説明

加湿装置及び空気清浄機

【課題】送気口から送り出される空気中に水滴が混入することを防止し、水滴の混入に起因する不具合の発生を未然に回避し得る加湿装置及び空気清浄機を提供する。
【解決手段】加湿フィルタ31と、加湿フィルタ31を収容保持する円盤形の保持枠30と、保持枠30を回転駆動する駆動手段と、水槽6と、送風ファン2と、を備える加湿装置であって、駆動手段は、保持枠30の一面から張り出すように設けられており保持枠30よりも小径の円環状をなす伝動環32と、伝動環32に転接し伝動環32に回転を伝える伝動ローラ51とを有し、保持枠30の一面には、伝動環32の内側に第1開口が、外側に第2開口がそれぞれ設けられ、送風ファン2によって発生する空気の流れは第1開口を通過し、水槽31内の貯留水は第2開口を経て保持枠30内に侵入して加湿フィルタ31に吸収されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を含んだ加湿フィルタに空気を通し、該加湿フィルタの下流側に気化水分を含んで導出される湿り空気を外部に送り出すように構成された加湿装置、及びこの加湿装置を備える空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康指向の高まりにより、室内の空気に適正な湿度を与えるための加湿装置が広く用いられている。特に、水の加熱蒸発を伴わずに加湿を実現する気化式の加湿装置(例えば、特許文献1、2参照)は、室内の温度に影響を与えずに湿度調節をなし得ることから、その普及が拡大している。
【0003】
気化式の加湿装置は、吸気口と送気口とを備えるハウジングの内部に、水を含ませた加湿フィルタと送風ファンとを配し、送風ファンの動作により吸気口を経てハウジング内に導入される空気を加湿フィルタに通し、該加湿フィルタの下流側に送り出される気化水分を含む湿り空気を送気口を経て室内に送り出すように構成されている。なお特許文献1、2に開示された加湿装置は、加湿フィルタの一側(空気の流れ方向の上流側)に脱臭フィルタ及び集塵フィルタを並置し、これらにより通気を清浄化する機能を併せ持つ空気清浄機として構成されている。
【0004】
加湿フィルタは、高い含水性を有すると共に通気が可能な材料(不織布等)製のシートであり、中空円盤形の保持枠の内部に収容保持されている。保持枠は、両面に通気用の開口を有しており、吸気口から吸込まれる空気は、一面の開口を経て保持枠の内部に導入され、該保持枠の内部に収容保持された加湿フィルタと接触し、気化水分を含む湿り空気となって他面の開口から導出される。
【0005】
保持枠は、定量の水を貯留する水槽の上部に、該水槽中の貯留水に下部を浸漬した状態で支持され、駆動手段の動作により、横軸周りに低速度で回転駆動されている。加湿フィルタは、水槽内に浸漬する回転位置にて貯留水を吸水し、保持枠と共に回転することにより持ち上げて、気化に伴って失われる水分を補充するように構成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−46729号公報
【特許文献2】特開2009−85511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の如き従来の加湿装置において、保持枠を回転駆動する駆動手段は、保持枠の外周面に一体に周設されたリングギヤと、該リングギヤに噛合する伝動ギヤとを備え、モータ等の駆動源の回転を伝動ギヤ及びリングギヤを介して保持枠に伝え、該保持枠を回転駆動するように構成されている。
【0008】
このように構成された駆動手段において、保持枠の外周に設けられたリングギヤは、該保持枠の回転周上で水槽中の貯留水に浸漬され、この貯留水が付着した状態で回転する。ここでリングギヤは、多くの歯を有しており、付着水の多くは、歯間に滞留保持された状態で持ち上げられて保持枠の全周に行き渡る。
【0009】
一方、保持枠の周囲には、吸気口から送気口に向かう空気流が生じているため、この空気流の作用により保持枠の外周の付着水が吹き飛ばされて飛散し、送気口から送り出される空気中に水滴となって混入する結果、適正な加湿状態が得られなくなるという不具合があり、更には、送気口、及びその周辺に水滴が付着し、使用者に違和感を抱かせるという不具合もある。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、送気口から送り出される空気中に水滴が混入することを防止し、水滴の混入に起因する不具合の発生を未然に回避し得る加湿装置及び空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る加湿装置は、含水性を有するとともに、通気可能な加湿フィルタと、該加湿フィルタを収容保持する円盤形の保持枠と、該保持枠を回転駆動する駆動手段と、前記加湿フィルタの下部が浸漬する水槽と、前記加湿フィルタに空気を通し、気化水分を含む湿り空気を送り出す送風ファンと、を備える加湿装置であって、前記駆動手段は、前記保持枠の一面から張り出すように設けられており前記保持枠よりも小径の円環状をなす伝動環と、該伝動環に転接し該伝動環に回転を伝える伝動ローラとを有し、前記保持枠の前記一面には、前記伝動環の内側に第1開口が、外側に第2開口がそれぞれ設けられ、前記送風ファンによって発生する空気の流れは前記第1開口を通過し、前記水槽内の貯留水は前記第2開口を経て前記保持枠内に侵入して前記加湿フィルタに吸収されることを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る加湿装置は、前記伝動ローラ及び伝動環が、夫々との転接周面の全周に歯を形成してなるギヤであることを特徴とする。
【0013】
また本発明に係る空気清浄機は、前記いずれかの構成を有する加湿装置と、前記空気の流れ経路に沿って前記加湿フィルタの上流に並設された集塵フィルタとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る加湿装置及び空気清浄機においては、加湿フィルタを収容保持する保持枠の一面に、保持枠よりも小径の伝動環を張り出すように設けられ、この伝動環に回転力を伝えて保持枠を回転駆動する構成とすることから、伝動環への水の付着自体を軽微に抑えることができる。よって、適正な加湿状態が得られない、送気口の周辺に水滴が付着する等、水滴の混入に起因する不具合の発生を未然に回避し、良好な使い勝手が得られる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る加湿装置を備える空気清浄機の外観斜視図である。
【図2】図1に示す空気清浄機の概略構成を示す側断面図である。
【図3】加湿フィルタユニットの駆動手段を示す正面図である。
【図4】加湿フィルタユニットの駆動手段の他の実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る加湿装置を備える空気清浄機の外観斜視図、図2は、図1に示す空気清浄機の概略構成を示す側断面図である。なお図2は、背面を右、正面を左として示してあり、図1は、背面側(図2の右側)から見た斜視図である。以下の説明では、正面側を前とし、背面側を後とする。
【0017】
本発明に係る加湿装置は、矩形箱形のハウジング1の内部に、送風ファン2、加湿フィルタユニット3及び水槽4を備えている。図2に示すようにハウジング1の内部は、隔壁11により後側の吸込室12と前側の吐出室13とに分割されている。吸込室12は、ハウジング1の後面パネル14に開設された多数の吸気口15,15…を介して外部に連通し、また吐出室13は、ハウジング1の天板に開設された送気口16を介して外部に連通している。更に吸込室12と吐出室13とは、隔壁11の下部に設けた開口 11aを経て相互に連通している。
【0018】
図1に示すように、後面パネル14は着脱可能であり、該後面パネル14の前側には、脱臭フィルタ17及び集塵フィルタ18が積層配置してある。脱臭フィルタ17は、例えば、不織布に活性炭を分散保持させてなり、通気中の臭い成分を吸着、除去する作用をなす。集塵フィルタ18は、例えば、公知のHEPA(High Efficiency Particulate Air )フィルタであり、通気中に含まれる微細な塵埃を捕集、除去する作用をなす。脱臭フィルタ17及び集塵フィルタ18は、合成樹脂製の矩形の枠体 17a,18aに各別に一体化され、後面パネル14の前側に設けたフィルタ室に嵌め込まれている。
【0019】
送風ファン2は、羽根車20と、該羽根車20を駆動するファンモータ21とを備えている。ファンモータ21は、吐出室13の下部に固定されている。羽根車20は、吐出室13内に突出するファンモータ21の出力端に固定され、隔壁11下部の開口 11aに対向配置してある。送風ファン2の羽根車20は、ファンモータ21の駆動によって回転する。羽根車20が回転した場合、図2中に白抜矢符にて示すように、後面パネル14に設けた吸気口15,15…を経て吸込室12の内部に外気が導入され、該吸込室12の内部を前方向に流れて隔壁11下部の開口 11aを経て羽根車20に吸い込まれ、上向きに方向を変えて吐出室13の内部に導出され、吐出室13の末端の送気口16から外部に送り出される。
【0020】
このようにハウジング1の内部の吸込室12及び吐出室13は、送風ファン2の動作に応じて前述した空気の流れが生じる送風路を構成する。前記脱臭フィルタ17及び集塵フィルタ18は、以上の如き送風路の上流側に位置しており、吸気口15,15…を経て吸込室12に導入される外気は、脱臭フィルタ17の通過により臭い成分を除去され、集塵フィルタ18の通過により塵埃を除去された清浄な空気となって、吐出室13の末端の送気口16を経て送り出される。
【0021】
加湿フィルタユニット3及び水槽4は、以上のように送風路の内部を流れる空気を加湿すべく、集塵フィルタ18と送風ファン2との間に配置してある。
【0022】
水槽4は、上部が開放された皿形の容器であり、ハウジング1の底板に設けたガイド部19に嵌め込むことにより、吸込室12の内部で集塵フィルタ18の前側に位置決めしてある。図1に示すように水槽4は、該水槽4の上部に後述のように支持される加湿フィルタユニット3と共に、前記ガイド部19に沿ってスライド移動することにより、ハウジング1の一側面から外部に引き出すことが可能である。水槽4の引き出し側の端部には、広幅のタンク受け40が連設してあり、該タンク受け40には、給水タンク41が着脱されるようになしてある。
【0023】
給水タンク41は、一側の端部に給水栓42を有する直方体形状の容器であり、前記給水栓42の側を下向きとした倒立姿勢にてタンク受け40に装着される。給水栓42は、定水位弁を内蔵している。この定水位弁は、タンク受け40への給水タンク41の装着時に、該タンク受け40の底面に立設した押し上げ突起に押し上げられて開放し、給水タンク41内の収容水を水槽4内に送り出し、該水槽4の内部の貯留水の水位を一定に保つ作用をなす。
【0024】
加湿フィルタユニット3は、中空円盤形をなす保持枠30の内部に加湿フィルタ31を収容保持して構成されている。加湿フィルタ31は、不織布等、高い含水性を有すると共に通気が可能な材料製のシートであり、保持枠30の内部を流れる空気との接触面積を増すべく、図2に示すように、蛇腹状に折り重ね、重ね幅の方向を通気の方向に沿わせて前記保持枠30の内部に収容されている。
【0025】
図3は、加湿フィルタユニット3の駆動手段を示す正面図であり、水槽4の一部を破断して示してある。なお図3中には、水槽4の一側のタンク受け40に装着される給水タンク41の図示は省略してある。
【0026】
図3に示すように加湿フィルタユニット3は、水槽4の内部に設けた2つの支持ローラ6,6の上に保持枠30を載置することにより、水槽4の底面上で略垂直に立ち上がる姿勢で支持されている。支持ローラ6,6は、前後方向の軸周りに回転するローラであり、水槽4の長手方向の両側に振り分け配置され、夫々の位置で保持枠30の外周面に転接している。加湿フィルタユニット3は、支持ローラ6,6の転動を伴って中心軸周りに回転することができる。
【0027】
このように支持された加湿フィルタユニット3は、図1に示すように、ハウジング1の一側面から水槽4と共に外部に引き出し、上方に持ち上げることで容易に取り外すことができる。また逆に、その下部を水槽4の内部に差し込み、2つの支持ローラ6,6の上に載置することで前述した姿勢に支持し、この状態で水槽4と共にハウジング1の内部に押し込み、該ハウジング1の内部の所定位置にセットすることができる。このような加湿フィルタユニット3の着脱は、保持枠30の内部に収容された加湿フィルタ31の保守、交換、更には、水槽4の内部の清掃のために実施される。
【0028】
図2、3に示すように加湿フィルタユニット3は、保持枠30の一面(後面)に同軸をなして周設された伝動環32を備えている。伝動環32は、保持枠30よりも小径の円環であり、前記一面から張り出すように設けてある。図示の伝動環32は、外周面の全周に歯が形成されたリングギヤとして構成されていおり、図2、図3に示すように、保持枠30の上位置に配した駆動ユニット5の伝動ギヤ51に噛合されている。
【0029】
駆動ユニット5は、基台50の一面に取り付けた伝動ギヤ51及び駆動ギヤ52と、基台50の他面に取り付けた駆動モータ53とを備え、基台50を貫通する複数本の固定ねじ54,54…により、前記端壁11の適宜位置に固定されている。駆動ギヤ52は、駆動モータ53の出力軸に嵌着されており、駆動モータ53の回転は、駆動ギヤ52を介して伝動ギヤ51に伝わり、該伝動ギヤ51が回転するように構成されている。
【0030】
駆動ユニット5の伝動ギヤ51は、図2、図3に示すように、加湿フィルタユニット3が前述した所定位置にセットされたとき、該保持枠30の前側に位置し、同側に周設された伝動環32に噛合する。この噛合により加湿フィルタユニット3は、水槽4の内部の2つの支持ローラ6,6と、駆動ユニット5の伝動ギヤ51とにより、周方向の異なる位置で3点支持された状態となる。
【0031】
このように支持される加湿フィルタユニット3は、図2に示すように、吸込室12の内部において集塵フィルタ18の前側及び送風ファン2の後側に対向するように位置し、駆動モータ53を駆動した場合、駆動ギヤ52の回転が、伝動ギヤ51及び伝動環32を介して保持枠30に伝わり、加湿フィルタユニット3は、図2、図3に示す支持状態を保って中心軸周りに回転する。
【0032】
図3に示すように保持枠30の後面(集塵フィルタ18との対向面)には、前記伝動環32と、該伝動環32よりも内側の円形の支え環33と、該支え環33を保持枠30の外周に連絡する複数本(図においては6本)の支えリブ34,34…とが夫々設けてある。支え環33と支えリブ34,34…とは、図示しない保持枠30の前面にも同様に設けてある。
【0033】
また保持枠30は、周方向の一か所を塞ぐ弓形の閉止部35を備えている。保持枠30の内部の加湿フィルタ31は、閉止部35を除く空間、即ち、円形の一部を弓形に切欠いた断面形状を有する収容空間内に収容され、支え環33及び支えリブ34,34…により前後両側から、また伝動環32により後側から夫々支えられた状態で保持されている。
【0034】
図3に示すように保持枠30の後面は、前記伝動環32、支え環33、支えリブ34,34…及び閉止部35を除く全面が開口している。保持枠30は、図示しない前面にも同様の開口を有しており、該保持枠30の内部の加湿フィルタ31は、夫々の開口から外部に露出した状態にある。加湿フィルタ31は、前述のように、シート材を蛇腹状に折り重ねて構成されており、図3中には、夫々の開口から露出する加湿フィルタ31が、正面視にて山形の折り線を実線により示し、同じく谷形の折り線を破線により示してある。
【0035】
水槽4の内部には、前述したように一定水位の水が貯留されている。図3中には、水槽4内の貯留水の水面Lが2点鎖線により示してある。前述の如く回転する保持枠30の下部は、水槽4の貯留水中に浸漬され、該貯留水は、保持枠30の内部に前後の開口を経て浸入し、該保持枠30内に収容保持された加湿フィルタ31に吸水される。
【0036】
以上の如く構成された空気清浄機は、加湿運転と非加湿運転とが可能である。加湿運転は、送風ファン2を駆動し、ハウジング1内の吸込室12及び吐出室13に前述した空気の流れを生ぜしめると共に、駆動ユニット5(駆動モータ53)を駆動し、加湿フィルタユニット3を回転せしめて実施される。
【0037】
加湿フィルタユニット3は、図2に示すように、集塵フィルタ18と送風ファン2との間でハウジング1内の空気の流れ経路に正対しており、吸気口15,15…を経て吸込室12に吸い込まれる外気は、脱臭フィルタ17及び集塵フィルタ18を通過した後、加湿フィルタユニット3の保持枠30の内部に後面の開口を経て導入され、加湿フィルタ31を通気して前面の開口から導出される。このとき加湿フィルタ31は、保持枠30と共に回転しており、下部の回転位置において水槽4内の貯留水を吸水し、回転により持ち上げることにより、全体に亘って含水した状態にある。従って、保持枠30内を流れる空気は、水を含んだ加湿フィルタ31に接触することで気化水分を含む湿り空気となり、送風ファン2に吸込まれ、前述の如く方向を転換して吐出室13の内部を上向きに流れ、該吐出室13の末端に開口する送気口16を経て送り出される。以上の動作により、空気清浄機を設置した室内を加湿することができる。
【0038】
以上の動作において、駆動ユニット5から加湿フィルタユニット3への伝動は、駆動ユニット5の伝動ギヤ51と保持枠30に設けた伝動環32との噛合部を介してなされる。伝動環32は、回転周上の下部において、図3に示すように水槽4内の貯留水に浸漬されるため、該伝動環32には、水が付着し、この付着水は、保持枠30の回転により上方に持ち上げられる。特に、実施の形態の伝動環32は、外周面に多数の歯が設けられたリングギヤとして構成されており、伝動環32の外周面に付着した水は、相隣する歯間に滞留保持される結果、付着水の持ち上げは顕著に生じる。
【0039】
一方、伝動環32を備える保持枠30の周囲には、前述したように空気の流れが存在しており、この空気の流れは、伝動環32に付着した水にも作用し、この付着水は、後方に吹き飛ばされて飛散する。ここで伝動環32は、保持枠30の後面、即ち、空気の流れ方向の上流側の一面に、該保持枠30よりも小径の円環として設けられており、保持枠30の後面には、伝動環32の内外両側に開口が存在するから、前述の如く飛散する付着水は、これらの開口を経て保持枠30の内部に入り、該保持枠30に収容された加湿フィルタ31に吸収される。
【0040】
従って、伝動環32の付着水は、保持枠30の前側(下流側)に導出される空気中に水滴となって混入せず、この空気は、加湿フィルタ30との接触により生じた気化水分のみを含む湿り空気となり、適正な加湿状態が実現される。
【0041】
以上の実施の形態においては、伝動環32を、駆動ユニット5の伝動ギヤ51と噛合するリングギヤとし、駆動ユニット5から加湿ユニット3への伝動を歯車伝動により行わせているが、伝動環32を、駆動ユニット5の伝動ローラと転接する摩擦面を外周に備える環状の摩擦ローラとし、駆動ユニット5から加湿ユニット3への伝動を摩擦伝動により行わせてもよく、この構成においても本発明の構成は有効であり、加湿空気中への水滴の混入を防止する効果が得られる。
【0042】
一方、空気清浄機の非加湿運転は、加湿フィルタユニット3の回転を停止し、送風ファン2だけを駆動せしめて実施される。このとき、加湿フィルタユニット3は、図3に示す回転位置、即ち、保持枠30に設けた弓形の閉止部35の弦が、水槽4内の貯留水の水面Lよりも上で、該水面Lと略平行となる回転位置で停止する。このように加湿フィルタユニット3の回転を停止した場合、保持枠30内の加湿フィルタ31は、水槽4内の貯留水中に浸漬せず、新たに水を吸い上げないから、送気口16を経て室内に送り出される空気は加湿されず、脱臭フィルタ17及び集塵フィルタ18の作用による空気清浄機能だけが発揮される。
【0043】
図4は、加湿フィルタユニット3の駆動手段の他の実施の形態を示す正面図である。この実施の形態においては、伝動環32の外径をより小さくし、図示のように、最下部においても水槽4内の貯留水の水面Lよりも上となるように設定してある。この伝動環32は、図3に示す実施の形態と同様、外周に多数の歯を備えるリングギヤであり、駆動ユニット5の伝動ギヤ51に噛合させ、該伝動ギヤ51を介して伝えられる駆動モータ53の駆動に応じて回転するように構成してある。駆動ユニット5の位置は、図3に示す実施の形態と同じであり、伝動ギヤ51は、小径の伝動環32との噛合を可能とすべく、図3の伝動ギヤ51よりも大径としてある。図4に示す実施の形態の他の構成及び動作は、図3に示す実施の形態と同様であり、対応する構成部材に図3と同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0044】
図4に示す実施の形態において伝動環32は、前述した加湿運転中に水槽4内の貯留水中に浸漬せず、該伝動環32への水の付着自体を軽微に抑えることができ、更に、空気の流れにより吹き飛ばされる付着水は、後面の開口を経て保持枠30の内部に入り、加湿フィルタ31に吸収される。従って、送気口16を経て室内に送り出される空気中への水滴の混入を、より確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0045】
3 加湿フィルタユニット
5 駆動ユニット
6 水槽
30 保持枠
31 加湿フィルタ
32 伝動環
51 伝動ギヤ(伝動ローラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水性を有するとともに、通気可能な加湿フィルタと、
該加湿フィルタを収容保持する円盤形の保持枠と、
該保持枠を回転駆動する駆動手段と、
前記加湿フィルタの下部が浸漬する水槽と、
前記加湿フィルタに空気を通し、気化水分を含む湿り空気を送り出す送風ファンと、を備える加湿装置であって、
前記駆動手段は、前記保持枠の一面から張り出すように設けられており前記保持枠よりも小径の円環状をなす伝動環と、該伝動環に転接し該伝動環に回転を伝える伝動ローラとを有し、
前記保持枠の前記一面には、前記伝動環の内側に第1開口が、外側に第2開口がそれぞれ設けられ、前記送風ファンによって発生する空気の流れは前記第1開口を通過し、前記水槽内の貯留水は前記第2開口を経て前記保持枠内に侵入して前記加湿フィルタに吸収されることを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記伝動ローラ及び伝動環は、夫々との転接周面の全周に歯を形成してなるギヤであることを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の加湿装置と、前記空気の流れ経路に沿って前記加湿フィルタの上流側に並設された集塵フィルタとを備えることを特徴とする空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−57507(P2013−57507A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−286713(P2012−286713)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2009−281865(P2009−281865)の分割
【原出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】