説明

加工装置

【課題】 ウォームギヤ等の複雑な形状のワークに対するバリ取り及び面取加工を正確に効率良く実行できるようにする。
【解決手段】 本発明の加工装置1は基台2と、基台2に対して設けられワークWを保持して回転させるワーク保持・回転手段5と、基台2に対して設けられスライダ機構7を介してワークWに向かう方向に進退自在に構成され加工工具9を備えた加工手段11と、加工手段11を介して加工工具9をワークWに向かう方向に押圧させる押圧手段13と、加工手段11に対して設けられ、ワークWに当接することによりワークWの形状に倣って加工手段11全体を進退させる倣い手段15とを具備し、実施の形態ワーク保持・回転手段5はワークWを保持した状態でワークWの回転軸Lの角度を調整し得るワーク軸角度調整機構21を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械による切削加工、ダイキャスト、射出成形、プレス打抜、ロストワックス鋳造、型鍛造等の方法により製造された例えばウォームギヤ等の複雑な形状の工業部品(以下、ワークという)に対してバリ取りや面取加工等を施す際に好適なワークの形状を倣う倣い手段と、ワーク表面を加工する加工手段と、ワークの姿勢を保持し回転させるワーク保持・回転手段とを備える加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械による切削加工、ダイキャスト、射出成形、プレス打抜、ロストワックス鋳造、型鍛造等の方法により製造されたワークには外周縁部に「バリ」と称されている余分な部分が生じており、製造後例えばブラッシングホイールやワイヤーホイール等の可撓性工具を使用して上記バリ取り加工を実行して製品に仕上げられている。
又、ワーク表面をワークの輪郭形状に応じて面取加工を施したり、ワークの端面等を一定の加工面精度に仕上げる必要がある場合には、エンドミル、ロータリーバ、チャンファーカッタ等の切削工具を使用して上記面取加工や仕上加工が実行されている。
【0003】
しかしながら、従来のこの種の装置は、何れもモデルワーク等に基づいて予め設定された軌道情報に基づいて切削工具を移動させて行くものであって、全てのワークに対して画一的な切削を施す構成になっていた。
又、上記軌道情報の設定に際しては上記モデルワークの輪郭形状に沿って多数のプログラミングポイントを設定し、それらの座標値を求めなければならず、多くの労力と長い作業時間とを要していた。
そこで、本件特許出願人は、下記の特許文献1に開示されている「追従加工装置」及び下記の特許文献2に開示されている「加工装置」を提案し出願に及んでおり、ワークの輪郭形状のバラツキ等に影響を受けることなく、複雑な軌道情報の入力・記憶作業が不要で安価であり、複雑な制御を要することなく所望の加工を実行することができる加工装置の開発に成功している。
【0004】
【特許文献1】特開平5−200655号公報
【0005】
【特許文献2】特開平11−197930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の加工装置の構成によると次のような問題が生じていた。例えばワークWとして図15に示すようなウォームギヤを例にとると、螺線状に形成される歯201の始端部Aと終端部Bにバリが現れ、これらのバリを除去するために上記従来の加工装置を使用しようとしても、隣接する歯201の山部203が邪魔になって倣い手段をワークWに当接できないという事態が生じてしまう。
即ち、上記従来の加工装置にあっては、ワークチャックによって保持されたワークWは垂直姿勢で保持され、当該垂直方向の回転軸を中心に常に回転するように構成されていた。従って、当該ワークWの上方に位置する倣い手段が上記ワークWに当接しようとしても上方に位置する始端部A又は終端部Bの歯201の山部203が邪魔になって、当該山部203の下方に位置する歯201の谷部205に当接できないためウォームギヤ等のワークWの面取加工や仕上加工に際して上記従来の加工装置を使用することは困難とされていた。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、ウォームギヤのように横断面方向だけでなく、軸方向にも輪郭形状が変化する複雑な形状のワークWに対してバリ取り、面取り及び仕上げ等の加工を比較的簡単な構成で、正確に効率良く実行することができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による加工装置は、基台と、上記基台に対して設けられワークを保持して回転させるワーク保持・回転手段と、上記基台に対して設けられスライダ機構を介して上記ワークに向かう方向に進退自在に構成され加工工具を備えた加工手段と、上記加工手段を介して加工工具をワークに向かう方向に押圧させる押圧手段と、上記加工手段に対して設けられ、ワークに当接することによりワークの形状に倣って上記加工手段全体を進退させる倣い手段と、を具備してなる加工装置において、上記ワーク保持・回転手段はワークを保持した状態でワークの回転軸の角度を調整し得るワーク軸角度調整機構を備えていることを特徴とするものである。
又、請求項2による加工装置は、請求項1記載の加工装置において、上記ワーク保持・回転手段のワーク軸角度調整機構は、雄ネジが刻設されたネジ軸と、上記ネジ軸と螺合する雌ネジブロックを備えたスライドユニットと、上記スライドユニットの摺動方向の動きを揺動軸の回転方向の動きに変換するリンク機構と、上記揺動軸を備え揺動軸と一体になって揺動する揺動フレームとを具備していることを特徴とするものである。
又、請求項3による加工装置は、請求項2記載の加工装置において、上記リンク機構は、上記揺動軸と一体になって揺動する揺動アームと、該揺動アームと上記スライドユニットとを連結する連結アームとによって構成されており、
上記揺動アームには揺動アームの揺動支点を中心とする円弧状の長穴が形成されており、該長穴に挿嵌されるロックボルトを締め付けることによってワークの回転軸の角度を固定し得るロック手段が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項4による加工装置は、請求項3記載の加工装置において、上記ワーク保持・回転手段はワークを保持するワークチャックと、上記ワークチャックによって保持されているワークを回転させるワーク回転駆動手段と、上記ワーク軸角度調整機構と、を具備することによって構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項5による加工装置は、請求項1乃至請求項4記載の加工装置において、上記押圧手段と加工手段との間には上記加工工具の回転軸の角度を調整し得る加工工具軸角度調整機構を備えていることを特徴とするものである。
又、請求項6による加工装置は、請求項1〜請求項5の何れかに記載の加工装置において、ワークはウォームギヤであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上詳述したように上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による加工装置は、基台と、上記基台に対して設けられワークを保持して回転させるワーク保持・回転手段と、上記基台に対して設けられスライダ機構を介して上記ワークに向かう方向に進退自在に構成され加工工具を備えた加工手段と、上記加工手段を介して加工工具をワークに向かう方向に押圧させる押圧手段と、上記加工手段に対して設けられ、ワークに当接することによりワークの形状に倣って上記加工手段全体を進退させる倣い手段とを具備しており、さらに上記ワーク保持・回転手段は、ワークを保持した状態でワークの回転軸の角度を調整し得るワーク軸角度調整機構を備えているから、ワークを傾斜させた姿勢で保持し回転させることができ、上方に位置する倣い手段をウォームギヤのような複雑な形状をしたワークに対しても適用できるようになる。
又、上記ワーク保持・回転手段の軸角度調整機構を雄ネジが刻設されたネジ軸と、上記ネジ軸と螺合する雌ネジブロックを備えたスライドユニットと、上記スライドユニットの摺動方向の動きを揺動軸の回転方向の動きに変換するリンク機構と、上記揺動軸を備え揺動軸と一体になって揺動する揺動フレームとを具備することによって構成した場合には、比較的簡単な構成によってワークの軸角度を正確に調整できるようになる。
又、上記リンク機構を上記揺動軸と一体になって揺動する揺動アームと、該揺動アームと上記スライドユニットを連結する連結アームとによって構成されており、上記揺動アームには揺動アームの揺動支点を中心とする円弧状の長穴が形成されており、該長穴に挿嵌されるロックボルトを締め付けることによってワークの回転軸の角度を固定し得るロック手段が設けられている場合には、調整したワークの軸角度をロックし、安定した状態でワークを安全に回転させることができる。
又、上記ワーク保持・回転手段をワークを保持するワークチャックと、上記ワークチャックによって保持されているワークを回転させるワーク回転駆動手段と、上記ワーク軸角度調整機構とを具備することによって構成した場合には、比較的簡単な構成によって上記ワーク軸角度調整機構を頑強に保持でき、ワークの軸角度の調整を容易にする。
又、上記押圧手段と加工手段との間に上記加工工具の回転軸の角度を調整し得る加工工具軸角度調整機構を備えた場合にはワーク側の軸角度と加工工具側の軸角度の両方を調整できるようになり、さらに複雑な形状のワーク表面のバリ取り、面取り及び仕上げ等の加工が可能になる。又、ワークに対する加工手段と倣い手段の相対的な作用角度を拡大することが可能になる。
又、ワークがウォームギヤであって、その両端に残存するバリ等を面取り加工によって除去する場合に顕著な効果を発揮することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1乃至図15を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図3はワーク表面のバリ取り、面取り、仕上げの各加工を実行できる加工装置の構成を示す側面図、正面図及び平面図である。
まず、本実施の形態による加工装置1は溝形鋼等の枠材を矩形枠状に組み立てた基台2を有している。この基台2の底面のコーナ部には1個ずつ、計4個(図1及び図2では2個のみを示す)の高さ調整可能な脚部3が取り付けられている。そして上記基台2にはワークWを保持して回転させるワーク保持・回転手段5と、スライダ機構7を介して上記ワークWに向かう方向に進退自在に構成され加工工具9を備えた加工手段11と、上記加工手段11を介して加工工具9をワークWに向かう方向に押圧させる押圧手段13と、上記加工手段11に対して設けられ、ワークWに当接することによりワークWの形状に倣って上記加工手段11全体を進退させる倣い手段15とが設けられている。
【0011】
図4〜図7はワークを保持して回転させるワーク保持・回転手段を示す正面図、側面図及び平面図と、正面図中のVII−VII断面図である。ワーク保持・回転手段5は本発明の特徴的構成を有する部分であり、ワークWを保持するワークチャック17と、上記ワークチャック17によって保持されているワークWを回転させるワーク回転駆動手段19と、ワークWを保持した状態でワークWの回転軸Lの角度を調整し得るワーク軸角度調整機構21とを備えている。
ワークチャック17は半径方向に進退可能な3つの爪23を備えたワークWの保持部材であり、当該ワークチャック17の下方には、上部に円板状のフランジ部が形成された円筒状のワーク軸25が軸中心を一致させて上記ワークチャック17と一体に設けられている。
【0012】
ワーク軸25は後述する揺動フレーム27の底板29に形成されている貫通穴を貫通して下方に突出するように設けられており、上記底板29上に設けられるワーク軸ホルダ31に対してベアリング33、35を介して回転自在に支承されている。
ワーク回転駆動手段19は駆動原であるワーク軸回転モータ37と、ワーク軸回転モータ37の出力軸に接続されている減速機39と、減速機39の出力軸に取り付けられている駆動プーリ41と、ベルト42を介して上記駆動プーリ41と接続されている上記ワーク軸25の先端部に取り付けられている従動プーリ43とを備えており、支持ブラケット45によって揺動フレーム27の底板29の下面に取り付けられている。
【0013】
ワーク軸角度調整機構21は雄ネジが刻設されたネジ軸47と、該ネジ軸47と螺合する雌ネジブロック49を備えたスライドユニット51と、該スライドユニット51の摺動方向の動きを揺動軸53の回転方向の動きに変換するリンク機構55と、上記揺動軸53を備え、揺動軸53と一体になって揺動する揺動フレーム27とを具備している。
ネジ軸47は前後方向に水平に架け渡されている周面に雄ネジが刻設されている軸部材で、基台2の側面部に取り付けられている支承ベース57に対してベアリング59を介して回転自在に支承されている。ネジ軸47の手前側の端部には操作ハンドル61が取り付けられており、この操作ハンドル61を正転方向或いは逆転方向に回すことによって上記ネジ軸47を回転させてスライドユニット51を前後方向にスライドし得るようになっている。
【0014】
スライドユニット51は上記雌ネジブロック49と、上記支承ベース57に対して上記ネジ軸47と平行に架け渡されるようにして取り付けられているガイドロッド63と嵌合するロッドホルダ65と、上記雌ネジブロック49とロッドホルダ65とを保持するスライドブロック67とを備えている。又、スライドブロック67の上部には後述するリンク機構55における連結アーム69と、連結軸71を介して回転自在に接続される連結部73が設けられている。
リンク機構55は一端が上記揺動軸53に対して固定状態で取り付けられ、該揺動軸53を中心にして揺動軸53と一体になって揺動する揺動アーム75と、該揺動アーム75と上記スライドユニット51とを連結する上述した連結アーム69とによって構成されている。
【0015】
又、上記揺動アーム75には上記揺動軸53を中心とする円弧状の長穴77が形成されており、該長穴77を利用して上記基台2と揺動アーム75との間に揺動アーム75の動きを固定するロック手段79が設けられている。
ロック手段79は上記長穴77に挿嵌されるロックボルト81と、該ロックボルト81と螺合する雌ネジブロック83と、該雌ネジブロック83を基台2に対して取り付けるための取付ブラケット85とを備えている。又、上記ロックボルト81の頭部には手回し式のハンドル87が設けられている。
【0016】
揺動フレーム27は左右に設けられる2枚の側板89、89と、2枚の側板89、89の下面に取り付けられる底板29とによって構成されており、上記左右の側板89、89の上部には左右外方に水平に張り出す2本の揺動軸53、53が固定状態で取り付けられている。
又、2本の揺動軸53、53は基台2上の左右に設けられている2つの揺動軸支承ブロック91、91によってベアリング93を介して回転自在に支承されている。
そしてこのようにして構成されるワーク軸角度調整機構21によって、ワークチャック17によって保持されたワークWは一例として0°〜35°の範囲に亘って回転軸Lの角度を調整できるようになっている。
【0017】
次にスライダ機構7と、加工手段11と、押圧手段13と、倣い手段15の構成について説明する。図8はスライダ機構、加工手段、押圧手段及び倣い手段を示す側面図、図9は加工工具及び倣い手段周辺を拡大して示す側断面図である。
上記基台2上にはベース部101が設置されていて、このベース部101上にスライダ機構7の一部であるY方向スライド台103がガイド機構105を介してY方向となる前後方向(図1、8中左右方向)に移動可能に搭載されている。
又、Y方向スライド台103の後部には加工工具9を備えた加工ヘッド107の前後位置を調整するための前後位置調整ハンドル109が設けられており、Y方向スライド台103の内部には上記加工ヘッド107を後退させるためのエアシリンダ111が設けられている。
【0018】
又、上記基台2とY方向スライド台103との間に押圧手段13が設置されている。押圧手段13は基台2側に取り付けられた回転体113と、Y方向スライド台103側に取り付けられた回転体115と、これら2つの回転体113、115間に巻回されるチェーン117と、チェーン117の一端に連結され、上記エアシリンダ111のロッドエンドと一体に前後方向にスライドする押圧テーブル119と、上記チェーン117の他端に連結されるウエイト121とから構成されている。そして上記ウエイト121の自重によってチェーン117を引っ張り、上記押圧テーブル119を前方のワークW側に押し付けるように常時付勢しているのである。
【0019】
上記押圧テーブル119の前端部には加工ヘッド107を支承するヘッドベース123が回動支点125を中心にして回動自在に直立姿勢で設けられている。又、ヘッドベース123の前面側にはスライダ機構7の他の一部であるZ方向スライド台127がガイド機構129を介してZ方向となる上下方向に移動可能に設けられている。
又、Z方向スライド台127の上部には加工工具9を備えた加工ヘッド107の上下位置を調整するための上下位置調整ハンドル131が設けられており、Z方向スライド台127の前面に次に述べる加工手段11と倣い手段15とが取り付けられている。
【0020】
加工手段11は上部に加工工具回転モータ133が設けられていて、加工工具回転モータ133の出力軸は図9に示すようにカップリング135を介してスピンドル137に接続されている。
又、スピンドル137はZ方向スライド台127の前面下部から前方に張り出すように設けられているスピンドルホルダ139によってベアリング141を介して回転自在に保持されており、スピンドル137の下端に設けられているコレットチャック143によって加工工具9が上記スピンドル137と一体に回転するように設けられている。
尚、加工工具9としては種々の形状のものが使用でき、本実施の形態では一例として2枚刃のスクエアタイプのエンドミルを使用した。
【0021】
倣い手段15は上記スピンドルホルダ139の下面に取り付けられている前後・左右位置調整機構145と、前後・左右位置調整機構145の下部に取り付けられている倣い用スタイラス取付台147と、倣い用スタイラス取付台147に対して着脱自在に取り付けられる倣い用スタイラス149とを備えることによって構成されている。
前後・左右位置調整機構145は倣い用スタイラス149の位置をY方向である前後方向と、X方向である左右方向とに移動させることができる機構であり、X方向とY方向の2つのアリ溝係合構造151、153と、これらの位置を調整するための2つの調整ボルト155、157とを備えることによって構成されている。
【0022】
倣い用スタイラス149はワークWに当接して形状を倣い、その動きを加工工具9に伝えて加工工具9のワークWに対する加工量を一定に保つための部材である。倣い用スタイラス149には種々の形状及び構造のものがあり、これらはワークWの材質、大きさ、形状等によって適宜選択され、使い分けて使用される。
そして上記倣い用スタイラス149は上記倣い用スタイラス取付台147に取り付けられ、固定ボルト159を締め付けることによって倣い用スタイラス取付台147に固定される。
【0023】
又、本実施の形態では上記押圧手段13と、加工手段11との間に加工工具9の回転軸Nの角度を調整し得る加工工具軸角度調整機構161が設けられている。加工工具軸角度調整機構161は上記押圧テーブル119上に設置される側面視L字形の支持ブラケット163と、該支持ブラケット163に固定されている雌ネジブロック165と、該雌ネジブロック165に螺合し、前後方向に水平に設けられているネジ軸167と、ネジ軸167の後端部に取り付けられている加工ヘッド角度調整ハンドル169と、ネジ軸167の前端部とヘッドベース123との間に設けられているリンク機構171とを備えている。
そして上記加工工具軸角度調整機構161によって加工工具9は一例として0°〜35°の範囲に亘って回転軸Nの角度を調整できるようになっている。
【0024】
次にこのようにして構成される本発明の加工装置1の作動態様を図15に示すウォームギヤの面取加工を例にとって説明する。図10〜図14はウォームギヤの面取加工の様子を段階的に示す側面図である。
作業者はワークチャック17にワークWを装着して固定し、操作ハンドル61を回してワークWを所定の傾斜角度にしてロックボルト81を締め付けて固定する。
次に前後位置調整ハンドル109と上下位置調整ハンドル131を回して倣い用スタイラス149の先端が図10に示すようにワークWの歯201の上から2番目の山部203と連続する上から2番目の谷部205に当接させる。
【0025】
次に上下位置調整ハンドル131と前後・左右位置調整機構145とを調整することによってワークWの形状に合った加工工具9と倣い用スタイラス149の位置関係を設定し、操作盤173に設けられている起動スイッチを押してワークWの面取加工を開始する。
起動スイッチを押すとワーク軸回転モータ37と加工工具回転モータ133とが回転を開始し、ワークWは傾斜姿勢で回転するようになり、倣い用スタイラス149は押圧手段13による押圧力でワークWに圧接され、加工工具9は垂直姿勢で回転するようになり、ワークWの歯201の最上部に位置する始端部Aのバリ取り及び面取加工が開始される。
【0026】
以下倣い用スタイラス149は図11〜図14に示すように2番目の谷部205とその上方の山部203との間の傾斜面207を伝って上方に移動し、上記山部203の頂部に至り、更にその上方の最上部の谷部205に向かって移動する。
又、加工工具9は上記倣い用スタイラス149の動きに合わせて一体になって移動し、上記始端部Aの全周のバリ取り及び面取加工を実行して行く。
【0027】
そしてワークWの始端部Aの面取加工が終了したら、操作盤173に設けられている停止スイッチを押して一旦、加工を停止し、ワークWを付け替えてワークWの歯201の終端部Bのバリ取り及び面取加工を上記と同様の手順で実行する。
又、ワークWの種類によってはワークWを傾けるだけでは所望の面取加工が実行できない場合があり、そのような場合には加工ヘッド角度調整ハンドル169を回して加工工具9側も傾けるようにしてより複雑な形状のワークWにも対応できるようにする。
【0028】
尚、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、ネジ軸47を回転させるための操作ハンドル61やネジ軸167を回転させるための加工ヘッド角度調整ハンドル169、或いは前後位置調整ハンドル109や上下位置調整ハンドル131に代えて或いはこれらと併用してこれらを駆動するための駆動モータ等を設け、自動的に位置調整できるようにすることも可能である。
又、上記ワーク軸角度調整機構21や加工工具軸角度調整機構161の調整角度を拡大し、より広い範囲に亘ってワークWないし加工工具9の傾斜角度を調整できるようにしたり、加工工具軸角度調整機構161を廃止してワーク軸角度調整機構21のみによって種々のワークWに対応できるように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、ウォームギヤのように横断面方向だけでなく、軸方向にも輪郭形状が変化する複雑な形状のワークのバリ取り、面取加工を行う場合に好適な加工装置の製造、使用分野等で利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、加工装置の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、加工装置の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、加工装置の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、ワーク保持・回転手段を示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す図で、ワーク保持・回転手段を示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す図で、ワーク保持・回転手段を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す図で、図4中のVII−VII断面図である。
【図8】本発明の実施の形態を示す図で、スライダ機構、加工手段、押圧手段及び倣い手段を示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態を示す図で、加工工具及び倣い手段周辺を拡大して示す側断面図である。
【図10】本発明の実施の形態を示す図で、加工工具と倣い用スライラスの加工中の移動軌跡を段階的に示す初期段階の側面図である。
【図11】本発明の実施の形態を示す図で、加工工具と倣い用スライラスの加工中の移動軌跡を段階的に示す次の段階の側面図である。
【図12】本発明の実施の形態を示す図で、加工工具と倣い用スライラスの加工中の移動軌跡を段階的に示す中期段階の側面図である。
【図13】本発明の実施の形態を示す図で、加工工具と倣い用スライラスの加工中の移動軌跡を段階的に示す次の段階の側面図である。
【図14】本発明の実施の形態を示す図で、加工工具と倣い用スライラスの加工中の移動軌跡を段階的に示す終期段階の側面図である。
【図15】本発明の加工対象となるワークの一例を示す図で、ウォームギヤの側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 加工装置
2 基台
3 脚部
5 ワーク保持・回転手段
7 スライダ機構
9 加工工具
11 加工手段
13 押圧手段
15 倣い手段
17 ワークチャック
19 ワーク回転駆動手段
21 ワーク軸角度調整機構
23 爪
25 ワーク軸
27 揺動フレーム
29 底板
31 ワーク軸ホルダ
33 ベアリング
35 ベアリング
37 ワーク軸回転モータ
39 減速機
41 駆動プーリ
42 ベルト
43 従動プーリ
45 支持ブラケット
47 ネジ軸
49 雌ネジブロック
51 スライドユニット
53 揺動軸
55 リンク機構
57 支承ベース
59 ベアリング
61 操作ハンドル
63 ガイドロッド
65 ロッドホルダ
67 スライドブロック
69 連結アーム
71 連結軸
73 連結部
75 揺動アーム
77 長穴
79 ロック手段
81 ロックボルト
83 雌ネジブロック
85 取付ブラケット
87 ハンドル
89 側板
91 揺動軸支承ブロック
93 ベアリング
101 ベース部
103 Y方向スライド台
105 ガイド機構
107 加工ヘッド
109 前後位置調整ハンドル
111 エアシリンダ
113 回転体
115 回転体
117 チェーン
119 押圧テーブル
121 ウエイト
123 ヘッドベース
125 回動支点
127 Z方向スライド台
129 ガイド機構
131 上下位置調整ハンドル
133 加工工具回転モータ
135 カップリング
137 スピンドル
139 スピンドルホルダ
141 ベアリング
143 コレットチャック
145 前後・左右位置調整機構
147 倣い用スタイラス取付台
149 倣い用スタイラス
151 X方向アリ溝係合構造
153 Y方向アリ溝係合構造
155 X方向調整ボルト
157 Y方向調整ボルト
159 固定ボルト
161 加工工具軸角度調整機構
163 支持ブラケット
165 雌ネジブロック
167 ネジ軸
169 加工ヘッド角度調整ハンドル
171 リンク機構
173 操作盤
201 歯
203 山部
205 谷部
207 傾斜面

W ワーク
L (ワークの)回転軸
N (加工工具の)回転軸
A 始端部
B 終端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
上記基台に対して設けられワークを保持して回転させるワーク保持・回転手段と、
上記基台に対して設けられスライダ機構を介して上記ワークに向かう方向に進退自在に構成され加工工具を備えた加工手段と、
上記加工手段を介して加工工具をワークに向かう方向に押圧させる押圧手段と、
上記加工手段に対して設けられ、ワークに当接することによりワークの形状に倣って上記加工手段全体を進退させる倣い手段と、を具備してなる加工装置において、
上記ワーク保持・回転手段はワークを保持した状態でワークの回転軸の角度を調整し得るワーク軸角度調整機構を備えていることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工装置において、
上記ワーク保持・回転手段のワーク軸角度調整機構は、雄ネジが刻設されたネジ軸と、
上記ネジ軸と螺合する雌ネジブロックを備えたスライドユニットと、
上記スライドユニットの摺動方向の動きを揺動軸の回転方向の動きに変換するリンク機構と、
上記揺動軸を備え揺動軸と一体になって揺動する揺動フレームとを具備していることを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項2記載の加工装置において、
上記リンク機構は、上記揺動軸と一体になって揺動する揺動アームと、該揺動アームと上記スライドユニットとを連結する連結アームとによって構成されており、
上記揺動アームには揺動アームの揺動支点を中心とする円弧状の長穴が形成されており、該長穴に挿嵌されるロックボルトを締め付けることによってワークの回転軸の角度を固定し得るロック手段が設けられていることを特徴とする加工装置。
【請求項4】
請求項3記載の加工装置において、
上記ワーク保持・回転手段はワークを保持するワークチャックと、
上記ワークチャックによって保持されているワークを回転させるワーク回転駆動手段と、
上記ワーク軸角度調整機構と、を具備することによって構成されていることを特徴とする加工装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の加工装置において、
上記押圧手段と加工手段との間には上記加工工具の回転軸の角度を調整し得る加工工具軸角度調整機構を備えていることを特徴とする加工装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の加工装置において、
ワークはウォームギヤであることをとくとする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−238380(P2008−238380A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86203(P2007−86203)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(591013610)先生精機株式会社 (11)
【Fターム(参考)】