説明

加工テーブル用吸着装置

【解決手段】加工テーブル上に吸着部を設置し、この吸着部は所要数の吸引口を有するとともにこの吸引口にワークを吸引する加工テーブル用吸着装置である。この吸着部は複数の吸着構成部からなり、互いに隣り合う一対の吸着構成部の間隔を、適宜駆動手段によって調節可能とした加工テーブル用吸着装置である。
【効果】適宜駆動手段を作動させることによって、吸着構成部がワークの端部に合うようにそれらの間隔を調節することができる。形状の異なるワークに変更しても、ワークの端部に吸着部を適正に配置できる。各吸引口の位置をワークの形状に合わせて手作業で調節していた従来と異なり、ワークの配置作業ひいては加工作業の作業能率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は加工テーブル用吸着装置に関し、加工、組立て、搬送、検査、測定等を行う際に、テーブル上にワークを真空吸着によって保持する際に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の吸着装置は、手作業によって、吸着部における吸引口の一部をを塞いだり開放したりして全体の吸引口群の配置をワークの形状に適合させ、一部の吸引口からの空気漏れを防止することによりワークを確実に吸着・保持していた。

【0003】
【特許文献1】特開2001−267271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の加工テーブル用吸着装置にあっては、各吸引口の位置をワークの形状に合わせるにあたって手作業によって塞いだり開放したりしていたため、形状の異なるワークに変更するたびに、面倒な手作業を必要とし、作業能率が低下せざるをえないという不都合を有した。
【0005】
この発明の課題はこれらの不都合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記不都合を解消するために、この発明に係る加工テーブル用吸着装置においては、加工テーブル上に吸着部を設置し、この吸着部は所要数の吸引口を有するとともにこの吸引口に吸着対象物を吸引する加工テーブル用吸着装置において、前記吸着部は複数の吸着構成部からなり、互いに隣り合う一対の吸着構成部の間隔を、適宜駆動手段によって調節可能としたものである。
【0007】
なお、前記駆動手段を、前記ワークのデータを入力したコントロール手段を介して作動させ、前記一対の吸着構成部をこのワークの形状に合うように配置させることもできる。
【0008】
また、前記一対の吸着構成部のうち片方のみを水平方向に移動可能とすることもできる。
【0009】
また、前記適宜駆動手段としてボルト・ナット機構を使用することもできる。
【0010】
また、前記吸着部を縦横方向に配置された4個の吸着構成部から構成することもできる。
【0011】
更に、前記4個の吸着構成部のうち3個の吸着構成部を水平歩行に移動可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る加工テーブル用吸着装置は上記のように構成されているため、即ち、加工テーブル上に吸着部を設置し、この吸着部は所要数の吸引口を有するとともにこの吸引口に吸着対象物を吸引する加工テーブル用吸着装置において、前記吸着部は複数の吸着構成部からなり、互いに隣り合う一対の吸着構成部の間隔を、適宜駆動手段によって調節可能としたため、適宜駆動手段を作動させることによって、前記吸着構成部がワークの端部に合うようにそれらの間隔を調節することができるものである。
【0013】
よって、この加工テーブル用吸着装置を使用すれば、形状の異なるワークに変更しても、ワークの端部に吸着部を適正に配置できる結果、各吸引口の位置をワークの形状に合わせて手作業で調節していた従来と異なり、ワークの配置作業ひいては加工作業の作業能率を向上させることができる。
【0014】
なお、前記駆動手段を、前記ワークのデータを入力したコントロール手段を介して作動させ、前記一対の吸着構成部をこのワークの形状に合うように配置させるようにすれば、例えば、NC制御に従って、前記駆動手段を作動して前記一対の吸着構成部をこのワークの形状に合うように配置させれば、ワークのデータに従って前記吸着構成部が配置される結果、形状の異なるワークに変更しても自動的にワークの端部に吸着部を適正に配置できるものである。このため、ワークの配置作業ひいては加工作業の作業能率を更に向上させることができる。
【0015】
また、前記一対の吸着構成部のうち片方のみを水平方向に移動可能とすれば、これらの間隔の調整がしやすいとともに前記駆動手段をシンプルに構成することができる。
【0016】
また、前記適宜駆動手段としてボルト・ナット機構を使用すれば、一対の吸着構成部の間隔を細かな割合で調節しやすいものである。
【0017】
また、前記吸着部を縦横方向に配置された4個の吸着構成部から構成すれば、大きな(表面積の広いドアのようなもの)ワークに対しても対応することができる。
【0018】
この場合、前記4個の吸着構成部のうち3個の吸着構成部を水平歩行に移動可能とすれば、大きなワーク(表面積の広いドアのようなもの))に対しても、これらの間隔の調整がしやすいとともに前記駆動手段をシンプルに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明に係る加工テーブル用吸着装置は、吸着部を複数の吸着構成部から構成し、互いに隣り合う一対の吸着構成部の間隔を適宜駆動手段によって調節可能とした事に最も主要な特徴を有する。
【実施例】
【0020】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1はこの発明に係る加工テーブル用吸着装置の正面図、図2は同右側面図、図3は同平面図、図4は図1におけるIV-IV 線拡大断面の要部を示した図である。
【0022】
図1〜図3において、Mは木製ドア等の加工装置,Tはそのテーブルである。10はこのテーブルTのフレームである。11は天板であり、前記フレーム10の上部に形成されている。この天板11にワークWが載置された状態で吸引固定され、加工工具A,B,Cによって切削加工される。なお、加工工具A,B,Cは、従来の方法で三次元方向にその位置を自由に調節できる。
【0023】
21は固定基板であり、前記天板11の表面に固定されている。この固定基板21は前記天板11の端縁に位置している(図1及び図3を参照のこと)。22は移動基板であり、前記天板11の表面に設置されている。この移動基板22は前記固定基板21と略平行に位置し、ガイドレール23,23 に沿って水平方向に移動し、前記固定基板21に近づいたり離れたりする。この進退および移動距離の調節は、ボールネジ24の回転によるナット部221 の螺動、所謂ボルト・ナット機構(この発明の「駆動手段」に相当する)によって行われる。25は前記フレーム10に設置されたサーボモーターであり、このボールネジ24の回転を制御する。
【0024】
次に、31は第一吸着構成具(この発明の「吸着構成具」に相当する)であり、前記固定基板21の上面左端部(図1において)に固定されている。この第一吸着構成具31は、図4に示すように、所要数の吸着孔32,32,…を有し、吸引通路33を介して矢印方向に減圧吸引することにより、その表面にワークWの角部を吸引固定する。なお、211 は前記固定基板21に前記第一吸着構成具31を固定するにあたって支持するための支持具である。
【0025】
34は第二吸着構成具(この発明の「吸着構成具」に相当する)であり、前記固定基板21の上面における右端部(図1及び図2において)に移動可能に設置されている。この第二吸着構成具34はガイドレール35,35 に沿って水平方向に移動し、前記第一吸着構成具31に近づいたり離れたりする。この進退および移動距離の調節は、ボールネジ36の回転によるナット部341 の螺動、所謂ボルト・ナット機構(この発明の「駆動手段」に相当する)によって行われる。37は前記固定基板21に設置されたサーボモーターであり、このボールネジ36の回転を制御する。なお、図4に示すように、この第二吸着構成具34も前記第一吸着構成具31と同様に所要数の吸着孔32,32,…を有し、吸引通路33を介して矢印方向に減圧吸引することにより、その表面にワークWの角部を吸引固定する。
【0026】
次に、図1において、51は第三吸着構成具(この発明の「吸着構成具」に相当する)であり、前記移動基板22の上面左端部に固定されている。この第三吸着構成具51も前記第一吸着構成具31と同じ構成であり、その表面にワークWの角部を吸引固定する。
【0027】
54は第四吸着構成具(この発明の「吸着構成具」に相当する)であり、前記移動基板22の上面における右端部に移動可能に設置されている。この第四吸着構成具54はガイドレール55,55 に沿って水平方向に移動し、前記第三吸着構成具51に近づいたり離れたりする。この進退および移動距離の調節は、ボールネジ56の回転によるナット部541 の螺動、所謂ボルト・ナット機構(この発明の「駆動手段」に相当する)によって行われる。57は前記移動基板22に設置されたサーボモーターであり、このボールネジ56の回転を制御する。なお、この第四吸着構成具34も前記第一吸着構成具31と同じ構成であり、その表面にワークWの角部を吸引固定する。
【0028】
Dはこの加工装置Mのコントロール手段である。例えは、NC制御装置である。このコントロール手段Dには、ワークWの切削加工のデータとともにワークWの大きさ(幅×長さ)のデータが入力されている。このワークWを切削加工する場合、まず、前記コントロール手段DにおけるワークWの幅のデータに従って、前記サーボモーター25を作動させ、ボールネジ24を回動させることによって、前記移動基板22を前記固定基板21に対して進退させる。そして、これらの基板22,21 の距離、即ち、第一吸着構成具31と第三吸着構成具51との距離および第二吸着構成具34と第四吸着構成具54との距離aをワークWの幅に一致させる。
【0029】
次に、前記コントロール手段DにおけるワークWの長さのデータに従って、前記サーボモーター37を作動させ、ボールネジ36を回動させることによって、前記第二吸着構成具34を前記第一吸着構成具31に対して進退させる。そして、これらの吸着構成具34,31 の距離bをワークWの長さに一致させる。同時に、前記サーボモーター57を作動させ、ボールネジ56を回動させることによって、前記第四吸着構成具54を前記第三吸着構成具51に対して進退させる。そして、これらの吸着構成具54,51 の距離bもワークWの長さに一致させる。すると、前記第一吸着構成具31と前記第二吸着構成具34と前記第三吸着構成具51と前記第四吸着構成具54とによって、ワークWと同じ大きさ(幅×長さ)の載置面を構成することができる。
【0030】
この状態で、図1に示すように、ワークWをその四つの角部がそれぞれ前記第一吸着構成具31、前記第二吸着構成具34、前記第三吸着構成具51、前記第四吸着構成具54で構成される四角形に一致するように載置する。そして、前記コントロール手段Dに従って、吸引通路33を介して減圧吸引することにより、前記第一吸着構成具31、前記第二吸着構成具34、前記第三吸着構成具51、前記第四吸着構成具54の各々の吸着孔32,32,…の表面にワークWを吸引固定する。
【0031】
その後、前記コントロール手段Dに従って、加工工具A,B,Cを、従来の方法で三次元方向に移動させながら、目的とする形状に切削加工する。ワークWは前記第一吸着構成具31、前記第二吸着構成具34、前記第三吸着構成具51、前記第四吸着構成具54で構成される長方形に一致するように載置されているため、片持ち梁の状態とはならないため、切削加工しやすいものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、加工テーブルに、形状の異なるワークを吸引固定する場合に、各吸引口の位置をワークの形状に合わせて手作業で調節していた従来よりも、高能率で作業する場合に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1はこの発明に係る加工テーブル用吸着装置の正面図である。
【図2】図2は同右側面図である。
【図3】図3は同平面図である。
【図4】図4は図1におけるIV-IV 線拡大断面の要部を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
A … 加工工具
B … 加工工具
C … 加工工具
D … コントロール手段
M … 加工装置
T … テーブル
W … ワーク
a … 第一吸着構成具と第三吸着構成具との距離,
a … 第二吸着構成具と第四吸着構成具との距離
b … 第一吸着構成具と第二吸着構成具との距離
b … 第三吸着構成具と第四吸着構成具との距離
10 … フレーム
11 … 天板
21 … 固定基板
22 … 移動基板
221 … ナット部(ボルト・ナット機構)(駆動手段)
23 … ガイドレール
24 … ボールネジ(ボルト・ナット機構)(駆動手段)
25 … サーボモーター
31 … 第一吸着構成具(吸着構成具)
32 … 吸着孔
33 … 吸引通路
34 … 第二吸着構成具(吸着構成具)
341 … ナット部(ボルト・ナット機構)(駆動手段)
35 … ガイドレール
36 … ボールネジ(ボルト・ナット機構)(駆動手段)
37 … サーボモーター
51 … 第三吸着構成具(吸着構成具)
54 … 第四吸着構成具(吸着構成具)
541 … ナット部(ボルト・ナット機構)(駆動手段)
55 … ガイドレール
56 … ボールネジ(ボルト・ナット機構)(駆動手段)
57 … サーボモーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工テーブル上に吸着部を設置し、この吸着部は所要数の吸引口を有するとともにこの吸引口にワークを吸引する加工テーブル用吸着装置において、前記吸着部は複数の吸着構成部からなり、互いに隣り合う一対の吸着構成部の間隔を、適宜駆動手段によって調節可能としたことを特徴とする加工テーブル用吸着装置。
【請求項2】
請求項1の加工テーブル用吸着装置において、前記駆動手段を、前記ワークのデータを入力したコントロール手段を介して作動させ、前記一対の吸着構成部をこのワークの形状に合うように配置させることを特徴とする加工テーブル用吸着装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の加工テーブル用吸着装置において、前記一対の吸着構成部のうち片方のみを水平方向に移動可能としたことを特徴とする加工テーブル用吸着装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2の加工テーブル用吸着装置において、前記適宜駆動手段としてボルト・ナット機構を使用したことを特徴とする加工テーブル用吸着装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2の加工テーブル用吸着装置において、前記吸着部が縦横方向に配置された4個の吸着構成部から構成されていることを特徴とする加工テーブル用吸着装置。
【請求項6】
請求項5の加工テーブル用吸着装置において、4個の吸着構成部のうち3個の吸着構成部を水平歩行に移動可能としたことを特徴とする加工テーブル用吸着装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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