説明

加工装置

【課題】反射率に関らず各種素材を被加工物として利用でき、豊富な表現態様によって所望する画像を被加工物の表面に形成することが可能な加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置100は、ワークWKの表面に画像の印刷するためのインクヘッドユニット121を保持するプリントキャリッジ130と、同表面に点状の加工痕を形成するための打刻針141を保持する打刻キャリッジ140と、同ワークWKを切断するためのカッター121を保持するカッティングキャリッジ120とを備えている。加工装置100は、所望する画像を形成するための各加工データに基づいて、先ずワークWKの表面に対して画像を印刷する。そして、その画像上に点状の加工痕を形成するとともに、ワークWKの表面の切り抜き加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望する画像を被加工物の表面に形成するための加工データに基づいて、前記所望する画像を前記被加工物の表面に形成する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金,プラチナ,真鍮,アルミニウム,ステンレス鋼などの比較的塑性変形し易い被加工物の表面に点状の加工痕を複数形成して、これら複数の加工痕の集合によって所望する画像を被加工物の表面に形成する加工装置が知られている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−61540号公報
【0003】
しかしながら、このような加工装置においては、鮮明な画像を形成するために光の反射率が大きい素材(例えば、プラチナ、真鍮などの金属色の素材)を被加工物として用いることが多い。このため、被加工物として用いる素材の選択の幅が実質的に狭いという問題があった。一方、本発明の発明者らは、上記したように被加工物として用いる素材の選択の幅が狭いこと、および加工装置によって加工される被加工物は通常1つの素材から構成されていることなどから、被加工物に形成される画像の表現態様が単調であると感じていた。
【発明の開示】
【0004】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、反射率に関らず各種素材を被加工物として利用でき、豊富な表現態様によって所望する画像を被加工物の表面に形成することが可能な加工装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、所望する画像を被加工物の表面に形成するための加工データに基づいて、前記所望する画像を前記被加工物の表面に形成する加工装置であって、被加工物の表面に画像を印刷する印刷加工手段と、被加工物の表面に点状または線状の加工痕を形成する痕加工手段と、印刷加工手段および痕加工手段を、被加工物に対して相対的に変位させる変位手段とを備えたことにある。
【0006】
このように構成された本発明の特徴によれば、印刷加工手段は被加工物に対して文字、図形および色彩などの画像を印刷し、痕加工手段は被加工物に対して点状または線状の加工痕を形成する。したがって、例えば、木材や樹脂など金属に比べて反射率が低い素材を被加工物とした場合、印刷加工手段により被加工物の表面に金色および銀色などの金属色を印刷した後、痕加工手段によって点状または線状の加工痕によって所望する画像を形成することができる。これにより、素材の反射率に関らず各種素材を被加工物として利用することができる。
【0007】
また、印刷加工手段によって被加工物の表面に互いに異なる色を印刷(例えば金色と銀色)した後、痕加工手段により点状または線状の加工痕によって所望する画像を形成することもできる。これによれば、従来の加工装置に比べて豊富な表現態様によって所望する画像を被加工物の表面に形成することができる。さらに、また、印刷加工手段によって被加工物の表面に互いに異なる複数の色を重ねて印刷(例えば赤色を印刷した上に青色を印刷)し、その後、痕加工手段によって点状または線状の加工痕を形成する。この場合、下地に印刷された色(赤色)が現れるように加工痕を形成する深さを調整する。これによれば、表面に印刷された色(青色)と、同表面に印刷された色の下に印刷された色(青色)によって所望する画像を被加工物の表面に形成することができる。すなわち、金色や銀色などの金属色以外の色によっても所望する画像を表現することができる。この結果、従来の加工装置に比べて豊富な表現態様によって所望する画像を被加工物の表面に形成することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記加工装置において、さらに、被加工物を切断する切断加工手段を備え、変位手段は、印刷加工手段および痕加工手段に加えて切断加工手段を、被加工物に対して相対的に変位させることにある。この場合、加工装置は、被加工物に対して、まず、印刷加工手段によって画像の印刷を行い、その後、痕加工手段によって加工痕を形成し、その後、切断加工手段によって切断を行うようにするとよい。
【0009】
このような本発明の他の特徴によれば、印刷加工手段および痕加工手段に加えて被加工物を切断する切断加工手段を備えている。これにより、画像の印刷および加工痕の形成に加えて被加工物の切り抜き加工および切断加工を行うことができ、従来の加工装置に比べて豊富な表現態様によって所望する画像を被加工物の表面に形成することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記加工装置において、前記変位手段は、印刷加工手段、痕加工手段および切断加工手段のうちのいずれか1つの加工手段を前記被加工物に対して相対的に変位させる駆動手段と、駆動手段によって変位する前記1つの加工手段以外の他の2つの前記加工手段のうち一方の加工手段と前記1つの加工手段とを分離可能に連結する第1の連結手段と、前記他の2つの加工手段のうち他方の加工手段と前記一方の加工手段または前記1つの加工手段とを分離可能に連結する第2の連結手段とを備えたことにある。この場合、第1の連結手段および第2の連結手段は、それぞれ磁力を用いて各加工手段を分離可能に連結するようにするとよい。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、変位手段は、印刷加工手段、痕加工手段および切断加工手段のうちのいずれか1つの加工手段を被加工物に対して相対的に変位させる。この場合、変位手段によって直接変位される1つの加工手段には、他の2つの加工手段をそれぞれ分離可能に連結する第1および第2の連結手段が設けられている。このため、変位手段によって直接変位される加工手段以外の2つの加工手段は、被加工物に対して加工を行わない場合、前記1つの加工手段から分離しておくことができる。これにより、被加工物の加工時において、前記1つの加工手段と被加工物に対して加工を行う加工手段のみを変位させることができ、加工手段を変位させる駆動手段の負荷を抑えることができる。この結果、被加工物に対する加工精度の向上、駆動手段の長寿命化を図ることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る加工装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、被加工物である単シート状のワークWKの表面に対して画像の印刷、点状の加工痕の形成および切断を行うことにより、所望する画像をワークWKの表面上に形成する加工装置100の全体を示す斜視図である。また、図2は、同加工装置100の作動を制御する制御システムのブロック図である。
【0013】
この加工装置100は、平面部が水平状態に配置されたベッド101を備えている。ベッド101は、前記平面部上にワークWKを載置する載置台であり図示左右方向に延びて形成されている。ベッド101の中央部には、前記平面部に沿って円筒状のグリッドロール102がその上面部を露出させた状態で設けられている。グリッドロール102は、後述するコントローラ116によって駆動が制御されるX軸方向フィードモータ103によって回転駆動される。また、ベッド101の上方には、図示左右方向に沿って長尺状のガイドレール104が設けられており、このガイドレール104の下部にグリッドロール102に対向した状態で円筒部を有するピンチロール105a,105bがそれぞれ設けられている。これらのグリッドロール102およびピンチロール105a,105bは、ワークWKを挟持しつつ図示前後方向に搬送する。ここで、ワークWKを搬送する図示前後方向をX軸方向、同X軸方向の直交する図示左右方向をY軸方向とする。
【0014】
ガイドレール104は、直動レール106および図示しない直動ブロックを介してカッティングキャリッジ120,プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140をそれぞれ支持する。直動レール106は、Y軸方向に沿ってガイドレール104に固定されている1本のレールである。また、直動ブロックは、カッティングキャリッジ120,プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140にそれぞれ固定されているとともに、直動レール106に摺動可能な状態で組み付けられている。したがって、カッティングキャリッジ120,プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140はそれぞれ直動レール105、すなわちガイドレール104に沿ってY軸方向に案内される。
【0015】
カッティングキャリッジ120,プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140は、図3(A)〜(C)に示すように、カッティングキャリッジ120の図示右側にプリントキャリッジ130が配置され、同カッティングキャリッジ120の図示左側に打刻キャリッジ140が配置されている。カッティングキャリッジ120は、略直方体状に形成されており、その前面にワークWKを切断するためのカッター121をソレノイド122を介して保持している。ソレノイド122は、コントローラ116によって駆動が制御され、カッター121を図示上下方向に変位させることにより、同カッター121の刃先をワークWKの表面に接触および離脱させる。カッティングキャリッジ120の両側面には、磁石によって構成される連結部123a,123bが設けられている。
【0016】
また、カッティングキャリッジ120の上部には、Y軸方向に架設されたワイヤ107の一部が固定されている。ワイヤ107は、コントローラ116によって駆動が制御されるY軸方向フィードモータ108に接続されており、同Y軸方向フィードモータ108の回転駆動によってY軸方向に変位する。すなわち、カッティングキャリッジ120は、ワイヤ107を介してY軸方向フィードモータ108によりY軸方向に変位する。
【0017】
プリントキャリッジ130は、横断面形状が略コ字状に形成されており、その内側にワークWKの表面に画像を印刷するインクヘッドユニット131を備えている。インクヘッドユニット131は、互いに異なる4つの色のインクごとに設けられたインクヘッド132a,132b,132c,132dから構成されている。各インクヘッド132a〜132dは、図示しないインクタンクから供給されるインクをワークWKに向けてそれぞれ吐出する。すなわち、インクヘッドユニット131は、互いに異なる4つの色のインクの組み合わせによってワークWKの表面に画像を印刷する。
【0018】
プリントキャリッジ130の図示左側面における前記カッティングキャリッジ120の連結部123bに対応する位置には、磁石によって構成される連結部133が設けられている。すなわち、このプリントキャリッジ130は、連結部123bおよび連結部133の各吸引力によってカッティングキャリッジ120と分離可能に連結される。また、プリントキャリッジ130の図示右側面には、L字状に形成された受け金具134が設けられている。
【0019】
打刻キャリッジ140は、略直方体状に形成されており、その前面にワークWKの表面に点状の加工痕を形成する打刻針141をソレノイド142を介して保持している。ソレノイド142は、前記ソレノイド122と同様に、コントローラ116によって駆動が制御され、打刻針141を図示上下方向に変位させることにより、同打刻針141の刃先をワークWKの表面に打ち付けるとともに離脱させる。打刻キャリッジ140の図示右側面における前記カッティングキャリッジ120の連結部123aに対応する位置には、磁石によって構成される連結部143が設けられている。すなわち、この打刻キャリッジ140は、連結部123aおよび連結部143の各吸引力によってカッティングキャリッジ120と分離可能に連結される。また、打刻キャリッジ140の図示左側面には、L字状に形成された受け金具144が設けられている。
【0020】
ベッド101の両端部には、ガイドレール104を支持する平板状のサイドフレーム109R,109Lが垂直方向にそれぞれ設けられている。サイドフレーム109R,109Lには、それぞれプリントキャリッジ130の受け金具134および打刻キャリッジ140の受け金具144に引っ掛けて同プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140を固定するロック装置110R,110Lがそれぞれ設けられている。ロック装置110R,110Lは、コントローラ116によって駆動が制御されるロック用ソレノイド111R,111Lを備えている。
【0021】
カッティングキャリッジ120、プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140の上方には、加工装置100の上側の筐体を構成する長尺状の上カバー112が設けられている。また、サイドフレーム109R,109Lの各外側には、加工装置100の各側面の筐体を構成するサイドカバー113R,113Lが設けられている。これらのうち、サイドカバー113Rの前面には、加工装置100に指示を与えるとともに、加工装置100からの情報を表示するための操作パネル114が設けられている。さらに、ベッド101の下方には、加工装置100を支持するとともに作業者の所望する位置に移動させることができるスタンド115が設けられている。
【0022】
コントローラ116は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、インターフェース117を介して接続される外部コンピュータ装置118からの指示に従って、X軸方向フィードモータ103、Y軸方向フィードモータ108、ソレノイド122、インクヘッド132a〜132d、ソレノイド132およびロック用ソレノイド111L,111Rの作動をそれぞれ制御する。外部コンピュータ装置118は、キーボードおよびマウスからなる入力装置118aおよび液晶ディスプレイからなる表示装置118bを備えるパーソナルコンピュータ(所謂パソコン)であり、図4に示す加工プログラムを実行することにより加工装置100の作動を制御する。
【0023】
次に、上記のように構成した加工装置100の作動について説明する。まず、作業者は外部コンピュータ装置118と加工装置100とをインターフェース117を介して接続し、外部コンピュータ装置118および打刻装置100の電源をそれぞれ投入する。これにより、外部コンピュータ装置118は、図示しない所定のプログラムを実行することにより作業者からの指令の入力を待つ待機状態となる。また、加工装置100は、コントローラ116内のROMに予め記憶されている図示しない所定のプログラムを実行することにより、カッティングキャリッジ120、プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140をそれぞれ原点復帰させた後、外部コンピュータ装置118からの指示を待つ待機状態となる。
【0024】
次に、作業者は、グリッドロール102とピンチロール105a,105bとの間にワークWKを位置させてワークWKをベッド101上にセットした後、外部コンピュータ装置118の入力装置118aを操作して、外部コンピュータ装置118に図4に示す加工プログラムの実行を指示する。この加工プログラムは、作業者が所望する画像をワークWKの表面上に形成するために、所望する画像に対応する加工データを生成して加工装置100に出力するプログラムである。なお、本実施形態においてワークWKは、表面(加工を施す面)が白色の単シート体である。
【0025】
この指示に応答して、外部コンピュータ装置118は、加工プログラムをステップS100にて開始して、ステップS102にて、画像データの入力を待つ。作業者は、所望する任意の画像を画像取り込み用アプリケーションを用いて外部コンピュータ装置118に入力する。本実施形態においては、図5に示すようなアルファベット文字である「A」をデザイン化した図形を外部コンピュータ装置118に入力する。これにより、所望する画像を表す画像データが外部コンピュータ装置118の記憶装置内に記憶される。なお、本実施形態においては、画像データはラスターデータ(ビットマップデータ)形式である。
【0026】
次に、外部コンピュータ装置118は、ステップS104にて、前記画像データに基づいてプリント加工データ、打刻加工データおよびカッティング加工データをそれぞれ生成する。プリント加工データは、プリントキャリッジ130によって前記所望する画像の全部または一部をワークWKの表面に印刷するためのデータである。打刻加工データは、打刻キャリッジ140によって前記所望する画像の全部または一部を点状の加工痕によって形成するためのデータである。また、カッティング加工データは、カッティングキャリッジ120によってワークWKの表面を切断して前記所望する画像の全部または一部を形成するためのデータである。
【0027】
本実施形態においては、図5に示す図形「A」における図形部分PIについてプリント加工データおよび打刻加工データを生成し、同図形「A」における輪郭部分OL1,OL2についてカッティング加工データを生成する。この場合、プリント加工データは、図形部分PIの形状を所定の色(例えば、銀色)で印刷するためのデータである。また、打刻加工データは、画像データに含まれる白黒の明度(輝度)の程度に応じた深さに加工痕を形成するためのデータである。この加工痕の深さは、ワークWK上に形成される画像の濃淡を表す。また、カッティング加工データは、輪郭部分OL1,OL2を表す画像データをベクターデータ形式に変換したデータである。なお、画像データにおいて、打刻加工データを生成するための線図部分(本実施形態においては、輪郭部分OL1,OL2)の抽出は、外部コンピュータ装置118に対して入力装置118aを操作して作業者が直接指示するようにしてもよいし、線図部分を抽出する公知のプログラムを用いてもよい。
【0028】
次に、外部コンピュータ装置118は、ステップS106にて、前記ステップS104にて生成したプリント加工データを加工装置100に出力する。加工装置100は、外部コンピュータ装置118から入力したプリント加工データに基づいてY軸方向フィードモータ103、X軸方向フィードモータ108およびインクヘッドユニット131等の各作動を制御して画像データにおける図形部分、具体的には図形部分PIの印刷を開始する。
【0029】
この場合、コントローラ116は、図形部分の印刷開始に先駆けてカッティングキャリッジ120をプリントキャリッジ130に接触させるとともに、ロック装置110Rのロック用ソレノイド11Rを作動させることによりプリントキャリッジ130のロック状態を解除する。これにより、プリントキャリッジ130は、連結部123bおよび連結部133の各吸引力によってカッティングキャリッジ120に連結された状態でカッティングキャリッジ120とともにX軸方向に変位しながら、ワークWKの表面に画像の印刷を行う(図3(A)参照)。
【0030】
そして、画像の印刷が終了した場合には、コントローラ116はカッティングキャリッジ120を図示最右端位置に変位させて、プリントキャリッジ130をロック装置110Rにロックさせる。このステップS106による図形部分PIの印刷により、ワークWKの表面には、図形部分PIの形状に対応した形状の銀色の図形が印刷される。
【0031】
次に、外部コンピュータ装置118は、ステップS108にて、前記ステップS104にて生成した打刻加工データを加工装置100に出力する。加工装置100は、外部コンピュータ装置118から入力した打刻加工データに基づいてX軸方向フィードモータ103、Y軸方向フィードモータ108およびソレノイド142等の各作動を制御して画像データにおける図形部分、具体的には図形部分PIを加工痕の集合によって形成する加工を開始する。
【0032】
この場合、コントローラ116は、加工痕の形成に先駆けてカッティングキャリッジ130を打刻キャリッジ140に接触させるとともに、ロック装置110Lのロック用ソレノイド11Lを作動させることにより打刻キャリッジ140のロック状態を解除する。これにより、打刻キャリッジ140は、連結部123bおよび連結部143の各吸引力によってカッティングキャリッジ120に連結された状態でカッティングキャリッジ120とともにY軸方向に変位しながら、ワークWKの表面に加工痕の形成を行う(図3(B)参照)。
【0033】
そして、加工痕の形成が終了した場合には、コントローラ116はカッティングキャリッジ120を図示最左端位置に変位させ、打刻キャリッジ140をロック装置110Lにロックさせる。このステップS108による加工痕の形成により、ワークWKの表面には、図形部分PIの形状を点状の加工痕の集合によって表した図形が形成される。
【0034】
次に、外部コンピュータ装置118は、ステップS110にて、前記ステップS104にて生成したカッティング加工データを加工装置100に出力する。加工装置100は、外部コンピュータ装置118から入力したカッティング加工データに基づいてX軸方向フィードモータ103、Y軸方向フィードモータ108およびソレノイド122等の各作動を制御して画像データにおける線図部分、具体的には輪郭部分OL1,OL2の切断加工を開始する。この場合、コントローラ116は、プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140をそれぞれロック装置110R,110Lによってロック状態とし、カッティングキャリッジ120のみをY軸方向に変位させながら、ワークWKの表面の切断加工を行う(図3(C)参照)。
【0035】
そして、切断加工が終了した場合には、コントローラ116はカッティングキャリッジ120を原点位置に復帰させるとともにワークWKを前方に排出する。このステップS110による輪郭部分OL1,OL2の切断加工により、ワークWKは、図形部分PIの輪郭部分に対応する形状に切り抜かれる。
【0036】
一方、外部コンピュータ装置118は、ステップS112にて、この加工プログラムの実行を終了して再び待機状態となる。これにより、加工装置100も再び待機状態となる。そして、作業者は、ベッド101上からワークWKを取り外して加工作業を終了する。また、作業者は、他のワークWKに対して加工を行う場合には、前記と同様にして他のワークWKをベッド101上にセットした後、加工プログラムを実行する。
【0037】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ワークWKに対してインクヘッドユニット131により銀色画像の印刷を行った後、打刻キャリッジ140により点状の加工痕を形成している。したがって、本実施形態のように白色の素材をワークWKに用いた場合であっても所望する画像を鮮明に形成することができる。すなわち、素材の反射率に関わらず各種素材を被加工物として利用できる。また、カッティングキャリッジ120も備えているため、画像の印刷および加工痕の形成に加えてワークWKの切り抜き加工および切断加工を行うことができる。このため、従来の加工装置に比べて豊富な表現態様によって所望する画像をワークWKの表面に形成することができる。
【0038】
また、連結部123a,123b,132,142およびロック装置110R,110Lにより、印刷加工および打刻加工を行わない場合には、プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140をカッティングキャリッジ120から分離して置くことができる。これにより、カッティングキャリッジ120を変位させるY軸方向フィードモータ108の負荷を抑えることができ、ワークWKに対する加工精度の向上、Y軸方向フィードモータ108の長寿命化を図ることが期待できる。
【0039】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
上記実施形態においては、加工装置100はワークWKの切断加工を行うカッティングキャリッジ120を備えている。しかし、ワークWKに対して切断加工を行わない場合には、カッティングキャリッジ120は必ずしも必要ではない。カッティングキャリッジ120を備えない加工装置100の場合、打刻キャリッジ140をY軸方向フィードモータ108によって変位させるように構成するとよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、ワークWKの表面に銀色の画像を印刷したが、印刷する色は、当然、これに限定されるものではない。また、単一の色に限定されるものでもなく、複数の色を適宜配色するように構成してもよいし、塗り重ねるように印刷してもよい。これによれば、従来の加工装置に比べて豊富な表現態様によって所望する画像をワークWKの表面に形成することができる。
【0042】
また、打刻針141の先端部をワークWKの表面に押し当てる力を大きくすることにより、加工痕が印刷した色を貫通するように加工痕を形成するように構成してもよい。すなわち、ワークWKの表面または下地に印刷された色が現れるように加工痕を形成する深さを調整する。これによれば、複数の色によって所望する画像を被加工物の表面に形成することができる。すなわち、金色や銀色などの金属色以外の色によっても所望する画像を表現することができる。これにより、従来の加工装置に比べて豊富な表現態様によって所望する画像をワークWKの表面に形成することができる。
【0043】
また、上記実施形態においては、被加工物として単シートを用いたが、長尺状の巻きシートであってもよい。また、シート体以外の素材、例えば、金属、木材、樹脂、セラミック、布材などであってもよい。すなわち、少なくとも画像の印刷および加工痕が形成できる素材であれば限定されるものではない。
【0044】
また、上記実施形態においては、プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140をカッティングキャリッジ120に対して分離可能な構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、これらの各キャリッジを一体的に構成してもよい。これによれば、連結部123a,123b,132,142およびロック装置110R,110Lや、各キャリッジ30を連結・離脱するための作動が不要となる。
【0045】
また、上記実施形態においては、Y軸方向フィードモータ108によってカッティングキャリッジ120をY軸方向に変位するように構成したが、変位されるキャリッジはカッティングキャリッジ120に限定されるものではない。すなわち、プリントキャリッジ130または打刻キャリッジ140をY軸方向フィードモータ108によってY軸方向に変位させるように構成してもよい。この場合、Y軸方向フィードモータによって変位されるキャリッジ、例えば、打刻キャリッジ140とカッティングキャリッジ120とを分離可能に連結する連結部(すなわち、第1の連結手段)、および同打刻キャリッジ140とプリントキャリッジ130とを分離可能に連結する連結部(すなわち、第2の連結手段)を備えるようにする。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0046】
また、上記実施形態においては、Y軸方向フィードモータ108によってY軸方向に変位するカッティングキャリッジ120に対して、プリントキャリッジ130および打刻キャリッジ140をそれぞれ分離可能に連結したが、Y軸方向フィードモータ108によってY軸方向に変位されるキャリッジに対して分離可能に連結されれば、これに限定されるものではない。すなわち、Y軸方向フィードモータ108によってY軸方向に変位されるキャリッジ(カッティングキャリッジ120)に対して他の2つのキャリッジのうちの一方のキャリッジ(例えば、プリントキャリッジ130)を分離可能に連結するとともに、同一方のキャリッジに対して前記他の2つのキャリッジのうちの他方のキャリッジ(例えば、打刻キャリッジ140)を分離可能に連結するように構成してもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0047】
また、上記実施形態においては、連結部123a,123b,133,143をそれぞれ磁石によって構成したが、各キャリッジを分離可能に連結できれば、これに限定されるものではない。例えば、磁石に代えてロック装置110L,110Rのような構成としてもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0048】
また、上記実施形態においては、打刻キャリッジ140はワークWKに対して点状の加工痕を形成するように構成した。しかし、点状の加工痕に代えて、または加えて線状の加工痕を形成するように構成してもよい。これによっても、従来の加工装置に比べて豊富な表現態様によって所望する画像をワークWKの表面に形成することができる。
【0049】
また、上記実施形態においては、インクを用いてワークWKの表面に印刷を行うように構成したが、ワークWKの表面に文字、図形、色彩などの画像を印刷できるものであれば、これに限定されるものではない。例えば、光(例えば、紫外線)硬化型のインクや印刷用トナー、またはレーザを用いてワークWKの表面に画像を印刷するように構成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、カッティングキャリッジ120は、カッター121を用いてワークWKの切断を行うように構成したが、ワークWKの切断が行える構成であれば、これに限定されるものではない。例えば、エンドミルなどの工具やレーザを用いてワークWKを切断する構成としてもよい。これによれば、金属材料等によって構成されたワークWKに対しても切断加工を行うことができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、カッティングキャリッジ120をY軸方向に変位させるとともに、ワークWKをX軸方向に変位させるように構成した。しかし、ワークWKに対して加工を行う各キャリッジとワークWKの相対的な位置関係を変化させる構成であれば、これに限定されるものではない。例えば、ワークWKの位置を固定して、各キャリッジを変位させるように構成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、ワークWKに対して印刷加工、打刻加工、切断加工の順に加工を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、打刻加工によって形成された加工痕上に印刷加工を行うように構成してもよい。これによっても、従来の加工装置に比べて豊富な表現態様によって所望する画像をワークWKの表面に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る加工装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図1に示す加工装置の作動を制御する制御システムのブロック図である。
【図3】(A),(B)は図1に示す加工装置において2つのキャリッジが連結した状態で変位する様子を示す正面図であり、(C)は図1に示す加工装置において1つのキャリッジが単体で変位する様子を示す正面図である。
【図4】外部コンピュータ装置によって実行される加工プログラムのフローチャートを示している。
【図5】図1に示す加工装置によってワークWKの表面に形成される画像を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
WK…ワーク、100…加工装置、101…ベッド、102…グリッドロール、103…X軸方向フィードモータ、104…ガイドレール、108…Y軸方向フィードモータ、110R,110L…ロック装置、120…カッティングキャリッジ、121…カッター、130…プリントキャリッジ、131…インクヘッドユニット、140…打刻キャリッジ、141…打刻針。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望する画像を被加工物の表面に形成するための加工データに基づいて、前記所望する画像を前記被加工物の表面に形成する加工装置であって、
前記被加工物の表面に画像を印刷する印刷加工手段と、
前記被加工物の表面に点状または線状の加工痕を形成する痕加工手段と、
前記印刷加工手段および前記痕加工手段を、前記被加工物に対して相対的に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工装置において、さらに、
前記被加工物を切断する切断加工手段を備え、
前記変位手段は、前記印刷加工手段および前記痕加工手段に加えて前記切断加工手段を、前記被加工物に対して相対的に変位させる加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載の加工装置において、
前記変位手段は、
前記印刷加工手段、前記痕加工手段および前記切断加工手段のうちのいずれか1つの加工手段を前記被加工物に対して相対的に変位させる駆動手段と、
前記駆動手段によって変位する前記1つの加工手段以外の他の2つの前記加工手段のうち一方の加工手段と前記1つの加工手段とを分離可能に連結する第1の連結手段と、
前記他の2つの加工手段のうち他方の加工手段と前記一方の加工手段または前記1つの加工手段とを分離可能に連結する第2の連結手段とを備える加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の加工装置において、
前記第1の連結手段および前記第2の連結手段は、それぞれ磁力を用いて各加工手段を分離可能に連結する加工装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の加工装置において、
前記被加工物に対して、
まず、前記印刷加工手段によって前記画像の印刷を行い、
その後、前記痕加工手段によって前記加工痕を形成し、
その後、前記切断加工手段によって前記切断を行う加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−114396(P2008−114396A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297377(P2006−297377)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】