説明

加工製品の製造装置

【課題】生産性が高いために省エネルギーおよびコストダウンを図ることができる加工製品の製造装置を提供する。
【解決手段】被加熱部形成機構14と、第1の鋼管12−1および第2の鋼管12−2を支持しながら第1の鋼管12−1および第2の鋼管12−2それぞれの被加熱部12−1a、12−2aを変形させるための被加熱部加工機構15とを備える加工製品11の製造装置10であって、被加熱部加工機構15が、第1の鋼管12−1を支持するとともに被加熱部12−1aを変形させる機能を有する第1の支持手段19と、第2の鋼管12−2を支持するとともに被加熱部12−2aを変形させる機能を有する第2の支持手段20とを少なくとも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工製品の製造装置に関し、例えば、閉断面を有する長尺の金属製の素材に曲げ加工を行って曲げ加工製品を製造するのに好適な、加工製品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車や各種機械等に用いられる、屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材または構造部材には、高強度、軽量かつ小型であること等が求められる。従来より、この種の曲げ部材は、例えば、プレス加工品の溶接、厚板の打ち抜き、さらには鍛造等により製造されてきた。しかし、これらの製造方法により製造される曲げ部材の軽量化および小型化には限界があり、その実現は容易なことではない。
【0003】
近年では、例えば非特許文献1に開示されるように、いわゆるチューブハイドロフォーミングによりこの種の曲げ部材を製造することも積極的に検討されている。非特許文献1の28頁にも記載されているように、チューブハイドロフォーミングには、素材となる材料の開発や成形可能な形状の自由度の拡大等といった様々な課題があり、今後よりいっそうの開発が必要である。
【0004】
一方、これまでにも金属管に曲げ加工を行って、所望の形状を有する曲げ部材を製造するための発明が多数提案されている。
特許文献1には、金属管等を熱処理しながら曲げ加工する発明が開示され、特許文献2には、湾曲した異形断面らせん条材を製造する発明が開示され、特許文献3には、押し曲げ方式の高周波加熱ベンダーに係る発明が開示され、特許文献4には、金属部材の曲げ加工装置に係る発明が開示されている。
【0005】
本出願人も、先に、特許文献5により、金属材の曲げ加工方法および曲げ加工装置に係る発明を開示した。図3は、この曲げ加工装置0の概略を示す説明図である。
図3に示すように、この発明は、基本的に、支持手段2によりその軸方向へ移動自在に支持された鋼管1を上流側から下流側へ向けて、例えばボールネジを用いた送り装置3により送りながら、支持手段2の下流で曲げ加工を行う曲げ加工方法を用いて曲げ部材8を製造するものである。すなわち、支持手段2の下流で高周波加熱コイル5により鋼管1を部分的に焼入れが可能な温度域に急速に加熱するとともに高周波加熱コイル5の下流に配置される水冷装置6により鋼管1を急冷する。そして、鋼管1を送りながら支持可能であるロール対4aを少なくとも一組有する可動ローラーダイス4の位置を二次元または三次元で変更して鋼管1の加熱された部分に曲げモーメントを付与して曲げ加工を行う。このため、この発明によれば、十分な曲げ加工精度を確保しながら高い作業能率で曲げ部材8を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−59263号公報
【特許文献2】特許第2816000号明細書
【特許文献3】特開2000−158048号公報
【特許文献4】特許第3195083号明細書
【特許文献5】特開2007−83304号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】自動車技術 Vol.57,No.6,2003 23〜28頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らがさらに検討を重ねた結果、一つの曲げ部材を製造するための生産タクトが長く、かつ生産性が低いという課題が、特許文献5により開示された発明にあることが判明した。このため、この発明により省エネルギーおよびコストダウンを図ることが難しい。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、生産性が高いために省エネルギーおよびコストダウンを図ることができる加工製品の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)第1の金属材および第2の金属材それぞれの軸方向の一部に被加熱部を形成するとともに、第1の金属材の軸方向へ第1の金属材に対して相対的に移動すること、および、第2の金属材の軸方向へ第2の金属材に対して相対的に移動することによって第1の金属材および第2の金属材それぞれの被加熱部を第1の金属材および第2の金属材それぞれの軸方向へ移動させるための被加熱部形成機構と、(b)第1の金属材および第2の金属材を支持しながら第1の金属材および第2の金属材それぞれの被加熱部を変形させるための被加熱部加工機構とを備える加工製品の製造装置であって、被加熱部加工機構が、第1の金属材を支持する第1の支持手段と、第2の金属材を支持する第2の支持手段とを少なくとも有することを特徴とする加工製品の製造装置である。
【0011】
この本発明では、被加熱部形成機構が、第1の金属材および第2の金属材を加熱する誘導加熱装置と、誘導加熱装置により加熱された第1の金属材および第2の金属材を冷却する冷却装置とを備えることが望ましい。
【0012】
これらの本発明では、第1の支持手段および第2の支持手段は、いずれも、被加熱部を変形させる機能を有することが望ましい。
これらの本発明では、第1の支持手段および第2の支持手段が、いずれも、2本のマニピュレータを有する双腕ロボットにより構成されることが望ましい。この場合に、第1の支持手段を構成する双腕ロボット、および第2の支持手段を構成する双腕ロボットが、水平面内で回動自在である基台に載置されることが望ましい。さらに、第1の支持手段を構成する双腕ロボットが第1の金属材を支持しながら被加熱部を変形させる際に、第2の支持手段を構成する双腕ロボットが第2の金属材の搬入を行うことが望ましい。
【0013】
これらの本発明では、第1の金属材を素材とする製品の搬出を行う第1の搬送装置と、第2の金属材の搬入を行う第2の搬送装置とを備えることが望ましい。
これらの本発明では、第1の金属材および第2の金属材が、いずれも、閉断面形状を有することが望ましい。
【0014】
さらに、これらの本発明では、変形が曲げ変形であることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、生産性が高いために省エネルギーおよびコストダウンを図ることができる加工製品の製造装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る製造装置の一例を示す説明図である。
【図2】図2は、本発明に係る製造装置の他の一例を示す説明図である。
【図3】図3は、特許文献5により開示された曲げ加工装置の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
実施の形態1を、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、実施の形態1の、加工製品11の製造装置10の一例を示す説明図である。なお、以降の説明では、加工対象である金属材12が鋼管である場合を例にとるが、本発明はこれに限定されるものではなく、金属材12は閉じた断面を有するものや開いた断面を有するものであってもよい。
【0018】
図1に示すように、この製造装置10は、素材である第1の鋼管12−1、第2の鋼管12−2に対して加工を行って加工製品を順次製造する。第1の鋼管12−1、第2の鋼管12−2は、図1中の矢印方向へ移動する搬送コンベア13により製造装置10の作業エリアまで搬送されるとともに、製造された加工製品11−1〜11−3は、搬送コンベア13によりこの作業エリアから搬送される。以降の説明は、第1の鋼管12−1に対して加工を行うとともに加工製品11−3を搬出するタイミングについて、行う。
【0019】
製造装置10は、被加熱部形成機構14と被加熱部加工機構15とを備えるので、これらを説明する。
[被加熱部形成機構14]
被加熱部形成機構14は、第1の鋼管12−1の軸方向の一部に被加熱部12−1aを形成するとともに、第2の鋼管12−2の軸方向の一部に被加熱部12−2a(図示しない)を形成するためのものであり、具体的には、第1の鋼管12−1の軸方向の一部に、第1の鋼管12−1の一方の端部12−1bから他方の端部12−1cへ向けて移動する被加熱部12−1aを部分的に形成するための装置である。なお、被加熱部は、第1の鋼管12−1に対してのみならず、第2の鋼管12−2等の、第1の鋼管12−1以外の他の鋼管にも形成するものであるが、以降の説明は、第1の鋼管12−1に形成する場合を例にとる。
【0020】
被加熱部形成機構14は、例えば、(a)第1の鋼管12−1を高い昇温速度で、例えばAc点以上の高温に急速に加熱することができる誘導加熱コイル16と、(b)誘導加熱コイル16に交流電流を供給するための給電装置(図示しない)と、(c)誘導加熱コイル16の直近に配置された冷却水噴射ノズル(図示しない)と、(d)冷却水噴射ノズルに冷却水を供給する給水装置(図示しない)とにより構成されることが、例示される。
【0021】
誘導加熱コイル16および図示しない冷却水噴射ノズルは、産業用ロボット(例えば6軸の多関節型ロボット)17により、適当なエンドエフェクタ(図示しない)を介して保持される。これにより、誘導加熱コイル16および冷却水噴射ノズルは、3次元に移動自在に配置される。なお、誘導加熱コイル16および図示しない冷却水噴射ノズルを3次元に移動自在に配置することができる手段であれば、産業用ロボット17以外の支持機構を用いてもよいことはいうまでもない。
【0022】
さらに、この製造装置10では、冷却水噴射ノズルの下方には、冷却水噴射ノズルから第1の鋼管12−1へ噴射されて下方へ流下する冷却水を受けて収容するための冷却水収容器18が配置されている。これにより、流下する冷却水から産業用ロボット17や後述する基台28を保護することができる。
【0023】
被加熱部形成機構14は、第1の鋼管12−1の被加熱部12−1aを第1の鋼管12−1の軸方向へ第1の鋼管12−1に対して相対的に移動させるものである。このため、被加熱部形成機構14を構成する誘導加熱コイル16および図示しない冷却水噴射ノズルは、第1の鋼管12−1の軸方向へ移動自在に配置したが、本発明は、この態様に限定されるものではなく、誘導加熱コイル16および図示しない冷却水噴射ノズルを固定して設置する場合には、例えば、第1の鋼管12−1を支持する第1の支持手段19を構成する双腕ロボット23によって、第1の鋼管12−1の被加熱部12−1aを第1の鋼管12−1の軸方向へ第1の鋼管12−1に対して相対的に移動させるように構成してもよい。この場合には、第1の支持手段19を構成する双腕ロボット23が、被加熱部形成機構14の機能の一部をも担うこととなる。
【0024】
被加熱部形成機構14は以上のように構成される。
[被加熱部加工機構15]
被加熱部加工機構15は、第1の鋼管12−1を支持しながら、第1の鋼管12−1の被加熱部12−1aを変形させるためのものである。なお、以降の説明では、鋼管12−1の被加熱部12−1aを曲げ変形させる場合を例にとるが、本発明は曲げ変形に限定されるものではなく、例えば剪断変形等の曲げ変形以外の変形でも同様に適用される。
【0025】
被加熱部加工機構15は、第1の支持手段19および第2の支持手段20を有する。第1の支持手段19は、第1の鋼管12−1を支持する機能を有するとともに、第2の支持手段20は、第2の鋼管12−2を支持する機能を有する。図1に示すタイミングでは、第1の支持手段19は第1の鋼管12−1を支持しているとともに、第2の支持手段20は、支持している加工製品11−1を離した後に、第2の鋼管12−2を支持する。
【0026】
第1の支持手段19は、2本のマニピュレータ21、22を有する第1の双腕ロボット23により構成される。また、第2の支持手段22は、2本のマニピュレータ25、26を有する第2の双腕ロボット27により構成される。
【0027】
第1の双腕ロボット23のマニピュレータ21、22、および第2の双腕ロボット27のマニピュレータ25、26それぞれの先端部には、エンドエフェクタとして第1の鋼管12−1または第2の鋼管12−2のチャック機構(図示しない)が設けられる。このチャック機構は、第1の鋼管12−1または第2の鋼管12−2の内部に挿設可能な小径部と、この小径部よりも径が大きい大径部とを有する段差状の筒状体により構成されることが例示される。チャック機構は、小径部を第1の鋼管12−1または第2の鋼管12−2の内部に挿設することにより、第1の鋼管12−1または第2の鋼管12−2を把持することができる。
【0028】
第1の支持手段19である第1の双腕ロボット23のマニピュレータ21、22を適宜移動することにより、第1の鋼管12−1の被加熱部12−1aに曲げモーメントを与えて曲げ変形させることが可能である。また第1の支持手段20である第2の双腕ロボット27のマニピュレータ25、26を適宜移動することにより、第2の鋼管12−2の被加熱部12−2aに曲げモーメントを与えて曲げ変形させることが可能である。
【0029】
すなわち、第1の支持手段19である第1の双腕ロボット23、および第2の支持手段20である第2の双腕ロボット27は、いずれも、第1の鋼管12の被加熱部12−1a、第2の鋼管12−2の被加熱部12−2aを変形させる機能を有する。
【0030】
第1の支持手段19を構成する第1の双腕ロボット23、および第2の支持手段20を構成する第2の双腕ロボット27は、いずれも、水平面内で回動自在に配置された基台28に載置される。
【0031】
図1に示すタイミングでは、第1の支持手段19を構成する第1の双腕ロボット23が第1の鋼管12−1を支持してその加工を行い、第1の鋼管12−1の加工が終了した後に、基台28を水平面内で約180度回転して停止し、第2の支持手段20を構成する第2の双腕ロボット27が支持する第2の鋼管12−2の加工を行う。以降、この手順を繰り返す。このように、第1の双腕ロボット23および第2の双腕ロボット27は、第1の鋼管12−1、第2の鋼管12−2を順次支持して加工する。
【0032】
第1の支持手段19を構成する第1の双腕ロボット23が第1の鋼管12−1を支持しながら第1の鋼管12−1の被加熱部12−1aを変形させる際には、第2の双腕ロボット27は、加工製品11−3の搬出と、第1の鋼管12−1の後に加工される第2の鋼管12−2の支持(搬入)とからなる段取り作業を行う。
【0033】
このように、被加熱部形成機構14および/または被加熱部加工機構15を適宜動作させて、第1の鋼管12−1の被加熱部12−1aを第1の鋼管12−1の軸方向へ移動させることによって、第1の鋼管12−1の被加熱部12−1aを変形させて加工製品を製造する。
【0034】
本発明に係る製造装置10は、以上のように構成される。次に、図1を参照しながら、この製造装置10により、第1の鋼管12−1、第2の鋼管12−2を素材とする加工製品が製造される状況を説明する。
【0035】
以降の説明は、搬送コンベア13が停止し、第1の双腕ロボット23が搬送コンベア13に臨む側の位置にあって鋼管を保持せずに待機するとともに、第2の双腕ロボット27が産業用ロボット17に臨む側の位置にあって鋼管を保持せずに待機している状態から、説明する。
【0036】
はじめに、搬送コンベア13が起動し、搬送コンベア13により第1の鋼管12−1が搬送される。第1の鋼管12−1が第1の双腕ロボット23の動作可能範囲に到達した後に、搬送コンベア13が停止する。
【0037】
第1の双腕ロボット23は、教示された軌跡の通りに動作して、搬送コンベア23上の第1の鋼管12−1の一方の端部12−1bに、マニピュレータ21に保持されたチャックを挿入することにより、第1の鋼管12−1を仮支持し、所定の位置で一旦停止する。
【0038】
基台28の図示しない制御装置は、第1の双腕ロボット23が所定の位置で停止したことを示す信号を受けて、基台28の旋回駆動モータ(図示しない)に起動信号を出力する。これにより、基台28は、水平面内で約180度旋回して停止する。基台28のこの旋回により、第1の双腕ロボット23が産業用ロボット17に臨む側に位置するとともに、第2の双腕ロボット27が搬送コンベア13に臨む側に位置する。
【0039】
第1の双腕ロボット23は、教示された軌跡の通りに動作して所定の位置で停止する。産業用ロボット17は、教示された軌跡の通りに動作して、第1の鋼管12−1における、チャックを挿入されていない他方の端部12−1cの側から、誘導加熱コイル16および冷却水噴射ノズルを第1の鋼管12−1の周囲の所定の位置に配置して停止する。第1の双腕ロボット23は、教示された軌跡の通りに動作して、第1の鋼管12−1の他方の端部12−1cにマニピュレータ22に保持されたチャックを挿入することにより、第1の鋼管12−1を支持し、所定の位置で一旦停止する。
【0040】
次に、第1の双腕ロボット23のマニピュレータ21、22をともに適宜動作させるとともに、産業用ロボット17を動作させることによって、誘導加熱コイル16および冷却水噴射ノズルを、第1の鋼管12−1の一方の端部12−1bから他方の端部12−1cへ向かう方向へ移動させる。
【0041】
このようにして、第1の鋼管12−1の一方の端部12−1bから他方の端部12−1cへ向けて移動する被加熱部12−1aを部分的に形成しながら、一方の端部12−1bおよび/または他方の端部12−1cと、被加熱部12−1aとの間に存在する第1の鋼管12−1の一部を変位させて被加熱部12−1aに曲げモーメントを与えることによって、第1の鋼管12−1に曲げ加工と焼入れとを同時に行い、第1の鋼管12−1を素材とする曲げ加工製品を製造する。
【0042】
第1の鋼管12−1に対する曲げ加工が終了した後、第1の双腕ロボット23は、教示された軌跡の通りにマニピュレータ22を動作して、第1の鋼管12−1の他方の端部12−1cに挿設されたチャックを外し、さらに、産業用ロボット17を動作して、誘導加熱コイル16および冷却水噴射ノズルを所定の位置に退避させる。
【0043】
このようにして、第1の鋼管12−1に対する曲げ加工が全て終了した時点で、第1の双腕ロボット23は、基台28の図示しない制御装置に、作業完了信号を出力する。
一方、第1の双腕ロボット23がこのようにして第1の鋼管12−1に対する曲げ加工を行っている間に、第2の双腕ロボット27は、以下の手順で第2の鋼管12−2に対する段取り作業を行う。
【0044】
搬送コンベア13が起動し、搬送コンベア13により第2の鋼管12−2が搬送される。第2の鋼管12−2が第2の双腕ロボット27の動作可能範囲に到達した後に、搬送コンベア13が停止する。
【0045】
第2の双腕ロボット27は、教示された軌跡の通りに動作して、搬送コンベア23上の第2の鋼管12−2の一方の端部12−2bに、マニピュレータ25に保持されたチャックを挿入することにより、第2の鋼管12−2を仮支持し、所定の位置で一旦停止する。
【0046】
基台28の図示しない制御装置は、上述した第1の双腕ロボット23からの作業完了信号と、第1の双腕ロボット23が所定の位置で停止したことを示す信号とがいずれも入力されたことを条件として、基台28の旋回駆動モータ(図示しない)に起動信号を出力する。これにより、基台28は、水平面内で約180度旋回して停止する。基台28のこの旋回により、第1の双腕ロボット23が搬送コンベア13に臨む側に位置するとともに、第2の双腕ロボット27が産業用ロボット17に臨む側に位置する。
【0047】
第1の双腕ロボット23は、教示された軌跡の通りに動作して、第1の鋼管12−1を素材とする曲げ加工製品を搬送コンベア13上の所定の位置に移載し、マニピュレータ21を動作して曲げ加工製品からチャックを外し、所定の原位置に復帰して待機する。一方、第2の双腕ロボット27は、第1の双腕ロボット23が第1の鋼管12−1に対する上述した加工と同様にして、第2の鋼管12−2に対する曲げ加工を行う。以降、第1の双腕ロボット23および第2の双腕ロボット27はこの手順を繰り返すことにより、鋼管12を素材とする加工製品11を量産する。
【0048】
このように、本発明によれば、一方の双腕ロボットが素材である鋼管の曲げ加工を行っている時間に、他方の双腕ロボットが鋼管の段取り作業を行うことができるので、加工製品の生産タクトをその分だけ大幅に短縮することができ、加工製品の生産性を顕著に向上することが可能になる。このため、本発明により、加工製品生産時の省エネルギーと、加工製品の製造コストの低下とを図ることができる。
【0049】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を説明する。なお、以降の説明では、実施の形態1と相違する部分を説明し、同一の部分には同一の符号を付することにより重複する説明を適宜省略する。
【0050】
図2は、本発明に係る加工製品11の製造装置10−1の一例を示す説明図である。
この製造装置10−1が実施の形態1の製造装置10と相違するのは、搬送コンベアが第1の搬送コンベア13−1と、第2の搬送コンベア13−2とにより構成される点である。
【0051】
、第1の搬送コンベア13−1は、第1の双腕ロボット23または第2の双腕ロボット27が加工した加工製品11を収容して次工程へ搬送する。
一方、第2の搬送コンベア13−2は、第1の鋼管12−1や第2の鋼管12−2といった素材である鋼管12を、第1の双腕ロボット23または第2の双腕ロボット27による搬入位置まで搬送する。
【0052】
製造装置10−1のこれ以外の要素は、製造装置10と略同じである。
この製造装置10−1は、加工製品11を搬出する搬送コンベア13−1と、素材である鋼管12を搬入する搬送コンベア13−2とを分けて配置するので、加工製品の生産タクトをさらに短縮でき、極めて高い生産能率で加工製品11を製造することができる。
【符号の説明】
【0053】
10、10−1 本発明に係る製造装置
11、11−1〜11−3 加工製品
12、12−1、12−2 鋼管(金属材)
12−1a 被加熱部
12−1b 一方の端部
12−1c 他方の端部
13、13−1、13−2 搬送コンベア
14 被加熱部形成機構
15 被加熱部加工機構
16 高周波加熱コイル
17 産業用ロボット
18 冷却水収容器
19 第1の支持手段
20 第2の支持手段
21、22 マニピュレータ
23 第1の双腕ロボット
25、26 マニピュレータ
27 第2の双腕ロボット
28 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属材および第2の金属材それぞれの軸方向の一部に被加熱部を形成するとともに、該第1の金属材の軸方向へ該第1の金属材に対して相対的に移動すること、および、該第2の金属材の軸方向へ該第2の金属材に対して相対的に移動することによって前記第1の金属材および前記第2の金属材それぞれの被加熱部を前記第1の金属材および前記第2の金属材それぞれの軸方向へ移動させるための被加熱部形成機構と、前記第1の金属材および前記第2の金属材を支持しながら前記第1の金属材および前記第2の金属材それぞれの被加熱部を変形させるための被加熱部加工機構とを備える加工製品の製造装置であって、
前記被加熱部加工機構は、前記第1の金属材を支持する第1の支持手段と、前記第2の金属材を支持する第2の支持手段とを少なくとも有すること
を特徴とする加工製品の製造装置。
【請求項2】
前記被加熱部形成機構は、前記第1の金属材および前記第2の金属材を加熱する誘導加熱装置と、該誘導加熱装置により加熱された前記第1の金属材および前記第2の金属材を冷却する冷却装置とを備える請求項1に記載された加工製品の製造装置。
【請求項3】
前記第1の支持手段および前記第2の支持手段は、いずれも、前記被加熱部を変形させる機能を有する請求項1または請求項2に記載された加工製品の製造装置。
【請求項4】
前記第1の支持手段および前記第2の支持手段は、いずれも、2本のマニピュレータを有する双腕ロボットにより構成される請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された加工製品の製造装置。
【請求項5】
前記第1の支持手段を構成する前記双腕ロボット、および前記第2の支持手段を構成する前記双腕ロボットは、水平面内で回動自在である基台に載置される請求項4に記載された加工製品の製造装置。
【請求項6】
前記第1の支持手段を構成する前記双腕ロボットが前記第1の金属材を支持しながら前記被加熱部を変形させる際に、前記第2の支持手段を構成する前記双腕ロボットが前記第2の金属材の搬入を行う請求項5に記載された加工製品の製造装置。
【請求項7】
前記第1の金属材を素材とする製品の搬出を行う第1の搬送装置と、前記第2の金属材の搬入を行う第2の搬送装置とを備える請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された加工製品の製造装置。
【請求項8】
前記第1の金属材および前記第2の金属材は、いずれも、閉断面形状を有する請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された加工製品の製造装置。
【請求項9】
前記変形は曲げ変形である請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された加工製品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−200928(P2011−200928A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72626(P2010−72626)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(000229612)住友鋼管株式会社 (26)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】