化してしまうという課題を有していた。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、外付けの演算増幅器の増幅度を調整するための回路構成を付加する場合、基板の面積の増加量が少ない小型の力学量センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明は、基板と、この基板の上面に設けられた電源電極、出力電極およびGND電極と、前記電源電極、出力電極およびGND電極と回路パターンにより電気的に接続されることによりブリッジ回路を構成する少なくとも一対の歪検出素子とを備え、前記基板の上面に感度調整抵抗および調整電極を設けるとともに、この感度調整抵抗の一端を前記出力電極と電気的に接続し、かつ他端を調整電極と接続するように構成したもので、この構成によれば、基板の上面に感度調整抵抗および調整電極を設けるとともに、この感度調整抵抗の一端を前記出力電極と電気的に接続し、かつ他端を調整電極と接続するように構成しているため、外付けの演算増幅器の反転入力端子に出力電極を接続するとともに、調整電極を演算増幅器の出力端子に接続するだけで、感度調整抵抗の抵抗値を変化させることにより、増幅度を調整することができ、これにより、基板上には、出力電極、感度調整抵抗および調整電極を設けるだけで、演算増幅器の増幅度を調整することができるため、基板の面積を小さくできるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明の力学量センサは、基板と、この基板の上面に設けられた電源電極、出力電極およびGND電極と、前記電源電極、出力電極およびGND電極と回路パターンにより電気的に接続されることによりブリッジ回路を構成する少なくとも一対の歪検出素子とを備え、前記基板の上面に感度調整抵抗および調整電極を設けるとともに、この感度調整抵抗の一端を前記出力電極と電気的に接続し、かつ他端を調整電極と接続するように構成しているため、外付けの演算増幅器の反転入力端子に出力電極を接続するとともに、調整電極を演算増幅器の出力端子に接続するだけで、感度調整抵抗の抵抗値を変化させることにより、増幅度を調整することができ、これにより、基板上には、出力電極、感度調整抵抗および調整電極を設けるだけで、演算増幅器の増幅度を調整することができるため、基板の面積を小さくでき、これにより、小型の力学量センサを提供することができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態における力学量センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態における力学量センサの上面図、図2は同力学量センサの側断面図である。
【0017】
図1、図2において、21は樹脂製あるいは金属製の基板で、この基板21における長手方向の一端側には電極部22を設けており、さらにこの電極部22の上面には、電源電極23、GND電極24、出力電極25および調整電極26を設けるとともに、これらの電極と電気的に接続される回路パターン27を設けている。そしてまた、前記電極部22にはドリフト調整抵抗28を設けており、かつこのドリフト調整抵抗28は一端をGND電極24に電気的に接続するとともに、他端を出力電極25と電気的に接続している。さらに、前記電極部22には感度調整抵抗29を設けており、かつこの感度調整抵抗29は一端を出力電極25に電気的に接続するとともに、他端を調整電極26と電気的に接続している。また、前記基板21には、変形部30を設けており、かつこの変形部30は一端を前記電極部22に固定するとともに、上面に第1の歪抵抗素子31を設けており、そしてこの第1の歪抵抗素子31は一端を回路パターン27を介して前記電極部22における電源電極23と電気的に接続するとともに、他端を出力電極25および感度調整抵抗29に電気的に接続している。そしてまた、前記変形部30には、第2の歪抵抗素子32を設けており、かつこの第2の歪抵抗素子32は一端を前記電極部22におけるGND電極24およびドリフト調整抵抗28に電気的に接続するとともに、他端を第1の歪抵抗素子31、出力電極25、感度調整抵抗29およびドリフト調整抵抗28に電気的に接続している。また、前記基板21にはコ字形状の押圧部33を設けており、かつこの押圧部33は前記変形部30の他端に固定している。そしてこの押圧部33の重心は、前記変形部30と押圧部33との接続箇所に位置するように構成している。
【0018】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における力学量センサについて、次にその組立方法を説明する。
【0019】
まず、予め、電極部22、変形部30および押圧部33が設けられた金属ベース基材(図示せず)にガラスペースト(図示せず)を印刷した後、約850℃で約45分間焼成することにより、基板21を形成する。
【0020】
次に、前記基板21における電極部22および変形部30の表面に位置してメタルグレーズ系のカーボンのペーストを印刷し、そして約850℃で約45分間焼成することにより、前記基板21にドリフト調整抵抗28、感度調整抵抗29、第1の歪抵抗素子31および第2の歪抵抗素子32を形成する。
【0021】
最後に、前記基板21における電極部22および変形部30の表面に位置して銀のペーストを印刷し、そして約850℃で約45分間焼成することにより、前記基板21における電極部22に電源電極23、GND電極24、出力電極25、調整電極26および回路パターン27を形成する。
【0022】
以上のようにして組み立てられた本発明の一実施の形態における力学量センサについて、次にその動作を説明する。
【0023】
本発明の一実施の形態においては、図3に示すように、力学量センサにおける出力電極25に外付けの演算増幅器34における反転入力端子35を接続するとともに、調整電極26に演算増幅器34における出力端子36を接続する。そして、この状態において、電源電極23に電圧を負荷した状態で、ドリフト調整抵抗28の抵抗値をトリミングすることにより、出力電極25からの出力信号を中点電位に調整する。そしてさらに、感度調整抵抗29をトリミングすることにより、演算増幅器34の出力信号が所定の電圧になるように調整する。このときの演算増幅器34の増幅度は(数2)のように表される。
【0024】
【数2】

【0025】
すなわち、本発明の一実施の形態においては、基板21の上面に感度調整抵抗29および調整電極26を設けるとともに、この感度調整抵抗29の一端を前記出力電極25と電気的に接続し、かつ他端を調整電極26と接続するように構成しているため、外付けの演算増幅器34の反転入力端子35に出力電極25を接続するとともに、調整電極26を演算増幅器34の出力端子36に接続するだけで、感度調整抵抗29の抵抗値を変化させることにより、増幅度を調整することができ、これにより、基板21上には、出力電極25、感度調整抵抗29および調整電極26を設けるだけで、演算増幅器34の増幅度を調整することができるため、基板21の面積を小さくできるという効果を有するものである。
【0026】
そして、押圧部33に上方より荷重が負荷されると、図4に示すように、この荷重により、基板21における変形部30の長手方向の略中央に変形の変曲点37が生じるように基板21が変形する。この変形により、基板21における変形部30の表面に設けられた第1の歪抵抗素子31に圧縮応力が加わって、第1の歪抵抗素子31の抵抗値が小さくなるとともに、第2の歪抵抗素子32に引張応力が加わって、第2の歪抵抗素子32の抵抗値が大きくなる。この場合、前記第1の歪抵抗素子31、第2の歪抵抗素子32、電源電極23、GND電極24、出力電極25および回路パターン27により、ハーフブリッジ回路を構成しているため、出力電極25から出力される中点電位は、変形部30の変位に伴って高くなる。そして、この出力電極25からの出力信号を外付けの演算増幅器34で増幅して出力端子36から出力することにより、押圧部33に加わる荷重を検出することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る力学量センサは、外付けの演算増幅器の増幅度を調整するための回路構成を付加する場合、基板の面積の増加量が少ない小型の力学量センサを提供することができるという効果を有するものであり、特に自動車や各種産業機械に使用される重量、力、加速度、微少変位によって発生する歪を検出する力学量センサとして有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態における力学量センサの上面図
【図2】同力学量センサの側断面図
【図3】同力学量センサに外付けの演算増幅器を接続した状態を示す回路図
【図4】同力学量センサの動作状態を示す側断面図
【図5】従来の力学量センサの回路図
【図6】同力学量センサにおけるハーフブリッジ回路を示す回路図
【符号の説明】
【0029】
21 基板
23 電源電極
24 GND電極
25 出力電極
26 調整電極
27 回路パターン
29 感度調整抵抗
31 第1の歪抵抗素子
32 第2の歪抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板の上面に設けられた電源電極、出力電極およびGND電極と、前記電源電極、出力電極およびGND電極と回路パターンにより電気的に接続されることによりブリッジ回路を構成する少なくとも一対の歪検出素子とを備え、前記基板の上面に感度調整抵抗および調整電極を設けるとともに、この感度調整抵抗の一端を前記出力電極と電気的に接続し、かつ他端を調整電極と接続するように構成した力学量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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