説明

加水分解性基を有するシリコーン含有ポリマー材料

本発明は、加水分解性単位を含むシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを提供する。加水分解性単位は、加水分解により、硬化後の表面処理なしで、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに親水面を付与することができる親水性単位に転換することができる。本発明はまた、加水分解性単位を含む化学線架橋性プレポリマー及び本発明のプレポリマーの使用を提供する。加えて、本発明は、加水分解以外の後表面処理なしで、湿潤性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン含有プレポリマーのクラス及びその使用並びに本発明のプレポリマー及び加水分解性シリコーン含有基を有するモノマーを含有するレンズ配合物から製造されたシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソフトシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが、その高い酸素透過性及び快適さのため、人気を博している。「ソフト」コンタクトレンズは眼の形状にぴったり適合するため、酸素がレンズを容易に取り囲むことはできない。角膜は、他の組織のように血液供給から酸素を受けるのではないため、ソフトコンタクトレンズは、周囲の空気(すなわち酸素)からの酸素を角膜に到達させなければならない。十分な酸素が角膜に到達しないならば、角膜膨潤が起こる。長期間の酸素欠乏は、角膜中の血管の望ましくない成長を引き起こす。高い酸素透過性を有することにより、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、十分な酸素がレンズを透過して角膜に到達することを許し、角膜の健康に最小限の悪影響しか及ぼさない。
【0003】
しかし、すべての市販のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、使い捨てプラスチック型並びにモノマー及び/又はマクロマーの混合物の使用を伴う従来の流し込み成形技術にしたがって製造される。そのような従来の流し込み成形技術にはいくつかの欠点がある。たとえば、旧来の流し込み成形製造法は、有機溶媒を使用することによって非重合モノマーをレンズから除去するレンズ抽出を含まざるを得ない。そのようなレンズ抽出は、製造コストを増し、製造効率を低下させる。加えて、使い捨てプラスチック型は、プラスチック型の射出成形中、製造工程における変動(温度、圧力、材料性質)の結果として型の寸法の変動が起こるおそれがあるため、また、得られる型が射出成形後に不均一な収縮を受けるおそれがあるため、避けがたい寸法変差を本質的に有する。型におけるこれらの寸法変化が、製造されるコンタクトレンズのパラメータ(ピーク屈折率、直径、ベースカーブ、中心厚さなど)の変動及び複雑なレンズ設計を複製する際の低い忠実度につながるおそれがある。
【0004】
従来の流し込み成形技術で遭遇される上記欠点は、米国特許第5,508,317号、第5,583,463号、第5,789,464号及び第5,849,810号に記載されているような、(1)モノマーを実質的に含まず、エチレン性不飽和基を有する実質的に精製されたプレポリマーを含むレンズ形成組成物、(2)高精度で製造された再使用可能な型、及び(3)化学線(たとえばUV)の空間的限定下の硬化を含む、いわゆるLightstream Technology(商標)(CIBA Vision)を使用することによって解消することができる。Lightstream Technology(商標)にしたがって、レンズは、比較的低コストで、高い一貫性及び元のレンズ設計に対する高い忠実度を有するように製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造するためにLightstream Technology(商標)を十分に利用するために、Lightstream Technology(商標)にしたがって、所望のバルク及び表面性質を有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造するのに適した新規な化学線架橋性プレポリマーの必要性がなおも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一つの態様において、化学線架橋性プレポリマーを提供する。本発明のプレポリマーは、(a)(1)加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマー、(2)少なくとも一つの親水性ビニルモノマー、(3)一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー又はそれらの二つ以上の組み合わせ、及び(4)場合によって、連鎖移動剤を含む、化学線重合性組成物(ただし、成分(2)〜(4)の少なくとも一つが少なくとも一つの第一の官能基をさらに含むこととする)を共重合させて、第一の官能基を有する中間体コポリマーを得ること、及び(b)化学線架橋性基及び第二の官能基を含み、その第二の官能基が中間体コポリマーの第一の官能基の一つと反応する有機化合物を共重合物と反応させて、化学線架橋性基を有する架橋性プレポリマーを形成することによって得られる。
【0007】
本発明は、もう一つの態様において、ソフトコンタクトレンズを提供する。本発明のソフトコンタクトレンズは、レンズ形成材料を型の中で硬化させることによって得られ、第一及び/又は第二の加水分解性シリコーン含有基を含むシリコーンハイドロゲル材料を含み、レンズ形成材料は、一つの第一の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性モノマー及び/又は複数の第二の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性プレポリマーを含み、第一及び第二の加水分解性シリコーン含有基が、加水分解によってシリコーンハイドロゲル材料から開裂して、硬化後の表面処理なしで、ソフトコンタクトレンズに約90°以下の水接触角を提供することができる。
【0008】
本発明は、さらなる態様において、ソフトコンタクトレンズを製造する方法を提供する。方法は、コンタクトレンズの前面を画定する第一の成形面を有する第一の型半部及びコンタクトレンズの後面を画定する第二の成形面を有する第二の型半部を有する、ソフトコンタクトレンズを製造するための型を提供するステップ(ここで、第一及び第二の型半部は、第一の成形面と第二の成形面との間にキャビティが形成されるように互いを受け入れるように構成されている)、一つの第一の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性モノマー及び/又は複数の第二の加水分解性シリコーン含有基を有する一つの化学線架橋性プレポリマーを含むレンズ形成材料をキャビティに導入するステップ、レンズ形成材料を硬化させて、第一及び/又は第二の加水分解性シリコーン含有基を含むシリコーンハイドロゲル材料で構成されたソフトコンタクトレンズを形成するステップ、及びソフトコンタクトレンズを加水分解に付し、それにより、加水分解中、第一及び第二の加水分解性シリコーン含有基をシリコーンハイドロゲル材料から開裂させて、硬化後の表面処理なしで、ソフトコンタクトレンズに約90°以下の水接触角を提供するステップを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の実施態様の詳細な説明
断りない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法及び実験手順は当技術分野で周知であり、一般に使用されている。これらの手順には、当技術分野及び様々な一般的参考文献で提供されているような従来法が使用される。ある語が単数形で提供されている場合、本発明者らはその語の複数形をも考慮している。本明細書で使用される命名法及び以下に記載する実験手順は、当技術分野で周知であり、一般に使用されているものである。
【0010】
本明細書で使用される「眼科用装置」とは、コンタクトレンズ(ハード又はソフト)、眼内レンズ、角膜アンレー、眼又は眼球近傍の上又は周辺で使用される他の眼科用装置(たとえばステント、緑内障シャントなど)をいう。
【0011】
「コンタクトレンズ」とは、装用者の眼の上又は中に配置することができる構造物をいう。コンタクトレンズは、使用者の視力を矯正、改善又は変化させることができるが、必ずしもそうでなくてもよい。コンタクトレンズは、当技術分野で公知である、又はのちに開発される適切な材料でできていることができ、ソフトレンズ、ハードレンズ又はハイブリッドレンズであることができる。「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ」とは、シリコーンハイドロゲル材料を含むコンタクトレンズをいう。
【0012】
「ハイドロゲル」又は「ハイドロゲル材料」とは、完全に水和した状態で少なくとも10重量%の水を吸収することができるポリマー材料をいう。
【0013】
「シリコーンハイドロゲル」とは、少なくとも一つのシリコーン含有モノマー又は少なくとも一つのシリコーン含有マクロマー又は少なくとも一つの架橋性シリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるシリコーン含有ハイドロゲルをいう。
【0014】
本明細書で使用される「親水性」とは、脂質よりも水と容易に会合する物質又はその部分をいう。
【0015】
「モノマー」とは、重合させることができる低分子量化合物をいう。低分子量とは一般に700ダルトン未満の平均分子量をいう。
【0016】
「化学線重合性モノマー」とは、化学線的に重合させることができるモノマーをいう。本発明にしたがって、化学線重合性モノマーは、ビニルモノマー又は二つのチオール基を含む化合物であることができる。二つのチオール基を有する化合物は、ビニル基を有するモノマーとのチオール−エンステップ成長ラジカル重合に関与してポリマーを形成することができる。ステップ成長ラジカル重合は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、所有者が同じである同時係属中の米国特許出願第60/869,812号("PRODUCTION OF OPHTHALMIC DEVICES BASED ON PHOTO-INDUCED STEP GROWTH POLYMERIZATION"と題する)(2006年12月13日出願)に記載されているように、コンタクトレンズの製造に使用することができる。
【0017】
「シロキサン含有モノマー」とは、二価の基
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R1及びR2は、独立して、ヒドロキシ基、第一級、第二級もしくは第三級アミン基、カルボキシ基又はカルボン酸を含むことができる一価のC1〜C10アルキル、C1〜C10エーテル、C1〜C10フルオロアルキル、C1〜C10フルオロエーテル又はC6〜C18アリール基であり、nは、4以上の整数である)
を含むモノマーをいう。
【0020】
本明細書で使用される「ビニルモノマー」とは、エチレン性不飽和基を有し、化学線的又は熱的に重合させることができるモノマーをいう。
【0021】
「オレフィン性不飽和基」又は「エチレン性不飽和基」とは、本明細書中、広い意味で使用され、>C=C<基を含む任意の基を包含するものと解釈される。例示的なエチレン性不飽和基としては、非限定的に、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル又は他のC=C含有基がある。
【0022】
重合性組成物、プレポリマー又は材料の硬化、架橋又は重合に関して本明細書で使用される「化学線的」とは、硬化(たとえば架橋及び/又は重合)が化学線照射、たとえばUV線照射、電離放射線(たとえばγ線又はX線照射)、マイクロ波照射などによって実施されることをいう。熱硬化又は化学線硬化の方法は当業者に周知である。
【0023】
本明細書で使用される「流体」とは、液体のように流れることができる物質をいう。
【0024】
「親水性モノマー」とは、重合すると、水溶性である、又は少なくとも10重量%の水を吸収することができるポリマーを形成することができるモノマーをいう。
【0025】
本明細書で使用される「疎水性モノマー」とは、重合すると、水不溶性であり、10重量%未満の水しか吸収することができないポリマーを形成するビニルモノマーをいう。
【0026】
「マクロマー」とは、重合及び/又は架橋させることができる中及び高分子量化合物をいう。中及び高分子量とは一般に、700ダルトンを超える平均分子量をいう。
【0027】
「化学線重合性マクロマー」とは、化学線的に重合させることができるマクロマーをいう。本発明にしたがって、化学線重合性マクロマーは、フリーラジカル連鎖成長重合又はチオール−エンステップ成長ラジカル重合に関与することができる、一つ以上のエチレン性不飽和基又は二つ以上のチオール基を有するマクロマーであることができる。好ましくは、マクロマーは、エチレン性不飽和基を含み、化学線的又は熱的に重合させることができる。
【0028】
「プレポリマー」とは、複数の化学線架橋性基を含み、化学線的に硬化(たとえば架橋)すると、それ自体よりもずっと高い分子量を有する架橋ポリマーを与えることができる出発ポリマーをいう。
【0029】
「化学線架橋性基」とは、エチレン性不飽和基又はチオール基をいう。
【0030】
「シリコーン含有プレポリマー」とは、シリコーンを含み、化学線的に架橋すると、出発ポリマーよりもずっと高い分子量を有する架橋ポリマーを与えることができるプレポリマーをいう。
【0031】
本明細書で使用されるポリマー材料(モノマー又はマクロマー材料を含む)の「分子量」とは、断りない限り、又は試験条件がそうではないことを指示しない限り、数平均分子量をいう。
【0032】
「ポリマー」とは、一つ以上のモノマーを重合させることによって形成される物質をいう。
【0033】
コポリマー又は化合物に関して本明細書で使用される「エチレン性官能化」とは、一つ以上の化学線架橋性基がカップリング工程にしたがってコポリマー又は化合物のペンダント又は末端官能基を介してコポリマー又は化合物に共有結合していることを記載することを意図する。
【0034】
本明細書で使用される「複数」とは、少なくとも二つ、好ましくは少なくとも三つをいう。
【0035】
プレポリマーに関していう「ダングリング親水性ポリマー鎖」とは、プレポリマーが親水性ポリマー鎖を含み、それらの親水性ポリマー鎖それぞれが一つの単共有結合を介してプレポリマーの主鎖に固着されている(好ましくは親水性ポリマー鎖の一端で)ことをいうものと解釈される。
【0036】
「光開始剤」とは、光の使用によってラジカル架橋/重合反応を開始させる化学物質をいう。適切な光開始剤としては、非限定的に、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocur(登録商標)タイプ及びIrgacur(登録商標)タイプ、好ましくはDarocur(登録商標)1173及びIrgacur(登録商標)2959がある。
【0037】
「熱開始剤」とは、熱エネルギーの使用によってラジカル架橋/重合反応を開始させる化学物質をいう。適切な熱開始剤の例は、非限定的に、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、過酸化物、たとえば過酸化ベンゾイルなどを含む。好ましくは、熱開始剤は2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。
【0038】
「化学線の空間的限定」とは、光線の形態のエネルギー放射をたとえばマスク又はスクリーン又はそれらの組み合わせによって指向させて、明確な周辺境界を有する区域に空間限定的に衝突させる動作又は工程をいう。たとえば、UV線の空間的限定は、米国特許第6,627,124号(参照により全体として本明細書に組み込まれる)の図1〜9に示すように、UV不透過性領域(隠蔽領域)によって包囲された透過性又は開放領域(非隠蔽領域)を有するマスク又はスクリーンを使用することによって達成することができる。非隠蔽領域は、非隠蔽領域との明確な周辺境界を有する。架橋に使用されるエネルギーは、放射線エネルギー、特にUV線、γ線、電子放射線又は熱放射線であり、放射線エネルギーは、一方で良好な限定を達成し、他方ではエネルギーの効率的使用を達成するために、実質的に平行なビームの形態にあることが好ましい。
【0039】
レンズに関していう「視認用ティント」とは、ユーザがレンズ貯蔵、消毒又は洗浄容器内の透明な溶液中のレンズを容易に見つけることを可能にするためのレンズの染色(又は着色)をいう。染料及び/又は顔料をレンズの視認用ティントに使用することができることは当技術分野で周知である。
【0040】
「染料」とは、溶媒に可溶性であり、色を付与するために使用される物質をいう。染料は、一般的には半透明であり、光を吸収はするが、散乱はさせない。適切な生体適合性染料を本発明において使用することができる。
【0041】
「顔料」とは、それが不溶性である液体中に懸濁した粉末状物質をいう。顔料は、蛍光顔料、発光顔料、真珠箔顔料又は従来の顔料であることができる。任意の適切な顔料を使用することができるが、耐熱性であり、非毒性であり、水溶液に不溶性であることが好ましい。
【0042】
本明細書で使用される「表面修飾」とは、物品が、物品の形成の前又は後に、表面処理工程(又は表面修飾工程)で処理されて、(1)コーティングが物品の表面に適用される、(2)化学種が物品の表面に吸着される、(3)物品の表面上の化学基の化学的性質(たとえば静電荷)が変えられる、又は(4)物品の表面性質が他のやり方で変更されることをいう。例示的な表面処理法としては、非限定的に、電離ガスが物品の表面に適用されるプラズマ法(たとえば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第4,312,575号及び第4,632,844号を参照)、プラズマ以外のエネルギー(たとえば静電荷、照射又は他のエネルギー源)による表面処理、化学的処理、物品表面への親水性モノマー又はマクロマーのグラフト、米国特許第6,719,929号(参照により全体として本明細書に組み込まれる)に開示されているモールドトランスファーコーティング法、米国特許第4,045,547号、第4,042,552号、第5,198,477号、第5,219,965号、第6,367,929号及び第6,822,016号、第7,279,507号(参照により全体として本明細書に組み込まれる)で提案されている、コンタクトレンズを製造するためのレンズ配合物への湿潤剤の配合(すなわち、重合前の表面処理)、PCT特許出願公開公報WO2007/146137(参照により全体として本明細書に組み込まれる)に開示されている強化モールドトランスファーコーティング及び米国特許第6,451,871号、第6,719,929号、第6,793,973号、第6,811,805号、第6,896,926号(参照により全体として本明細書に組み込まれる)に記載された方法にしたがって得られるLbL(layer-by-layer)コーティングを含む。
【0043】
例示的なプラズマガス及び処理条件は、米国特許第4,312,575号及び第4,632,844号に記載されている。プラズマガスは、好ましくは、低級アルカンと窒素、酸素又は不活性ガスとの混合物である。
【0044】
本明細書で使用される「LbLコーティング」とは、コンタクトレンズ又は型半部に共有結合されるのではなく、レンズ又は型半部へのポリイオン(又は荷電)及び/又は非荷電材料の一層ずつの(layer-by-layer)の被着によって得られるコーティングをいう。LbLコーティングは一つ以上の層で構成されることができる。
【0045】
本明細書で使用される「ポリイオン材料」とは、複数の荷電基又は電離性基を有するポリマー材料、たとえば高分子電解質、p及びn形にドープされた導電性ポリマーをいう。ポリイオン材料は、ポリカチオン材料(正電荷を有する)及びポリアニオン材料(負電荷を有する)の両方を含む。
【0046】
コンタクトレンズ又は型半部上のLbLコーティングの形成は、数多くの方法で、たとえば、米国特許第6,451,871号、第6,719,929号、第6,793,973号、第6,811,805号、第6,896,926号(参照により全体として本明細書に組み込まれる)に記載されているようにして達成することができる。
【0047】
シリコーンハイドロゲル材料又はソフトコンタクトレンズに関していう「硬化後の表面処理」とは、型の中でのハイドロゲル材料又はソフトコンタクトレンズの形成(硬化)後に実施される、加水分解以外の表面処理工程をいう。
【0048】
シリコーンハイドロゲル材料又はコンタクトレンズに関していう「親水面」とは、シリコーンハイドロゲル材料又はコンタクトレンズが、約90°以下、好ましくは約80°以下、より好ましくは約70°以下、さらに好ましくは約60°以下の平均水接触角を有することを特徴とする表面親水性を有することをいう。
【0049】
「平均接触角」とは、少なくとも3個のコンタクトレンズの計測値を平均することによって得られる水接触角(Wilhelmyプレート法によって計測される前進角)をいう。
【0050】
本明細書で使用される「抗菌剤」とは、その用語が当技術分野で公知であるように、微生物の増殖を減らす、なくす、又は阻害することができる化学物質をいう。
【0051】
「抗菌性金属」とは、そのイオンが抗菌効果を有し、生体適合性である金属である。好ましい抗菌性金属としては、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Sn、Cu、Sb、Bi及びZnがあり、Agがもっとも好ましい。
【0052】
「抗菌性金属含有ナノ粒子」とは、1マイクロメートル未満の粒度を有し、その一つ以上の酸化状態で存在する少なくとも一つの抗菌性金属を含有する粒子をいう。
【0053】
「抗菌性金属ナノ粒子」とは、本質的に抗菌性金属でできており、1マイクロメートル未満の粒度を有する粒子をいう。抗菌性金属ナノ粒子中の抗菌性金属は、その一つ以上の酸化状態で存在することができる。たとえば、銀含有ナノ粒子は、その一つ以上の酸化状態の銀、たとえばAg0、Ag1+及びAg2+を含有することができる。
【0054】
「安定化された抗菌性金属ナノ粒子」とは、調製中に安定剤によって安定化されている抗菌性金属ナノ粒子をいう。安定化された抗菌性金属ナノ粒子は、ナノ粒子を調製するための溶液中に存在し、得られるナノ粒子を安定化することができる物質(又はいわゆる安定剤)に大きく依存して、正電荷を有する、又は負電荷を有する、又は中性であることができる。安定剤は公知の適切な物質であることができる。例示的な安定剤としては、非限定的に、正電荷を有するポリイオン材料、負電荷を有するポリイオン材料、ポリマー、界面活性剤、サリチル酸、アルコールなどを含む。
【0055】
本明細書で使用されるレンズの「酸素伝達率」とは、酸素が特定の眼科用レンズを透過する率である。酸素伝達率Dk/tは従来、barrer/mmの単位で表されている。その場合、tは、計測区域における材料の平均厚さ[mm単位]であり、「barrer/mm」は、
[(cm3酸素)/(cm2)(sec)(mm Hg)]×10-9
と定義される。
【0056】
レンズ材料の固有「酸素透過度」Dkはレンズの厚さに依存しない。固有酸素透過度は、酸素が材料を透過する率である。酸素透過度は従来、barrerの単位で表されている。「barrer」は、
[(cm3酸素)(mm)/(cm2)(sec)(mm Hg)]×10-10
と定義される。
【0057】
これらは、当技術分野で一般に使用されている単位である。したがって、当技術分野における使用とで統一するため、単位「barrer」は、先に定義した意味を有する。たとえば、90barrer(「酸素透過度barrer」)のDk及び90ミクロン(0.090mm)の厚さを有するレンズは、100barrer/mmのDk/t(酸素伝達率barrer/mm)を有することになる。本発明にしたがって、材料又はコンタクトレンズに関していう高い酸素透過度は、実施例に記載されるクーロメトリ法にしたがって厚さ100ミクロンの試料(フィルム又はレンズ)で計測した場合で少なくとも40barrer以上の見掛け酸素透過度を特徴とする。
【0058】
レンズの「イオン透過度」は、イオノフラックス拡散係数及びイオノトンイオン透過係数と相関する。
【0059】
イオノフラックス拡散係数Dは、以下のように、フィックの法則を適用することによって決定される。
D=−n′/(A×dc/dx)
式中、n′=イオン輸送速度[mol/min]であり、
A=レンズ暴露面積[mm2]であり、
D=イオノフラックス拡散係数[mm2/min]であり、
dc=濃度差[mol/L]であり、
dx=レンズ厚さ[mm]である。
【0060】
そして、以下の式にしたがってイオノトンイオン透過係数Pが決定される。
ln(1−2C(t)/C(0))=−2APt/Vd
式中、C(t)=受容セル中の時間tにおけるナトリウムイオンの濃度であり、
C(0)=ドナーセル中のナトリウムイオンの初期濃度であり、
A=膜面積、すなわちセルに暴露されるレンズ面積であり、
V=セルコンパートメントの容積(3.0ml)であり、
d=暴露区域の平均レンズ厚さであり、
P=透過係数である。
【0061】
約1.5×10-6mm2/minよりも大きいイオノフラックス拡散係数Dが好ましいが、約2.6×10-6mm2/minよりも大きいことがさらに好ましく、約6.4×10-6mm2/minよりも大きいことがもっとも好ましい。
【0062】
良好な涙液交換を保証し、最終的には、良好な角膜健康状態を保証するためには、眼の上のレンズの動きが必要であることが知られている。イオン透過度は、水の透過度と正比例すると考えられているため、眼の上の動きの予測子の一つである。
【0063】
本発明は、シリコーン含有プレポリマー又はシリコーンハイドロゲル材料を調製するための、加水分解性シリコーン含有基を有するモノマーの使用に関する。本発明は、一部には、シリコーン含有プレポリマーを調製するための重合性組成物へのTRISアクリレート(TRISはトリス(メチルシロキシ)基を表す)の付加が、はるかに水処理しやすいプレポリマーを生じさせることができるという発見に基づく。しかし、TRISの付加はまた、得られるプレポリマーに由来するシリコーンハイドロゲル材料の酸素透過度及びイオン透過度を低下させる。開裂性(加水分解性)TRIS様モノマーをプレポリマーの合成に配合することにより、得られるプレポリマーをより加工性にする、たとえば水中で限外ろ過しやすくすることができ、水又は水/有機溶媒混合物を使用して、得られるプレポリマーからレンズ配合物を調製することができると考えられる。コンタクトレンズを製造するための型の中でレンズ配合物を硬化させたのち、得られたレンズを何らかの刺激に暴露して、TRIS基を開裂させ、親水性基を後に残すことができる。TRIS基を開裂させるための刺激は、熱(オートクレーブステップの前又は期間中)、光(硬化光そのもの又はTRIS基を溶解脱離させる別の波長でのさらなる露光)及び/又は何らかの化学物質であることができる。
【0064】
本発明はまた、一部には、加水分解性トリメチルシリル基を有する一つ以上のモノマーを含有するレンズ配合物から得られるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを、加水分解により、親水面(すなわち、90°以下の平均水接触角)を有するように転換することができるという発見に基づく。トリメチルシリル基は、その低いエネルギーのために、レンズ表面に移動する強い傾向を有すると考えられる。ポリマー系が二つ以上の成分を含むならば、界面に局在した場合に最小限の界面エネルギーを生じさせる成分が、可能ならば、表面に移動する。トリメチルシリル基がそのような成分である。レンズ上又はレンズ近くの疎水性トリメチルシリル基を水和工程で開裂させて、加水分解後に親水性基を後に残して、それにより、レンズの表面性質を疎水性から親水性に変化させることができる。これは、親水面を有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造するための費用効果的な方法になることができる。
【0065】
本発明は、一つの態様において、化学線架橋性プレポリマーを提供する。本発明のプレポリマーは、(a)(1)加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマー、(2)少なくとも一つの親水性ビニルモノマー、(3)一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー又はそれらの二つ以上の組み合わせ、及び(4)場合によって、連鎖移動剤を含む、化学線重合性組成物(ただし、成分(2)〜(4)の少なくとも一つが少なくとも一つの第一の官能基をさらに含むこととする)を共重合させて、第一の官能基を有する中間体コポリマーを得ること、及び(b)化学線架橋性基及び第二の官能基を含み、その第二の官能基が中間体コポリマーの第一の官能基の一つと反応して共有結合を形成する有機化合物を共重合物と反応させて、化学線架橋性基を有する架橋性プレポリマーを形成することによって得られる。
【0066】
本発明のプレポリマーは、エチレン性不飽和基及びチオール基からなる群より選択される複数の化学線架橋性基を含む。
【0067】
本発明のプレポリマーの架橋がフリーラジカル連鎖成長重合の機構に基づく場合、プレポリマーは、好ましくは、少なくとも三つのエチレン性不飽和基を含む。
【0068】
本発明のプレポリマーの架橋がチオール−エンステップ成長ラジカル重合の機構に基づく場合、プレポリマーの化学線架橋性基は、好ましくは、少なくとも三つのチオール基又は少なくとも三つのエン含有基を含む。「エン含有基」とは、カルボニル基(−CO−)、窒素原子又は酸素原子に直接的には結合していない炭素−炭素二重結合を含む一価又は二価の基を記載することが意図され、好ましくは、式(I)〜(III)のいずれか一つによって定義される。
【0069】
【化2】

【0070】
式中、R1は水素又はC1〜C10アルキルであり、R2及びR3は、互いに独立して、水素、C1〜C10アルケン二価基、C1〜C10アルキル又は−(R18a−(X1b−R19(式中、R18はC1〜C10アルケン二価基であり、X1はエーテル結合(−O−)、ウレタン結合(−N)、尿素結合、エステル結合、アミド結合又はカルボニルであり、R19は水素、単結合、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、C1〜C12アミノアルキル基、C1〜C18アルキルアミノアルキル基、C1〜C18カルボキシアルキル基、C1〜C18ヒドロキシアルキル基、C1〜C18アルキルアルコキシ基、C1〜C12アミノアルコキシ基、C1〜C18アルキルアミノアルコキシ基、C1〜C18カルボキシアルコキシ基又はC1〜C18ヒドロキシアルコキシ基であり、a及びbは、互いに独立して、0又は1である)であるが、ただし、R2及びR3の一方だけが二価基であり;R4〜R9は、互いに独立して、水素、C1〜C10アルケン二価基、C1〜C10アルキル又は−(R18a−(X1b−R19であり、場合によっては、R4及びR9は、アルケン二価基を介して結合して環を形成するが、ただし、R4〜R9の少なくとも一つが二価基であり;n及びmは、互いに独立して、0〜9の整数であるが、ただし、n及びmの和が2〜9の整数であり;R10〜R17は、互いに独立して、水素、C1〜C10アルケン二価基、C1〜C10アルキル又は−(R18a−(X1b−R19であり、pは、1〜3の整数であるが、ただし、R10〜R17の一つ又は二つが二価基である。
【0071】
プレポリマーが複数のエン含有基を含む場合、これらの基は、二つ以上のチオール基を有するステップ成長架橋剤によって提供されることができるチオール基の存在下、チオール−エンステップ成長ラジカル重合を受ける。同様に、プレポリマーが複数のチオール基を含む場合、これらの基は、二つ以上のエン含有基を有するステップ成長架橋剤によって提供されることができるエン含有基の存在下、チオール−エンステップ成長ラジカル重合を受ける。
【0072】
本発明にしたがって、加水分解性シリコーン含有基を含むビニルモノマーは、尿素結合を介してモノマーの残り部分に結合したトリス(トリメチルシロキシ)基を有する、又はビニルモノマーの酸素又は窒素原子に共有結合したトリメチルシリル基を有するビニルモノマーであることができる。トリス(トリメチルシロキシ)基及びトリメチルシリル基はいずれも疎水性である。尿素結合の加水分解がトリス(トリメチルシロキシ)基を開裂させ、親水性基を後に残すことができる。同様に、トリメチルシリル基と酸素又は窒素原子との結合の加水分解がトリメチルシリル基を開裂脱離させ、親水性基を後に残すことができる。
【0073】
加水分解性トリメチルシリル基が酸素又は窒素原子に共有結合しているビニルモノマーは、式(1)
【0074】
【化3】

【0075】
(式中、1Rは、H又は−CH3であり、−L−は、−O−又は
【0076】
【化4】

【0077】
であり、2Rは、トリメチルシリル基(−Si(CH33)又は少なくとも一つのトリメチルシリルオキシ、トリメチルシリルアミノ基もしくはトリメチルシリル−C1〜C7アルキルアミノ基によって置換されているC4〜C25アルキルであり、3Rは、H又はC1〜C8アルキル基である)
によって定義される。
【0078】
式(1)の好ましいモノマーの例は、非限定的に、N−トリメチルシリルメタクリルアミド、N−トリメチルシリルアクリルアミド、トリメチルシリルアクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、2,3−ジ−トリメチルシリルオキシアクリレート、2,3−ジ−トリメチルシリルオキシメタクリレート、5,6−ジ−トリメチルシリルオキシヘキシルアクリレート及び5,6−ジ−トリメチルシリルオキシヘキシルメタクリレートを含む。
【0079】
尿素結合を介して残り部分に共有結合している加水分解性トリス(メチルシロキシ)アルキル基を有するビニルモノマーは、式(2)
【0080】
【化5】

【0081】
(式中、1RはH又は−CH3であり、−L−は−O−又は
【0082】
【化6】

【0083】
であり、3RはH又はC1〜C8アルキル基であり、4Rは、C1〜C12非置換アルキレン(二価基)又は一つ以上の水素がC1〜C3アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基及び/又はカルボキシル基によって置換されている置換アルキレンであり、5RはC1〜C7アルキレン基である)
によって定義される。
【0084】
式(2)のビニルモノマーは、尿素結合を形成するためのイソシアナト基とアミノ基との間の公知の反応に基づいて調製することができる。たとえば、イソシアナト含有アクリレート(又はメタクリレート)がアミノアルキル−トリス(トリメチルシロキシ)シランと反応して、式(2)のビニルモノマーを形成することができる。あるいはまた、イソシアナトアルキル−トリス(トリメチルシロキシ)シランがアミノ含有アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド又はメタクリルアミドと反応して、式(2)のビニルモノマーを形成することもできる。イソシアナトアルキルアクリレート及びイソシアナトアルキルアクリレートの例は、非限定的に、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトプロピルアクリレート、イソシアナトイソプロピルアクリレート、イソシアナトブチルアクリレート、イソシアナトペンチルアクリレート、イソシアナトヘキシルアクリレート、イソシアナトヘプチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、イソシアナトエチルメタクリレート、イソシアナトプロピルメタクリレート、イソシアナトイソプロピルメタクリレート、イソシアナトブチルメタクリレート、イソシアナトペンチルメタクリレート、イソシアナトヘキシルメタクリレート及びイソシアナトヘプチルメタクリレートを含む。アミノアルキル−トリス(トリメチルシロキシ)シランの例は、非限定的に、アミノエチル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、アミノプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、アミノブチル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、アミノペンチル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、アミノヘキシル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン及びアミノヘプチル−トリス(トリメチルシロキシ)シランを含む。
【0085】
ほぼあらゆる親水性ビニルモノマーを、ペンダント又は末端官能基を有する中間体コポリマーを調製するための化学線重合性組成物において使用することができる。適切な親水性ビニルモノマーとしては、ヒドロキシル置換ヒドロキシル置換C1〜C8アルキルアクリレート類及びメタクリレート類、アクリルアミド、メタクリルアミド、C1〜C8アルキルアクリルアミド類、C1〜C8アルキルメタクリルアミド類、エトキシル化アクリレート類、エトキシル化メタクリレート類、ヒドロキシル置換C1〜C8アルキルアクリルアミド類、ヒドロキシル置換C1〜C8アルキルメタクリルアミド類、ヒドロキシル置換低級アルキルビニルエーテル類、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルピロール、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−ビニル−4,4′−ジアルキルオキサゾリン−5−オン、2−及び4−ビニルピリジン、全部で3〜5個の炭素原子を有するビニル性不飽和カルボン酸、アミノ(低級アルキル)−(「アミノ」は第四級アンモニウムをも含む)、モノ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)及びジ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)アクリレート及びメタクリレート、アリルアルコール、N−ビニルアルキルアミド、N−ビニル−N−アルキルアミドなどがあるが、網羅的なものではない。
【0086】
好ましい親水性ビニルモノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、トリメチルアンモニウム2−ヒドロキシプロピルメタクリレート塩酸塩、アミノプロピルメタクリレート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、グリセロールメタクリレート(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、アクリル酸、200〜1,500の重量平均分子量を有するC1〜C4アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メタクリル酸、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール及びN−ビニルカプロラクタムがある。
【0087】
一つ以上のエチレン性不飽和基を有する任意の公知の適切なシロキサン含有モノマー又はマクロマーを、ペンダント又は末端官能基を有する中間体コポリマーを調製するための化学線重合性組成物において使用することができる。そのようなモノマー又はマクロマーの好ましい例は、様々な分子量のモノメタクリル化又はモノアクリル化ポリジメチルシロキサン類(たとえば、モノ−3−メタクリルオキシプロピル末端、モノブチル末端ポジメチルシロキサン又はモノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端、モノブチル末端ポリジメチルシロキサン)、様々な分子量のジメタクリル化又はジアクリル化ポリジメチルシロキサン類、ビニル末端ポリジメチルシロキサン類、様々な分子量のビニル末端ポリジメチルシロキサン類、メタクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン類、アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン類、アクリレート末端ポリジメチルシロキサン類、メタクリレート末端ポリジメチルシロキサン類、ビス−3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン、N,N,N′,N′−テトラキス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−α,ω−ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマー、米国特許第5,760,100号(参照により全体として本明細書に組み込まれる)に記載されたマクロマーA、マクロマーB、マクロマーC及びマクロマーDからなる群より選択されるシロキサン含有マクロマー、グリシジルメタクリレートとアミノ官能性ポリジメチルシロキサンとの反応生成物、ヒドロキシル官能化シロキサン含有モノマー又はマクロマー、米国特許第6,762,264号(参照により全体として本明細書に組み込まれる)に開示されているシロキサン含有マクロマーである。ポリジメチルシロキサン及びポリアルキレンオキシドからなるジ及びトリブロックマクロマーもまた有用である。たとえば、メタクリレートでエンドキャップされたポリエチレンオキシド−ブロック−ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリエチレンオキシドを使用して酸素透過度を高めてもよい。適切な一官能性ヒドロキシル官能化シロキサン含有モノマー及び適切な多官能性ヒドロキシル官能化シロキサン含有モノマーはGelest, Inc.(Morrisville, PA.)から市販されている。
【0088】
好ましくは、本発明の中間体コポリマーは、一つ以上のシロキサン含有モノマー及び/又は一つ以上のシロキサン含有マクロマーに由来するシロキサン単位約15重量%〜約80重量%、好ましくは約25重量%〜約70重量%、一つ以上の親水性モノマー及び/又は一つ以上の親水性マクロマーに由来する親水性単位約10重量%〜約80重量%、好ましくは約15重量%〜約60重量%、一つ以上のシリコーン含有ビニルモノマーに由来するシリコーン含有単位約1重量%〜約30重量%、好ましくは約5重量%〜約25重量%及び加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマーに由来する加水分解性単位約2重量%〜約30重量%、好ましくは約4重量%〜約20重量%を含む。
【0089】
官能性連鎖移動剤は、得られるコポリマーの分子量を制御し、チオール基、エン含有基、ケイ皮酸部分、ジアルキルマレイミド基のその後の付加のための官能価を提供するために使用される。連鎖移動剤は、一つ以上のチオール基、たとえば二つのチオール基、もっとも好ましくは一つのチオール基を含むことができる。適切な連鎖移動剤は、さらなる官能基、たとえばヒドロキシ、アミノ、カルボキシ又はそれらの適切な誘導体を有する有機第一級チオール類又はメルカプタン類を含む。連鎖移動剤は、中間体コポリマーを製造するための重合性組成物中、重合性成分すべてを合わせた重量に対して、たとえば約0.5〜約5重量%、好ましくは約1重量〜約4重量%、特に約1.5重量%〜約3.5重量%の量で存在することができる。
【0090】
本発明にしたがって、化学線重合性組成物は一つ以上の疎水性ビニルモノマーを含むことができる。ほぼあらゆる疎水性ビニルモノマーを、ペンダント又は末端官能基を有する中間体コポリマーを調製するための化学線重合性組成物において使用することができる。適切な疎水性ビニルモノマーとしては、非限定的に、C1〜C18アルキルアクリレート類及びメタクリレート類、C3〜C18アルキルアクリルアミド類及びメタクリルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニル−C1〜C18アルカノエート類、C2〜C18アルケン類、C2〜C18ハロ−アルケン類、スチレン、C1〜C6アルキルスチレン、アルキル部分が1〜6個の炭素原子を有するビニルアルキルエーテル類、C2〜C10ペルフルオロアルキルアクリレート類及びメタクリレート類又は対応する部分的にフッ素化されたアクリレート類及びメタクリレート類、C3〜C12ペルフルオロアルキル−エチル−チオカルボニルアミノエチル−アクリレート類及びメタクリレート類、アクリルオキシ及びメタクリルオキシ−アルキルシロキサン類、N−ビニルカルバゾール、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸などのC1〜C12アルキルエステル類がある。好ましいものは、たとえば、炭素原子3〜5個のビニル性不飽和カルボン酸のC1〜C4アルキルエステル類又は炭素原子5個までのカルボン酸のビニルエステル類である。
【0091】
好ましい疎水性ビニルモノマーの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロ−イソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリス−トリメチルシリルオキシ−シリル−プロピルメタクリレート、3−メタクリルオキシプロピル−ペンタメチル−ジシロキサン及びビス(メタクリルオキシプロピル)−テトラメチル−ジシロキサンを含む。
【0092】
少なくとも一つの官能基を含む任意の公知の適切なビニルモノマーを、ペンダント又は末端官能基を有する中間体コポリマーを調製するための化学線重合性組成物において使用することができる。そのようなビニルモノマーの好ましい例は、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、HEMA、HEA、メタクリル酸無水物、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド(NHMA)、2−ブロモエチルメタクリレート及び塩化ビニルベンジルを含む。
【0093】
ビニルモノマーは、ペンダント又は末端官能基を有するシリコーン含有ポリマーを調製するための化学線重合性組成物において、親水性ビニルモノマー及び官能化性ビニルモノマーのいずれとしても使用することができることが理解されよう。好ましくは、親水性ビニルモノマーは官能基を含まない(たとえばDMA、NVP)。
【0094】
中間体コポリマーを調製するための化学線重合性組成物はまた、一つのエチレン性不飽和基しか有しない親水性ポリマーを含むこともできる。
【0095】
好ましい態様において、中間体コポリマーは、(1)加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマー、(2)少なくとも一つの親水性ビニルモノマー、(3)一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー又はそれらの二つ以上の組み合わせ、(4)場合によって、連鎖移動剤、及び(5)少なくとも一つのモノエチレン性官能化親水性ポリマー(すなわち、一つのエチレン性不飽和基しか有しない)を含む化学線重合性組成物(ただし、成分(2)〜(4)の少なくとも一つが少なくとも一つの第一の官能基をさらに含むこととする)の共重合によって得られる。
【0096】
もう一つの好ましい態様において、ペンダント又は末端官能基を有する中間体コポリマーは、(1)加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマー、(2)少なくとも一つの親水性ビニルモノマー、(3)一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー又はそれらの二つ以上の組み合わせ、(4)場合によって、連鎖移動剤、(5)少なくとも一つのモノエチレン性官能化親水性ポリマー(すなわち、一つのエチレン性不飽和基しか有しない)、及び(6)少なくとも一つのジ又はマルチ−エチレン性官能化親水性ポリマーを含む組成物(ただし、成分(2)〜(4)の少なくとも一つが少なくとも一つの第一の官能基をさらに含むこととする)の共重合によって得られる。
【0097】
本発明にしたがって、モノ、ジ又はマルチ−エチレン性官能化親水性ポリマーは、一つ以上のエチレン性不飽和基をモノ、ジ又はマルチ官能化親水性前駆体ポリマー又はコポリマー(すなわち、一つ以上の官能基を有する)の官能基(たとえばアミン、ヒドロキシル、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ基)に共有結合させることによって調製することができる。前駆体ポリマー又はコポリマーをエチレン性官能化する際には、カップリング剤(たとえばEDC、ジイソシアネート又は二酸塩化物)の非存在又は存在下、ポリマー又はコポリマーのイソシアナト、アミン、ヒドロキシル、カルボキシ又はエポキシ基と共反応性であるヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、エポキシ、酸塩化物、イソシアナト基を有する任意のビニルモノマーを使用することができる。そのようなビニルモノマーの例は、非限定的に、末端ヒドロキシ基と反応させる場合には、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸無水物、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイル、グリシジルメタクリレートを含み、末端アミン基と反応させる場合には、2−イソシアナトエチルメタクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリル酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルを含み、EDCの存在下、末端カルボキシ基と反応させる場合には、ビニルアミン、2−アミノエチルメタクリレート又は3−アミノプロピルメタクリルアミドを含む。上記リストはすべてを網羅したものではなく、例示的である。当業者は、エチレン性親水性前駆体ポリマー又はコポリマーを官能化するための、官能基を有するビニルモノマーを選択する方法を理解するであろう。
【0098】
モノ、ジ又はマルチ−エチレン性官能化親水性ポリマーの例は、非限定的に、一つの末端のアクリロイル:
【0099】
【化7】

【0100】
メタクリロイル:
【0101】
【化8】

【0102】
又はビニル基を有する親水性ポリマー又はコポリマー、二つの末端のアクリロイル、メタクリロイル又はビニル基を有する親水性ポリマー又はコポリマー及び複数の(すなわち三つ以上の)アクリロイル、メタクリロイル又はビニル基を有する親水性ポリマー又はコポリマーを含む。親水性ポリマー又はコポリマーは、好ましくは、PEG、PEG/PPGブロックコポリマー、ポリアルキルアクリルアミド類、ポリアルキルメタクリルアミド類、ポリビニルピロリドン類、N−ビニルピロリドンとジアルキルアミノアルキルアクリレート(たとえばジメチルアミノエチルアクリレート)、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート(たとえばジメチルアミノエチルメタクリレート)、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、酢酸ビニル又はそれらの混合物とのコポリマー、ポリビニルアルコール類(ポリ酢酸ビニルに由来)、酢酸ビニルとジアルキルアミノアルキルアクリレート(たとえばジメチルアミノエチルアクリレート)、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート(たとえばジメチルアミノエチルメタクリレート)、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、酢酸ビニル又はそれらの混合物とのコポリマーからなる群より選択される。
【0103】
モノエチレン性官能化PEG又はブロックPEG/PPGコポリマー及びジエチレン性官能化PEG又はブロックPEG/PPGコポリマーはいずれも市販されているか、アクリロイル、メタクリロイル又はビニル基を一官能基末端PEG又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー及び二官能基末端PEG又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーに共有結合させることによって調製することができる。
【0104】
「モノエチレン性官能化」ポリマー又はコポリマーとは、ポリマー又はコポリマーが一つの単独のエチレン性不飽和基を有することをいう。「ジエチレン性官能化」ポリマー又はコポリマーとは、ポリマー又はコポリマーが二つのみのエチレン性不飽和基を有することをいう。
【0105】
モノ又はジエチレン性官能化ポリアルキルアクリルアミド類、ポリアルキルメタクリルアミド類、ポリビニルピロリドン類、N−ビニルピロリドンと一つ以上のビニルモノマーとのコポリマー、ポリビニルアルコール類(ポリ酢酸ビニルに由来)又は酢酸ビニルと一つ以上のビニルモノマーとのコポリマーは、上記の対応する一官能基末端前駆体ポリマー又はコポリマーから調製することができる。
【0106】
一又は二官能基末端親水性前駆体ポリマー又はコポリマーがポリビニルアルコール類又はポリビニルアルコールコポリマーである場合、末端官能基は、好ましくはアミン又はカルボキシル基である。一般に、ヒドロキシル基の存在下でさえ、イソシアナト基が最初にアミン基と反応する。また、アミン基又はカルボキシル基は、EDC媒介カップリング反応に関与するが、ヒドロキシル基は関与しない。
【0107】
本発明にしたがって、マルチ−エチレン性官能化親水性ポリマーは、複数のペンダント及び/又は末端官能基(たとえば−NH2、−COOH、−OH)を含む親水性前駆体ポリマー又はコポリマーに由来する。そのような親水性前駆体コポリマーの例は、N−ビニルピロリドン、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート又はジアルキルアミノアルキルアクリレートと、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシルアルキルアクリレート、ヒドロキシメタクリレート、アミノアルキルアクリレート及びアミノアルキルメタクリレートからなる群より選択される、少なくとも一つの官能基を含有するビニルモノマーとのコポリマーである。官能基含有ビニルモノマーに由来する単位の割合は、好ましくは約15重量%未満、より好ましくは約10重量%未満、さらに好ましくは約5重量%未満である。
【0108】
本発明にしたがって、モノエチレン性官能化親水性ポリマーは、約500〜約20,000、好ましくは約1,000〜約10,000、より好ましくは約2,000〜約6,000ダルトンの分子量を有する。
【0109】
本発明のプレポリマーの前駆体である中間体コポリマーを調製する際には、一つ以上のモノエチレン性官能化親水性ポリマーと一つ以上のジエチレン性官能化親水性ポリマーとの混合物を有利に使用することができることが理解されよう。
【0110】
中間体コポリマーを調製するための化学線重合性組成物は、当業者に公知であるような、溶融体、好ましくは一つ以上のブレンド性ビニルモノマーの存在下で必要な成分すべてがブレンドされた無溶剤液又は必要な成分すべてが有機溶媒又は二つ以上の有機溶媒の混合物中に溶解された溶液であることができる。
【0111】
有機溶媒の例は、非限定的に、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸i−プロピル、塩化メチレン、2−ブタノール、2−プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール及びexo−ノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール、2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール及び3−エチル−3−ペンタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、tert−アミルアルコール、イソプロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン並びにそれらの混合物を含む。
【0112】
一つ以上のブレンド性ビニルモノマーは、化学線重合性組成物の親水性成分及び疎水性成分の両方を溶解させるのに十分な量である。「ブレンド性ビニルモノマー」とは、化学線重合性組成物の親水性成分及び疎水性成分の両方を溶解させるための溶媒として機能することができ、また、シリコーンハイドロゲル材料を形成するために重合される重合性成分の一つとしても機能することができるビニルモノマーをいう。好ましくは、ブレンド性ビニルモノマーは、化学線重合性組成物中、約5重量%〜約30重量%の量で存在する。
【0113】
本発明の重合性組成物の親水性成分及び疎水性成分の両方を溶解させて溶液を形成することができる任意の適切なビニルモノマーを本発明において使用することができる。ブレンド性ビニルモノマーの好ましい例は、非限定的に、芳香族ビニルモノマー、シクロアルキル含有ビニルモノマーを含む。これらの好ましいブレンド性モノマーは、これらの好ましいブレンド性モノマーを含有する重合性組成物を硬化させることによって調製されるシリコーンハイドロゲル材料の主なガラス転移温度を高めることができる。
【0114】
好ましい芳香族ビニルモノマーの例は、スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン(TMS)、tert−ブチルスチレン(TBS)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、ベンジルメタクリレート、ジビニルベンゼン及び2−ビニルナフタレンを含む。これらのモノマーのうち、スチレン含有モノマーが好ましい。本明細書において、スチレン含有モノマーとは、縮合環以外によって、たとえば上記のように一つないし三つのC1〜C6アルキル基によって置換されていることができるフェニル基に直接的に結合したビニル基を含むモノマーであると定義される。スチレンそのもの[H2C=CH−C65]が特に好ましいスチレン含有モノマーである。
【0115】
本明細書において、シクロアルキル含有ビニルモノマーとは、三つまでのC1〜C6アルキル基によって置換されていることができるシクロアルキルを含むビニルモノマーであると定義される。好ましいシクロアルキル含有ビニルモノマーとしては、非限定的に、三つまでのC1〜C6アルキル基によって置換されていることができるシクロペンチル又はシクロヘキシル又はシクロヘプチルをそれぞれ含むアクリレート類及びメタクリレート類がある。好ましいシクロアルキル含有ビニルモノマーの例は、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどを含む。
【0116】
中間体コポリマーを調製するための重合性組成物の共重合は、光化学的又は好ましくは熱的に誘発することができる。適切な熱重合開始剤は当業者に公知であり、たとえば、過酸化物、ヒドロペルオキシド類、アゾ−ビス(アルキル又はシクロアルキルニトリル)、過硫酸塩類、過炭酸塩類又はそれらの混合物を含む。例は、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルペルオキシド、ジtert−ブチル−ジペルオキシフタレート、tert−ブチルヒドロペルオキシド、アゾ−ビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1,1−アゾジイソブチルアミジン、1,1′−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾ−ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などである。重合は、好都合には、上述の溶媒中、高温、たとえば25〜100℃、好ましくは40〜80℃の温度で実施される。反応時間は広い範囲内で異なることができるが、好都合には、たとえば1〜24時間又は好ましくは2〜12時間である。重合反応に使用される成分及び溶媒を事前にガス抜きし、重合反応を不活性雰囲気下、たとえば窒素又はアルゴン雰囲気下で実施することが有利である。共重合は、光学的に明澄な、明確に定義されたコポリマーを生じさせることができ、それを、従来のやり方で、たとえば抽出、沈殿、限外ろ過などの技術を使用して仕上げることができる。
【0117】
本発明にしたがって、中間体コポリマーのエチレン性官能化は、エチレン性不飽和基を中間体コポリマーの官能基(たとえばアミン、ヒドロキシル、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ基)に共有結合させることによって実施することができる。中間体コポリマーをエチレン性官能化する際には、カップリング剤(たとえばEDC、ジイソシアネート又は二酸塩化物)の非存在又は存在下、中間体コポリマーのイソシアナト、アミン、ヒドロキシル、カルボキシ又はエポキシ基と共反応性であるヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、エポキシ、酸塩化物、イソシアナト基を有する任意のビニルモノマーを使用することができる。そのようなビニルモノマーの例は、非限定的に、末端ヒドロキシ基と反応させる場合には、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸無水物、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイル、グリシジルメタクリレートを含み、末端アミン基と反応させる場合には、2−イソシアナトエチルメタクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリル酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルを含み、EDCの存在下で末端カルボキシ基と反応させる場合には、ビニルアミン、2−アミノエチルメタクリレート又は3−アミノプロピルメタクリルアミドを含む。上記リストはすべてを網羅したものではなく、例示的である。当業者は、尿素結合を形成するために第一及び第二の官能基が選択されないという条件で、中間体コポリマーをエチレン性官能化するための、官能基を有するビニルモノマーを選択する方法を理解するであろう。
【0118】
好ましくは、中間体コポリマーの官能基は、ヒドロキシル基(−OH)、第一級アミノ基(−NH2)、第二級アミノ基(−NHR)、カルボキシル基(−COOH)、エポキシ基、アルデヒド基(−CHO)、アミド基(−CONH2)、酸ハロゲン化物基(−COX、X=Cl、Br又はI)、イソチオシアナト基、イソシアナト基、ハロゲン化物基(−X、X=Cl、Br又はI)、酸無水物基及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0119】
本発明のプレポリマーは、好ましくは任意の親水性ビニルモノマーの非存在下、高い酸素透過度(少なくとも40barrer、好ましくは少なくとも約60barrer、さらに好ましくは少なくとも80barrerの見掛け酸素透過度を特徴とする)及び親水面(約90°以下、好ましくは約80°以下、より好ましくは約70°以下、さらに好ましくは約60°以下の平均水接触角を有することを特徴とする)を有するシリコーンハイドロゲル又はコンタクトレンズを形成することができる。シリコーンハイドロゲル材料又はコンタクトレンズは、好ましくは、高いイオン透過度(約1.5×10-6mm2/minを超える、好ましくは約2.6×10-6mm2/minを超える、より好ましくは約6.4×10-6mm2/minを超えるイオノフラックス拡散係数Dを特徴とする)を有する。シリコーンハイドロゲル材料又はコンタクトレンズは、好ましくは、約2.0MPa以下、好ましくは約1.5MPa以下、より好ましくは約1.2MPa以下、さらに好ましくは約0.4MPa〜約1.0MPaの弾性率を有する。シリコーンハイドロゲル材料又はコンタクトレンズは、好ましくは、完全に水和した状態で、好ましくは約18重量%〜約55重量%、より好ましくは約20重量%〜約38重量%の含水率を有する。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの含水率は、米国特許第5,849,811号に開示されているバルク技術にしたがって計測することができる。
【0120】
好ましくは、本発明で使用されるプレポリマーは、それ自体は公知のやり方で、たとえば、アセトンのような有機溶媒による沈殿、ろ過及び洗浄、適切な溶媒中での抽出、透析又は限外ろ過、特に好ましくは限外ろ過により、事前に精製される。このような精製法により、プレポリマーを、きわめて高純度の形態、たとえば、塩のような反応生成物及び非ポリマー成分のような出発原料を含まない又は少なくとも実質的に含まない濃縮溶液の形態で得ることができる。本発明の方法で使用されるプレポリマーに好ましい精製法である限外ろ過は、それ自体は公知のやり方で実施することができる。限外ろ過は、繰返し、たとえば2回〜10回、実施することが可能である。あるいはまた、限外ろ過は、選択された純度が達成されるまで連続的に実施することもできる。選択された純度は、原則的に、所望の高さであることができる。純度の適切な尺度は、たとえば、公知のやり方で簡単に測定することができる、副生成物として得られる溶解塩の濃度である。したがって、重合後、装置は、後続の精製、たとえば高価で複雑な非重合マトリックス形成材料の抽出を要しない。さらには、プレポリマーの架橋は、後続の溶媒交換又は水和ステップが不要であるよう、溶媒又は水溶液中で起こさせることもできる。
【0121】
本発明は、もう一つの態様において、ソフトコンタクトレンズを提供する。本発明のソフトコンタクトレンズは、レンズ形成材料を型の中で硬化させることによって得られ、第一及び/又は第二の加水分解性シリコーン含有基を含むシリコーンハイドロゲル材料を含み、レンズ形成材料は、一つの第一の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性モノマー及び/又は複数の第二の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性プレポリマーを含み、第一及び第二の加水分解性シリコーン含有基が、加水分解によってシリコーンハイドロゲル材料から開裂して、硬化後の表面処理なしで、ソフトコンタクトレンズに約90°以下の水接触角を提供することができる。
【0122】
シリコーンハイドロゲル材料は、上記式(1)又は(2)のビニルモノマーに由来するポリマー単位を含むことができる。
【0123】
上記の複数の加水分解性シリコーン含有基を有する化学線架橋性プレポリマーの様々な実施態様を本発明の態様において使用することができる。
【0124】
レンズ形成材料は、コンタクトレンズを得るために型の中で熱的又は化学線的に硬化(すなわち重合及び/又は架橋)させることができる任意の重合性組成物であることができる。レンズ形成材料は当業者に周知である。本発明にしたがって、レンズ形成材料は、一つの第一の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性モノマー及び/又は複数の第二の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性プレポリマーを加えることにより、ソフトコンタクトレンズを製造するための任意のレンズ配合物から調製することができる。例示的なレンズ配合物としては、非限定的に、lotrafilcon A、lotrafilcon B、etafilcon A、genfilcon A、lenefilcon A、polymacon、acquafilcon A、balafilcon、senofilcon Aなどの配合物がある。好ましくは、本発明で使用されるシリコーンハイドロゲルレンズ形成材料はシリコーン含有マクロマー又はプレポリマーを含む。
【0125】
本発明にしたがって、シリコーンハイドロゲルレンズ形成材料はまた、親水性モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有マクロマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有モノマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有マクロマー、シリコーン含有プレポリマー、疎水性モノマー、一つのエチレン性不飽和基しか有しない親水性ポリマー、ジ又はマルチ−エチレン性官能化親水性ポリマー、ジエチレン性官能化親水性ポリマー、マルチ−エチレン性官能化親水性ポリマー及びそれらの二つ以上の組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つを含むことができる。これらの成分の上記様々な実施態様を本発明のこの態様において使用することができる。
【0126】
シリコーン含有プレポリマーの例は、非限定的に、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開公報第2001/0037001A1号、第2005/0237483A1号及び第2008/0015315A1号、米国特許第6,039,913号、同時係属中の米国特許出願第12/001562号、第12/001521号、第60/896,326号及び第60/896,325号に開示されているものを含む。好ましくは、本発明で使用されるプレポリマーは、それ自体は公知のやり方で、たとえば、アセトンのような有機溶媒による沈殿、ろ過及び洗浄、適切な溶媒中での抽出、透析又は限外ろ過、特に好ましくは限外ろ過により、事前に精製される。このような精製法により、プレポリマーを、きわめて高純度の形態、たとえば、塩のような反応生成物及び非ポリマー成分のような出発原料を含まない、又は少なくとも実質的に含まない濃縮水溶液の形態で得ることができる。本発明の方法で使用されるプレポリマーに好ましい精製法である限外ろ過は、それ自体は公知のやり方で実施することができる。限外ろ過は、繰返し、たとえば2回〜10回、実施することが可能である。あるいはまた、限外ろ過は、選択される純度が達成されるまで連続的に実施することもできる。選択される純度は、原則的に、所望の高さであることができる。純度の適切な尺度は、たとえば、公知のやり方で簡単に測定することができる、副生成物として得られる溶解塩の濃度である。
【0127】
レンズ形成材料はまた、当業者に公知であるような様々な成分、たとえば重合開始剤(たとえば光開始剤又は熱開始剤)、視認用ティント剤(たとえば染料、顔料又はそれらの混合物)、UV遮断(吸収)剤、光増感剤、インヒビター、抗菌剤(たとえば、好ましくは銀ナノ粒子又は安定化銀ナノ粒子)、生物活性物質、浸出性潤滑剤、充填剤などを含むこともできることが理解されよう。
【0128】
構造的完全性及び機械的強度を改善するために架橋剤を使用することもできる。架橋剤の例は、非限定的に、アリル(メタ)アクリレート、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジ又はトリビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルフタレート又はジアリルフタレートを含む。好ましい架橋剤はエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)である。
【0129】
使用される架橋剤の量は、全ポリマーに対する重量含有率で表され、好ましくは、0.05〜5%の範囲、より好ましくは0.1〜2%の範囲である。
【0130】
重合反応を促進する、及び/又は重合反応の速度を増大させるために、たとえば重合技術におけるそのような使用に関して周知の物質から選択される開始剤をレンズ形成材料に含めることもできる。開始剤とは、重合反応を開始させることができる化学薬剤である。開始剤は光開始剤又は熱開始剤であることができる。
【0131】
光開始剤は、光の使用によってフリーラジカル重合及び/又は架橋を開始させることができる。適切な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン並びにDarocur及びIrgacurタイプ,好ましくはDarocur 1173(登録商標)及びDarocur 2959(登録商標)である。ベンゾイルホスフィン開始剤の例は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドを含む。たとえばマクロマーに配合することもできるし、特殊なモノマーとして使用することもできる反応性光開始剤もまた適切である。反応性光開始剤の例は、参照により全体として本明細書に組み込まれるEP632329に開示されているものである。そして、重合は、化学線、たとえば光、特に適切な波長のUV光によって誘発することができる。適切ならば、適切な増感剤の添加によってスペクトル要件を相応に制御することができる。
【0132】
適切な熱開始剤の例は、非限定的に、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、過酸化物、たとえば過酸化ベンゾイルなどを含む。好ましくは、熱開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0133】
好ましい顔料の例は、医療装置に許可され、FDAによって認可されている着色剤、たとえばD&CブルーNo. 6、D&CグリーンNo. 6、D&CバイオレットNo. 2、カルバゾールバイオレット、特定の銅錯体、特定の酸化クロム、様々な酸化鉄、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、二酸化チタンなどを含む。本発明で使用することができる着色剤のリストに関しては、Marmiom DM Handbook of U.S. Colorantsを参照すること。顔料のより好ましい実施態様は、非限定的に、青色の場合、フタロシアニンブルー(ピグメントブルー15:3、C.I. 74160)、コバルトブルー(ピグメントブルー36、C.I. 77343)、トナーシアンBG(Clariant)、パーマジェットブルーB2G(Clariant)を含み、緑色の場合、フタロシアニングリーン(ピグメントグリーン7、C.I. 74260)及び三酸化二クロムを含み、黄色、赤色、茶色及び黒色の場合、様々な酸化鉄、PR122、PY154を含み、紫色の場合、カルバゾールバイオレットを含み、黒色の場合、モノリスブラックC-K(CIBA Specialty Chemicals)を含む(C.I. はカラーインデックス番号である)。
【0134】
ポリマーマトリックスに配合される生物活性物質は、眼の疾病を予防する、又は眼の疾病の症状を軽減することができる任意の化合物である。生物活性物質は、薬物、アミノ酸(たとえばタウリン、グリシンなど)、ポリペプチド、タンパク質、核酸又はそれらの組み合わせであることができる。ここで有用な薬物の例は、非限定的に、レバミピド、ケトチフェン、オラプチジン、クロモグリコレート、シクロスポリン、ネドクロミル、レボカバスチン、ロドキサミド、ケトチフェン又は薬学的に許容されるそれらの塩もしくはエステルを含む。生物活性物質の他の例は、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、α−ヒドロキシル酸(たとえばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸及びクエン酸並びにそれらの塩など)、リノール酸及びγ−リノール酸並びにビタミン(たとえばB5、A、B6など)を含む。
【0135】
エチレン性不飽和基を有しない親水性ポリマー又はコポリマーを浸出性潤滑剤として使用することができる。非架橋性親水性ポリマーの好ましい例は、非限定的に、ポリビニルアルコール類(PVA)、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、一つ以上のビニルコモノマーの存在又は非存在下の少なくとも一つのビニルラクタムのコポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドと一つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド(すなわちポリエチレングリコール(PEG))、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ2エチルオキサゾリン、ヘパリン多糖類、多糖類及びそれらの混合物を含む。
【0136】
非架橋性加水分解性ポリマーの分子量は、好ましくは約20,000〜約1,500,000ダルトン、より好ましくは約50,000〜約1,200,000ダルトン、さらに好ましくは約100,000〜約1,000,000ダルトンである。
【0137】
本発明にしたがって、レンズ形成材料は、約20℃〜約85℃の温度で溶液又は溶融体であることができる組成物である。好ましくは、レンズ形成材料は、水又は有機溶媒又は水と一つ以上の有機溶媒との混合物中すべての所望の成分の溶液である。
【0138】
すべての所望の成分の溶液は、それらを当業者に公知の適切な溶媒に溶解させることによって調製することができる。有機溶媒の上記様々な実施態様を本発明のこの態様において使用することができる。
【0139】
本発明にしたがって、レンズ形成材料は、任意の公知の方法にしたがって、型によって形成されるキャビティ中に導入(分配)することができる。
【0140】
コンタクトレンズを製造するためのレンズ型は当業者に周知であり、たとえば流し込み成形又はスピンキャスティングで使用される。たとえば、型(流し込み成形用)は一般に、少なくとも二つの型区分(又は部分)又は型半部、すなわち第一及び第二の型半部を含む。第一の型半部は第一の成形(又は光学)面を画定し、第二の型半部は第二の成形(又は光学)面を画定する。第一及び第二の型半部は、第一の成形面と第二の成形面との間にレンズ成形キャビティが形成されるように互いを受け入れるように構成されている。型半部の成形面は型のキャビティ形成面であり、レンズ形成材料と直接接触する。
【0141】
コンタクトレンズを流し込み成形するための型区分を製造する方法は一般に当業者に周知である。本発明の方法は特定の型形成方法に限定されない。事実、いかなる型形成方法をも本発明において使用することができる。第一及び第二の型半部は、射出成形又は旋盤加工のような様々な技術によって形成することができる。型半部を形成するのに適した方法の例は、同じく参照により本明細書に組み込まれる、Schadへの米国特許第4,444,711号、Boehmらへの第4,460,534号、Morrillへの第5,843,346号及びBonebergerらへの第5,894,002号に開示されている。
【0142】
型を製造するための技術分野で公知の実質すべての材料を、眼用レンズを調製するための型を製造するために使用することができる。たとえば、ポリマー材料、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、環式オレフィンコポリマー(たとえばTicona GmbH(Frankfurt, Germany及びSummit, New Jersey)のTopas(登録商標)COC、Zeon Chemicals LP(Louisville, KY)のZeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標))などを使用することができる。UV光透過を許す他の材料、たとえば石英、ガラス、CaF2及びサファイアを使用することもできる。
【0143】
好ましい実施態様において、レンズ形成材料中の重合性成分が本質的にプレポリマーで構成されている場合、再使用可能な型を使用することができる。石英又はガラスでできた再使用可能な型の例は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,627,124号に開示されているものである。この態様において、レンズ形成材料は、二つの型半部からなる型に注入され、二つの型半部は、互いに接触せず、それらの間に配設された環状設計の狭い隙間を有する。その隙間は型キャビティに接続されており、過剰なレンズ形成材料が隙間に流れ込むことができるようになっている。一度しか使用することができないポリプロピレン型の代わりに、再使用可能な石英、ガラス、サファイア型を使用することが可能である。これらの型は、レンズ製造ののち、未反応材料及び他の残渣を除去するために水又は適切な溶媒を使用して速やかかつ効果的に清浄し、空気乾燥させることができるからである。再使用可能な型はまた、環式オレフィンコポリマー、たとえばTicona GmbH(Frankfurt, Germany及びSummit, New Jersey)のTopas(登録商標)COCグレード8007-S10(エチレンとノルボルネンとの明澄な非晶質コポリマー)、Zeon Chemicals LP(Louisville, KY)のZeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標)でできていることもできる。型半部の再使用性のおかげで、きわめて高い精度及び再現精度の型を得るために、製造時に比較的多額の費用を費やすことができる。型は、レンズが製造される領域、すなわちキャビティ又は実際の型面では互いに接触しないため、接触の結果としての損傷が排除される。これが型の長い耐用寿命を保証し、それがまた、特に、製造されるコンタクトレンズの高い再現精度及びレンズ設計への高い忠実度を保証する。
【0144】
レンズ形成材料を型の中に分配したのち、それを重合させてコンタクトレンズを製造する。架橋は、たとえば化学線照射、たとえばUV線照射、電離放射線(たとえばγ又はX線照射)によって型の中で開始させることができる。本発明のプレポリマーがレンズ形成材料中の重合性成分である場合、レンズ形成材料を収容する型を化学線の空間的限定に暴露すると、プレポリマーを架橋させることができる。
【0145】
本発明の架橋は、非常に短い期間、たとえば≦60分、有利には≦20分、好ましくは≦10分、もっとも好ましくは≦5分、特に好ましくは1〜60秒、もっとも具体的には1〜30秒で起こさせることができる。
【0146】
本発明のコンタクトレンズは、本発明の一つ以上の放射線硬化性プレポリマーから、従来技術と比較して非常に簡単かつ効率的な方法で製造することができる。これは多くの要因に基づく。一つには、出発原料を廉価に取得又は製造することができる。第二に、プレポリマーは驚くほど安定であるため、高度の精製に付すことができるという利点がある。レンズを硬化させたのち、特に非重合成分の複雑な抽出のような後続の精製を実際に要しない。さらには、新規な重合法を使用して、所望の機械的及び物理的性質を有するコンタクトレンズを製造することができる。最後に、光重合が短い期間内に起こり、この観点からも、本発明のコンタクトレンズ製造方法は、きわめて経済的な方法で構成することができる。
【0147】
成形品を型から取り出すための型の開放は、それ自体は公知のやり方で実施することができる。
【0148】
本発明にしたがって、成形されるコンタクトレンズが、すでに精製されたプレポリマーから無溶媒で製造されるならば、成形されたレンズを取り出したのち、抽出のような精製ステップを続けて実施することは通常、必要ない。理由は、使用されるプレポリマーが望ましくない低分子量成分を含有しないからである。その結果、架橋生成物もまた、そのような成分を含まず、又は実質的に含まず、後続の抽出をなしで済ますことができる。したがって、コンタクトレンズは、通常の方法で、水和によって、すぐに使えるコンタクトレンズに直接転換することができる。非常に異なる水分含量を有するすぐに使えるコンタクトレンズを得ることができるような適切な水和の実施態様は当業者に公知である。コンタクトレンズは、たとえば、水中、塩水溶液、特に1000ml中で約200〜450ミリオスモル(単位:mOsm/ml)、好ましくは約250〜350mOsm/ml、特に約300mOsm/mlのオスモル濃度を有する塩水溶液中、又は水もしくは塩水溶液と生理学的に適合性の極性有機溶媒、たとえばグリセロールとの混合物中で膨張させる。好ましくは、水又は塩水溶液中で物品を膨張させる。
【0149】
本発明にしたがって、成形されるコンタクトレンズが、すでに精製されたプレポリマーの溶媒溶液から製造されるならば、後続の抽出を実施することは不要であり、水和工程によって溶媒を置換する。
【0150】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ中の加水分解性基の加水分解は、当業者に公知の任意の方法にしたがって実施することができる。好ましくは、加水分解は、その場で、すなわち、レンズを収容する密封パッケージの中で直接実施される。一般に、コンタクトレンズは、一次パッケージ中、眼に適合性の貯蔵溶液に入れて包装されたのち、密封された一次パッケージ中で滅菌処理される(たとえば、オートクレーブ中、約120℃で所望の期間)。加水分解性ポリマーは、好ましくは、オートクレーブ期間中、一次パッケージの中で親水性ポリマーに転換される。
【0151】
「眼に適合性の溶液」は、少なくとも、6.0〜8.0の範囲のpH及び250〜400mOsmol/kgのオスモル濃度を有することを特徴とする。
【0152】
本明細書で使用される「一次パッケージ」とは、眼科用レンズユーザによって使用される眼科用レンズを直接含むパッケージをいう。一般的な一次パッケージは、ラミネート箔又はカバーで密封されたシェル又はベース部分を含むブリスタパッケージ(たとえば、参照により全体として本明細書に組み込まれるEP−A−0680895又はEP−A−0233581に開示されている)であることができる。一次パッケージは通常、少量の眼に適合性の溶液(たとえば、他の快適添加物、たとえば界面活性剤、PVP、PVA、セルロース、ポリエチレングリコールなどを含む、又は含まない食塩水)中に一つのコンタクトレンズを収容する。
【0153】
成形されたコンタクトレンズはさらに、さらなる工程、たとえば表面処理、滅菌処理などに付されることができる。
【0154】
本発明のコンタクトレンズは、好ましくは少なくとも約40barrer、より好ましくは少なくとも約60barrer、さらに好ましくは少なくとも約80barrerの酸素透過度を有する。本発明にしたがって、酸素透過度は、実施例に記載される手順に準ずる見掛け酸素透過度(厚さ約100ミクロンの試料を試験する場合に直接計測される)である。
【0155】
本発明のコンタクトレンズは、約2.0MPa以下、好ましくは約1.5MPa以下、より好ましくは約1.2MPa以下、さらに好ましくは約0.4MPa〜約1.0MPaの弾性率を有する。
【0156】
本発明のコンタクトレンズはさらに、少なくとも約1.5×10-6mm2/min、より好ましくは少なくとも約2.6×10-6mm2/min、さらに好ましくは少なくとも約6.4×10-6mm2/minのイオノフラックス拡散係数Dを有する。
【0157】
本発明のコンタクトレンズはさらに、完全に水和した状態で、好ましくは約15重量%〜約55重量%、より好ましくは約20重量%〜約38重量%の含水率を有する。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの含水率は、米国特許第5,849,811号に開示されているバルク技術にしたがって計測することができる。
【0158】
本発明のコンタクトレンズは、約90°以下、好ましくは約80°以下、より好ましくは約70°以下、さらに好ましくは約60°以下の平均水接触角を有することを特徴とする表面親水性を有する。
【0159】
本発明は、さらなる態様において、ソフトコンタクトレンズを製造する方法を提供する。方法は、コンタクトレンズの前面を画定する第一の成形面を有する第一の型半部及びコンタクトレンズの後面を画定する第二の成形面を有する第二の型半部を有する、ソフトコンタクトレンズを製造するための型を提供するステップ(ここで、第一及び第二の型半部は、第一の成形面と第二の成形面との間にキャビティが形成されるように互いを受け入れるように構成されている)、一つの第一の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性モノマー及び/又は複数の第二の加水分解性シリコーン含有基を有する一つの化学線架橋性プレポリマーを含むレンズ形成材料をキャビティに導入するステップ、レンズ形成材料を硬化させて、第一及び/又は第二の加水分解性シリコーン含有基を含むシリコーンハイドロゲル材料で構成されたソフトコンタクトレンズを形成するステップ、及びソフトコンタクトレンズを加水分解に付し、それにより、加水分解中、第一及び第二の加水分解性シリコーン含有基をシリコーンハイドロゲル材料から開裂させて、硬化後の表面処理なしで、ソフトコンタクトレンズに約90°以下の水接触角を提供するステップを含む。
【0160】
上記のプレポリマー、レンズ形成材料、型及びコンタクトレンズの様々な実施態様すべてを本発明のこの態様において使用することができる。
【0161】
前記開示は、当業者が本発明を実施することを可能にする。読者が具体的な実施態様及びその利点をより良く理解することができるよう、以下の非限定的実施例を参照されたい。ただし、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。
【0162】
実施例1
表面親水性(湿潤性)試験
コンタクトレンズ上の水接触角はコンタクトレンズの表面親水性(又は湿潤性)の一般的尺度である。特に、低い水接触角はより親水性の表面に対応する。Wilhelmyプレート法を使用してコンタクトレンズの平均接触角(前進)を計測した。
【0163】
酸素透過度計測
いずれも参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,760,100号及びWintertonらによる文献(The Cornea: Transactions of the World Congress on the Cornea 111, H. D. Cavanagh Ed., Raven Press: New York 1988, pp 273-280)に記載されているものに類似した技術にしたがってレンズの酸素透過度及びレンズ材料の酸素伝導率を測定した。Dk1000計器(Applied Design and Development Co.(Norcross, GA)から市販)又は類似した分析計器を使用して、ウェットセル中(すなわち、気流を相対湿度約100%に維持した)34℃で酸素流束(J)を計測した。既知の酸素の割合(たとえば21%)を有する気流をレンズの一方側から約10〜20cm3/minの速度で通し、窒素流をレンズの反対側から約10〜20cm3/minの速度で通した。試料を、試験媒体(すなわち、食塩水又は蒸留水)中、規定試験温度で、計測前の少なくとも30分かつ45分以下の間、平衡させた。上層として使用される試験媒体を、規定試験温度で、計測前の少なくとも30分かつ45分以下の間、平衡させた。かく拌モータの速度は、ステッパモータ制御装置上の400±15の指示設定に対応する1,200±50rpmにセットした。系を包囲する大気圧Pmeasuredを計測した。MitotoyaマイクロメータVL-50又は類似の計器を用いて約10の場所を計測し、計測値を平均化することにより、試験に暴露される区域のレンズの厚さ(t)を測定した。DK1000計器を使用して、窒素流中の酸素濃度(すなわち、レンズを透過して拡散する酸素)を計測した。以下の式からレンズ材料の見掛け酸素透過度Dkappを決定した。
【0164】
Dkapp=Jt/(Poxygen
式中、J=酸素流束[マイクロリットルO2/cm2-min]であり、
oxygen=(Pmeasured−Pwater vapor)=(気流中%O2)[mm Hg]=気流中の酸素の分圧であり、
measured=大気圧(mm Hg)であり、
water vapor=34℃(ドライセル中)で0mm Hgであり、
water vapor=34℃(ウェットセル中)で40mm Hgであり、
t=露出試験区域のレンズの平均厚さ(mm)である。
【0165】
式中、Dkappはbarrerの単位で表される。材料の酸素伝達率(Dk/t)は、酸素透過度(Dkapp)をレンズの平均厚さ(t)で割ることによって計算することができる。
【0166】
イオン透過度計測
米国特許第5,760,100号(参照により全体として本明細書に組み込まれる)に記載されている手順にしたがってレンズのイオン透過度を計測した。以下の実施例で報告されるイオン透過度の値は、標準物質としてのレンズ材料Alsaconに対する相対イオノフラックス拡散係数(D/Dref)である。Alsaconは、0.314×10-3mm2/minのイオノフラックス拡散係数を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ形成材料を型の中で硬化させることによって得られ、第一及び/又は第二の加水分解性シリコーン含有基を含むシリコーンハイドロゲル材料を含み、レンズ形成材料が、一つの第一の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性モノマー及び/又は複数の第二の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性プレポリマーを含み、第一及び第二の加水分解性シリコーン含有基が、加水分解によってシリコーンハイドロゲル材料から開裂して、硬化後の表面処理なしで、ソフトコンタクトレンズに約90°以下の水接触角を提供することができるソフトコンタクトレンズ。
【請求項2】
シリコーンハイドロゲル材料が、式(1)又は(2)
【化9】


(式中、1Rは、H又は−CH3であり、−L−は、−O−又は
【化10】


であり、2Rは、トリメチルシリル基(−Si(CH33)又は少なくとも一つのトリメチルシリルオキシ、トリメチルシリルアミノ基もしくはトリメチルシリル−C1〜C7アルキルアミノ基によって置換されているC4〜C25アルキルであり、3Rは、H又はC1〜C8アルキル基である)
【化11】


(式中、1Rは、H又は−CH3であり、−L−は、−O−又は
【化12】


であり、3Rは、H又はC1〜C8アルキル基であり、4Rは、C1〜C12非置換アルキレン(二価基)又は一つ以上の水素がC1〜C3アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基及び/もしくはカルボキシル基によって置換されている置換アルキレンであり、5Rは、C1〜C7アルキレン基である)
のビニルモノマーに由来するポリマー単位を含む、請求項1記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項3】
シリコーンハイドロゲル材料が、式(1)のビニルモノマーに由来するポリマー単位を含む、請求項2記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項4】
シリコーンハイドロゲル材料が、式(2)のビニルモノマーに由来するポリマー単位を含む、請求項2記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項5】
レンズ形成材料が、親水性モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有マクロマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有モノマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有マクロマー、シリコーン含有プレポリマー、疎水性モノマー、一つのエチレン性不飽和基しか有しない親水性ポリマー、ジ又はマルチ−エチレン性官能化親水性ポリマー、ジエチレン性官能化親水性ポリマー、マルチ−エチレン性官能化親水性ポリマー及びそれらの二つ以上の組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項2記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項6】
シリコーンハイドロゲル料が、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、トリメチルアンモニウム2−ヒドロキシプロピルメタクリレート塩酸塩、アミノプロピルメタクリレート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、グリセロールメタクリレート(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、アクリル酸、200〜1,500の重量平均分子量を有するC1〜C4アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メタクリル酸、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、N−ビニルカプロラクタム及びそれらの組み合わせからなる群より選択される親水性ビニルモノマーに由来するポリマー単位を含む、請求項5記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項7】
シリコーンハイドロゲル材料が、一つ以上のエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有モノマー又はマクロマーに由来するポリマー単位を含み、一つ以上のエチレン性不飽和基を有するシロキサン含有モノマー又はマクロマーが、モノメタクリル化ポリジメチルシロキサン、モノアクリル化ポリジメチルシロキサン、ジメタクリル化ポリジメチルシロキサン、ジアクリル化ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、メタクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン、アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン、アクリレート末端ポリジメチルシロキサン、メタクリレート末端ポリジメチルシロキサン、ビス−3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン、N,N,N′,N′−テトラキス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−α,ω−ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマー、グリシジルメタクリレートとアミノ官能性ポリジメチルシロキサンとの反応生成物、少なくとも一つのヒドロキシル基を有するシロキサン含有モノマー、少なくとも一つのヒドロキシル基を有するシロキサン含有マクロマー及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項8】
シリコーンハイドロゲル材料が、メチルアクリレート、エチル−アクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロ−イソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリス−トリメチルシリルオキシ−シリル−プロピルメタクリレート、3−メタクリルオキシプロピル−ペンタメチル−ジシロキサン及びビス(メタクリルオキシプロピル)−テトラメチル−ジシロキサン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される疎水性ビニルモノマーに由来するポリマー単位を含む、請求項5記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項9】
シリコーンハイドロゲル材料が、それぞれが一つのエチレン性不飽和基しか有しない一つ以上の親水性ポリマーに由来するダングリングポリマー鎖を含む、請求項5記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項10】
それぞれが一つのエチレン性不飽和基しか有しない一つ以上の親水性ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリアルキルアクリルアミド、ポリアルキルメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、N−ビニルピロリドンとジアルキルアミノアルキルアクリレートとのコポリマー、N−ビニルピロリドンとジアルキルアミノアルキルメタクリレートとのコポリマー、N−ビニルピロリドンとN,N−ジアルキルアクリルアミドとのコポリマー、N−ビニルピロリドンとN,N−ジアルキルメタクリルアミドとのコポリマー、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルとジアルキルアミノアルキルアクリレートとのコポリマー、酢酸ビニルとジアルキルアミノアルキルメタクリレートとのコポリマー、酢酸ビニルとN,N−ジアルキルアクリルアミドとのコポリマー、酢酸ビニルとN,N−ジアルキルメタクリルアミドとのコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項11】
レンズ形成材料が、重合開始剤、視認用ティント剤、UV遮断剤、増感剤、インヒビター、抗菌剤、生物活性物質、浸出性潤滑剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つの成分をさらに含む、請求項5記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項12】
少なくとも約40barrerの酸素透過度、約0.3MPa〜約1.5MPa、少なくとも約1.5×10-6mm2/minのイオノフラックス拡散係数Dを特徴とするイオン透過度、約15%〜約60%の含水率、約90°以下の平均水接触角を有することを特徴とする表面親水性及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つの性質を有する、請求項2記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項13】
(a)(1)加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマー、
(2)少なくとも一つの親水性ビニルモノマー、
(3)一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、一つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有モノマー、二つ以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも一つのシロキサン含有マクロマー又はそれらの二つ以上の組み合わせ、及び
(4)場合によって、連鎖移動剤
を含む、化学線重合性組成物(ただし、成分(2)〜(4)の少なくとも一つが、少なくとも一つの第一の官能基をさらに含むこととする)を共重合させて、第一の官能基を有する中間体コポリマーを得ること、及び
(b)有機化合物を共重合物と反応させて、化学線架橋性基を有する架橋性プレポリマーを形成すること(ここで、有機物は、化学線架橋性基及び第二の官能基を含み、その第二の官能基が中間体コポリマーの第一の官能基の一つと反応する)
によって得られる化学線架橋性プレポリマー。
【請求項14】
加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマーが、式(1)又は(2)
【化13】


(式中、1Rは、H又は−CH3であり、−L−は、−O−又は
【化14】


であり、2Rは、トリメチルシリル基(−Si(CH33)又は少なくとも一つのトリメチルシリルオキシ、トリメチルシリルアミノ基もしくはトリメチルシリル−C1〜C7アルキルアミノ基によって置換されているC4〜C25アルキルであり、3Rは、H又はC1〜C8アルキル基である)
【化15】


(式中、1Rは、H又は−CH3であり、−L−は、−O−又は
【化16】


であり、3Rは、H又はC1〜C8アルキル基であり、4Rは、C1〜C12非置換アルキレン(二価基)又は一つ以上の水素がC1〜C3アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基及び/もしくはカルボキシル基によって置換されている置換アルキレンであり、5Rは、C1〜C7アルキレン基である)
のビニルモノマーである、請求項13記載のプレポリマー。
【請求項15】
加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマーが式(1)のビニルモノマーである、請求項14記載のプレポリマー。
【請求項16】
加水分解性シリコーン含有基を含む少なくとも一つのビニルモノマーが式(2)のビニルモノマーである、請求項14記載のプレポリマー。
【請求項17】
親水性ビニルモノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、トリメチルアンモニウム2−ヒドロキシプロピルメタクリレート塩酸塩、アミノプロピルメタクリレート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、グリセロールメタクリレート(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、アクリル酸、200〜1,500の重量平均分子量を有するC1〜C4アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メタクリル酸、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、N−ビニルカプロラクタム及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14記載のプレポリマー。
【請求項18】
レンズ形成材料が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロ−イソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリス−トリメチルシリルオキシ−シリル−プロピルメタクリレート、3−メタクリルオキシプロピル−ペンタメチル−ジシロキサン及びビス(メタクリルオキシプロピル)−テトラメチル−ジシロキサン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される疎水性ビニルモノマーを含む、請求項14記載のプレポリマー。
【請求項19】
それぞれが一つのエチレン性不飽和基しか有しない一つ以上の親水性ポリマーに由来するダングリングポリマー鎖を含み、それぞれが一つのエチレン性不飽和基しか有しない一つ以上の親水性ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリアルキルアクリルアミド、ポリアルキルメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、N−ビニルピロリドンとジアルキルアミノアルキルアクリレートとのコポリマー、N−ビニルピロリドンとジアルキルアミノアルキルメタクリレートとのコポリマー、N−ビニルピロリドンとN,N−ジアルキルアクリルアミドとのコポリマー、N−ビニルピロリドンとN,N−ジアルキルメタクリルアミドとのコポリマー、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルとジアルキルアミノアルキルアクリレートとのコポリマー、酢酸ビニルとジアルキルアミノアルキルメタクリレートとのコポリマー、酢酸ビニルとN,N−ジアルキルアクリルアミドとのコポリマー、酢酸ビニルとN,N−ジアルキルメタクリルアミドとのコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14記載のプレポリマー。
【請求項20】
ソフトコンタクトレンズを製造する方法であって、
(1)コンタクトレンズの前面を画定する第一の成形面を有する第一の型半部及びコンタクトレンズの後面を画定する第二の成形面を有する第二の型半部を有する、ソフトコンタクトレンズを製造するための型を提供し(ここで、第一及び第二の型半部は、第一の成形面と第二の成形面との間にキャビティが形成されるように互いを受け入れるように構成されている)、一つの第一の加水分解性シリコーン含有基を有する少なくとも一つの化学線架橋性モノマー及び/又は複数の第二の加水分解性シリコーン含有基を有する一つの化学線架橋性プレポリマーを含むレンズ形成材料をキャビティに導入するステップ、
(2)レンズ形成材料を硬化させて、第一及び/又は第二の加水分解性シリコーン含有基を含むシリコーンハイドロゲル材料で構成されたソフトコンタクトレンズを形成するステップ、並びに
(3)ソフトコンタクトレンズを加水分解に付し、それにより、加水分解中、第一及び第二の加水分解性シリコーン含有基をシリコーンハイドロゲル材料から開裂させて、硬化後の表面処理なしで、ソフトコンタクトレンズに約90°以下の水接触角を提供するステップ
を含む方法。

【公表番号】特表2011−528816(P2011−528816A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520077(P2011−520077)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/049859
【国際公開番号】WO2010/011493
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】