説明

加工装置

【課題】許容値をオーバーした項目が加工装置のオペレータにとって分かり易い加工装置を提供する。
【解決手段】チャックテーブルと、加工手段と、を備えた加工装置であって、加工条件と、被加工物に施された加工の品質を確認するための複数の確認項目の許容値とを入力する入力手段と、入力された該加工条件と該複数の確認項目の該各々の許容値とを表示する表示手段26と、加工途中に被加工物の加工が施された領域を撮像する撮像手段と、入力された該加工条件と該複数の確認項目の該各々の許容値とを記憶する記憶部と、作成された該撮像画像と該記憶部に記憶されている該複数の確認項目の該各々の許容値とに基づいて該複数の確認項目がそれぞれ許容値を超えたか否かを判定する判定部と、該判定部で判定した結果に基づいて該表示手段に許容値を超えた確認項目をエラー項目40として表示させる表示指令部と、を含む制御手段と、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に加工を施す切削装置、レーザ加工装置等の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたシリコンウエーハ、サファイアウエーハ等のウエーハは、切削装置又はレーザ加工装置等の加工装置によって個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
ウエーハの分割には、ダイシングソーと呼ばれる切削装置を用いたダイシング方法が広く採用されている。ダイシング方法では、ダイアモンド等の砥粒を金属や樹脂で固めて厚さ30μm程度とした切削ブレードを、30000rpm程度の高速で回転させつつウエーハへ切り込ませることでウエーハを切削し、ウエーハを個々のデバイスへと分割する。
【0004】
一方、近年では、ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザビームをウエーハに照射してアブレーション加工によりレーザ加工溝を形成し、このレーザ加工溝に沿ってブレーキング装置でウエーハを割断して個々のデバイスへと分割する方法が提案されている(特開平10−305420号公報)。
【0005】
アブレーション加工によるレーザ加工溝の形成は、ダイシングソーによるダイシング方法に比べて加工速度を早くすることができるとともに、サファイアやSiC等の硬度の高い素材からなるウエーハであっても比較的容易に加工することができる。
【0006】
また、加工溝を例えば10μm以下等の狭い幅とすることができるので、ダイシング方法で加工する場合に比較してウエーハ1枚当たりのデバイスの取り量を増やすことができるという特徴を有している。
【0007】
このような切削装置やレーザ加工装置等の加工装置では、被加工物に加工を施しつつ被加工物に施された加工品質を確認し、実際の加工状況に基づいて警告を発したり、加工を補正している。加工品質として確認する項目には、カーフチェックによるカーフ幅、カット位置、チッピングサイズ、デラミネーションサイズ等が含まれる。
【0008】
従来の加工装置では、複数の項目において加工品質を確認し、許容値をオーバーした項目が一つでも発生した際にシグナルタワーから警告を発して、オペレータに報知するように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−66233号公報
【特許文献2】特開2000−48203号公報
【特許文献3】特開2006−250539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来のように複数の項目において加工品質を確認し、許容値をオーバーした項目が一つでも発生した際にシグナルタワーから警告を発してオペレータに報知するように制御すると、複数の項目のうちどの項目が許容値をオーバーしたのかがオペレータには分かりづらいという問題があった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、許容値をオーバーした項目が加工装置のオペレータにとって分かり易い加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物に加工を施す加工手段と、を備えた加工装置であって、被加工物に加工を施すための加工条件と、被加工物に施された加工の品質を確認するための複数の確認項目の各々の許容値とを入力する入力手段と、該入力手段で入力された該加工条件と該複数の確認項目の該各々の許容値とを少なくとも表示する表示手段と、加工途中に被加工物の加工が施された領域を撮像して撮像画像を作成する撮像手段と、該入力手段で入力された該加工条件と該複数の確認項目の該各々の許容値とを記憶する記憶部と、該撮像手段で作成された該撮像画像と該記憶部に記憶されている該複数の確認項目の該各々の許容値とに基づいて該複数の確認項目がそれぞれ該各々の許容値を超えたか否かを判定する判定部と、該判定部で判定した結果に基づいて該表示手段に許容値を超えた確認項目をエラー項目として表示させる表示指令部と、を含む制御手段と、を具備したことを特徴とする加工装置が提供される。
【0013】
好ましくは、前記加工手段はレーザ発振器又は切削ブレードを含み、被加工物は複数の加工予定ラインを有しており、前記複数の確認項目には該加工手段で被加工物に形成された加工溝の形成位置と加工すべき該加工予定ラインとの位置ずれを示す位置ずれ距離が含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加工装置によると、許容値をオーバーした項目はエラー項目として表示手段上に表示されるため、加工装置のオペレータは一目でどの項目が許容値をオーバーしたのかを確認でき、不具合を補正する際の対応時間の短縮化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】加工装置の一例としての切削装置の外観斜視図である。
【図2】表示モニタ上の加工条件入力画面を示す図である。
【図3】表示モニタ上のカーフチェックデータ及び許容値を示す図である。
【図4】表示モニタ上のエラー項目表示方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、加工装置の一種である本発明実施形態の切削装置2の外観斜視図が示されている。切削装置2の機構部は、複数のパネルを組み合わせて形成されたハウジング4内に収容されている。
【0017】
6はチャックテーブルであり、回転可能且つX軸方向に移動可能に構成されている。チャックテーブル6には、良く知られているようにダイシングテープを介してウエーハを支持する環状フレームをクランプする複数のクランプ8が配設されている。
【0018】
切削装置2は、Y軸方向に整列して配設された第1切削ユニット10及び第2切削ユニット12を有するフェイシングデュアルダイサーと呼ばれる切削装置である。第1切削ユニット10及び第2切削ユニット12ともY軸方向に伸長するガイドレール14に案内されてY軸方向に移動可能であるとともに、Z軸方向(高さ方向)にも移動可能に配設されている。
【0019】
第1切削ユニット10は図示しないサーボモータにより回転駆動される第1切削ブレード16を備えており、第2切削ユニット12も図示しないサーボモータにより回転駆動される第2切削ブレード18を備えている。
【0020】
第1切削ブレード16とX軸方向に整列して撮像ユニット20が配設されている。撮像ユニット20は、顕微鏡及びCCDカメラを備えており、第1切削ブレード16とともにY軸方向及びZ軸方向に移動される。
【0021】
22は内部に複数枚のウエーハを収容したカセットを載置するカセット載置台であり、上下方向(Z軸方向)に移動可能に構成されている。24は切削装置2の稼働状況を表示するシグナルタワー(表示ランプ)であり、切削装置2が正常作動時には例えば緑色で点灯し、何らかの故障が生じた場合には赤色が点滅する。
【0022】
26はタッチパネル式の表示モニタであり、オペレータが装置の操作指令を入力できるとともに、装置の稼働状況が表示モニタ26上に表示される。28,30は非常停止ボタンであり、オペレータ(作業者)がこの非常停止ボタン28,30を押すと切削装置2の作動を直ちに停止することができる。
【0023】
本実施形態のタッチパネル式の表示モニタ26は、加工条件及び被加工物に施された加工の品質を確認するための複数の確認項目の許容値を入力する入力手段と、入力手段で入力された加工条件及び複数の確認項目の許容値を表示する表示手段を兼用するが、これに限定されず、例えば入力用タッチパネルと表示用モニタとをそれぞれ別に設けても良い。
【0024】
32は切削装置2のコントローラであり、タッチパネル式の表示モニタ26で入力された加工条件と複数の確認項目の各許容値を記憶する記憶部34と、撮像ユニット20で作成された撮像画像と記憶部34で記憶されている複数の確認項目の各許容値に基づいて、複数の確認項目がそれぞれ許容値を超えたか否かを判定する判定部36と、判定部36で判定した結果に基づいて表示モニタ26上に許容値を超えた確認項目をエラー項目として表示させる表示指令部38とを含んでいる。
【0025】
図2を参照すると、表示モニタ26の加工条件入力画面が示されている。Z1は第1切削ユニット10を示し、Z2は第2切削ユニット12を示している。カット方法がデュアルと表示されているが、これは第1切削ブレード16及び第2切削ブレード18でワークを同時に切削するデュアルダイシング方式を示している。
【0026】
ワークを貼着する粘着テープの厚さが0.080mmであり、ブレードハイトが第1切削ユニット10及び第2切削ユニット12とも0.05mmであるため、ワークの切削時には第1切削ブレード16及び第2切削ブレード18とも、テープに0.030mm切り込みながら切削を遂行することになる。
【0027】
また、インデックス送り量(割り出し送り量)は、第1方向の分割予定ライン(Ch1)及び第1方向の分割予定ラインに直交する第2方向の分割予定ライン(Ch2)とも1.000mmに設定されている。
【0028】
図3を参照すると、表示モニタ26のカーフチェックデータ及び許容値表示画面が示されている。カーフチェック頻度は、第1分割予定ライン(Ch1)及び第2分割予定ライン(Ch2)とも、10本の分割予定ラインを切削する毎に自動的にカーフチェックを行うように設定されている。即ち、10本の分割予定ラインを切削する毎に、最終の切削溝を撮像ユニット20で撮像し、その撮像画面及び加工結果を図4に示すように表示モニタ26上に表示する。
【0029】
撮像時光量設定項目中で、落射とは垂直照明を示し、斜光とは斜め方向からの照明を示している。落射及び斜光とも最大光量の30%に設定されている。表示モニタ26上の右側に示された許容値は、オペレータが表示モニタ26を操作して切削加工前に入力するものであり、コントローラ32の記憶部34に記憶されており、必要に応じて図3に示すように表示モニタ26上に表示される。許容値中でのカット位置ずれは、図4に示されたヘアラインオフセットと同義である。チッピングとは、切削溝(カーフ)の両側に形成された小さな欠けである。
【0030】
図4を参照すると、表示モニタ26のエラー項目表示画面が示されている。このエラー項目表示画面では、カーフチェック結果が画面の左側に示され、図3の許容値と同様な許容値が画面の右側に示され、エラー項目40が着色されて示されている。この着色はオペレータの注意を引き易い赤色、黄色等が好ましく、更に着色を点滅させるのがより好ましい。
【0031】
エラー項目40を表示モニタ26上に表示する際には、撮像ユニット20でカーフをチェックする際に撮像された撮像画像とコントローラ32の記憶部34に記憶されている複数の確認項目の各許容値に基づいて、判定部36で複数の確認項目がそれぞれ許容値を超えたか否かを判定する。
【0032】
そして、判定部36で判定した結果に基づいて、表示モニタ26上に許容値を超えた確認項目をエラー項目として表示指令部38が表示させる。本実施形態では、エラー項目は第2切削ユニット12のチッピングサイズ40のみとなっている。
【0033】
左側のカーフチェック画面を参照すると明らかなように、第2切削ユニット12の最大チッピングサイズが0.012mmと検出されている。この最大チッピングサイズは許容値0.010mmを越えるので、エラー項目40として表示される。カーフチェック結果の他の項目は全て許容値以内に収まっているので、このカーフチェック結果ではエラー項目は第2切削ユニット12の最大チッピングサイズのみである。
【0034】
図4に示したエラー項目画面の表示方法は一例にすぎず、例えばエラー項目をポップアップを出すようにしてオペレータの注意をより引くようにしてもよい。表示モニタ26上のエラー項目表示と同時に、シグナルタワー24も点滅させてオペレータの注意を引くようにするのが好ましい。
【0035】
上述した本実施形態によると、許容値をオーバーした項目はエラー項目として表示モニタ26上に表示されるため、オペレータが一目でどの項目が許容値をオーバーしたのかを確認することができ、不具合を補正するための対応時間の短縮化が可能となる。
【0036】
上述した実施形態では、本発明を切削装置2に適用した例について説明したが、本発明の原理はレーザ加工装置等の他の加工装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
6 チャックテーブル
10 第1切削ユニット
12 第2切削ユニット
16 第1切削ブレード
18 第2切削ブレード
20 撮像ユニット
26 表示モニタ
32 コントローラ
34 表示部
36 判定部
38 表示指令部
40 エラー項目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物に加工を施す加工手段と、を備えた加工装置であって、
被加工物に加工を施すための加工条件と、被加工物に施された加工の品質を確認するための複数の確認項目の各々の許容値とを入力する入力手段と、
該入力手段で入力された該加工条件と該複数の確認項目の該各々の許容値とを少なくとも表示する表示手段と、
加工途中に被加工物の加工が施された領域を撮像して撮像画像を作成する撮像手段と、
該入力手段で入力された該加工条件と該複数の確認項目の該各々の許容値とを記憶する記憶部と、該撮像手段で作成された該撮像画像と該記憶部に記憶されている該複数の確認項目の該各々の許容値とに基づいて該複数の確認項目がそれぞれ該各々の許容値を超えたか否かを判定する判定部と、該判定部で判定した結果に基づいて該表示手段に許容値を超えた確認項目をエラー項目として表示させる表示指令部と、を含む制御手段と、
を具備したことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記加工手段はレーザ発振器又は切削ブレードを含み、
被加工物は複数の加工予定ラインを有しており、
前記複数の確認項目には該加工手段で被加工物に形成された加工溝の形成位置と加工すべき該加工予定ラインとの位置ずれを示す位置ずれ距離が含まれる請求項1記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−74198(P2013−74198A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213282(P2011−213282)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】