説明

加湿器

【課題】加湿フィルタにおけるカビや雑菌の繁殖を抑制しながらも、加湿フィルタの表面積を大きくすることができ、高い加湿性能を備えた加湿器を提供すること。
【解決手段】乾燥した空気を本体1内に吸い込む送風機9と、水分を含浸させ送風機9からの空気を加湿する加湿フィルタ3と、供給される水を一時的に貯え加湿フィルタ3を水没させる水槽部2と、加湿フィルタ3を水槽部2の水面に対し上下動させる駆動部4と、駆動部4と送風機9の運転を制御する制御部10とを備え、制御部10によって、加湿フィルタ3全体を水槽部2内の水に水没させる給水状態と、加湿フィルタ3の下端を水槽部2の水面から上昇させる気化状態とに切換え自在とした加湿器において、加湿フィルタ3は柔軟性を有するシート状の物質からなることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の乾燥を防止するために加湿フィルタに給水した水を気化して空気を加湿する加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの加湿器等に搭載される加湿フィルタとして、回転する円盤状の加湿フィルタがあり、円盤外周の一部を水槽内に浸水させないように切欠いた非浸水部を設け、非加湿運転時には非浸水部を最下部に配置するように回転させるものが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、加湿フィルタが上下動自在に支持され、加湿フィルタの下端を加湿トレイ内の水に水没させる加湿姿勢と、加湿フィルタの下端を加湿トレイの水面から上昇させる乾燥姿勢とに切り替え自在とした加湿装置についても開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−85511号公報
【特許文献2】特開2008−64429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の加湿フィルタの構成では、加湿運転を行っていない時には加湿フィルタは浸水させていないので、湿潤することなく乾燥状態となっており、加湿フィルタにカビや雑菌が繁殖することがなく、悪臭発生の原因となることがない。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、悪臭対策として非浸水部を設けたことにより加湿フィルタの給水部位の表面積を縮小させているため、加湿フィルタに給水させる水の量を減少させることにもなっており、結果的に加湿性能を低下させてしまっていた。
【0007】
また、特許文献2のように、加湿フィルタを水没させている箇所が加湿フィルタの給水部位のある一部分でしかないため、加湿性能は加湿フィルタを形成する素材が有する親水性に依存することとなり、加湿フィルタ全体に水が行き渡らない場合などは加湿性能が低下してしまっていた。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためのもので、加湿フィルタにおけるカビや雑菌の繁殖を抑制しながらも、加湿フィルタの表面積を大きくすることができ、高い加湿性能を備えた加湿器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、乾燥した空気を本体内に吸い込む送風機と、水分を含浸させ前記送風機からの空気を加湿する加湿フィルタと、供給される水を一時的に貯え前記加湿フィルタを水没させる水槽部と、前記加湿フィルタを前記水槽部の水面に対し上下動させる駆動部と、前記駆動部と前記送風機の運転を制御する制御部とを備え、前記制御部によって、前記加湿フィルタ全体を前記水槽部内の水に水没させる給水状態と、前記加湿フィルタの下端を前記水槽部の水面から上昇させる気化状態とに切換え自在とした加湿器において、前記加湿フィルタは柔軟性を有するシート状の物質からなることを特徴とする加湿器に係わるものである。
【発明の効果】
【0010】
上述の構成にすることにより、給水時に水槽部内に加湿フィルタ全体を折りたたんで収納して水没させることができるため、加湿フィルタを湿潤させる面積を大きくすることが可能となり、これに加え、加湿フィルタを水槽部の水面から引き揚げて乾燥させ、カビや雑菌の繁殖を抑制できることから、衛生面を担保しながら高い加湿性能を備えた加湿器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の加湿器の縦断面構成図である。
【図2】本発明の制御部のブロック図である。
【図3】本発明の加湿器の運転状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適と考える本発明の最良の形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0013】
本発明は、水分を含浸させ、送風機からの空気を加湿する加湿フィルタと、供給される水を一時的に貯留して加湿フィルタを水没させる水槽部と、加湿フィルタを水槽部の水面に対し上下動させる駆動部と、駆動部と送風機の運転を制御する制御部とを備えており、制御部によって、加湿フィルタ全体を水槽部内の水に水没させる給水状態と、加湿フィルタの下端を水槽部の水面から上昇させる気化状態とに切換え自在とした加湿器において、加湿フィルタは柔軟性を有するシート状の物質からなるようにしたものである。
【0014】
つまり、加湿フィルタに柔軟性を有するシート状の物質を使用することにより、駆動部によって加湿フィルタを水槽部の水面以下に下げる動作を行う給水状態にあるときには、加湿フィルタは折りたたまれるように変形してコンパクトな形状となることから、水槽部の容積が大きくなくとも加湿フィルタ全体を水槽部内に収納させることが可能となる。
【0015】
これにより、加湿フィルタの面積を大きくしても水槽部内に貯留した水に加湿フィルタ全体を水没させて湿潤させることができるため、高い加湿量を得ることができるのである。
【0016】
また、加湿フィルタの柔軟性によって、水没させる水槽部を小型にすることが可能であるとともに、加湿フィルタを引き揚げた体勢であってもシート状であることから従来の加湿フィルタのような厚さを必要としないため、加湿器本体の省スペース化を図ることができる。
【0017】
さらに、加湿フィルタ全体を水槽部内の水に水没可能であることから、加湿フィルタを形成する素材の親水性が低くても加湿フィルタ全体に万遍なく湿潤させることができるので、加湿フィルタを形成する素材の選択自由度が広がるといったさらなる効果がある。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。なお、この発明はこれらによって限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0019】
図1は加湿器の縦断面構成図であり、1は加湿器本体、2は図示しない水タンクから供給される水を一時的に貯える水槽部、3は水槽部2の上方に配置され、水槽部2内の水面に対し上下動される加湿フィルタ、4は加湿フィルタ3を吊下げるワイヤー5と、ワイヤー5を巻上げる巻上げモータ6とにより構成される駆動部、7は乾燥した室内空気を本体1内部に取り込む吸気口、8は吸気口7から取り込んだ室内空気を加湿フィルタ3に通過させることで加湿させ室内に排出する吹出口、9は送風機である。
【0020】
加湿フィルタ3の給水部位を構成する素材として、疎水性繊維であるポリエステルと親水性繊維であるレーヨンを混紡した不織布を使用し、加湿フィルタ3は折り曲げ自在に柔軟性を有するように薄手のシート状に形成している。なお、加湿フィルタ3を構成する素材はこれに限らず、例えばポリエステルのみを使用した不織布やダブルラッセル編みなどの三次元編みによる生地でもよい。
【0021】
図2は制御部の構成を示すブロック図であり、10は制御部としてのマイクロコンピュータ(以下、マイコンと記す)であり、このマイコン10の入力側には、運転スイッチなどの操作キーが配置された操作部11と室内の湿度を検知する湿度センサ12が接続されている。また、マイコン10の出力側には、巻上げモータ6と送風機9が接続されている。
【0022】
次に、上記構成からなる動作と作用について、図2および図3を用いて説明する。
【0023】
図3は加湿器の運転状態を説明する図であり、図3(a)は加湿フィルタ3に室内空気を送って水を気化させる気化運転の状態を示しており、図3(b)は水槽部2の水を加湿フィルタ3に給水させる給水運転の状態を示している。
【0024】
まず、図3(a)において、本体1に図示しない水タンクから水が供給されると水槽部2に一定量の水が流れ込み、一定水位の水が貯えられる。
【0025】
この状態で操作部11の運転スイッチを入れると、図3(b)に示すように、マイコン10により巻上げモータ6を運転させ、巻上げていたワイヤー5を緩めて加湿フィルタ3を下降させ、水槽部2内の水に加湿フィルタ3を水没させる。
【0026】
加湿フィルタ3は柔軟性のあるシートであることから、水槽部2内に水没させると水分を含んだ加湿フィルタ3が水槽部2内に折りたたまれるように収納され、最終的には加湿フィルタ3全体が水没することとなる。
【0027】
加湿フィルタ3を薄手のシート状にしたことによって、放出される加湿量は加湿フィルタ3の面積に依存することとなるが、この給水状態により加湿フィルタ3の面積を大きくしても加湿フィルタ3全体を万遍なく湿潤させることが可能となる。
【0028】
次に、加湿フィルタ3に給水させた後、図3(a)に示すように、マイコン10により巻上げモータ6を運転させ、ワイヤー5を巻上げることで加湿フィルタ3の下端を水槽部2の水面から引き揚げ、室内空気を通過させる吸気口7から吹出口8までの経路内において加湿フィルタ3を張り広げた状態で静止させる。
【0029】
その後、マイコン10により送風機9を運転させることで、吸気口7から室内の乾燥した空気が本体1内部に取り込まれ、この乾燥した空気が湿潤した加湿フィルタ3を通過することにより湿度を含んで加湿空気となり、吹出口8から室内へと放出されるのである。
【0030】
ここで、図3(a)における白抜き矢印は室内から取り込まれた乾燥空気を示しており、黒矢印は加湿フィルタ3を通過後の加湿空気を示したものである。
【0031】
そして、マイコン10は前記した加湿フィルタ3の給水状態と気化状態を定期的に繰り返したり、湿度センサ12からの信号に基づいて急速に加湿が必要なときには加湿フィルタ3の上下動を連続的に行ったりすることで加湿運転を行うのである。
【0032】
なお、加湿運転の停止指示がなされると、図3(a)に示すように、マイコン10は巻上げモータ6を運転させて加湿フィルタ3を水槽部2内の水面から引き揚げた状態で静止させるとともに、送風機9をあらかじめ設定した時間だけ運転をさせて加湿フィルタ3に送風を行うことで、加湿フィルタ3を乾燥させるようにする。
【0033】
これにより、加湿運転停止後に加湿フィルタ3に給水されることはなく、次に加湿運転を開始するまで加湿フィルタ3は乾燥した状態を維持しており、カビ・雑菌の繁殖を抑えることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 本体
2 水槽部
3 加湿フィルタ
4 駆動部
9 送風機
10 マイクロコンピュータ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥した空気を本体内に吸い込む送風機と、水分を含浸させ前記送風機からの空気を加湿する加湿フィルタと、供給される水を一時的に貯え前記加湿フィルタを水没させる水槽部と、前記加湿フィルタを前記水槽部の水面に対し上下動させる駆動部と、前記駆動部と前記送風機の運転を制御する制御部とを備え、前記制御部によって、前記加湿フィルタ全体を前記水槽部内の水に水没させる給水状態と、前記加湿フィルタの下端を前記水槽部の水面から上昇させる気化状態とに切換え自在とした加湿器において、前記加湿フィルタは柔軟性を有するシート状の物質からなることを特徴とする加湿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−15239(P2013−15239A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146926(P2011−146926)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000109026)ダイニチ工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】