説明

加圧容器、燃料カートリッジおよびその燃料カートリッジの組立方法

【課題】燃料容器の交換が容易であり、かつ、その燃料容器内の燃料を加圧し、燃料容器の向きに関係なく安定して供給することができる燃料電池用の燃料容器の加圧容器を提供する。
【解決手段】容器本体11と、その内部に収容される内袋12と、容器本体11の口部に固定される蓋体13とからなる加圧容器10。この加圧容器10の内袋12に連結部材31を用いて燃料容器30を取り付けることにより燃料カートリッジ1となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の燃料容器を加圧するための加圧容器、その加圧容器を用いた燃料カートリッジおよびその燃料カートリッジの組立方法に関する。特に携帯機器用の燃料電池向けの小型加圧容器、その加圧容器を用いた燃料カートリッジおよびその燃料カートリッジの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2005−38803号公報
【特許文献2】特開平11−179250号公報
【特許文献3】特開平11−49254号公報
【0003】
近年、燃料電池は、エネルギー問題を解決する手段として様々な商品に利用されている。一方、家庭レベルでの燃料の安全な供給という面からその小型化には、様々な問題点が残っている。
【0004】
特許文献1には、密閉構造を有する容器本体と、その容器本体内に収容され、燃料を充填する可撓性の内容器と、容器本体に設けられ、内容器の内部に連通したバルブ機構と、容器本体と内容器との間の空間に充填される圧縮ガスと、容器本体に設けられ、内容器の内部に連通した燃料を再注入するための注入バルブとからなり、燃料電池に燃料を供給する燃料容器が開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、内容物を充填することによって、繰り返し使用できるエアゾール製品が開示されている。このものは、外部容器内にピストン式の容器を収容し、外部容器とピストンとの間に加圧気体を充填し、ピストン式の容器内に内容物を充填する。このように構成されているため、外部容器の開口部に取り付けられたバルブを開放することにより、ピストン式の容器内のピストンが加圧気体によって押され、内容物が押し出される。そして、ピストン式の容器の内容物を全量噴射した後は、バルブから内容物を再度充填することにより容器を何回でも再利用することができる。
【0006】
さらに、特許文献3には、チューブ容器内の内容物を全量噴射可能な押し出し容器が開示されている。このものは、上部に内容物を噴射する噴射部を備えており、下部に加圧気体を導入する導入口を備えている。この押し出し容器にチューブ容器を収容し、そして、導入口より加圧気体を導入することによって製品となる。
この製品は、噴射部を開くだけで、チューブ容器が加圧気体に押しつぶされて内容物が噴射される。そのため、チューブ容器内の内容物の全量使用が簡単に行え、また、内容物が無くなれば、チューブ容器を交換し、再度加圧気体を充填することにより、再利用が可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の場合、燃料の再注入あるいは再充填には、圧縮ガスに押圧される内容器の内圧に逆らって小さな通路から燃料を充填しなくてはならず、特許文献2の場合も、加圧気体によって押圧されるピストンに逆らって燃料を充填しなくてはならない。そのような作業は、家庭や店頭では難しく、特別な装置を必要とする。
また、特許文献3は、チューブ容器を交換する際、加圧気体を再度充填しなければならず、このような加圧気体の再充填には、高圧ガスの充填装置が必要となる。
【0008】
本発明は、燃料を充填する燃料容器の交換が容易であり、かつ、その燃料容器内の燃料を加圧して燃料電池に供給するための加圧容器、それを用いた小型の燃料カートリッジおよびその燃料カートリッジの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃料電池用の燃料容器を加圧する加圧容器は、開口部を有する耐圧性の容器本体と、その容器本体に収容され、可撓性を有する内袋と、前記容器本体と内袋との間の空間を密閉すると共に、内袋が開口するように、内袋を容器本体の開口部に固定するための蓋体と、前記空間に充填される加圧剤とからなることを特徴としている。
【0010】
このような加圧容器であって、前記内袋が、ガスバリア性を有しているものが好ましい。
【0011】
本発明の燃料電池用の燃料容器を加圧する加圧容器の第2の態様は、開口部を有する容器本体と、その容器本体に収容され、弾力性を有する内袋と、その内袋を開口するように、内袋を容器本体の開口部に固定するための蓋体とからなることを特徴としている。
このような加圧容器であって、前記蓋体が、中心に筒状の挿入口を備えているものが好ましい。
【0012】
本発明の燃料カートリッジは、本発明の加圧容器と、前記内袋に収容され、燃料が充填された可撓性の燃料容器とからなることを特徴としている。
このような燃料カートリッジであって、前記加圧容器と着脱自在であり、かつ、燃料容器と着脱自在である連結部材を備えたものが好ましい。さらに、前記連結部材が、燃料容器と燃料電池本体または燃料電池本体に接続したアダプターと連通するための通路と、その通路をシールするシール材とを備えているものが好ましい。そして、連結部材が、燃料容器を装着したときに燃料容器の一部を開封する開封手段を備えており、前記燃料容器の一部を開封することにより燃料容器内部と通路とが連通するものが好ましい。
【0013】
本発明の燃料カートリッジの組立方法は、燃料が充填されている燃料容器を燃料容器及び加圧容器と着脱自在の連結部材に装着し、燃料容器を本発明の加圧容器の内袋内に挿入し、連結部材をその加圧容器に装着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃料電池用の燃料容器を加圧するための加圧容器の第1の態様は、内袋に可撓性の燃料容器を挿入することによって使用する。そのため、容器本体と内袋との間の空間(内袋の周囲空間)に充填される加圧剤が内袋を介して燃料容器を押圧し、その内部にある燃料を加圧して安定した流量で燃料電池に供給する。また、燃料容器は、加圧容器から常時圧力を受けているため、燃料を供給してその容積が減少しても元の容積に戻らない。そのため、燃料容器内部にガスだまりを発生させず、加圧容器をどのような向きにしても、燃料を安定した供給量で供給できる。さらに、加圧ポンプ等の装置が不要であるため、加圧容器を小型化することができる。
【0015】
また、燃料容器の交換をする場合は、燃料が無くなったもしくは少なくなった燃料容器を、内袋から取り出し、燃料が充填されている新しい燃料容器を内袋の開口に挿入するだけでよく、その交換作業も簡単である。さらに、加圧剤を充填する容器本体と内袋の間の空間を蓋体によって密閉するため、加圧容器を繰り返し使用することができ、使用者は燃料容器の交換時に、加圧剤の充填を行う必要がない。
【0016】
本発明の加圧容器であって、前記内袋が、ガスバリア性を有している場合、加圧剤が内袋を透過して、外部に漏出する程度が小さくなり、長時間安定した圧力を保つことができる。
【0017】
本発明の加圧容器の第2の態様は、内袋自身が弾力性を有しているため、内袋に可撓性を有する燃料容器を挿入することによって燃料容器に内袋の収縮力が伝わり、その内部の燃料は加圧された状態で燃料電池に供給される。また、本発明の第1の態様と同様に、加圧容器の向きに関係なく安定した量で燃料電池に燃料を供給することができる。さらに、燃料容器の交換が簡単である。
【0018】
上述したいずれかの加圧容器であって、前記蓋体が、中心に筒状の挿入口を備えている場合、燃料容器を挿入しやすく、また安定して保持することができる。
【0019】
本発明の燃料カートリッジは、上述したいずれか記載の加圧容器と、燃料容器とからなるため、燃料を加圧した状態で燃料電池に供給することができ、燃料が電極(触媒)と接触しやすくなり、発電効率が高くなる。また、構造が簡単であるため、小型化しやすく、使用する向きにより供給量が影響されないため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオなど、携帯する頻度が高い商品、様々な角度で使用する商品に、好適に用いることができる。また、燃料容器と加圧容器とが一体になっているため、燃料カートリッジとしての交換が簡単である。
【0020】
このような燃料カートリッジであって、前記加圧容器と着脱自在であり、燃料容器と着脱自在である連結部材を備えている場合、燃料容器の交換が一層簡単になる。また、燃料容器は連結部材により加圧容器にしっかりと装着され、燃料容器が加圧力により加圧容器から外れるあるいは抜け飛ぶおそれがない。
前記連結部材が、燃料容器と燃料電池本体または燃料電池本体に接続したアダプターと連通するための通路と、その通路をシールするシール材とを備えている場合、燃料容器を内袋に挿入し、連結部材を加圧容器に装着するとき、加圧容器が圧力を受けても燃料が漏出しない。
【0021】
前記連結部材が、燃料容器を装着したときに燃料容器の一部を開封する開封手段を備えており、燃料容器の一部を開封することにより燃料容器の内部と通路とが連通する場合、燃料容器を使用直前までは密閉しておくことができる。特に、燃料が可燃性あるいは人体に対して害がある燃料であっても、安全に使用できる。
本発明の連結部材を備えた燃料カートリッジの組立方法は、燃料が充填されている燃料容器を連結部材に装着し、燃料容器を本発明の加圧容器の内袋内に挿入し、連結部材を加圧容器に装着するため、燃料容器を内袋に加わる圧力や内袋の収縮力に逆らいつつも、燃料容器を安定かつ簡単に加圧容器内に挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の燃料電池用の燃料容器を加圧するための加圧容器、燃料カートリッジおよび燃料カートリッジ組立方法を図面を用いて説明する。図1は、本発明の燃料電池用の燃料容器を加圧する加圧容器の一実施形態を示す側面断面図;図2a、bは、本発明の燃料カートリッジの燃料容器の燃料容器本体およびキャップの一実施形態を示す斜視図;図3a、bは、図1の加圧容器を用いて燃料カートリッジを組み立てる工程を示す工程図;図4aは、図1の加圧容器を用いた燃料カートリッジを示す側面断面図、図4bは、その燃料カートリッジの挿入部を示す側面断面図;図5a、b、cは、それぞれ本発明の燃料カートリッジの燃料容器の燃料容器本体の他の実施形態を示す斜視図;図6は、本発明の燃料カートリッジの燃料容器の燃料容器本体のさらに他の実施形態を示す斜視図;図7a、bは、それぞれ本発明の燃料カートリッジの燃料容器の燃料容器本体のさらに他の実施形態を示す斜視図;図8は、本発明の燃料電池用の加圧容器の他の実施形態を示す側面断面図;図9aは、本発明の燃料電池用の加圧容器のさらに他の実施形態を示す側面断面図、図9bは、図9aの加圧容器の製造過程を示す工程図;図10は、図9aの加圧容器を用いた本発明の燃料カートリッジの他の実施形態を示す側面断面図;図11a、b、cは、本発明の燃料電池用の加圧容器のさらに他の実施形態を示す側面断面図;図12は、図11cの加圧容器を用いた本発明の燃料カートリッジのさらに他の実施形態を示す側面断面図;図13a、bは、図4の燃料カートリッジと加圧剤を用いた燃料カートリッジの発電量を示す測定図;図14a、bは、図4の燃料カートリッジの向きを変えて発電したときの発電量を示す測定図;図15は、図4の燃料カートリッジからの燃料の供給を停止、再開始したときの発電量の状況を示す測定図である。
【0023】
図1に示す加圧容器10は、底部に加圧剤の充填用のバルブ15を備えた容器本体11と、その容器本体に収容される内袋12と、その内袋の開口部に挿入されるハウジング13と、前記内袋とハウジングとを容器本体に固定するカバーキャップ14とからなる。
【0024】
容器本体11は、耐圧性を有しており、中心に加圧剤の充填用バルブ15が取り付けられた底部16と、その周縁から上方に延びる円筒状の胴部17と、胴部上端から縮径するように形成されたテーパー状の肩部18と、肩部上端から上方に延びる円筒状の首部19と、首部上端から拡径した口部20とを有する。そして、首部19が環状凹部を形成している。また、首部19と口部20の内径は同じであり、口部20は厚みを有している。
このような容器本体11は、アルミニウムやブリキなどの金属、合成樹脂や耐圧ガラスなどにより一体成形される。容器本体をポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂や耐圧ガラスなどの透光性を有する材料により成型をする場合、燃料容器の変形具合を目視で確認することができるため、燃料の残量が確認でき、交換時期がわかりやすい。
【0025】
内袋12は、可撓性を有しており、ブロー成形などによって有底筒状に成形される薄肉の合成樹脂製の一体成形品であり、円筒状の胴部21と、胴部の下端から下方に突出する円錐状の底部22と、胴部の上端に形成されたフランジ部23とからなる。しかし、胴部21は、断面が楕円状の楕円筒状であってもよい。
【0026】
また、内袋12は、容器本体と内袋の間に充填される加圧剤が透過して外部に漏れないように、ガスバリア性を有していることが好ましい。
このようなガスバリア性は、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどのガス透過性の低い合成樹脂層、アルミ箔層、アルミを合成樹脂の表面に蒸着したアルミ蒸着フィルム層、シリカを合成樹脂の表面に蒸着したシリカ蒸着フィルム層などのガスバリア層を備えることにより実現できる。アルミを利用したガスバリア層を使用する場合は、外層に設けるのが好ましい。
【0027】
また、こうしたガスバリア層は力学的或いは熱的或いは化学的に不安定であるのでバリア層を保護するラミネート層或いはコーティング層を同時に施すことが好ましい。例えば、燃料による劣化を防止するために、耐薬品性に優れた低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素系樹脂などの合成樹脂層をガスバリア層と積層させることは好ましい。
さらに、燃料容器を内袋内に挿入しやすくするために、内袋の内面に、短い繊維を付けるフロック加工、あるいは、潤滑性の粉体のコーティング、潤滑性の皮膜あるいは潤滑剤の塗布層を設けるなどの加工をしてもよい。
内袋12は、可撓性を有し、収縮が可能であれば、ガスバリア性を有していなくてもよく、その特性は特に限定されない。
【0028】
ハウジング13は、通常成形用に使用されるプラスチックであれば特に制限されない。例えば、ポリアセタール(PA)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6,10等のポリアミド類、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)等のポリエステル類、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体(AS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、液晶性ポリエステル(LCP)、等が使用できる。用途や使用場所により最適のポリマーを選定する事が出来る。こうした合成樹脂により成型され、円筒状の本体24と、その上端に形成された外方に突出した上フランジ部25と、その下端に形成された内方に突出した下フランジ部26とからなる。下フランジ26にはアールが形成されており、内袋12が大きく収縮しても、破れないように後述するカバーキャップ14の内筒の下端から保護する。
【0029】
カバーキャップ14は、アルミニウムやブリキなどの金属板から成型され、内筒27と、外筒28と、その内筒と外筒とを上端で接続する接続部29とからなる。そして、外筒28の下端28aを首部19である環状凹部にカシメつけることにより、カバーキャップ14を容器本体11の開口部に固定する。
この実施形態では、ハウジング13とカバーキャップ14とで蓋体を構成する。
【0030】
この加圧容器10の製造方法は、容器本体11に内袋12を挿入し、容器本体の口部天面と内袋のフランジ部23とを当接させる。次に、ハウジング13を内袋12の口部から挿入し、内袋のフランジ部23とハウジングの上フランジ部25とを当接させる。そして、カバーキャップ14の内筒27と外筒28が、容器本体の口部20、内袋の胴部21の上部、内袋のフランジ部23およびハウジング13を挟むように、カバーキャップ14を容器本体11の口部20に取り付ける。そして、外筒の下端28aを容器本体の首部19に対してカシメ付けて固定する。これにより、容器本体11と内袋12との間の空間Sが密閉される。最後に、容器本体の充填用バルブ15からその空間Sに加圧剤を充填する。これにより内袋は実線で示すような形状に収縮する。
このような加圧剤としては、窒素ガス、圧縮空気、酸素ガス、炭酸ガスなどの圧縮ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、液化フロンなどの液化ガスが挙げられる。また加圧剤は、25℃における内圧が0.05〜2.0MPa、好ましくは0.1〜1.0MPa、さらに好ましくは、0.15〜0.8MPaとなるように充填する。
【0031】
次に、図2を参照して加圧容器10に用いられる燃料電池用の燃料容器30、図3a、bを参照して、加圧容器10に用いられる燃料電池用の燃料容器30およびそれを加圧容器に固定するための連結部材31および加圧容器10と燃料容器30を用いた燃料カートリッジの組立方法の説明をする。
【0032】
燃料容器30は、図2a、bに示すように、筒状の胴部34と、胴部の上端から縮径し外周面にネジ33を備えた口部35aと、胴部の下端を閉じた底部36とを備えたチューブ形状の燃料容器本体32(図2a参照)と、その口部に取り付けられるキャップ37(図2b参照)とからなる。
【0033】
燃料容器本体32は、単層フィルム或いは積層フィルムを用いて筒状の胴部34を形成し、ネジが設けられている口部35aと肩部35bを備えた頭部35を胴部34の上端に熱接合して成形している。この場合、ネジ33にキャップ37を取り付け、胴部下端から燃料を充填した後で、胴部下端を熱、超音波高周波などで溶着して底部36を形成している。そして、底部36は、先端の断面が円形となるように加工しており、胴部より硬く、加圧容器の内袋12を傷つけたり破ることなく挿入がしやすい。
また、図2aの想像線で示すように、燃料容器本体32を、胴部から底部に向かって断面積が小さくなるようにテーパ状にしてもよい。この場合、燃料容器30を加圧容器10へ一層挿入しやすくなる。
【0034】
胴部を構成する積層フィルムは、表基材とシーラント層基材を貼り合わせた(ラミネート)ものや、表基材と中間層基材とシーラント層基材を貼り合わせたものなどを用いることができる。
前記表基材としては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、およびこれらにポリ塩化ビニリデンをコートしたフィルムなどが挙げられる。
前記中間層基材としては、アルミ箔、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
前記シーラント層基材としては、低密度ポリエチレン(好ましくは融点が100〜130℃)、直鎖状低密度ポリエチレン(好ましくは融点が110〜140℃)、エチレン酢酸ビニル共重合体(好ましくは融点が70〜110℃)、無延伸ポリプロピレン(好ましくは融点が130〜165℃)、ポリエチレンテレフタレート(好ましくは融点が250〜280℃)などが挙げられる。
【0035】
また、燃料容器を内袋に挿入しやすくするために、燃料容器本体の外面にフロック加工を施したり、潤滑性の皮膜や潤滑剤の塗布被膜をフィルムなどを設けてもよい。
【0036】
前記キャップ37は合成樹脂により有底筒状に成型され、筒部の内周面には口部外周面のネジと螺合するネジが設けられており、上面37aは薄肉となっている。
【0037】
この燃料容器に充填する燃料としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、アルコール水溶液;低級脂肪酸、ギ酸、酢酸およびそれらの水溶液;ジメチルエーテル、ジメチルエーテル水溶液などが挙げられる。これらの有機燃料の一種または二種以上の混合物を含有する水溶液の濃度は、0.1〜100Vol%であることが好ましく使用できる。
【0038】
図3a、bに示すように、連結部材31は、円筒状の外周壁41と、円筒状の内周壁42と、それらの外周壁と内周壁とを上端で接続する円板状の基部43と、基部43の下面中心から下方に突出した筒状の先鋭突起44と、基部の上面中心から上方に突出した筒状の連結部45とからなり、先鋭突起44と連結部45とは内通路46によって連通している。連結部材31は、ポリアセタールやポリアミドなどの合成樹脂あるいは金属により製造しうる。
【0039】
また、外周壁41の下端には、内側に突出した係合突起47が形成されており、加圧容器の環状凹部(首部19)とクリップ嵌合する。なお、連結部材を加圧容器に装着しやすくする、あるいは加圧容器から外しやすくするために、連結部材の外周壁41に嵌合力を切り替えるための切替手段を設けても良い。このような切替手段としては、たとえば、下端に係合突起を備えた係合片を外周壁にヒンジ連結するものが挙げられ、装着時は係合片の係合突起が環状凹部と係合しているため嵌合力が強く、外すときは嵌合片の上部を内側に押すことにより係合片の係合突起がはずれ嵌合力が低下する。また、係合片は上下動により嵌合力を切り替えるものであっても良い。
【0040】
先鋭突起44の下端は、鋭く尖っており、密閉された燃料容器30のキャップ37の上面37aを穿刺できるように構成されている。この先鋭突起が、特許請求の範囲の文言の「開封手段」となる。
連結部45は、上部外周に形成された環状凹部49と、その環状凹部に形成された連通孔50と、下部外周に形成された係合段部51と、環状凹部に取り付けられたシールリング52とからなる。つまり、連通孔50は、通常の状態では、シールリング52によってシールされている。
【0041】
内通路46には、マイクロキャピラリーチューブが流量を調整(抑制)するために挿入されている。しかし、流量を調整(抑制)するための他の流量調整手段、たとえば、焼結体などの多孔性物質などを挿入してもよい。さらに、通路にスポンジなどの多孔質な弾性材料を挿入したり、流量の圧力が高いときは通路面積を小さくし、流量の圧力が低いときは、通路面積が大きくなるレギュレータ機構などを通路に設けたり、流量を安定化させる流量安定化手段を設けてもよい。
【0042】
これらの燃料容器30と連結部材31とは、キャップの上面37aを連結部材の先鋭突起44で破り、燃料容器のキャップ37の外周を内周壁42の内部に挿入することにより、連結される(図3a参照)。そして、その連結した状態で、燃料容器30を加圧容器の内袋12内に挿入する(図3b参照)。
次いで、連結部材の外周壁下端の係合突起47を加圧容器の環状凹部(首部19)とクリップ嵌合させることにより、連結部材31と加圧容器10とを装着し、燃料カートリッジ55が完成する(図4a参照)。
【0043】
上述した加圧容器10と、燃料容器30と、連結部材31とからなる燃料カートリッジ55は、たとえば図4bに示すように、上底を有する円筒状の挿入部56であって、その内面上部に下方を向く上段部57aと、その内面下部に上方を向く下段部57bとを有する燃料電池本体への接続部、あるいは、燃料電池本体に装着しているアダプターへの接続部に、連結部材の連結部45を挿入することにより使用する。挿入部の上底58aには、燃料電池本体に燃料を送る注入口58が形成されている。
【0044】
つまり、燃料カートリッジ55を挿入部56に挿入することにより、連結部の係合段部51が、挿入部の下段部57bと係合し、燃料カートリッジ55が挿入部56に固定される。このとき、挿入部の上段部57aが連結部のシールリング52を下方に押圧し、連通孔50が開放される。
【0045】
ここで燃料容器30は、内袋12を介して加圧剤によって常時収縮するように押圧されているため、燃料容器30の燃料が内通路46を介して連結部の連通孔50から挿入部の注入口58に送り出される。
このとき、内袋12が燃料容器30の全体を押圧するため、燃料容器30の燃料がなくなるまで押圧することができる。また、燃料容器は常に圧力を受けているため、燃料容器が弾力を有していても、あるいは、燃料の消費を途中で停止しても、燃料容器は元の容積に戻らない。その結果、燃料にジメチルエーテルのような蒸気圧を有する成分を使用しても燃料容器内部にガスだまりができずに常に液体の燃料で満たすことができ、燃料容器をどの方向で使用しても確実に燃料を供給することができる。
【0046】
燃料容器30の燃料がなくなったときは、燃料カートリッジ55を挿入部56から取り外す。そして、連結部材31を加圧容器10から外しながら、燃料容器30を内袋12から取り出す。さらに、燃料容器30を連結部材31から外し、新しい燃料容器30と交換することができる。このように加圧容器10は、燃料容器30の燃料を効率よく容易に吐出させることができ、使用後の燃料容器の交換も容易にできる。
【0047】
上述の燃料カートリッジ55では、燃料容器30の燃料容器本体32としてラミネートチューブを開示したが、充填する燃料に対して安定であり、加圧剤の圧力や内袋の収縮力により変形する可撓性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、フッ素樹脂などの合成樹脂を押し出し成型する、あるいは、シリコーンゴムなどのゴムを押し出し成型することによって図2の燃料容器本体32と同形の胴部からなる樹脂チューブあるいはゴムチューブを用いても良い。また、図5a〜cのような合成樹脂をブロー成型することによって成形された燃料容器本体、図6のようなフィルム等から成形された燃料容器本体(パウチ)あるいは図7のような立方体状あるいは直方体状の燃料容器本体(ブリックパック)などでもよい。これらは、図2bのキャップ37と螺合して使用される。
【0048】
プロー成形による燃料容器本体32aは、図5aに示すように、円筒状の胴部34aと、胴部の上端から縮径した外周面にネジ33aを備えた口部35cと、胴部の下端から球面上に突出する底部36aとからなる。また、底部下端から突出したピンチオフ部38がブロー成型をすることにより形成される。
また、図5bに示すように、燃料容器本体32aの底部36aを円錐状に突出させてもよい。この場合、加圧容器の内袋に燃料容器本体を挿入しやすくなる。
さらに、図5cに示すように、燃料容器本体の胴部34aの断面が楕円状となる楕円筒状としてもよい。その場合、燃料容器本体32aは、胴部34aの長軸方向の面同士が密着する方向に変形しながら潰れるため、充填された内容物の残量が小さくなり、燃料容器を最後まで使い切りやすい。
なお、燃料容器本体32aに前述のアルミ蒸着フィルムやシリカ蒸着フィルムなどの蒸着加工を施してもよい。
【0049】
燃料容器本体(パウチ)32bを図6に示す。パウチ32bは、ラミネートチューブで用いた積層フィルムなどを複数枚用いて接着剤や熱溶融などにより底部36bと胴部34bの端部をシールして袋状にし、さらに肩部をシールして口部37bを取り付けている。
なお、積層フィルムの組み合わせとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート/オレフィン系シーラント、二軸延伸ナイロンフィルム/オレフィン系シーラント、ポリエチレンテレフタレート/アルミ箔/オレフィン系シーラント、ポリエチレンテレフタレート/アルミ箔/二軸延伸ナイロンフィルム/オレフィン系シーラント、二軸延伸ナイロンフィルム/エチレンビニルアルコール共重合体フィルム/オレフィン系シーラント、などが挙げられる。
【0050】
燃料容器本体(ブリックパック)32cは、図7aに示すように、板紙に合成樹脂フィルムやアルミ箔などをラミネートした積層フィルムを用いて立方体あるいは直方体などの立体状に組み立てて胴部34cとし、その天面に口部35dを取り付けて成形される。なお、図7bに示すように、口部を設けず、天面に開口を設けて開口をアルミ箔36cでシールしてもよい。
前記積層フィルムとしては、たとえば、ポリエチレン/紙/ポリエチレン、ポリエチレン/紙/アイオノマー/アルミ箔/アイオノマー/ポリエチレン、ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミ箔/ポリエチレン、などが挙げられる。
【0051】
図8に示す加圧容器60は、内袋として合成ゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、エラストマーなどの弾性体を用いたものであり、容器本体61と、その容器本体に挿入される内袋62と、内袋が取り付けられ、容器本体と連結する蓋体63とからなる。
容器本体61は、合成樹脂や耐圧ガラスなどを用いて有底筒状に成型され、口部64の外周に雄ねじが形成されている。容器本体61は、内部に加圧剤を充填することも可能であるが、この実施の形態では内袋の収縮力によって燃料容器を圧縮し、その内部の燃料を供給することができるため、空間Sの容積が変化しても容器本体内の圧力を一定にして燃料容器を挿入しやすくするなどの目的で、内外を連通させる通気孔を形成してもよい。
内袋62は、円錐状に収縮する胴部66と、その上端に形成されたフランジ部67とを備えている。また胴部は断面が楕円形のものを用いてもよく、さらに胴部66の上部から底部にかけて断面積が次第に小さくなるテーパー部を設けても良い。
蓋体63は、外筒68と、内筒69と、それらを上端で接続する接続部65とからなり、外筒68の内面には、口部の雄ねじと螺合する雌ネジが形成されており、内筒69の下部69aの内径が縮径している。この下部69aが、燃料容器の挿入部となる。
【0052】
この加圧容器60は、内袋のフランジ部67が接続部65と当接するように、内袋62に蓋体の内筒69を挿入させ、その後、蓋体63の雌ネジと、容器本体61の雄ねじとを連結させることにより組み立てられる。このとき、内袋のフランジ部67が容器本体61と蓋体63との間に挟まれるため、内袋62が蓋体63から外れることがない。
【0053】
この加圧容器60は、内袋62自身が弾力性を有するので、内袋62内に挿入される燃料容器を押圧することができる。この加圧容器60は、容器本体61と内袋62との間に加圧剤は不要であるが、加圧剤を充填してもよい。その場合、内袋62が弾力性を有するため、フランジ部67がシール材の作用もする。内袋62に使用する材料としては、室温で弾性を有する物であれば、特に限定しない。例えば、破断伸度が好ましくは200%以上、更に好ましくは300%以上、又、300%伸張時の弾性率が1MPa以上が好ましい。又、繰り返し使用時に性能低下をおこさない為に、永久伸び歪みが20%以下であることが好ましい。こうした要件に適合する材料としては、ブチルゴム(BR)、アクリルゴム(NBR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、シリコーン系エラストマー、フッ素ゴム、塩ビ系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、等の中から選定する事が出来る。この内袋は、加圧気体も含有出来るが加圧気体無しでもその内袋の弾性だけで燃料容器中の燃料を燃料電池側に送液出来る為に、必ずしも密閉袋である必要はなく、例えば、穴あきの袋やメッシュ構造物、或いはスリットフィルムの編み物等でも可能である。又、燃料を押す圧力は、内袋61の残留応力によって調整できる為に、材料の組成や袋の厚さによって容易に調整が可能である。
【0054】
図9aに示す加圧容器70は、容器本体71、内袋72、蓋体73からなり、容器本体71が充填用バルブを備えていないものである。
容器本体71は、図9bに示すように、アルミニウム、ブリキなどの金属板を絞りしごき加工またはインパクト加工により底部76および円筒状の胴部77を備えた有底筒状に形成し、ついで、その胴部上端にネッキング加工を施して肩部78、首部79を形成し、首部上端に拡径した口部80を形成したものである。なお、図1の容器本体11と同様に、合成樹脂や耐圧ガラスなど、耐圧性を有する他の材質のものを用いてもよい。
【0055】
内袋72は、図9bに示すように、断面が楕円形の胴部81と、上端において断面が円形となるように、かつ、断面積が拡径するように胴部の上端から上方に延びる肩部82と、その肩部から上方に伸びる断面が円形の首部83と、胴部81の下端に形成され、胴部81よりも断面積が次第に小さくなる底部84とからなる。断面積が次第に小さくなる部分は胴部の下端から底部の間に限定されず、胴部の上端から底部の間で任意に設けることができる。また、胴部81は長軸方向の面を平面としてもよい。また、底部84は、ブロー成形時に胴部の下端(底部)を密閉するピンチオフ部85を備えている。また、この内袋にもガスバリア層を設けるのが好ましい。
【0056】
蓋体73は、円筒状の栓体86と、その栓体を覆うカバー87とからなる。
栓体86は、胴部88と、その胴部上端に形成された半径方向外側に延びる外フランジ部89と、胴部下端に形成された半径方向内側に延びる内フランジ部90とからなる。また、胴部外周の外フランジ部の下には、環状の溝91が形成されており、その溝91には、ドーナッツ状のシール部材92aが嵌合される。なお、内フランジ部90のコーナー部には、アールが形成されており、燃料容器を挿入していないときや、燃料容器内の燃料が少なくなり、内袋が大きく収縮したときに、内袋が破れないように保護する作用がある。
【0057】
カバー87は、栓体の内面、内フランジ部の上面および外フランジ部の上面と当接するS字状の基部93と、その基部下端から上方に立ち上がる円筒状の挿入部94と、基部上端から下方に延びる外枠95とからなる。
【0058】
このように構成されているため、図9bに示すように、容器本体71内に内袋72を挿入し、蓋体73の栓体86の外周とカバーの外枠95内周との間に容器本体の口部80と内袋の首部83を挿入し、栓体86の外周面と内袋の首部83の内面とを嵌合する。容器本体71と内袋72との間の隙間S内にアンダーカップ充填により加圧剤を充填する。その後、容器本体の口部80の上端がシール部材92aに当接するように蓋体を下方に押し付け、カバーの外枠95の下端95aを容器本体の首部79に対してカシメつける(図9a参照)。
【0059】
図10に上述の加圧容器70と、燃料容器96と、連結部材97とからなる燃料カートリッジ100を示す。燃料容器96は、キャップを外している以外は、図2の燃料容器30と実質的に同じものである。
連結部材97は、円板状の基部101と、その基部周縁から下方に延びて、蓋体の下端の外周とクリップ嵌合する容器装着部102と、基部の下面中心から突出して形成され、燃料容器の口部外周と係合する円筒状の燃料容器装着部103と、基部の上面中心から突出して形成され、上底104aを有する円筒状の連結部104と、基部周縁から上方に延びて、燃料電池本体または燃料電池本体に装着したアダプターとクリップ嵌合する電池装着部105とからなる。燃料容器装着部の内面103aには、燃料容器の口部外周に形成された雄ネジとネジ嵌合ができるように、雌ネジが形成されている。さらに、燃料容器装着部の内面上端には、ガスケット106が設けられている。なお、容器装着部102にも前記切替手段を設けることが好ましい。
【0060】
このように構成されているため、燃料カートリッジ100は、燃料電池装置と連結しても、外れるおそれが少ない。
【0061】
図11cに示す加圧容器110は、容器本体111と、その内部に収容される内袋112と、容器本体111の開口部に固定される蓋体113とからなる。
容器本体111は、アルミニウムやブリキなどを円盤状にしたスラグから絞り・しごき加工、ネッキング加工等によって一体に成型されるものであり、円筒状の胴部116と、その胴部下端に設けられる底部117と、胴部上端に設けられる肩部118と、その肩部上端にカーリング加工を施して形成されるビード部119とからなる(図11a参照)。
【0062】
内袋112は、ブロー成形によって成形されるものであり、断面が楕円形の胴部121と、上端において断面が円形となるように、かつ、断面積が縮小するように胴部の上端から上方に延びる肩部122と、その肩部から上方に伸びる断面が円形の首部123と、その首部の上端に形成されるフランジ部124と、胴部121の下端に形成され、胴部121よりも断面積が次第に小さくなり、ピンチオフ部126を備えた底部125とからなる。
【0063】
蓋体113は、上端にカール部132を備えた円筒状の被せ部131と、円筒状の挿入部133と、その被せ部131の下端と挿入部133の下端とを接続する接続部134とからなる。
【0064】
このように構成された加圧容器110は、容器本体111に内袋112を挿入する(図11a参照)。次に、内袋のフランジ部124に、シール部材118aを介して蓋体113を被せ、内袋の首部123の内面と蓋体の被せ部131の円筒部分の外周面とを気密に嵌合させる。そして、容器本体のビード部119と内袋のフランジ部124との間から加圧剤(矢印方向)を充填(アンダーカップ充填)(図11b参照)し、蓋体の被せ部131がシール材とフランジ部を介してビード部と当接するように下方に押し付け、被せ部の円筒部分を内側から容器本体の肩部118に向けて(矢印方向)カシメ付けてカシメ部113aを形成し、容器本体111と内袋112との間の空間Sを密閉(図9c参照)して製造される。これにより、内袋112は、常時、空間Sに充填された加圧剤により収縮するように押圧される。なお、加圧容器の状態で輸送あるいは販売するときは、内袋を保護するためキャップを蓋体に装着しておくことが好ましい。
【0065】
図12に図11の加圧容器110と、燃料容器136と、連結部材137とからなる燃料カートリッジ140を示す。燃料容器136は、キャップを外している以外は、図2の燃料容器30と実質的に同じものであり、連結部材137は、図10の連結部材97と実質的に同じものである。
この燃料カートリッジ140も、図4bの挿入部56に連結部104を挿入することにより、燃料を燃料電池内に供給することができる。また、燃料容器の燃料がなくなったときも、その交換が簡単である。
【実施例】
【0066】
ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の発電セルに図4に示す燃料カートリッジ55を装着し、発電実験を行った。
発電セルは、アノード触媒と、カソード触媒と、その間に配置される電解質膜とを備えた膜・電極接合体を2枚のセルホルダで挟んで固定したものである。アノード触媒としては、白金とルテニウムをカーボンブラックに塗布したものを用い、カソード触媒としては、白金をカーボンブラックに塗布したものを用いた。電解質膜として、Nafion115(商品名)を用いた。
【0067】
燃料カートリッジの加圧容器10の容器本体11は、ポリエチレンテレフタレート製を用い、内袋12は、ポリエチレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレン(PE/EvOH/PE)の三層構造の積層体を用いた。また、容器本体11と内袋12との間の空間Sに、加圧剤として窒素ガスを0.5MPaの圧力に充填した。また、連結部材31の通路46には、孔径が40μmであるマイクロキャピラリーチューブを挿入し、初期流量を0.5ml/minに流量の調整を行った。
燃料容器30の燃料容器本体32としてラミネートチューブ容器を用い、燃料として2Mのメタノール水溶液100mlを充填した。
【0068】
1.燃料供給方法の比較
上述の装置を用い、発電セルの温度を50℃に保ち、アノードへの燃料供給量を0.5ml/minとして発電実験(実施例1)行った。なお、同じ燃料を用いた比較実験として、動力ポンプを用いてアノードへの燃料供給量を0.5ml/minとして発電実験(比較例1)を行った。さらに、比較実験として、加圧剤を充填しなかったこと以外は、同じ燃料カートリッジを用いて発電実験(比較例2)を行った。その結果を図13a、bに示す。
この結果から本発明の燃料カートリッジは、動力ポンプと同等の性能が得られ、加圧剤を充填しなかった燃料カートリッジよりも発電能力が優れていることがわかる。
【0069】
2.燃料カートリッジの向きの比較
前述の発電実験と同じ条件で、燃料カートリッジを立てた状態(正立)、燃料カートリッジを逆さまにした状態(倒立)、燃料カートリッジを横置きにした状態、さらに、燃料カートリッジを正立→横置き→倒立→正立と15分ごとに向きを変えた状態の4つの状態で行った。
その結果を図14a、bに示す。この結果から、燃料カートリッジの向きによる発電量に差はなく、モバイル用の燃料電池に本発明の燃料カートリッジが適していることがわかる。
【0070】
3.燃料の供給停止時と再供給時の挙動
発電実験中に燃料の供給を停止したときの発電量の低下する状態を測定し、また、発電量が低下してから燃料の供給を再度開始したときの発電量の上昇する様子を測定した。その結果を図15に示す。
図15に示すように、連続運転中に燃料の供給を停止してもしばらく発電した。また、発電量が低下した後で燃料を再度供給すると、すぐにもとの発電量に回復した。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の燃料電池用の燃料容器を加圧するための加圧容器の一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図2a、bは、本発明の燃料カートリッジの燃料容器の燃料容器本体およびキャップの一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図3a、bは、図1の加圧容器を用いて燃料カートリッジを組み立てる工程を示す工程図である。
【図4】図4aは、図1の加圧容器を用いた燃料カートリッジを示す側面断面図であり、図4bは、その燃料カートリッジの挿入部を示す側面断面図である。
【図5】図5a、b、cは、それぞれ本発明の燃料カートリッジの燃料容器の燃料容器本体の他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の燃料カートリッジの燃料容器の燃料容器本体のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】図7a、bは、それぞれ本発明の燃料カートリッジの燃料容器の燃料容器本体のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の燃料電池用の加圧容器の他の実施形態を示す側面断面図である。
【図9】図9aは、本発明の燃料電池用の加圧容器のさらに他の実施形態を示す側面断面図であり、図9bは、図9aの加圧容器の製造過程を示す工程図である。
【図10】図9aの加圧容器を用いた本発明の燃料カートリッジの他の実施形態を示す側面断面図である。
【図11】図11a、b、cは、本発明の燃料電池用の加圧容器のさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【図12】図11cの加圧容器を用いた本発明の燃料カートリッジのさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【図13】図13a、bは、図4の燃料カートリッジと加圧剤を用いた燃料カートリッジの発電量を示す測定図である。
【図14】図14a、bは、図4の燃料カートリッジの向きを変えて発電したときの発電量を示す測定図である。
【図15】図4の燃料カートリッジからの燃料の供給を停止、再開始したときの発電量の状況を示す測定図である。
【符号の説明】
【0072】
S 空間
10 加圧容器
11 容器本体
12 内袋
13 ハウジング
14 カバーキャップ
15 充填用バルブ
16 底部
17 胴部
18 肩部
19 首部
20 口部
21 胴部
22 底部
23 フランジ部
24 本体
25 上フランジ部
26 下フランジ部
27 内筒
28 外筒
28a 外筒の下端
29 接続部
30 燃料容器
31 連結部材
32、32a、32b、32c 燃料容器本体
33、33a ネジ
34、34a、34b、34c 胴部
35a、35c、35d 口部
35b 肩部
35 頭部
36、36a、36b 底部
36c アルミ箔
37 キャップ
37a 上面
37b 口部
38 ピンチオフ部
41 外周壁
42 内周壁
43 基部
44 先鋭突起
45 連結部
46 内通路
47 係合突起
49 環状凹部
50 連通孔
51 係合段部
52 シールリング
55 燃料カートリッジ
56 挿入部
57a 上段部
57b 下段部
58 注入口
58a 上底
60 加圧容器
61 容器本体
62 内袋
63 蓋体
64 口部
65 接続部
66 胴部
67 フランジ部
68 外筒
69 内筒
69a 内筒の下部
70 加圧容器
71 容器本体
72 内袋
73 蓋体
76 底部
77 胴部
78 肩部
79 首部
80 口部
81 胴部
82 肩部
83 首部
84 底部
85 ピンチオフ部
86 栓体
87 カバー
88 胴部
89 外フランジ部
90 内フランジ部
91 溝
92a シール部材
93 基部
94 挿入部
95 外枠
95a 下端
96 燃料容器
97 連結部材
100 燃料カートリッジ
101 基部
102 容器装着部
103 燃料容器装着部
103a 内面
104 連結部
104a 上底
105 電池装着部
106 ガスケット
110 加圧容器
111 容器本体
112 内袋
113 蓋体
113a カシメ部
116 胴部
117 底部
118 肩部
118a シール部材
119 ビード部
121 胴部
122 肩部
123 首部
124 フランジ部
125 底部
126 ピンチオフ部
131 被せ部
132 カール部
133 挿入部
134 接続部
136 燃料容器
137 連結部材
140 燃料カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する耐圧性の容器本体と、
その容器本体に収容され、可撓性を有する内袋と、
前記容器本体と内袋との間の空間を密閉すると共に、内袋が開口するように、内袋を容器本体の開口部に固定するための蓋体と、
前記空間に充填される加圧剤とからなる、燃料電池の燃料容器を加圧するための加圧容器。
【請求項2】
前記内袋が、ガスバリア性を有している請求項1記載の加圧容器。
【請求項3】
開口部を有する容器本体と、
その容器本体に収容され、弾力性を有する内袋と、
その内袋を開口するように、内袋を容器本体の開口部に固定するための蓋体とからなる、燃料電池の燃料容器を加圧するための加圧容器。
【請求項4】
前記蓋体が、中心に筒状の挿入口を備えている、請求項1または3記載の加圧容器。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の加圧容器と、前記内袋に収容され、燃料が充填された可撓性の燃料容器とからなる燃料カートリッジ。
【請求項6】
前記加圧容器と着脱自在であり、かつ、燃料容器と着脱自在である連結部材を備えた、請求項5記載の燃料カートリッジ。
【請求項7】
前記連結部材が、燃料容器と燃料電池本体または燃料電池本体に接続したアダプターと連通するための通路と、その通路をシールするシール材とを備えている、請求項6記載の燃料カートリッジ。
【請求項8】
前記連結部材が、燃料容器を装着したときに燃料容器の一部を開封する開封手段を備えており、燃料容器の一部を開封することにより燃料容器内部と通路とが連通する、請求項5記載の燃料カートリッジ。
【請求項9】
請求項6記載の燃料カートリッジの組立方法であって、燃料が充填されている燃料容器を連結部材に装着し、燃料容器を請求項1〜4いずれか記載の加圧容器の内袋内に挿入し、連結部材を加圧容器に装着する、燃料カートリッジの組立方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−311150(P2008−311150A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159458(P2007−159458)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】